連載記事:細川珠生のここなら分かる政治のコト

物語や活字文化が生まれる千代田区ならではの授業やスクールロイヤーによる相談体制も【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.25】

細川珠生のここなら分かる政治のコト

細川珠生のここなら分かる政治のコト

政治ジャーナリストの細川珠生氏がおくる、「細川珠生のここなら分かる政治のコト」。ママになって子どもの将来を願うと政治のことをちゃんと知っておきたいけど、子育てに仕事に忙しい…。そんなママに向けて、気…


子どもにとって「良い教育環境」といえば、緑が多く、広々とした遊び場があることもその一つ。都心の中の都心の千代田区は夏場の体育館の開放などで遊び場を確保するなどの取り組みを行いながら、立地を生かした特色ある教育を行なっています。樋口高顕区長に、その千代田区の教育について、お聞きしました。

物語や活字文化が生まれる千代田区ならではの授業やスクールロイヤーによる相談体制も【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.25】お話を聞いたのは…
千代田区 樋口高顕区長

1982年生まれ。家族は妻と娘。巣鴨学園高、京都大学法学部卒。IT企業、都議会議員を経て、2021年より現職、23区最年少区長。現場主義を旨とし、年に一度、清掃車でごみ収集作業に従事。コロナ禍の飲食店を応援するため、神田カレースタンプラリー全124店を食べ歩いた。
>>千代田区・樋口高顕公式ページ



―「千代田区における教員の働き方改革 時間外勤務時間の現状と取り組みについて」(以下、「教員の働き方改革」)が公表されています。学校の先生がいかに大変かということがわかりますね。反響はいかがですか。
樋口区長:「教員の働き方改革」を開示する狙いは、教員の負担軽減と働き方改革、この2つを進めることにあります。現場で働く教員の方々からは、自分達の勤務実態を公表することで、透明性が向上したとか、保護者や地域の皆さんに理解してもらえて、お互いを尊重するようになったという声を聞いています。

―可視化するということは大事ですね。行政としてはどのような取り組みをなさるのですか。
樋口区長:2つあります。1つは、時間外勤務で結構多くの時間を占めているものが、トラブルなんですね。ここに法的なサポートが必要だということで、千代田区では、スクールロイヤーによる相談体制を作りました。学校から電話で直接スクールロイヤーに相談ができ、専門的な視点から助言を受け、速やかに解決に向けて対応できるというのが1つ目です。2つ目は、今年度から始めたエデュケーションアシスタントの配置です。

物語や活字文化が生まれる千代田区ならではの授業やスクールロイヤーによる相談体制も【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.25】
―支援が必要な子どもへ支援員がついていると思いますが、エデュケーションアシスタントはそれとは違うのですか?
樋口区長:支援員とは違います。担任の先生の負担軽減として授業の補佐、登下校の見守りや事務負担、こういうものを担任に代わって行っていただく方を配置するんです。先生の忙しい時間帯というのはある程度決まっているので、担任がすべき業務の一部でも補助的にしていただければ、先生は、翌日の授業準備などに時間を充てられます。また小学校は35人学級に移行していますが、色々なお子さんがいる中で、1人で全てを見ていくのは結構大変です。アシスタントの方がいれば、随分楽になると聞いています。最近は教員の離職も増えていますし、新しい先生が入ることもあるので、実態としてなかなか担任1人では回っていかないと。

―先生になる人は、純粋に子どもが好きで、先生業に誇りを持っている人が多いのに、本務ではないところ、例えば外部対応、特に保護者対応などで辞めてしまうというのは本当に残念だと思います。
樋口区長:そうですよね。スクールロイヤーも、エデュケーションアシスタントも先生方の助けになると思っています。

―教育の内容でいうと、生成AIが当たり前になってきている時代に、これからどのような教育が必要とお考えですか。
樋口区長:区長就任以来、GIGAスクール構想に基づき「ちよだスマートスクール」を鋭意進めてきました。タブレットを全員に配布して、情報活用能力がかなり向上するなど成果が出てきました。これからさらに力を入れたいのは、SNSやAIの活用が加速し情報過多の時代に生きる子どもたちの「情報リテラシーの向上」です。

