ライター。テレビ情報誌のアシスタント、編集プロダクション勤務を経てフリーに。主に子育てやくらし系の記事を執筆。研究テーマは80年代の子ども番組「パックンたまご!」とおかっぱ男子。一児の母。
子どもの頃に出会い、親になって再会と、長きに渡って親しまれている国民的人気番組 「おかあさんといっしょ」 。1959年の放送開始以来60年目を迎える今年、 『映画 おかあさんといっしょ はじめての大冒険』 が9月7日(金)から全国公開されます。 作品のコンセプトは「映画館でいっしょに遊ぼう!」。ゆういちろうお兄さんやあつこお姉さんたちが外へ飛び出して繰り広げる冒険から、アニメ「ガラピコぷ~」、おなじみの「ブンバ・ボーン!」もあり、みんなでいっしょに歌って踊って楽しめる体験型の映画です。 アニメパートでは、チョロミー、ムームー、ガラピコがお出かけ先のツムリ星でお姫様のイオとロボットのゴムリという2人の友達と出会います。このイオを演じるのが、関根麻里さん。2歳9ヶ月の女の子のママでもある関根さんに、映画への想いやご自身の子育てについて語っていただきました。 ■アニメ「ガラピコぷ~」仲間がいることの心強さを伝えたい イオとゴムリは、仲の良い友だち。でも、あることを機に二人の間には隔たりが生じてしまいました。やがて、ゴムリはツムリ星を脅かす存在に。ゴムリときちんと向き合いたいと思うイオは、チョロミーたちの協力を得て勇気を奮い立たせ、ゴムリの元へ……。関根さんは、どのような想いでイオを演じたのでしょうか。 ――『映画 おかあさんといっしょ』アニメ「ガラピコぷ~」の声の出演が決まったときのお気持ちを教えてください。 「おかあさんといっしょ」は日頃から娘と一緒に見ている大好きな番組なので、とてもうれしかったです。一方で、アフレコでこんなにたくさんのセリフをいただける役は初めてだったこともあり、正直プレッシャーもありました。緊張のあまり、台本を受け取った夜にアフレコをする夢を見てしまったくらい(笑)。 ――関根さんから見て、イオはどのようなキャラクターですか? かわいくて、友だち想いの優しい女の子だと思います。ゴムリに対して謝りたいという気持ちを持ち続けてはいるものの、勇気がなくて実現しません。 でも、チョロミー、ムームー、ガラピコという仲間を得ることにより、イオは強くなれるんです。イオを見ていると、 仲間がいる心強さや相手に想いをきちんと伝えること の大切さをあらためて感じますね。 ――イオを演じるにあたり、苦労したことはありますか? 私の声があまり高くないこともあり、“イオらしさ”を表現するにはどうしたらいいのか悩みました。かわいらしさの中に緊張感のある声を意識するとともに、監督の指示も参考にするなど、イオになれる方法を模索しました。それから、喉のコンディションを整えるために、ハチミツをたくさんなめました。 ――劇中で関根さんが好きなシーンを教えてください。 やはり、イオとゴムリが出てくるシーンです。二人が仲良く遊ぶ回想部分や心を通わせるシーンなど、どれもグッときます。幼少期のイオがゴムリと唄う歌がとてもかわいいので、ぜひ一緒に口ずさんでほしいですね。 ■子どもの「切り替えスイッチ」で、楽しく子育てする 子育てをしていると思いどおりにならないことも多く、笑顔でいることの難しさを痛感することもあります。ステキな笑顔が印象的な関根さんは、どのような子育てをしているのでしょうか。 ――子育てをする上で、大切にしていることは何でしょうか? 娘は少しこわがりで、何をするにもまずはじっと観察してから行動する慎重派。「ブンバ・ボーン!」も最初は踊らずに観察していたし、滑り台やブランコも段階を踏んでできるようになりました。私は娘の心の準備が整ったときにサポートできるよう、“興味スイッチ”が出るタイミングを逃さないようにしています。 一方で、3歳を前にして、テレビの呼びかけに反応するなど、少しずつ変化も感じられます。この映画には参加型のシーンもあるので、娘がどういうリアクションをするのかがとても楽しみです。 ――2歳9ヶ月というと、コミュニケーションも取れるようになってきますよね? そうですね。自己主張も激しいですが、それは1歳の頃から変わっていません(笑)。ちょっと前まで困っていたのが長靴ブームで、晴れている日でも長靴を履きたがっていました。娘がニュートラルな状態であれば、外の様子を見せて「今日は晴れているから、雨の日に履こうね」と伝えれば納得してくれます。 でも、眠かったり、おなかが空いていたり、一つでもマイナス要素があると「なーがーぐーつーなーのーっ!」と玄関でひっくり返ることも(笑)。しばらく様子を見ても状況が変わらない場合は、長靴を履かせて娘が楽しくお出かけできる方法をとるようにしています。 ――お話を聞いていると、お子さんの気持ちを尊重しているのがよくわかります。 子どもにとって、嫌なことを強制させたくはないですね。食べ物の好き嫌いにしても、私は子どものころに偏食だったので、娘が食べられない気持ちがわかるんです。母は私に無理に食べさせようとはせず、食べられるものから少しずつ範囲を広げていってくれました。私も娘に対して同じようにしています。 それから、2歳くらいの子どもの場合、怒るよりも気持ちを切り替えることが大切だと聞いたことがあるので、娘の 切り替えスイッチを見つける ようにしています。 ■関根勤さん直伝“楽しい貯金”とは ――子どもの気持ちに寄り添いたいと思いつつ、急いでいるとうまくできないこともあります。関根さんにも、そういうことはあるのでしょうか? もちろん、急いでいるときは娘とひともめすることもありますよ(笑)。でも、なるべく楽しく過ごしたいですから、大変なことも笑い話に変えて日々過ごしています。 何かあったときは、家族や友だちに話すようにしています。年齢の近い子どものいる友だちに話すと「わかる、わかる!」と言ってもらえるので、気持ちを共有できる仲間がいるんだと安心します。 ――関根さんというと、お父さまの関根勤さんの笑いを取り入れた子育てが有名です。お子さんを育てる上で、ご両親から影響を受けた部分もあるのでしょうか? 私は「ケツケツダンス」で育てられましたからね(笑)。両親は私に「人生って楽しいんだよ」と知ってほしかったようです。 “楽しい貯金” という言い方をしていて、楽しいことを心にたくさん貯めておけば、つらいことがあっても乗り越えられるという考え方です。 私が両親にしてもらったように、娘にも“楽しい貯金”をたくさん作ってあげたい。映画に行ったり、図書館のお話会に行ったりして、一緒に楽しい思い出を作るようにしています。 じいじ(関根勤さん)と娘は仲がよくて、よく一緒に遊んでくれています。娘にもケツケツダンスをしていますが、娘はまだお尻のおもしろさには気づいていないみたい。 ■関根麻里さんの「お子さんと一緒の映画鑑賞」ワザ ――映画が大好きだという関根さんの“子連れ映画デビュー”について、聞かせてください 確か、娘が生後半年くらいのころでした。赤ちゃんを連れて行かれる映画館の存在を知ったことがきっかけです。上映中も適度に明るさが保たれていて、周りには同じくらいのお子さんを連れた方もいるため、多少話しても動いても気になりませんでした。さいわい娘も眠ってくれたので、私もいい気分転換ができました。 とはいいつつ、じつは、「この時間だったら眠ってくれるかな」と授乳やお昼寝のタイミングをはかったんですけどね(笑)。 <関根麻里さん流「お子さんと一緒の映画鑑賞」ワザ> 1、予告編を観て、どの作品にするか子どもと相談する 2、映画館は、赤ちゃんや幼児OKでおやつや飲み物が持ち込みOKなところを選ぶ 3、作品が決まったら「おやつは何持って行こうか?」と相談して、少しずつ気持ちを高めていく ――小さいお子さんがいると、映画鑑賞はハードルが高いと感じる方もいます。子連れ映画デビューを控えたママたちにアドバイスをお願いします。 『映画 おかあさんといっしょ』は、上映中も適度に明るく音も大きすぎないので、初めてお子さんを連れて行くにはぴったりの作品です。 周りにはみなさんと同じような状況の仲間もたくさんいるので、もし泣いたり、ぐずったりしても大丈夫! 「周りに迷惑をかけたらどうしよう……」とガチガチに構えすぎず、お子さんと一緒に楽しんでくださいね。 『映画 おかあさんといっしょ はじめての大冒険』 9月7日(金)より全国ロードショー ゆういちろうお兄さんやあつこお姉さんたちが、外へ飛び出して大冒険! みんなでバス「おかあさんといっしょ号」に乗っていたら、いつのまにかちょんまげの人がいる町へ…!? アニメ版「ガラピコぷ〜」では、関根さんと同じくゲスト声優で、ロボットのゴムリ役に11代目うたのお兄さんの横山だいすけさんが出演することも見どころの一つ。お子さんと一緒にご家族で楽しめる盛りだくさんの70分です。
2018年09月07日今年で15周年を迎えるプリキュアシリーズ。プリキュア節目の年に満を持して作られた 『HUGっと!プリキュア』 (ABC・テレビ朝日系)の第1話が2月4日に放送された。 ■攻撃よりも抱きしめる? キュアエールの戦い方に注目 中学2年生の野乃はなの元に、空から赤ちゃんとハムスターが降ってきた。その名も「はぐたん」と関西弁を話すお世話係の「ハリー」。突然の状況に戸惑うはなに、ハリーは「これはお前の未来のためやで!」と意味深な言葉をかける。 そんなある日、学校に異変が! 生徒たちが無気力になってしまったのだ。そしてはなが目にしたのは、学校で暴れる謎の怪物・オシマイダーと怪物に向かっていこうとするはぐたんの姿。悪の組織「クライアス社」の指示を受けたオシマイダーは、邪魔をするはぐたんを踏みつぶそうとしていた。 「はぐたんを守りたい!」はなの強い気持ちがあふれると、「ミライクリスタル」という名の結晶が誕生。そしてはなは、チアリーダーのような元気で動きやすいコスチュームに身を包んだ「キュアエール」に変身したのだ。 そんなキュアエールの戦い方は、とても斬新。「敵を応援するの? それとも戦うの?」と見ている側を混乱。しかしなんと武力で敵に挑むのではなく、 敵をも愛で包み込んで 戦意をなくしてしまうのだった。驚くと同時に、「これなら子どもに見せても大丈夫」という安心感にもつながった。 衣装や戦い方からもわかるように、はなは「ポジティブ」「元気」といった言葉を体現している。大人が見るには眩しすぎてつらいかもしれないと思いきや、はなくらい振り切れていると、かえって清々しく感じる。 ■主人公パパは家事レベルが高い! 前髪を切りすぎて落ち込んだり、転校初日の自己紹介で失敗したり、ドジな部分はあるものの、それはほんの一部。冒頭には、はなの人柄をあらわすエピソードが登場する。 転校初日に学校へと急ぐはなが目にしたのは、大きな荷物を背負ったおばあさんめがけて飛んでくるボール。とっさに駆け寄り、額でボールを受け止めたあと、おばあさんを見過ごせずに荷物を運んだ結果、遅刻してしまう。 はなの姿は、お人好しで要領が悪く見えるかもしれない。しかしはなは、先生に注意され、クラスメートから笑われて落ち込んでも「おばあさんを助けなきゃよかった」と後悔はしないのだ。困っている人を放っておけない正義感の強さと愛にあふれたはなだから、プリキュアに選ばれたのだろう。 もう一つ、初めてプリキュアに変身したときのはなは、驚きもうろたえもせず「めっちゃ、イケてる」と言っただけだった。このセリフから、はなが自分の置かれた状況を瞬時に受け止めていることがわかる。 順応性もプリキュアの適正の一つなのかもしれないと思いあたり、ついつい歴代シリーズの第1話をチェックしてみた。変身後すぐにエンディング曲へとつながってしまうシリーズもいくつかあるものの、ほとんどの主人公は変身後の自分の姿に驚いていた。それに比べてはなの大物感たるや…。 野乃家の家庭環境にも注目したい。転校初日の朝、ビシッとしたジャケットを着て「歓迎会で遅くなるかも」とパパに夕飯を託すママ。おそらくママは会社勤めをしているのだろう。パパも「OK。大丈夫」とにこやかに返事をしていることから、野乃家では 家事分担があたり前 のようにされていることがわかる(この部分、ぜひお父さんたちに見てもらいたい!)。 ママは忙しいながらも「前髪を切りすぎた」と落ち込むはなに好物のオムライスを作り、登校時には玄関でハグをする。父と妹も一緒に見送っていた。朝の何気ない風景から、はなが大切にされていることが伝わる。両親から受けてきた愛情がはなのパワーの源になっているのだろう。 ■ちょっと気の毒、悪者組織はブラック会社だった! 悪の組織「クライアス社」の描かれ方も気になるところだ。社員たちのやりとりに、 「(ミライクリスタルが)見つからねば我々は本社に帰れんのだぞ!」 「あのとき、あいつを逃さなければ」 と出てきたことから、これからプリキュアと戦う社員たちは、現在何らかの事情で支社に飛ばされていて、業務を遂行するまで本社に戻れないことがうかがえる。悪者も組織には勝てないようだ。 第1話では、日焼けした肌に「◯◯ッスよ~」とチャラさ全開の社員・チャラリートが下請け(?)のオシマイダーに仕事を発注し、プリキュアと戦わせていた。戦いの最後、キュアエールの愛に包まれたオシマイダーは目をキラキラさせながら「ヤメサセテモライマース」と一言。 ブラックなアルバイト から解放された姿にも見えた。 自分は手を汚さないチャラリートにずるさを感じなからも、「これは始末書もの」の言葉から会社に戻ってからの展開を想像してしまい、悪役ながらも気の毒に思えてしまう。 余談だが、『HUGっと!プリキュア』公式HPのクライアス社の紹介ページには、「ご挨拶」「社員紹介」「会社概要」の項目がある。情報公開はほとんどされていないので、今後定期的にチェックしたい。 ■前作にハマっていた子どもの反応は? 筆者は『HUGっと!プリキュア』の初回放送を前シリーズの『キラキラ☆プリキュアアラモード』からプリキュアにハマった娘と鑑賞した。 ”プリアラ”愛が強い娘だけにシリーズが変わることへの気持ちの切り替えができるかが心配だったものの、まったく支障はなかった。前週に放送された最終回で新旧プリキュアが一緒に戦うという“引き継ぎ”がされたおかげで、すんなりと新シリーズに移行できたからだ。 「『キラキラ☆プリキュアアラモード』のプリキュアには映画で会えるから」と子どもなりに区切りをつけられ、放送前からキャラクターの名前もしっかり覚えることができた。 前髪を切りすぎてしまったはなに「似合ってるよ」と話しかけ、はぐたんが登場するたびに「かわいいー!」とよろこぶ。これまでキュアホイップを名乗っていたはずが、鑑賞後はレゴで変身アイテム「プリハート」を作ってキュアエールに変身。「はぐっとおもしろかったです」と折り紙に感想を書き、早くも次回を楽しみにしている。 キュアエールとしてはぐたんを守ると同時に、はぐたんのエネルギーとなるアスパワワを与える大事なお仕事を託されたはな。すでに強さやあり余るほどの愛を備えたはなが、これから仲間を得て、どう成長していくのかを子どもと一緒に見守りたい。 ■ 『HUGっと!プリキュア』 (ABC・テレビ朝日系) 日曜あさ8時半から ●公式サイト: 朝日放送公式サイト
