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子どもが受けている国語の授業の内容は把握していても、その「狙い」まで理解しているという親御さんは少ないはずです。現在、国語の授業はどんな狙いを持っておこなわれているのか――。全国国語授業研究会会長や教育出版国語教科書編著者も務める筑波大学附属小学校の青木伸生先生に、その狙い、家庭教育にも取り入れることができる勉強法を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)小学校低学年、中学年における国語授業の狙い小学校の国語の授業は、学年ごとにそれぞれ「狙い」が決まっています。現在の学習指導要領でいうと低学年、中学年、高学年でわかれていて、低学年の狙いは「順序」というものです。国語の勉強をはじめたばかりの低学年の場合、まずは物語や説明文の順序をとらえて読むということが出発点になります。物語なら、話のなかにどんな人が出てきたのか、そしてその人たちはどんな順番で出てきたのかといったことをとらえることが、文章の理解には欠かせません。また、説明文なら、どんな話がどういう順番で書かれているのか、「はじめに」「次に」「終わりに」といった説明のプロセス、組み立てを意識できる必要がある。文章のなかに出てくる言葉の順番やつながりを見つけることが、文章を理解するためのはじめの一歩なのです。そして、中学年になると、その狙いは「中心点」というものに変わります。これは、段落のなかの要点や、文章全体で筆者がいちばんいいたいことはどこに書かれているのか、物語なら山場の場面はどこかというような、大事なところを見つけようというものです。「音読」が子どもにもたらすさまざまな効果小学校の国語の授業というと、「音読」を思い浮かべる人も多いでしょう。大人になって音読することはほとんどないと思いますが、小学校では定番、必須の内容ですよね。もちろん、音読にも重要な狙いがあります。これは、とくに低学年の子どもたちにとって大切なものです。その狙いのひとつは子どもたちの「体づくり」。ちょっと意外に思うかもしれませんね。音読では、しっかり両足を床につけておなかから声を出すように指導します。そうすることで、まだ体が小さい低学年の子どもの体幹をつくるということを意識しているのです。また、聞き手を意識させて読ませることで、「声の大きさの調整」をできるようにさせることも重要な狙いです。低学年の子どもたちの場合、近くにいる、遠くにいるといった聞き手のちがいによって声の大きさを調整することがまだ上手にできません。声の大きさのほか、発する言葉の歯切れの良さといったものも含めて、聞き手に的確に声を届ける練習をさせるのです。それから、「日本語のリズムをつかむ」ことも狙いのひとつ。低学年の国語の教科書には谷川俊太郎の『かっぱ』のようなリズム良く読める詩が多く登場します。それを声に出して読むことで、言葉のリズム、日本語の響きを実感しながら体に入れていくわけです。また、音読すれば自分の声を自分で聞くことになりますよね。目で文字を追うだけではなかなか文章を理解できない低学年の子どもも、言葉を目で追いながら耳からも入れることで理解を深めることができるのです。親の問いかけで子どもの読解力を高める子どもの国語力のベースを固めるためにも、とくに低学年、中学年のうちは家庭でも子どもに音読をやらせてみてください。それにあたって、ひとつ親御さんにアドバイスをしておきましょう。物語は会話文とそれ以外の地の文で構成されています。そのうち、会話文の読み方が、子どもがどれだけ登場人物の気持ちを理解しているかの指標になるのです。音読できたことを褒めながら、「さっきのセリフをとっても大きな声で読んだのはどうして?」とか「小さな声で読んだのはどうして?」といったふうに問いかけてみてください。子どもは自分なりに考えて、「すごくうれしそうだったから」「寂しそうだったから」といったふうに答えるはずです。本人は無意識のうちに声の大きさや読む調子を変えていたかもしれません。でも、その振り返りをさせることが、登場人物の気持ちを考えさせ、物語の読解力を高めるということにつながるのです。「書き写し」は範囲ではなく時間を決めるまた、音読と同様に家庭でもできることとしては、「書き写し」もおすすめです。わたしが低学年、中学年の子どもに出す宿題は音読と書き写しが中心です。それだけわたしも重視しているものだということです。書き取りの効果は、先にお伝えした「自分の声を聞いて理解を深める」という音読の効果と似たものです。国語の教科書でも子どもが好きな本でもいいので、ある作品の書き写しをする。手で書いて写すうち、「この言葉はさっきも出てきたな」とか、「さっきの言葉と表現が変わったな」といったふうに子どもにはたくさんの発見があります。目で文字を追っただけでは感じとれないものが明確に見えてくるのです。ただ、書き写しをさせる場合には、「今日はここからここまで」と範囲を決めることは避けましょう。そうしてしまうと、文章を読んだり書いたりすることが苦手な子どもにとってはただただつらい作業になってしまいます。