ツンデレとカレーレシピ【彼氏の顔が覚えられません 第22話】
他の知り合いとは、カズヤのことだ。恋人と言うべきか、元恋人と言うべきか。名前を口にするのもなんかイヤだ。
「なんだよそれ…いくらなんでも評価ザル過ぎだろ…俺みたいに一生懸命勉強してる生徒が評価されない世の中、オカシイよ…教科書に頼らない答え導いて、字数や提出期限オーバーしてでも必死でレポート埋めて…それで単位もらえないってどういうことだ…」
「それは、評価以前の問題だからじゃないですか」
嘆く先輩に、ほとんど台本を棒読みするように言う。
「イズミちゃん冷たいなぁ…慰めてくれたりっていう優しさは、君にはないの…」
「何言ってるんです。慰めたって無益じゃないですか。それよりちゃんと正論を言ってやらないと、先輩だって成長できませんし」
「そうか…じゃあこれは、俺を育てようっていうイズミちゃんの優しさなんだね…」
「は。単にぐちぐち長セリフ吐いてる先輩がキモチワルかっただけです。
他意はありません」
「そうか…イズミちゃんって、ツンデレだなぁ」
「はいはいはいはい、キモイキモイキモイ」
棒読みを繰り返す。流石にキモイを連呼されたのはこたえたようで、先輩は肩を落とし、明らかにうなだれる。楽しいなぁ、先輩をいじるのは。部活に顔を出していない限りのことではあるけれど。
(つづく)
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