2018年02月09日「プリキュアも子育てもお仕事だって、ぜーんぶ、がんばっちゃうよ!」 『キラキラ☆プリキュアアラモード』の放送後に流れた新シリーズ 『HUGっと!プリキュア』 の予告編で主人公・野乃はなが発したセリフだ。 ■プリキュア新シリーズは「子どもを守るお母さん」 ごく普通の女の子たちが伝説の戦士プリキュアに変身し、世界征服企む悪と戦うプリキュアシリーズ。2004年2月に『ふたりはプリキュア』の放送が始まり、以降1年ごとに新しいシリーズが誕生している。キラキラとした変身シーンや果敢に敵に挑んでいく姿は、小さな女の子たちにワクワクする気持ちや憧れを抱かせてくれる。 そして、2月4日(日)から放送を開始するのがシリーズ15作目となる『HUGっと!プリキュア』(ABC・テレビ朝日系)だ。今回のテーマは、ずばり 「子どもを守るお母さん」 。 超イケてる大人のお姉さんに憧れる中学2年生の野乃はなの元に、空から赤ちゃん「はぐたん」とお世話係のハムスター「ハリー」が降ってきたことから物語は動き始める。 はぐたんを守りたいという強い気持ちによって、はなはプリキュア・キュアエールに変身。キュアアンジュ(薬師寺さあや)やキュアエトワール(輝木ほまれ)と共に、みんなの未来を守るために立ち上がる。 ■プリキュアの子育て事情にイケメンのイクメンも登場 これまでの「つよく」「かっこいい」ヒロイン像に、母として子どもを守る愛の力が加わった『HUGっと!プリキュア』。女の子たちは、これまでプリキュアとして世界を守るために悪に立ち向かってきた。十分にがんばっているのに、そのうえ子育てまで…? プリキュア、がんばりすぎだよと口を挟みたくたくなるが、まずは『HUGっと!プリキュア』を見るときに個人的にチェックしたいポイントを紹介する。 ●プリキュアの子育て事情 物語の中で子育てがどう描かれるのかは気になるところ。「最近、はぐたんの夜泣きがひどくて寝不足なんだ」「離乳食を始めたけど、全然食べてくれなくて」と子育てによくある悩みが、はなの口から出ることもあるのだろうか。これまで、どちらかというと娘の好きな番組として見ていたプリキュアに、ママが共感を覚える日もくるかもしれない。 ●はぐたんの成長具合 物語のキーになる存在のはぐたんの成長具合も見どころだ。まずは、はぐたんが生後何ヶ月くらいなのかが気になる。おすわりはできるのか? ミルク以外に口にできるものはあるのか? など、はぐたんの動向をチェックして観るのも面白そう。 ●イケメン(イクメン)も登場! はぐたんのお世話係のハリーは、関西弁を話すハムスター。人間体に変身するとものすごいイケメン(イクメン)になるそう。 「イクメン」に関する是非はあるにせよ、イケメンがはぐたんのお世話をする姿はきっと絵になるはず! 子育てをめぐって、はなとハリーが口論するところもぜひ見てみたい。 ■ママが新プリキュアにハマる!? ここまで書いてきたが、ママがプリキュアにハマるにあたり、ちょっとしたハードルもある。登場人物の名前が覚えきれないことだ。興味のあることをぐんぐん吸収できる子どもの脳とはちがい、大人にとってたくさんの固有名詞を覚えるのは至難の業。しかし、できればがんばって覚えてほしい。理由は二つある。 <プリキュアの固有名詞を覚えたい理由> ●物語が楽しめる! プリキュアシリーズは登場人物一人一人の背景を丁寧に描いているため、名前と顔がわかっていれば物語をより楽しめる。 ●心痛める子どもの気持ちを切り替えられる! 慣れ親しんだ『キラキラ☆プリキュアアラモード』が終わってしまうことに心を痛める子どももいることだろう。親がプリキュアに興味を持ってくれていることがわかれば、子どももうまく気持ちを切り替えられるのではないだろうか。 筆者のケースでは、娘から毎日のように「キュアホイップは誰でしょう?」「琴爪ゆかりはキュア何でしょう?」とプリキュアに関する名前クイズを出される生活を送っていた。「えーと、宇佐美…ひまり?」と間違えた回答をすると怒る鬼教官の特訓のおかげで、自然と(?)覚えられたのだった。 子育て事情や赤ちゃんの成長など、気になるポイントがたくさん詰まった『HUGっと!プリキュア』には、従来どおり仲間との友情や夢などのテーマも描かれている。 今作に限っては「プリキュアがんばって!」と応援する子どもの横で、ひっそりと「がんばりすぎなくていいよ」と思ってしまうママたちもいるかもしれない。小さな女の子たちに夢や勇気を与えてくれたプリキュアが、一緒に見ているママたちの心にも寄り添った内容であることを期待する。 ■ 『HUGっと!プリキュア』 (ABC・テレビ朝日系) ●放送日時:2018年2月4日(日)8:30~放送スタート ●公式サイト: 朝日放送公式サイト
2018年02月02日青年誌『モーニング』(講談社)で連載中の漫画『コウノドリ』。産科医の鴻鳥(こうのとり)サクラを主人公に、周産期医療の現実と、医者や家族の心の動きが丁寧に描かれています。 「無脳症」や「夫のDV」など、ときには読み進めるのがつらくなるテーマを扱いながらも読者の支持は高く、青年誌での連載にも関わらず、お母さんたちにも多く読まれている作品です。6月にはコミック第18巻が発売され、2015年にはTBSでドラマ化もされました。10月にはドラマの続編が決定していることからも『コウノドリ』の反響の多さがうかがえます。 『コウノドリ』を描き続けるうえで大切にしていることや伝えたいことは何か。原作者の鈴ノ木ユウ先生に聞きました。 ■ドラマ化が決まってもよろこびすぎない理由 ―『コウノドリ』ドラマ化の続編が決まりました。お話を聞いたときの心境はいかがでしたか。 「ああ、そうなんだ」という感じで、よろこびすぎずに目の前の締め切りに集中するようにしていました。「やったー!」と両手をあげてよろこんだのに「やっぱり映像化の話はナシになりました」と言われたとき、上げた手を下げるのは恥ずかしいじゃないですか(笑)。 ―ご自身の作品が実写化されたことで、何か変化はあったのでしょうか。 鴻鳥先生を演じる綾野剛さんには、少なからず影響を受けています。鴻鳥先生は個性が強いキャラクターというわけではないので、漫画的には描きにくいんです。綾野さんに形にしてもらったことで、描きやすくなった部分はあると思います。 ■命の誕生や出会い…『コウノドリ』執筆に至る経緯 ―息子さんの誕生が『コウノドリ』を描きはじめるきっかけのようですね。 息子の出産に立ち会ったことは大きかったです。とはいっても、がんばっていたのは妻で、僕は助産師さんに無理やり分娩室に連れて行かれてすみっこでプルプルしていただけでしたが…(笑)。 僕は息子のことがとにかくかわいいと思う一方で、子どもをもつ親として出産に関して何も知らなかった。入口となったのは、「なんで逆子だと帝王切開になるんだろう」という疑問。親としてそれくらいは知っておくべきだろうという気持ちが「描きたい!」につながったんでしょうね。 ―作品のテーマを探している時期でもあったのでしょうか。 