ボストン大学卒業後、外資系勤務を経て大学院で紛争解決について研究を再開。フランス人の夫との結婚を機に拠点をパリ・マルセイユに移す。2012年に女の子を出産し、フランスでの出産、子育て、家族事情、文化、教育、社会問題などについて執筆を開始。現在はライフスタイル・アドバイザーとして世界各地で精力的に活動する。多くの女性が潤いのある、幸せな人生を生きることができるよう、フランスを中心に素敵なライフスタイルについて紹介している。現在、3つの言語・文化・価値観のなかで奮闘中。そこから見えてきたフランス人の生き方、価値観、そして美意識にまで踏み込んで発信。 フランス紀行 Facebook
周囲と良好な関係を築く上で欠かせないのが、コミュニケーションスキル。スキルというと、大げさなものを想像しがちですが、実際にはちょっとした違いであることが多いものです。 そこで今回は、大人にも応用できる、コミュニケーションスキルを高めるための、ちょっとしたポイントを紹介します。 世界の人々が共感を求めている これまで「コミュニケーションスキルのアップ」というと、自己啓発やビジネス書などを中心に、自分の考えを主張したり、相手を説得したりと、自分中心の発信が主流でした。 しかし今や、「相互理解」や「傾聴」など、共感を重視する類いの言葉であふれています。すなわち、相手の想いを汲み取り、理解することの大切さにスポットライトが当たり始めたということ。これは日本だけではなく、世界的な傾向にもなりつつあるようです。 人はリラックスして、ハッピーな時に最も生産性が高まる 欧米の企業で管理職に就く人々の登竜門としてあるのが、コミュニケーションスキルのトレーニング。昨今注目されるのが、自分の主張を押さえて、部下をはじめとする周囲への傾聴を促し、彼らのやる気が高まる話し方、相手に配慮する言葉の選び方について。 このような傾向が生まれつつあるのは、個人やチームの生産性が最も高まるのは、人々がリラックスして、気持ちよく、ハッピーな精神状態にある時だということが、さまざまな研究を通じて明らかにされ始めているからです。 まずは自分が変わるよう努力する そこで大切になるのが、「相手を変える」のではなく、まずは「自分が変わる」こと。やみくもに相手に迎合するのとは違い、目的を達成するために、相手の目線で物事を見て理解し、その立場に立って共感することがねらいです。 人は理解され、共感されていると思うと心を開き、耳を傾けるようになるもの。自分とは異なる相手の考え方や視点を理解し、尊重し、そこから自分がどのような対応すれば、お互いにとって気持ちの良いコミュニケーションを築くことができるのかを考えてみるのです。 自分と異なる考え方があることを教える 例としてわかりやすいのは、対立が起きた場合。お友だちとケンカした場合など、善悪の判断とは別に、自分とは異なる他者の考え方、視点などについて子どもにわかるように繰り返し説明し、理解を促してみましょう。 異なる世代や年齢の人々と積極的に交流する機会を設けたり、旅行に出かけた際には、その土地の歴史や伝統について、自分の育ってきた環境と比較して話をしたりするのもよいでしょう。 そのような中で、自分はどのように振る舞えば、楽しい関係が構築できるのか、親子で対話を重ねていってみてください。 (タベ真美)
2015年11月22日「自分で考える力を養う」ことが教育の目標として掲げられ、欧米の教育が脚光を浴びています。そのための効果的な学習について、フランスやアメリカの例を取って、以下にまとめてみました。 他人からの学びこそが、すべての基礎 自分で考える力を養うためにまず重要なことは、「他人から学ぶ」こと。自分で考えるためには材料が必要であり、そのほとんどは他人から生み出される知識です。 ごくごく一部の天才的なひらめきを除いて、新たなアイデアや発想、イノベーションのほとんどは、先人による知識の蓄積から学んだことが土台にあるといいます。 そのため、アメリカの大学では学生に専攻分野で必読書となるものを徹底的に読み込ませ、論文を書かせます。週に1,000ページぐらい読むのは当たり前で、ほぼ毎週、何本も論文を書きます。読んで、書いて、読んで、書いてを繰り返すことで、先人が蓄積した知識を十二分に吸収し、それについて考え抜いた後で、ようやく自分で新たなアイデアを生み出すことができるようになると考えるからです。 フランスでも同様に、大学への入学資格となるバカロレアは論述試験となりますが、これまで学んできたことを基にして自分の考えを理論的に展開する力が問われます。特に哲学の試験では、教科書をはじめ、数々の哲学書に書かれている内容を上手く整理し、最後に自分の考えを述べるようにしないと、高得点は得られないといわれています。 