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映画
「マインクラフト/ザ・ムービー」公開記念として、マインクラフトを英語の授業に取り入れ、
教育界のノーベル賞“世界の優秀な教員10人”に選ばれた正頭英和(しょうとう ひでかず)先生にインタビューする本連載。
後編の今回は、実際に
家庭でマインクラフトなどのゲームをエデュテイメント(教育×エンターテイメント)として取り入れる場合どうしたらいいのか、親の心がまえや方法などについて教えていただきました。

【正頭英和(しょうとう ひでかず)】立命館小学校教諭。大阪府出身。Minecraftを活用した授業が認められ、2019年のGlobal Teacher Prizeにおいて、世界150ヵ国以上、3万人のエントリーの中から、日本人小学校教員初となるTop10に選ばれ、「世界の優秀な教員10人」となる。その他には、桃鉄教育版のエデュテイメントプロデューサーなどもつとめている。主な著書に「世界トップティーチャーが教える子どもの未来が変わる英語の教科書(講談社)」などがある。
◆家でマインクラフトをやる場合、どんなルールを設けたらいい?
前編でご紹介したとおり、正頭先生は立命館小学校の英語の授業でマインクラフトを取り入れる際に『グループ内の会話はすべて英語を使うこと』というルールを設け、子どもたちの英語力を向上させることができました。
では、家庭で子どもがマインクラフトをやる場合、どのように活用できるのでしょうか。
「マイクラの魅力は、
子どもたちのモチベーションになるということ。もし家庭の中で子どもに
伸ばしたい能力があるなら、
マイクラを利用してやる気のスイッチを押すことができるかもしれません。

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たとえば、
お金の教育。そろそろ金銭感覚を身につけて欲しいなと思っているなら、
“お皿洗いをやったら100円あげるから、その100円でマイクラを10分やっていいよ”というように、ゲームの時間を販売する。そうすると子どもは
お金の稼ぎ方や使い方を考えるようになります」
◆子どもにたくさんの体験をさせるにはどうしたらいい?
いまの子どもたちに求められている能力が
『表現力』で、その土台となるのが
『思考力』や『感受性』を育むための
たくさんの『体験』であるというお話を伺いましたが、体験と聞くとつい“山や川での外遊び”を思い浮かべてしまい、ハードルが高く感じてしまいます。
正頭先生は子どもたちの
“とりあえずやってみよう!”という体験のハードルを下げるきっかけとして、
ゲームの活用をすすめていますが、体験を増やすにはどうしたらいいのでしょうか。
「人によって
体験の定義はさまざまですが、僕の定義は
『調べる』『試す』『作る』の3つ。何か調べたい、試したい、作りたいから動く、この行動のことを
『体験』といっています。そうなると、家のお手伝いも子どもにとっては体験になるんです。

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たとえば、
“今日パパに何食べたいか聞いて、調べてきて”とか、
“どっちが美味しいか試してみて”とか、
“卵焼きをいっしょに作ろう”とか、そういう普段の
何気ない声がけを『調べる』『試す』『作る』に引っ掛けてみると、日常生活の中でも体験はゴロゴロ落ちているんです。
何も自然の中や科学館に連れていくことだけが体験ではない。大人がルーティンと感じていることの中にも体験はたくさんあると考えれば、そんなに難しいことではありません」
◆調べる=ネット検索で簡単に済ませてもいいの?
そうはいっても、便利になり過ぎた世の中。調べるという体験ひとつとっても、音声アシストに“○○について教えて!”と聞いてしまえば、すぐに終わってしまいます。
より良い体験にするにはどう導けばいいのか、親としては悩みどころです。
「調べるという中にも
『インターネット』『本』『人に聞く』の3つがあって、それぞれに
長所と短所があります。
インターネットのいいところは、スピード感。すぐに答えが出るというのはメリットですが、それ以上の情報は得られません。逆に本には余分な情報がたくさん載っているけれど、不必要な情報もある。けれど、それがフックになって
寄り道が生まれやすいんです。

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人に聞くメリットは、
モチベーションが上がること。だからこそ、親が子どもに何かを聞かれたときに“自分で調べなさい”とつき返すのは、せっかくやる気が出てきたタイミングなのにもったいない。
“こういうことに興味を持ったなんてすごいね!”とか、
“あの本に載っているからいっしょに調べてみよう”とか、
“近所の科学館の館長に今度聞きに行こうか”というのができたら楽しいし、
そういう時間が大事ですよね。
重要なのは答えを知ることではなく、
子どもの成長。いま我が子に必要なのは何か、スピードゲームなのか寄り道なのか、はたまたモチベーションなのかを見極めることが大切です」
◆子どもの表現力や思考力を育むために親は何をすればいい?
私たち親世代の学力といえば、暗記や計算。それよりもAIが発達したいまは、表現力や思考力を伸ばすことが大切というのは理解できますが、正直、子どもにどう教えていけばよいのか、戸惑っている保護者さんは多いようです。
「大事なのは、
『自分たちが教わったように教えない』ということ。自分が学んできたようなことを子どもにはやらせないという
親側のマインドセットが必要です。

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たとえば、親世代が英語の単語を覚えるといったら単語帳にひたすら書いて暗記していましたが、もしかすると間違った発音で覚えてしまうかもしれないし、英語教師の僕からするといまの時代にそれをやるのはナンセンス。
いまは正しい発音で、しかも記憶の忘却曲線のメカニズムにそって出題してくれるようなアプリがあるので、昔の方法を教えていたら損するリスクが出てきてしまいます。マイクラというゲームで授業をするというのも、親のマインドセットができていたら一歩を踏み出しやすくなります」