連載 STEAM教育って何?
探究や体験…一体何をすればいいの? 忙しい親でもできるおうちSTEAMのコツ【STEAM教育って何? Vol.2】
知っているようで知らない「STEAM(スティーム)教育」について、STEAM JAPAN代表理事の井上祐巳梨さんにインタビューする本連載。
第2回の今回は、家庭で探究学習などのSTEAM教育を取り入れるには何から始めればいいのか、環境づくりや声かけのコツについて話を聞きました。
井上 祐巳梨(いのうえ ゆみり)
STEAM JAPAN代表理事
2018年、地方創生×クリエイティブ人材育成プログラムをエリア拡大実施。翌年、(株)Barbara PoolにてSTEAM事業部を立ち上げ、WEBメディア「STEAM JAPAN」の編集長に就任。同時期に、経済産業省『「未来の教室」実証事業』に採択。一般社団法人STEAM JAPAN設立、代表理事に就任。地域×クリエイティブ/STEAMをテーマに全国各地で地域創生プロジェクトに携わり、次世代STEAM教育事業を推進中。
https://steam-japan.com/
◆STEAMは家庭で取り入れられる?
第1回では、“STEAM教育”とはみずから探究し・課題を見つけ・自分なりの答えを創造する“創り出す学び”のことで、これからの時代に欠かせない思考力や表現力を自然に育むことができるとお伝えしました。
日本の公教育でも徐々に浸透しているようですが、家庭で私たち保護者は何をしたらいいのでしょうか。
井上さんからはこんな楽しいアドバイスが。「まずは、手を動かすことをサポートするといいかもしれません。たとえば、空き箱などいろいろな廃材を集めて、自由に創作できる場を作るといいと思います。
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▼廃材を集めた「おうち探究ラボ」で自由に創作!
今は共働きで忙しい保護者の方も多いと思うので、お家の中でさまざまな材料を置いておく“探究ラボ”のようなスペースを作るとか。その空間だけは多少散らかっていても“あそこは探究ラボだからまあいいか”とおおらかな気持ちで見守ることができます」そんな環境ができたら、思いのままに創作することに加えてちょっとした工夫で子どもの創造力を刺激できると井上さんは続けます。
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「何らかのテーマを設定するとより面白いものが生まれやすくなります。たとえば、アメリカのSTEAM体験会で実際に出されていたのは、“氷がどんどん溶けてしまって困っているシロクマのために、何か泳げるものを作ってあげて”というもの。そして作ったものを見ながらなぜそうしたのかを説明してもらうといいですよ。ただ、テーマを考えること自体が負担にならないよう保護者の方も一緒に楽しんで取り入れていきましょう」
◆探究学習をうまく進めるためのコツは?
探究したいものがある子どもに対しては、保護者側が「応援の気持ちを表す」ことが大切だと井上さんはいいます。
▼親は子どもの探究の「伴走者」
「たとえば子どもが化石に興味があったとして、保護者の方が必ずしも質問に答えられるとは限りませんよね。そこで一緒に調べたり、博物館に行って触れる機会を作ったり、専門家に繋いだり…。
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そうやって“探究の伴走者”になって“あなたの興味のあるものを応援するよ”という姿勢を持つことが大事。逆に『ストッパーにならない』ことだけ注意してください」
また、探究したいものはあっても、どうしていいか分からない場合もよくあります。特に夏休みの自由研究では保護者がうまく導けないという悩みも多いはず。そんな時はどうしたらよいのでしょうか。
▼ゲームが好きと言われてしまったら?
「例えば、教育現場で“僕はゲームに興味があるからゲームをやります”と生徒に言われて困ってしまったという先生からの相談もありました。そのような場合に大切なのは、最初のテーマ設定のときにヒアリングの時間を多く取ること。
例えばゲームが好きなら“どんなところが好きなの?”と問いかけ、もし友だちと遊べるからという理由なら“友だちとコラボレーションするとどんなことが起きるの?” というように、ゲームが好きというところからその背景に隠れたストーリーを深く導いた上で、何をゴールにしたいのかを設計することが大切です」
さらに、そのときに注意したいポイントがあると井上さんはアドバイスします。
▼ヒアリングする時のポイントとは?
「伴走者はあくまで対等な立場でいること。これまでの座学では子どもは『教えられる側』なので親子が上司と部下のような関係になりがちですが、STEAM教育の探究学習では子どもも大人も対等な遊び仲間という意識で一緒に楽しみましょう。もしどうしても問いやゴールが見つからない時には、チームを作って意見を出し合う環境を作ってみてください。家庭の場合は、保護者や兄弟姉妹がチームとなるかもしれません。まず個人で考えて、その後チームで考えてサポートし合うと『協働のよろこび』も学べます」
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◆探究テーマが見つからない場合は?
探究テーマを見つけようとして、子どもが好きなものを深掘りしようと質問を投げかけてみても、次に続く答えが返ってこない。そんな時はどうしたらいいのでしょうか。
「探究テーマの深掘りは教員でも難しい作業のひとつ。保護者の方がそれをやろうとすると大変です」と井上さん。
▼探究テーマの見つけ方2つのポイント
「強いていうなら探究テーマを見つけるポイントが2つあって、1つ目は、たくさん体験をして『色々なものを一緒に見る』こと。2つ目は、『過去ではなく未来を意識する』こと。
一方で最近『体験格差』が社会的な問題になっており『体験とは何か』に悩む保護者の方も多いと思います。そんな時には難しく考えず、家庭でできる小さな体験の機会を提供した上で、“○○くんならこういうときどうしたらいいと思う?”“自分で何か新しい形にするならどういうふうにする?”と未来につながる声がけをするだけで十分なんです」
また、体験というと“キャンプに連れていく”など非日常的なものを思い浮かべてしまいますが、日頃の生活の中にも体験はあふれていると井上さんは言います。
▼特別な場所に連れて行かないとダメなの?
「海外では“キッチンスチーム”という本が出ているくらい、料理から学ぶこともたくさんありますし、家のお手伝いも貴重な体験です。
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また、公共施設で色々な無料プログラムが用意されているので自治体のホームページなどをチェックしてみてください。もちろん個人の体験格差がなくなるよう公教育での体験を最大化し、セーフティネットとなるよう行政と連携して、私たちも努力しているところです」
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