実際に書いてみることが最良のトレーニング 学びを基に自分の考えを深化させる上で最も確実な方法は、「書くこと」。自分の頭の中だけで整理してまとめることができる人も中にはいますが、ほとんどの人は、書いているうちに思考が深まり、考えがまとまるようです。 書き始めると、論旨の展開や表現にも配慮するようになります。書くからには自己満足で終わらず、相手に理解して納得してもらいたいもの。特に、試験で高得点を得ようと思うと、学んだことを単に列記するだけではなく、重要な点をしっかりハイライトし、説得的に述べることがマストです。 アメリカやフランスをはじめ、欧米の学校の試験は、ほとんどが論述式です。正しい回答を得ることよりも、それに到達するプロセス、つまり思考のプロセスを見ることが重要だと考えるからです。 世の中には回答のない問題が山積みです。正しい答えが存在しない中、自分で回答を導き出すには、思考のプロセスが試されます。そして、最終的に正しい考えとして世の中の人々に受け入れられるためには、周囲が納得してくれるよう自分で説得していかねばらないからです。 このように見ていくと、読書などを通じて、まずは「他人の考えについて学ぶこと」が重要であり、それを踏まえて、「自分の考えを説得的に述べることができるようになること」こそ、教育の集大成であり、「考える力を養う」ことであるということがわかります。 (タベ真美)
2015年10月10日フランスでは、赤ちゃんはひとりで寝るというのがスタンダード。ママたちには、そのための環境作りや方法が親や友人、知人からシェアされるほか、医師や看護師などからも伝授されます。 その根底には、「赤ちゃんは就寝パターン(習慣)を自分で確立できるので、ママはそのお手伝いをしてあげればよいだけ」というロジックが流れています。 赤ちゃんは学習意欲旺盛! 「赤ちゃんが夜中に泣いたから」といって、すぐに駆けつけて抱っこをすると、赤ちゃんは「泣けば抱っこしてもらえる」と理解し、抱っこしてもらうまで泣き続けるようになります。 でも、泣いても誰も来てくれないということがわかれば、ひとしきり泣いた後、ひとりで眠るようになり、やがてまったく泣かずに夜通しひとりで眠るようになります。このように、大人が手助けをしてあげれば、赤ちゃんは自分で就寝パターンを確立できるようになるのです。 ちなみに、私個人の体験になりますが、夜一度だけ起きるよう習慣付けることも可能です。わが家の娘は5月生まれですが、夏場となる生後2ヵ月~4ヵ月にかけて、「寝ている間に喉が渇くことがないように」と、夜中に一度起こして授乳するようにしました。そうしたところ、毎晩同じような時刻に起きて、泣くようになったのです。 夏が終わりに近づき、夜中の授乳を止めると、その直後の2日ぐらいはちょっと泣きましたが、やがてまた夜通し眠るようになりました。 もちろん、赤ちゃんは十人十色なので、1つのやり方がすべての赤ちゃんに通用するとは限りません。 なかには、新たな環境に適応するのに少々時間を要する赤ちゃんもいます。その場合には、小ぶりのシーツで赤ちゃんをタイトにお包みをしてあげるなど、お腹の中と似た環境をつくり出し、徐々に適応を促すことも重要だそう。赤ちゃんも「住み慣れた」お腹の中に戻ったような気がして安心するのか、ワンワン泣いていたのが嘘のように静かに眠り始めます。 1週間ぐらい続けてからお包みを緩めていき、徐々に慣らしながらフェードアウトさせるのがコツだそうです。 安心の目印を一緒に探そう 赤ちゃんはもちろんのこと、小さな子どもたちがひとりで眠りにつくには、安心できる何かが必要です。たとえば、いつも一緒に寝るぬいぐるみやブランケット、もしくは、寝る前に歌ってもらう子守唄や童謡、本の読み聞かせなど。「毎日持って寝る」とか、「毎日聞いてから寝る」といった習慣をつけることで安心感が増し、ひとりで眠りにつくことができるようになります。 これは、赤ちゃんの「繰り返しを好む習性」にもよるといいます。繰り返すことで安定感を確保し、それが安心感につながるようです。 ママが側にいなくても安心させる方法は、ほかにもたくさんあるでしょう。ぜひお子さんと一緒に見つけ出してください。 (タベ真美)
