小学校の夏休みとともにやってくる、宿題の定番・自由研究。イベントやワークショップの参加を検討したり、図書館やインターネットなどで情報収集をしたり、テーマ決めに向けた行動を開始している家庭もあることでしょう。
子どもが興味をもてるテーマが見つけられずに困り果てているお母さんにオススメしたいのが、
『夏休み! 発酵菌ですぐできるおいしい自由研究』(あかね書房)です。味噌や納豆、ヨーグルトなどの発酵食品のつくり方をわかりやすい文章やイラスト・写真で教えてくれます。
著書の
小倉ヒラクさんは、
発酵デザイナーという不思議な肩書きの持ち主。微生物学の研究や一般向けの
麹づくりワークショップなど、目には見えない菌を見えるようにする活動を広く行っています。そんなヒラクさんに
発酵食品のおもしろさや
ポイントを聞きました。
■見えない菌を育てる! 発酵食品をつくるメリット
菌の働きによっておいしさがアップすることに加え、保存性を高められるといいことづくしの発酵食品。自由研究のテーマとどう結びつくのでしょうか。
「発酵食品は、料理とサイエンスという二つのジャンルにわけられます。僕の専門は微生物学のため、本書は料理よりも菌を育てることに重点を置いているんです。発酵食品づくりの魅力は、
生き物の反応がわかること。
観察していると、菌が魔法のように食べ物をおいしくする過程を楽しめます。
たとえば、パンをふくらませるための酵母をつくる場合、瓶の中に果物と水と砂糖を入れて酵母菌を呼び込みます。発酵が進むと酵母がシュワシュワしてくるので、菌が元気に育っている様子を実感できます。『ここに菌がいるんだ!』と子どももワクワクしてくれますよ」とヒラクさん。
目に見えない菌の存在を言葉だけで説明しても、子どもはうまく想像できません。実践を伴うことにより、菌の存在や自然の力に対するイマジネーションを育てられる。ワークショップを通じて多くの子どもたちと接するなかで、ヒラクさんが感じたことだそうです。
もうひとつ、発酵食品づくりで得られるものがあるそうです。
「現在の学校教育は、出題者の意図を汲み取って答えを出す力を要求されることが多く、
『よく観察すること』を教えてもらえる機会が少ないと感じています。人の予想を大きく上回る現象が起こりうる生物学では、主観は邪魔になることも多い。
発酵食品づくりは、“ただ観察をして目の前に起こっている事実を受け止める”トレーニングになります。つまり、生物学の基本を学ぶことができるんです」