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たくさんのことに興味関心が高まる時期の子どもを連れて行きたい場所として、いつの時代も人気なのが動物園です。ゾウやキリンなど大型の動物や、愛くるしいモルモットなど、子どもは動物が大好きですよね。では、動物園でより楽しく学び多い時間を過ごすためには、どんな準備が必要でしょうか。上野動物園の教育普及係を務める井内岳志さんにお聞きしました。井内さんは、30年にわたって動物園で教育活動を担当している大ベテラン。さまざまな広報活動のほか、学会での発表など研究活動、学芸員として博物館との連携活動など、動物園に関わる幅広い活動を続けていらっしゃいます。構成・編集/木原昌子(ハイキックス)取材・文/田中祥子写真/児玉大輔動物園に行く前に、動物図鑑などを見てみよう動物園は親子で休日に訪れる場所として人気がありますよね。どういう目的で動物園に行くかというアンケートでは「家族と一緒のレジャー」という答えが最も多いものでした。そんなレジャーイメージが強い動物園への訪問には、実は少しの工夫で、楽しむだけでなく学びの要素をプラスすることができます。お父さんお母さんが事前にできる準備を伝授しましょう。まずは、家であらかじめ親子で本や図鑑を読んでおくと、動物や動物園について興味が深まると思います。『(楽しい調べ学習シリーズ)動物園のひみつ』(PHP研究所)という本には、展示の工夫や飼育員の仕事を子どもでも読めるようにやさしく書いてありますよ。実際に園内を回るときには小さな図鑑を持って歩くと面白いですね。ポケット図鑑シリーズ『絶滅危機動物』(学研プラス)は小さなお子さんにはちょっと難しいかもしれませんが、小学生の調べ学習などで役に立ちます。どうしてその動物が絶滅しそうになっているのかを、動物園で実際に動物を見ながら考えられます。動物園で専用のガイドブックを作っている場合もありますから確認してみると良いでしょう。売店で購入できるので、入園したら最初に立ち寄って探してみてください。無料のフリーマガジンやパンフレットも参考になりますよ。上野動物園の園内で配布している『ZOO TODAY』は毎月発行しているニュース紙です。園内で生まれた赤ちゃんや、冬毛から夏毛に変わる動物などその季節ならではのタイムリーな観察ポイントを紹介しています。『みんなの上野動物園』は年に5冊出している無料の情報誌です。“鳥のくちばしを観察してみよう”“日本に暮らす動物を観察しよう”など号ごとにテーマがあり、こんな視点で見ると面白いというヒントを提案しています。双眼鏡やスケッチブックがあると、動物観察をより楽しめます動物の足や角などの細かいところを観察するには双眼鏡が役に立ちます。大型のものでなくても2~3倍のオペラグラス程度のもので充分ですよ。気がついたことをメモしたり、動物をスケッチしたりするノートと筆記用具も忘れないようにしましょう。カメラで撮るのも便利ですが、写真撮影が目的になってしまって観察そのものがおろそかになってしまう場合もありますから、一緒に行く大人が写してあげると良いと思います。そのほか、動物園は野外施設ですので、暑い季節は熱中症対策にも気をつかってください。帽子や飲み物のほか、保冷剤を持っていくと首筋に当てて体を冷やしてあげることができるので便利です。動物たちとのマナーも大事。相手を思いやる気持ちを育みますお子さんには「自分がされて嫌なことは動物にもしないでね」と教えてあげましょう。たとえば、動物をおどかさないこと。寝ているからといって、ガラスを叩いたり、大声で呼んだりして起こそうとしないでください。エサをあげるのも絶対いけません。人間が食べるものでも動物にとっては毒になるものもありますし、栄養の偏りも出てしまいます。時々「動物が喜んでいるからいいのでは」という声を聞きますが、もしも自分の子どもが誰かに晩御飯を食べられないくらいお菓子をもらっていたら困りますよね。大人も自分に置き換えて考えてみることが大切です。混雑している場合、最前列である程度見たら、後ろの人に譲ってあげることも大切です。動物園は大人が公共のマナーを教える場でもあるんですよ。動物とお子さんを一緒に写真を撮る際にも周囲への配慮をお願いします。また、写真を撮るときはフラッシュをオフにしてください。動物はフラッシュの光が苦手です。特に薄暗い場所にいる鳥の場合、フラッシュに驚いて急に飛んでしまい、ガラスにぶつかって怪我をすることがあるからです。それから、動物を見るときに大人が「気持ち悪い」「汚い」「臭い」などのマイナスの言葉を言わないようにしましょう。子どもに伝わってしまうと、その言葉通りにしか見られなくなってしまいます。子どもが自分の感性で動物を知る姿を大人は見守ってあげてください。入園したときに写真を撮っておくと迷子対策に園内は広いので子どもは走り回ってしまいがちですが、しっかりと見ていてあげてください。親が動物の撮影に夢中になっていると、後ろにいた子どもに目が届かなくなりがちです。特に迷子がたくさん出るのは土日祝日です。もしも子どもが迷子になってしまったときは、スタッフが無線でやりとりをしてその子を探します。その際に便利なのが「子どもの写真」。親御さんにはお子さんの迷子対策として、動物園に入園したらまず入り口で子どもの写真を撮っておくことをおすすめします。その写真を見せていただければ、スタッフ間で子どもの特徴や洋服の色などを共有しやすくなるからです。また、上野動物園では混雑時に、案内ボランティアがかわいいパンダのイラストの迷子札を配布しています。名前や連絡先などを書いておくと早期解決の手助けになるので、ぜひご活用ください。***動物園に行く前に少し工夫して準備すると、動物園をより一層楽しむことができそうです。それでは、たくさん動物のいる広い園内では、どんな視点で動物を観察すれば良いのでしょうか?次回は動物園を楽しみながら学びを深める秘訣を井内さんにお聞きします。■ 上野動物園教育普及係・井内岳志さん インタビュー一覧第1回:動物園は学びの場!上野動物園の学芸員が伝授する、親必見の「動物観察準備テク」第2回:解説のメモなんてしなくていい。「目の前の動物」から最大限学びとるコツ(※近日公開)第3回:「夏休みの自由研究」は動物園で。上野動物園おすすめの“調べ学習”のテーマとポイント(※近日公開)第4回:動物園は子どもの「心」を育てる場所。“楽しみながら動物を知る”ことの大きな価値(※近日公開)【プロフィール】井内岳志(いうち・たけし)恩賜上野動物園教育普及係主任(学芸員)。大学ではサルの生態を研究。恩 賜上野動物園、葛西臨海水族園、井の頭自然文化園などの動物園・水族館で30 年以上、 動物園教育に関わる。大哺乳類展などの国立科学博物館との企画展 や、上野動物園で毎年恒例の夜間開園「真夏の夜の動物園」の企画など、さまざまなイベント・企画で動物たちの生態を紹介している。
2019年07月17日昨今、EQ(心の知能指数)やSQ(社会的指数)など、さまざまな能力について取りざたされていますよね。しかし、「やっぱり “頭の良さ” として馴染み深い、IQ(知能指数)が気になる」「子どもの将来のためにIQを高めてあげたい」と考えている親御さんも多いことでしょう。そこで今回は、「IQが高い子どもの特徴」や、「子どもの社会的な成功とIQとの関係」についてご紹介します。そもそもIQって何?そもそもIQとは、「人間が知能を使って物事を処理する能力を表す数値」のこと。知能検査によって測定された精神年齢を実年齢で割り、100倍にした数値です。85~115が平均といわれています。日本でトップクラスの学力を誇る東大生のIQは、平均120ともいわれていますが、IQが高いからといって、必ずしも学力が高いとは限りません。また、IQの高さは遺伝や環境の影響も大きいといわれています。慶應義塾大学(行動遺伝学)の安藤寿康教授いわく、IQはおよそ5割が遺伝の影響を受け、残りの5割のうち3割は家庭環境が影響するのだそう。安藤教授は、親からどんな遺伝子を受け継いだとしても、学習をすれば必ず能力は伸びるといいます。IQが高い子どもの特徴IQが高い子どもには、どのような特徴があるのでしょうか?詳しくみていきましょう。・頭が良くて賢いIQの高い子どもは、頭が良くて賢いといわれています。勉強ができるという学習能力としての賢さだけでなく、大人びた物言いや考え方をするなど、精神的に賢い場合もあるのが特徴です。IQの高さについて、医学博士の青木聡氏は次のように述べています。IQテストにおける「正答率の低い問題」とは、共通ルール(共通点)を見つけるのが難しい問題のことです。つまり、テストの結果がいい人(IQが高い人)は、「共通点を見つける能力」に優れていることになります。(中略)「共通点を見つける能力」とは、簡単に言うとパターン認識能力のことです。たとえば、友だちの妹とすれ違ったときに、「あ、似ている」と、友だちの顔が脳裏に浮かぶことがあるかと思います。どこか似ていると感じるのは、共通する特徴(共通点)を無意識に読みとっているからです。(引用元:ダイヤモンド・オンライン|「考える」「悩む」「時間がかかる」問題に対して、IQの高い天才はなぜ迷わず瞬時に答えを出せるのか?)IQが高い子どもの賢さには、パターン認識能力によって物事の共通点を読み取っていることが影響しているといえるでしょう。・言葉を覚えるのが早いIQの高い子どもは、会話や字の読み書きができるようになるのが、ほかの子どもに比べて早いといわれています。小児精神科医のクラウディア・ヤンケッチ氏いわく、IQの高い子どもは、脳の柔軟性が高く、ふたつの脳半球(中脳と大脳半球)を結ぶ間脳が発達しているのだそう。そのため、脳を最大限に利用することができるのだといいます。IQの高さには脳の発達も関係しているようです。・困難を乗り越える力が弱いIQの高い子どもは、賢さが目立つ反面、苦手な分野に対して向き合う力が弱い場合があります。前出のクラウディア氏いわく、IQの高い子どもは、完璧主義であるせいで、間違えることよりも諦めることを選択してしまうのだそう。そのため、困難に直面したらすぐに諦めてしまう傾向にあると言います。IQの高い子どもには、失敗は成功の源だということをしっかりと伝えてあげるべきですね。IQが高いと社会的に成功する?IQの高い子どもは学習能力が高いケースもよくみられるため、「IQが高ければ社会的に成功できるのでは?」と考える人も少なくありません。しかし、それは間違いです。東京大学名誉教授で白梅学園大学学長、日本保育学会会長の汐見稔幸氏は、次のように述べています。私たちは「文字が読める、うまくブロックを積み上げられる、三角形と四角形と五角形を区別できる」といった、目に見えて知的に賢くなったと感じる認知的な能力を重視しがちです。しかし、幼児期に認知的な能力を高めることが、その後の人生の成功や安定につながっているのか、いろいろ調べた結果、あまり関係がないことがわかってきました。大事なことは、うまくいかないときに諦めず「どうしてかな」「こうやってみよう」「これがだめなら、ああやってみよう」など、あくまで目標の達成まで頑張る姿勢を身につけることです。我慢できること、感情をコントロールする力なども大事です。(引用元:すくコム NHKエデュケーショナル|世界で注目される非認知的能力って?)IQなどで測ることのできる能力は、「認知的能力」と呼ぶのだそう。一方で、引用内で述べられているような「目標に向かって頑張る」「我慢する」「感情をコントロールする」などの能力は「非認知的能力」と呼ばれています。AI技術が発達し、グローバル化が進みゆく昨今。先の見えない社会を生き抜いていかなければならない子どもたちが伸ばすべきなのは、「やり抜く力」や「自制心」といった「非認知的能力」ではないでしょうか。***子どものIQが高いと、つい「頭が良いなら、将来レベルの高い大学にいけるかも?」「エリートになれるかも?」と期待してしまうこともあるかもしれません。しかし、育児や教育においては、IQや学校の成績といった目に見えるものばかりを気にするのではなく、「この先、子どもが生きていくために必要な力は何なのか」という目線を持つことが重要ですね。文/田口 るい(参考)こどもまなび☆ラボ|感情を書き出すとEQが伸びる!IQよりも大切な「心の知能指数」を高めようこどもまなび☆ラボ|「SQ」って知ってる?今を生きる子どもたちに「社会的指数」が重要なワケ進路のミカタ|ずば抜けたIQの天才児!?クラスにもいるかもしれない「ギフテッド」ってどんな人?All About|マシュマロ実験で判明!学力に重要なのはIQより○○All About|世界中が注目する「非認知能力・自制心」を育む方法All About|世界トップが実践!子供の「非認知能力」を育むヒントNEWSポストセブン|子供の学力、遺伝とともに母からの愛情で大きく変わるものすくコム NHKエデュケーショナル|世界で注目される非認知的能力って?ダイヤモンドオンライン|「考える」「悩む」「時間がかかる」問題に対して、IQの高い天才はなぜ迷わず瞬時に答えを出せるのか?Swiss info.ch|周囲と同化し、識別しにくいギフテッド・チャイルド
2019年07月16日ひとことで自然体験といっても、その種類はさまざま。1年を通じてできるものもあれば、季節によって特徴的な自然体験もあります。後者について、「プロの自然解説者」であるプロ・ナチュラリストの佐々木洋さんは、「ものごとを大きくとらえる視点を育ててくれる」と語ります。そこで、佐々木さんがおすすめする季節ごとの自然体験を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)カブトムシが採り放題の「スーパーバナナトラップ」四季の移ろいがはっきりしている日本でなら、ぜひ、季節ごとに特徴的な自然体験をしてもらいたいですね。自然観察というと、ひとつの花や虫を観察するということをイメージしがちです。でも、自然には季節による変化というものもある。双方を感じるということは、ミクロの視点に加えて、ものごとを大きくとらえるマクロの視点を育てることにもつながるはずです。そこで、季節ごとにわたしがおすすめする自然体験をお伝えします。春におすすめするのは、わたしが「春のパレット」と呼んでいる遊びです。紙をパレットに見立てて、花や草などをこすりつけて色をつけていくのです。タンポポなら黄色、ヨモギなら緑という具合です。ヨモギは渋くていい緑色を出してくれますよ。茶色なら土でOK。スペシャルなのがカラスノエンドウの花です。花自体は赤みが強いのですが、これを紙にこすりつけるとなんと濃い紫になる。わたしは、「魔法の絵の具」と呼んでいます。もちろん、これは季節を問わずにできるものです。でも、花を咲かせる草木が多くて、植物が元気でみずみずしい春にやるのがやっぱりおすすめですね。ただ、花壇や畑など、草木を自由に摘んではいけないところではNGですから、そこは注意してください。それから、夏はやっぱり「カブトムシ採り」でしょう。ここで、わたしが長年かけて開発した「スーパーバナナトラップ」をお教えしましょう。これは、とにかくカブトムシやクワガタをめちゃくちゃ集められるという黄金比率の餌です。バナナを使ったただの「バナナトラップ」なら知っている人もいるかもしれませんが、わたしのスーパーバナナトラップはその改良版です。まず、女性が使うストッキングに皮をむいたバナナを入れます。シュガースポットと呼ばれる斑点がたくさん出た完熟のものがベストです。それを木に引っ掛けて石などでバナナをつぶします。ここまでが普通のバナナトラップですが、ここでわたしはふたつの隠し味を使います。ひとつは泡盛など度数の高いお酒。ちょっともったいないですが、つぶしたバナナにドボドボとたくさんかけましょう。それから、黒酢を大さじ1杯ほど加えます。そうすると、カブトムシやクワガタが餌とする樹液とほとんど同じ匂いが出るようになる。これでもうカブトムシやクワガタが採り放題です。自然の圧倒的な美しさを味わう「落ち葉並べ」秋におすすめするのは「落ち葉並べ」です。まずは幼稚園や小学校のグラウンド、近所の公園などで落ち葉を集めます。落ち葉といっても、色はさまざま。緑色のままで落ちてしまった葉に、種類のちがいによって黄色や赤に変わった葉。それから、完全に枯れて茶色になった葉。それらを10枚ずつくらい集めて色ごとに並べるのです。できれば、黒い模造紙の上に並べるのがいいですね。そうすると、大人でも思わず「うわーっ!」と声を漏らすほど見事なグラデーションを落ち葉が見せてくれます。もちろん、黄色いイチョウや赤いカエデなど植物の種類や、虫に食われた跡などについての会話で子どもとのコミュニケーションを膨らませることもできます。また、本当に美しい「インスタ映え」する写真が撮れますから、SNSをやっている親御さんにもおすすめですね(笑)。冬には「その木になろう」というゲームをやってみてください。これは「その気になろう」という意味も含んだゲームです。芝生広場の周囲にたくさんの木が生えているような広い公園に行ってみましょう。すると、冬ですから葉が落ちて、木の幹や枝のかたちがよくわかるようになっているはずです。その木になったつもりで真似をして、「どの木でしょう?」と親子であて合うのです。けっこう体を動かしますから、体が温かくなるという点でも冬におすすめです。「定点撮影」で自然記録と子どもの成長記録をする先に、季節の移ろいを感じさせることで子どものマクロの視点を育てられるとお伝えしました。その狙いという点でおすすめできることも最後にお伝えしておきましょう。それは、「定点撮影」です。たとえば、ある公園に行ったときには必ず同じ木の前で親子の写真を撮るようにするのです。季節の移ろいがわからなければなりませんから、常緑樹では駄目ですよ。おすすめはやっぱり桜。1年を通じて見た目が劇的に変化しますからね。それを2年でも3年でも続けてみてください。春には桜が花を咲かせるといった変化の他、親子それぞれの服装も変化していく。また、子どもがちょっとずつ大きくなっていくということもわかるでしょう。自然記録と同時に子どもの成長記録をするというわけです。小さいうちは、子どもはその記録の貴重さには気づかないかもしれません。でも、そうしてたくさんの愛情を注がれ、自分が成長していくことを親が心からよろこんでくれたという経験は、その子どもが大人になって子どもを持つようになったときに、きっと親への感謝の気持ちにつながるのではないでしょうか。『ナンコレ生物図鑑 あなたの隣にきっといる』佐々木洋 著/旬報社(2015)■ プロ・ナチュラリスト 佐々木洋さん インタビュー一覧第1回:「自然だし、仕方ない」現代の恵まれた子どもたちが“自然体験”から学ぶ重要なこと第2回:「虫が怖い」はこうして克服。ダンゴムシすら触れない子に、親は何をすればいい?第3回:自然観察=現場検証!?生き物の“痕跡”探しから始まる、都会でもできる自然体験第4回:カブトムシやクワガタが採り放題!夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”【プロフィール】佐々木洋(ささき・ひろし)1961年9月30日生まれ、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。公益財団法人日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などさまざまな立ち場で自然解説活動をしたあと、「プロ・ナチュラリスト 佐々木洋事務所」を設立。「自然の面白さや大切さを多くの人とわかち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、25年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演、テレビ・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等の活動をおこなう。著書に『ぼくはプロ・ナチュラリスト 「自然へのとびら」をひらく仕事』(旬報社)、『モリゾー・キッコロ 森へいこうよ! 会える! 虫図鑑』(宝島社)、『「調べ学習」に役立つ水辺の生きもの』(実業之日本社)、『よるの えんてい』(講談社)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月16日子どもに自然体験をさせてあげたいと考えても、実際に現地でなにをすればいいかわからないという人も多いはずです。そんな悩みに対するアドバイスをお願いしたのは、「プロの自然解説者」であるプロ・ナチュラリストの佐々木洋さん。生きものの「生活痕」である「フィールドサイン」を探す遊びを教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)想像することは科学に対する好奇心の芽生え「フィールドサイン」とは、生きものが残した足跡や食べ跡のことです。そこに生きものがいた、あるいはいる、という自然界の「証拠物件」ですね。子どもたちを連れてフィールドサインを探す場合、わたしはよく「ネイチャーポリス」という名前をつけて遊びます。自然界の刑事や探偵になったつもりで、証拠物件を検証し、「どんな生きものが残した証拠だろう?」と推理をするのです。この推理をする――つまり、想像をするということがとても大切。それは、子どもたちの科学に対する好奇心のいちばん最初の小さな芽といっていいでしょう。ただ、フィールドサインを探したから子どもたちがなにかを得られるというわけでもありません。自然に対しては親しむこと自体に意味があり、さまざまな「効能」があります(インタビュー第1回参照)。フィールドサインを探すことは、自然と親しむ方法のひとつだと考えてください。とはいえ、フィールドサイン探しには、ある長所があります。それはなにかといえば、見つけやすいということ。生きもの自体を見つけることはそんなに簡単なことではありません。でも、都心部であっても生きものはたくさんいますから、生きものがいる以上、フィールドサインはどんどんできる。だから見つけやすいのです。そして、親子でフィールドサインを見つけたら、「どんな生きものがいたのかな?」と想像しながら会話も膨らみます。親子間の会話のキャッチボールを増やす意味でも、フィールドサインは有効なものだと思います。探偵になって自然観察を現場検証にたとえるそのキャッチボールをさらに面白くするには、先ほどお伝えしたように、親が刑事や探偵になり切ってみることです。絵本の読み聞かせが得意な親なら、きっとうまくできるのではないでしょうか。たとえば、ハトがタカに襲われた場所を見つけたとします。まわりにはハトの羽が散らばっている。それを見ながら、こんなふうにいってみるのです。「刑事、君はこれをなんだと思う?」「被害者はハトのようだね」「犯人は誰だろう?」「おそらく犯行動機は空腹じゃないかな」「これを撮影して鑑識に回しておいてくれ」といった具合です(笑)。自然観察を現場検証にするというわけです。ハトが襲われた場所というと、子どもからするとちょっぴり怖く感じるかもしれません。でも、こうやって親が面白おかしく演じれば、きっと子どもも楽しくフィールドサインを観察することができるのではないでしょうか。めったに見られないモグラも「痕跡」は見つかるでは、地域にかかわらず見つけやすいフィールドサインをいくつかお教えします。【見つけやすいおすすめフィールドサイン】・モグラ塚・ミミズの糞・ナメクジ、カタツムリの食べ跡・セミの脱出口ひとつ目はモグラ塚。モグラがトンネルを拡張したり補修したりした際、地表に捨てた余分な土のことです。これをわたしは「モグラのチャーハン」と呼んでいます。というのも、形が皿に盛られたチャーハンにそっくりだからです。モグラというと、都会にはあまりいないと思っている人もいるかもしれません。でも、じつはどこにだっているのです。公園にも学校の校庭にもいます。それこそ、モグラそのものはめったに見ることができないでしょう。でも、「そこにいる」という痕跡は見つけられます。もし見つけたら、地表に出ている部分の土を除いてみてください。モグラのトンネルを見つけることができるはずです。ミミズの糞も公園や校庭などでも見つけやすいものです。小さな団子状になった土が盛り上がっていたら、それはミミズの糞。今度はチャーハンではなくて、担々麺のひき肉のようなイメージです。子どもに糞だと教えると、「臭い!」なんていうものです。でも、ミミズの糞は土でできていて、他の動物の糞のように未消化の有機物もほとんど含みませんから、嫌な臭いはありませんのでご安心ください(笑)。それから、ガードレールや道路標識の裏などでよく見つかるのがナメクジやカタツムリの食べ跡。もしかしたら、見たことがあってもそれがなにかを知らなかったという人もいるかもしれませんね。ナメクジやカタツムリはガードレールの裏などにあるカビなどを削って食べます。それがグネグネとした線状になって残されているのです。最後がセミの脱出口。地上に出る際、セミの幼虫が掘った穴ですね。羽化のために出る穴ですから、木がある場所に見られます。穴の大きさによって種類のちがいもなんとなくわかります。大人の小指くらいの太さの穴ならツクツクボウシやニイニイゼミなど小型のセミ、人差し指くらいならアブラゼミなど大型のセミの穴です。もしセミの脱出口を見つけたら、ぜひ子どもに指を入れさせて、ひんやりした感触を味わわせてあげてください。夏でも土のなかは涼しいということを体感できるはずです。これらは誰でも見つけやすいフィールドサインです。子どもが興味を示すようなら、親子で勉強をして、他のフィールドサインも探してみてほしいですね。『ナンコレ生物図鑑 あなたの隣にきっといる』佐々木洋 著/旬報社(2015)■ プロ・ナチュラリスト 佐々木洋さん インタビュー一覧第1回:「自然だし、仕方ない」現代の恵まれた子どもたちが“自然体験”から学ぶ重要なこと第2回:「虫が怖い」はこうして克服。ダンゴムシすら触れない子に、親は何をすればいい?第3回:自然観察=現場検証!?生き物の“痕跡”探しから始まる、都会でもできる自然体験第4回:カブトムシやクワガタが採り放題!夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”(※近日公開)【プロフィール】佐々木洋(ささき・ひろし)1961年9月30日生まれ、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。公益財団法人日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などさまざまな立ち場で自然解説活動をしたあと、「プロ・ナチュラリスト 佐々木洋事務所」を設立。「自然の面白さや大切さを多くの人とわかち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、25年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演、テレビ・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等の活動をおこなう。著書に『ぼくはプロ・ナチュラリスト 「自然へのとびら」をひらく仕事』(旬報社)、『モリゾー・キッコロ 森へいこうよ! 会える! 虫図鑑』(宝島社)、『「調べ学習」に役立つ水辺の生きもの』(実業之日本社)、『よるの えんてい』(講談社)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月15日ついつい口に出てしまう「勉強しなさい!」という言葉。いくら繰り返したところで子どもがやる気を出すようにならないのはわかっていても、黙っていられない!という親御さんはきっと少なくないはず。しかし、主体的に学習する姿勢が子どもに身についていれば、自ら考え行動できるはず。したがって、「勉強しなさい」という声がけは、そもそも必要なくなります。では、どうすれば子どもの主体性を引き出すことができるのでしょうか?勉強の強制は逆効果!?「勉強しなさい!」と机に向かうことを強要し続けると、学年が上がるほど、いわゆる「馬の耳に念仏」に。すると、ますます親のイライラは募り、子どもは「ウザい」と感じるようになり、主体的な勉強からはさらに遠ざかっていくばかり……。そのような悪循環に陥るのを防ぐためにも、なるべく早い段階から「勉強しなさい」という言葉を避ける必要がありそうです。つまり、勉強は強制するのではなく習慣化するよう心がけるのが、伸びる子を育てるポイントになります。実は、成績の良い子ほど親から「勉強しなさい!」と言われていません。良い成績をおさめることができている子は、小学生のころから親にガミガミ言われなくても学習する習慣がついているのです。私の経営する学習塾でも、成績が良い生徒には、「親に言われる前にやる」タイプが多く、彼らは自分で考え、前向きな気持ちで勉強を楽しんでいます。(引用元:安村知倫(2017) ,『子どもの成績を「伸ばす親」と「伸ばせない親」の習慣』, 明日香出版社.)また、東大生の6割は「勉強しなさい」と言われたことがないといいます。彼らは、子ども時代に自主性・主体性を重視した教育を受けてきたおかげで、「好きなことに思いっきり没頭できた」のではないかと言うのは、東北大学加齢医学研究所教授で医学博士の瀧靖之氏。脳は、「好き」「興味がある」とポジティブなレッテルが貼られた情報ならば、思考が深まり、しっかり理解して記憶するようになるそう。「勉強しなさい」「やらなくちゃダメでしょ」などといったネガティブな声かけでは勉強が楽しいものだと感じることができず、拒絶するようになってしまうのも無理はありません。まずは行動を認める声がけをそうはいっても、いつまでも机に向かおうとしない子どもを黙って見過ごすことはできないですし、放っておいても進歩は望めません。まずは現在進行形で子どもの行動を認める言葉かけをするとよいと、学習コンサルタントでステージメソッド塾代表の西角けい子さんは言います。たとえば、宿題をしているときに「宿題、頑張っているね」と、声をかけてみましょう。これは宿題や勉強に限らず、ごはんを食べているときに「おいしそうに食べているね」、ゴロゴロしているときに「疲れているみたいね」といった、子どもの「いま」に対する共感の言葉がけを心がけると、家の雰囲気もよくなり子ども自身も親から行動を認めてもらえると感じるようになり、自信につながってきます。「宿題をやらなくちゃだめでしょ!」「今やろうと思ってたんだよ!」と言い合うような、怒る親とふてくされる子どもという悪しき構図からひとまず抜け出す簡単な方法です。また、「褒めて伸ばす」とはよく言いますが、テストの点を褒めたり成績を褒めたりするのももちろんですが、まずは途中の頑張りを認めて褒めてあげることも大切です。誰が見てもわかるような成果がなくても、姿勢よく机に向かっている、字を丁寧に書いている、難しい問題も投げ出さずに取り組んでいる、というような努力の過程の具体的な部分に注目し、「頑張っているね」「いいね!」と声をかけてあげましょう。これは、いちばん身近にいる親だからこそできること。小さな努力を認められ褒められて育つ子は、やる気も出て、その積み重ねで大きな成果を生むはずです。強制ではなく、きっかけづくりを子どもの「いま」を認め、さらにはテストの結果などがんばった面を評価することができたら、次に、わかっていない部分を親子で確認し合います。そこで親が「こんなふうに勉強してみたら」と提案するなどして、子どもが自分に合った勉強の仕方を発見するきっかけを作ってあげることが、勉強への姿勢を変えていくコツ。勉強して賢くなることが実感できれば、子どもは面白がってそれに打ち込むようになります。例えば練習を重ねて50メートル走のタイムがどんどん早くなったり、あるいはピアノが上手に弾けるようになったりするのと同様、勉強することで賢くなるのは、誰にとっても快感なのだから。賢くなり、難しい問題が解けるようになると、子どもなりに手ごたえを感じてくれるものなのです。(引用元:松永暢史 (2007) ,『子どもを親より賢くする本子どもを賢くする親は、ここが違う!』, PHP研究所.)子どもよりも少しだけ上のレベルの目標を設定し、「この目標を達成させるためにはどうしたらいいと思う?」と声をかけ、一緒に目標を達成するための方法や段取りを考えます。ただし、一緒に考えているようで最終的に親が「こうしなさい」と決めてしまうのはNG。あくまでも、学ぶのは子ども自身。本人から「こういう方法があると思う」という考えを引き出すことが大切です。それによって成果を得ることができれば、自ら勉強に取り組む姿がみられるようになるはずです。子ども主導で勉強時間を決めておくしかし、まずは大前提として、宿題や勉強に取り組む「時間」を生活の中に作らなくてはなりません。そこで親が「夕食前に1時間は勉強するようにしなさい!」と押しつけても、子どものモチベーションは続きません。自分で決めさせて実行させるほうが、子どもの責任感も育つというのは、チャイルドコーチングアドバイザーで桜ゼミナール塾長の安村知倫氏。子ども主導で、平日の何時から何時は宿題、何曜日の何時から何時は理科の復習、といったようなスケジュールを決めさせるのです。まずは、1週間のうちで時間が決まっている行動を書き出し、空白時間を見つけ、そこに勉強時間を設定していきます。ただし、空白時間には勉強だけでなく遊び時間もしっかり組み込み、勉強内容は最終的に子ども自身が決めるとよいといいます。効率的なスケジュールを組むことができれば、親は決まった時間に「そろそろ時間だね」と声をかける程度で済むようになるはずです。これは学習面だけでなく、健康で規則正しい生活を送るためにも有効な手段といえますが、親の協力も不可欠。できるだけスケジュールに沿った時間に子どもが夕食や入浴を済ませられるよう、生活の土台となる部分は崩さないようにしていけるといいですね。努力の「見える化」がさらなるやる気を引き出すさらに安村知倫氏は、子どもが自分で努力したことを「見える化」すると効果的だといいます。壁かけカレンダーを用意して、学校の宿題を含めたその日の家庭学習がきちんとできたら、カレンダーに◯をつけていく。学校のプリントを見直ししたら、ひとつの箱に入れていく。漢字練習や計算などの自学ノートを終わったら、同じ場所に積み上げていく。カレンダーに◯が並んだり、箱にプリントがたまったり、ノートが積み重なったりしていけば、頑張った証拠が目に見えることで満足感が得られ、さらなるやる気を引き出すことができるのです。この「見える化」した部分を親も一緒に喜ぶようにすれば、ますます効果的かもしれません。前述しましたが、親だからこそ知ることができる努力の過程を見逃さないことが大切です。テストや試験の「結果が全て」ではなく、それまでの努力が大切で尊いものだとわかっている子どもは、学習習慣が自ずと身につき、いずれ成績に反映されることでしょう。***家事や仕事を「頑張りなさい」と言われるよりも、「頑張っているね」と言われたほうがモチベーションを保てるのは、大人も同じ。何かを「やりなさい」と言われると逆効果になることが多いのは、振り返ってみれば合点が行くのではないでしょうか。「勉強しなさい!」を封印することができれば、親も子も少しずつ良い方向へ変わっていくはずです。文/酒井絢子(参考)こどもまなび☆ラボ|「勉強しろ」は逆効果!統計でわかった、親が本当にやるべき3つのことベネッセ 教育情報サイト|「勉強しなさい」よりも効果的!?な、子どもの学習意欲を高める関わり方PRESIDENT Online|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣「勉強しなさい」と言わない理由SankeiBiz|「勉強しなさい」は逆効果勉強嫌いな子を変貌させた家庭の特徴安村知倫 (2017) ,『子どもの成績を「伸ばす親」と「伸ばせない親」の習慣』, 明日香出版社.明光2020教育改革室 (2018) ,『開始5分の「振り返り」から子どもの学力はぐ〜んと伸びる!』, 主婦の友社.西角けい子 (2010) ,『子どもの成績は、お母さんの言葉で9割変わる!−−普通の子が次々日本一になったニシカド式勉強法』, ダイヤモンド社.小林公夫 (2009) ,『「勉強しろ」と言わずに子どもを勉強させる法』, PHP研究所.江藤真規 (2009) ,『勉強ができる子の育て方』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.汐見稔幸 (2007) ,『親子のハッピーコミュニケーション』, 岩崎書店.瀧靖之 (2018) ,『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える究極の子育て「賢い子」は図鑑が育てる』, 講談社.松永暢史 (2007) ,『子どもを親より賢くする本子どもを賢くする親は、ここが違う!』, PHP研究所.
