真夜中の薄暗い部屋と北欧の黄昏 一人旅をする友人とのLINEが生む優しい時間

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真夜中の薄暗い部屋と北欧の黄昏 一人旅をする友人とのLINEが生む優しい時間

吉元由美の『ひと・もの・こと』


作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

優しい時間はなにげなく


「時差の関係で夜中のポスト、ごめんなさい」と、友人からLINEが入る。

午前12時を過ぎ、そろそろ休もうかとベッドに入ったところに。

「いま、列車の中」

友人はひとりでデンマークを旅していました。

滞在していた地方からコペンハーゲンまで、2時間半。

半島から島を渡り、その向こうの島のコペンハーゲンまで、列車は海峡を2回渡る。

橋は、あっという間に渡ってしまったそう。


「夕方5時過ぎなのに、うっすらと暗い。北欧はもう冬の始まりなのね」

ベッドサイドのスタンドをつける。私の周りも薄暗い。

真夜中の薄暗い部屋と北欧の黄昏 一人旅をする友人とのLINEが生む優しい時間

デンマークでの食事の話、美味しいからスモーブロー(デンマークの伝統料理のオープンサンド)ばかり食べてる。

そんな旅の話、たわいもない話の中に、時折本音が紛れ込む。

そんな本音は、相槌のようにLINEの返事をしていた私の胸をふっと揺らす。

真夜中の薄暗い部屋と北欧の黄昏 一人旅をする友人とのLINEが生む優しい時間

それぞれの息子、娘たちは自分たちの人生を生きている。

遠く離れると、普段は考えないようなことを考え、封印していた感情が現れる。


子どもたち厳しい道であっても、最善の道を選んで進んでいる。

最善の道は決して「楽な」道ではなく、茨の道であることも。

考えてみると私が娘と同じ年代だった頃、ペン一本で勝負をする音楽業界の荒波の中にいたのに、異国、それも世界でもっとカオスな社会の中で生きている娘には、もっと楽をすればいいのにと思ってしまう。

友人も頑張りすぎているような息子をただただ見守ることしかできないこと、それが親の役目だとわかっていても心配してしまう。本人には言わないけれど…と、本音を漏らす。

そこには、親の安堵感とちょっとした淋しさが見え隠れする。

「夜中にごめんね。どうでもいい話ばかり」

「ひとり旅だから、ときどき話し相手は必要よ」

真夜中の薄暗い部屋と北欧の黄昏 一人旅をする友人とのLINEが生む優しい時間

20代、30代、ほとんどがひとり旅だった。
それも航空券が安くなる冬の時期。

パリは夕方4時には暗くなる。心細さと同じくらいの解放感とせつなさを味わいながら街を歩きまわった。

誰かと話をするのは、せいぜいレストランで注文する時くらいか。

あと私の話を聞いてくれたのは、旅日記のノートくらいだった。

真夜中の薄暗い部屋と北欧の黄昏 一人旅をする友人とのLINEが生む優しい時間

別に、何かテーマについて話を戦わせる必要もなく、ただ、何ということのないことを話す、そんな時間が時にはあったらいいと思う。

ゆるゆるとした優しい時間に癒されることもあるのだ。

「もうすぐコペンハーゲンに着くわ。
夜中にごめんね」

真夜中の薄暗い部屋と北欧の黄昏 一人旅をする友人とのLINEが生む優しい時間

私もスタンドの明かりを消して、目を閉じる。

北欧の黄昏の中を走る列車の中と、真夜中のベッドの中がつながっている。

インターネットという文明の利器は、時空を超えてこんな何ということのない優しい時間をもたらしてくれる。

だからなのか、何となく、この何ということのないひとときを、こうしてシェアしてみたくなったりした。

作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー

※記事中の写真はすべてイメージ

[文/吉元由美構成/grape編集部]

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