2017年4月8日 19:00|ウーマンエキサイト

「怪しい人に気をつけて」はなぜダメなの? 子どもが犯罪被害者にならないための方法

入園・入学などを目前に控えた春。大人が付き添っていた保育園・幼稚園の送り迎えから一転、小学生になったら子どもがひとりで歩く機会も増えることでしょう。

目次

・防犯ブザーで防げる犯罪は、1割から2割程度
・段階を踏んで説明しよう! 子どもの興味を引く伝え方を意識すると◎
・キーワードは「入りやすく」「見えにくい」
・応用問題を出して、子どもの理解度をチェック!
・コミュニケーション力を育むことも防犯の一部
・まとめ

「怪しい人に気をつけて」はなぜダメなの? 子どもが犯罪被害者にならないための方法

© bonb - Fotolia.com


内閣府の「平成28年版 子ども・若者白書」によると、平成27年度の福祉犯(青少年の心身の成長に有害な影響を与える犯罪)の被害者数は前年度と比べて減少しているものの、児童ポルノの被害者数は増えているそうです。我が子が登下校中に危ない目にあわないか、親としては心配です。

子どもが犯罪に巻き込まれないためには、どうすればいいのでしょうか。立正大学の小宮信夫教授に話を聞きました。

「怪しい人に気をつけて」はなぜダメなの? 子どもが犯罪被害者にならないための方法小宮信夫 教授
立正大学 文学部 社会学科教授(社会学博士)

ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。地域安全マップの考案者。代表的著作は『写真でわかる世界の防犯 遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館)
公式サイト:小宮信夫の犯罪学の部屋


■防犯ブザーで防げる犯罪は、1割から2割程度

お母さんたちが子どものころ、大人から「怪しい人に気をつけてね」「知らない人にはついていかないように」と言われたことはありませんか? まずは、その考え方をリセットするところから始めましょう。

そもそも、「不審者」がどういう人かは大人でもうまく説明できないものです。大人が教えられないなら、子どもにだってわからないですよね。犯罪者は子どもを騙して連れ去るケースが多いため、サングラスにマスクのような、見るからに怪しい雰囲気を出してはいません。
顔見知りという可能性だってあるのです。

防犯ブザーは、持たないよりは持たせた方がいいです。しかし、防犯ブザーが役に立つのは子どもが突然襲われるケースに限られるため、防げる犯罪は1割から2割程度だと思ったほうがいいでしょう。

子どもに危険を察する能力をつけるには、「人」ではなく「場所」を見るよう教える必要があります。場所といっても、「何丁目の何番地の公園が危ない」と特定するのではありません。犯罪者の多くは犯行を行う際に、地図や人ではなく景色を見て決めるといわれています。ですから、「景色」の中で、安全と危険を識別できる力を子どもに身につけさせるのです。

■段階を踏んで説明しよう! 子どもの興味を引く伝え方を意識すると◎

子どもに場所についての説明をするときに、小学校高学年なら理論的に説明しても大丈夫です。
一方、お子さんが未就学児なら、まずは事件が報道されているニュース番組などを見て、「怖いね」と話すところからスタートするといいですね。
「怪しい人に気をつけて」はなぜダメなの? 子どもが犯罪被害者にならないための方法
子どもが怖いと感じたら、「怖い目にあわないためには、どうしたらいいのかな?」と聞きます。大人がすぐに答えを出さずに、まずは子どもに考えさせましょう。そこで具体的に考えだしたら、初めて場所の話をします。

「じつはあるんだよ、とっておきの方法が。これはまだ、ほとんどの子どもが知らないんだ」と伝えれば、子どもは興味をもって聞いてくれるはずです。

■キーワードは「入りやすく」「見えにくい」

危ない場所には、「入りやすく」「見えにくい」という特徴があります。これには、物理的・心理的両方の意味が含まれます。


たとえば、ガードレールのある道は、「入りにくい」場所に分類されます。子どもの連れ去り事件は車を使うケースが多いのですが、ガードレールがあれば、子どもとの間に障害ができます。また、車に乗るためには、ガードレールの切れ目まで迂回しなくてはいけません。時間がかかれば他の人に見られる可能性が高くなるうえ、子どもが「変だな」と考える間も生まれます。

一方、田んぼに囲まれた道や1階が駐車場になっているマンションの前の通りは、「見えにくい」場所です。住宅が密集している場所でも、塀が高くて、家の窓から道路が見えなければ同じです。

