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【学校と睡眠、摂食症、いじめ】「子どもからのSOS」から分かることは?【第16回日本小児心身医学会 関東甲信越地方会レポート】

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学会テーマに込めた思いーー今、子どもの心身に何が起きている?


日本小児心身医学会は、子どもの「こころとからだ」の諸問題に対応するための臨床医の育成や研究、他業種との連携による質の高い医療の実践などを目的に設立された学会です。

小児心身医学会ガイドラインの発刊や定期的に学術集会や地方会を開催しており、今回は第16回目の関東甲信越地方会として「令和の学校と子どものこころとからだ」をテーマに、千葉県の聖徳大学で開催されました。

https://www.jisinsin.jp/
参考:一般社団法人日本小児心身医学会

まず、大会長の岡田 剛先生(医療法人聖峰会 岡田病院)から、今回のテーマを掲げた背景が語られました。

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近年、不登校の数は高止まりの状態が続いています。その要因は、成績や友人関係、心身の不調など多岐にわたりますが、実はその背景に心理・精神的な疾患や感覚過敏などが隠れていることも少なくないといいます。

「学校のあり方が大きく変わる中で、心身の不調を訴えて小児科を訪れる子が増えています。医療や心理、福祉に携わる大人が今何に注目し、何ができるのかを改めて考えたい」という岡田先生の思いが、今回のテーマには込められています。

教育講演1:子どもにおける睡眠の問題と家庭・学校での対応


続いて、金子 宜之先生(日本大学医学部精神医学系精神医学分野)より、睡眠が子どもの心に与える影響と家庭・学校での対策についての講演が行われました。


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講演は睡眠の概要から始まりました。子どもの睡眠は成人の睡眠とは量・質・構造とも大きく異なり、発達段階と密接に結びついていると言います。

ある国際的な調査で得られたデータによると、推奨される睡眠時間は学童期で9~12時間、 思春期で8~10時間と言われていますが、現状、日本の子どもはこれよりも少し短い傾向が見られます。

睡眠が乱れると、概日リズム障害や不眠症などの睡眠障害が出現することがあります。また、生活面においても、朝起きられず登校に支障が出る、友人関係が築けない、授業に参加できず進路に影響するなど、多岐にわたる影響が考えられます。睡眠の乱れには個人差がありますが、以下のような要因が挙げられました。

生活環境等の外部要因: スマートフォンなどの電子機器の使用や、塾などによる多忙化が背景にある場合があります。

思春期特有の身体の変化: 睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が遅れるようになり、睡眠圧(眠気)も高まりにくくなるという特徴があります。


親子の認識のズレ:子どもの視点では、ゲームやSNS、友人との交流に時間を使えるため、夜更かしを「あまり困っていない」と感じている可能性があります。しかし、保護者は「学校に行ってほしい」「集中してほしい」という願いから、つい子どもにプレッシャーをかけてしまい、それがさらに睡眠を乱す悪循環を招くこともあります。

ここまでに挙げた要因のほかに、発達特性が子どもの睡眠に影響を与えるケースについても触れられました。

ASD(自閉スペクトラム症): 感覚過敏、不安・抑うつ、就寝前のルーティンへのこだわり、外出の少なさなどが影響します。

ADHD(注意欠如多動症): 過活動、集中困難、スケジュール管理の苦手さ、先延ばし傾向、ネット依存などが影響します。また、睡眠障害の一種である「ナルコレプシー」と共通する遺伝子の存在も指摘されています。

対策を考える上での前提は、「朝起きられないなどの睡眠の問題は、なまけややる気の欠如によるものではなく、医学的な疾患・病態である可能性」を考慮することです。生物的、心理的、社会的な要因が背景にあることを理解し「今の本人と未来の本人に寄り添う」ことが大切になります。
そのうえで、具体的なアプローチとして、以下のような内容が挙げられました。

