人間は、ほかの哺乳動物ほどの体表面の毛がないため衣服を身につけていますが、肌に直接触れるという意味では、衣服は人間にとって一番近くに存在する外的環境だと言えます。そんな衣服と子どもの発達との関係について見ていきましょう。
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一番身近な外的環境「衣服」の身体への影響
普段衣服を着ていてもあまり意識することはないかもしれませんが、皮膚が衣服から受ける触覚は、思っている以上に光やにおいといったものと同じく自律神経や中枢神経、体の免疫機能に影響を与えています。
幼稚園に通う児童に、柔らかい肌触りのものとかたい肌触りのものにわけて木綿の肌着を着せた実験があります。この実験では、
かたい肌着を着せられた児童はそれがストレスとなり、尿の中のコルチゾールという物質が増加しました。コルチゾールは成長ホルモンの働きを抑える物質です。
一方、
柔らかい肌着を着せられた児童では、人間の免疫システムにおいて病原体を攻撃してくれる免疫グロブリンの増加が見られました。体が病気とたたかう能力が上がったということができます。
かための肌着を身につけたとしても、人間の皮膚感覚は10分ほどもすると麻痺してしまい、不快に感じることもなくなります。しかし、同じ実験を大人に対して行ったところ、
たとえ不快さを感じなくなったとしても体温をコントロールする機能や中枢神経系の機能が鈍化するといった結果が見られたといいます。
こどもの体温の状態を調べることができるマネキンを使った実験では、幼い子どもはまだ体の体温調節機能が未熟であるため、気温が氷点下付近や40℃付近になるような極端な気温条件下にある場合、大人以上に注意を払う必要があることがわかっています。
このように、大人以上に子どもにとっては衣服の性能は重要であることが分かります。しかし、一方で販売されている子供服に関する快適さや機能性の科学的な研究はあまりなされていないのが現状です。