2019年07月14日たまの休みくらいは、思いっ切り子どもを自然のなかで遊ばせてあげたい――。都市化が進み、誰もが多忙な時代だからこそ、そう考える親も少なくないでしょう。でも、親子ともに自然に触れる機会が減っているいま、親は子どもにどのように自然体験をさせてあげればいいのでしょうか。「プロの自然解説者」である、プロ・ナチュラリストの佐々木洋さんにお話を聞きました。アドバイスに先立って語ってくれたのは、子どもたちとの自然体験活動を通じて佐々木さんが感動したというエピソードです。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)いまもむかしも子どもたちの本質は変わらないわたしがおこなう子ども向けの活動は本当に多岐にわたっていて、それこそ虫ばかりを追いかけるようなこともあれば、ただのんびりと山を歩くということもあります。過去25年以上にわたっておこなってきた活動のなかでとくに印象に残っているエピソードをお伝えしましょう。その日、出掛けたのは干潟で、「泥んこ体験」をさせることが目的でした。幼い頃に干潟や田んぼで遊んだことがあれば、足の指と指の間を柔らかい泥が抜ける独特の感触を思い出すという人もいるでしょう。なんともいえない気持ち良さがありますよね。地方であれば、いまも干潟や田んぼで泥まみれになって遊んでいるという子どももいますが、都心部だとそうはいきません。連れて行った子どもたちは幼稚園の年長さんたちで、ひとりも干潟で遊んだ経験はありませんでした。当然、子どもたちはおっかなびっくりです。しかも、「汚れるとお母さんに怒られる」なんて思っている子どももいて、なかなか泥んこになりません(笑)。ところが、ある男の子が転んで泥だらけになっちゃった。すると、その瞬間、子どもたちが一斉に「わーッ!」と叫んで泥まみれになって遊びはじめたのです。わたしは、その光景を見ていて子どもたちにかけられた「現代の呪文」が解けた瞬間だと思いました。いまもむかしも子どもたちの本質は変わりません。ただ、いまの子どもたちは自然に触れる機会が激減しているというだけなのです。「ついに子どもたちの『本能』に火がついた」と、感動したことを強く覚えていますね。擬人化して虫への恐怖心を取り除く子どもたちが自然に触れる機会が減っていることを思えば、子どもを自然に親しませるには親などまわりの大人が工夫してあげることも必要かもしれません。虫が苦手だという子どもも多いものです。虫の怖さは人によってさまざまでしょうけど、ひとつは「自分でコントロールできない」ということが考えられます。自分で飼っている犬などのペットなら、その行動もある程度コントロールできますし、行動の予測もできるでしょう。でも、触った経験のない虫の場合はどんな動きをするのかがわかりません。だから怖いのです。だとしたら、それこそペットのように思わせてあげればいいのです。自然体験が少ない子どもなら、おとなしくて危険でもないダンゴムシでも触れないという子どももいます。そういう子どもにはダンゴムシに親近感を持たせてあげましょう。何匹かのダンゴムシがいたら、「どのダンゴムシが好き?」と聞いてみる。ダンゴムシを怖がる子どもなら、「いちばんちっちゃいダンゴムシ」なんて答えるかもしれません。そうしたら、「お父さんはこの大きくて格好いいヤツがいいな」「大きさがちがうから、もしかしたら親子かな?」なんて話してみる。いわば、擬人化するというわけです。そうすると、子どもは自分が選んだダンゴムシに親近感を持ちはじめます。他の虫には触れなくても、「『僕の、わたしのダンゴムシ』なら大丈夫」というふうに虫への意識が変わっていくのです。そうすれば、徐々に他の虫に対しての恐怖心も和らいでいくはずです。「子どもと一緒に体験する」という意識また、以前と比べて自然体験が減っているのは、大人も変わらないかもしれません。そういう親が子どもに自然体験をさせようとすると、つい「もっと勉強してから」と思ってしまいがちです。とくに教育熱心な親の場合、全部勉強してから教えようと考える真面目な人が多いのです。でも、そんなことをしているうちに子どもはどんどん成長してすぐに親と一緒に外で遊ぶような年齢ではなくなってしまいます。大切なことは「子どもと一緒に体験する」という意識です。公園で子どもに「この花、なに?」と聞かれて、その場で答えられなくてもなんの問題もありません。「なんだろうね?」「うちの近くにもあるかな?」なんて答えて、帰宅してから子どもと一緒に調べればいいのです。子どもとは、親が上から下に向かって教え諭すだけの対象ではありません。親もわからなくて知らないことであれば、子どもと同じ目線に立って一緒にワクワクドキドキしながら学んでみてはどうでしょうか。また、「同じ目線」という意味でいえば、実際の目線の高さを親子で交換することもおすすめします。親子で散歩をしているとき、子どもは目ざとく虫や花を発見しますよね。もちろん、目がいいということもあるのですが、それは子どもの目線が物理的に低いからです。地面に近いのですから小さな花にも気がつきますし、草木の葉の裏に隠れている虫も見つけられるというわけです。そこで、親が実際に子どもと同じ高さで周囲の自然を見てみる。逆に、子どもを抱っこしてあげて大人の目線から見える風景を味わわせてあげる。きっと、親子ともに新たな発見や感動があるはずですよ。『ナンコレ生物図鑑 あなたの隣にきっといる』佐々木洋 著/旬報社(2015)■ プロ・ナチュラリスト 佐々木洋さん インタビュー一覧第1回:「自然だし、仕方ない」現代の恵まれた子どもたちが“自然体験”から学ぶ重要なこと第2回:「虫が怖い」はこうして克服。ダンゴムシすら触れない子に、親は何をすればいい?第3回:自然観察=現場検証!?生き物の“痕跡”探しから始まる、都会でもできる自然体験(※近日公開)第4回:カブトムシやクワガタが採り放題!夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”(※近日公開)【プロフィール】佐々木洋(ささき・ひろし)1961年9月30日生まれ、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。公益財団法人日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などさまざまな立ち場で自然解説活動をしたあと、「プロ・ナチュラリスト 佐々木洋事務所」を設立。「自然の面白さや大切さを多くの人とわかち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、25年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演、テレビ・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等の活動をおこなう。著書に『ぼくはプロ・ナチュラリスト 「自然へのとびら」をひらく仕事』(旬報社)、『モリゾー・キッコロ 森へいこうよ! 会える! 虫図鑑』(宝島社)、『「調べ学習」に役立つ水辺の生きもの』(実業之日本社)、『よるの えんてい』(講談社)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月14日共働き家庭が増え、親も子どもも忙しいいま、子どもが自然に触れる機会は以前と比べて減りつつあります。そもそも、幼いうちから自然に触れることは、子どもになにをもたらしてくれるのでしょうか。お話を聞いたのは、佐々木洋さん。職業は「プロ・ナチュラリスト」で、ご本人いわく「プロの自然解説者」です。まずは、プロ・ナチュラリストの仕事内容から語っていただきました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)老若男女を相手に自然の面白さを説く「自然解説者」わたしの仕事は「プロ・ナチュラリスト」です。耳にしたことがあるという人はあまり多くないかもしれません。というのも、これはわたしが商標登録をしているもので、一般的に広く知られた職業ではないですからね(笑)。仕事の内容をひとことでいえば、「プロの自然解説者」です。活動にはいくつかの柱があります。まずは幼稚園や保育所、小学校などで授業の一環として自然の大切さや面白さを話すというもの。それから、各地のホールなどでおこなう講演会や講習会。これらにはただ話をするだけではなく、実際に自然のなかで自然観察の指導をおこなうというものもあります。それから、書籍などの執筆活動に、テレビやラジオ番組の企画、出演です。講演会や講習会の対象は子どもたちということもあれば、子持ちかどうかにかかわらず大人の場合もあるし、外国人ということもある。場所、対象によって内容もさまざまですね。そもそもなぜわたしがこの仕事をはじめたかというと、単純に自然が好きだったということに尽きます。でも、学生時代の専門は英語音声学でした。学生の頃は英語を使った仕事をしようと考えていたのですが、自然の世界が懐かしくて戻ってきたという感じですね。わたしの出身は東京ですが、都内とはいえ河川敷がすぐそばにあって自然豊かな場所でした。その原風景がわたしをこの仕事に導いてくれたのです。「ありのままの自分でいい」と思わせてくれる自然の多様性いまの子どもたちは、かつてと比べて自然に触れる機会が圧倒的に減っていると感じています。とはいえ、自然の豊かさそのものは以前とほとんど変わっていません。都内であっても動物も虫もたくさんいて季節の草花も豊かに咲き誇るのに、それに触れる機会が減っているだけなのです。それが本当に残念でならない……。とくに幼児期から自然に触れることは子どもにたくさんのものを与えてくれます。それこそ、その「効能」には枚挙にいとまがありませんが、なかでもわたしが大切だと思っている3つの効能をお伝えします。第一に「多様性を知る」ということ。子どもは自分が好きなことであれば大人以上に熱心に知識を蓄えていきます。新幹線が好きな子どもであれば、どんな新幹線でもひと目見れば名前を答えることができるでしょう。でも、自然だとそうはいきません。どんなに虫が好きな子どもでも、幼稚園の園庭にやって来るすべての虫の名前をいうことはできないでしょう。わたしにも無理です。なぜかというと、それだけ多くの種類の生きものがいて、多様性に富んでいるのが自然というものだからです。しかも、もっといえば、それらのいろいろな生きものにはなにひとついらないというものもありません。人間からは嫌われることが多いカラスだって、自然界では食物連鎖の一部を担ってしっかり役に立っています。この意識は人間教育にもつながるものです。人はそれぞれすべてちがっていて、しかもちがっていていい。ありのままの自分を受け入れて力強く人生を歩むためには、幼い頃に自然を通じて多様性を知るべきなのです。思いどおりにならないなかで最大限の創意工夫と努力をするふたつ目の効能は、「究極の癒やしを与えてくれる」ということ。大人のみなさんだって、仕事や人間関係でストレスがたまれば、海を見たくなったり森のなかを散歩したくなったりすることもあるでしょう。これは子どもにもあてはまることです。子ども自身が大人のように意識しているかどうかは別として、自然のなかで受け取る癒やしが子どもの心をほぐして健やかに育ててくれるのです。3つ目は、「思いどおりにならないことがあると知る」こと。いまの子どもたちはかつてと比べて物質的には恵まれていますし、大人も以前ほど厳しく怒らなくなりました。ともすれば、そういう環境にある子どもは「なんでも思いどおりになる」と感じてしまいそうですが、自然だけはいまもむかしも変わらず思ったとおりにはなりません。どんなに丹精を込めて植物を育てても花を咲かせてくれないということもあります。「昨日、アゲハチョウを見た!」という友だちの話を聞いてその場所に行ってみても、今日は見つからないということもあるでしょう。そこで、子どもは子どもなりに「自然だし、仕方ない」と「あきらめる」ことを知ります。この「『あきらめる』ことを知る」ということが重要なのです。「あきらめる」というと、努力をやめるというイメージを持つかもしれませんが、そうではありません。努力や、それからお金などではどうにもならないということもあるのが世のなかです。自分がなんでも支配できるわけではないということです。仕事をしている大人でもそうですよね?人間関係などさまざまな要素が絡む仕事では、ひとりの人間が思いどおりにできることは限られています。でも、その制約のなかで最大限の創意工夫と努力をする。「どうすれば花を咲かせられるか」と考える。自然と触れるなかで得るその姿勢こそが、子どもを大きく成長させてくれるはずです。『ナンコレ生物図鑑 あなたの隣にきっといる』佐々木洋 著/旬報社(2015)■ プロ・ナチュラリスト 佐々木洋さん インタビュー一覧第1回:「自然だし、仕方ない」現代の恵まれた子どもたちが“自然体験”から学ぶ重要なこと第2回:「虫が怖い」はこうして克服。ダンゴムシすら触れない子に、親は何をすればいい?(※近日公開)第3回:自然観察=現場検証!?生き物の“痕跡”探しから始まる、都会でもできる自然体験(※近日公開)第4回:カブトムシやクワガタが採り放題!夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”(※近日公開)【プロフィール】佐々木洋(ささき・ひろし)1961年9月30日生まれ、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。公益財団法人日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などさまざまな立ち場で自然解説活動をしたあと、「プロ・ナチュラリスト 佐々木洋事務所」を設立。「自然の面白さや大切さを多くの人とわかち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、25年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演、テレビ・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等の活動をおこなう。著書に『ぼくはプロ・ナチュラリスト 「自然へのとびら」をひらく仕事』(旬報社)、『モリゾー・キッコロ 森へいこうよ! 会える! 虫図鑑』(宝島社)、『「調べ学習」に役立つ水辺の生きもの』(実業之日本社)、『よるの えんてい』(講談社)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月13日夏休みの計画を立てるとき、毎年の恒例行事として家族キャンプを組み込んでいるご家庭も多いのではないでしょうか。または、未経験でも「子どもが小さいうちに一度は家族でキャンプしたい!」と考えている親御さんもたくさんいるはずです。キャンプでは思い切り身体を動かし、家族で協力して楽しい思い出を作りたいですよね。ただし、キャンプや自然体験で得られるメリットは、それ以外にもたくさんあります。今回は、自然体験に科学的な学びの要素を取り入れて、いつもとは違う楽しみ方ができる「キャンプ×サイエンス」についてお伝えします。子どもはみんな理科が好き!?子どもを公園や海や山へ連れていくと、放っておいても泥いじりや草花の観察、虫とりをするなど、自然科学への好奇心があふれて止まりません。ではなぜ、いわゆる「理科離れ」が進んだといわれているのでしょうか。子どもたちに自然体験の場を提供する活動を行なう、NPO法人『野外遊び喜び総合研究所』によると、子どもたちを取り巻く現代の環境から原因が見えてくるといいます。遊び場からは危ないものや不衛生なものを排除するために、自然の要素がどんどん失われています。理科の授業で学ぶテーマは日常的なものであるものの、現代の子どもたちにとっては日常から切り離されている題材であることが多く、さらに学習が進むと難しい概念や数字が出てきて、そのころにはもう難解なものになってしまっているのではないでしょうか。このように、日常からかけ離れているように感じることが、理科や科学に対する苦手意識に結びついているのです。このまま「理科離れ」が進むことで、将来の研究者や技術者が育ちにくくなると懸念されています。そこで、このような状況を受け、小学生のうちから理科に興味をもって取り組む環境づくりを目的として、さまざまな企業や自治体が小学生向けのサイエンス教室を実施しているのです。特に夏休みには、キャンプなどの自然体験活動とサイエンスを組み合わせたプログラムを実施しているところが多く、子どもたちにとっても濃密な科学体験学習ができる良い機会になっています。そして、自然に囲まれた環境でキャンプ体験をすることで、子どもたちは自然の不思議に触れ、理科への興味関心を満たすたくさんの経験ができます。子どもに本来備わっている「なぜ?」を追求できる環境を与えてあげることで、いつもよりももっと理科を身近に感じさせられるでしょう。キャンプとサイエンスの相乗効果で子どもの能力がぐんぐん伸びる!東レとJTB、リバネスが共同で開催している宿泊体験型教室『青空サイエンス教室』は、自然体験を通して理科の原理を学ぶことができると毎年人気のプログラムです。「理科好きの小学生を増やす」ことを目的としたキャンプなので、大自然を教材にして子どもたちの好奇心を育成するプログラムで進めていくのが特徴です。ぎゅっとサイエンスの要素がつまった2泊3日のキャンプ。バスに揺られて到着すると、すぐにその活動が始まります。森の中を散策して不思議な生き物の秘密を解き明かしたり、生き物の力を使って私たち人間に役立つこと(アメンボの力を使った水上移動、ミミズの力を使った掘削装置など)を考えたりと、体力と知力をフル回転させます。そして、昼食のバーベキューでも「食のサイエンス」が。火を起こすとき、酸素が入りやすい炭の置きかたは?お肉が美味しく焦げる温度は?など、仮説を立てて実験しながら食事を楽しみます。夜は、炎色反応を利用したカラフルなキャンプファイヤーをしたり、星座アプリを使った星空観察をしたりと、眠りにつく直前まで、子どもたちの好奇心は満たされ続けるのです。そして最終日、キャンプで学んだことをプレゼンテーション形式で発表します。このアウトプットの作業があることで、学びがしっかしと身につき、さらなる意欲につながっていきます。家族でキャンプをするときも、自然体験のなかで学んだことをまとめると、立派な自由研究ができあがりますよ。自然体験から得られる「学びに対する姿勢」フィールドワークに特化した野外型の理科教室『早稲田こどもフィールドサイエンス教室』では、「自然の不思議さを実感できる感性」を育むことを目的とした活動を行なっています。そこでは、子どもたちから自然とわきあがる「なぜ?」「どうして?」という疑問を大切にして、自分で考えて自分で解決する力を身につけられる指導を心がけているそう。他にも、次のようなことを意識して教えているといいます。■自然の成り立ちを理解する動物も植物も、それぞれが何らかの関係やつながりをもって存在していることを理解させます。■観察ができるようになる子どもは意外と「じっくりと観る」ことができないもの。自然と向き合う基本的な技術として身につけさせましょう。■違う視点をもつ物事は一面だけではとらえきれません。多角的な視点をもつと、見えなかったものが見えるようになり、真の理解につながります。■「わかった」と簡単に言わない物事の表面だけを見てわかったつもりになっていたら、そこで成長は止まります。■物事を大局的にとらえる大木の葉っぱ一枚にこだわっていては、木そのものが見えなくなることを理解しましょう。物事を大きくとらえる思考力を身につけることが大切です。このように、自然体験を通して学べることはたくさんあります。日常とは違うスケール感で物事を見ることができる経験は、子どもにとって忘れられない貴重な体験となるでしょう。家族でできるキャンプ科学体験□火をつかう大人は毎日料理で火を使いますが、子どもにとって火を使う体験はとても貴重です。風向きを気にしながらマッチを擦る、小さな炎がだんだん大きな焚き火になる様子を観察する、煙が目に入ってしみる……など、どれも不思議で刺激的な体験になります。□さまざまな石に触れるどこにでも転がっている「石」ですが、自然に囲まれたキャンプ場では、普段見慣れないようなゴツゴツした大きい石がたくさんあります。小川の近くなど場所によって形や模様などが違うので、じっくり観察すると驚きの発見があるかも!?□水の流れを目で感じる小川の流れを利用して、葉っぱや花びらを流してみましょう。「どの葉っぱが一番速く流れるかな?」と親子で競争すると、子どもは夢中になって葉っぱを集め始めるはずです。場所によって流れが穏やかだったり激しかったりするので、安全に気をつけて複数の場所で試してみてもいいですね。***キャンプや自然体験をきっかけとして、苦手だった理科が好きになった子もたくさんいるのでは?自然の中には、私たちの想像以上に、サイエンスの要素がふくまれています。火を起こすことも満点の星空を眺めることも、太陽の位置と時間との関係を知ることも、すべては科学的な好奇心の刺激に結びつくと言っても過言ではありません。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|「科学好き」な子どもには、好奇心と我慢強さが身につく。子どもが理科・科学に親しむメリットと方法NPO法人 野外遊び喜び総合研究所|ABARENBO CAMP|サイエンスシリーズTORAY|青空サイエンス教室|実施概要早稲田こどもフィールドサイエンス教室|TOPページ早稲田こどもフィールドサイエンス教室|教室概要・クラス一覧|早稲田こどもフィールドサイエンス教室とは
2019年07月12日成長、発達、認知――。教育関係の記事ではあたりまえのように使われる言葉ですが、その厳密な意味となると答えられない人も多いでしょう。お話を聞いたのは、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っている、静岡大学情報学部客員教授の沢井佳子先生。それらの言葉の意味に加えて、幼児教育の世界で流行語となっている「非認知能力(非認知的スキル)」という言葉がはらむ問題についても持論を語ってくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)成長、発達、認知という言葉の意味とは?成長、発達、認知という言葉のうち、その意味合いからも混同されるのが成長と発達ではないでしょうか。子どもの成長、発達といった場合、一般の会話においては大きなちがいはありません。でも、アカデミックな意味でいうと両者にはちがいがあります。「成長」とは、「数値」でわかる身体の量的な変化です。つまり、子どもでいえば身長が伸びたり体重が増えたりした場合に、「成長した」というのです。そして、「発達」とは「働き」や「質」に焦点をあてた心身の変化です。たとえば、「子どもが手指で柔らかいものを上手につまめるようになる」という動作の「器用さ」の変化や、そして「頭のなかで言葉や数や論理を理解する」というような、見た目だけではわからない心理的変化も「発達」に含まれます。この発達の過程において、生涯にわたってドラマチックな変化を見せるのが「認知の発達」です。「認知」とはごく簡単にいえば「ものごとがわかる」ということです。一般に認知能力というと、文字を書く、計算する……といった「学力」と同じ意味だと、非常に狭い意味でとらえられがちです。しかし、認知は人間のあらゆる「知覚」「運動」「学習」「判断」「記憶」などに関わります。たとえば、生活習慣の獲得。子どもが服を上手に着られるようになったなら、そこには、方向や位置関係がわかる……という空間認知や、見て触った情報をもとに動作を実行するという認知の発達がみられるのです。友だちとの付き合いにおいても、表情を認知し、視点を動かして相手の気持ちを察し、出来事のつながりから因果関係を推理し、行動の社会的な結果を予測して意思決定をする……といった認知の過程がたくさん含まれているのです。生活習慣から社会生活、おしゃべりから数の理解、砂場の遊びからスポーツの試合まで、子どもの頭のなかでは認知的な営みが忙しく繰り広げられているのです。子どもの教育から少し話はそれますが、この「認知」に関する言葉で、個人的に残念に思っているのが、2004年末に日本で「痴呆症」に代わるものとして「認知症」という名称が採用されたということです。「認知症」という名前は、そのままの意味でとらえると、「わかる病気」ということになってしまいます。当時、厚労省が行ったアンケートでも、ほとんどの有識者が「認知障がいという名称が適切」と答えていました。「認知」を「歩行」に置き換えて考えてみましょう。歩行器で歩く人も、車椅子を使う人も「歩行障がい」があるわけです。が、それを「歩行症」と呼んだらおかしいですよね。「うまく認知できないこと」は、本来なら「認知障がい」と呼びたいところです。「でも、厚労省側が『少しでも字数が少ないほうがいい」と判断して『認知症』という言葉に決まったんですよ」と、その検討会の座長を務めた医師の長谷川和夫先生から、直接お聞きしたことがあります。こうして「認知症」という名称が生まれて15年がたったいま、「うちのおじいちゃん、『ニンチ』になっちゃって……」といったふうに、ずさんに略されて使われるのを耳にします。認知という言葉が真逆の意味で使われるのです。わたしは「みんなの認知症情報学会」で、認知症や発達障がいの当事者の方々のお話を聞く機会があるのですが、そのなかのひとりの女性が「わたし自身の認知の特徴について正確に説明しようとしても、ニンチという言葉は、得体の知れない深海魚か怪物のように思われ、人の誤解を解くのは大変です」とお話しくださったことが忘れられません。「認知症」のように、名前と意味の関係をあいまいにした言葉は、誤解に悩む人を増やしてしまうのです。「社会情動的能力」を「非認知能力」と呼ぶべきではない「認知」の意味への誤解を広げている名称がもうひとつあります。現在の教育界で頻繁に聞かれる「非認知能力(非認知的スキル)」がそれです。米国の経済学者のヘックマン(J.J.Heckman)の著書『子どもたちに公平なチャンスを与える(”Giving Kids a Fair Chance”)』邦訳『幼児教育の経済学』(東洋経済新報社)のなかに「非認知能力」は登場します。ヘックマンは米国の公教育が、子どもたちを到達度テストの点数で評価し、「学力優位の教育に偏っている現状」を批判しています。多くの人が社会で成功し、経済格差を解消するためにも、到達度テスト(認知テスト)では測れない、意欲や長期計画を実行する能力、他人と協働するのに必要な社会的・感情的制御という「非認知能力」を伸ばす教育が重要である。