勉強を毛嫌いするようにもなりかねません。そうではなくて、「1日3分」というふうに時間を決めるのです。3分たったら、たくさん書き写しをしていても、全然書けていなくても終わり。これが書き写しを長続きさせるコツです。しかも、これには別の効果も期待できます。範囲を決めた場合、その範囲を書き写さなければ終わりませんから、子どもにとってはただ書き写すことが目的になってしまう。結局、機械的に書くことになって、中身が頭に入っていかないのです。一方、時間を決めた場合は、どれだけ書き写すかは自由ですから、たとえ短時間でも集中することになります。家庭での音読と書き写し。これらをやるだけで、その後の国語の成績は大きくちがってくるはずです。『青木伸生の国語授業 3ステップで深い学びを実現! 思考と表現の枠組みをつくるフレームリーディング』青木伸生 著/明治図書出版(2017)■ 筑波大学附属小学校教諭・青木伸生先生 インタビュー一覧第1回:子どもの主張はくみ取らなくていい!親だからこそできる、我が子の国語力アップ法第2回:「宿題の定番」になるのも頷ける。意外だけどすごく重要な「音読」の4つの狙い第3回:「文字を見るのも嫌!」子どもを国語嫌いにさせないために、親がすべき低学年からの工夫(※近日公開)第4回:作文力アップも期待できる!文章の読み方の新習慣「フレームリーディング」とは(※近日公開)【プロフィール】青木伸生(あおき・のぶお)1965年生まれ、千葉県出身。東京学芸大学卒業後、東京都の教員を経て現在は筑波大学附属小学校教諭。全国国語授業研究会会長、教育出版国語教科書編著者、日本国語教育学会常任理事、筑波大学非常勤講師なども務める。近年はフレームリーディングの専門家としても注目を浴びる。『ことばの事典365日』(小峰書店)、『青木伸生の国語授業 フレームリーディングで説明文の授業づくり』(明治図書出版)、『青木伸生の国語授業 フレームリーディングで文学の授業づくり』(明治図書出版)、『ゼロから学べる小学校国語科授業づくり』(明治図書出版)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月29日ある日曜日のこと、テニスのレッスンから帰って来た下の子供が「何をしようかー」と言いました。私はちょっと困ってしまいます。彼がこう言うときは決まって、インターネットで動画を見たいか、コンピュータゲームがしたいのです。親としては、8歳の子供に、長時間コンピュータのスクリーンを見させたくはありません。自転車を持って近所の公園に行けば、たいていご機嫌ですが、外は雨。残念ながらそういうわけにもいきません。興味をひきそうなボードゲームはありますが、家事もたまっていて、今すぐ彼のそばに座って一緒に遊んであげるわけにもいきません。「そうねえ、テレビを見るのはどうかしら」「えー、テレビー?」「デイヴィッド・アテンボロー(イギリスの有名な自然番組のプレゼンター)の番組を録画してあるわよ。それをつけてあげましょう。嫌だったら日本語のアニメのDVDもあるわよ」言っているうちになんだかおかしくなってしまって、笑い始めてしまいました。新しいメディアが登場するたび、私たちは不安を抱く私が小さい頃は、子供にテレビを見せる親が大きな問題になっていました。マンガも子供の教育上良くないと散々言われていたものです。けれども自分が親になった時には「インターネットは子供に良くないからテレビを見せよう」と考えているのです。マンガに至っては近年、日本を代表する表現芸術の一つとしての地位を世界的に確立しつつあります。今年は大英博物館で日本のマンガの展示会も開かれていますから、みんなで出かけようと話しているところです。ネットで動画を見ているよりは、日本語でマンガを読んでいてくれた方が嬉しいくらいです。メディアの理論ではしばしば指摘されることですが、新しいメディアが登場するたび、私たちは不安を抱きます。インターネットの前は、ファミコンでした。その前はテレビ。ラジオやマンガ、映画も、登場してしばらくの間は問題視されました。そういったメディアは、新たなメディアが他に登場するにつれ、受け入れられるようになっていきます。新たなメディアに対する不安が、かつてあれほど問題視されたメディアを「安全なもの」として受け入れさせるのです。よく言われることですが、自分がやっているのに気づくと苦笑せざるを得ませんでした。自分が無知なモノには不安を抱いてしまいがちけれど、それはある意味仕方のないことです。たとえば本に関しては、私はどんなジャンルが質が良く、どんなジャンルが問題含みなのか、かなりはっきり知っています。ですから「本を読む」と子供が言ったとき、「何を読むのか」の方に意識がまずいきます。子供の教育に関心がある親御さんの多くはそうなのではないかと考えます。けれどもインターネット上の動画チャンネルについては、私は本当に無知です。2言語話者の子供を育てていく上で、ネット上の読み聞かせ動画はとても便利でしたから、ひょっとしたら似たような教育観を持っている親御さんよりは動画に対してオープンかもしれませんが、それでもどのような動画チャンネルが質が良く、どのようなチャンネルが問題含みなのか、把握しているとは言えません。