そうですね。僕はフォークシンガーということもあり、『コウノドリ』を描く前は音楽ものの漫画を短期連載していました。雑誌の編集者から「人気ランキングで11位に入ったら本格的に連載してもいいよ」と言われたものの、結果は12位。「(連載してもしなくても)どちらでもいい」と言われたので、それなら連載はやめて新しいテーマを探すことにしました。 ―りんくう総合医療センター産婦人科部長の荻田和秀先生との出会いもありました。 息子を取りあげてくれたのが荻田先生でした。妻が先生からピアニストの名刺をもらったと聞き、「ピアニストで、産婦人科で、“ゴールドフィンガー”だ!」と先生をモデルに漫画を描こうと思いました。 妻の幼なじみが産婦人科医だったことも関係しています。その友人は、病院からの呼び出しがあるから、銭湯に入るときもポケベルを持っているそうです。産婦人科医ならではともいえるエピソードを聞いて、「漫画で描いたらおもしろいんじゃないか」と妻と話しました。 ―実際に、産婦人科に取材にも行かれているそうですね。 りんくう総合医療センターには、1年に2回くらいの頻度で取材に行き、荻田先生が大阪から上京されるときには食事をすることもあります。取材のときは、産科や麻酔科、救命救急科を1日で回らないといけない。その場の空気や雰囲気をできるだけ体に入れようと思っているので、終わるとすごく疲れますね。 ―実際に分娩も見学されたとか。 帝王切開や自然分娩など、たくさんの出産を見学して、出産は一人ひとり違うものだと感じました。じっと痛みに耐える人もいれば、痛さに耐え切れず叫ぶ人もいる。改めて、女性はすごいと思いました。僕は低血糖になってしまいましたけど(笑)。 ■思い描いていたのとは違った! 息子誕生エピソード ―『コウノドリ』からは、分娩時の音や声が聞こえているのかと錯覚するほどの臨場感が伝わってきます。 取材を通して、さまざまな出産を見てきたからかもしれません。状況的に難しいこともあり緊急帝王切開は見学したことがありませんが、先生の話を聞いて写真を見せてもらい、自分でイメージをふくらませて描いています。 あとは、やはり妻の出産のときの印象が強く残っています。妻はどちらかというと難産で、息子が生まれるまでに丸2日かかりました。最後には先生が妻に馬乗りになっていたくらい。これまで自分が思い描いていた出産とはちがい、まさに戦場のような光景。僕は何もできずに遠くから眺めていたら、突然「バチン!」という音が聞こえて、息子が生まれました。 ―赤ちゃんを最初に見たときは、どう思われましたか? 「汚ねえな」でした(笑)。赤ちゃんってもっときれいなものかと思っていたけど、実際には血液や白い膜がついているんですよね。そのうえ、「甲府のガッツ石松」といわれる僕の父と似ていたので、「ああ、こっちか…。ごめんね」と思ったくらいです(笑)。 気持ちが変化があらわれたのは、初めて抱っこしたとき。「ちゃんと育てられるのか」「仕事しなきゃ」という気持ちと同時に「生きているんだ」という実感もわき起こり、体が震えました。分娩時のことや子どもが生まれたときのことは、作品を描くうえですごく大事にしています。 ―息子さんに話すこともあるのでしょうか。 「おまえが生まれた日は雨が降っていて〜」と、息子の誕生日には毎年話すようにしています。息子は9歳なので、さすがに「またかよ」という反応はされるものの、うれしそうな顔もしているのでまんざらでもないのかなと(笑)。 ―毎年、家族で共有できるのはいいですね。 大事なことなので、忘れてはいけないと思っています。妻は必死だったから覚えていない部分もあるけど、僕は鮮明に覚えている。出産が夜中に終わって、妻がやっと食事ができるとなったときのおかずがチャーハンだったことや、僕が帰りにカツ丼を食べに行ったことまで話します。家族で話をしたあとケーキを食べるのが誕生日の過ごし方ですね。 ―最後に「ウーマンエキサイト」の読者にメッセージをお願いします。 『コウノドリ』には、扱うテーマによっては読み進めるのがつらくなることもあります。誰もが読める漫画とは思っていないので、「ぜひ読んでください!」とは言えません。ただ、読んだあとに「家族がいてよかった」と感じてもらえたらうれしいですね。 『コウノドリ』には、妻の妊娠・出産に無関心な“ダメ旦那”も何度か登場します。自身も「ダメな旦那だった」という鈴ノ木先生ですが、青年誌で描くことで「自分はこうならないようにしよう」と思ってもらえたらいいと話していました。 命の尊さを再確認するとともに、子どもをより愛おしく感じられる。『コウノドリ』を読んだあとにそう思えるのは、息子の誕生時の記憶をいまも心に刻み続ける鈴ノ木先生の想いを受け取っているからなのかもしれません。 コウノドリ
2017年10月09日劇団・大人計画所属の俳優で複数の雑誌に連載をもつ文筆家、そして音楽家でもある星野源。出演したドラマは放送されるたびに話題となり、同ドラマの主題歌『恋』は、「恋ダンス」とともに社会現象に。 彼の一挙手一投足が注目され、ニュースとして取り上げられる。なぜ私たちは、星野源から目が離せなくなってしまうのか。 毎週木曜日にNHK総合で放送中の音楽番組「SONGS」では、星野源の音楽家としての活動を特集した「SONGSスペシャル」を2017年9月28日(木)に放送決定! 通常より番組を25分拡大した50分というボリュームでお届けする。 今回は、星野源Live Tour 2017『Continues』の千秋楽の模様を紹介。2017年9月10日(日)に行われたさいたまスーパーアリーナ公演から選りすぐりのライブ映像がSONGS独占で放送される。 星野源の「ライブ愛」を代弁するのは“おげんさん”。2017年5月にNHK総合で放送された「おげんさんといっしょ」で星野が演じたキャラクターだ。父親役を高畑充希が演じ、長女役を藤井隆、長男役を細野晴臣、ねずみの声を声優の宮野真守が担当と豪華なのにちょっとおかしな配役も話題となった。前回の放送では、昭和のお茶の間風のセットで、長女役の藤井隆が不安になるほどのグダグダ感を漂わせながら進行された。 番組内で、自身の音楽活動に影響を与え続けているマイケル・ジャクソンや細野晴臣のアーティストとしての魅力を愛情たっぷりに語っていた“おげんさん”。大好きだという細野の曲「絹街道」を本人と一緒に歌った後、“おげんさんの家”に戻っても口数少なく心ここにあらずといった状態に。あのときの胸いっぱいな表情が忘れられない。 マイケル・ジャクソンに惹かれたきっかけは「なんかちょっと寂しそうな感じがした」からだそう。「埼玉で寂しかった」と語る子どものころの“おげんさん”は、同じく寂しさを抱える世界的なスターにシンパシーを感じたと語っていた。マイケルへのオマージュだという『SUN』には、「Hey J」と語りかける歌詞も登場する。 2009年に出版された初エッセイ『そして生活は続く』(マガジンハウス)に、印象的なエピソードがある。子ども時代、星野の母親は風呂に入れば「排水口に吸い込まれる!」と叫び、外から“さおだけや”の声が聞こえれば「行かなきゃ!」と出て行ってしまったという。その度に星野は本気にし、ときには泣くこともあったそう。大人になって、かつての母親の不思議な行動の理由を聞いたところ、学校から帰ってくる息子の顔が日に日に暗くなるので、せめて家の中だけは明るくしようとしたのだとか。 星野源からときおり伝わる孤独や寂しさ。