そして幼児期こそ「非認知能力」を育む最適期なので、幼児教育にかかる費用を、社会が家庭へ「事前に分配」すれば、効率的に社会的格差が解消される――。と、幼児教育への社会的投資を促しました。わたしは、この結論には賛成です。経済階層や家庭環境のちがいにかかわらず、どの子どもにも適切な幼児教育の機会が与えられるように社会システムを作ること。そして、学業のみならず、社会性や情動コントロールの能力を育む「幅広い領域の教育」の恩恵をすべての子どもが得られるように、社会が幼児期にお金と手間をかければ、子どもが年を取るまで望ましい効果が得られ、人生も社会全体も豊かになる……というヴィジョン。これは、わたしが30年以上前から、テレビ幼児教育番組のコンテンツ開発の仕事をしながら思い描いてきた理想と重なります。しかしながら問題は、社会性や情動コントロールの能力を「非・認知能力」と名づけ、学業に関わる能力だけを「認知能力」と名づけたことでした。わたしは、その意味する「事柄」ではなく、「名称」を問題視しています。ヘックマンは当初、「(研究者が)数値で量的に認知しやすい能力」と、「(研究者が)数値では認知しにくい能力」とを区別するつもりで、認知能力と非認知能力と命名したようですが、そんな名称では「子どもの頭のなかの認知能力」と区別がつきませんし、実際、混同されています。社会性や情動コントロールの能力のなかには膨大な認知過程があるにもかかわらず、それを「非認知」と呼べば、一般の人は「人付き合いや、我慢ができることなどに、認知は入っていないのだな」と誤ってとらえてしまうでしょう。そもそも、「非(Non-)」が頭について、「認知『じゃないもの』が大事だ」……という造語の仕方が誤解のもとです。大事な事柄は、否定ではなく肯定で、端的に表現すべきでした。ヘックマンは学業の能力(彼のいう認知能力)と社会情動性の能力(彼のいう非認知能力)の両立を重視したはずですが、教育者の間では「非認知能力」あるいは「非認知スキル(Non-cognitive skills)」という名称のみが流行語になり、両者のバランスは崩れていきました。さらに「非」という接頭辞が、続く「認知能力」を排除するか、または時間的に後回しにする解釈へと迷走させています。「<我慢ができて、友だちと仲良く協力し合い、自分の感情をコントロールする力>は非認知能力であり、これが育ったあとに認知能力を伸ばせばよいのです」と、幼児教育の現場で語られるのを聞きましたが、これは、ふたつの能力を同時に重視するヘックマンの論旨に反します。また、赤ちゃんのときからの「顔や声のパタンを見わける認知能力」がベースにあってこそ、特定の大人への愛着が深まり、観察と模倣の学習も進み、社会情動的能力が発達するのだという、心理学の知見ともかみ合いません。学術的な知見と「つじつま」が合わないまま、「非認知能力」という名称は、一般の人々の「認知」への理解をゆがめているのです。幼児期にこそ「認識の枠組み」を与えたい2011年の東日本大震災のとき、米国の『TIME』誌は、被災者の写真とともに「“Gaman”=ガマン」という言葉を「日本人独特の精神性」を象徴するものとして紹介していました。米国人のヘックマンが想定した「忍耐力や情動の抑制のレベル」をはるかに越えるマグニチュードの「被災者の我慢」に、米国のジャーナリストは驚いたのです。幼児教育の現場はもちろん、日常の現実やアニメでも「我慢強い子」のモデルを多く目にする日本は、「他者と協働するための社会性」への期待が重過ぎるほどです。ですから「非認知能力」と呼ばれる「社会・情動性」の教育の旗を振らなくても、日本の幼児教育の先生方はすでにそれをたっぷりと教育なさっていると思います。が、近年の「非認知能力」という流行語の副作用として「認知能力」が狭く解釈され、「文字や数を学ぶ認知能力は、小学校から伸ばす」とみなされ、幼児の幅広い認知能力が論じにくくなったのは問題です。他方、小学校はといえば、STEAM教育(科学、技術、工学、芸術、数学)を代表するプログラミング教育に加えて、英語の教科化で忙しく、6歳からの知識学習はどんどん増やされています。6歳を境に幼児教育と小学校の教育の内容には、崖のようなギャップがあります。それを不安に思う親は、非認知能力重視をうたう幼稚園に子どもを通わせつつ、さらに国語、算数、英語の「学業の先取り」を助ける塾へも通わせ、ダブルスクールの行き来で親子はヘトヘト。楽しいはずの幼児期がこのような疲労感で終わっては、「意欲」を育むどころではありません。そこで思い出すのは、わたしが2004年にハンガリーの保育園を訪ねたときの驚きです。保育士が「さあ、論理で遊びましょう!」と、3歳から6歳の子どもたちを集め、おもちゃや絵本、ボールなどを使って、仲間わけの論理遊びをはじめました。子どもたちは、異年齢同士で相談しながら、おもちゃを選び、ボールを転がして「考える遊び」を楽しんでいたのです。「考えること」は運動であり、友だちとのコミュニケーションであり、答えを探すための忍耐も遊びの内でした。ブダペストの明るい教室には、「子どもの思考」への洞察と、「考える遊び」を開発する技術があり、芸術的なバランスがあることに、わたしは心打たれました。ブダペストの小学校も見学しましたが、幼児教育から滑らかにつながり、校長は「幼児から児童への認知発達を考え、自分で論理的に考えられるように、遊びや学びを開発しているんですよ」とお話しくださいました。論理、社会性、物語、数学、運動、音楽などが、一体となった教育は、面白い幼児教育番組を見ているような印象を残しました。1973年にはじまった幼児教育番組『ひらけ!ポンキッキ』(フジテレビ)は、ガチャピンとムックが有名ですが、東 洋、永野重史、新田倫義、藤永 保という4人の発達心理学者が監修して、幼児期の認知発達を支援する目的でつくられました。わたしは1984年から1988年まで心理学スタッフとして制作に携わりました。放送がはじまった頃は、批判の電話がたくさんあったそうです。「幼児期はココロを育てる情操教育が重要なのに、『ポンキッキ』は知識の詰め込みの早期教育でけしからん」という批判です。「知性と情意性、どっちを重視するのか?」という、能力を分割する議論は、むかしもいまも変わらず繰り返されるんですね。『ポンキッキ』の監修者は、「幼児が主体的に情報を処理する能力を育て……質の良い知的構造の形成と深化を目指す」という理念を掲げ、論理概念すらも面白いアニメで見せ、社会性や情動性をテーマにした歌やダンスも開発しました。いま、わたしは『しまじろうのわお!』(テレビ東京)という幼児教育番組の監修者として、ピーマンの悲しみの理解から、転んでも立ち上がる意欲の歌、ジュースの量を比べる遊びまで、幼児の生活全体を対象に、『認識の枠組み』を与える映像を開発しようと、制作仲間と議論を重ねています。ハンガリーの「社会的な論理遊び」、そして「生活のなかで考える面白さ」を伝える『ポンキッキ』、こうした「認知と情意性の発達を丸ごと支援する教育」を、いろいろなメディアで増やしたいものです。大人のかたも、子ども時代の記憶を思い出して、「3歳のわたしが面白かったことは?大好きな人のなにを真似たのかな?」とご自分の発達を振り返ってみませんか?「認知=ものごとがわかること」について考えはじめると、高齢者になるという発達も面白くなるように思います。■ 静岡大学情報学部客員教授・沢井佳子先生 インタビュー一覧第1回:“○歳だからこれができないとダメ!”その思い込みから親を解放する「発達心理学」入門第2回:幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法第3回:「10まで言えるのに、5個が数えられない」?未就学児への“数”と“時間”の教え方第4回:「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”【プロフィール】沢井佳子(さわい・よしこSAWAI, Yoshiko)1959年生まれ、東京都出身。チャイルド・ラボ所長、静岡大学情報学部客員教授。認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。学習院大学文学部心理学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。同大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。専攻は発達心理学。幼児教育番組『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、文教大学人間科学部講師などを経て現職。他に、日本こども成育協会理事、人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事、日本子ども学会常任理事などを務める。幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列/2016年国際エミー賞子ども番組部門ノミネート、2019年アジアテレビ賞受賞)の監修など、多様なメディアを用いた幼児向け教材やテレビ番組の制作におけるコンテンツ開発に携わっている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月12日大人ならあたりまえのように使っている「数」。日常的に使うものだけに、子どもの頃にどのように理解したのかをほとんどの大人が覚えていません。算数が苦手な子どもにしないため、小学校に入る前に「せめて数だけでも教えておきたい」と考えても、その方法はなかなか思いつかないのではないでしょうか。そこで、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っている、静岡大学情報学部客員教授の沢井佳子先生に、数や時間の概念を子どもに教えるためのアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)数を数えられても数を理解できない子ども子どもに数を教えようとして、お風呂の湯船につかるときに「最後に10まで数えたら上がっていいよ」といったことをしている親は多いのではないでしょうか。それで、きちんと順に1から10まで数えられるからといって、子どもが数を理解しているとはいえません。たとえば、10まで数えられる子どもに7つのドーナツを見せて、「ドーナツがいくつあるか、数えてごらん」といってみると、一つひとつのドーナツに対応しない指さしをしながら「1、2、3……10!」と10まで数えてしまうことはよく見られます。これは、10までは数を唱えることができるけど、「何個」という個数を表す数の意味はわかっていないからです。ひとことで数といっても、さまざまな概念が含まれます。7つのドーナツの個数が7だと示す数は「集合数」と呼ばれます。また、1番目、2番目というふうに順番を示す数は「順序数」といいます。他にも、住所の番地など、いわば「名前」のように使われる数もあります。このように、数の概念は、単純ではありませんから、数の意味を正確に学ぶのにはかなりの時間がかかるのです。また、順序数を理解できても、集合数は理解できないということもあります。7つのドーナツの順番はわかって「1、2、3……7」というふうに、7番目のドーナツでちゃんとストップして数えたのに、「じゃ、ドーナツは全部でいくつ?」と聞いてみると、「10!」とか「8!」などと答えるケースも珍しくありません。「全部」を「10」だと信じていたり、あるいは次の数だと思ったりしている子ども多いのです。お風呂の例のように、1から10まで数の名前を順番にいうというのは「数唱(すうしょう)」というものです。子どもが集合数や順序数を理解しないまま、ただ数を10までいえるよう鍛える教え方は、それは意味もわからずにお経を唱えさせることとなんら変わりません。ただ「長い言葉」を覚えただけなのです。10までの自然数を理解できれば足し算も引き算もできるこれまでわたしが監修をしてきた幼児向けの教材では、3歳は5までの集合数、4歳は10までの集合数を教えるようにしています。「少ないのではないか?」と思う人もいるかもしれませんね。でも、10までの順序数と集合数の「意味」さえ確実に理解できれば、足し算も引き算も、数のイメージを思い浮かべながらできるようになります。それは、自然数というものの構造を理解できたということだからです。10までの順序数と集合数を家庭で教えるにはブロックを使ってみてください。まずは紙に「1、2、3……10」と10番までの数字、つまり順序数を書きます。そして、それぞれの場所に順序数と同じ数のブロックを積み上げる。こちらは個数ですから集合数になります。すると、1個から10個までのブロックが階段状に並ぶことになります。1番目には1個、3番目には3個、というふうに、横方向の順序数と縦方向の集合数の関係は一目瞭然です。これは、数の階段のイメージであり、「nの数の次はn+1の数」という自然数の系列の姿を表します。このような「数の階段」を自分でつくれば、5番に並べられているブロックの数は3番に並べられているブロックより2個少ないということも見ればわかりますから、足し算や引き算についての理解を助けることにもなるのです。生活のルーチンの繰り返しと体感が導く時間と時計の理解また、「数の保存」という概念も子どもにとってはなかなか理解できないものです。5つのブロックは、間隔を空けて点々と並べても、ぎゅっと縮めて並べても同じ5個です。でも、子どもの場合、「どっちが多い?」と聞くと、あたりまえのように「こっち!」と前者を指すことがあります。個数とは関係なく、ものが置かれている面積が広いほど、個数も多いと感じてしまうのです。この「数の保存」を子どもが学ぶには、ブロックなどを使って何度も置き方を変えながら個数を数えて、どんな置き方をしても個数は変わらないという経験を、親が増やしてあげる必要があります。重要となるのは、ブロックなどの具体物を使って手で触れさせながら教えること。この手を動かす「実感」こそが、子どもの理解を助け、小学校に入った後には算数の文章題を読んだときのイメージを助けることにもなります。また、「実感」が必要ということでいえば、「時間概念」の理解にも実感が欠かせません。幼い子どもは「朝、昼、晩」「朝ご飯、昼ご飯、晩ご飯」といった日々の生活習慣の繰り返しのなかで徐々に時間というものを感じていきます。そして、3、4歳になれば、季節の移り変わりを1年前、2年前と比べることもできるようになる。その記憶を伴った実感が時間概念を子どもに理解させるのです。そうして、時間の大きな流れを理解すると、今度は生活習慣が「時計」の理解を助けてくれます。同じ朝といっても、6時と7時ではちがいます。とはいえ、時計の存在を知らない子どもにとってはそのちがいはなかなかわからないでしょう。でも、毎日6時に起きる子どもが、その日はたまたま7時に起きてしまったなら、テレビでやっている番組もいつもとちがうことがわかります。こういった経験によって子どもは時計の存在、時計を読むことの重要性に気づいていくのです。数にしても時間にしても、幼いうちから無理やり詰め込むような教え方にはほとんど意味はありません。とくに、人間の数量概念や時間の知覚などの発達にまったく関心がない大人が数字や計算ばかりにこだわって教えることは、子どもを数嫌いにさせかねません。焦ることなく、「実感を伴った経験」を増やしてあげてください。それが、結果的には子どもの数や時間の理解を深めてくれるでしょう。■ 静岡大学情報学部客員教授・沢井佳子先生 インタビュー一覧第1回:“○歳だからこれができないとダメ!”その思い込みから親を解放する「発達心理学」入門第2回:幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法第3回:「10まで言えるのに、5個が数えられない」?未就学児への“数”と“時間”の教え方第4回:「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”(※近日公開)【プロフィール】沢井佳子(さわい・よしこSAWAI, Yoshiko)1959年生まれ、東京都出身。チャイルド・ラボ所長、静岡大学情報学部客員教授。認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。学習院大学文学部心理学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。同大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。専攻は発達心理学。幼児教育番組『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、文教大学人間科学部講師などを経て現職。他に、日本こども成育協会理事、人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事、日本子ども学会常任理事などを務める。幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列/2016年国際エミー賞子ども番組部門ノミネート、2019年アジアテレビ賞受賞)の監修など、多様なメディアを用いた幼児向け教材やテレビ番組の制作におけるコンテンツ開発に携わっている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月11日今、じわじわと科学人気が高まっています。その背景として、物理学、科学、医学の分野で日本人のノーベル賞受賞者が相次いだことや、アクティグラーニングの導入によって「ロジカルシンキング(論理的思考)」が求められるようになったことが考えられます。わたしたち親世代では苦手意識を持つ人が圧倒的に多かった理系分野ですが、今ではそのイメージをがらりと変えて、子どもたちにとって科学はより身近で日常の中に溶け込んでいるようにも感じられます。体験できる場所やきっかけがたくさんあるということは、子どもの「なぜ?」にとことん付き合えるチャンスです。ぜひ親子で一緒に、身近なところから科学の面白さや奥深さに触れてみませんか?すぐに答えが出ないことがおもしろい!?最近では幼児を対象にしたサイエンス教室や実験系のワークショップなど、以前に比べて格段に「科学に触れられる機会」が増えたように感じませんか?2000年ごろに子どもの「理科離れ」が浮き彫りになってからというもの、全国各地の自治体や科学館などの施設で積極的に理科系のイベントが開催されるようになったことも一因ですが、AIの進化によって「子どもを理系に強い人間に育てたい」と願う保護者が増えたことも大きな要因だと指摘されています。とはいっても、まだまだ理科・科学に対して「難しい」「苦手だな」と思い込んでいる人が多いのも事実です。筑波大学生物学類サイエンスコミュニケーターで次世代科学者育成プログラムに携わる尾嶋好美先生によると、その原因のひとつとして現代の「すぐに結論を求めてしまう風潮」が関係しているそう。今は、インターネットで検索すれば「何でも答えが出てくる」時代になっています。子どももわたしたち保護者も、すぐに結論を求めてしまう風潮があると思います。そうした社会においては、自ら考え、答えを導き出す過程が少し面倒に感じられてしまうのではないでしょうか。その過程を楽しむことができれば、きっと理科の面白さに気付いてもらえるはずです。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|理科好きの子どもを育てるには【前編】理科好きの共通点とは)正確な知識や情報に基づき、仮説を立て、検証するといった地道な努力を経てはじめて“科学的思考力”は身につきます。それはすぐに手に入るものではなく、むしろじっくりと時間をかけて育んでいくもの。現代のスピード重視な世の中では、その過程を見守ることも難しいのかもしれません。科学が好きだとメリットがたくさん!科学好きになるとさまざまなメリットがもたらされます。そのひとつは、好奇心が高まりチャレンジ精神が育まれること。サイエンスプロデューサーの米村でんじろう先生は「実験を楽しみながら理科に親しむことで、好奇心に加えて新たなことにチャレンジしていける力を養うことができる」と述べています。さらに脳医学者の瀧靖之氏は「好奇心がある子どもは、知ることに対し純粋な喜びを感じるので、楽しみながら新しい知識を学ぶことができる」と解説しています。つまり、知的好奇心があると自発的に考えて自ら調べる癖がつき、学びへの意欲がぐんと高まるのです。ほかにも、合理的な考え方や実用的な知識も身につきます。食品パッケージの栄養表示から機械の取扱説明書まで、私たちの身の回りには科学的な情報があふれています。理科や科学を学びはじめると、日常生活の大部分は科学技術によって支えられていることに気づくのではないでしょうか。非科学的な情報に流されず、しっかりとした根拠に基づいた思考力を育てるためにも、科学に興味をもつことが大切です。最後に、精神科医の和田秀樹氏は「算数や理科が得意な子は、きちんと答えを求めようとするので我慢強い子になる」と述べています。ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑教授は、「自分で知りたいという好奇心と、簡単に信じないということ」を心がけているそう。自分の目で見て確かめたうえで、納得できるまで諦めない姿勢も身につくのですね。理科好きな子に見られるある特徴前出の尾嶋先生は、理科好きの子どもには「ある共通点」があるといいます。それは『センス・オブ・ワンダー』、つまり身近な出来事に「不思議だな」と思える感性を持っていること。小さな子どもはみんな、「どうして空は青いのか」「どうして蟻は連なって歩くのか」など小さな疑問を抱きながら毎日を過ごしています。しかし成長するにつれて、いつしか日常の小さな不思議を見過ごすようになっていきます。この「なぜ」を中高生になっても持ち続け、追求し続ける意欲を失わないことが、理科好きの子どもに共通している点だそうです。また、学研教育総合研究所が保護者を対象に「理科好きな子どもの性格・行動特性」を調査したところ、次のような結果が導き出されました。理科を「とても好き」と答えた子の8割以上が、「やり始めたら集中して取り組む」「好奇心旺盛」「思いついたら自分で試してみる」「ものごとの仕組みを知りたがる」といった性格や行動特性を持っているというのです。つまり理科が好きな子どもは、なにかに集中して取り組んだり、ものごとを追求することに興味・関心をもち、行動を起こしたりする傾向が見られるというわけです。「理科が苦手」は親の思いこみ!?「生まれながらに『理科が嫌いだ』という子どもはいません」とは、山梨大学の松森靖夫教授の言葉です。いつもぼーっとしていて何も考えていないように見えるお子さんでも、動植物や天体、目の前の自然科学に対して「どうして?」と疑問をもち、しっかりと自分の頭で考えているそうです。だからこそ「大人の常識を押し付けたり、先回りして答えを教えたりするべきではない」と松森教授は指摘します。大切なのは、子どもに「思考を温める時間」を与えること。それにより、“仮説を立てて検証する”という思考のステップの構築につながるので、口を出したくてもぐっと我慢するようにしてください。中学受験教育を専門に手がける小川大介氏によれば、8~10歳くらいになると「自分はこうだ」と強く思い込み始める傾向があるといいます。親から「私に似てあなたも理科が苦手ね」と言われるなどして理科や科学に対する苦手意識を一度持ってしまうと、その意識を変えるのは難しいでしょう。ですから、より早い段階で理科に対して関心を抱かせることが重要なのです。そのきっかけとして、家庭の中で行われていることを、きちんと定義づけてあげるようにするといいでしょう。おすすめは、お手伝いをしてもらいながら科学的思考を伸ばしてあげること。お手伝いには、子どもを理科好きにするヒントがたくさん隠されています。“おうちサイエンス”で子どもの科学的好奇心を刺激しようお手伝いを通じて“科学の芽”が育つ「お手伝いサイエンス」を提唱している『ママとサイエンス』主宰の理科教師・田中幸先生と、理科の教科書執筆にも携わる結城千代子先生は、「料理や洗濯、さまざまな暮らしの知恵は科学の原理の応用」だと説明します。とくに料理にまつわる一連の作業には、サイエンスの要素がもりだくさん!おすすめのお手伝いサイエンス□野菜を洗う大きめのタライに水を張り、夕食に使う野菜をすべて入れてみましょう。どの野菜が浮いて、どの野菜が沈むかな?水に入れる前に「お母さんはにんじんが沈むと思うな」「○○くんはどれが浮かぶと思う?」と予想してから実験するとより効果的です。□きゅうりの塩もみきゅうりを薄く刻んで塩もみをします。「太く刻んだらダメなのかな?」「きゅうりがしなっとしてきたね」などの声かけをしながら、変化の様子を一緒に観察しましょう。□鍋の音を聞くぐつぐつ、ぷくぷく、ことこと……、鍋の中身が煮える合図は音で判断することもあると教えます。「ぐつぐつ聞こえ始めたら教えてね」と見張り番をお願いすると、子どもは驚くべき集中力を発揮して観察します。□ホットケーキを焼く焼く前のホットケーキはフライパンに広がるのに、火を通すと広がりが止まり、やがて膨らみます。「ぷつぷつしてきたね」「ふくらんできたからひっくり返してみようか」「真ん中がぷっくりふくらんでいるね」など、変わっていく様子を言葉にして確認しましょう。田中先生と結城先生は次のように述べています。「科学に限らず、子どもに何かを体験させたいと思ったとき、わざわざものを用意したりどこかに行かなくても、日常にチャンスはあふれています」特別な場所へ行き、特別な道具がないと、科学への理解を深めることは難しいと考えていませんか?実は、私たちの日常はサイエンス要素に満ちているのです。***子どもの科学的関心を高めて理科好きにするには、『3つの力』を大切にしてあげましょう。「観察力」(注意深く世界を見る力)「好奇心」(何でだろう?と不思議に感じる力)「探究心」(その理由を考える力)これらの力を発揮したとき、大人は答えを用意するのではなく、「なぜかな?」「不思議だね」と共感してあげてくださいね。(参考)ベネッセ教育情報サイト|理科好きの子どもを育てるには【前編】理科好きの共通点とはStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|「科学好き」な子どもには、好奇心と我慢強さが身につく。子どもが理科・科学に親しむメリットと方法学研教育総合研究所|小学生白書Web版|1.「理科好き」を伸ばす子どもの性格・行動特性ベネッセ教育情報サイト|「子どもの科学」を大切にし、理科好きの子どもを育てる『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12,2015年6月,クレヨンハウス.