メディアとの付き合い方を、子供は学ばなくてはならないけれど、一つ言えることがあります。好むと好まざるとにかかわらず、新しいメディアは、やがて社会における表現の主流になる可能性が高いですし、そういったメディアとの付き合い方を、ある時点で子供達は学ばなくてはならないだろうということです。今すぐであるかもしれませんし、もっと先のことかもしれません。けれど、どこかで彼らは、情報収集するにあたって、新しいメディアと向き合わなくてはならなくなるはずです。新しいメディアの登場に対して、今まで通りの識字教育では不十分なのではないか、という問題提起は、もうかなり前になされています。何冊もの本が日本語にも翻訳されている児童文学研究者、ピーター・ハント教授は、2002年の段階ですでに、新たなメディアの形は児童小説の物語のあり方そのものを変えて来ていると指摘しています。学校での識字教育がそれに対応できているかについて、彼は疑念を呈します。これからの子供達に求められている「トランスリテラシー」とは同様に2013年に児童文学研究で国際グリム賞を受賞したキンバリー・レイノルズ教授も、文章だけに限らず様々なメディアを包括的に理解することのできる能力、つまり「トランスリテラシー」こそが、これからの子供達に求められているのではないか、と提言しています。メディアの壁にとらわれず、必要な情報を収集し、様々な形で発信していく能力と言い換えることもできるかもしれません。細かい専門的な議論にはここでは立ち入りませんが、現在の子供達を囲むメディアと物語の環境は、たしかにある意味、様々なメディアの特性を子供と考えるのにとても適していると言うことはできます。大人向けの物語や小説に比べ、子供向けの物語の方が、多角的にメディアミックスが行われるという指摘もなされています。代表例は『ポケモン』! 現代の子供を取り囲むメディアミックスかつては「本→映画」ないしは「本→テレビ」といったような比較的一方向のメディア展開が多くありました。ベストセラーになった小説や児童書、絵本などが、ドラマやアニメーションとして動画化されるという形ですね。たとえば『アルプスの少女ハイジ』という本が先にあり、それがテレビアニメ化される。あるいは、『白雪姫』という有名な物語があり、それがアニメーション映画になる、といった形です。けれど今の子供達を取り囲んでいるメディア環境は、それよりもかなり複雑で包括的なものです。コンピュータゲームのソフトとして開発された世界観を元に、マンガが描かれ、アニメ化され、さらにノベライズされて小説になったりもします。『ポケットモンスター』シリーズなどを思い浮かべていただければ良いと思うのですが、単純な「物語の映画化」や「物語のゲーム化」ではありませんよね。それぞれのストーリーラインが緩やかにつながりながらも、同じ現象を異なるメディアから異なる視点で見ているのです。ごく小さい頃からテレビのアニメで親しんだ登場人物が、絵本の主人公にもなっているかもしれません。夏休みには、その主人公が活躍する映画を見に行くこともあるでしょう。同じ登場人物が出てくるゲームもねだるかもしれませんね。まさに、一つの物語を多角的に理解するためのヒントがそこには多くあります。映画や動画、テレビにゲーム、そして本。それぞれの媒体には、どんな違いがあるのか。ちょっと目を向けるだけで、様々な媒体の性質の違いについて、新たな気づきを得やすくもなっているのです。実は1990年代からの日本のポケモンシリーズを、レイノルズ教授はメディアミックスの重要な例としてあげています。日本の子供達はある意味、様々なメディアを行ったり来たりしながらの情報収集方法を、学びやすい環境にいるのかもしれませんね。多様なメディアに触れ、その特性を子供と一緒に考えようどんどん変化していく、子供達をめぐる情報環境。不安を感じるのは、ある意味当然のことでもありますが、同時にこれは大きなチャンスでもあるのかもしれません。縦横無尽に広がるメディアの全てを十把一絡げに取り扱うのではなく、様々なメディアの特性を子供達と一緒に考えていくこと。一つのメディアに偏るのではなく、一緒に多様なメディアに触れながら、子供達と一緒に語り合っていくこと。文章表現だけのリテラシーであればお手の物ですが、動画や、スクリーン上の表現については、私はまだまだ能力不足です。試行錯誤をしながらも、より良いバランスを考えていくべき場所に今、私たちはいるのではないかと考えています。(参考)Hunt, P. (2002). ‘Futures for Children’s Literature: Evolution or radical break? ‘ , Cambridge Journal of Education, 30(1), 111–119.Reynolds, K. (2011). Children’s literature : a very short introduction. (Oxford: Oxford University Press)
