連載記事:細川珠生のここなら分かる政治のコト

千代田区独自の地域活性化の施策とは? 古書店街や祭を活かした街づくり【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.26】

細川珠生のここなら分かる政治のコト

細川珠生のここなら分かる政治のコト

政治ジャーナリストの細川珠生氏がおくる、「細川珠生のここなら分かる政治のコト」。ママになって子どもの将来を願うと政治のことをちゃんと知っておきたいけど、子育てに仕事に忙しい…。そんなママに向けて、気…


日本中で少子化が進む中、年少人口(0歳から15歳未満)比率と生産年齢人口(15歳から65歳未満)比率が、東京都の平均を上回っている千代田区。それでも人口減少傾向にあることは、他の地域と一緒。多数の大企業の本社に加え、皇居や官庁など重要施設があることも特徴です。樋口高顕区長が考える、千代田区のこれからとは。

千代田区独自の地域活性化の施策とは? 古書店街や祭を活かした街づくり【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.26】お話を聞いたのは…
千代田区 樋口高顕区長

1982年生まれ。家族は妻と娘。巣鴨学園高、京都大学法学部卒。IT企業、都議会議員を経て、2021年より現職、23区最年少区長。現場主義を旨とし、年に一度、清掃車でごみ収集作業に従事。コロナ禍の飲食店を応援するため、神田カレースタンプラリー全124店を食べ歩いた。
>>千代田区・樋口高顕公式ページ



―人口減少は日本全体の現象ですが、人口動態を踏まえ、千代田区の今後についてどのようにお考えですか。
樋口区長:千代田区には今、6万9千人の区民の皆さんがおられます。世帯数は3万7千世帯。そのうち、単身世帯は2万1千世帯。つまり世帯数の6割が一人暮らし。ただ高齢者世帯の一人暮らしよりも、若年・中年の一人暮らしの方が多いんです。

―それは珍しいですね。全国では単身世帯で一番多いのが高齢者なので。
樋口区長:そうなんです。正に都心なので流動性が高いのですが、区民世論調査の結果では、在住かつ在勤の方も多いことが分かりました。つまりこの街に住み、この街で働いている人が意外に多かったんです。
千代田区独自の地域活性化の施策とは? 古書店街や祭を活かした街づくり【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.26】
―職住近接ですね。
樋口区長:今後、区としても考えていきたいのは、こうした単身の若年・中年層の方々に向けた取り組みです。日ごろ、あまり区役所の行政サービスを必要とせず、地域との関わりが少ない人が多いと想定されます。

―子どもができたり、介護が必要な状況になったりすると、行政や地域コミュニティに関心を持ちますよね。
樋口区長:区民世論調査を見ると、若年・中年の方たちも、町会や地域コミュニティに関心がないわけではないんです。ですから、アクティブな単身者の皆さんの力を区の取り組みに活かすような施策を考えています。1つには、区内には日本を代表するような大学や企業がたくさんありますから、こうした都心のリソースを活かして、学びや、楽しみ、交流などの場を作っていきたいと考えています。

千代田区独自の地域活性化の施策とは? 古書店街や祭を活かした街づくり【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.26】
―大企業がたくさんありますし、大学ということであれば、学び直しにも適していますね。
樋口区長:また、先日も神田祭がありましたが、江戸の祭礼文化を地域コミュニティに入るきっかけのようなものにできないかと考えています。

ーお祭りは、一歩を踏む出すのに良い、街の行事でもありますね。
樋口区長:先日の神田祭でも、「初めて半纏(はんてん)着ました!」とか「これをきっかけに町会に入りました」っていう単身者の方が少なくないんですね。他にも、近年、アクティブな単身の方には、ワーケーションとしてあるいは週末に、都心から離れて生活する二拠点居住の指向がありますので、地方の自治体と連携をして交流を進めるのはどうかと。