2019年07月10日我が子が、果たして順調に言葉や文字を覚えてくれるだろうか――。幼い子どもを持つ心配性の親なら、そんな不安を抱えているかもしれません。そこで、発達心理学を専門とし、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っている静岡大学情報学部客員教授の沢井佳子先生に、言葉や文字を子どもに効果的に教える方法を聞きました。まずは、その前の段階、まだしゃべらない子どものコミュニケーションについて教えてもらいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)赤ちゃんのときの動作に言葉を覚える前兆を見るまだしゃべらない子どもでも、あとあときちんと話せるようになるかどうかを確認する方法があります。その方法は、生まれて間もない赤ちゃんの段階でもできることです。対話の基本はキャッチボールのように交互に話すことですよね?Aさんが話しているときはBさんが聞く。そして、Aさんが話し終わったあとでBさんが話す。それと同じことが赤ちゃんの行動にも見られるのです。親が「○○ちゃん、かわいいね」というと、赤ちゃんは親を見てじっとしている。そして、いい終わったあとに自分の手足を動かす。こういう答えるような動作が見られるようでしたら、心配ありません。こうした行動から、その子どもには対話へと発達するベースが備わっていることがわかるのです。また、2、3歳になってもなかなかしゃべらないとなると、やはりおうちのかたは心配でしょう。その段階になるまでに、発達上の問題がないかをチェックする方法があります。赤ちゃんは1歳になる前頃から「指さし」をするようになります。あるいは、はっきりとした指さしをしなくても、親が見る方向を一緒に見ます。たとえば、お母さんが犬を見て、「あ、ワンワンがいるよ」といったとします。その言葉を聞いて、子どもはお母さんが見ている方向を見る。これは「共同注視」と呼ばれます。別のパターンとしては、親の前でテレビを見ていた子どもが、ある場面で親のほうを振り返るということもあります。これは、まだしゃべれなくても、「面白いよね?」「お父さんも見ているよね?」と伝えようとしているということで、「社会的参照」と呼ばれ、他の霊長類にはあまり見られない、人間の子ども特有の行動です。これらは「前言語的コミュニケーション」と呼ばれる行動で、いわば「言語のもと」といえます。こういう行動が見られるようであれば、言葉が出てくるのは時間の問題。心配の必要はありません。ひらがなを覚えるための第1ステップは「音節分解」こうして子どもがしゃべるようになると、熱心な親なら五十音を順に書かせるなどして幼い子どもにひらがなを覚えさせようとするかもしれません。でも、残念ながら、しゃべりはじめたばかりの子どもにいきなり文字を覚えさせることにはあまり意味がないのです。なぜなら、まずは「聞き取る」ことが大事だからです。その視点から、ひらがなを読む、覚えるために必要となる準備として「音節分解」があります。たとえば、「たぬき」という文字を覚えるにも、まずは「た・ぬ・き」と音節ごとに分解できる必要があります。幸い、日本語のひらがなは一部の例外を除いて1音節に1文字が対応しています。英語の場合、「ノック」という1音節の発音の言葉でも文字にすると「knock」と5文字にもなる。つづりを覚えるのがやっかいですよね。英語と比較しても、日本語の「ひらがなの読み」は幼児にとって学習しやすいのです。言葉や文字の勉強というと、つい紙と鉛筆でするものをイメージしてしまいます。でも、紙と鉛筆では音節という概念を学ぶことは簡単ではありません。目と耳と口と動作を通して、音節の区切りを学ぶことが大切です。この音節分解を学ぶためには、わたしが監修したものも含めて音声や映像で教えるビデオ教材がありますから、そういうものをご覧になるとわかりやすいでしょう。注意してほしい点は、「音節分解ができなくても文字が読めるように見える」子どもがいるということ。電車が好きな子どもなら、「とうきょう」という駅名標のひらがな表記を見て「トーキョー」と声に出すことがあります。ただ、それはきちんとひらがなを読んでいるわけではなく、「とうきょう」という文字の連なりを絵のようなまとまり(パタン)として記憶し、それに「トーキョー」という音をペアにして覚えているに過ぎないのです。そこで勘違いして、「うちの子はもうひらがなが読めている」なんて思ってはいけません。まずは音節分解ができるようになること。それができてから、本当に、ひらがなという表音文字を読む……という言葉の学習がはじまるのです。とくにオノマトペの学習に有効な「実況中継」そして、子どもの語彙を豊かにしてあげたいのなら、親が「実況中継」するということをぜひ心がけてください。いまこの瞬間に起きていることを、いちいち言葉で表現して、目の前の出来事を実況中継するのです。そうすることで、紙と鉛筆で書くという学びでは得られない、生活の感覚の「実感」を伴って子どもが言葉を覚えることにつながります。これは、とくに擬態語や擬音語などのオノマトペ(※)を子どもが学ぶ際にはとても有効な手段です。たとえば、子どもがご飯を食べているときに口のまわりを汚してしまったなら、「口のまわりが『べたべた』になっちゃったね」「水で洗ったら口のまわりが『さっぱり』して『さらさら』になったね」というふうに言葉で実況するのです。そうすると、子どもの脳には「べたべた」「さっぱり」「さらさら」という言葉の音が、べたべたの触覚などの、ライブの身体感覚を伴って入っていきます。これらの感覚は紙と鉛筆で学べるものではありません。紙と鉛筆を用意してわざわざ勉強をするという場面をつくらなくてもいいのです。親が実況中継をすれば、日常のなかで子どもは、微妙なニュアンス、感覚の違いとともに言葉をどんどんと覚えていくのですから。※オノマトペ:自然界の音や声、ものごとの状態や動きなどを象徴的に表した語。擬態語、擬音語、擬声語など■ 静岡大学情報学部客員教授・沢井佳子先生 インタビュー一覧第1回:“○歳だからこれができないとダメ!”その思い込みから親を解放する「発達心理学」入門第2回:幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法第3回:「10まで言えるのに、5個が数えられない」?未就学児への“数”と“時間”の教え方(※近日公開)第4回:「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”(※近日公開)【プロフィール】沢井佳子(さわい・よしこSAWAI, Yoshiko)1959年生まれ、東京都出身。チャイルド・ラボ所長、静岡大学情報学部客員教授。認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。学習院大学文学部心理学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。同大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。専攻は発達心理学。幼児教育番組『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、文教大学人間科学部講師などを経て現職。他に、日本こども成育協会理事、人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事、日本子ども学会常任理事などを務める。幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列/2016年国際エミー賞子ども番組部門ノミネート、2019年アジアテレビ賞受賞)の監修など、多様なメディアを用いた幼児向け教材やテレビ番組の制作におけるコンテンツ開発に携わっている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月10日「同じ月齢のよその子どもはもうおしゃべりが達者なのに、うちの子どもはまだ話す気配すらない」――。そんなことがあれば、誰もが我が子を心配してしまうものです。そんな不安を解消すべくお話を聞いたのは、静岡大学情報学部客員教授でチャイルド・ラボ所長の沢井佳子先生。発達心理学を専門とし、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っています。沢井先生は、「子どもの発達は、『何歳でなにができるか?』ではなく、『できるようになっていく順序』が大事」だといいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)発達とは、生得的なプログラムが順に発動していくこと親であれば誰もが我が子の発達が遅れていないかと気になります。でも、「○歳だからなにができなくてはいけないはずだ」と思い込んで、「遅れているのは能力に問題があるから?」と心配をする必要はありません。人間の発達は、「あることができてから、次のことができるようになる」といった、発達段階の順序が定まっていて、多少の遅れがあったとしても、順番を踏んで、あとあと発達していくからです。なぜそのような順序の定まった発達が起こるのかというと、人間にはサバイバルのためにあらかじめさまざまなプログラムがインストールされているからです。たとえば、生まれたばかりの赤ちゃんにお母さんが「ベーッ」と舌を出す姿を見せると、赤ちゃんは、お母さんの顔をじっと見つめたあと、なんと舌を出します。わたしも息子が生まれたときに実験して確かめました。つまり、人間は生まれつき模倣のプログラムを持っているということになる。いちばん身近にいる養育者――親を模倣することは、赤ちゃんにとってサバイバルのすべを学ぶということなのです。よく「子どもは試行錯誤して学ぶ」といいますが、じつはそうではありません。試行錯誤とは、たとえば手足をめちゃくちゃに動かすような、無駄な行動を何度も繰り返して、目的のために効果的なものを選んでいく過程を指します。でも、赤ちゃんの場合はそうではありません。意外なほどすっと無駄なくいろいろなことができるようになる。それは、身近な人を「観察して模倣するプログラム」がインストールされているからに他なりません。このように、あらゆる発達に関するプログラムが、人間にはインストールされています。つまり、発達とはなにかというと、もともとインストールされている生得的なプログラムが、身近な人とのやりとりと、まわりの環境の刺激に誘発されて、順々に発動するということ。ですから、発達段階に合っていない知識や技能を詰め込むような教育は、効果がないばかりか、自ら行動的に遊んで学ぶ「思考の機会」を奪うことにもなりかねません。子どもとのおしゃべりや遊びを心掛けながら、次の段階を「待つ」ことが大切なのです。まだしゃべらない子どもの発達は「動作」で確認するでは、幼児の発達の順序についてかいつまんでお伝えします。0〜2歳のあいだは、論理の基礎となる大事な事柄を体全体で学ぶ時期です。それは、「ものは隠されてもそこにあり続ける」ことの理解。心理学では「対象の永続性」といいます。赤ちゃんは「いないいないばあ」が大好きですよね。0歳はじめの赤ちゃんにとって、「ものは隠されていてもそこにあり続ける」ということや「もののなかにものが入る」ということは大発見なのです。それから、2歳までのあいだはものの並び方の順序の規則性、「系列」を学ぶ時期でもあります。わたしが1980年代に心理学スタッフを務めた『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)でも系列を課題にした映像をたくさん放送しました。たとえば、「シマウマ、ペンギン、シマウマ、ペンギン、シマウマ、次はなにかな?」という遊びです。「シマウマ」と「ペンギン」の絵が順に登場するのですから、系列を理解している子どもは「次はペンギン!」としっかり答えます。こうした順番の規則性を読み取る「系列」についての理解は、「朝・昼・夜」「春・夏・秋・冬」といった、時間の繰り返しの理解や、自然数の系列(1、2、3……)の構造の理解にもかかわります。また、言葉の順番から意味を予測するという文法の理解も助けるのです。世界を理解するためには、ものの並び方の規則性を発見し、順序を予測することが大事です。でも、2歳だとまだしゃべらない子どももいますから、おうちのかたは心配なさるでしょうね。そこで、子どもの発達を言葉ではなく「動作」で確認してみてください。1歳半頃になると、まだしゃべれなくても系列などをすでに理解した子どもは「機械の操作」ができるようになります。わたしの息子が1歳6カ月のときは、『くまのプーさん』のレーザーディスクを観たいがために、テレビとレーザーディスクプレーヤーの電源を入れて、セレクターも含めたスイッチをきちんと順番に押すということをしていました。つまり、そこには系列はもちろん、因果関係についての論理的理解があるということです。また、たとえしゃべらなくても、言葉を理解しているということもわかります。子どもに向かって、指さしをしながら「○○ちゃん、あのウサギのぬいぐるみを持ってきて」というとぬいぐるみを正しく持ってきてくれる。「ウサギはどれ?」と尋ねれば、ウサギのぬいぐるみを指さす。こういうことができていれば、言語理解や指さしによる表現はできていますから、言葉を話しはじめるのも時間の問題でしょう……と安心できるのです。短期記憶が増える5歳半で一気に大人びる3歳になると、思い浮かべる力、「表象能力」がものすごく発達します。2歳児の場合は、語彙は一気に増えますが、まだ表象能力は十分に育っていません。なにかの病気で子どもが入院しないといけないというとき、2歳児に「入院だから今日は病院で寝るのよ」というと、「入院だね、わかった!」なんて答えますが、いざ病院から親が帰ろうとすると泣いて怒ってしまう。なぜなら、自分が病院でひとりで寝るということを頭に思い浮かべられないからです。でも、3歳になればそういう未来のことも、話を聞くだけでイメージできるようになります。また、表象能力が発達するということは、目の前に電車がなくても、ロープを電車に見立てて電車ごっこをして遊んだり、姿やかたちのちがうもの同士の共通性を見つけて「生きもの」「乗りもの」などの仲間に分けたりするなど、抽象的な話も次第にできるようになります。つまり、抽象物への理解が進み、文字や数について学ぶ体勢が整う時期といえます。続いて、4歳では爆発的に語彙が増えます。電車や図鑑が大好きな子どもだと、大人が知らないようなマニアックな知識も持っているということもありますよね。それらの知識にまつわる多種多様な言葉はこの時期に覚えるものです。でも、一気に増えた言葉や知識をきちんと整理できていないので、大人顔負けの膨大な知識を持ちながら、子どもらしい勘違いをしている例もしばしば見受けられ、大人が思わず笑ってしまうような面白い時期ともいえます。それから、次の大きな発達が訪れるのが5歳半頃。この時期の子どもは、短期記憶が大人の半分くらいにまで達します。コンピューターもメモリが増えるとできる作業が格段に増えますよね?それと同じように、頭のなかでふたつのことを思い浮かべて比較する、いまのことを考えながら未来の話をするということもできるようになるのです。それによって、物語のような文章をつくらせても、物語のはじまりから終わりまでの流れを認識する余裕があり、かなりのレベルのものをつくることができて、一気に大人びたように見えてきます。ここでは一般的な年齢での発達の過程をお話しましたが、先にお伝えしたように「○歳だからなにができなくてはいけない」といった思い込みや心配は無用です。年齢を輪切りにして着目するのではなく、発達の順序の進み方をご覧になって、順調ならば安心して見守ってください。逆に、親が指さしをしても一緒に見てくれないし、自分で指さしなどの動作のやりとりをしないのに、文字には関心がある……というように「発達の順番がおかしいかな?」などと感じるようなら、地域の小児専門病院、いわゆるこども病院で診てもらうことをおすすめします。■ 静岡大学情報学部客員教授・沢井佳子先生 インタビュー一覧第1回:“○歳だからこれができないとダメ!”その思い込みから親を解放する「発達心理学」入門第2回:幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法(※近日公開)第3回:「10まで言えるのに、5個が数えられない」?未就学児への“数”と“時間”の教え方(※近日公開)第4回:「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”(※近日公開)【プロフィール】沢井佳子(さわい・よしこSAWAI, Yoshiko)1959年生まれ、東京都出身。チャイルド・ラボ所長、静岡大学情報学部客員教授。認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。学習院大学文学部心理学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。同大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。専攻は発達心理学。幼児教育番組『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、文教大学人間科学部講師などを経て現職。他に、日本こども成育協会理事、人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事、日本子ども学会常任理事などを務める。幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列/2016年国際エミー賞子ども番組部門ノミネート、2019年アジアテレビ賞受賞)の監修など、多様なメディアを用いた幼児向け教材やテレビ番組の制作におけるコンテンツ開発に携わっている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月09日最近は地球の温暖化が様々な形で自然環境に影響し、体が暑さに慣れる前にいきなり暑くなることがよくあります。また、日本の夏は高温多湿でじめっとした暑さが続くので、からだの調子を崩しやすいもの。いわゆる「夏バテ」の経験があるお子さんも多いかもしれませんね。さらに、体調が良くないと「熱中症」のリスクも高くなります。今月は、夏を元気に乗り越えるために子どもたちの生活を見直してみましょう。夏バテとは何か?「夏バテ」という言葉はよく使いますが、夏バテとはどのような状態をいうのでしょうか。一般的には、「食欲がなくなる」「体がだるくなる」などがよく知られていますが、暑くて夜よく眠れなくなると自律神経の働きが崩れ、「疲れやすい」「イライラする」「やる気がなくなる」など心身両面に影響が及ぶのです。お子さんに「食が細くなる」「すぐに疲れたと言う」「お部屋でダラダラしている」などの様子が見られたら、それは夏バテの兆候の可能性があります。これが続くと、夜眠れなくなったり、朝起きられなくなったりするほか、体重が増えなくなるばかりか減ってしまう子どももいます。「たかが夏バテ」と侮っていてはいけないのです。また、夏バテになると熱中症にもなりやすくなるので注意が必要です。夏バテ、熱中症の子どもが増えた背景実は最近、子どもたちに夏バテや熱中症が起こりやすくなっています。その背景について詳しく説明しましょう。人間は恒温動物ですから、外気温が暑くなっても寒くなっても体温を一定に保つ能力をもっているはずです。しかし、1978年にNHKが、故正木健夫先生(日本体育大学教授)の調査をもとにした「警告!子どものからだは蝕まれている」という特集を報道し、子どもたちの体がおかしくなっていることに警鐘を鳴らしました。その後1979年に立ち上げられた「子どものからだと心連絡会議」は、子どもの体温に関する調査を随時行っており、朝の体温が低い低体温の子どもや、暑くなっても汗がかけなくて体に熱がこもってしまう高体温の子どもたちが出てきたことを報告しています(※1)。人間の体温の日内変動は0.5度ぐらいといわれているのですが、2度以上も体温が上がってしまう子どもたちが出てきたのです。こうした高体温の子どもは、熱中症にかかる危険率が高くなります。私の養護教諭としての経験のなかでも、9月の新学期に体調の悪さを訴える子どもたちが増え、午前と午後の体温を測定してみたところ、午前は36度台だったのに午後は38度以上に上がってしまったという子どもが何人もいてびっくりしたことがあります。子どもたちの体温調節能力(自律神経の働き)が弱くなっていることがよくわかる例だと言えるでしょう。一般的に南国の人は暑さに強く、北国の人は寒さに強いといわれていますが、この違いはどこから出てくるのでしょうか。生理学の見地から見ると、以下のように言われています。●寒さに強い体をつくる機能:生後3週間までに寒さを経験させ、自ら熱をつくる働きを高めることが必要。●暑さに強い体をつくる機能:3歳ぐらいまでに暑さを経験させ、暑くなったら汗をかいて体温を下げるための能動汗腺を発達させることが必要。今は、「暑くなればクーラーで」「寒くなれば暖房で」と常に快適な室温が保たれていますね。そのため、子どもたちが幼少時期から暑さや寒さを乗り越える経験をする機会がないまま成長してきていることで、暑さにも寒さにも耐性が弱くなったと言われているのです。このように、子どもの体が変わってきてしまったことと、近年の気候変動とが相まって、子どもたちに夏バテや熱中症が起こりやすくなっていると考えられます。夏バテ、熱中症になりやすい子の特徴子どもはもともと自律神経の働きが未熟なため、大人に比べると夏バテや熱中症になる危険性が高いと言えます。なかでも、私の経験からすると、生活リズムが崩れていて特に夜更かしをしているような子どもの方が夏バテをしやすい傾向にあります。先ほども述べたように、夏バテになると熱中症にもかかりやすくなりますので、普段から生活リズムを整えておくことが大切です。睡眠不足や栄養不足にならないようにご家庭で心がけましょう。今の親御さんたちが小学生だった頃と比べ、今では学校の教室にもクーラーの導入が進んでいます。ですが、文部科学省の平成29年度のクーラー設置率調査を見ると、高いところでは東京都が8割、沖縄が7割で、低いところだと暑さの厳しい九州でもたった3割というところも。クーラーのない教室で過ごさなければならない子どもたちはまだ大勢いるのです。また、体育館はさらに設置率が下がります。子どもたちの体が暑さに慣れていないと、学校で夏バテや熱中症になることは容易に考えられ、実際に熱中症の子どもが増えているというデータがあります。帽子をかぶる、汗拭きタオルで汗をこまめに拭く、水分をしっかりとるなど、学校でもできる直接の暑さ対策は進んで行ないましょう。今では、子どもに自宅から水筒を持参させる学校も多くあります。とはいえ、冷たい飲み物をとりすぎると、食欲がなくなったり体がだるくなったりすることもあるので、水筒の中身は冷たすぎないもののほうがいいかもしれません。子どもは「暑い!」と感じやすい夏に多くの親御さんがお困りになる問題に、いくつかアドバイスをしたいと思います。【親御さんからの質問 1】エアコンのかけすぎは体に良くないと思い、室温を高めに設定するのですが、子どもは「暑いからもっと下げて!」と言います。親にとってはじゅうぶん涼しくても、子どもにとっては暑く感じられるようです。体に負担をかけず、かつ大人も子どもも快適に過ごせる室温調整の仕方を教えてください。子どもは大人に比べると体の機能が未発達です。汗腺から出る汗の量が大人より少ないため、皮膚の血管を拡張させて放熱し体温を下げようとしますが、子どもの体温調節機能はまだ完全ではないので暑さを感じやすいのです。ですので、子どもの体温が下がるまではエアコンを少し強めにし、涼しくなり体温が下がったら設定温度を変えるなど、こまめな調節をするといいでしょう。また、扇風機を合わせて使うこともいいかと思います。一般的には、昼間の活動中には温度設定を低くし、就寝時にはそれより高く設定するなどの対応がいいと思います。ですが、室温には風通しの良し悪しや部屋の広さ、人数なども影響しますので、数値よりもそこで生活する人の感覚で調整することが大切です。ただし、子どもは大人より外気温に影響されやすいので、その点を考慮した温度設定をするように心がけましょう。1日に一度はたっぷり汗をかかせて【親御さんからの質問 2】うちの子どもは「暑いから外に出たくない」と言います。他の子に比べて汗っかきなので、汗をかくのが嫌なようです。外に出てもお店やデパートに入りたがり、外遊びもあまりしません。親としては楽ですが、このままではひ弱な子どもになりそうで心配です。汗をかくことを避けて過ごしていてもいいのでしょうか?夏の外遊びは熱中症が気になりますよね。でも、体の成長のためには夏でも運動することが必要です。熱中症予防の観点から、直射日光が強い炎天下での外遊びはできるだけ避け、朝夕の比較的涼しい時間に外で活動できる工夫をするといいでしょう。1日一度はたっぷり汗をかく程度の外遊びを、ぜひさせたいものです。それが暑さにも強い体をつくるのに役立ちますよ。それ以外の夏の外遊びとしては、プールや水あそびなどを活用するといいと思います。アイスの代わりに○○をおやつに【親御さんからの質問 3】子どもは暑いと、問答無用でアイスを欲しがります。でも、体が冷えすぎる気が……。子どもが「暑い」と言うのなら1日に何回かアイスを与えても問題ないでしょうか。また、食事ではそうめんぐらいしか食べたがらず、栄養面が心配です。夏バテ予防にもなって食べやすい食事があれば、ぜひ知りたいです。私が小学校に勤めていた頃、冷たい水を飲みすぎた子どもたちが腹痛を訴えて保健室に来ることがよくありました。おなか全体が冷たく、中には手足も冷たくなっている子どもがいて、湯たんぽやカイロでおなかを温めてあげると治りましたが、冷たいものの取りすぎはやはり良くないのだということが分かりますね。アイスの食べすぎも同じです。人間の体の内部温度は37度ぐらいですが、体が冷えすぎると血行が悪くなり、胃腸の働きだけでなく、自律神経の働きも悪くなり、体全体の調子が悪くなってしまいます。アイスは手軽なのでついつい食べすぎてしまいますが、子どもと一緒にフルーツやゼラチン、かんてんなどを使ったおやつづくりをするなどの工夫をしてみたらいかがでしょうか。お砂糖の取りすぎもそれによって予防することができますよ。それから、暑いからといって冷たい飲みものばかりになり、食事をとらないのは要注意。特に子どもは1日3食食べることが大切です。魚やお肉もしゃぶしゃぶなどにして、さっぱり食べられるよう工夫してあげましょう。また、汗をかくと水分だけでなく塩分やミネラルも失われますので、食事には果物や野菜を添えることも忘れないでください。暑いときこそ生活リズムを重視しよう夏を元気に乗り越えるポイントは、普段からの生活リズムにあります。生活リズムが崩れている子どもは夏バテや熱中症にもかかりやすいので、暑い時期こそ生活リズムをしっかり整えられるよう、親御さんが気を配ってあげることが大切です。寝る前の冷たいものの取りすぎは体を冷やし、寝つきを悪くしますので要注意です。また、暑いからと運動不足にならないよう、プールを活用したり比較的涼しい時間帯に運動したりして、しっかり体を動かしぐっすり眠る生活を送れば、暑い夏を元気に過ごせることでしょう。(参考)(※1)野井慎吾,中島綾子,鹿野晶子著,「発育発達研究第51号 」,2011.阿部茂明,野田耕,正木健雄(1996),「子どものからだの調査’95」の結果報告,日本体育大学紀要,31,pp.121-138.阿部茂明,野井真吾,野田耕,成田幸子,正木健雄(2006),「子どものからだの調査2005」の結果報告—”からだのおかしさ”の教育者の“実感”とその実体の究明—,日本体育大学紀要,36,pp.55-76.正木健雄監修(1995),『心とからだいきいき学習1基本定期生活習慣をみなおすせいかつのリズム』,ぱすてる書房.