2019年05月28日我が子には、あらゆる教科を得意になってほしいというのが親の理想でしょう。でも、多様化が進むこれからの社会に出たときに求められる力の筆頭としてコミュニケーション能力が挙げられるいま、それにつながるであろう「国語力」をとくに伸ばしてあげたいと考える親御さんも増えています。全国国語授業研究会会長や教育出版国語教科書編著者も務める筑波大学附属小学校の青木伸生先生に、まずは「そもそも国語力とはなにか」というお話から伺いました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)国語力はあらゆる学習のベースになる国語力とひとことでいっても、いろいろな階層があると思います。実生活のなかでの国語力というと、文章の内容をきちんと把握する力、自分の伝えたいことを表現できる力などになるでしょうか。小学校における国語力にもいくつかの要素が含まれます。たとえば、物語のテーマを自分なりに感じ取れる力。説明文なら、筆者のいいたいことをつかみ、それに対して読者として自分の考えを返す力。また、ある程度の語彙を持ち、どんな言葉をどんな場面で使えばいいかという言語感覚を身につけているかどうかも小学生にとっての国語力に含まれるでしょう。これらの国語力は、とくに小学校低学年から身につけていくことがとても重要です。というのも、国語以外のあらゆる教科でも学習のためのベースとなるのが国語力だからです。国語力が欠けていると、自分の意見をわかりやすく発表できませんし、重要な内容をノートにまとめることもできません。理科の実験授業でも、実験結果をまとめ、それを基に考察する際に必要となるのは国語力です。また、国語と対極にあると思われがちな算数であっても、国語力がなければ文章題で述べられている状況をイメージできないということにもなります。問題のなかで「リンゴが3個あって、そのうち2個を太郎君が食べて、花子ちゃんがミカンを5個持ってきた」というような文章があったとして、描かれている内容をきちんと把握してその状況を思い浮かべられなければ問題を解くどころではありませんよね。本当なら算数を得意教科にできる能力を持っていて、ドリルのような単発の計算は得意な子どもであっても、国語力が伸び悩んだがために本来の能力を発揮できないということにもなりかねないのです。国語力アップのために読書で得られる重要な要素国語力はあらゆる学習のベースとなります。そうすると、親御さんなら子どもの国語力を伸ばしてあげたいと考えますよね。もちろん、小学校でもわたしたち教員はさまざまな工夫を凝らして子どもたちの国語力アップに努めています。でも、家庭でもできること、それから親御さんだからこそできることもあるのです。ひとつは「読書」です。ただ、残念ながら、テストで高得点を取るためという意味での国語力と読書はそれほど直接的にはつながるものではありません。テストというものは、問われたことに対して的確に答えていくという対応が求められます。「文章のここがポイントで、このことを聞かれている、だからこう答えればいいんだ」というようなある種のテクニックが必要とされますから、一定の練習をしなければなりません。ですから、とにかく読書が好きでたくさん本を読んでいる子どもであっても、意外とテストでは高得点を取れないということもあるのです。でも、読書をしていれば、国語力を高めるための重要な要素を得られることは間違いありません。そのひとつは語彙です。それから、物語の展開のパターンや表現技法といったものも子どものなかにどんどん蓄積されていきます。あとは、それらをどう使えば実際のテストで高得点を取れるのかというところをわたしたち教員が授業で教えてあげれば、一気に成果を出すことができるはず。そのためにも、読書好きになるように家庭でもできる限りの工夫をしてほしいですね。親子の会話で子どもにたくさん考えさせるそして、子どもの国語力アップのため、「親御さんだからこそできること」が「親子の会話」です。なぜ親子の会話が重要かというと、教員と子どもの場合だと、子どもの言葉を教員がくみ取ってしまうことが多いからです。授業をスムーズに進めるためといったこともあって、子どもの言葉がちょっとあいまいであっても、教員は「こういいたいんだね」と、子どもがいわんとしていることを整理してしまうのです。でも、親ならそういうことをする必要はありませんよね。子どもの言葉が本当にわからなければ、「なにをいっているかわからないよ」とストレートにいってあげられます。そうすると、お父さんやお母さんに自分のいいたいことを伝えるために、子どもは言葉を探したり、選んだり、いい方を変えるなどして必死に考えることになる。子どもの国語力アップのためには、そういう場面がとっても大事なのです。逆に、子どもに成長が見られてすごくわかりやすい表現をしたという場合なら、「いまのいい方はすごく良かったよ」といったふうに褒めてあげてください。そうすれば、その表現が子どもに定着していくことになるはずです。ひとつ注意をするなら、親だからこそ教員以上に子どものいいたいことをくみ取れてしまうということ。他人ならなにをいっているかわからない、子どもがぼそっとつぶやいたようなことも、親ならわかるということは多いものです。