■「どうせ捨てられちゃう」子どもの気持ち知っていたのに…
当時は絵画造形教室のお手伝いをしていたので、人の子に対してむしろ工作をつくらせる立場でした。
造形をやっている時の子どもたちは生き生きとしていて、とても楽しそうでした。
けれどその中の1人が言ったのです。
「これ、持って帰らない。どうせ家に持って帰っても、ママに捨てられちゃうもん」
諦めのような声に、私はひどく心が痛みました。
“捨てちゃうよ!”
そう言われたら子どもがどう思うか、わかっていたはずなのに。今度は親である自分が、息子に同じことを言っている。
私はクールダウンして、きーちゃんに向き合いました。
「…捨てるなんて言ってごめん。一生懸命作ったんだよね。でもさ、このままじゃ遊んだりご飯を食べる場所がなくなっちゃうよ…。きーちゃんがよくできたと思うものは大切に残して、そうじゃないものはさよならしない?」
言ってることはじつはさっきと変わらないのですが、2人で相談しながら整理しようと持ちかけたら、きーちゃんはうなづいてくれました。