黄金背景による「テンペラ画」の技法と表現の魅力に迫る『中世の華・黄金テンペラ画』目黒区美術館で
画材や色材をテーマとした企画展とワークショップを継続的に開催してきたことで定評のある東京の目黒区美術館で、黄金背景によるテンペラ画の技法に焦点をあてる展覧会が、2月15日(土)から3月23日(日)まで開催される。
テンペラ画は、顔料を卵黄で練って描きあげていく技法で、中世には金箔を背景にテンペラの技法を用いることで、装飾的であると同時に工芸的な魅力をもつ作品が生み出された。今回の展覧会は、1992年に開催された『色の博物誌・青―永遠の魅力』展に、中世イタリアの名画の復元模写《シモーネ・マルティーニ〈受胎告知〉》を出品し、聖母マリアのマントに使われたラピスラズリの美しい青で来場者を魅了した画家・石原靖夫の復元模写を中心に、「中世の華」とも呼ぶべき黄金背景のテンペラ画の技法に焦点をあてる。

石原靖夫 復元模写《シモーネ・マルティーニ〈受胎告知〉》(部分) 1972ー78 年金沢美術工芸大学蔵 (原画= 1333 年 / ウフィツィ美術館蔵) 撮影:歌田眞介 / 1978 年
1943年生まれの石原は、1970 年にイタリアに渡り、黄金テンペラの技法を学んだ。ウフィツィ美術館の所蔵作で、ゴシック期のシエナ派の画家シモーネ・マルティーニの代表作《受胎告知》の技法研究に6年の歳月を費やした石原は、ローマ滞在中にその復元模写を完成。