それらを子ども時代に母からしてもらったのと同様に「くだらなさ」や「明るさ」で包み込み、曲や歌詞、ダンスに昇華しているようにも感じられる。だから私たちは、星野源に惹かれてしまうのかもしれない。 星野源の曲をたとえるなら、「どこか懐かしいのに、聴いたことがない曲」。 「イエローミュージック」というジャンルを作り、自身が吸収してきた音楽を自分の音楽として新しく形にする。「自分たちにしっくりくる音楽を作りたい」という葛藤を経て生まれた曲は、私たちのくらしに自然に馴染んでいる。 「SONGS スペシャル」では、星野源が弾き語りに込めた想いやダンスへのこだわり、ライブツアーの選曲・構成などを“おげんさん”が語ってくれるそう。“おげんさんちのねずみ”が情報発信する公式Twitterでは、最新情報に加え、“おげんさん”からのビデオレターも見られるので、ぜひチェックしてほしい。 【番組概要】 ●番組名:NHK総合「SONGSスペシャル 星野源」 ●放送日時:2017年9月28日(木)22:25~23:15 ●ゲスト:星野 源 ●公式サイト:
2017年09月26日小学校の夏休みとともにやってくる、宿題の定番・自由研究。イベントやワークショップの参加を検討したり、図書館やインターネットなどで情報収集をしたり、テーマ決めに向けた行動を開始している家庭もあることでしょう。 子どもが興味をもてるテーマが見つけられずに困り果てているお母さんにオススメしたいのが、 『夏休み! 発酵菌ですぐできるおいしい自由研究』 (あかね書房)です。味噌や納豆、ヨーグルトなどの発酵食品のつくり方をわかりやすい文章やイラスト・写真で教えてくれます。 著書の 小倉ヒラク さんは、 発酵デザイナー という不思議な肩書きの持ち主。微生物学の研究や一般向けの 麹づくりワークショップ など、目には見えない菌を見えるようにする活動を広く行っています。そんなヒラクさんに 発酵食品のおもしろさ や ポイント を聞きました。 ■見えない菌を育てる! 発酵食品をつくるメリット 菌の働きによっておいしさがアップすることに加え、保存性を高められるといいことづくしの発酵食品。自由研究のテーマとどう結びつくのでしょうか。 「発酵食品は、料理とサイエンスという二つのジャンルにわけられます。僕の専門は微生物学のため、本書は料理よりも菌を育てることに重点を置いているんです。発酵食品づくりの魅力は、 生き物の反応 がわかること。観察していると、菌が魔法のように食べ物をおいしくする過程を楽しめます。 たとえば、パンをふくらませるための酵母をつくる場合、瓶の中に果物と水と砂糖を入れて酵母菌を呼び込みます。発酵が進むと酵母がシュワシュワしてくるので、菌が元気に育っている様子を実感できます。『ここに菌がいるんだ!』と子どももワクワクしてくれますよ」とヒラクさん。 目に見えない菌の存在を言葉だけで説明しても、子どもはうまく想像できません。実践を伴うことにより、菌の存在や自然の力に対するイマジネーションを育てられる。ワークショップを通じて多くの子どもたちと接するなかで、ヒラクさんが感じたことだそうです。 もうひとつ、発酵食品づくりで得られるものがあるそうです。 「現在の学校教育は、出題者の意図を汲み取って答えを出す力を要求されることが多く、 『よく観察すること』 を教えてもらえる機会が少ないと感じています。人の予想を大きく上回る現象が起こりうる生物学では、主観は邪魔になることも多い。 発酵食品づくりは、“ただ観察をして目の前に起こっている事実を受け止める”トレーニングになります。つまり、生物学の基本を学ぶことができるんです」 ■思い通りにいかないのが菌の魅力 失敗も楽しんでしまおう! 本著で紹介している発酵食品は、比較的簡単にできる ヨーグルト から少しレベルの高い 麹 まで、難易度もさまざまです。しかし、学年や年齢の設定はとくにないそうです。 「年齢で区切るよりも、子ども一人ひとりが持つ 好奇心の度合い によってできる範囲が変わってくるからです。それから、親の関わり方も大きい。発酵が進む過程で見た目や匂いが変わると、不安になる子どももいます。親が『それでいいんだよ』と声をかけて一緒におもしろがってくれると、子どもも先に進める。親と楽しみながらだと、5歳くらいでも難易度の高い味噌づくりに挑戦できるんですよ」 本著で紹介する味噌は、夏休み中に完成できるように麹を多めに使ったアレンジレシピ。仕込みから40日で完成します。手前味噌を使ってお味噌汁をつくれば、嫌いな野菜も食べてくれるかも? 「食べ物を自分でつくることって大事ですよね。現在、絶賛イヤイヤ期で汁物を拒否している僕の娘も、一緒につくったスープならたくさん食べてくれる。発酵食品は 最高の食育 になるんじゃないかな」 菌をうまく育てられるか、ばい菌にしてしまうかのカギを握るのが 温度管理 。夏は、発酵商品を仕込むのに適した季節だとヒラクさんはいいます。 「菌が元気になるのは、 30℃前後 の温度です。冬場に仕込んだら4、5日くらいかかるヨーグルトも、真夏なら翌日にできます。一方、放置しすぎると腐ってしまうので、本に書かれた時間を守ってつくってくださいね」 直射日光の当たる場所やジメジメした場所には置かないことも腐らせないためのポイントです。ヒラクさんのオススメは、オープンシェルフや本棚の一番上の段。風通しがよく、空気がよどんでいない場所を 「発酵棚」 にするといいそうです。 とはいえ、生きている菌が人間の思い通りになるとは限りません。ときには菌がうまく育たずに腐ってしまうこともあります。 「失敗も失敗で楽しいんですよ。発酵がうまくいかないと、臭くなったり、ドロドロしてしまったりするけど、子どもは『くせえ!』とかいいながら意外とよろこんでいる。僕のワークショップでも、失敗すると逆に盛り上がることもあるくらいです」 「食べ物がくさるとはどういうことなのか」「失敗から発見できることもある」など、事前に本を読み失敗したときの対処法を親が把握しておくことも大切です。見えない生き物との生活を親子で楽しめれば、うまくいっても失敗しても学びの多い自由研究になりそうです。 目に見えない菌たちの働きを実感できる発酵食品づくり、ぜひ親子で観察してみませんか? \発酵って楽しそう! と興味が湧いた方に、ぴったりのイベントが開催/ 夏休み!歌って踊る手前みそ 〜『発酵菌ですぐできる おいしい自由研究』出版記念イベント〜 『発酵菌ですぐできる おいしい自由研究』の出版を記念して、小倉ヒラクさんがイベントを開催! はじめての人でもカンタンにできる手前味噌づくりをはじめ、オリジナルアニメ『てまえみそのうた』を使ったダンスワークショップ、発酵レクチャーなど、盛りだくさん! 夏休みの自由研究に、思い出に、ぜひ親子で参加してみませんか。 日時:2017年8月11日(金) 10:00開場 10:30スタート 料金:¥3,500(手前みそキット1kg付き) 詳細ページ: 『夏休み! 発酵菌ですぐできるおいしい自由研究』 小倉ヒラク (著)/あかね書房 1,000円(税別) 小倉ヒラク プロフィール 1983年東京生まれ。発酵デザイナー。自身の体調不良を機に発酵食品に出会い、東京農業大学の醸造学科研究生として醸造学を学ぶ。全国各地の醸造家たちと商品開発や絵本、アニメの制作やワークショップを行うと同時に、自由大学や桜美林大学等の一般講座で発酵学の講師もつとめる。 著書に、「てまえみそのうた」「おうちでかんたん こうじづくり」(農山漁村文化協会)、「発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ」(木楽舎)。一児の父でもある。