そこで、「ああ、こういいたいのね、こうしてほしいんだね」とくみ取ってしまうと、先に伝えたような子どもが必死に考えるということが起こりません。そういう意味では、子どもの国語力を伸ばしてあげたいと思うのなら、「ものわかりの悪い親」になるという考えが必要かもしれませんね。『青木伸生の国語授業 3ステップで深い学びを実現! 思考と表現の枠組みをつくるフレームリーディング』青木伸生 著/明治図書出版(2017)■ 筑波大学附属小学校教諭・青木伸生先生 インタビュー一覧第1回:子どもの主張はくみ取らなくていい!親だからこそできる、我が子の国語力アップ法第2回:「宿題の定番」になるのも頷ける。意外だけどすごく重要な「音読」の4つの狙い(※近日公開)第3回:「文字を見るのも嫌!」子どもを国語嫌いにさせないために、親がすべき低学年からの工夫(※近日公開)第4回:作文力アップも期待できる!文章の読み方の新習慣「フレームリーディング」とは(※近日公開)【プロフィール】青木伸生(あおき・のぶお)1965年生まれ、千葉県出身。東京学芸大学卒業後、東京都の教員を経て現在は筑波大学附属小学校教諭。全国国語授業研究会会長、教育出版国語教科書編著者、日本国語教育学会常任理事、筑波大学非常勤講師なども務める。近年はフレームリーディングの専門家としても注目を浴びる。『ことばの事典365日』(小峰書店)、『青木伸生の国語授業 フレームリーディングで説明文の授業づくり』(明治図書出版)、『青木伸生の国語授業 フレームリーディングで文学の授業づくり』(明治図書出版)、『ゼロから学べる小学校国語科授業づくり』(明治図書出版)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月28日子どもの頃は算数が嫌いで、「数字を見るだけでげんなりした……」という人も多いかもしれません。そういう自らの実体験から、「子どもも算数嫌いになるのではないか?」と心配している親はかなりの割合でいるといいます。「教育の鉄人」とも呼ばれ、カリスマ教師として知られる、東京の公立小学校教諭・杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)先生は、「国語と算数があらゆる学習のベース」だと語ります。では、どうすれば子どもの算数の力を伸ばしてあげられるのでしょうか。子どものやる気を引き出す独自の授業で注目される杉渕先生に、その秘策を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)四則計算が算数を学習するためのベースになる学校での勉強がはじまる小学校で、とくに重要な教科は国語と算数です。なぜなら、それらが理科や社会などあらゆる他の教科を学習するためのベースとなるからです。では、子どもの算数の力を伸ばしてあげるにはどうすればいいのでしょうか?あたりまえのことですが、足し算、引き算、掛け算、割り算の四則計算をきっちり身につけることです。算数における四則計算は、ある意味で他の教科に対する国語と算数の存在に似ています。というのも、四則計算がしっかりできなければ、その先にある算数の領域、応用問題に進めないからです。つまり、四則計算は算数を学習するためのベースといえます。応用問題に臨む場合、たとえその考え方というものを理解できたとしても、四則計算がきちんとできなければ解答にたどり着けずにつまずいてしまいます。逆に、必要な四則計算がぱっとできるのなら、考えることに集中できる。だからこそ、応用問題の理解も深まりますし、その面白さを感じることもできるのです。スポーツだって同じではないでしょうか。たとえば、テニスをやるにも、素振りすらまったくしていないような基礎ができていない状態なら、まともにボールを打ち返せないでしょう。ボールをラケットで打つスポーツなのに、空振りばかりしていては面白いはずがありませんよね。最初に「できない」ということをわからせるでも、じつは逆の考え方もできます。まったくテニスの経験がない子どもにあえていきなり試合をさせてみるのです。もちろん、まともにボールを打ち返せないのですから、子どもは面白くありません。そこで、「きちんとボールを打てるようになったら試合が面白くなるよ」とリードしてあげて、基礎練習をさせる。子どもは試合の面白さを味わいたいがために基礎練習に一生懸命取り組むことになるはずです。それが、テニスをやりたいといっている子どもに最初から基礎練習ばかりさせてしまうと、「僕はテニスをやりたいのに」と、子どもは不満を抱いて意欲的に練習に取り組めません。そんな心理状態では、大事な基礎練習の成果もなかなかでませんよね?算数の場合も、まず子どもに応用問題をやらせてみて、それができないということをわからせてみるのです。うまくリードできれば、その面白さを味わおうと子どもは四則計算の習得に励むようになります。とはいえ、四則計算の学習はやはり地味で単純なものが多いので、子どもの集中力がなかなか続かないということもある。子どもが自然に四則計算の勉強をできるようにするには、やはりたくさんの工夫が必要です。子どもと一緒に楽しみながら四則計算を勉強する家庭でできることを考えると、日常生活のなかで子どもが楽しみながら四則計算に触れる機会を親がつくってあげることです。