テストでいい点だった日。「すごい!」のあとに足したい、たったひとこと
ランドセルから、赤ペンで丸のついたテストが出てきます。100点。あるいは、いつもよりずっといい点。
「えー、すごい!」「100点だ!」
口がうごく前に、もう声が出ています。
これは、わが子を心から愛している親なら、抑えるほうがむずかしい自然な反応です。じつは、それで何も間違っていません。ただ、その「すごい!」のあとに、もうひとことだけ。それを足せた日と足せなかった日では、半年後・数年後の子どもの「学びへの向き合い方」が、少しずつ違ってくる。
そんな研究結果が、じつはあるのです。
「すごい!」は、愛情がそのまま出てきた言葉
子どもが何かをやりとげた瞬間、親の脳ではよろこびのホルモンが分泌され、ことばが思考より先に飛び出すと言われています。これは、わが子の日々を見守ってきた人にしか起こらない、貴重な感情の反応です。
「うれしさをすぐにことばにすること」自体は、子どもにとって何よりも大切な体験。「自分のがんばりを見ていてくれた」というたしかな実感が、自己肯定感の土台になっていきます。
ですから、まずはこうお伝えさせてください。「すごい!」と思わず口をついて出てしまった自分は自然な感情。むしろそれは、子どもの努力に共鳴できる親の感受性の証なのですから。
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けれど、研究者がそっと教えてくれた小さな発見
ここからは、世界のほめ方の研究のお話です。じつは、知っておくと役に立つ発見がひとつだけあります。
平均10歳の子どもとそのお母さん120組を10日間にわたって追いかけ、毎日のほめ方を記録した研究があります。「あなたは賢いね」のように本人の能力をほめる声かけが日常的に多かった子は、半年後に「能力は生まれつき決まっている」という考え方をもちやすくなっていました(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校ほか)。*1
これは「すごい!が悪いほめ方だ」という話ではまったくありません。結果や能力にスポットを当てた声かけだけで毎日が終わってしまうと、子どもは少しずつ「結果を出さないとダメ」「能力がないとほめてもらえない」という不安を抱きはじめる。研究者からの、やさしい注意のようなものです。
小学1・2年生のころから、その違いは芽を出しはじめている
「うちはまだ低学年だから、まだ気にしなくても」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ところが、小学1・2年生424人を1年間追いかけた別の研究では、「努力で力は伸ばせる」と信じている子のほうが、年度末の算数の標準テストで成績が高くなる傾向が見えてきました(テンプル大学ほか)。*2
何か特別なことをする必要はありません。むしろ、小学1 〜 2年生という時期は、「勉強って、どんなふうにがんばるものか」という感覚が、子どものなかで初めて形をとっていく季節。だからこそ、ことばのかけ方ひとつが、その後の「がんばり方」の輪郭を、やわらかく決めていく時期でもあります。
逆にいえば、低学年のいまこそ、ことばの「ほんの少しの足し算」が長くきいてくる年齢でもあるのです。
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「すごい!」のあとに、たったひとことを足してみる
そこで、こんな順番をご提案させてください。
「100点!?すごい! → 毎日のがんばりの積み重ねだね」
「やったね! → 毎日コツコツやってたもんね」
「うわぁ、よくがんばった! → ここまでこられたの、自分でも誇らしいね」
最初のよろこびは、そのまま。一拍おいて、ひとことだけ足す。
子どもは「結果をほめられた」だけでなく、「自分の歩んできた時間そのものを見てもらえた」と感じます。
例えば、1 〜 3歳のころに親から「努力」をほめられて育った子どもたちは、5年後の7 〜 8歳になったとき、「がんばれば変われる」という考え方が深く根づいていた、という長期追跡研究もあります(シカゴ大学・スタンフォード大学ほか)。*3 過程に目を向けたほめ方は、すぐではなく、子どもの内側で時間をかけてゆっくり育つもの、ということです。
「毎日の積み重ね」って、具体的に何のこと?