2017年08月02日仕事が終わったら、保育園や自宅への移動時間で“おかあさんスイッチ”をオン! 家族の夕飯の支度や子どものお風呂、歯みがきなど、働くママたちは帰宅後も任務をたくさん抱えています。 日々の暮らしをどう組み立てていけばいいか、悩んでいるママたちに紹介したいのが、書籍 『かあさんの暮らしマネジメント』 (SBクリエイティブ)です。 ガラス作家のイイノナホさんや「くらすこと」主催の藤田ゆみさんなど、8人の「働くかあさんの 暮らしのマネジメント術 」がまとめられています。 著者の 一田憲子 さんは、専業主婦や料理研究家など、さまざまな人たちにインタビューを行い、その習慣を紹介する 「暮らしのおへそ」 シリーズも手掛けています。 一田さんが仕事やプライベートでたくさんのかあさんたちに出会い、日々を乗り切る術に感銘を受けたことから生まれたという本著で紹介されている「かあさんの暮らしマネジメント術」の一部をご紹介しましょう。 ■「1日を100%使い切らないのが自分を潤すためのコツ」(りょうこさん) 「1日を100%使い切らないのが自分を潤すためのコツ」。これは、二人の息子さんを育てながらフルタイムで働くりょうこさんが、マネジメントの基本にしていることだそうです。 1日をフルに活用しようとすると、体力・気力ともに消耗してしまうこともあるものです。取り込んだ洗濯物をたためずに山ができていたり、食器を洗えないまま子どもと一緒に寝落ちしてしまったり…。仕事と家事、育児をうまく回せずに自分を責めてしまう人もいることでしょう。 あれもこれもと作業を詰め込みすぎず、1日の中で30〜40%くらいの 余力 を残しておく。そうすれば、「やること」「やらなくていいこと」も選択しやすくなります。時間にも余裕ができるため、子どもとゆっくり向き合ったり、読書をしたり、平日の夜も心穏やかに過ごせそうです。 ■「任せたら口出ししないのが、『やってもらうシステム』をつくるコツ」(石渡深里さん) 産業医の石渡深里さんの家では、家事の一部を夫や子どもたち(7歳、5歳)がやっているそうです。ときには、7歳の長女が朝食づくりを担当することもあるのだとか。 夫婦間の家事・育児の分担は、働くおかあさんたちにとって関心の高いテーマのひとつです。仮に夫が協力的な場合でも、やり方が気に入らずに結局自分でやってしまうというケースも。しかし、それではおかあさんばかりにしわ寄せがいってしまいます。 石渡さんも夫のやり方に対して「私だったらこうする」と思うことはあるものの、そこまで相手に求めないそうです。口を出すよりも、 相手のやり方を尊重して任せる 。それは、子どもたちに対しても同様のようです。 「任せる」ことで互いに信頼も生まれるうえに、一人ひとりが自発的に動くようにもなる。家庭内の雰囲気もぐっとよくなりそうです。 ■「いいおかあさん」よりも「ご機嫌でいること」を目指す このように『かあさんの暮らしマネジメント』で紹介されているかあさんたちは、職種も立場もさまざまです。一田さんが序文で触れていた、かあさんたちのマネジメントの目的が印象的でした。 今回、8人の働くおかあさんたちにお話を聞いてみると、なんと、みんな目的が同じでした。それは、自分自身を 「ご機嫌に」 すること。 出典: 『かあさんの暮らしマネジメント』P3 「いいおかあさんであること」を目的にしてしまうと、できないときに落ち込んでしまうこともあります。自分自身が機嫌よくいられるためには、潔く手放すことも必要だとかあさんたちはいいます。 育児や家事、仕事などで苦しい時期を経験してきたかあさんたちが悩みながら見つけた方法は、等身大のものばかり。「これなら自分でもできそう」と思えることでしょう。忙しいママたちが、ご機嫌でいられるための ヒント が詰まった一冊です。 『かあさんの暮らしマネジメント 仕事、家事、人生をラクに楽しくまわすコツ』 一田憲子 著(SBクリエイティブ) 一田憲子 編集者・ライター。OLを経て編集プロダクションへ転職したのち、フリーライターになる。さまざまな職種の人へのインタビューを通じて、暮らしまわりの記事や生きるヒントなどを読者に届けている。著書に『暮らしのおへそ』(主婦と生活社)、『「私らしく」働くこと』『ラクする台所』(マイナビ)など。新刊は『わが家のお金を、整える』(主婦と生活社)。WEBサイト「外の音、内の香」を運営。 「外の音、内の香」: Instagram: @noriichida Facebook:
2017年06月07日晩ごはんにお風呂、歯みがきなど、働くママは帰宅後も複数ミッションを抱えているものです。なかでも、ママたちを悩ませるのが日々の晩ごはん。献立を考えたり、ぐずる子どもをあやしながら慌てて支度をしたり…。日々の負担を軽くすべく、 週末 に 常備菜 を作っているママも多いのでないでしょうか。 一方で、「週末は常備菜作りに時間をとられてしまい、 子どもと過ごす時間 が少なくなってしまう」、「毎日同じおかずが続くと、 食べ飽きて しまう」と常備菜にまつわる 悩み もあるものです。 そんなお悩みを解決する書籍 『子どもと食べたい常備菜入門』 を出版されたばかり、オーガニック料理教室「ワクワクワーク」代表の 菅野のな さんが考案するレシピは、ほとんどが調理時間 20分以下 でできるもの。 料理が苦手なママにもできて、子どもも食べられる 常備菜を2品 、菅野さんに教えてもらいました。 ■作業時間はたったの5分! 基本常備菜「なすの塩炒め」 菅野さんのレシピは、 基本常備菜 に アレンジ を加えていくスタイル。まずは、基本となるレシピをご紹介しましょう。 ▼「なすの塩炒め」 作業時間 5分 <材料 500ml の容器1個分> なす 4本 油 大さじ2 塩 ふたつまみ <作り方> 1、なすはヘタをぎりぎりのところで切り落とし、縦半分に切ったあと、さらにひと口大に切ります。 2、フライパンに油を入れて中火にかけ、なすを丁寧に炒めたら、塩を加えてさらに炒めます。粗熱をとり保存容器に入れ、冷蔵庫で保存します。 「なすは、火が通っていると作業時間を短縮しやすいのが特徴。ヘタ以外は無駄なくいただきましょう」(菅野さん) ■なすの塩炒めのアレンジレシピ「ガーリックパン粉焼き」 続いては、基本常備菜を使った展開レシピです。 「教室の人気メニュー。イワシやアジの3枚おろしを並べてもおいしいです。焼けてくるときの香りがたまりません」(菅野さん) ▼「ガーリックパン粉焼き」 作業時間 10分(オーブンの焼き時間除く) <材料 2人分> なすの塩炒め 1/2本分 パン粉 大さじ4 にんにく 1/2かけ オリーブオイル 大さじ2 塩 ふたつまみ バジル 適宜 かぼちゃ 30g トマト 1/6個 <作り方> 1、オーブンを200℃に予熱しておきます(オーブンによって200〜220℃で温度の調節をします)。 2、ボウルにパン粉、みじん切りにしたにんにく、塩、オリーブオイルを加えて混ぜておきます。お好みで刻んだバジルを入れてください。 3、耐熱皿に薄く油(分量外)をぬり、なすの塩炒め、薄切りにしたかぼちゃ、角切りにしたトマトを並べます。 