ツンデレとカレーレシピ【彼氏の顔が覚えられません 第22話】
「まさか軽音部の先輩ですか。2年生の」
「あ、ようやくわかってくれた…って、2年じゃなくて、3年ね。一応、進級できたから、俺」
正解。いや、学年間違えちゃったからギリはずれか。それにしても髪切りすぎだ。私みたいに人の顔が覚えられない人間じゃなくても、これは気づけない。
先輩の方は、よく私のこと覚えているもんだなぁと思う。ポニーテールがマイブームになってから、会うの初めてなのに。
いや、これぐらいの変化は普通の人にとってはなんてことないのか。あの日マナミも一瞬で私に気づいたし。
「ひょっとして、いま履修登録中だった?」
「はい。何取るかなかなか決められなくて」
「2年って、そんな悩む余地あるっけ…必修科目もまだ多いでしょ。あと、再履修とかは」
「再履修はないです。単位、受けた分はぜんぶ取れましたから」
「へ~え! 優秀だなあ。俺なんか去年、必修科目と再履修科目選んだら、ほかに取れる授業なかったよ」
「教科書持ち込みOKの試験ばかりで、単位落とす理由がわかんないんですけど。知り合いの同級生なんて、該当項目を丸写ししたらA評価もらえたって言ってましたよ」
知り合いの同級生とはユイのことだ。
冬に学校を辞めてしまったから、去年の夏の試験のときの話である。
「えっ、まじ? そんなことあるの?」
「はい。他の知り合いなんて、自身の研究レポート提出しなきゃいけないのに、書くこと無いから我流のカレーレシピを載せたら、それで単位取れたって言ってました」