生活習慣の調整: 起床時の日光浴、週末も起床時間を一定にする、朝食、運動習慣、電子機器の制限。

環境調整: 苦手な刺激を寝室から減らす、落ち着くために必要な物体を用意するなど、個々の特性に合わせて調整します。

また、家庭だけで対応するのではなく、周囲との連携も重要になっていくということでした。

学校との協力: 睡眠状況を共有して対応を統一し、登校時間の調整や保健室登校などの「合理的配慮」を視野に入れます。

医療機関の活用: 睡眠疾患を早期に診断し適切な治療を行うことに加え、合理的配慮に診断書が必要な場合もあるため、医療機関とも連携することが大切になります。
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ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)などの発達障害には睡眠障害が合併しやすく、多くの患者さまやご家族の方々が悩まれていることと思います。発達障害の方に合併する睡眠障害は多彩である一方、御本人や御家族が言語化できず、医療機関に適切に相談できないことがしばしばあります。
また、睡眠障害の発症には、特性による心理的要因と、ゲームやSNSなどの社会的要因が重なっている方が多く、しばしば原因を解きほぐし解決するために時間がかかります。困っていらっしゃる場合は、睡眠医療機関への受診を御検討頂ければ幸いです。

教育講演2:食べられない子どもたちに医療と教育ができること


次に、大谷 良子先生(公益社団法人発達協会王子クリニック・獨協医科大学埼玉医療センター子どものこころ診療センター)より、摂食症の背景と、周囲の大人がどう向き合うべきかについての講演が行われました。

摂食症は、食べることに強い不安やこだわりを感じ、それが「食べられない(拒食)」や、時に「食べ過ぎる(過食)」に繋がってしまう疾患です。コロナ禍をきっかけにその数は増加し、2019年から2020年にかけては2.2倍にまで増加しました。最近では、中学生の「神経性やせ症」の増加に加え、2022年ごろからは、嘔吐恐怖、気分の落ち込みから食べることが難しくなるやせ願望を伴わない「回避・制限性食物摂食症」の小学生が増えるなど、臨床現場での状況も変化しているといいます。

大谷先生は、「食べられない」「低栄養である」という状態は、単なる食の問題ではなく「子どもからのSOS」であると強調します。不安や落ち込みといった心のストレスが、食生活の乱れとして身体に現れているのです。
また、日本独自の傾向として「痩せていること」を過剰にポジティブに捉えてしまう文化的な背景も指摘されました。

中学生: ネガティブな感情がダイレクトに食行動に影響する。

高校・大学生: 「ダイエット行動」そのものがエスカレートして食行動を乱す。

このように、年齢によっても食の問題が起きるメカニズムには違いがあります。

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特に注目すべきは、「発達障害との併存」についての知見です。ある調査では、摂食症の子どもの約2割になんらかの発達障害が併存していたというデータが示されています。特性がある場合、症状が長期化しやすく、体重が回復した後も生活上の困難が残りやすい傾向があるため、より丁寧な理解が必要です。

講演では、摂食症で入退院を繰り返していたお子さんが、背景にあるADHD(注意欠如多動症)の特性(忘れ物の多さなど)に気づき、そこに焦点を当てた介入を行ったことで、生活上の困りごとが減少した、という事例も紹介されました。


摂食症は命に関わる可能性も高いため、早期発見、早期対応が重要ですが、短期的な栄養介入だけでなく、先を見据えた関わりが大切になってきます。

摂食症のある子どもにはそれぞれ背景があるため、その背景に応じたアプローチが必要です。本人に「治療の動機づけがない時期には、摂食症という病名を無理に押しつけない」ことも重要だという言葉が印象的でした。

また、適切な対応をするためにも、家庭だけでなく医療と教育が連携していくことが大切だと語られていました。学校での過ごし方を知ることで、摂食症の背景が見えてくることがあります。医療コーディネーターなども活用し、多職種で情報共有を行いながら支えていく仕組みづくりが求められています。

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楽しく美味しく食べることが難しくなる「摂食症」という病気があります。これは本人やご家族のせいではありません。
病気でなくても、心の疲れが食べづらさにつながることもあります。気づきのきっかけとして、家庭のみならず学校での様子も大切です。心配なことがあれば、保健室やかかりつけのお医者さんにご相談ください。

特別講演:いじめ防止対策推進法から見るいじめ対応の現状


後半には、真下 麻里子先生(ストップ!いじめナビ弁護士)による、法律の観点から考えるいじめの現状と大人が知っておきたいことについて講演がありました。

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この講演では「いじめ」に対して法律の観点から現状と対策について語られました。2013年の「いじめ防止対策推進法」の制定以降、令和6年度には「重大事態」とされたものが1404件あり、そのうち生命に関わるものが95件にのぼっています。

重大事態とは、被害者に「生命・財産・心身に重大な被害」が生じた場合や「相当の期間」欠席を余儀なくされた場合に認定されます。こうした事態を防ぐための早期対策が重要です。