4、(3)に(2)をのせて、オーブンでおいしそうな焦げ色がつくまで15分ほど焼きます。 ■シンプルな味付けで、ママのゆとりも生まれる 菅野のなさんの新刊『子どもと食べたい常備菜入門』(辰巳出版)には、ひとつの基本常備菜につき、 3種類のアレンジレシピ が掲載されています。 毎日続けられるためのポイントとなるのが、菅野さんレシピの特徴でもある素材を生かした シンプルな味付け 。複数の調味料を計量する手間が省けるため、晩ごはん作りがぐっとラクになります。 ごはん作りの負担が軽くなった分、ママには 豊かな時間 を過ごしてもらいたいという菅野さんの想いが込められているそうです。 常備菜作りに行きづまったときには、 「常備菜の分析シート」 をチェック。現在の状況を書き出して把握するとともに、解決策も提示してくれています。 料理が苦手なママに寄り添った内容になっているため、 「私にもできそう」 と思えることでしょう。まずは、毎日1品作るところからスタートして、無理なく続けてみてくださいね。 【参考書籍】 『子どもと食べたい常備菜入門』 菅野のな著(辰巳出版) 菅野のな オーガニック料理教室「ワクワクワーク」代表。ミュージシャンで自由人の父と病院勤務の管理栄養士で東洋医学を実践する母により、有機農家支援、家庭菜園や自然療法を身近に感じて育つ。大学卒業後、ITベンチャー企業に入社するも、連日のハードワークで体調を崩し、食と健康の大切さを再認識。2007年に母と「ワクワクワーク」を設立。「朝日新聞デジタル」でのおやつレシピ連載のほか、料理教室講師の育成、オーガニック食品の開発など、多岐にわたって活動中。著書に『子どもと食べたい時短おやつ』(辰巳出版)。 レシピ写真=安岡花野子、プロフィール写真=田中しいれい
2017年06月02日入園・入学などを目前に控えた春。大人が付き添っていた保育園・幼稚園の送り迎えから一転、小学生になったら子どもがひとりで歩く機会も増えることでしょう。 内閣府の「 平成28年版 子ども・若者白書 」によると、平成27年度の福祉犯(青少年の心身の成長に有害な影響を与える犯罪)の被害者数は前年度と比べて減少しているものの、児童ポルノの被害者数は増えているそうです。我が子が登下校中に危ない目にあわないか、親としては心配です。 子どもが犯罪に巻き込まれないためには、どうすればいいのでしょうか。立正大学の小宮信夫教授に話を聞きました。 小宮信夫 教授 立正大学 文学部 社会学科教授(社会学博士) ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。地域安全マップの考案者。代表的著作は『写真でわかる世界の防犯 遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館) 公式サイト: 小宮信夫の犯罪学の部屋 。 ■防犯ブザーで防げる犯罪は、1割から2割程度 お母さんたちが子どものころ、大人から「怪しい人に気をつけてね」「知らない人にはついていかないように」と言われたことはありませんか? まずは、その考え方をリセットするところから始めましょう。 そもそも、「不審者」がどういう人かは大人でもうまく説明できないものです。大人が教えられないなら、子どもにだってわからないですよね。犯罪者は子どもを騙して連れ去るケースが多いため、サングラスにマスクのような、見るからに怪しい雰囲気を出してはいません。顔見知りという可能性だってあるのです。 防犯ブザーは、持たないよりは持たせた方がいいです。しかし、防犯ブザーが役に立つのは子どもが突然襲われるケースに限られるため、防げる犯罪は1割から2割程度だと思ったほうがいいでしょう。 子どもに危険を察する能力をつけるには、 「人」ではなく「場所」 を見るよう教える必要があります。場所といっても、「何丁目の何番地の公園が危ない」と特定するのではありません。犯罪者の多くは犯行を行う際に、地図や人ではなく 景色を見て決める といわれています。ですから、「景色」の中で、安全と危険を識別できる力を子どもに身につけさせるのです。 ■段階を踏んで説明しよう! 子どもの興味を引く伝え方を意識すると◎ 子どもに場所についての説明をするときに、小学校高学年なら理論的に説明しても大丈夫です。一方、お子さんが未就学児なら、まずは事件が報道されているニュース番組などを見て、「怖いね」と話すところからスタートするといいですね。 子どもが怖いと感じたら、「怖い目にあわないためには、どうしたらいいのかな?」と聞きます。 大人がすぐに答えを出さずに、まずは子どもに考えさせましょう。 そこで具体的に考えだしたら、初めて場所の話をします。 「じつはあるんだよ、とっておきの方法が。これはまだ、ほとんどの子どもが知らないんだ」と伝えれば、子どもは興味をもって聞いてくれるはずです。 ■キーワードは「入りやすく」「見えにくい」 危ない場所には、 「入りやすく」「見えにくい」 という特徴があります。これには、 物理的・心理的両方の意味 が含まれます。 たとえば、 ガードレールのある道は、「入りにくい」場所 に分類されます。子どもの連れ去り事件は車を使うケースが多いのですが、ガードレールがあれば、子どもとの間に障害ができます。また、車に乗るためには、ガードレールの切れ目まで迂回しなくてはいけません。時間がかかれば他の人に見られる可能性が高くなるうえ、子どもが「変だな」と考える間も生まれます。 一方、 田んぼに囲まれた道や1階が駐車場になっているマンションの前の通りは、「見えにくい」場所 です。住宅が密集している場所でも、塀が高くて、家の窓から道路が見えなければ同じです。 マンションのエレベーターは「入りやすく」「見えにくい」 場所にあたります。子どもがひとりで乗るときは、ボタンの側に壁を背にして立ち、すぐにボタンを押せるようにするのがポイントです。「警戒していますよ」というメッセージを発信すれば、犯行を躊躇する可能性が高まります。 子どもに関する事件のニュースで事件現場の映像を見せて考えさせるのも一案です。場所に関する前情報がなく、単純に景色だけを見られるからです。 未就学児の場合、一度に全てを伝えても覚えきれません。1ヶ月に1項目ずつ教えるくらいがいいと思います。 ■応用問題を出して、子どもの理解度をチェック! 「入りやすい」「見えにくい」 場所をひと通り伝えたら、お子さんに応用問題を出してみましょう。頭ではわかっているつもりでも、じつは理解できていない可能性もあるからです。 Q1:学校からの帰り道に車に乗っている人から声をかけられました。「あなたの小学校までの道を教えてもらえるかな? この辺に引っ越してきたばかりだから、道がわからないんだよ」と言われたら、どうするのがいいでしょうか? A1:まずは原点にかえって、 「人」ではなく「景色(場所)」 をチェックしましょう。声をかけられたのがたくさんの窓が見える通りやガードレールの内側にいるときなら、答えてOK。一方、高い塀が続く通りやガードレールのない道にいるときなら、「急いでいるから」と立ち去りましょう。 誘拐のリスクを考えて、どんなときでも「答えなくていい」と教える大人もいますが、私は反対です。知らない大人ともしっかりコミュニケーションを取れる子どもは、騙されにくくなるものです。 Q2:下記の図は、公共施設のトイレです。