湯たんぽみたいな人【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第19話】
「気になる人? うん…まあ」
「同級生のカレかあ。キャプテンね。告られた? どんな人だっけ」
「久しぶりに会ったら高校の時よりずっとたくましくなっててね。デザイン事務所で働いてて、デザイナーの卵やってる。フットサルの時もリーダーシップ満点だし」
鮎子はホっと息を吐いて視線をそらした。
「そうかあ、しょうがないな。慎吾にはライバルは手強いって言っとくわ」
鮎子はさらっと答えたが、内心は気になっている。
「あのね、歌。
恋や愛の歌、歌ってるけど、現実に好きだって言われると、なんて言うか、歌の世界とリンクして、ポーってなっちゃう」
鮎子は頷くように聞いている。
「ま、桃香は歌やってるぶん、感度高いでしょ。うちらよりずーっと。好きって言われて気分がよくなるのは女子の王道だからね。よかったね」
「仕事、戻ろう、おこられちゃう」
短いティータイム。桃香は慎吾が宙ぶらりんになりそうな不安を覚えた。あの日から、冬馬の言葉が耳の奥で何度も繰り返されている。
「俺、昔からお前のこと好きだから。
今でもな」