コミックエッセイ:こうして赤子を授かった~中村こてつ不妊治療体験記~

いよいよ判定日、結果を前に戸惑う気持ち【こうして赤子を授かった~中村こてつ不妊治療体験記~ 第31話】


ドクターは結果の出た用紙を見せながら話を始めました。

妊娠を判定するための基準となるhcg値は現時点で62だそうで、これはまだ安心できる数字ではないとのことでした。

来週、再度血液検査をし、200近くに増えていれば大丈夫でしょうと言われました。

ドクターから妊娠していますと聞いても、そうですか…と無表情な私。どうしても素直に喜べませんでした。嬉しい気持ちが沸き起こってきませんでした。

移植直前に、神様に運命を任せよう、流されるままに現実を受け止めてみよう…そう決めたはずなのに。

診察室を出ても、どうしよう…という気持ちが頭を離れず、そんなことしか考えられない喜べない自分が悲しくなって、ボロボロと泣いてしまいました。

そんなことを知らないオットは、私が嬉しくて泣いているんだと思ったようでした。膝をポンポンと叩いて、何も言わずに横に座っていました。

注射を続けながら次の診察日を待つことになりました。誰にも言えない気持ちを抱えたまま、毎日を過ごしました。

オット以外には、陽性だったことは伝えられませんでした。

安定期でないから・初期だから、という理由でなく、伝えて「おめでとう」と言われるのが怖かったからです。

数日後、その気持ちを打破する方法はないかと、有名な妊婦さん向けの雑誌を買いました。

普通は「やっとこれを買える~~!!」と感慨深く買うのだろうな。

いよいよ判定日、結果を前に戸惑う気持ち【こうして赤子を授かった~中村こてつ不妊治療体験記~ 第31話】

たくさんの妊婦さん・赤ちゃんの写真を眺めてこれは幸せだよ~と自分に言い聞かせてみる…

頭の切り替えを図ってみる…

自分が情けなくなりました。こんなことをいつまで続けるつもりなんだろう。

流されるままに現実を受け止めようとか未来を受け入れよう、なんて、格好つけた言い方をして、実は決心がついていないだけでした。

決心することはとても難しいことだったから、それから逃げようとしました。

そして結局、やってきた現実を受け止めきれないでアップアップしています。

周囲に今の状態を話せば、あきれられてしまう。こんな気持ちは頑張っている治療仲間には絶対に話せません。子どもを望んでいたオットにも話せません。

変な言い方だけど、私は私の中で落とし前をつけるしかないのだと思いました。正面から自分の気持ちに向き合うことを避け、いたずらに命を扱った落とし前。

やって来てくれた命に申し訳ない、と思いました。

再判定が翌日となりました。hcg値が増えていたら、ちゃんと着床して育ってくれていることになります。

よい結果だったら、結果を心配してくれている周囲に報告しようと決めました。

そしてそれを機に、変われたらと思いました。

※私が長男を妊娠するために不妊治療をしていたのは、2005年11月~2008年10月のことです。また、この体験記に記載された症状や治療法は、あくまでも筆者の体験談であり、症状を説明したり治療を保証したりするものではありません。



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