「下手、練習来るな」とチームメイトに言う子、監督がチーム全体の問題として話をしたら怒った親が即退団させた。今の時代、どんな対応が良いの?
普段からもめ事を起こす子が、チームメイトに「下手、練習来るな」と言ったので、監督がチームの問題として全員に話をしたが、それを知った保護者から「うちの子が言ったと決めつけるなんて。退団させる」とその日の夜に連絡があり即退団していった。
子ども同士で問題に向き合うところに親が介入しすぎでは?今の時代の指導者、チームとしてどんな対応が望ましいのか?とのご相談。同じ悩み、全国の指導者が抱えているのでは?
ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ご自身が今実践していることも含めてコーチにアドバイスを送ります。
(構成・文島沢優子)
(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)
<お父さんコーチからの質問>
こんにちは。
いつもサカイクのコラムを拝読させて頂き参考にさせて頂いている初心者父親コーチです。(指導年代:U-10)
この前チームのいさかいがありました。
野球とサッカー両方をしている子どもが三角パスの練習中に2人から「パスがへたくそ。練習くるな」と言われたそうで練習を暫く休んでいました。
お母さんから監督に相談があり、練習の後にチーム全員に話をしました。
言われた子から、内容と誰が言ったかの話があり、他のチームメイト達も何人か言っている所を見た、聞いたという子達もいましたが、2人とも「言っていない」のままでした。
日にちが経っているので言った言わなかったの話は不毛なのはわかっています。
監督からはそれ以上は追求せず、仲間が嫌な事を言われているのに見て見ぬふりをしたみんなも良くないこと、チームワークとは何か?ということと、次もし誰かが傷つけられて練習いきたくない、やめたいとなったら、その時は傷つけた子に去ってもらうという所まで話しました。あくまでチームみんなの問題として。
言ったうちの一人は入団当初から揉め事の火種で、自分からちょっかいを出して仕返しをされると「コーチ、○○が叩いてきた!」と責任転嫁したり、練習中もふざけることがあり、やったのにやってないと言う、最近は練習中に「ふざけるな、真剣にやれ」というと「ふざけてませーん」と返します。
その夜にその子のお母さんから連絡があり、「うちの子は言っていないと言ってるのに一方的に決めつける監督のチームはやめさせて頂きます」と即退団してしまいました。
その子はサッカー続けたいと言っていたそうで、お母さんの決断だと思います。私が親なら、その子の普段の素行は親もある程度は知っていただろうし、「事実はわからないけどもしチームメイトの子を傷つけたならすみません、言って聞かせます」的なスタンスになると思うのですが、謝る事もなくスパっと退団をした親御さんの対応に少々憤りを感じています。
子ども達でまず向き合い考えるところに親が介入しすぎているのではと思ってしまうのですが、この時代の指導者、チームとしてどんな対応が望ましいのでしょうか。
指導の悩みとは異なるのですが、アドバイスいただけましたら幸いです。
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
このようなチーム内での子ども同士の対立はよくあることです。
チーム内に「あいつが嫌だ」と言う子が出てきたのです。あいつがいるから違うチームに行きたい、などと言います。片方が少し口が悪いというか、そういうところは確かにあるのですが、聞いていると子ども同士の言い合いぐらいのレベルです。
それが許せないという子が最近多くなった気がします。自分の中で受け流せないのです。
小学生なのに「俺は根に持つタイプだから」みたいな言い方をします。それでもやはり子どもらしいところは持っていて、親に「行きなさい」と無理やり行かされるわけですが、来てしまえば楽しそうにサッカーをしています。
一見すると落ち着いたようには見えるのですが、そこを放置しないことが重要です。やはりお互いに変わったほうが絶対よいので、私から話をします。ご相談文に書いておられるように「チームとしてどうしたらいいのか」を私も子どもたちと話し合います。
まずは「周りでそんなことを言ってる子がいたら、みんなはどうしますか?」と問いかけます。チームだからみんなが協力するとしたら、止める子がいるよね?といった話もします。じゃあどんなことができますか?とまた問いかける。
例えば「そんなこと言うなよ」などと言える人たちになる。見て見ぬふりじゃなくて介入できる人になってもらいたいので、私のチームもいつもそんな話し合いをします。
周りの人にも責任があるよっていう話もします。そういったことを何回もする必要があります。
一回でできるようになるわけではないので、事あるごとにそういう話をしながら、ほかにも対立している2人の話を聞きながらチーム全員の問題にします。誰々と誰々がこんなふうでというような話ではなく、こういうことが今チームの中で起きてますと話す。いわば「みんなの問題」にします。
意見を言ってもらうと、子どもたちは「あいつだな」とわかるため「あいつがこうだから」と個人攻撃になることもあります。
しかし犯人探しが目的ではないので、そういうときは「ちょっと待って」と割って入り「誰にでも起こるかもしれないでしょ?」と諭します。ほかのみんなも、そういうふるまいをするかもしれないよね、と。
そうやって常に「チームの問題」と子どもが受け止めるような雰囲気を作っていけたらと思います。
先日、ドイツ・フライブルクに住む中野吉之伴さんとコーチングスクールを開催したのですが、そこで中野さんがドイツの子どもたちの話をしてくれました。
