鏡文字、漢字間違え…書き取りでパニック。「自分はダメ」と苦しむ娘…母と担任が自己肯定感を守った方法は【読者体験談】
「ダメな自分」と自分を責めて。苦しかった低学年時の国語の授業
- ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如多動症)グレーゾーンの特性による「読み書きの困難」への具体的な現れ方
- 「特別扱い」を嫌がる子への、担任の先生による心理的な配慮と声かけ
- 学校と家庭で「連絡ノート」をフル活用した、密な連携の重要性
- お子さんの年齢:大学1年生(現在)
- 診断名:ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)グレーゾーン
- 診断時期:小学1年生の6月頃
- エピソード当時の年齢:小学1年生
小学校に入学してすぐ、国語で大きな困難が立ちはだかりました。娘の書く字は平仮名は鏡文字に、漢字の書き取りではパーツが入れ替わっていました。本人は「ちゃんと見本を見て書いている」と言います。けれど、実際に出力される文字は違う……。
小テストで鏡文字を書けば、当然「△」や「×」がつきます。間違えた字は宿題として書き直さなければならず、課題がどんどん積み上がり続けます。不安から、娘はパニックや自傷行為を起こすようになりました。
元々、自己肯定感が低く「ダメな自分」「できない私」と自分を卑下しがちだった娘にとって、真っ白な解答欄は重く、心にのしかかっていたのだと思います。
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担任の先生という「安全基地」で見えた小さな光
このままでは勉強が大嫌いになってしまう……。そんな不安の中、救いとなったのは小学1年生の担任の先生でした。ベテランの女性教師だった先生に相談すると、笑顔でこう言ってくれたのです。
「私に任せてください。◯さんとお話してみますね」
その言葉通り、先生は娘のために勉強の取り組み方を工夫してくれました。ほかのみんなと同じペースが難しい娘のために、宿題の量を減らし、ひとつの文字を丁寧に書く練習にすることを提案してくれたのです。
二人三脚で築いた「待つ」という信頼関係
学習指導については先生を信頼し、私は家庭での「環境づくり」に徹することを決めました。
- 連絡ノートでの密な共有:学校での様子と家での様子を毎日共有し、私の接し方についても先生からアドバイスをもらいました。
- 家庭では「勉強」に口を出さない:勉強は先生にお任せし、家では「頑張ってるね」という承認の声かけだけに留めました。
- マイナスな言葉を封印する:娘が自分を悲観しないよう、「できないこと」への注意は一切せず、プラス思考な言葉選びを心がけました。
「できた!」の積み重ねが変えた娘の世界
小1の頃、みんなの半分未満だった宿題の量は、学年が上がるにつれて少しずつ増えていきました。自信を取り戻すのと並行するように、いつの間にか鏡文字を書く回数も減っていったのです。
小学3年生になった頃、娘はついに漢字の書き取りができるようになりました。 少しずつ点数が伸びていった漢字テストを、嬉しそうに見せてくれた娘の顔を、今でも忘れることができません。
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あの日、焦らずにコツコツと積み上げた経験は、大学生になった今の娘の大きな糧になっています。現在は、スマートフォンやパソコンのメモ機能を駆使して自分でスケジュールを管理し、忙しい教職課程の単位も着実に取得しています。
かつて文字が書けずに泣いていた子が、塾のアルバイトで小学生に勉強を教えている。そんな姿を見るたびに、「子どもは成長する」ということを痛感します。
子どもの成長を信じて、ゆったり見守る
振り返ってみると、やはり学校と家庭の連携が何よりも重要だったと感じます。相性の良い先生との出会いにも恵まれましたが、親が「いつかは習得できる」と気長に待つ姿勢を持てたことが、娘のパニックを防ぐクッションになったのかもしれません。
今、目の前のお子さんの書き取りに悩まれている方がいたら、どうか悲観せず、お子さんの可能性を信じて、ゆったりと見守ってあげてほしいなと思います。
イラスト/よしだ
※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせていただきます。
読み書きの困難があるお子さんでは、見えている情報を正しく処理して書字として出力する過程に難しさがあります。この困難さを経験したことのない周りの方から、努力ややる気の問題と捉えられ、叱責を受けてしまうこともあります。また、一生懸命に取り組んでいるのになぜかできないという経験が続くことで、自己肯定感の低下が目立つお子さんも少なくありません。「練習が足りないのでは」「教え方が悪いのでは」とご自身を責めてしまうご家族もいらっしゃり、ご本人もご家族もお辛い経験をされてしまうことがあります。こうした困難は、育て方で決まるものではなく、お子さんそれぞれの特性によるものです。
今回のエピソードのように、宿題の量を調整したり、「一文字を丁寧に」という形に変えたりといった工夫は、お子さんが力を発揮しやすくする大切な支援です。加えて、マスを大きくする、書く量を減らす(板書はタブレットで撮影して管理するなど)、視覚的に分かりやすい見本を提示する、書字以外の方法(口頭やタブレットなど)で理解を確認するといった、お子さんの特性に合わせた工夫も有効です。また、家庭で「できていること」に目を向け、安心できる場を保つ関わりも、非常に大きな意味を持ちます。
「今できないこと」がそのまま将来も続くとは限らないという点も、とても重要です。適切な支援や環境の中で、少しずつ力を伸ばしていくお子さんも多くいらっしゃいます。目の前の困難に大きなご不安を感じられているご家族もいらっしゃることと思います。そのようなご家族にとって、この記事が希望につながるものであるように願っています。(監修:小児科医室伏佑香先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。