(A)と(B)のうち、どちらが危ない場所になるでしょうか? A2:(A)が危ない。女子トイレが手前にあれば、男性が後ろから近づき、女児と一緒にスッとトイレに入り込むことができます。一方、(B)は、女子トイレが奥まったところにあるので(=入りにくい場所)、犯人が女児を連れ込もうと思ったら奥までついてこないといけません。子どもが「何でついてくるのかな?」と気づく可能性があり、一緒に入り込むのは困難です。 子どもが危ない景色を識別できるようになったら、3つのルールを守るよう伝えましょう。 ・危ない場所には行かない ・どうしても危ない場所に行かなければならないときには、ひとりでは行かない ・どうしても危ない場所にひとりで行かなければならないときには、まわりの様子に十分注意、絶対に気をゆるめない じつは、上記ルールは子どももよくわかっていて、通学路に「危ない場所がある」とわかれば、意図的に友だちと一緒に帰るようになります。私が小学校で地域安全マップづくりをした後、複数で下校するようになったとの調査報告もあります。 ■コミュニケーション力を育むことも防犯の一部 子どもが犯罪被害者にならないためには、親が積極的に子どもを外に連れて行き、家族以外の大人と接触させることも必要です。大人とも堂々と会話ができ、はっきり「ノー」と言える子どもの方が、騙されて連れて行かれる確率はぐっと低くなります。 子どもは親をよく見ているので、お父さん、お母さんが日ごろから見本を見せることも大切です。たとえば、危ない場所が最寄り駅までの近道の場合。電車の時間に間に合わないときには、やむを得ず通る人もいるかもしれません。しかし、「今日は急いでいるから特別にここを通るよ。いつもはダメだからね」と伝えたところで、親が通れば子どもも通ってしまいます。 ■まとめ 子どもの防犯力を鍛えたいなら、まずは親の考え方や行動も変えることがポイントのようです。景色を見る、家族以外の人とコミュニケーションをとるなど親子でトレーニングをして、自分で身を守る力をつけたいものですね。 写真でわかる世界の防犯 遺跡・デザイン・まちづくり 世界には安全を守る工夫が数多くあります。92カ国、約200点の世界遺産、住宅や道路、学校や公園、駅やトイレなどを見ながら、「入りにくく見えやすい場所」のポイントをやさしく解説したオールカラー写真集です。親子で一緒に、写真の景色を楽しく見ながら話し合うのがお勧めです。
2017年04月08日子どもの成長に深く関わっている毎日の食生活。我が子には食べることの大切さを知ってほしいと思いつつも、日々の慌ただしさのなかで後回しになってしまうというママも多いことでしょう。 野菜をしっかり食べてもらおうと栄養バランスを考えたごはんを食卓に並べても、まったく食べてくれないこともあるものです。 子どもをとりまく食環境に不安を感じるママたちのヒントになるべく、 「予約が取りにくい」といわれる西荻窪の野菜料理店「たべごと屋 のらぼう」 店主の明峯牧夫(あけみねまきお)さんの試食つきセミナーに潜入しました。 ■採れたて野菜で作る“牧夫さんの味” 2016年で15周年を迎えた「たべごと屋 のらぼう」。明峯さんは、高校を卒業して八王子の料理店で(8年間)修行をしたあと、お姉さんがお店をされていた場所にお店をオープンしました。 のらぼうは季節の野菜を使ったサラダやかき揚げ、年間で30種類にも及ぶという土鍋ごはんなど“牧夫さんの味”を求めて遠方から訪れる人も多い人気店です。 お店で使われている野菜は、 地元で採れたもの。 営業日の午前中に明峯さんみずから畑や直売所へ足を運んで仕入れています。新鮮な野菜を手に入れられるのはもちろん、同年代の生産者との関係性を築くことも大切にされているといいます。 ■「食べること」の奥にあるストーリー性を大切にする セミナーは、「調理+トーク」と「実食+トークショー」の2部構成で行われました。第1部の調理デモンストレーションで作ったのは、下記メニュー。本来は3品だったところに煮びたしが追加されました。 ・白菜と豚肉の蒸しもの ・ほうれん草の金柑 クリームチーズあえ ・ルッコラとオイルサーディンの混ぜご飯 ・白菜とじゃこと油揚げときのこの煮びたし 煮びたしに使われたのは、白菜の外側の葉の周りや芯。明峯さんは、「はしはし」と呼んで活用しています。家庭では、うまく使いきれずに捨ててしまうことも多い部分。 野菜をすみずみまでいただく という想いが、明峯さんの姿から伝わってきました。 「ほうれん草の金柑 クリームチーズあえ」は、ある冬の日の畑の景色をお客さんに伝えようと考案されたそう。農家の軒先につるされた干し柿と、庭に植えられた金柑の木、そして、畑で育っているのは甘みを蓄えたほうれん草…。エピソードを聞くと、料理に奥行きが広がります。 この日のレシピには、のらぼうの店舗裏で作られた干し柿も入っています。食べて終わりではなく、その奥にある ストーリー性を大切にする。 明峯さんの人柄も、のらぼう人気のひとつなのでしょう。 ■地元の畑を訪れることの大切さ 第2部では、それぞれの席に試食の品々が並びます。味つけは濃くないのに、野菜そのものの味がしっかりしているため、満足度は高いです。 干し柿は甘みが凝縮されていて、ルッコラはほんのり苦い。それぞれの食材の味がほどよく感じられ、野菜の力強さを再認識させられます。 「土から離れてしまうと、想像力や暮らしにまつわる基本的なことをどんどん忘れていってしまう気がする。まずは、 自分が住んでいる地域の農家を訪れてほしい 」と語る明峯さん。じつは、のらぼうの隠れたメッセージでもあるそうです。 自分が暮らす地域で、いまどんな野菜や果物が育っているのかは意外と知らないもの。畑に足を運ぶことは、食材の旬を感じられるいい機会でもあります。 ■「想い」よりも「環境づくり」 5歳の娘さんのパパでもある明峯さん。お子さんの食事に関しては、「日々の食事は妻に任せていますし、基本は大らかです。『(もし食べなくても)おなかが空いたら食べるんじゃない』というスタンス」といいます。 一方で、毎週日曜日の仕入れには娘さんを同行させるなど、畑に触れる機会を積極的に設けています。 娘さんは、生産者のお子さんと畑で遊んだり、ブルーベリーを摘んで食べたりして過ごしているそうです。明峯さんの母親の畑で芋掘りをすることもあるとか。また、生きた魚をしめて、刺身にして食べさせるということもしているといいます。 子どもの食事は大切ではあるものの、あまりにも親の想いが強すぎるのも考えもの。 環境を与えて、子どもが感じとる力を信じること も大切のようです。 仕事に家事・育児に忙しいママたちにとって、一度に買い物をすませられるスーパーマーケットは大きな味方です。しかし、ときには子どもを連れて生産現場に足を運び、収穫前の野菜や果物に触れる体験をするのもいいものです。 都内にも、収穫体験などをさせてもらえる畑は多数あります。まずは、お子さんと一緒にお住まいの地区のホームページをチェックするところから始めてみるといいかもしれませんね。 information 2016年9月に「たべごと屋 のらぼう」のレシピを集めた 『野菜のごちそう 春夏秋冬』(KADOKAWA) が発売されました。人気メニューの「季節のかき揚げ」や「変わりポテトサラダ」など、「予約の取りにくい店」の味を家庭でも楽しめます。セミナーで作ったレシピのうちの3品も掲載されていますよ。
2016年12月12日