―情報に溢れている世の中ですから、真偽を見分ける力やICTの正しい使い方を学ぶことはとても大事ですね。具体的にはどのように進めるのですか?
樋口区長:情報リテラシーを向上させるために、今年度から「ちよだリテラシー教育」として初めて体系化し、教育課程に位置付けました。4つの力を育むことができるように進めていきます。1つ目は情報を正しく読み解き、批判的に思考する力。2つ目は情報モラルを高め、適切に活用する力。3つ目は自らの考えを形成し、発信する力。4つ目はAI など新しい技術を主体的に体験・活用する力です。

―情報の見分けというのは、私は経験の量がかなり大事だと思っているんです。子どもは当然のことながら経験が少ないので、真偽の見分けがなかなかつかないという課題があります。具体的にはどのような力をつけることをお考えですか。
樋口区長:そうですね。実際に起こり得るのが、子どもたちがネット上で怪しい情報に出会ってしまった時、どうすれば良いのかということです。今申しました4つの力を育むと共に、そもそも情報ってどのように発信されているのか、また私たちは情報をどのように受け取っているのか、こうしたことも理解してもらいたいと思います。具体的には、テレビや新聞といった報道機関などにご協力いただいて、子どもたちに授業をしていただこうと考えています。皆さん、一次情報を集め、見極め、伝えていくプロですから。
物語や活字文化が生まれる千代田区ならではの授業やスクールロイヤーによる相談体制も【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.25】
併せて千代田区では、読書活動もこれまで以上に推進したいと思います。今年3月に、「第4次千代田区子ども読書活動推進計画」を策定しました。千代田区は新聞、出版、印刷、製本、紙の卸、書店、古書店など関連産業が集積してきました。物語や活字文化が生まれる街が千代田区なんです。文字活字というのは、理性を涵養し、新たな知識をもたらします。特に感受性が鋭い子ども時代から論理性、読解力、想像力、表現力、こういったものを育むためには、文字活字は重要です。今や読書に時間をかけずとも、AIで書籍を要約させて簡単に読めてしまうタイパの時代ではありますが、時間をかけて、一冊の本と向き合い、自分の知識や経験を引き出し、格闘しながら本を読むという読書の習慣を身に付けることは、生涯の財産となるはずです。

―私も父が新聞記者で、今では「オールドメディア」の一つとして、批判を受ける対象になっていますが、「メディア」の役割は、国民の知る権利に保障するということだと思うんです。その目的は、国民をより良き民主主義国家の構成員として育てる、ということだと思うので、メディアの役割や意義を通して、情報との向き合い方を、新聞社や出版社の方々から学んでもらえることを期待しています。
樋口区長:ネット上の偽情報、いわゆるフェイクニュースや誤情報、陰謀論の流通や拡散は、かつてないほどの大きな課題だと認識しています。私たち人間には認知バイアスがありますから、最初に触れた情報や、繰り返される情報を受け取りやすかったりします。あるいは、孤立や孤独感を抱いている人、心理的に疲れた時などには分かりやすく結論を出してくれるようなことを言われると、ふっと腹落ちするものなんです。

日本のように言論の自由が保障された民主主義社会ほど拡散されやすい面もあります。ましてやAIやボットがネット上で匿名で議論に加わる、人間が指示せずともAIが自律・自走して動く時代です。時代の大きな転換期に成長していく子どもたちには、氾濫する情報やAIとどのように向き合っていくか、そのためのトレーニングは極めて重要だと考えています。新聞社や出版社など、知見を持つ多くの皆さんと連携させていただきながら「ちよだリテラシー教育」を推進していきます。

取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生

物語や活字文化が生まれる千代田区ならではの授業やスクールロイヤーによる相談体制も【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.25】政治ジャーナリスト 細川珠生

聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。




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