2019年07月08日人は、どうしても他人と比べてしまう生き物です。「〇〇ちゃんよりかけっこが速い」「〇〇君より計算が得意」などと、話す子どもも多いのではないでしょうか。ただ、もしかしたら、親のほうが先に我が子と誰かを比べているのかもしれませんね。「他者との比較」を前提に生きていては、本当の幸せや生きる意味を見出すことはできません。では、どうすべきなのか——。自分を好きになり、「自分の幸せ」を見つけるための方法を、脳科学者の中野信子さんにうかがいました。構成/岩川悟(slipstream)写真/塚原孝顕他人がどう思うかではなく、自分が「心地良い」と感じることをして生きる幸せに生きるためには、他人の価値観や「ものさし」ではなく、まず自分の価値観による幸せがどういうものかを、自分自身で把握しておくことが大切です。簡単にいえば、自分が「どんなときに気分が良いのか」、あるいは、「どんなことが心地良いのか」をはっきりと認識し、その状態をつくり出していくことに力をそそぐわけです。脳には、快感を生み出すことにかかわる部分がいくつかあり、総称して「報酬系」と呼ばれています。自分が「心地良い」「気持ちいい」と感じることをするのは、この報酬系を刺激していることになり、理想の自分と現実の自分が一致する「自己一致」の状態になっていきます。これは、いわば「あるがままの自分」を受け入れている状態であり、自分で自分のことが好きな状態ともいえます。そして、こうした状態はすべて、他人の「ものさし」ではなく、自分の「ものさし」で生きることからはじまるのです。「もっと成功したい」「もっと美しくなりたい」「もっとお金がほしい」そんな他人との比較に心がとらわれていると、自分の幸せを見出すことは永遠にできません。それよりも、自分だけの幸せを打ち立てることに全力を尽くすのです。「自己一致」の状態になると、つねに「心地良い」と感じているので、生きることがどんどん楽になります。そんな人はまわりの人も穏やかな気持ちにさせるので、人にも好かれやすくなっていきます。そうして、さらに「心地良い」と感じられる環境が、自然と自分のまわりにつくられていくのです。学歴やIQが生き延びていくのに必要かどうかは、誰にもわからない他人の「ものさし」という意味では、学歴やIQは、一般的にとても大切だと考えられているもののひとつですよね。たしかに、IQが高ければ成績が良くなる傾向にあり、学歴が高ければ、将来的に高い報酬の仕事に就ける可能性は高まるでしょう。ただ、学歴やIQが、生き延びていくために本当に必要なものかどうかは、じつは誰にもわかりません。なぜなら、「その人がどんな人生を選ぶのか」によって、必要な条件なんていくらでも変わるからです。ひとつはっきりいえることは、生物の目的はもっとシンプルだということ。あなたがいま存在するのは、前の世代の「生き延びる力」が高かったためで、その遺伝子を持つあなたという子孫を残すことができたからです。生物学的な観点では、個体としてというよりは、集団として生き延びることが重要であり、一個人が「優秀であること」にはそもそも重きを置いていないのです。でも、わたしたちは社会的な存在でもあるので、つい特定の社会や条件下のみでうまく生きていくための、狭い範囲での勝負に拘泥してしまいます。ただ、そこでの勝負と、「生き延びていけるかどうか」は直結していません。たとえ学歴やIQが低くても、それらが高い人より圧倒的に成功している人はたくさんいます。そこで大切になるのは、学歴やIQを高めることにこだわるのではなく、まず自分が「どんな人生を送るべきか」を決めること。そして、それを達成するための力をつけることのほうが、生き延びていくにはよほど大切なことなのです。***中野信子さんが教えてくれたことは、あるがままの自分を受け入れ、どんな人生を送るべきなのかは「自分自身で決める」というものでした。いたってシンプルなのに、心に響くものです。我が子に、「自分だけの幸せを打ち立てることに全力を尽くす」という力強い信念を持った人間に育ってもらうため、親ができることを模索していきたいものですね。※今コラムは、中野信子著『脳科学で自分を変える!自己肯定感が高まる脳の使い方』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです。『脳科学で自分を変える!自己肯定感が高まる脳の使い方』中野信子 著/セブン&アイ出版(2019)【プロフィール】中野信子(なかの・のぶこ)1975年、東京都出身。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科修了、脳神経医学博士号取得。脳科学者・医学博士・認知科学者として横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学の知見を生かし、マスメディアにおいても社会現象や事件に対する解説やコメント活動を行っている。レギュラー番組として、『大下容子 ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系/毎週金曜コメンテーター)、『英雄たちの選択』(NHK BSプレミアム)、『ホンマでっか! ?TV 』(フジテレビ系)。著書には、『サイコパス』、『不倫』(ともに文藝春秋)、『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館)、『シャーデンフロイデ他人を引きずり下ろす快感』(幻冬舎)、『メタル脳 天才は残酷な音楽を好む』(KADOKAWA)、『あの人の心を見抜く脳科学の言葉』(セブン&アイ出版)、『キレる!脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」』(小学館)などがある。
2019年07月08日脳医学者の瀧靖之教授は、「脳の発達過程を踏まえると、親の頭の良し悪しは子どもにはあまり影響を与えない」と話しています。また、行動遺伝学の第一人者である安藤寿康・慶應義塾大学教授によると、IQの遺伝の影響は約50%なのだそう。ということは……!?■参照コラム記事はこちら↓親の頭の良し悪しは、子どもに遺伝する?頭の良さと遺伝の気になるカンケイ
2019年07月07日日々、子育てをするなかで、「うちの子は、ちょっとネガティブな感情に陥りやすいかも」と思う瞬間があるかもしれません。でも、だからといって急にポジティブ人間に大変身できるわけではないですし、大人だってそう簡単に性格は変えられないのが実情です。子どもがネガティブな感情になったり、マイナスな出来事に遭遇したりしたとき、親はどうやって乗り越える方法を伝えるべきなのでしょう。親自身も備えておきたい「思考」を、脳科学者の中野信子さんがレクチャーしてくれます。構成/岩川悟(slipstream)写真/塚原孝顕ネガティブな感情をうまく活用すると、良い結果が出るポジティブシンキングの大切さは広く語られるところですが、だからといって、無理やりポジティブになろうとしても、生まれ持った性格などもあるので、実際はなかなかうまくはいかないもの。じつは、「努力」という面に関していうと、ネガティブな感情を利用したほうが良い結果が出ることもたくさんあります。なぜなら、ネガティブな感情のほうが、モチベーションを保つうえで圧倒的に強いパワーを持っているからです。「あいつを絶対に見返してやる!」「いまの境遇に耐えられないから必ず追い抜く!」そんなネガティブな感情は、油断すると「妬み」や「恨み」に変わりやすいため、一般的には良い感情とはされていません。でも、そこにさえ気をつければ、むしろネガティブな感情が持つパワーをうまく利用してしまえばいいのです。また、未来を悲観しがちな人もいます。でも、逆にいえば、それは未来に対してしっかり準備ができる可能性が高いということ。考え方を変えるだけで、自分だけの強い武器になる場合があるのです。自分の性格や感情の傾向を無視していると、かえってストレスを溜めてしまい、心身に良いことはありません。ネガティブな感情を無下に否定せず、しっかりと受け止めて活用していけるからこそ、健全な自己肯定感が育まれるのだと思います。「マイナスの出来事」にこだわらず、事実として受け入れることから、プラスの出来事が生まれる多くの人は自分にとって「マイナスの出来事」が起きたとき、ネガティブな感情に陥ります。そして「マイナスの出来事」は、およそどんな人にでも起こるもの。むしろ、なにかを達成したり成功したりした人のほうが、そうではない人よりも「マイナスの出来事」をたくさん体験している場合もあるようです。でも、そんな人たちは、「マイナスの出来事」のとらえ方が異なります。そのときは深く落ち込むこともあると思いますが、すぐに「どうすればよかったのだろう」「いまなにができるだろう」と、気持ちを切り替えることがとても上手なのです。これは言葉でいうのは簡単ですが、実行するのは難しい。でも、チャレンジしてみる価値はあります。そのためのコツは、「マイナスの出来事」にこだわらないようにすること。うまくいかない人は、失敗などにこだわり過ぎて、自分で自分の状況を悪くしている場合がほとんどなのです。考えてみると、人生の運命が決せられるほどの、よほど大きな「マイナスの出来事」でない限り、ほとんどの「マイナスの出来事」は、俯瞰すればそのときどきの揺らぎ程度のものととらえることもできます。また、よくいわれるように、「失敗は成功の母」であることは、これまでの人間の歴史が証明しています。自分に起きた「マイナスの出来事」を、まず事実として受け入れることから、プラスの出来事が生まれるのです。***小さな子どもがこうした思考を身につけるのは、そう簡単ではないでしょう。でも、徐々にでも習慣づけていく努力をすることや、親がこうしたスタンスで生きる姿を子どもに見せることはできるはずです。「ポジティブに生きよう!」と口に出すのは簡単ですが、いちど、ネガティブな感情やマイナスな出来事に対して、親子で一緒に向き合ってみてはいかがでしょうか。※今コラムは、中野信子著『脳科学で自分を変える!自己肯定感が高まる脳の使い方』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです。『脳科学で自分を変える!自己肯定感が高まる脳の使い方』中野信子 著/セブン&アイ出版(2019)【プロフィール】中野信子(なかの・のぶこ)1975年、東京都出身。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科修了、脳神経医学博士号取得。脳科学者・医学博士・認知科学者として横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学の知見を生かし、マスメディアにおいても社会現象や事件に対する解説やコメント活動を行っている。レギュラー番組として、『大下容子 ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系/毎週金曜コメンテーター)、『英雄たちの選択』(NHK BSプレミアム)、『ホンマでっか! ?TV 』(フジテレビ系)。著書には、『サイコパス』、『不倫』(ともに文藝春秋)、『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館)、『シャーデンフロイデ他人を引きずり下ろす快感』(幻冬舎)、『メタル脳 天才は残酷な音楽を好む』(KADOKAWA)、『あの人の心を見抜く脳科学の言葉』(セブン&アイ出版)、『キレる!脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」』(小学館)などがある。
2019年07月06日キャンプや水遊び、ハイキング、昆虫採集など、自然の中で体を思いきり動かす体験は、普段の生活では味わえない、子どもにとって貴重な時間です。お子さんが小さいうちは、なるべくいろいろな体験をさせたいと思うご両親も多いでしょう。では、実際に自然体験の中で、子どもたちはどのような力を育むのでしょうか。今回は、この夏に親子で楽しみたい、3〜10歳までのお子さん向けの自然体験をご紹介します。探究心やコミュニケーション能力など、生きる力を育む!かつての子どもたちは、放課後や休日には野山を駆け回り、昆虫採集をしたり、秘密基地を作って遊んだりと、思いきり体を動かして遊んだものです。しかし、現代の子どもたちは、のびのびと遊べる場所が限られてしまったり、習い事や塾が忙しかったりで、体を動かして遊ぶ機会が減ってしまっています。また、近年はテレビやゲーム、スマートフォンなど、屋内で遊べるものが充実していて、家の中にいても退屈しないことも、外遊び離れの一因かもしれません。信州大学の平野教授の調査によると『夜空に輝く星をゆっくり見た』『太陽が昇るところや沈むところを見た』『海や川で泳いだ』『チョウやトンボ、バッタなどの昆虫を捕まえた』といった自然体験のある子どもが、年々、少なくなってきています。平成17年の調査では、日の出や日の入りを見たことのない子どもが43%、昆虫を捕まえたことがない子どもが35%もいるという結果が出ました。(引用元:Coleman|自然が子どもを成長させる〜自然体験が子どもに与える影響について〜)※太字は編集部にて施したこのように、自然の中で体を動かす体験が少ないと、さまざまな力を育める機会も少なくなってしまいます。前述の信州大学の平野吉直先生が小学4〜6年生を対象に調査によると、自然体験活動をたくさんした経験した子どもには、課題解決能力や豊かな人間性など「生きる力」が備わっているのだそう。また、自然体験活動をたくさん行なったグループほど、「わからないことは、そのままにしないで調べることが多い」、「誰とでも協力してグループ活動ができる」「相手の立場になって考えることができる」などの項目に「当てはまる」と答えており、自然体験活動を行なわなかったグループほど、それらが「当てはまらない」と答えた子どもが多いという結果が出ています。では、その「生きる力」とは、実際にはどのような力なのでしょうか。○自然に親しみ、理解する○環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る○想像力○発想力○表現力○豊かな心を持つ○疑問を解決しようとする気持ちが生まれる○探究心が芽生える○自主性が芽生える○協調性、コミュニケーション力○健康で丈夫な体○情緒の安定たとえば、自然の中で見つけたおもしろい形の葉っぱでどんな遊びができるのか考えることで、発想力や想像力を養われます。また、生き物に触れることで生命の大切さを知ったり、土や水に直接触れて遊ぶことで健康で丈夫な体や情緒の安定が身についたりします。自然体験はやはり、子どもにとって良い影響があるのですね。年代別、おすすめの自然体験自然の中で遊ぶ機会が減った現代の子どもたちにとって、休日や夏休み、連休を使っての自然体験は貴重な経験です。そこで、年代別におすすめしたい、自然体験をご紹介します。3、4、5、6歳向け・水遊び……自然に親しみ、理解する環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・落ち葉遊び……想像力発想力表現力・貝殻拾い……探究心が芽生える想像力・昆虫採集……生命の大切さを知る探究心が芽生える・動物との触れ合い……生命の大切さを知る豊かな心を持つ・家族でキャンプ……疑問を解決しようとする気持ちが生まれる協調性、コミュニケーション力自主性が芽生える発想力・星空を見上げる……自然に親しみ、理解する豊かな心を持つ 7、8、9、10歳向け・川遊び、海遊び……自然に親しみ、理解する環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・魚釣り……探究心が芽生える環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・シーカヤック、シュノーケリング……自然に親しみ、理解する環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る協調性、コミュニケーション力・木登り……自然に親しみ、理解する探究心が芽生える健康で丈夫な体・アスレチック……自然に親しみ、理解する探究心が芽生える健康で丈夫な体・山登り……自然に親しみ、理解する協調性、コミュニケーション力探究心が芽生える健康で丈夫な体・星空観察……自然に親しみ、理解する探究心が芽生える想像力・酪農体験……環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・家族でキャンプ……疑問を解決しようとする気持ちが生まれる協調性、コミュニケーション力自主性が芽生える発想力・火おこし体験……自主性が芽生える疑問を解決しようとする気持ちが生まれる親子におすすめの自然体験サイト自然体験を家族で計画するのもいいですが、子ども向けプログラムを利用するのもおすすめです。特に、同世代のお友だちや家族以外の大人と一緒に何かを体験することは、コミュニケーションを育むために大切なこと。ネットや電話で簡単に予約ができるので、週末や夏休みを利用して申し込みしてみてはいかがでしょうか。■ネイチャーキッズ酪農体験、カヌーキャンプ、サイクリングキャンプ、山村留学キャンプ、自然探索キャンプ、フィッシャーマンキャンプ、スキーキャンプ、海遊びキャンプ対象年齢:小学生〜中学生(プログラムにより異なります)■国際自然大学校サマーキャンプ、昆虫博士キャンプ、リバーアドベンチャー、海遊び、キャンプマウンテンバイクツーリング対象年齢:4歳〜高校生(プログラムにより異なります)■そらまめキッズ大冒険キャンプ、海キャンプ、秘密基地キャンプ、シュノーケリング、体験ダイビング、ドルフィンスイム&イルカトレーナー体験、キャニオニング、川遊び対象年齢:年中〜小学生(プログラムにより異なります)■こども自然体験塾リバートレッキング、シーカヤック体験、クライミング、忍者修行、生き物観察、ボルダリング体験、イルカウォッチング、化石発掘アドベンチャー対象年齢:小学1年生〜6年生(プログラムにより異なります)お子さんが興味を示したプログラムを体験させてみるのもいいですね。ひとりで体験するのが心配な場合は、仲良しのお友だちや兄弟、親子で利用できるプログラムを選んでみるのもいいでしょう。自然体験を通して、新しい友だちとの出会いもまた、すばらしい経験になるはずです。***自然体験の中で、豊かな自然や生き物と触れ合ったり、家族や友だちと関わったりするなかで、子どもはさまざまな力を育むことができます。ただし、自然体験をいざさせようと思っても、親御さんが不慣れな場合も多いもの。子どもや親子向けの自然体験プログラムを上手に活用して、今しか経験できない自然体験をさせてみましょう。文/内田あり(参考)文部科学省|中央教育審議会ヒヤリング資料「自然体験活動」の成果と意義名古屋経済大学 機関リポジトリ|自然環境のなかで育まれる子どもの成長Coleman|自然が子どもを成長させる〜自然体験が子どもに与える影響について〜ネイチャーキッズ国際自然大学校そらまめキッズこども自然体験塾
2019年07月06日いよいよ夏本番!夏休みにキャンプを計画しているご家庭も多いのではないでしょうか?最近では、気軽にキャンプを体験できる施設も増えています。「今までやったことがないけれども、今年はチャレンジしてみようかな」と準備をはじめている方もいるようです。キャンプでは、自然と触れ合ったり、不測の事態に家族みんなで立ち向かったりと、日常では味わえない特別な体験が目白押しです。さらに、キャンプや自然体験をしたあとの子どもは、自己肯定感が高まるという研究結果も出ています。いいことづくめのキャンプです。さっそく、この夏家族で体験してみましょう!キャンプ体験は子どもの内面にどんな影響を与えるのか近ごろよく耳にするのが、「日本人の自己肯定感の低さ」です。もちろんそれは、本音と建前を使い分ける国民性ゆえに、アンケートでは控えめに答えてしまうことも理由として考えられます。しかし、東京都市大学人間学部教授の井戸ゆかり先生は、実際に最近の学生たちと接していると自己肯定感の低下が伝わってくるといいます。井戸先生は、その原因のひとつに「親が先回りしてしまうこと」を挙げています。子どもが何か問題にぶつかりそうになったとき、その問題の芽を事前につんでしまう親が増えてきているそう。本来ならば、成長過程において、自分で問題を解決することで達成感を感じ、周囲から褒められて認められることで自己肯定感が高まります。ですから、そのきっかけを奪うことは、自己肯定感を育むチャンスを逃していることにもなるのです。そこで、子どもの自己肯定感を高めるのにぴったりなのがキャンプです。過酷な自然環境では、思い通りにいかないことばかり。困難や不便さを排除して安全を保ち続けることは、ほぼ不可能ですよね。むしろ、とっさのハプニングに対応してこそ、キャンプの醍醐味ともいえるでしょう。キャンプ体験は、子どもに「自分でできる」という自信を与えられるのです。国立青少年教育振興機構の調査によれば、自然体験の経験が多いほど「今の自分が好き」「勉強は得意なほうだ」「自分らしさがある」など、自己肯定感が高いという結果が出たそうです。また同調査では、子どものころに積極的な自然体験をした人のほうが最終学歴が高いということもわかりました。さらに、信州大学の平野吉直教授によると、自然体験活動をたくさん行なった青少年は、課題解決能力や豊かな人間性など「生きる力」があるといいます。自然体験によって好奇心や探究心が刺激され、わからないことはそのままにせずに調べる、誰とでも協力し合える、相手の立場に立って物事を考えられる、というプラスの作用がはたらくのでしょう。刻々と変化する多様な刺激を同時に受けて、主体的な行動としてアウトプットすることで、「生きている」ことの喜びや楽しさを実感するというわけです。やっぱりキャンプは自己肯定感を高める!平成20年、ガールスカウトの事業に参加した少女たちを対象に実施した調査結果があります。それによると、活動前には低かった「自分を褒めてあげたいと思うことがある(自己受容感)」という項目が、活動後にはぐんと伸びたというのです。つまり、ガールスカウトの活動を通して、自分を受け入れる気持ちが高まることがわかりました。それ以外にも、「なりたい自分になれるように努力できる(自己実現力)」や「失敗を恐れずチャレンジできる(行動力)」「自分の考えをしっかり持てる(自己判断力)」「気分が落ち込んでいるとき、なぐさめてくれる友人がいる(友人関係構築力)」「自分を表すものを培うことができる(自己表現力)」など、自己肯定感を構成する8項目すべてにおいて、活動前にくらべて活動後の平均値が上がったのです。キャンプでは、仲間たちと一緒に同じ体験をすることで、多様性を受け入れたり自分の意見を伝えたりすることの大切さを学びます。そして、さまざまなアクシデントを自分たちの力で乗り越えられたとき、「やればできる」という自信につながり、達成感を得られるのです。野外での生活は、日頃の便利な生活とは比べものにならないくらい過酷です。その不便さに不満を感じるのではなく、困難な状況を克服するために努力することが成長につながり、自己肯定感を高めるきっかけにもなります。教育研究家の征矢里沙さんは、子どもに自然体験をさせるコツとして「親はなにも教えないこと」を提案しています。何よりも大切なのは、親が子どもと一緒に自然を見つめ、一緒に感動したり、子どもの感動に共感したりすることだそうです。自己肯定感を高めるには、「他者からの承認」が必要不可欠。その子のよいところをきちんと認め、しっかりと伝えることが、大人の大事な役割だといえるでしょう。“原体験” 満載のキャンプで地頭を鍛える!キャンプや自然体験による子どもへの好影響は、自己肯定感を上げることだけにとどまりません。尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏は、「自然のなかの原体験にこそ地頭を鍛えるカギがある」と述べています。そして、それを体験できるのが家族キャンプです。「地頭がいい」とは、脳科学的にいうと「HQ(人間力指数)」が高いということ。つまり、社会の中で生きていくための能力が高く、社会性や創造性、企画力、決断力などの能力に優れていて、相手の気持ちを汲んだ行動ができたり、諦めずに未来を切り拓く意志を持っていたりすることを意味します。その「HQ」を鍛えるのは、キャンプなどの自然体験です。「原体験」とは、土や木のぬくもりを感じたり、昆虫や動物を間近に見たり触れ合ったりと、五感をフルに使う体験を指します。8歳ごろまでに「原体験」の蓄積があると地頭を向上させるといわれているので、ぜひ就学前からキャンプに連れていってあげたいですね。人間の力ではどうにもできないことを体験すると、自然に対する恐怖や畏敬の念が生まれます。それにより、人間の小ささや限界を知ることができ、ありのままの自分を認めて受け入れられるようになるのです。自己肯定感や地頭力を上げるには、まずはその「体験」が必要だといえるでしょう。***自然の中での失敗や未知の経験は、自己肯定感を高めて地頭を鍛えます。予定通りにいかないことも含めて、キャンプでの体験は子どもにとって忘れられない貴重な思い出になるはずです。そして、親も一緒に困難を乗り越えて達成感を味わうことで、家族の絆もより強くなるでしょう。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|あなたの子どもは大丈夫?絶対に見過ごしてはいけない「自己肯定感」低下のサインColeman|Coleman×体験の風をおこそう国立青少年教育振興機構|子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究社団法人 ガールスカウト日本連盟|少女の自己肯定感を高めるキャンプTOKYO GAS|ウチコト|【教育研究家に聞く】やる気・協調性・最終学歴に影響がある?!「自然体験」の効果とは?Study Hacker こどもまなび☆ラボ|かわいい子にはキャンプをさせよ。自然体験は「生きる力」を育ててくれる文部科学省|中央審議会ヒアリング資料「自然体験活動」の成果と意義(PDF)Coleman|尾木ママが語る 家族キャンプの“すごい力”
2019年07月05日“港町” 長崎にふさわしく港を望む場所に、ガラス張りの開放的な建物が静かに建っています。晴れた日には海や空とともにキラキラと景色に溶け込む姿は、すっかり地域の顔。今回は、子どもとアートの接点としての役割も担う、「長崎県美術館」をご紹介します。コンセプトは「呼吸する美術館」長崎県美術館は、2005年4月に開館しました。基本理念に「継承・交流・創造」とあるように、周囲と交流・影響し合いながら、未来に向けて豊かな感性と想像力を育み、成長し続ける「呼吸する美術館」を目指しています。古きを継承し、新しいチャレンジを忘れない理念実現には、子どもたちの関わりも不可欠。そのため、子ども参加のイベントも定期的に企画されています。所蔵美術品としては、外交官須磨弥吉郎氏から寄贈されたコレクションをベースにしたスペイン美術が充実していて秀逸です。それに加え、長崎ゆかりの作品コレクションに、「新たな長崎文化を創造する」という確かな視点を感じます。自然に溶け込む開放的な建物建物の設計は世界的建築家・隈研吾氏によるもの。設計コンセプトは、「風・光・水、そして大地に根ざす緑」。隣接する長崎水辺の森公園をはじめとする豊かな周辺環境を大きくとらえ、時間や季節などにより常に変化する周りの自然も、大切なパーツとして建築に活かされています。【建築の特徴1:開く⇄守る】建物は、運河を挟んで、西側の「ギャラリー棟」と東側の「美術館棟」のふたつの棟に別れています。ギャラリー棟は、県民ギャラリーやアトリエなど、訪問者が利用できる “開かれた” スペース。美術館棟は作品の収蔵場所でもあり、展覧会が開かれるなど美術館本来の役割を “守る” スペースです。その相互の共存と相乗効果を、建築で実現しようと設計されています。【建築の特徴2:緑の連続と回遊性】隣接する長崎水辺の森公園の一部として成り立つように、美術館周辺の植栽、屋上の緑化で公園からの緑のつながりを実現しています。特に、屋上公園には彫刻も置かれ、アートと海を望むすばらしい眺望をたくさんの人が楽しめるよう、美術館の外からのアクセスも設けられています。長崎港から上がる花火も見ることができるそう。自由な動線は、美術館というよりは、まさに “公園の一部”。中と外を気ままに行き来できる回遊性に、新しい美術館の息吹を感じます。独自のスタイルを意識した開放的な美術館は、昔の “かたい” イメージを一掃する、気楽に足を運びたくなる明るい空間となっています。伝統を守る常設展、多彩な企画展スペイン美術と地元長崎ゆかりのアートに独自性を追求する美術館ですが、伝統を守るコンセプトの常設展の一方、企画展のセレクションは多彩です。たとえば、夏は夏休み中の子どもを意識した展覧会が組まれることが多く、2018年には「魔法の美術館:リミックス」と題して、デジタルとアートを融合したイリュージョンのような、体験できる参加型展覧会として人気でした。2019年は「名探偵コナン 科学捜査展〜真実への推理〜」を開催。こちらも、来場者が “探偵手帳” に沿って、コナンの推理や科学捜査をなぞりながら真相解明をしていくという、ワクワク体験型の特別展です。(※会期2019年6月29日〜9月1日)そのほかにも、『ジョジョの奇妙な冒険』が幅広い年代に人気の漫画家・荒木飛呂彦氏による「荒木飛呂彦原画展JOJO冒険の波紋」(※会期2020年1月25日〜3月29日)、永遠の妖精と呼ばれた奇跡の女優・オードリー・ヘプバーンの写真展(※会期2019年10月4日〜10月27日)など、ジャンルにとらわれない自由な構成は、さまざまな人の興味を惹きつけています。「こどもアートクラブ」「ウィークエンドミュージアム」また、“未来に開かれた美術館” として、子ども向けの楽しいイベントも定期的に行われています。こどもアートクラブ毎年6回の活動の中で、所蔵美術品や企画展の作品を活用して、アートのさまざまな鑑賞体験や表現方法を楽しめます。小学1〜6年生が対象です。本物を身近に感じながら、さまざまなアート体験ができるのは、とても貴重な機会になりそうですね。参加してみたい方は、年一度の締切を忘れないよう要チェックです。定員:30名参加料:3,000円(全6回材料費込)申込締切:毎年5月20日前後■2019年度の内容例「企画展のバックヤードツアー」「素材と向き合う コラージュ遊び」「カメラ オブスキュラをつくろう」「画家の気分で書いてみよう」「影絵インスタレーション」「やってみよう銅版画」 ウィークエンドミュージアム月に一度の週末にアトリエで行なわれるワークショップで、事前申込なしで大人も子ども参加できる気軽なイベントです。グリーティングカードやお手軽プチ版画、ハロウィンマスクなど、作品づくりを楽しめるイベント、親子で参加するのにぴったりですね。スケジュールは美術館のホームページをご覧ください。開催時間:前期(6~10月) 土曜日|16:30~19:00日曜日|10:00~12:0013:30~16:00後期(1~3月) 土曜日|16:00~18:30日曜日|10:00~12:0013:30~16:00参加費:ひとり100円そのほかにも、学校向けのプログラムとして、対話型鑑賞法を実践する「おしゃべり鑑賞」や「表現プログラム」では作品制作を指導するなど、子どもたちの表現力やコミュニケーション力を高める機会も積極的に提供されています。***ご紹介したもの以外にも、さまざまなワークショップやコンサートなどが繰り広げられる季節ごとの魅力的なイベントや、地元大学によるライブ演奏も行なわれています。天井が高く総ガラス張りの開放感あるエントランスは本当に気持ちがよく、中と外が一体化したような空間は、公園遊びの延長で自然と幅広いアートと戯れられる最高の環境です。日常に溶け込む美術館は、子どもとアートの距離を確実に縮めてくれそうですね。『長崎県美術館』長崎県長崎市出島町2-1開館時間:10:00~20:00休館日:第2・第4月曜日(休日、祝日の場合は火曜日が休館) 年末年始※事業により変更になる場合があります入館料:無料※企画展・コレクション展は別途料金が必要です(参考)長崎県美術館