「積み重ねだね」と言うとき、思い浮かぶ具体的な場面があると、ことばに温度がのります。たとえば、朝ごはんの前にドリルを広げていた日々。わからない漢字を、寝る前に「これ教えて」と聞きにきた瞬間。お風呂のなかで九九を口ずさんでいた声。一度まちがえた問題を、消しゴムで何度も書き直していた小さな背中。
こうした場面に気づいていたこと自体が、じつは、もっとも大きな愛情表現なのかもしれません。テストの当日だけ反応するのではなく、毎日の小さな努力を見ていた、という親のまなざしが、ことばを通して子どもに手渡されていきます。
そのうちのひとつでも添えられたら、「がんばりの積み重ねだね」は、ぐっとリアルになります。
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思いつかない日は、ひとことだけで大丈夫
仕事のあと、夕飯の支度をしながらテストを見せられた。具体的な場面なんて、すぐには思い出せない。そんな日もあります。
そういうときは、「毎日の積み重ねだね」のひとことだけで充分です。
子どもは、親が自分の毎日を、ずっと見ていてくれた、というその実感だけで、明日もまた机に向かう力をもらいます。
「すごい!」も、「積み重ねだね」も、どちらも親の愛情です。ただ、後者のほうが、子どもの未来に少しだけ長くきいてくる。そんなふうにとらえていただければ、それで充分です。
低学年の子どもは、まだ「結果」と「自分そのもの」を上手に切りはなせません。点数で評価される世界に入ったばかりの彼らにとって、「過程まで見てくれている人が、家にはいる」という感覚は、何ものにも代えがたい安心感になります。
***
「100点!」を見て、心からよろこべる親であること。それだけで、もうとてもすばらしいことです。
そこにひとことを足せる日があれば、それは小さなボーナス。足せない日は、これまでどおりのよろこびを、まっすぐに伝えてあげてください。
FAQ(よくある質問)
Q. これまでずっと「すごい!」「やったね!」とだけほめてきました。いまから変えても遅くないですか?
A. まったく遅くありません。ほめ方の研究は、ある日から変えてもその後の経験で十分に積み重なっていくことを示しています。「これまでがダメだった」ではなく、「今日からひとこと足してみるだけ」と気軽に考えていただいて大丈夫です。Q. テストの点が下がった日も、何かほめたほうがいいですか?
A. 点数そのものではなく、「準備をしていた様子」や「直しに取り組んでいた姿」など、過程を見つけて声にしてあげてください。「結果が悪かったから今日はほめない」ではなく、結果と切りはなして努力を認めることが、次へのやる気につながります。
Q. 「努力」「積み重ね」ばかりほめると、結果を気にしない子になりませんか?
A. 努力をほめると結果への意識が下がる、という研究結果は出ていません。むしろ、「努力で結果は変えられる」と信じている子のほうが、自分から目標に向かう力が育つことがわかっています。結果のよろこびは自然な反応としてそのまま表現したうえで、過程をことばにする、という順番がおすすめです。
Q. 「毎日の積み重ねだね」と言っても、子どもがピンとこない様子です。
A. 「積み重ね」は抽象的なことばなので、低学年の子には伝わりにくい場合があります。そんなときは、「毎朝、ドリルやってたよね」「あの漢字、何回も書き直してたよね」のように、見ていた具体的な場面を添えてあげてください。子どもは「あ、見ててくれたんだ」と実感できます。
Q. 兄弟で、片方が満点、片方が点数が低かったとき、どう声をかけたら?
A. それぞれの子に、別々のタイミングで声をかけるのが理想です。比較ではなく、その子だけの「積み重ね」を見つけて伝える。点数が低かった子にも、「ここまで進んだね」「この問題、前は解けなかったよね」と、その子なりの成長をことばにしてあげてください。
(参考)
*1 Pomerantz, E. M., & Kempner, S. G. (2013)|Mothers’ Daily Person and Process Praise: Implications for Children’s Theory of Intelligence and Motivation. Developmental Psychology, 49(11), 2040–2046.
*2 Park, D., et al. (2016)|Young Children’s Motivational Frameworks and Math Achievement: Relation to Teacher-Reported Instructional Practices, but Not Teacher Theory of Intelligence. Journal of Educational Psychology, 108(3), 300–313.
*3 Gunderson, E. A., et al. (2013)|Parent Praise to 1- to 3-Year-Olds Predicts Children’s Motivational Frameworks 5 Years Later. Child Development, 84(5), 1526–1541.
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