コラーゲンと修羅場【彼氏の顔が覚えられません 第21話】
カズヤの新しい恋人は、恐ろしいことにあの子豚ちゃん・マナミだった。
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「違うってば! ただの友達だって…べつに、イズミから奪うつもりはないよー!」
子豚ちゃん本人は否定しているが、どうだか。
4月。新しい年度を迎えた直後、いきなりこんなひどい状況からスタートしなきゃいけないのは残念以外のなにものでもない。学食でたまたまカップルを見て。見ただけだったなら、何も問題なかった。どうせ相手の顔なんて判別できない。そのままスルーできた。
女の方から声をかけてきたからいけないのだ。「あ、イズミ…!」しかも大声で。男の方は一瞬私と目を合わせ、それからうつむいた。何となく見たことある服装だったので、まさかと思って、「え、ひょっとして、カズヤ…?」。声をかけても黙ったままの男。沈黙は、肯定を意味していた。
「ち、違うの…これは、そういうわけじゃなくて…」女の方は、こっちが何も言わないうちから必死に言い訳しようとしている。なんなんだ、この修羅場は。
「イズミなんて気安く呼ばないで」
しょぼくれた様子のカズヤを尻目に、子豚ちゃんに対して怒りの台詞を口にする。
「わぁ、もう、こわいー! 機嫌なおしてよー、イズミ…ちゃん? イズミさま?」