議論を進める土台として、「いじめ」についての一般的感覚と「法律上の定義」の差異を把握することが不可欠です。

法律上のいじめの定義:本人が「心身の苦痛」を感じているかどうかです。これは民法上の不法行為や一般的な感覚とは異なる部分があります。

事実認定の考え方: 例えば「仲間はずれにされた」という訴えを相手が否定している場合、「仲間はずれ」の有無ではなく、「具体的にどんな行為があったのか」という事実と、「本人が心身に苦痛を感じたか」という事実の有無を確認します。心身の苦痛を感じていれば、それは現行法上、いじめ事案となります。

いじめ事案が発覚した際の大人の対応についても話が展開していきました。まず、いじめ防止対策推進法の観点からは「だれかの責任を追及」ではなく、「早期発見と組織的な対応」が求められます。

被害者への対応: 早急に状況を説明し、安心感を与えることが最優先です。

加害者への対応: 日本では憲法で「内心の自由」が認められているため、たとえ「むかつく」などと思っていたとしても、心の中は絶対的に自由です。重要なのは「どんな問題解決手段を選択したか」です 。いじめを行った生徒には「腹を立てること自体は問題ないし、その気持ちを否定する必要もない。しかし、その手段を選んで本当に良かったのか(ほかにもっと良い手段があったのではないか)」と問いかける姿勢が大切です。

子どもの安心安全を確保し、教育環境を改善するために以下の点に留意して対応することが求められます。

被害者を非難しない: 「いじめられるほうも悪い」という流れにしないことが鉄則です。この考え方は、加害者側から成長の機会を奪うことにも繋がります。

家庭の問題にすり替えない: 被害者や保護者の事情を、本人の落ち度を糾弾する材料にしてはいけません。事情はあくまで「子どもの理解」や「事実の分析」、「再発防止」を検討するための材料です。

責任の所在ばかりを注視するのではなく、子どもの安全を確保し、教育現場をより良くすることに注力することが大切であると締めくくられました。
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「いじめ」という言葉は、とてもインパクトが強いので、つい私たち大人も振り回されがちです。しかし、最も大切なのは、子どもの安心安全の確保です。他方で同時に、子どもの成長に“失敗”は不可欠ですから、教育現場が「失敗できる場所」であり続ける必要もあります。これらの難しいバランスを成り立たせるには、保護者の協力が不可欠です。強い言葉に振り回されることなく、なるべく冷静でいること、「みんなで子どもを育てていく」という視点をもつことがとても重要です。

未来への展望:5歳児健診における自治体連携

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昼休みには、株式会社LITALICOによる「LITALICO検診ソフト」の紹介が行われました。お菓子が振る舞われる和やかな雰囲気の中、2028年までの100%実施を掲げる「5歳児健診」の現状と課題が語られました。

現在、5歳児健診の実施率は約15%に留まっており、自治体側の実施・フォローアップ体制の構築にかかる負担が導入の壁となっています。これに対し、本ソフトは事前問診のオンライン化や専門家監修のレポート作成などを通じて、自治体の業務負担を軽減し、保護者へ具体的なサポート方法を届ける仕組みを提供しています。紹介後の個別相談では、多くの参加者から質問があり、関心の高さがうかがえました。

大人がサインを察知し、向き合っていくことが大切


最後に、今回の地方会のテーマである「令和の子どものこころとからだ」に向き合うすべての人へ、大会長の岡田剛先生から寄せられたメッセージを贈ります。

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子どもたちが自分らしく、健やかに学校生活を送るためにはまず学校がその子にとって『安心安全な場所である』というのが大前提です。中にはどうしても学校という場所に合わない子や教室に入れない子がいます。

そのような子どもたちは言葉以外のさまざまな方法でつらさや困りのサインを出します。何となく元気がない、イライラしているといった気持ちの表れだけでなく頭が痛い、おなかが痛い、朝起きられないといったからだの症状も実はサインの可能性があり、大人はサインをなるべく早く察知し、適切なタイミングと距離感で向き合うことが求められるのではないでしょうか。学校での子どもの抱える問題に対しては学校内で解決できないことも多々あり、医療や心理、福祉行政や法律といったさまざまな立場の大人が連携することが大切です。本学会もそんな連携の輪の一つとして『子どもたちのWell Being』に貢献できればうれしいです。

取材・執筆/佐藤クロ

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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