ドイツの子どもたちは誰かが何か言ったときに、それを批判するのではなく「僕はこう考える」とか、みんなそれぞれが自分はこう考える、自分はこう考えるという言い方で話し始める。それは自分はおかしいと思う。僕はこんなふうに考えたいと述べるそうです。
日本はなんか問題が起きて話し合いになると、問題を起こした子に対して「おまえさ、それはおかしいよ」と話してしまう。そうなると、言われた子は意見の中身ではなく「あいつは俺のことを嫌いだからだ」などとマイナスにとらえます。
そのように論点がすり替わってしまうことに注意しないといけません。指導者は個人を責めるのではなく、あくまでも「みんなにも起こることだからどうしますか?」という姿勢を貫くことが重要です。
私のチームにはフィロソフィーがあります。
協力や、みんなでサッカーを楽しむことにふれたミッション、ビジョンみたいなものです。問題が起きたら「うちのチームが目指しているのはここだよね?」とそこにいつも戻れます。
もっと言えば、それがあることでコーチも迷わないで済みます。クラブでできなければ、ご自分が担当する学年だけでもいい。そういったものをぜひつくってみてください。
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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)
トラブルがあると、どちらかがチームをやめるのもよくあるパターンです。子どもと同じように、親が自分の中で受け流せないのです。ケースによっては、子どものなかではすでに解決しているのに、保護者のほうがが我慢できずやめさせることもあります。
私も以前、やめたいと言ってきた子の親御さんから相談も受けたことがあります。少しやりとりをしてから、私はこう伝えました。
「これから先、息子さんがどんどん大きくなる間に、嫌なやつがいるとかそんなことはいっぱい出てきます。でも、そのたびにそれから逃げていると、高校や大学になってからはその都度親に交通整理はさせられません。例えば今はそう思ってるけど考え方を変えたらどう?など、親として話をしていただいたほうがよいのでは?」
そう話すと、親御さんたちは「そうなんですよね。簡単にチームを変わればいいって思われるのもちょっと困るし」と話してくれます。保護者とコーチが同じ方向を向けるような方法を探れるといいですね。
私からのアドバイスは以上です。
チーム全体の問題としてとらえ、個人を責めるのではなく、みんなで解決策を考えること。
保護者との向き合い方については、子どもが将来直面するであろう困難への対処法をともに考えるスタンスの重要性を伝えること。
この2つをご検討いただけたらと思います。
池上正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
子ども同士で問題に向き合うところに親が介入しすぎでは?今の時代の指導者、チームとしてどんな対応が望ましいのか?とのご相談。同じ悩み、全国の指導者が抱えているのでは?
ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ご自身が今実践していることも含めてコーチにアドバイスを送ります。
(構成・文島沢優子)
<お父さんコーチからの質問>
こんにちは。
いつもサカイクのコラムを拝読させて頂き参考にさせて頂いている初心者父親コーチです。(指導年代:U-10)
この前チームのいさかいがありました。
野球とサッカー両方をしている子どもが三角パスの練習中に2人から「パスがへたくそ。練習くるな」と言われたそうで練習を暫く休んでいました。
お母さんから監督に相談があり、練習の後にチーム全員に話をしました。
言われた子から、内容と誰が言ったかの話があり、他のチームメイト達も何人か言っている所を見た、聞いたという子達もいましたが、2人とも「言っていない」のままでした。
日にちが経っているので言った言わなかったの話は不毛なのはわかっています。
監督からはそれ以上は追求せず、仲間が嫌な事を言われているのに見て見ぬふりをしたみんなも良くないこと、チームワークとは何か?ということと、次もし誰かが傷つけられて練習いきたくない、やめたいとなったら、その時は傷つけた子に去ってもらうという所まで話しました。あくまでチームみんなの問題として。
言ったうちの一人は入団当初から揉め事の火種で、自分からちょっかいを出して仕返しをされると「コーチ、○○が叩いてきた!」と責任転嫁したり、練習中もふざけることがあり、やったのにやってないと言う、最近は練習中に「ふざけるな、真剣にやれ」というと「ふざけてませーん」と返します。
他のチームメイト達もその子には関わりたくない、うざいという事をよく言うようになりました。
その夜にその子のお母さんから連絡があり、「うちの子は言っていないと言ってるのに一方的に決めつける監督のチームはやめさせて頂きます」と即退団してしまいました。
その子はサッカー続けたいと言っていたそうで、お母さんの決断だと思います。私が親なら、その子の普段の素行は親もある程度は知っていただろうし、「事実はわからないけどもしチームメイトの子を傷つけたならすみません、言って聞かせます」的なスタンスになると思うのですが、謝る事もなくスパっと退団をした親御さんの対応に少々憤りを感じています。
子ども達でまず向き合い考えるところに親が介入しすぎているのではと思ってしまうのですが、この時代の指導者、チームとしてどんな対応が望ましいのでしょうか。
指導の悩みとは異なるのですが、アドバイスいただけましたら幸いです。
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