2019年07月04日「AIに仕事を奪われる時代はすぐそこにきている」「今の子どもたちが社会に出るころには、人間にしかできない仕事なんてなくなる」AIの進化のスピードに直面したり、ニュースで科学技術の進歩を目の当たりにしたりするたびに、そんな不安を感じることもあるのではないでしょうか。たしかにAIは、私たちの生活を大きく変え、働き方や仕事の質まで変えています。子育て中の私たちにとっても、子どもの将来を思えば不安を覚えずにはいられませんよね。今回は、「AI時代に身につけておきたい能力」について考えていきましょう。AIで仕事がなくなるってほんと?社会学者の鈴木謙介先生は、AIで仕事がなくなるという考え方は大げさだと述べています。なぜなら、人類の長い歴史の中で、仕事の生産性を上げる技術が何度登場しても、結局はそれに対応する新しい仕事が増える、ということを繰り返してきたからです。また、AIと人間には決定的な違いがあることも理由のひとつだといいます。AIは基本的に、膨大な情報から一定のパターンを見つけ出し、自動化するのが強みです。一方で、ひとりひとり違う個性や特質に合わせて、臨機応変に対応していくようなことは苦手としています。AIが苦手なことーーそれには “人間らしさ” が顕著にあらわれていますね。たとえば「発想力」。教育改革実践家の藤原和博さんは、AIに代替されない基礎的人間力と、AIにはできない自由な発想を生み出す “柔らかい頭” こそ、これからの未来に欠かせない力だといいます。正確性や処理スピードの速さにおいては、人間とAIとの差は今後ますます広がっていくでしょう。しかし、自分でアイデアを生み出し、あらゆる状況に臨機応変に対応できる力こそ、まさにAIが人間にはかなわない能力なのです。これからの時代に必要な能力は?2016年、世界が直面する問題について各国で議論する世界経済フォーラム(通称ダボス会議)にて、『2020年に労働者に求められるスキル』が発表されました。結果は次の通りです。1位複雑な問題解決能力2位批判的思考力3位創造力4位人材マネジメント力5位他者との協調性6位感情的知性7位判断力8位サービス志向9位交渉力10位認識の柔軟性1位の「複雑な問題解決能力」については、まず身のまわりの小さな問題を自分で解決する習慣をつけることで身につきます。論理的な思考によって問題を解決へと導く力は、これからますます求められるでしょう。5位の「他者との協調性」は、いわゆる「コミュニケーション力」。今後多くの業務を機械が代用するようになったとしても、仕事をしていくうえで人間同士のやりとりは不可欠です。6位の「感情的知性」は、まさにAIにはない人間らしい特性です。人の心理は機械のように一定ではありません。相手の感情を敏感に察知して対応する能力は、これからも必ず求められるでしょう。8位の「サービス志向」は、「挑戦力」に置き換えられます。新しいことに挑戦する意欲を高めるには、同時に自己肯定感も高くなければいけません。読解力がカギになる!ベストセラー『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)によれば、読解力がないために教科書の意味が正しく理解できていない子が増えているといいます。開成高校の柳沢幸雄校長は、その要因として「SNS投稿やLINEメッセージなどの短文に慣れきってしまっていること」を指摘します。読解力をつけるには長い文章を読み込み、長い文章を書くトレーニングが必要なのです。「世の中の仕事には、大きくわけて長い文章を読んで書く必要のあるものと、その必要がないものがあります。(中略)AIに奪われないのは、コミュニケーション能力や臨機応変さといった能力が求められる仕事とされていますが、私は、それに加えて、長い文章を読み、長い文章を書く力が必要な仕事も含まれると考えています」(引用元:PRESIDENT Online|“メールが短い人”はAIに仕事を奪われる)データ入力などのマニュアル化された単純作業は、もうすでにAIやロボットで代行している会社も多いでしょう。しかし、報告書やプレゼンテーションの資料作成をする場合、顧客データの分析をしたり専門書を読んでリサーチしたりしなければならないこともあるはずです。さらに、ある程度長さのある論理的な文章にまとめる必要もあります。読む分量も書く分量も長くなると作業が複雑化し、たとえAIでもスムーズにこなすのは難しいでしょう。つまり、これから求められる読解力とは、「長い文章を読み、長い文章を書く力」なのです。そのためには、読書や読み聞かせも大切ですが、柳沢先生は「子どもが話すこと」が最も大事だといいます。話し言葉で表現したとき、きちんと相手に伝わるのは論理的な話し方です。そのときに5W1H(『いつ』『どこで』『だれが』『なにを』『どのように』)の要素を入れて話すことを意識させるだけで、文章の論理構成はしっかりとしたものになるはず。親子の何気ない会話でも、よりわかりやすく伝わりやすい表現を使うことを繰り返していくうちに、読解力や文章力もぐんぐん伸びていきます。また、国立大学付属小学校の松尾英明先生は、「わが子をAIに負けない人間に育てている親の特徴」を次の5つにまとめています。(1)何が正しいか、子どもに自分で判断させて決めさせる。(2)まずは自分で挑戦させて、見守る。(3)失敗を認め、やったこと自体を認める。(4)子どもの言動に向き合う。聞く。(5)子どもを尊敬する。ここでもやはり、「子どもの話を聞いてあげること」が挙げられています。松尾先生によると「家庭での会話に満足していない子どもは、自分のことばかり話して人の話を聞けなくなっている」とのこと。親が不在がちだったり、「忙しいからあとで」と話を聞いてもらえなかったりすると、自分のことも他人のことも人として認められなくなってしまうのです。まずは落ち着いて話を聞いてあげる環境を用意してください。子どもの発言にしっかりと耳を傾け、共感し、詳しい説明を求め、感想を述べてあげることを意識すれば、子どもの「聞く力」、「話す力」、さらには「読解力」まで向上させることができるでしょう。***AI時代はすでに到来していますが、人間だからこそこなせる仕事はまだまだ数多くあります。わが子の将来のために私たち親ができるのは、しっかりと話を聞いてあげること。そして、柔軟な思考と対応力を高める手助けをしてあげることです。(参考)Study Hacker|「AIで仕事がなくなる」は大げさ。“自分は変われる”というマインドがあれば生き抜いていけるAERA dot.|子どもたちがAI時代を生き抜くために必要な「5つの力」とは?洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』,洋泉社.PRESIDENT Online|“メールが短い人”はAIに仕事を奪われるPRESIDENT Online|10年後に「食える子」の親の共通点5
2019年07月04日「子どもが何かに没頭し、こちらの呼びかけにまったく反応しなくなった」という経験がある方は多いのではないでしょうか?それは、子どもが「フロー状態(ゾーン)」に入っているからかも。今回は、子どもの成長に大きくかかわってくる「フロー状態」のメカニズムや、子どもへの影響についてご紹介します。フロー状態(ゾーン)って何?フローとは、アメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した概念で、「物事に対して時間を忘れるほど集中し、最高のパフォーマンスを発揮できる状態」のこと。人はフロー状態に入ると、集中力が研ぎ澄まされて目的達成のために没頭できます。そして、目的達成後は、非常に高い満足感や達成感、心地良い疲労感を得ることができるのです。大人でも、「締め切り直前に集中力が高まり、一気に仕事を片づけることができた」「スポーツ中、身体が自然と動くような感覚があり、練習ではできなかったはずの高度なプレイができた」といった体験をしたことがある方もいるのではないでしょうか?これこそが、フロー状態です。そして、フローよりもさらに集中力が増した状態をゾーンといいます。ゾーンに入ると、これまで体感したことのない超人的な集中力が発揮されますが、その境地にたどり着くことはなかなか難しいのだそう。オリンピックで活躍する一流アスリートなど、特に集中力を求められる人々の中には、ゾーンを経験したことがある方もいるようです。フロー状態(ゾーン)がもたらすものシリコンバレーを拠点とする教育機関 シンギュラリティ・ユニバーシティのFlow Genome Projectの研究結果によると、フロー状態に入ると次のような効果がもたらされるのだそう。・創造性や、課題解決能力が4倍になる・新しいスキルを学習するスピードが2倍になる・痛みや疲労を感じなくなる・ノルアドレナリン、ドーパミン、エンドルフィン、アナンダミド、オキシトシンといった、やる気や集中力を高めたり、幸せを感じさせたりする脳内物質が放出されるそのため、フロー状態に入ると、疲れやストレスを感じることなく、効率的なスキルアップが可能になるのです。フロー状態(ゾーン)を作るためのポイント子どもにフロー状態を体験させるためには、以下のポイントに注意しましょう。また、フロー状態に入ることには、子どもにとってさまざまなメリットがありますので、そちらも併せてご紹介します。・思いっきり遊ばせる発達心理学を専門とするお茶の水女子大学の内田伸子名誉教授らが、20代の子どもを持つ保護者約1,000人を対象に行なった調査によると、子どもが偏差値68以上の難関大学に合格するなどした保護者の35.8%が「小学校入学前の子育てで意識していたこと」について「思いっきり遊ばせること」と回答しました。一方、そうでない子どもの保護者で同じ回答をした割合は、23.1%に留まったのだそう。大学講師や幼児教室主宰などを通して、乳幼児から青年まであらゆる年代の子どもを20年間指導してきた、子育てガイド・長岡真意子氏は、次のように述べています。遊びを通し自発的に深く興味に没頭することで、リラックスした集中状態、努力を努力と感じない「フロー状態」を身につけます。「遊び」のすごいところとは、こうしたスキルや能力を、習い事のように大人の指導によって学ぶのではなく、自発的に楽しみながら身につけてしまえることです。またやるべき課題の間にも遊びを挟むことで、課題へ取り組む意欲や効率がより高まることも分かっています。(引用元:All About|子供の「遊び不足」が危険!遊びの天才を取り戻す方法)前述の調査結果からもわかる通り、遊びを通してフロー状態に入るという経験は、子どもの学習能力を伸ばすことにもつながるのです。そのため、子どもが遊びに集中しているときは、親はむやみに声かけをせず、できる限り見守りましょう。・ルーティンワークを身につける子どもが、勉強や習い事の練習の際に集中して取り組み、フロー状態に入れば、短時間で効率的に能力やスキルが身につきます。フロー状態に入りやすくなる集中力を養うためには、ルーティンワークを身につけることが有効です。ルーティンワークは「どうやったらうまくいくのか」などと試行錯誤する必要がないため、余計なことを考えることなく作業に集中しやすくなるといわれています。メンタルトレーナーの岡本正善氏は、集中力をつける方法としてルーティンワークを身につけることを推奨しています。例えば、勉強前には「1回深呼吸をして書棚の一番左に並べてある数学の問題集を取る」「試験開始の合図が聞こえた瞬間、筆箱を開いて使い慣れた鉛筆を取り出す」など、何でも構いません。毎回徹底することで、潜在意識は素直に目標に向かって動き出すようになります(引用元:ベネッセ教育情報サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」へのポイント【後編】)勉強の場合は「まずは机に座って今日やることを書き出す」、ピアノの練習の場合は「指慣らしとして『猫ふんじゃった』を弾く」など、子どもにもできそうなルーティンワークを身につけさせてみましょう。・成功している姿をイメージするメンタルトレーナーの岡本正善氏は、集中力を上げる方法として、ルーティンワークを身につけるほかに成功している姿をイメージすることも推奨しています。潜在意識に働きかけるには、成功パターンをイメージするだけでいいのです。ただし、何度も繰り返して、潜在意識にイメージを刷り込む必要があります。そうすると、本番では潜在意識がイメージに沿って動き出し、「失敗するかもしれない」といったマイナスのメンタルに惑わされず、集中力を発揮する状態に入りやすくなります。(引用元:ベネッセ情報教育サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」へのポイント【後編】)ただし、子どもの場合はまだイメージするのが難しい場合もあるので、親から子どもに「今日10分だけ勉強したら、新しい漢字を○個覚えられるようになって、いろんな本が読めるようになったり、国語のテストで良い点が取れたりするよ!」など、成功することによってどんなことが起こるのか、できるだけ具体的に説明してあげましょう。そうすることで、子どもが何かに集中して取り組むことのメリットを学ぶ機会にもなります。***何かに没頭するフロー状態は、子どもの能力を伸ばしたり、成功体験を身につけたりするのに欠かせないものです。子どもが集中しているときは、できるだけ見守る姿勢を保ち、充分にフロー状態を経験させてあげましょう。文/田口 るい(参考)ベネッセ教育情報サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」って何?【前編】ベネッセ教育情報サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」へのポイント【後編】識学式リーダーシップ塾|ミハイ・チクセントミハイの「フロー理論」こそ、モチベーションコントロールの最適な処方箋プレジデントオンライン|「頑張ろう」「勝とう」は集中力の邪魔だ学研キッズネット|子どもが伸びる家庭の10の習慣第12回よく遊んだ子は賢くなる!?~子どもを伸ばす遊びの力~ZUU online|「解決能力は4倍、学習スピードは2倍」All About|子供の「遊び不足」が危険!遊びの天才を取り戻す方法
2019年07月03日学校や園から帰ってきた子どもがリビングで寝そべっていたり、ゲームに夢中になっていたりする姿を見て、「宿題やったの!?」「いつまで遊んでいるの!」と怒ってしまうことはありませんか?子どもにも一息入れて疲れをとる時間が必要だとはわかっていても、つい「余計な一言」を言って急かしてしまう人も多いことでしょう。毎日のように口酸っぱく言い続けても、肝心の子どものやる気が起こらなければ、「余計な一言」は効果がないどころか、親子の信頼関係に影響を及ぼすことも……。何も言わなくても子どもが自らすすんで取り組み、親子ともに心穏やかに過ごせるようになるには、子どもの「やる気スイッチ」を上手に押すことが必要です。小言では子どもの「やる気スイッチ」は押せない子どもに「〇〇やったの?」と言ってしまうとき、私たちは「やっていない」ことを知っているか、薄々わかったうえで聞いていることがあります。教育評論家の親野智可等さんはこのように述べています。日頃から子どもに罠をかけてわざわざ嘘をつかせるような意地悪な質問をしていると、子どもは親に対する信頼感が持てなくなり素直な気持ちもなくなります。そして、親の攻撃から自分を守るために、たくみな嘘をつくようにもなります。(引用元:学研キッズネットkidsnet for Parents|「片づけしたの?」「宿題やったの?」「明日の仕度したの?」など。「質問形」の裏に隠れているもの)子どもの口から正直に言わせようと誘導する親の一言は、子どもにとっては攻撃に感じられるもの。親子の信頼関係にとって好ましくないようです。あなたは、お子さんに対してこのような小言を言っていませんか?「いつまで寝ているつもり?」「宿題はちゃんとやったの?」「遊んだおもちゃは、片付けたんでしょうね!」「食べ終わった食器は、どうするんだった?」そんなとき、「今やろうと思っていたのに!」と怒るお子さんは多いことでしょう。その胸の内は、パパやママの小言にガッカリして、素直に向き合いたくない状態にあるのかもしれませんね。「やる気スイッチ」を押された子どもの特徴一方、「○○やったの?」と聞かなくても、こうしたことを自分からすすんでやれる子もいます。・朝は決まった時間にひとりで起きる・学校から帰ってきたらまず宿題に取りかかる・おもちゃで遊んだあとは元通りに片付ける・食事が済んだら食器を下げる彼らは、何事にも前向きで、失敗してもくじけず目標に向かって頑張れる「やる気スイッチ」が入った状態にあります。「やる気スイッチ」を自分で入れることができる子どももいますが、初めの頃は親御さんが絶妙のタイミングで押してあげているケースが少なくありません。「やる気」が習慣化してくるにつれ、子どもたちは自らスイッチを入れられるようになっていきます。「やる気」は、もって生まれた性格ではなく、親御さんが上手に引き出して身につけることのできるスキルと言ってもいいでしょう。「やる気スイッチ」が入った子は、この先どうなる?ベネッセ教育総合研究所の「小中学生の学びに関する調査報告書(2015)『研究レポート2自律的な理由で勉強することが適応的である』」によると、「内発的動機づけ」が高い子どもは学校での成績が良いという研究結果が出ています。「内発的動機づけ」とは、自分自身でやる気を引き出して、物事に取り組めるということ。すなわち、「やる気スイッチを自分で入れられる子」のことですね。やる気スイッチを自分で入れられるようになると、勉強や習い事、家でのお手伝いなどに対して、主体的に目標を見出して楽しんでこなせるようになっていきます。これは、お子さんがこれから成長していくプロセスにおいて「不本意でもやらなければならないこと」に直面したときに克服する力になるものです。中高生であれば定期テストや受験に向けての勉強、大学生ならば単位取得のために必要な課題や試験勉強など、「やりたくないなぁ」と思いながらもやらなければならないことは、たくさんあります。社会人になってからも、仕事のプレッシャーや毎日の通勤、会社での人間関係など、いつも楽しくおもしろいことばかりとは限りませんよね。これらの克服すべき壁に対し、子どものうちに「やる気スイッチ」が押せるようになっていると、これまでも上手に乗り越えてきた経験が自信となり、自ら意味を見出して意欲的に取り組むことができるのです。子どもの「やる気スイッチ」を上手に押す方法子どもの「やる気スイッチ」の上手な押し方には、次のような方法があります。【学習面】◆なかなか勉強を始められないときOK「宿題、何時からやろうか?」「今日の宿題は何をやるの?」NG「まだやってないの?」「早くやりなさい!」はっぱをかけたり急かしたりしても、子どもにはわかりにくく、かえって逆効果です。「何をやるのか」「どんなタイミングで始めるのか」を聞いて、子ども自身が考えるきっかけを与え、自分で決めた経験を重ねられるように声かけをしましょう。◆机には向かっているものの、集中できていないときOK「まずは3問やってみよう」「もうここまで進んだの?」「ひとりで頑張っているね、手伝えることがあったら言ってね」NG「ダラダラしないの!」「さっさと終わらせなさい!」まずは、どうして集中できないのか原因を探ってみます。問題の量が多いようであれば、短く区切って集中を促し、難しそうな問題や苦手な分野であれば、ここまでやってきた頑張りを認める声かけをしてあげましょう。また、ひとりで黙々と続けることが得意ではない子なら、大人の存在が近くに感じられて頑張れるようにリビング学習をすすめるなど、環境づくりを提案してもいいかもしれません。【生活面】◆身のまわりのことができていないときOK「靴がそろっていると玄関がスッキリするね」NG「ほら!また脱ぎっぱなし」「自分でやりなさい!」たとえば、子どもが靴を脱ぎっぱなしにしているときには、「脱ぎっぱなしはダメじゃない!」と叱るのではなく、「そろえてくれると玄関がスッキリする」に置き換えることが大切です。具体的で前向きなフィードバックは、ほめ言葉に匹敵し、やる気を引き出すことが研究でわかっています。◆決まった家の手伝いをやらないときOK「今日は一緒にお皿洗いしようか?」「あなたのお風呂掃除は丁寧だから、ピカピカになってうれしいよ」NG「決めたこともできないの?」「それくらいはやりなさい!」家の手伝いを何か決めて任せている家庭も多いと思いますが、一度決めたからといって必ずしもその人がやり遂げなければならないわけではありません。やる気がなさそうだなと感じる日は、「一緒にやろう」と声をかけると、案外すんなり動けるお子さんも。また、手伝ったことで人の役に立っているということを伝えるのも効果的です。どのような場面でも、「何がどこまで自分はできているか」がわかり、「何をいつ取り組むのか」を自分で決めるように促すと、「やる気スイッチ」は入りやすくなります。***大人と同様に、やる気スイッチは、すぐに押せる子もいれば時間がかかる子もいます。また、新学期や学校行事など慣れないことが続いていると、心身が疲れていることも。ときには「1回休み」を取り入れるのも「やる気スイッチ」を上手に押すコツですよ。(参考)学研キッズネットkidsnet for Parents|「片づけしたの?」「宿題やったの?」「明日の仕度したの?」など。「質問形」の裏に隠れているものschola|生活の節目を活用すれば、子どものやる気を高めることができる進研ゼミ保護者通信|やる気アップの声かけバージョンアップさぽナビ(Z会)|子どものやる気を引き出すコツ(1)こどもまなび☆ラボ|子どもが「本当に褒めてほしいこと」。やる気スイッチをONにする言葉とはドロシー=ノー=ノルト・レイチャル=ハリス著、石井千春訳(2003),『子どもが育つ魔法の言葉』,PHP文庫ベネッセ教育総合研究所|研究レポート2自律的な理由で勉強することが適応的である
2019年07月02日「うちの子、国語が苦手みたい」と悩んでいませんか?国語科において必要とされる「語彙力」「表現力」「読解力」は、ほかの科目でも要求されます。小学生のうちから国語が苦手だと、文章問題や教科書を読んでも理解できず、学校での勉強全体に影響を及ぼすのです。今回は国語が苦手な子どもの特徴や、国語が苦手になってしまう理由をご説明します。そして、国語の苦手を克服するために親がどうサポートできるか、3つの方法をご紹介しましょう。国語が苦手な子どもの特徴国語が苦手な子どもにはいくつか特徴があります。自分の考えをうまく表現できない筑波大学付嘱小学校教諭の青木伸生氏によると、自分の考えをうまく表現できない子どもは国語が苦手な傾向にあるそうです。体験した出来事や読んだ物語についての感想を自分の言葉で表現するのは、一定の国語力がないとできません。見聞きしたことを頭の中で整理して、言葉として表現するには「語彙力」「論理的思考」「文章構成力」が必要。いずれも国語科において要求される能力です。つまり、自分の考えをうまく表現できない子は国語が苦手だといえるでしょう。国語が苦手だから自分の考えを表現できない、ともいえます。算数の文章問題が解けない子どもの算数の成績が悪いのだとしたら、原因のひとつは国語力の低さかもしれません。お子さんの算数の答案を見てみましょう。「3-2+5=」と式があらかじめ書かれている問題なら正解しているのに、「リンゴが3個あって、そのうち2個を太郎君が食べて、花子ちゃんがミカンを5個持ってきた」といった文章問題を間違えている場合、日本語の読解が苦手なのかもしれません。国語が苦手だと、算数の文章問題を解くことができません。算数の文章問題では、計算能力だけでなく、文章を読んで理解し、適切な式を自分で考え出す能力が要求されるからです。青木氏も、算数と国語の関係について以下の通り語っています。ドリルのような単発の計算は得意な子どもであっても、国語力が伸び悩んだがために本来の能力を発揮できないということにもなりかねないのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの主張はくみ取らなくていい!親だからこそできる、我が子の国語力アップ法)計算自体は得意な子どもでも、国語が苦手だと、算数の成績が伸び悩んでしまいかねません。本を読まない国語が苦手な子どもの最大の特徴は、自発的に本を読まないことです。本を読むことで、日本語の正しい文法やさまざまな言葉を知ることができます。言い換えれば、本を読まないと文法や語彙を自然に身につけることができないのです。また、本を読まないということは、物語や言葉のおもしろさに興味を持っていないのだとも考えられます。日本語の物語や言葉に関心がなければ、国語の勉強そのものを退屈だと感じるかもしれません。2014年に発表された研究によると、テキサス大学オースティン校のレイ・リンデン准教授らは、フィリピンの小学校100校を2つのグループに分け、読書が成績に及ぼす影響を調べました。一方のグループの小学生に対しては「読書マラソン」(毎日1時間、読書・朗読や単語ゲームの時間を与える)を実施し、もう一方のグループにはしなかったそう。ひと月後、読書マラソンを行なった小学校での国語の標準テストの偏差値は、読書マラソンをしなかった小学校よりも0.13高かったそうです。単語力や読解力が上昇していることがわかりました。特に単語力と読解力が優れていたとのこと。やはり、読書をすると国語の成績は伸びるようですね。反対に、読書をしない子は国語が苦手である、ともいえそうです。国語が苦手な理由では、国語が苦手になってしまうのはどうしてなのでしょう?一部の子どもが国語が苦手な理由には、子どもの能力だけではなく、現代の子どもを取り巻くさまざまな事情が関係しています。子どもと大人が会話する機会が少ない一部の子が国語を苦手としてしまう背景には、核家族家庭の一般化や、共働きの家庭の増加があります。昔だったら、子どもが学校から帰宅したとき家には大人がいたため、大人と会話することで日本語の表現や知らない言葉を自然に学んでいました。しかし、両親と子どものみの家庭で、両親が共働きで夜まで帰宅しないとなると、子どもが親と言葉を交わせる機会は非常に少ないですよね。親は帰宅しても仕事で疲れていて、子どもとあまり話したがらない、ということもあるかもしれません。たしかに、学校や学童保育において、子どもたちは多くの会話をしていることでしょう。しかし、子ども同士での会話では、大人との会話によってもたらされる「正しい文法」や「未知の言葉」を身につけるのは難しいのではないでしょうか。そのため、正しい日本語や多くの言葉を伝えてくれる大人との会話が少なくなってしまった現代の子どもは国語が苦手な傾向にあるといえます。家庭に本や新聞がない子どもが国語を苦手としてしまう背景には、スマートフォンの普及や、家庭から本や新聞などの活字を読む習慣が失われたことも関係していそうです。読者の皆さんにも、「携帯電話をスマートフォンに替えたら、読書量が減った」「ニュースはスマートフォンで見るから、新聞の購読をやめた」という人がいるのではないでしょうか。オーストラリア国立大学・米ネバダ大学の研究者たちが、31の国・地域における25〜65歳の16万人を対象として2011〜2015年に行なった研究によって、家庭にある書籍数と読み書き能力に相関性があることがわかりました。被験者に「16歳のときに自宅に何冊本があったか」という質問に答えてもらったあと、読み書き能力・数字などのテストを受けさせたそう。そして調査の結果、家にほぼ本がない家庭で育った被験者は、読み書き・数字の能力が平均よりも低いことがわかりました。家庭の書籍数とテストの結果は、本の数が350冊程度までだと比例していたそうです。家庭に本がない、つまり家庭に読書習慣のない子どもは、活字に自然と親しむ機会がないわけです。そして本を読む習慣がないと、読解力や語彙が身につかず、結果として国語が苦手となってしまうわけですね。国語の苦手を克服するには1:親子の会話を増やす小学生が国語の苦手を克服するには、大人と会話をする機会を増やしましょう。身近な大人、つまり親と会話をすることを通して、子供は気持ち・考えを伝える方法や未知の言葉を学べます。東京の公立小学校教諭・杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)先生も、子どもの「会話力」を上げるには、親子でたくさんのおしゃべりをするに尽きると語っています。会話力とは、さまざまな言葉を正確に使ったり、順序立てて話したりできる能力です。会話をする機会を増やすだけではなく、言葉の使い方も意識すると、会話の質が上がって正しい日本語の使い方を身につけられますよ。たとえば、今まで会話で「これ」「それ」などの指示語を使うことが多かったのなら、「テーブルの上にあるポット」や「ハンガーにかけてある紫色のTシャツ」などの具体的な言葉で表現するよう、親のほうから心がけましょう。物事を具体的な言葉で表現できるようになる頃には、国語の苦手はすっかり克服されたことでしょう。国語の苦手を克服するには2:読み聞かせによって本に興味を持たせる国語の苦手を克服する方法としては、親が本を読み聞かせることによって、子どもに本への興味を持たせることも重要です。読み聞かせは親子にとって良質なコミュニケーションともなりますし、本を読む習慣や本への興味がなかった子どもでも、読み聞かせによって本に興味を持つかもしれません。上で紹介した筑波大学附属小学校の青木伸生先生も、国語が苦手な子どもが本に興味を持って能動的に読書をするようになるには、親の協力と理解が必要であると述べています。子どもに本を読んでほしい場合、まずは親が子どもに本を読み聞かせることから始めていきましょう。今まで本に興味がなかった子どもでも、本に書かれているストーリーがおもしろいと感じれば、自ら本を開くようになりますよ。子どもの自主性を促すため、本は親が一方的に選んで押しつけるのではなく、子どもが興味を持って自ら選んだ本を買い与えるようにしましょう。そして、親も子どもが読んでいる本に対して興味を示してください。「何が書いてあるのか教えて」「どんな物語なの?」と質問をすれば、子どもは「知っていることを説明したい」という欲求から、本を読み込むようになるはず。意欲的に読書をする習慣が身につけば、おのずと国語の苦手は克服できます。国語の苦手を克服するには3:親子で交換日記をする国語の苦手意識を解消するため、子どもとコミュニケーションをとりたいけれど、仕事が忙しくて、帰宅する頃には子どもは寝ている……ということもあるでしょう。子どもと話す時間が少なくて困っているのなら、交換日記というのはどうでしょうか。シリーズ50万部を突破した『東大合格生のノートはかならず美しい』の著者・太田あや氏は、子どもの国語力を上げる方法として、親子間での交換日記を推奨しています。リアルタイムで話せる時間が少なくても、交換日記であれば、空いた時間に書いてテーブルの上に置いておくなどして、コミュニケーションをとることができますね。親の書いた文章を子どもが読むことで、段落の分け方や言葉の意味などを知ることもできます。毎日のように文章を書く習慣がつけば、作文への苦手意識もなくなりそうですね。交換日記は、国語の苦手を克服するのに効果的な手段です。親としても、子どもとの交換日記は楽しい思い出になるのではないでしょうか。***国語の苦手を克服するためには、「本を読みなさい」と子どもに押しつけるのではなく、親が子どもとのコミュニケーションを楽しみながらサポートしてあげましょう。平日にまとまった時間を子どもと過ごせないなら、休日に本を読み聞かせたり、一緒に料理をしたりするのもよいですね。どうしても時間がとれないなら、交換日記がおすすめ。なお、国語力を高める方法については、「小学生の『国語力』を上げるには。3つの方法とオススメ問題集」もあわせてご参照ください。文/森下智彬(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの主張はくみ取らなくていい!親だからこそできる、我が子の国語力アップ法StudyHackerこどもまなび☆ラボ|国語力アップの鍵はやっぱり読書だった!将来のために今、本を読むべき理由StudyHackerこどもまなび☆ラボ|読書量が算数の成績を左右する!?子どもの学力を上げるために「1日数分」からできることStudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方。国語力アップの決め手は家庭にある!StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「文字を見るのも嫌!」子どもを国語嫌いにさせないために、親がすべき低学年からの工夫StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「得意教科は国語!」自信をもって言えるようになるために効果的な勉強法リクルートマネジメント ソリューションズ|読書は子どもの学力を上げるのか?StudyHackerこどもまなび☆ラボ|小学生の「国語力」を上げるには。3つの方法とオススメ問題集Newsweek日本版|子どもの時に、自宅に紙の本が何冊あったかが一生を左右する:大規模調査Project MUSE|Improving Reading Skills by Encouraging Children to Read in School: A Randomized Evaluation of the Sa Aklat Sisikat Reading Program in the Philippines