「学校の勉強なんて社会に出たら役に立たない」なんてことをいう人もいますが、四則計算は大人なら誰もが日常的に使っていますよね。たとえば、つねに節約しようと考えているお母さんたちは、スーパーで買い物をするにも何度となく四則計算を繰り返しているはずです。その計算を問題として子どもに出してみましょう。リンゴを買おうとしているときに、「3個で500円のリンゴ」と「2個で400円のリンゴ」があったとします。子どもに、「どっちを買えばお得かな?教えてくれる?」と相談するのです。子どもは大好きなお母さんの役に立ちたいと、頑張って計算をしてくれるはずです。自動車でどこかに出かけるときなら、目的地までの距離を教えてあげて、「いま、時速40キロだけど、目的地には何分で着く?」「時速60キロならどう?」というふうに出題することもできるでしょう。時計を使ってみるのもおすすめです。時計というと、時間を知るためのものと誰もが思い込んでいますが、じつは角度の勉強にも有効です。丸いアナログ時計を使って角度の問題を出すのです。「6時のときの長針と短針の間の角度は何度でしょう?」といった具合です。家族でおこなうものと考えれば、もっとふざけてみてもいいかもしれませんね。たとえば、「お父さんは3分に1回怒ります。お母さんは5分に1回怒ります。お父さんとお母さんが一緒に怒って大爆発するのは何分後でしょうか?」といったものはどうでしょうか?(笑)。これは紛れもない公倍数の問題ですが、きっと子どもは笑いながら取り組んでくれるにちがいありません。家庭で子どもに勉強させるときには、「子どもと一緒に楽しむ!」ということをいちばんに意識してほしいとわたしは思っています。勉強をしながらでも、子どもの心からの笑顔をたくさん引き出してあげてください。『たし算ひき算 10マス計算ドリル 左利き用』杉渕鐵良 著/学研プラス(2019)■ 東京都公立小学校教諭・杉渕鐵良先生 インタビュー一覧第1回:先取り学習はこうやれば効果的。「就学前学習ってどうなの?」に“教育の鉄人”が回答!第2回:「ちゃんと宿題やりなさい!」に効果がない理由。子どもに“響く”声かけの方法とは?第3回:子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方。国語力アップの決め手は家庭にある!第4回:算数の力は“楽しく”伸ばす!地味で単純な「四則計算」を笑うほど面白いものにする工夫【プロフィール】杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)1959年生まれ、東京都出身。東京都公立小学校教諭。小学校教諭となって7年目に子どもたちのやる気を引き出す独自の授業「ユニット授業」を開発。その成果により、「教育の鉄人」と呼ばれ、2011年には「ユニット授業研究会」を設立。若手教員の指導にあたる他、講演のために全国各地を飛び回っている。『小学校教師だからわかる 子どもの学力が驚くほど上がる 本物の家庭学習』(すばる舎)、『全員参加の全力教室2 燃える! 伸びる! 変わる! ユニット授業』(日本標準)、『1日1枚5分でできる 漢字パズル』(すばる舎)、『自分からどんどん勉強する子になる方法』(すばる舎)、『子どもが授業に集中する魔法のワザ!』(学陽書房)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月27日少子化によって子ども同士のかかわりが減ったことや、情報化社会によって自ら求めなくともさまざまなコンテンツがあふれていることなどが影響し、昨今では主体性のない子どもが増えているといわれています。しかし、変化の激しいこれからの時代を強く生きるためには、自ら考えて行動することが重要です。今回は、主体性のある子どもとない子どもの特徴や、主体性を育てるためのコツについてご紹介します。活躍できるのは「聞き分けの良い子」ではないひと昔前の子どもは、「先生や親の言うことを聞きなさい」と言われながら育ってきました。自分の考えを主張することなく、大人の指示通りに動ける子どもこそが「素直でいい子」だとされていたのです。しかし、こうした考え方は時代の変化とともに変わっていきました。大人の指示を仰いで行動する子どもは確かに育てやすいですが、そのまま成長すると、社会に出たときに周りに流されてばかりだったり、指示待ち人間になったりする可能性が高いという側面があります。主体性は将来のリーダーシップに必要不可欠です。そのため、現在では自ら考えて行動することができる、主体性のある子どもこそが「できる子」だといわれるようになってきています。主体性が”ある”子どもと”ない”子どもの違いとは主体性がある子どもとない子どもには、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。いくつか例を挙げてみましょう。■自分の「やりたいこと」に取り組めるか主体性のある子ども:周りに流されずに取り組める主体性のある子どもは、周りに流されることなく、自分がやりたいと思ったことに取り組みます。