マンションのエレベーターは「入りやすく」「見えにくい」場所にあたります。子どもがひとりで乗るときは、ボタンの側に壁を背にして立ち、すぐにボタンを押せるようにするのがポイントです。
「警戒していますよ」というメッセージを発信すれば、犯行を躊躇する可能性が高まります。

子どもに関する事件のニュースで事件現場の映像を見せて考えさせるのも一案です。場所に関する前情報がなく、単純に景色だけを見られるからです。

未就学児の場合、一度に全てを伝えても覚えきれません。1ヶ月に1項目ずつ教えるくらいがいいと思います。

■応用問題を出して、子どもの理解度をチェック!

「入りやすい」「見えにくい」場所をひと通り伝えたら、お子さんに応用問題を出してみましょう。頭ではわかっているつもりでも、じつは理解できていない可能性もあるからです。

Q1:学校からの帰り道に車に乗っている人から声をかけられました。
「あなたの小学校までの道を教えてもらえるかな? この辺に引っ越してきたばかりだから、道がわからないんだよ」と言われたら、どうするのがいいでしょうか?

A1:まずは原点にかえって、「人」ではなく「景色(場所)」をチェックしましょう。声をかけられたのがたくさんの窓が見える通りやガードレールの内側にいるときなら、答えてOK。一方、高い塀が続く通りやガードレールのない道にいるときなら、「急いでいるから」と立ち去りましょう。
誘拐のリスクを考えて、どんなときでも「答えなくていい」と教える大人もいますが、私は反対です。知らない大人ともしっかりコミュニケーションを取れる子どもは、騙されにくくなるものです。

Q2:下記の図は、公共施設のトイレです。(A)と(B)のうち、どちらが危ない場所になるでしょうか?
「怪しい人に気をつけて」はなぜダメなの? 子どもが犯罪被害者にならないための方法
A2:(A)が危ない。女子トイレが手前にあれば、男性が後ろから近づき、女児と一緒にスッとトイレに入り込むことができます。
一方、(B)は、女子トイレが奥まったところにあるので(=入りにくい場所)、犯人が女児を連れ込もうと思ったら奥までついてこないといけません。子どもが「何でついてくるのかな?」と気づく可能性があり、一緒に入り込むのは困難です。

子どもが危ない景色を識別できるようになったら、3つのルールを守るよう伝えましょう。
・危ない場所には行かない
・どうしても危ない場所に行かなければならないときには、ひとりでは行かない
・どうしても危ない場所にひとりで行かなければならないときには、まわりの様子に十分注意、絶対に気をゆるめない


じつは、上記ルールは子どももよくわかっていて、通学路に「危ない場所がある」とわかれば、意図的に友だちと一緒に帰るようになります。私が小学校で地域安全マップづくりをした後、複数で下校するようになったとの調査報告もあります。

■コミュニケーション力を育むことも防犯の一部

子どもが犯罪被害者にならないためには、親が積極的に子どもを外に連れて行き、家族以外の大人と接触させることも必要です。大人とも堂々と会話ができ、はっきり「ノー」と言える子どもの方が、騙されて連れて行かれる確率はぐっと低くなります。

子どもは親をよく見ているので、お父さん、お母さんが日ごろから見本を見せることも大切です。たとえば、危ない場所が最寄り駅までの近道の場合。電車の時間に間に合わないときには、やむを得ず通る人もいるかもしれません。しかし、「今日は急いでいるから特別にここを通るよ。いつもはダメだからね」と伝えたところで、親が通れば子どもも通ってしまいます。

■まとめ

子どもの防犯力を鍛えたいなら、まずは親の考え方や行動も変えることがポイントのようです。景色を見る、家族以外の人とコミュニケーションをとるなど親子でトレーニングをして、自分で身を守る力をつけたいものですね。

「怪しい人に気をつけて」はなぜダメなの? 子どもが犯罪被害者にならないための方法写真でわかる世界の防犯 遺跡・デザイン・まちづくり

世界には安全を守る工夫が数多くあります。92カ国、約200点の世界遺産、住宅や道路、学校や公園、駅やトイレなどを見ながら、「入りにくく見えやすい場所」のポイントをやさしく解説したオールカラー写真集です。親子で一緒に、写真の景色を楽しく見ながら話し合うのがお勧めです。


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