2019年07月02日私「これは太陽?」A君「お日さまだよ」私「あぁ、お日さまなんだ、なんでお日さまなの?」A君「目や口があるからだよ」私「なるほど、目や口があるからお日さまなんだね」A君「そうだよ、でも太陽って呼んでもいいよ」これは先日、未就学児のA君が描いた絵についての、A君と私との対話です。短い中に、子どもとの対話のヒントが得られると思います。ここで私はA君の言葉を訂正せずに復唱し、「お日さま」と名づけた根拠を尋ねました。それによってA君が「太陽」を擬人化することで呼び方を変えているのだと知り、同時にA君も私の「太陽」という名づけ方を受容してくれました。こうした短い対話の中でも、作品を媒介に子どもの発言の論理的な思考の芽生えを理解し、刺激しながら、お互いを受容し、理解し合うという信頼関係が結ばれていきます。印象深かったのは、私たち2人の対話をA君のお兄さん(小学1年生)が優しく見守っていたことです。お互いを認め合うコミュニケーションの場の空気感は、周囲にも伝播してゆくものなのですね。子どもの7つの力を育てる「対話型鑑賞」を、家庭で実践してみよう前回記事『人間の知の基本フレームは、小学生のときに形成される!?新たな美術鑑賞法「対話型鑑賞」が育む7つの力』では、アメリカ発の新しい美術鑑賞教育法「対話型鑑賞」によって、子どもの7つの力が育つのだとお話ししました。では、7つの力である「観察力」「推論する力」「他者を受容して理解する力」「再考する力」「表現力」「自ら学ぶ力」「コミュニケーション能力」を育てるには、具体的に何をすればいいのでしょう?近年、「対話型鑑賞」ワークショップを実施する美術館もなかにはありますが、地理的・時間的な問題から、誰もが参加できるものではありませんね。しかし、心配はいりません。対話型鑑賞は、家庭で、親御さんと一緒に取り組むこともできるのです。今回から、親子が対話しながら芸術鑑賞をするうえでの実際の進め方や、子どもへの声かけのコツについてお話ししていきましょう。素材選びのポイント:子どもの能力に限界を設けない対話型鑑賞を始めるにはまず、素材が必要です。では、子どもと作品を鑑賞するにあたって、どのような素材を選んだら良いのでしょうか?素材を選ぶうえで、親御さんに必ず覚えておいていただきたい、大切なことがあります。それは、子どもの反応をあらかじめ想定した素材選びは禁物だということ。作品に対する印象や反応は、子どもの性格や年齢によっても大きく異なります。複雑な内容の作品や抽象的な作品は子どもには難しすぎる、謎めいた作品は恐怖心をそそるのでは、などと大人が勝手に決めつけるのはやめましょう。子どもに分かりやすいもの、正解がはっきりしているものを選ぶといった大人の一方的な発想が、子どもの自由な発想や感性、ひいては自立した思考を削ぎ落してしまうのです。先入観を捨て、子どもの想定外の反応に驚き、一緒に鑑賞を楽しむ姿勢を持ちましょう。素材自体は、アメリカの美術館の無料オンラインサービスで所蔵作品の高精度画像をダウンロードしたり、気軽に入手できるアート雑誌や画集を1冊購入するだけで、いくらでも手に入ります。本記事の後半で詳しく説明しますが、まずはその前にどのような作品を選ぶとどのような鑑賞ができるのか、お伝えしましょう。【作品例1】複雑な作品最初はアーティスト、Jose Manuel Aznar Diaz による複雑な作品から。複雑な内容の作品だからといって、不安に思うことはありません。子どもは大人の心配をよそに、自由に鑑賞を楽しむはずです。この作品を見て、あなたならまずどこに注目しますか?子どもは、作品を見るとき、作品の全体像よりも、まず様々な個々の部分に注目します。・描かれた人々はどのような人々なのか・何をしているのか・なぜそう思ったのかこれらを聴いてあげると良いでしょう。そして描かれている人から人へ視点が移動していく様を、子どもと一緒に辿っていきましょう。作品の解釈には、鑑賞者それぞれが育った環境や経験、好みや思考の特性が反映されます。つまり、子どもは作品の中に自己を投影するのです。子どもの思考形成の過程を見逃さずに、様々な立場への視点の移動、そして作品の一部分と全体との関係性に目が向けられると良いですね。【作品例2】謎めいた作品お次は、アーティスト Barbara Kroll による謎めいた作品です。これを見て、あなたとあなたのお子さんはどう感じるでしょうか。初めて見たときは、怖いと思われる方もいるかも知れません。しかし、じっくり見ていくうちに、優しい印象に変化していくはずです。作品1と同じように、まずは個々の部分に区切って見ていき、その後全体像を見直していくと良いでしょう。私が実際に本作品を使って対話型鑑賞を行ったときの子ども達の発言も、・最初は怖かったけれど、子どもの夢の世界だと思う・動物たちが子どもを優しく見守っているように感じると次第に変わっていきました。子どもを取り囲む動物の優しい眼差しには、我が子を愛する親御さんの姿が投影されているのかもしれません。優れた作品は、深い人間理解が込められているために、根源的な怖さを秘めているものです。子どもは、そのような作品の本質を敏感に感じ取る力を持っています。【作品例3】抽象的な作品例最後は、アーティスト Monique Virelaude による抽象的な作品を例に挙げましょう。子どもたちは、抽象的な作品を、様々な具体物に見立てていきます。これまでの鑑賞会でも、「テーブル」「コップとトースター」「ベッド」「氷」「雪国」など、子どもによる様々な見え方が示されました。子どもの中でどのように見えていても、決して否定せず、とことん聴いて、受け止めてあげましょう。実は本作品は、これまで私が実施した数多くの鑑賞会の中で、子どもたちに最も人気のある作品のひとつです。たとえどのようなモノに見えていても、子どもたちは「あたたかみがある作品だ」という印象を持ち、「きっと優しい人が描いたのだろう」と作者像にまで思いを馳せていきます。子どもたちは作品の「あたたかみ」や「優しさ」を、描かれた具体的なモノからではなく、場面構成や形状、色、タッチなどから自然に感じ取っているのです。大人はこうした子どもの感性を摘み取ることなく、大切に育む手助けをしていくことが大切です。親子の対話型鑑賞を成功に導く魔法の言葉 & NGワード親御さんの発言は、子どもにとって圧倒的な力を持っています。親御さんの発言次第で、子どもの感じ方や考え方が決定づけられてしまうこともあります。子ども自身が抱く印象や考えの発露を阻害しないよう、十分に気をつけながら対話を進めましょう。特に「きれい、優しい、楽しい」のような印象を語る言葉、「ママ(パパ)はこう思う」という判断を下す言葉を、大人から言うことは控えましょう。そうではなく子どもに、本人が抱いた印象や子ども自身の判断を自発的に語らせることが大切です。そのためには、子どもの発言を親御さんが復唱して理解を示し、そのうえで「どう感じたの?」「どう思ったの?」という質問を投げかけると良いですね。まず子どもの感想や考えを理解し、同意してあげることが、対話型鑑賞を成功に導くポイントです。対話を終え、子どもが自分自身の考えを伝えきった後なら、子どもも自分とは異なる他者の意見を受け入れる心の準備が整います。親御さん自身の印象や判断を語るのは、そのときまで待ちましょう。画像入手方法1. 美術館の無料オンラインサービスでは、対話型鑑賞に必要な素材はどこから手に入れれば良いのでしょう?アート作品の入手方法を5つに分けてご紹介しましょう。まず1つめは、オンラインで入手する方法。実は、アメリカの一部の美術館は、いつでもどこでも誰でも、オンラインで「無料」で所蔵作品を閲覧・ダウンロードできるサービスを展開しているのです。家庭での鑑賞用であれば、自由に作品を楽しめます。■メトロポリタン美術館「The Met Collection」まずは、ニューヨークのメトロポリタン美術館。約40万点の所蔵作品の高精細画像が用意されています。日本でも人気のフェルメールやモネ、ゴッホなどの有名な作品から、葛飾北斎や尾形光琳をはじめとする日本美術作品まで、多くの優れた作品をワンクリックで入手できます。■シカゴ美術館「Discover Arts & Artists」シカゴ美術館にも同様のサービスがあり、約4万点の豊富な所蔵作品がダウンロードできます。ゴッホの代表作のひとつ「ファンゴッホの寝室」、ジョルジュ・スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」、クロード・モネの「睡蓮」など、一度は見たことのある美術作品ばかり!もちろん、他にもたくさんのアーティストによる作品が公開されているので、あえて知らない作品を選び、お子さんと一緒に一から鑑賞を楽しむのもいいですね。どちらも閲覧できる全ての作品がダウンロードできるわけではありませんが、画像の下に[↓]のマークのあるものは、[↓]をクリックすることで入手可能です。ダウンロードできるものはプリントアウトして使っても良いですし、そうでなくてもタブレットなどで見て楽しんでもいいかもしれません。わずらわしい会員登録は不要です。英語がわからなくても感覚的に操作できる作りになっており、簡単に検索もできます。お子さんとの対話型鑑賞に大いに役立つでしょう。画像入手方法2. アート雑誌月間雑誌から別冊のものまで、様々な雑誌があります。おすすめ3選をご紹介しましょう。■月間『芸術新潮』(新潮社)幅広い読者を持つ、月刊の芸術総合雑誌です。歴史的な芸術作品から、建築、古美術、現代アートまで、様々な美を独自の切り口で紹介しています。■『別冊太陽』(平凡社)豊富な資料、美しいビジュアルと共に、毎号ひとつのテーマを深く掘り下げて紹介しています。■月間『教育美術(Art in Education)』(教育美術振興会)学校美術教育を中心とした専門誌です。全国の幼稚園や保育所、小学校、中学校など、造形・美術教育に携わる人々のニーズに合わせた情報提供が中心ですが、アート教育に興味のある親御さんが読んでも楽しめるかもしれません。画像入手方法3. ムック本画集よりも安価に入手でき、多数の作品が収録されたムック本。まるで美術館にいるような気分になれる、以下の2点をご紹介します。■『【完全ガイドシリーズ231】美術展完全ガイド2019』(晋遊社)2019年の美術展の見どころが網羅されています。親子で美術館に行く機会のある方は、どの美術展に行こうか決める際の参考にもなります。■『BRUTUS特別編集合本・日本美術がわかる。西洋美術がわかる。』(マガジンハウス)『日本美術総まとめ』特集と『西洋美術総まとめ』特集の合本で、日本美術と西洋美術の名品250点のカラー図版が掲載されています。画像入手方法4. 画集様々な出版社から画集が出版されています。好きな作家やテーマ別にそろえていくのもいいですね。■『新潮美術文庫』全50巻(新潮社)古典から現代美術まで、幅広いセレクションが揃っています。新書サイズで持ち運びやすく、1冊1,200円(税別)と、手ごろな価格で入手できます。気に入った作家の作品を選ぶといいでしょう。■『新潮日本美術文庫』全45巻(新潮社)一冊につき一人ずつ、日本美術界を代表する作家に焦点を当てています。『新潮美術文庫』同様、気軽に購入できます。入門書としておすすめの全集です。■『Art Gallery テーマで見る世界の名画』全10巻(集英社)中高の教科書に掲載されている作品も多数収録された、大判の全集です。「肖像画」「風景画」「静物画」「歴史画」「象徴と寓意」など、テーマ別に分かれています。上記の画集に比べるとお値段は張りますが、年表や時代背景などの解説も豊富で、見応えがあります。画像入手方法5. 美術館のポストカードや図録美術館のショップでは、様々な作品のポストカードや図録が販売されています。手のひらサイズのポストカードで鑑賞するのも楽しいですよ。気に入った作品があれば、図録を購入してもいいですね。美術館にお出かけの際は、お土産を探す感覚で、楽しみながら探してみてください。次回は、親子で対話型鑑賞を進める上での「鑑賞の場の設定」、そしてさらに具体的な対話の実例をご紹介します。※Jose Manuel Aznar Diaz、Barbara Kroll、Monique Virelaude による作品画像は、それぞれのアーティストのフェイスブックから許可を得て使用しています。個人の鑑賞以外の用途の使用はできませんので、ご注意ください。
2019年07月01日赤ちゃんのころとは違い、言葉や態度でわが子とコミュニケーションがとれるようになってくると、さまざまな問題が出てくるようになります。そのほとんどは、「どうして親の気持ちをわかってくれないの?」「自分の子どもなのに考えていることがわからない……」といった、お互いのことを理解し合えない悩みなのではないでしょうか。しかし、たとえ親子であっても、“ひとりひとり違う人間” だということを忘れてはいけません。子どもをひとりの人間として認め、親自身もまた自分の気持ちを正直に見つめ直すことで、親子の関係は劇的に改善されるのです。今回は、『親業』プログラムをベースにした、すぐに役立つ「親子コミュニケーション」のコツをお伝えします。“良い親子関係” を作るための「親教育」プログラム『親業』という言葉を初めて聞く方も多いのではないでしょうか。簡単に言うと、「親としての役割は、ひとりの人間を生み、養い、社会的に一人前になるまで育てる仕事に携わること」という考え方を基にした「親教育プログラム」を意味します。1960年代、アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士は、非行少年たちの治療に携わっていました。治療を進めていくうちに、問題児が出るのは問題親がいるからであるとの視点を明確にし、子への適切な接し方を親に教えることで、問題が起こる芽をつむことができるという結論に達したのです。そのような経緯で開発されたのが『親業訓練』です。カウンセリング、学習・発達心理学、教育学など、行動科学の研究成果を基礎にしているこのプログラムは、親としての役割を効果的に果たすための具体的な方法を教えてくれる講座として発展していきました。通常、子育てとは「子どもがいかに育つか」ばかりに重点がおかれています。対して「子どもが育つうえで親がいかに関わるか」と親の側に焦点を当てている『親業訓練』は、今では子育てに悩む世界中の親御さんたちから支持されるようになったのです。親業訓練は親も子も変える!親業訓練では、次の「3つの柱」をベースにしてプログラムを進めていきます。■親業訓練の3つの柱1. 聞くこと(能動的な聞き方)子どもが心を開いて本当の気持ちを親に話すように接し、悩みや問題を抱えていたら自分自身で解決できるように手助けをする。2. 話すこと(わたしメッセージ)親が子どもに自分の気持ちや考え方を率直に伝える。3.対立を解く(勝負なし法)子どもの欲求と親の気持ちがそのままでは折り合わない場合、どのように解決するかを考える。親が一方的に自分の意見を押しつけるのではなく、また子どもの欲求にいつも応じてしまうのでもなく、お互いに納得できるように解決へと導く。では、親業訓練を経て、親と子それぞれにどのような変化が見られるようになるのでしょう。■親業訓練による子どもの変化1. よく勉強するようになった。2. 親に対してより受容的になり、拒否的でなくなった。3. 自尊心が高まった。4. 学業不振であった子どもたちが充分な成績を取るようになった。■親業訓練による親の変化1. 親としての自信が高まった。2. 親と子の相互理解度・相互信頼度が高まった。3. 自分自身のことがよくわかるようになった。4. 子どもに対する信頼と自立を許す気持ちが高まった。アメリカでは親子関係を改善し、青少年犯罪や非行を予防するプログラムとして効果的であることが認められている『親業訓練』。その効果が確かなものであることがうかがえます。12のパターンに要注意!子どもが悩んでいたり不安を感じていたりするとき、90%以上の親がしている対応を、ゴードン博士は12の型に分類しました。それらはすべて、子どもの考える力を育てるのに効果がないとされている対応です。たとえば、子どもが学校から帰ってきて、「隣の席の子に貸した消しゴムが返ってこなかった……」と落ち込んだ様子を見せたとき、どのような言葉をかけてあげますか?おそらく次の12パターンのどれかに当てはまるのではないでしょうか。1.命令・指示「明日、そのお友だちに『返して!』って言いなさい!」2.脅迫・警告「またなくしたの!?次なくしたらもう買わないからね!」3.説教「返し忘れてるだけかもしれないよ。お友だちのことを悪く言うのはよくないんじゃない?」4.提案・助言・忠告「明日、『返して』って言ってみて、だめだったら先生に言ってみたら?」5.講義・論理による説得「その場で『返して』って言えないのも悪いんじゃない?誰だって後から言われたら嫌でしょう」6.非難・批判「なんですぐ物をなくすの!人のせいにしないの!」7.同意・賞賛・ご機嫌とり「嫌だったのを我慢したんだね、えらいよ」8.侮辱・悪口・はずかしめる「あなたが弱虫だから意地悪したくなったんじゃない?」9.分析・解釈「その前に、そのお友だちの嫌がることをしたんじゃないの?」10.同情・なぐさめ・激励「そのお友だちひどいね。そんな子のことは気にしなくていいよ!」11.尋問・質問、原因・動機・理由を探る「返してって言わなかったの?」12.ごまかし・皮肉「その話は後で聞くから、まずは宿題をやろうか」「え?なんでダメなの!?」と思った方も多いはずです。たしかにこの12パターン以外の言葉はなかなか思いつきませんよね。ではいったい、なにがよくないのでしょうか。じつは、この12の型、すべて「親の意見」であることに気づきましたか?この型にのっとって発せられた親の言葉によって、子どもは次のようなメッセージを感じ取ってしまうそう。「私の気持ちはたいしたことないと思ってるんだ」「私がどんな気持ちでいるか気にしてないんだ」「問題は隣の子じゃなくて私だと思ってるんだ」そして、そのようなメッセージを感じ取った子どもは、次のような反応を示すといいます。・これ以上話しても無駄だと黙り込む・防衛的で反抗的になる・自分はだめだ、劣っていると感じる・自分を変えなければならないと圧力を感じる・自分では解決できないと思われていると感じる・自分は信用されていないと感じる・イライラする・反撃したくなるでは、親業をベースにした理想的な対応とは、どのようなものなのでしょうか?理想的な聞き方・伝え方親業インストラクターとして活動中の松永美佐寿さんによると、「大事なのは、親から命令や提案、忠告、非難などのメッセージを出すのではなく、子どもからのメッセージを聞くこと」だそう。■「能動的な聞き方」の例「そうか」「ふーん」「そうだったんだ」と、うなずいたり相槌をうったりして穏やかに聞くように心がけましょう。それだけでも、子どもは話しやすくなり、つらい気持ちを吐き出すことができます。たとえば、子どもが「学校へ行きたくない」と言っているとき、松永さんによると次のような聞き方を心がけるといいそうです。子「もう学校イヤだ」親「学校へ行くのがイヤなんだね」子「だって給食が嫌いなんだもん」親「給食が嫌いなんだ」(※子どもの言葉を繰り返す)子「残すと叱られるから」親「給食を全部食べないと叱られて、それがイヤなんだね」(※理解したことを自分の言葉で言い換える)子「当番の人に減らしてって言えばいいんだけど、○○くんが意地悪して減らしてくれないの」親「○○くんが減らしてくれないから残すことになって叱られちゃうんだね。それはつらいね」(※気持ちをくむ)「学校へ行きたくない」と言われると、反射的に「何言ってるの!そんなこと言わないで早く行きなさい!」と叱ってしまったり、「どうして?なにがあったの!?」と過度に心配して責めるような口調になったりしてしまいがちです。しかし、まずは子どもの気持ちを肯定的に受け止めてあげることが大事。上のようなやりとりを重ねることによって、子ども自身が自分の気持ちに気づいて自発的に答えを出す力が育まれます。■「わたしメッセージ」の例次に、子どもが行動を変える気になる効果的な「わたしメッセージ」をご紹介します。次の3つの要素を盛り込むことを意識するのがポイントですよ。1. 子どもの具体的な行動(非難しない)2. わたしへの影響(行動が与える影響)3. わたしの感情(率直な気持ち)たとえば、子どもが脱いだ服や靴下をそのままにしているとします。ついイラっとして強い口調で叱ってしまいそうですが、次のように伝えてみてはいかがでしょうか。「○○くんが脱いだ洋服や靴下を床に置きっ放しにしていると(←具体的な行動)、すぐに掃除機がかけられなくて(←わたしへの影響)、部屋が片づかなくて困っちゃうな(←わたしの感情)」相手への非難や命令の要素はいっさい入っていませんが、このメッセージを受け取った子どもは、自分の行動が親にどんな影響を与えてどんな気持ちにさせているのかがはっきりわかるはずです。命令されてイヤイヤ動くのではなく、自分から行動を変えようとするので、子どもにとっても親にとってもストレスなく問題を解決することができるでしょう。***『親業講座』とは、悩みながら手探りで育児をしている親御さんたちに、方向性を提示してくれる「コミュニケーション訓練」です。今はインターネットにたくさんの情報があふれています。それらの情報に振り回されているうちに、自分の子育てに自信がなくなってしまうことも。そんなときは、このプログラムを参考にしたコミュニケーションを意識してみましょう。きっと親子の関係がこれまでとは違うものになるはずです。(参考)親業訓練協会|おやぎょうとは親業 親だって人間!|親業とは?All About|親子関係に効く!親業を知っていますか?親の学校プロジェクト|子育てコラム⑨「お決まりの12の型」を知っていますか?親業・親子コミュニケーション【キッズドアスタイル】|子どもを支援する基本はまず聴くこと親業・親子コミュニケーション【キッズドアスタイル】|子どもを支援する基本はまず聴くこと
2019年06月30日親子で料理をすることの大切さについて、よくご存じの方も多いと思います。しかし、「子どもと一緒に作るのに、どんな料理がふさわしいのかわからない」「具体的に何をさせればいいのか迷ってしまう」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、料理のメリットに加えて、親子で料理をする際におすすめのレシピ本をご紹介します。料理にはメリットがたくさん!親子で料理することには、以下のように、さまざまなメリットがあります。・五感に刺激が与えられる料理では、食材や料理を見る(視覚)、包丁で野菜を切るときの「トントン」、鍋で料理を煮込むときの「グツグツ」といった調理音を聞く(聴覚)、調理中のおいしそうなにおいをかぐ(嗅覚)、さまざまな食材や調理器具を触る(触覚)、できあがった料理を食べる(味覚)など、五感が刺激される場面がたくさんあります。料理するだけで五感すべてが鍛えられるので、子どもの感覚を効率的に育てることができるのです。・好奇心や探求心が育つ家庭教育の専門家の田宮由美氏は次のように述べています。料理をする時、材料の分量や、調理の手順を考えなければなりません。(中略)また、卵は焼くと何故固まるの?水と粉を混ぜるとどうしてネバネバするの?乾いた雑巾は何故水を吸い取るの?など化学的なことに興味を示す子もいるかもしれません。お手伝いの中には、考える事や工夫する能力が養われる他に、いろいろな不思議や発見があるでしょう。(引用元: All About|子供にお手伝いをさせるメリットと親が心がけるべき事)料理では、小麦粉と卵と砂糖などがおいしいケーキに変身したり、分量を間違えると失敗したりと、調理方法によって見た目や味が変化するシーンが多くありますよね。そのため、子どもの好奇心や探求心を育てることにつながるのです。・親子のコミュニケーションが活発化する親子での料理は、協力し合ってひとつの目標に取り組む行為でもあります。そのため、親子間のコミュニケーションが活発化し、思い出づくりにもなることもメリットのひとつです。また、買い出しや準備、後片付けなど、料理にあらゆる手間がかかっていることを知った子どもは、食事の支度をする親への感謝の気持ちを持てるようになります。さらに、親に「手伝ってくれてありがとう」「助かったよ」と言われることで、子どもの自己肯定感が高まる効果も。料理は学力向上にもつながる親子で料理をすると、子どもの成長につながるだけでなく、学習能力向上のきっかけになることもあるようです。・親からの指示を理解しながら料理する→国語への興味関心中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員の小川大介氏は、子どもの国語力を育てる生活習慣として料理のお手伝いを挙げています。小川氏いわく、料理は下ごしらえから仕上げまでの過程を効率よく進める必要があるため、「段取り力」が身につくのだそう。そのため、学習面でも、どのような順番で手をつけるべきか計画を立てる力が養われるのだと言います。また、「野菜を食べやすいようにちぎって」「きつね色になるまで炒めて」などと指示を受けながら料理したり、レシピを読みながら作業をしたりすることも、理解力や語彙力の向上に役立ちます。・計量カップや計量スプーンを使う→算数への興味関心子どもが算数や理科を学ぶ過程に詳しく、弁理士としても活躍する宇治美知子氏は、著書『算数が楽しくなる、できる子になる!算数が好きになる教え方』(三樹書房)の中で、算数を好きになるお手伝いのひとつとして「ホットケーキ作り」をすすめています。料理では、レシピ通りに水や調味料の分量を測る場面がたくさんありますよね。「600ml必要だから、200mlの計量カップで3杯分」などと考えながら料理することで、計算力が向上するなどのメリットがあるのです。・食材について知る→理科や社会への興味関心魚をさばいたり、野菜を根と茎と葉に分けて切ったりしながら、それぞれの部位の名前や役割を知ることは、理科への興味関心が高まるきっかけになります。また、食材の産地や特性を知ることは、社会の勉強で役立つことも多いでしょう。年齢別・おすすめ料理本最後に、年齢に合わせたおすすめの料理本を紹介します。2歳〜「こどもキッチン、はじまります。 2歳からのとっておき台所しごと」石井 由紀子/著 はまさき はるこ/絵(太郎次郎社エディタス)たたく、つぶす、まぜる、むくといった、子どもでも安全に取り組むことができる作業を紹介しています。「2~3歳の子どもが料理に興味を持ち始めたので何かやらせてあげたい」という方や、初めて親子で料理にチャレンジする方におすすめ。また、「包丁はいつから始めるのが良いですか?」など、親の気になる疑問に答えるコラムもあり、レシピ本としても、育児本としても有効な一冊です。 3歳~9歳「子どもと一緒にお料理しましょ!3歳からのお手伝い」上田 淳子/著(文化出版局)双子の息子の母である著者が、3歳、5歳、7歳、9歳と年齢に合わせた料理のお手伝い方法を紹介しています。成長に合わせて、数年間使い続けられるのがうれしいポイント。オーブントースターや電子レンジだけで作れるレシピや「余ったポトフでカレーうどん」など、家庭的かつ実用的なレシピも載っています。 小学生〜「こまったさん」シリーズ寺村 輝夫/著 岡本颯子/絵(あかね書房)「わかったさん」シリーズ寺村 輝夫/著 永井郁子/絵(あかね書房) 30年以上も読み継がれている人気の料理絵本シリーズです。幼少期に読んだことのある親御さんも多いかもしれませんね。「この料理、作ってみたい!」と思わせるような楽しいストーリーに、わかりやすいレシピつき。「こまったさん」は料理、「わかったさん」はお菓子の作り方を紹介しています。お子さんの好きな食べものがテーマになっている巻をプレゼントして、「一緒に作ってみない?」と誘ってみるのもよいでしょう。 小学生〜「ルルとララのお菓子屋さん」シリーズあんびるやすこ/作・絵(岩崎書店)女の子を中心に、現在大人気のシリーズ。お菓子屋さんを開いた小学生のルルとララが、森の動物たちに頼まれてさまざまなお菓子を作っていく、夢いっぱいのストーリーです。毎巻、お話に沿ったレシピが可愛らしいイラストつきで紹介されており、実際にレシピを見てお菓子を作った小学低学年のお子さんからも「わかりやすくて簡単!」と評判。火や包丁を使わないレシピばかりなので、お子さんがひとりで作る際にも安心ですね。 ***親子で料理をすることには、数え切れないほどのメリットがあります。今度のお休みの日には、ぜひ親子で料理にトライしてみてはいかがでしょうか。文/田口 るい(参考)東京ガス ウチコト|【生きる力を育む! 】子どもと一緒に料理するメリット7つこどもまなび☆ラボ|五感が鍛えられるだけじゃない!集中力や思考力も高まるメリットだらけの「親子料理」こどもまなび☆ラボ|小学校の「国語・算数・理科・社会」につながっていく!子どもが料理をするメリットAll About|親子一緒に料理すると向上する!子供の能力3つAll About|子供と一緒に料理!年齢別おすすめクッキング5選All About|子供にお手伝いをさせるメリットと親が心がけるべき事中学受験ナビ|国語力を育てる10の生活習慣|成績UPは国語力が9割(8)宇治 美知子 (2015), 『算数が好きになる教え方―算数が楽しくなる、できる子になる!』, 三樹書房.太郎次郎社エディダス|こどもキッチン、はじまります。 2歳からのとっておき台所しごと文化出版局|子どもと一緒にお料理しましょ!3歳からのお手伝いあかね書房|こまったさんのシチューあかね書房|わかったさんの ふんわりケーキ岩崎書店|ルルとララのおかしやさん
2019年06月30日「うちの子、ウジウジしていて困っちゃう。もっと自信をもってほしいのに……」そう悩む親御さんはたくさんいます。一方で、やったことがないことやできそうにもないことを、自信満々に「できるもん!」と言っては失敗し、「もっと慎重になってほしいのに……。根拠のない自信がありすぎて心配」という親御さんも少なくありません。なさすぎてもありすぎても心配な『根拠のない自信』。今回は、子どもの “自信” がもたらす可能性について、さまざまな角度から考えていきましょう。健やかな心を育むには『根拠のない自信』が必要不可欠!半世紀以上臨床の現場で子どもの成長を見つめ続けた児童精神科医の故・佐々木正美先生は、「子育てでもっとも大切なことは『根拠のない自信』を子どもの心にたっぷりとつくってあげること」だと語っていました。『根拠のない自信』は、精神医学の世界では『基本的信頼感(ベーシック・トラスト)』を意味します。人が人として生きていくためにとても重要な「自分に対しての揺るぎない自信」があれば、たとえ失敗や挫折をしても乗り越えていけるーーそれは誰もが頭では理解しているのではないでしょうか。実際に、社会問題にもなっているひきこもりやニートと呼ばれる人たちは、他者に無条件に受け入れられた経験が乏しく、『根拠のない自信』をもっていない場合が多い傾向が見られるそうです。『根拠のない自信』は一般的に乳幼児期に育みやすく、成長するにつれて身につけることが難しいともいわれています。しかし、学童期以降でも育むことは充分可能です。そのために親が心がけたいのが、「子どもの思いに耳を傾けるよい聞き手でいること」だと、佐々木先生は述べています。いまのお母さん方は、子育てに関する情報をたくさんもっているため、とかく先回りをして「○○をしなさい」と子どもに指示や命令をしてしまいがちなんですよね。その結果、親子関係が逆転し、子どもが親の希望や期待を聞いている例をしばしば目にします。(引用元:HugKum|【今も心に響く佐々木正美さんの教え】子どもに自信をつけるお母さんになってください)本来なら子どもの言葉に耳を傾けなければならないのに、「わが子のために」と先回りして指示を出してしまうなんて本末転倒ですね。甘えやわがままがその都度親に受け入れられると、子どもは精神的な安らぎを蓄積していきます。それはやがて生きる原動力になり、子どもの自立を後押ししてくれるのです。佐々木先生は、「子どもが甘えてわがままを言うのは、自信をつけるための『心の貯金』」という言葉を残しています。甘やかさないように、わがままにさせないように、と気を張って子育てしている親御さんにとって、心がフッと軽くなるのではないでしょうか。自信を育むお手伝いのすすめ『正解標準の子育て』(ダイヤモンド社)の著者であり、日米で20年以上教育現場に携わってきた船津徹さんは、「子育ての90%は『自信育て』に左右されるといっても過言ではない」と述べています。そして「子どもの将来を決めるもっとも大事な要素は『自信の有無』である」とも。なぜなら、困難に負けないチャレンジ精神、挫折を乗り越える気持ちの強さ、円滑なチームプレイを可能にさせる社交性……などのあらゆる要素の根底にあるのは、すべて『根拠のない自信』だからです。『根拠のない自信』とは「親から愛されている」という実感であり、親が100%与えるものです。そのため、子どもが自分の力で獲得することができません。とくに、赤ちゃん時代に比べて肌と肌とのふれあいがぐっと減っていく時期に突入すると、「愛されている自信」が揺らぎ始め、情緒が不安定になる子どもが増えるといいます。そこで船津さんは、1歳~6歳児の『根拠のない自信』を強めるのに最適な方法として「お手伝い」をすすめています。次のことに気をつけながら積極的にお手伝いをさせてみましょう。食卓を拭く、洗濯物をたたむ、など簡単にできるお手伝いを “丁寧な言葉” で頼む。↓終わったら「手伝ってくれて助かったよ、ありがとう!」と、抱きしめて感謝の言葉を伝える。(※注意!)たとえ洗濯物のたたみ方が雑だったとしても、絶対にその場でたたみ直さないこと。ほかの洗濯物を使って「こういうふうにやるともっときれいになるよ」と教えてあげるとグッドですよ!↓子どもは「自分でできた!」という成功体験を積めると同時に、親からのスキンシップと感謝の言葉によって自信を高められる。自信のもとになる成功体験をインプットするには、お手伝いが一番です。お手伝いを通して、人の役に立つことや人から感謝されることの喜びを実感できるだけでなく、思考力や集中力、コミュニケーション能力の発達を促す効果も期待できるでしょう。毎日簡単なお手伝いを頼むだけで、子どもの自信はぐんぐん伸びていきます。自信がありすぎるのも心配?『根拠のない自信』の重要性は充分理解しているものの、一方で自信過剰にも見えるわが子に対して、「もっと慎重さを身につけるべき?」と心配している親御さんもいるのではないでしょうか?でも大丈夫。花まる学習会代表の高濱正伸先生は、「これからの時代、ゼロベースでビジネスを生み出すには『根拠のない自信』が絶対に必要」と述べています。つまり、これからどんどん時代が変化していっても、本質的に物事を考えられる思考力があれば乗り切れる、というわけです。しかし今、親が周りの目を気にして子どもが周囲から浮くことを恐れるあまり、せっかく子どもに備わっている『根拠のない自信』の芽を摘んでしまうこともあるそう。「○○ちゃんはできるのに、なぜあなたはできないの」とか、「あんまり成績良くなかったね」と残念そうにしてしまう。のびのびとさせてあげればいいのに、結果を求めてしまうんです。(引用元:doda “未来を変える”プロジェクト|成功を掴む人に共通する「根拠のない自信」を育む方法 花まる学習会 高濱代表)高濱先生は、「本来子どもは、何にでも興味があるし、好きなことだらけ」といいます。ではなぜそれが、嫌いになったり自信がなくなったりしてしまうのでしょうか?それは「親の言葉」が原因です。子どもは親が放っておくと、むしろ自由にのびのびと好きなことに取り組みます。しかし、命令されたり指示されたりすると、途端につまらなくなり、自己肯定感も低下しはじめるのです。「今日はピアノのお稽古」「次は学習塾」というように、自分のペースとは関係なくやることが決まっていると、喜びを感じるのは「誰かに褒められること」や「親が喜んでくれること」になってしまうでしょう。子どもを心配する気持ちは、親ならば当然です。でもちょっとだけ、子どもが自分で決めたことに口出しせずに、見守ってあげてみませんか?そして、今までできなかったことができるようになったら、はっきりと口に出して褒めてあげてください。言葉と態度で愛情を伝えてあげることこそが、子どもの『根拠のない自信』を大きく伸ばす唯一の方法です。***『根拠のない自信』は、子どもの将来のためにもぜひ身につけさせたい要素だということがわかりましたね。医師で臨床心理士の田中茂樹先生によると、「根拠のある自信」は根拠となる事実がなくなれば消えてしまうものであり、「根拠のない自信」は “理由はないけどなんかうまくいくような気がする” という感覚だそうです。その楽観性は時にしなやかに変化して、いずれ子ども自身が困難を乗り越える手助けをしてくれるでしょう。(参考)HugKum|【今も心に響く佐々木正美さんの教え】子どもに自信をつけるお母さんになってくださいDIAMOND Online|子どものやる気を引き出す「根拠のない自信」の育て方とは?<前編>DIAMOND Online|子どものやる気を引き出す「根拠のない自信」の育て方とは?<後編>船津徹(2017年),『世界標準の子育て』,ダイヤモンド社.doda “未来を変える”プロジェクト|成功を掴む人に共通する「根拠のない自信」を育む方法 花まる学習会 高濱代表DIAMOND Online|根拠がある自信 根拠のない自信「自己肯定感」の源になるのはどっち?