周囲からの反応よりも「自分がしたいかどうか」が大切であることをきちんと理解しているためです。主体性のない子ども:些細なことでも親の指示を仰ぐ主体性のない子どもは、自分で何かを決めることが不得意で、自分の言動に自信が持てません。そのため、何をするにも「本当にこれでいいのだろうか?」と不安になり、心から楽しむことができなくなってしまいます。■自ら考えて行動できるか主体性のある子ども:想像力や思考力が高く、自ら考えて行動できる自ら考えて行動するというプロセスでは、「行動するためにはどうしたらいいのか」「どうしたら一番スムーズに行動できるのか」「この行動の先にどんな結果が待っているのか」など、考えなければならない項目がたくさんあります。主体性がある子どもは想像力や思考力が高いので、こうしたさまざまな項目を順序立てて考えながら、行動に移すことができるのです。主体性のない子ども:些細なことでも親の指示を仰ぐ主体性のない子どもは、自分で何かを決めることが不得意です。そのため、自分が食べたいものや行きたい場所を決めるといった些細なことでも、その都度親に「どうしたらいい?」と聞くことが多い傾向にあります。■チームワークがあり、きちんとコミュニケーションをとることができるか主体性のある子ども:友だちと積極的にかかわり、あらゆる活動に取り組める友だち同士で何かを協力し合って成し遂げたり、ケンカをして悔しい思いをしたりといった経験が多い子どもは、チームワークの大切さを知り、自らを省みることができるようになります。その結果、「次はこうしてみよう」と新たな活動にも主体的に取り組むことができるのです。主体性のない子ども:「周りと同じ意見かどうか」ばかりを気にする「周りと同じ意見を持っている」というのは、主体性がない子どもにとって安心感があり、楽な状況です。そのため、自分の考えを発表する際などには「自分はこう思う」ということよりも「自分の意見は周りと同じものなのかどうか」を気にしやすくなります。よって、友だちと積極的に意見を交わすなどの経験が乏しくなり、コミュニケーションが不得意になる場合が多いです。■何事にも積極的にチャレンジできるか主体性のある子ども:親との信頼関係が強い心から信頼することができる存在や、どんなときでも自分をバックアップしてくれる存在がいることは、何かに挑戦する際に大きな助けとなります。主体性がある子どもは親との信頼関係が強く、「自分は愛されている」と実感できていることから、「失敗して親に怒られたり、失望されたりしたらどうしよう」と不安になることがありません。そのため、何事にも積極的にチャレンジできるのです。主体性のない子ども:失敗を極度に恐れる失敗を極度に恐れる主体性がない子どもにとって「失敗=悪いこと」でしかありません。そのため、少しでも失敗の可能性があることには絶対に取り組もうとしなかったり、新しい環境に強い抵抗感を覚えたりすることもあります。また、「失敗したら、ママ(パパ)に怒られる」と親からの評価を気にすることも多いです。子どもの主体性を育てるためには?子どもの主体性を育てるために、以下の取り組みを実践しましょう。「失敗は成功のもと」であることを伝える主体性を育てるためには「失敗してもいいから取り組むことが大切」「失敗は成功のもと」という考え方を伝えることが大切です。『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』(文響社)の著者で、進学塾VAMOSの代表である富永雄輔氏は、失敗と成功の比率の理想を「成功が51・失敗が49」と述べています。49の失敗があるから51の成功が生まれることを意識し、「失敗が成功のもとになるんだよ」「できなくてもいいからチャレンジすることが大切なんだよ」と子どもに伝えてあげましょう。失敗しても決して怒らず、まずは取り組みそのものを褒め、子どもと一緒に「うまくいくためにはどうしたらいいと思う?」と解決策を考えることが重要です。選択肢を与える脳科学者の茂木健一郎氏は、「日本の子どもは”自分で決める力”が絶対的に欠けている」と警鐘を鳴らしています。自分の意見を言えるようにすることは、自ら考えて行動することにつながるため、主体性を育てるのに不可欠です。とはいえ、はじめはなかなか難しいので、まずは選択肢を与えて子ども自身に「どっちがいい?」と決めさせることから始めましょう。食事のメニューやその日に着る洋服などの簡単な選択を積み重ねていくことで、子どもはやがて自分の意見を言うことに慣れ、自分で考えて決断し、行動することができるようになっていきます。年上の友達とのかかわりを持たせる学芸大学客員教授 藤原和博氏は、現代の子どもたちには「斜めの関係」が必要だと述べています。核家族化や地域社会の希薄化が進み、「近所のお兄ちゃん」や「親戚のお姉ちゃん」のような「上下の関係ではない斜めの関係」とかかわる機会が減ってきているのです。斜めの関係は、「親と子」「先生と生徒」のような上下の関係で代替することはできません。神奈川県の私立宮前幼稚園 亀ヶ谷忠宏園長いわく、誰かに対して「自分もあんなふうになりたい」と憧れる経験は、主体性を育てることにつながるのだそう。