―二拠点居住は、国の地方創生の会議でも目玉施策の一つになっています。特に東京の夏は暑いですから、いいと思います。子どもがいると、私は実はちょっと難しいかなと思っていますが、夏休みだけというのは、あり得るのかなと思いますね。
樋口区長:いずれにしましても、若年・中年の単身世帯はこれまで行政と関わりが希薄でしたから、だからこそ取り組みたいテーマだと考えています。

―ほかにも、これからやりたいことはございますか。
樋口区長:そうですね。千代田区という「成熟した都市の持続的な発展」が大きなテーマだと考えています。これらを進める上で大切なことは幾つかあるのですが、ここでは3点ご紹介したいと思います。先ず1つは、先ほども触れました祭礼文化の継承です。例えば、区内には江戸由来の、神田明神の神田祭と日枝神社の山王祭があります。かつて徳川将軍家も上覧された由縁から天下祭と呼ばれ、文化的な価値も非常に高いです。主に区民の皆さんが担い手となっておられ、地域コミュニティの核にもなっていますから、行政としてしっかり応援していきます。

―先ほどの、若年・中年単身世帯の地域コミュニティへの関わりのきっかけとしても、しっかり継承されることが大事ですね。2つ目はなんでしょうか。
樋口区長:2つ目は、世界有数の古書店街である神田神保町の活性化です。元々、新聞、出版、書店、古書、印刷、製本という産業が集積している街です。そこで文字・活字文化を継承する一大拠点に向けて、今後は地域活性化やリノベーションを促進していきます。滞在空間としても居心地の良い、人中心の歩道空間創出に向けた取り組みも進めたいですね。

―古書店も含むと思いますが、今、本屋さんの存続が、国家的な課題にもなっています。3つ目はいかがでしょうか。
樋口区長:3つ目は、電気街であり、サブカルチャーなど多彩な文化が息づく秋葉原のまちづくりです。戦後、GHQによって露天商が集積し、電気部品やラジオから白物家電の電気の街、そしてサブカルになり、近年はメイド喫茶なども流行った、趣味の街でありましたが、実は、池袋や渋谷、中野にサブカル的な人気は奪われているんですね。秋葉原の存在感・魅力低下などを課題として認識しています。行政として、どういう秋葉原を思い描いていくのか、さまざまな方々と意見を交わし、まとめていかなければと考えています。秋葉原の多様な資源をどのように組み合わせれば最高に輝くのか、再開発による新たな施設や既存ビルを活用したTechやコンテンツの核となるフィールドづくりに加えて、新たな観光資源として神田川の水辺を生かした親水空間も検討しています。

―秋葉原の安全対策にも取り組まれたとか?
樋口区長:街の営みの大前提は安全・安心ですから。発端は、都議時代に地域の方から要望を受けたことです。こちら秋葉原は外神田という住所ですが、コンセプトショップの客引きなどが酷くて。特に、外神田の真ん中に区立小学校と、2つの幼稚園がありますから、皆さんから何とかしてほしいと。区長になって先ず手を付けたのが、「AKIBA安全・安心プロジェクト」です。地域住民、学校や園、保護者、商店街などの皆さん、それからコンセプトショップの方々にも入ってもらいました。関係する皆さんと連帯して継続した粘り強い取り組みの結果、違法な客引きや店舗は着実に減少しています。有名な「割れ窓理論」にもありますが、安全で安心な街を実現するためには身のまわりの小さな違反や乱れを見過ごさないことが大切なんです。街中のいたずら行為、「ヴァンダリズム」を看過しないと。違法な客引きに加えて、昨今のごみやステッカー、落書き、騒音もそうですね。「この街は悪いことがしにくいな、誰かが見ているな」と思わせる街の意思、規範意識を、外神田・秋葉原を愛する皆さんと築いていきます。

―古書店とテックの街、その対比が魅力の一つですね。楽しみです。
樋口区長:ありがとうございます。都心の千代田区には魅力的な資源がたくさんありますので、持続的に発展できるようなまちづくりに力を尽くしていきます。

取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生

千代田区独自の地域活性化の施策とは? 古書店街や祭を活かした街づくり【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.26】政治ジャーナリスト 細川珠生

聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。




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