2019年06月29日「ウチの子には、どうも自主性が足りないみたいで……」という悩みをお持ちの方は多いかと思います。自主性とは、子どもが一人立ちし立派な大人になっていくため、なくてはならない要素です。できないことはすぐに親に頼ったり、なかなか自分から勉強を始めなかったりするわが子の姿を見ると、親としてはつい心配になってしまいますよね。本記事では、そもそも自主性とは何なのか、子どもの自主性を伸ばすためにはどうすればいいのか、詳しく解説していきます。自主性とは自主性とは、課題に対して自ら積極的に取り組む姿勢を指します。つまり「人から言われる前に、やるべきことをやる」力のことです。例えば「言われる前に宿題をやる」「ゲームがやりたいけれど、自分の意志で我慢する」というのが、自主性がある行動として挙げられます。自主性の獲得は、学習能力の向上や人格形成に欠かせません。教育方法などを専門に研究する井上史子教授(帝京大学高等教育開発センター)らが2004年に行った「自主性」に関する調査では、「自主性の下位尺度」として以下の10項目が挙げられました。ひとくちに「自主性」といっても、さまざまな要素で構成されていることがわかりますね。独立性:自習のときでもまじめに勉強する.主体性:やって良いことと悪いことをできるだけ自分の考えで決める.自律性:自分で発言しようと思ったら誰にいわれなくても進んで発表する.自発性:遊びやスポーツに自から友達を誘う.自己主張:自分が正しいと思えば仲良しの友達とでも口論する.判断力:自分がやろうとすることが人の迷惑になるかよく考えてからする.自己統制:おしゃべりをしてはいけない時にもついしゃべって注意される(※).責任性:皆で決めたことはどんなことがあっても守るよう努力する.役割認知:皆の役に立つことであれば進んでその仕事を引き受ける.独創性:新しいことを自分で考え出すことが不得意なので人のやったことをそのまま真似る(※).(※この行動をとる傾向が弱いほど、自主性が高いということになる)(引用元:J-STAGE|中学校における自主性尺度項目の開発)自主性と似た言葉に「主体性」があります。ほとんど同じ意味で用いられることも多いのですが、実は自主性と主体性の意味は微妙に異なります。例えば自主性が「言われなくても宿題をやる」状態を指すのに対し、主体性は「宿題がなくても自ら勉強する」状態です。つまり主体性は、自主性の次のステップであると言えます。主体性をもった子どもは、親や先生から課題を与えられなくても、自分でどんどん学びを深めていくことができるのです。とはいえ小学生以下の段階なら、ひとまず自主性を身につけられれば十分合格ラインでしょう。自主性がない子どもとは自主性がない子どもとは、どのような子どもを指すのでしょうか?具体的には以下の特徴が挙げられます。「嫌だ」と言わない「嫌だ」と言わない子は、親の目から見れば一見、いい子かもしれません。しかし「嫌だ」は大切な自己表現の一種。「嫌だ」を言えないということは、自分の意志が弱くなっているか、意志を押し込めてしまっているのかもしれません。嫌だと言えない傾向は「親からどう見られるか」を過剰に気にする優等生タイプの子どもによく見られます。親に自分の言葉を否定されたり、価値観を押し付けられたりした経験から、親が不機嫌になることを恐れるようになったのです。優等生タイプの子どもは、親の顔色をうかがっているうち、親が期待する答えを自分の本当の願望だと錯覚してしまっています。無意識に本当の思いを抑圧しているため、何かのきっかけで突然、感情を爆発させやすいという傾向もあります。言動が受け身例えば子どもに夕食に何を食べたいか聞くと「何でもいい」なんて答えが返ってくることはないでしょうか?子どもの「何でもいい」という言葉には、「(親が食べたいものなら)何でもいい」というニュアンスが含意されています。つまり、答えは人が与えてくれるものであり、自分はそれに合わせていればいい、という思考パターンが身についてしまっているのです。「良い子にしなさい!」「できるようになりなさい!」と高圧的な躾をしていると、子どもは自分の意見を発するのが怖くなり、「何でもいい」という受動性を身につけてしまいます。親の期待に応えられるよう、自己主張を抑えているのです。受け身の言動しかできない子どもに対しては、まず自分の気持ちを把握し、はっきりと主張できるよう促す必要があります。親は、子どもがストレスを感じる躾け方をしていないか、子どもの気持ちを無視してしまっていないか、見直してみましょう。感情表現が乏しい何かを嬉しいと感じたり、悔しいときに泣いたりするのは、立派な自己表現です。感情表現が乏しい子どもは、自分の好き嫌いがわからなかったり、周りの目を気にして自分の思いを抑圧したりといった可能性があります。感情は他者とのコミュニケーションを円滑にするだけでなく、やる気や好奇心の源でもあるため、自主性の発達と深く関係しています。例えば、トライ&エラーを繰り返した末に何かを成し遂げたとき、「やったー!」という強い喜びの感情を覚えますよね。自分で判断し、自分の手で何かをすることによって初めて、喜怒哀楽の感性は磨かれていくのです。もし親が、子どもに試行錯誤させることなく「もっとこうしたほうがいいんじゃない?」「そんなことしたらダメだよ」などと最初から手を貸してしまったら、せっかくの学びの機会が失われてしまいます。子どもの感情表現が乏しくなる原因のひとつは、親の過干渉にあるのです。「『嫌だ』と言わない」「言動が受け身」「感情表現が乏しい」という特徴が子どもに見られた場合は「自主性が弱いんじゃないか?」「自主性を妨げるような育て方をしていないか?」と少し疑ってみましょう。では、自主性のない子どもは将来どうなるのでしょうか?「指示待ち人間」になる自主性のない子どもは将来、自分から行動を起こせない「指示待ち人間」になってしまうかもしれません。判断力や実行力がない「指示待ち人間」は、世の中で活躍することが難しそうです。例えば、会社の上司や先輩は、学校のように「あれをやれ、これをやれ」といちいち指示をくれるわけではありません。一人前の大人として働くには、指示を待たずとも何をやるべきか判断できる能力が求められるのです。特に、人工知能(AI)が発達しつつある現代においてはなおさらです。「指示通りに動く」ことが求められる作業は、近い将来、ほとんどが人工知能に取って代わられてしまうでしょう。これからの時代には、自主的にやるべきことを考え、「自ら学ぶ」「自ら考える」姿勢を持つことがいっそう重要になってくるのです。自主性のない人間は、そのような時代を生き残っていけるのでしょうか。失敗を人のせいにする自主性のない子どもは、他人にばかり判断を委ねるので、すべての物事が「他人事」になっていきます。大事なことは人任せにし、言われたことしかやらないという姿勢は、学生時代にはまだ通用するかもしれませんが、社会に出るとそうはいきません。仕事においてもプライベートにおいても、自分から行動を起こし、行動の結果に責任を持つ必要があるのです。自主性がないままだと、責任感がなく、当事者意識の希薄な人になってしまう恐れがあります。失敗を他人のせいにし、チャレンジから逃げてばかりいる人にとって、社会の中で活躍することは困難です。子どもを社会で活躍させたいのなら、幼いうちから自分で選択・判断する経験を積ませて自主性を養うことが必須です。人に合わせてばかりになる社会生活を送るにあたって、自主性は欠かせません。会議で意見を述べたり、率先して仕事を進めたりなどはもちろんですし、自分から積極的にならない限り人間関係を築くこともできません。自己主張をして初めて、社会はその人の存在を認識し受け入れてくれるのです。そのため、自主性のない子どもは将来、社会から置いてけぼりにされたり、孤独感を感じたりすることになってしまいます。相手の期待に沿うコミュニケーションしかとれず、うまく自己表現ができなくなるかもしれません。自主性というものが、子どもの自立にとっていかに大切なステップか理解していただけたでしょうか。自主性を重んじる教育とは子どもの自主性を重んじた教育を施すには、なるべく子どもに対する束縛を少なくし、自分の力で物事に取り組ませましょう。かわいそう、まだ早いから、と何でもやってあげていると、いつまでも子どもの自立は促せません。あくまで、子供の意志や興味を最優先にし、親はそれを陰でサポートするだけ、という形がベストなのです。例えば、時間がかかっても服は自分の力で着てもらう、こぼしたり汚したりしてしまうとしても自分でご飯を食べさせるなど、やれることはできる限り任せるようにしましょう。子供の自主性を重んじた代表的な教育メソッドとしては、「モンテッソーリ教育」があります。モンテッソーリ教育は医師で教育者だったマリア・モンテッソーリが発案した方法論で、「子供には、自分自身を育てる力が備わっている」という教育方針のもと、子供の自発的な学びを尊重しています。モンテッソーリ教育に特徴的なのが、専用の「教具」(ブロックやタイルなど)です。教具で遊ぶことを通じて子どもの好奇心が育まれ、遊んだ後に自分で片づけさせることによって、自立心が高められます。ほかにもモンテッソーリ教育では、指導する際には決して命令口調を使わない、興味が向いたことを満足いくまでやらせてあげるなど、子どもの自主性を育てる保育を徹底しています。子どもの自主性を高める方法では、子どもの自主性を育む実践的な方法を見ていきましょう。口出しをせずに見守る自主性を育てるには、子どものやることになるべく口出ししないようにしましょう。親があれこれと先回りしてしまうと、子どものせっかくのやる気が奪われ、自主性が育ちにくくなってしまいます。わが子のためと思うとつい干渉したくなってしまいますが、ぐっとこらえてみてください。ただし、子どもに対し「無関心」になれ、というわけではありません。子どもから完全に目を離すのではなく、何か危険が迫ったときにすぐ飛び出せるよう、きちんと見ていてあげることが大切です。親の見守りがあってこそ、子どもは安心して自主性を伸ばすことができるのです。自分で考えさせ、選ばせる自主性を育む方法の2つめは、なるべく子どもに、自分で考えたり選んだりする機会を与えることです。例えばおやつの時間には、単にお菓子を渡すのではなく「どっちがいい?」とあえて複数から選ばせる。また、子どもが「わからない」「どうやればいいの?」などと頼ってきたときは、すぐ答えを教えずに「あなただったらどうする?」と思考を促す、といった小さなことを積み重ねましょう。『世界最高の子育て――「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』の著者・ボーク重子氏によると、親は子どもに決して意見を押し付けることなく、あくまでも自由に考えさせることが、自主性を伸ばすためには何より大切なことなのだそうです。ニュースについて子どもの考えを聞く子どもが自主性を持って学ぶようになる方法としては、「毎朝、ニュースについて意見を交わす」というものがあります。小学生以下の子供にはまだ早い、と思われるかもしれませんが、考え、興味を持ってもらうことそのものが重要なのです。『家でできる「自信が持てる子」の育て方』の著者で教師の沼田晶弘氏は、自身が担当したクラスで毎朝、政治問題を取り上げています。「この問題はどうしたら解決できると思う?」などと問いかけると、子どもたちは知識がないなりに考え、自分なりの答えを出そうとするそうです。子どもを子どもと侮らず、対等に接することもまた、自主性を身に付けさせる秘けつなのですね。子どもの興味を肯定する自主性を育てる最後の方法は、子どもの興味を肯定してあげることです。興味を持つということは、何か特定のことをやりたい、特定の何かについて知りたいという欲求が芽生えているということ。その興味が親に肯定されると、子どもは自分自身の存在まで肯定されたような気になり、やる気はますます高まります。子どもの興味を肯定するだけでなく、「カマキリを捕まえられてすごいね。じゃあ図鑑で調べてみようよ」など、子どもの興味がさらに広がるような声掛けをしてみましょう。例えば、「図鑑に熱中するうちに漢字が覚えられた」というように、興味を追求することで、ほかの学習分野にも良い影響が及びます。自主性の向上を邪魔しないよう、子どもの興味は自由に伸ばしてあげましょう。***子どもの自主性を育む方法を解説しました。よかれと思ってやったことでも、過干渉は子どもの自主性や個性の発達を妨げてしまいます。子どもをコントロールしようとするのではなく、適切な距離感を保って接してみてくださいね。文/佐藤舜(参考)J-STAGE|中学校における自主性尺度項目の開発こどもまなび☆ラボ|心理学者が指摘する 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2019年06月28日上の子供がまだ小さかった頃、日本に住む私たちのところへ、イギリスの義父母から一冊の本が届けられました。ジャン・ピエンコウスキーの Haunted House (日本語版:『おばけやしき』)という、飛び出す絵本です。その年にイギリスで出版された絵本の中から特に優れた作品に与えられるケイト:グリーナウェイ賞を1979年に受賞して以来、長い間愛されてきました。「日本語の絵本には興味を示すのだけれど、英語のものにはだんだん興味がなくなってきたみたいで……」と相談した後のことでしたから、心配してくれたのかもしれません。子供が一人でも遊べるポップアップ絵本の魅力義母は長いことイギリスの学校で、様々な理由で読書が苦手な子供たちの支援をしていました。そもそも英語が第一言語でない子供や、なんらかの識字障害を抱えている子供もいたようですが、そうした経験から、いろいろ考えて選んでくれたようです。「本ってね、本当に読めない子は、小学校に上がった時点で、どちらから開くとか、一ページずつめくるとか、そういうこと自体わかっていなかったりするのよ」まさか、と思いましたが、確かに縦書きの日本語の本と横書きの英語の本では、開き方が違います。移民の多いイギリスで、小学校に上がってくる子供たちの中に、一定人数、英語の本そのものを見たことがない子供がいてもおかしくはないのでした。「だからね、一人で開いて遊んでも楽しそうな絵本を選んだわ」子供に本を与える時に、私はついついお話の中身だけに気をとられていましたが、義母の視点には目からウロコが落ちる思いでした。現に上の子が英語の本を嫌がっていた時期も、この本だけは何度も手にとって、ボロボロになるまで眺めていたものです。まずは本の形をしたものに慣れさせることからまずは本の形をしたものに慣れさせること。そういえば、義母はよく子供と一緒に料理の本を眺めては、目次から食べたいお菓子を選ばせていました。「目次や索引をどうやって使うかについて知っているだけで、ずっと敷居が低くなるでしょう?」読み聞かせに適した素敵な本もたくさんありますが、むしろ本を「使って」様々な体験ができるインタラクティブな絵本の方が、子供が本に苦手意識を持ち始めた時には良いようです。さらに「読み聞かせ」においても、単純に親が読んで子供が聞くだけでなく、親子の対話を誘発するような仕掛けがされた絵本が数多くあります。今回は、受動的にただ読むだけでなく、能動的に楽しめるインタラクティブな絵本をご紹介しましょう。どこで何がしたい? 「親子の対話」を引き出す絵本Haunted House に続いて義母から送られた本書、You Choose もその一冊です。見開きに様々な絵があります。「どんな家?」と書かれたページには、様々な家が。「何が食べたい?」のページには、いろいろな料理が。文章は驚くほど短く、カラフルなイラストがぎっしりつまっています。単に読み聞かせるのでなく、むしろ、子供が指をさしながら「これがいいよ、だって……だから」と、話をすることが主眼の絵本です。日本語版は出ていませんが、使われている英語は単純なものですから、家庭で子供と一緒に指さしながら、日本語で話してみても楽しいかもしれません。ナンセンスな組み合わせが面白い!上下に分かれた絵本こちら、Ketchup on your Corn Flakes も英語の絵本です。先ほどと同じイラストレーターが挿絵を担当しています。絵本は実は上半分と下半分に分かれていて、「○○に△△はいかが?」というパターンを踏んでいきます。「コーンフレークスに牛乳はいかが?」でしたら普通の文ですよね。ところが、「コーンフレークスにケチャップはいかが?」「レモネードに歯磨き粉はいかが?」というようなナンセンスな文と挿絵が出来上がってしまうのが、この絵本の面白いところです。4歳ぐらいの頃、上の子がお腹を抱えて笑い転げていたことを覚えています。これもまた、一人でパラパラめくっては笑っているのを何度か見ることになりました。使われている英語は非常に簡単なものですし、絵がほとんどですから、日本語で読んでも面白いかもしれません。子供にも役目がある! 参加型の読み聞かせ絵本下の2冊は「読み聞かせ」に特化した本です。けれども、ただの読み聞かせではありません。子供が反応して返事をすることが組み込まれているのです。本書『ハトにうんてんさせないで』(Don’t Let the Pigeon Drive the Bus!)は2003年に、アメリカで出版された優れた絵本に与えられるコールデコット賞の次点となり、コールデコットオナー賞を受賞しています。最初のページをめくると、バスの運転手さんが、ちょっと車を離れるから見ててね、と読み手に頼みます。そして言うのです。ハトに運転をさせないでね、と。次のページからハトが出てきて、読み手に「お願いだから運転させて」と頼みます。あの手この手でおねだりをしてくるハトに、「ダメ!」「絶対ダメ!」と言うのが子供の役目。ささやかな仕掛けですが、これは盛り上がります。普段「ゲームはだめですよ」「甘いものはダメですよ」などと色々なことを禁止されている子供にとっては、あの手この手で(それこそ小さな子供のようなロジックで)バスを運転したがるハトに「ダメ!」と言うこと自体が、とても楽しいようなのです。将来、絵のない本を読む下準備として最適な絵本『えがないえほん』(The Book With No Pictures)は、日本でも20万部を突破した、大人気絵本です。個人的には、子供がより真面目な、「文字ばかりの本」をいつか手に取るときのために、これ以上に素晴らしい下準備はないと思っています。何度か下の子供の小学校にボランティアで読み聞かせにもいきました。有名なアンデルセンの物語と同じ題名ですが、内容は全く違います。『ハトにうんてんさせないで』同様、子供がダメ出しをするのが楽しい、読み聞かせ用の一冊です。文字通り、絵の全くない絵本で、絵がない本なんて真面目でつまらなそうに見えるでしょう?という問いかけから始まります。でもね、本っていうのは、書いてあることは全部読まなくちゃいけないものなんだ……。実はこれは、大人が普段だったら出さないような馬鹿げた音を出したり、馬鹿げたことを言ったりするのを子供が大喜びで聞く、という趣旨の絵本なのです。途中に何度か「ねえ、もう読むのをやめていい?」と尋ねなければならない箇所があります。「だめー!」と大声で答える子供たちの嬉しそうなこと。この本をある年のクリスマスにプレゼントされて以来、しばらく息子に「どれを読んであげようか」と聞くたびに、本書をリクエストされて、苦笑したものでした。著者が実際に子供の前で読み聞かせをしている動画もあります。子供たちの食いつきの良さにきっと目を見張るはずです。実は読み聞かせるのはなかなか疲れる本なのですが、この経験が「絵のない本」への子供の抵抗感を減らしてくれるのであれば、万々歳です。インタラクティブな絵本は、普段本好きでない子も虜にしてくれる本の面白さや楽しさを多角的に子供に紹介する、こうしたインタラクティブな絵本は、普段だったらそれほど本に興味を示さない子供たちの心をも鷲掴みにしてくれます。子供たちがこうした本を愛するのはほんの数年間のことですが、ゲームや動画といった競合メディアが多い現在の子供たちの間で、インタラクティブな本が非常に愛されていることに、ホッとすると同時に嬉しくもなるのです。(参考)Jan Pienkowski, Haunted House, (Walker Books, 2005)ジャン・ピエンコフスキー 著, でんでんむし 訳(2005),『おばけやしき』, 大日本絵画.Pippa Goodhart, Nick Sharratt, You Choose, (Puffin, 2018)Nick Sharratt, Ketchup on Your Cornflakes?, (Scholastic., 2006)Mo Willems, Don’t Let the Pigeon Drive the Bus!, (Disney Book Group, 2003)モー・ウィレムズ 著, 中川 ひろたか 訳(2005),『ハトにうんてんさせないで。』, ソニーマガジンズ.B. J. Novak, The Book With No Pictures, (Puffin, 2016)B・J・ノヴァク 著, 大友剛 訳(2017),『えがないえほん』, 早川書房.
2019年06月28日