2015年10月02日フランスの幼稚園ではランチがコース料理としてサーブされます。目的は、小さな頃から食事のマナーをしっかり身につけるため。人と人との繋がりは食を囲むことで強化されるというのはどこの国でも同じようです。 そこでしっかりした振る舞いができることは、一人前の大人として見なされるための必須であり、フランス人のしつけの一部としてあります。 食育って奥深い! コース料理といっても小さな子どもたちが食べるお食事ですから、栄養価が高く、素材の味を生かすシンプルなものが多いのが特徴。それぞれの食材が持つ独特の味わい、香り、食感といったものを実感できるような調理法にこだわることで味覚の発達を促します。 幼稚園の先生が強調された点の中に、盛り付けの色合いがありました。「色彩感覚は、日々の食卓における小さな積み重ねを通じても訓練される」とのこと。先生方のお話を伺ってみて、食育がいかに奥深いものであるのか実感しました。 小さな晩餐会でフルコースを堪能 メニューの一例を挙げると、ひよこ豆と野菜のスープから始まり、モッツレラチーズとトマトの前菜、続いてメインとなるハンバーグと人参やインゲン豆のソテー、デザートにミルクプリン…といった感じです。これにパンとヨーグルトがついてきますが、さすがは世界に誇る農業国だけあり、ヨーグルトはほぼ毎日、チーズも頻繁に登場します。 小さな子どもたちですから好き嫌いもさまざま。でも、嫌いなものを無理してまで食べさせるということはないようです。「食事は楽しむもの。まずは自分がおいしいと思うものから喜んで食べる」というのが基本だとのことです。 テーブルマナーは人としての基本のマナー フランス社会に入ってまず気が付くのが、子どもと大人の世界が明確に線引きされていること。そこで一人前の大人として扱われるには、それなりの立ち振る舞いが要求されます。 その中でも生活の基本となる食事のマナーの重要性は別格。 小さな子どもといえども食事中に騒いだりすることはご法度で、年中さんぐらいの年齢になると先生から厳しい注意を受けることもあります。そのためか、フランスのレストランでは大騒ぎしている子どもを見かけることはめったにありません。こんなところにも、幼稚園での訓練の成果が発揮されているようです。 栄養価の高いものをおいしく、マナーをわきまえていただけるようになることは、しっかりとした大人への登竜門。幼稚園から「コース料理」として実践されるなんて、すてきですね。
2015年10月01日フランスで出産すると必ず聞かれるのが「授乳しますか、しませんか」という質問。フランスでは、授乳するかしないかはママの決断であるという意識が強く、その基準となるのはママがハッピーかどうかということ。 個人の選択こそが最優先 両腕でギュっと抱っこし、愛情に溢れる眼差しで見つめながら、自分の体の一部ともいえる母乳を朝な夕なにあげることは、疑いなく母子の絆強化に役立ちます。ただ、あくまでも手段の1つであり、これに限るものではありません。 個人の自由が尊重されるフランスでは、母子の絆を深める手段においても個人の選択が優先されます。その基準となるのが冒頭で述べた「あなたがハッピーである」ということ。 愛情を込めてミルクをあげることでハッピーな気持ちになれば、それだけで十分に絆は強化されます。実際に、我が家の娘のお友達も全員がミルク組。でも皆、母乳で育った娘となんら変わらず健やかな成長を遂げ、元気いっぱい、笑顔いっぱいの毎日を送っています。 自分のライフスタイルにマッチングさせて 「我が子が可愛くてしかたないけれど、子育てだけでは人生が味気ない…」というのは、昨今、多くのママが抱く想い。 特に、ビジネスの第一線でバリバリ働いたり、情熱をかけて取組むことがある女性の多くは、子育て以外にやりたいことがいっぱい。 でも、母乳をあげていると行動範囲や外出時間に制限がかかるため、思うように人生を愉しめないというのが現実。母乳をあげることで生じる制限がストレスになるなら、一層のことミルクにスイッチするのも一つのアイデアです。 一説には3カ月間授乳すれば母親の免疫が子どもに伝わるので、それ以上あげる必要はないと考えるママもいます。フランスでは3カ月で職場復帰するママも多いことから、母乳で初めても数か月後の職場復帰とともに断乳するケースも多々あります。 子どもはとても柔軟! 我が家の娘は母乳とミルクの混合で育ちました。日中と夜中は全て母乳で、就寝前だけミルクというメニュー。理由はまさしく、ママである私がハッピーでいられるメニューだったということ。 フランスのミルクは日本のものと異なり、とろみを帯びた、大層リッチな舌触りのものでした。そのため、腹もちも良かったようで、飲んだら朝まで起きずに寝てくれました。小さな子どもを持つ親にとって、夜、心穏やかに眠れることぐらい贅沢なことはありません。 母乳でもミルクでも、大切なことは、母が心から愛情を込めて子どもに接するということ。そのためには、母である私たちがハッピーであることが、もっとも大切なことですよね。 (タベ)
2015年08月25日