このようなチーム内での子ども同士の対立はよくあることです。
私が指導しているチームでも似たようなことはありました。
■落ち着いたように見えても放置しないことが重要、「チームとして」の話をする
チーム内に「あいつが嫌だ」と言う子が出てきたのです。あいつがいるから違うチームに行きたい、などと言います。片方が少し口が悪いというか、そういうところは確かにあるのですが、聞いていると子ども同士の言い合いぐらいのレベルです。
それが許せないという子が最近多くなった気がします。自分の中で受け流せないのです。
小学生なのに「俺は根に持つタイプだから」みたいな言い方をします。それでもやはり子どもらしいところは持っていて、親に「行きなさい」と無理やり行かされるわけですが、来てしまえば楽しそうにサッカーをしています。
一見すると落ち着いたようには見えるのですが、そこを放置しないことが重要です。やはりお互いに変わったほうが絶対よいので、私から話をします。ご相談文に書いておられるように「チームとしてどうしたらいいのか」を私も子どもたちと話し合います。
まずは「周りでそんなことを言ってる子がいたら、みんなはどうしますか?」と問いかけます。チームだからみんなが協力するとしたら、止める子がいるよね?といった話もします。じゃあどんなことができますか?とまた問いかける。
例えば「そんなこと言うなよ」などと言える人たちになる。見て見ぬふりじゃなくて介入できる人になってもらいたいので、私のチームもいつもそんな話し合いをします。
■周りにも責任があるということも何回も話す必要がある
周りの人にも責任があるよっていう話もします。そういったことを何回もする必要があります。
一回でできるようになるわけではないので、事あるごとにそういう話をしながら、ほかにも対立している2人の話を聞きながらチーム全員の問題にします。誰々と誰々がこんなふうでというような話ではなく、こういうことが今チームの中で起きてますと話す。いわば「みんなの問題」にします。
意見を言ってもらうと、子どもたちは「あいつだな」とわかるため「あいつがこうだから」と個人攻撃になることもあります。
しかし犯人探しが目的ではないので、そういうときは「ちょっと待って」と割って入り「誰にでも起こるかもしれないでしょ?」と諭します。ほかのみんなも、そういうふるまいをするかもしれないよね、と。
そういう方向に持っていきます。
そうやって常に「チームの問題」と子どもが受け止めるような雰囲気を作っていけたらと思います。
■日本は意見の相違を「自分のことが嫌いだからだ」などマイナスにとらえがち
先日、ドイツ・フライブルクに住む中野吉之伴さんとコーチングスクールを開催したのですが、そこで中野さんがドイツの子どもたちの話をしてくれました。
ドイツの子どもたちは誰かが何か言ったときに、それを批判するのではなく「僕はこう考える」とか、みんなそれぞれが自分はこう考える、自分はこう考えるという言い方で話し始める。それは自分はおかしいと思う。僕はこんなふうに考えたいと述べるそうです。
日本はなんか問題が起きて話し合いになると、問題を起こした子に対して「おまえさ、それはおかしいよ」と話してしまう。そうなると、言われた子は意見の中身ではなく「あいつは俺のことを嫌いだからだ」などとマイナスにとらえます。
そのように論点がすり替わってしまうことに注意しないといけません。指導者は個人を責めるのではなく、あくまでも「みんなにも起こることだからどうしますか?」という姿勢を貫くことが重要です。
■いつでも戻れる「フィロソフィー」を作るのもお勧め
私のチームにはフィロソフィーがあります。
協力や、みんなでサッカーを楽しむことにふれたミッション、ビジョンみたいなものです。問題が起きたら「うちのチームが目指しているのはここだよね?」とそこにいつも戻れます。
もっと言えば、それがあることでコーチも迷わないで済みます。クラブでできなければ、ご自分が担当する学年だけでもいい。そういったものをぜひつくってみてください。
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■保護者との向き合い方
トラブルがあると、どちらかがチームをやめるのもよくあるパターンです。子どもと同じように、親が自分の中で受け流せないのです。ケースによっては、子どものなかではすでに解決しているのに、保護者のほうがが我慢できずやめさせることもあります。
私も以前、やめたいと言ってきた子の親御さんから相談も受けたことがあります。少しやりとりをしてから、私はこう伝えました。
「これから先、息子さんがどんどん大きくなる間に、嫌なやつがいるとかそんなことはいっぱい出てきます。でも、そのたびにそれから逃げていると、高校や大学になってからはその都度親に交通整理はさせられません。例えば今はそう思ってるけど考え方を変えたらどう?など、親として話をしていただいたほうがよいのでは?」
そう話すと、親御さんたちは「そうなんですよね。簡単にチームを変わればいいって思われるのもちょっと困るし」と話してくれます。保護者とコーチが同じ方向を向けるような方法を探れるといいですね。
私からのアドバイスは以上です。
チーム全体の問題としてとらえ、個人を責めるのではなく、みんなで解決策を考えること。
保護者との向き合い方については、子どもが将来直面するであろう困難への対処法をともに考えるスタンスの重要性を伝えること。
この2つをご検討いただけたらと思います。
池上正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
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