「ああなりたい」と強く思った瞬間にスイッチが入り、主体的に歩み始めるのだと亀ヶ谷氏は言います。子どもは年上のお友だちに対してそうした感情を抱きやすいもの。「斜めの関係」が不足している今だからこそ、年上の友だちや親戚とのかかわりを積極的に持たせるように心がけ、子どもにとって憧れの存在と出会える場を作ってあげることが大切なのです。愛情をめいっぱい伝える動物学者デズモンド・モリスは著書『デズモンド・モリス子どもの心と体の図鑑』の中で次のように述べています。子どもをほめ、たくさん抱きしめて安心させ大げさなほど愛情表現をする母親は、それより感情表現の乏しい母親に比べて、我が子が世界を探検する準備ができていることに気づくでしょう。そっけなく、ぶっきらぼうな母親は、子どもを心細くさせます。(引用元:デズモンド・モリス(2010) ,『デズモンド・モリス子どもの心と体の図鑑』,株式会社 柊風舎.)子どもが主体性を持って何かに挑戦するためには「どんなときでも自分を受け入れてくれる存在」が必要です。そのために、親は子どもへの愛情を言葉やスキンシップでめいっぱい伝えましょう。また、言葉やスキンシップ以外にもおすすめしたい愛情表現方法が「ほめ写プロジェクト」という取り組みです。ほめ写とは、子どもの写真を自宅に飾り、それを見ながら子どもを褒めてあげるというもの。その際には「生まれてきてくれてありがとう」「見ているだけで幸せな気持ちになるよ」など、子どもの存在そのものを全肯定するような言葉をかけることがポイントです。愛されている自信につながり、自己肯定感を高めるのに有効だといわれています。***子どもの主体性は、環境次第でぐんぐん伸びていきます。子どもを「指示待ち人間」にしないためにも、親ができることから始めてみましょう。文/田口るい(参考)ベネッセ教育総合研究所|集団の中で「主体性」を育むために園ができることダイヤモンドオンライン|子どもの主体性を引き出すには、どうすればいいか? 東洋経済オンライン|こうすれば子どもは「自発的」に学び始める!PHPファミリー|信じて任せて、自発性を引き出す~子どもの「やる気」のコーチングAll About|子供を「指示待ち人間」にしない育て方!言うこと聞く子ほど要注意こどもまなび☆ラボ|“49” の失敗体験が子どもの挑戦力につながる!過干渉にならない会話のコツ『これからの未来を生き抜くできる子の育て方』(2018年),洋泉社MOOK.内閣府|コミュニケーションを高めるためにほめ写プロジェクト|ほめ写プロジェクトとは?デズモンド・モリス(2010) ,『デズモンド・モリス子どもの心と体の図鑑』,株式会社 柊風舎.
2019年05月27日小学生が学ぶ教科には、国語に算数、理科、社会などさまざまなものがあります。そのうち、「国語と算数があらゆる学習のベース」と語るのは、東京の公立小学校教諭・杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)先生。子どものやる気を引き出す独自の授業で注目され、「教育の鉄人」とも呼ばれるカリスマ教師です。今回は、その重要な国語と算数のうち、国語の力を伸ばすために家庭でもできることを教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもを読書好きにするにはまず親が本を読む小学校における教科のうち、とくに重要なものが国語と算数です。それらの力が育っていないと、理科や社会の教科書、そのなかに出てくるグラフなどもきちんと読めないからです。逆にいえば、1、2年生頃にちょっとくらい理科や社会の勉強が遅れてしまったとしても、国語と算数がきちんとできるようになれば、あとからいくらでも遅れを取り返せます。そういう意味で重要な国語と算数のうち、国語の力を伸ばすために家庭でもできることというと、まずはやっぱり読書でしょうね。とくに1、2年生くらいの小さい子どもの場合なら、絵本の読み聞かせをおすすめします。というのも、読書は苦手でも読み聞かせは好きだという子どもが多いからです。また、親が本を読まなければ子どもも本に興味を示さないということも、読み聞かせをすすめる理由です。絵本の読み聞かせをすれば、子どもは文字や言葉、さまざまな概念を知ることになる。それはいまもむかしも変わらない読み聞かせの大きな効果です。そうして絵本の読み聞かせをするうち、「このシリーズものが面白い」というふうに、子どもがハマるものが出てくるでしょう。そういった事象こそ、読書好きになる兆候といえます。子ども自身が自ら本に興味を示さなければ、読書好きになるはずもありません。そう考えると、「○○先生が推薦しているから」なんていって、どこかの誰かがすすめる本を子どもに与えることにもなんの意味もありません。もし、子どもにすすめるのであれば、親御さん自身が本当に面白いと思ったものにしてほしいのです。そういう本であれば、「大好きなお父さんやお母さんがすすめるんだったら」と、子どもが興味を示すということだってあるはずですよ。漢字を覚えさせるにも「楽しさ」が最重要また、小学生なら漢字の学習も重要です。だからといって、漢字をいくつ書くだけというドリルのような学習方法はあまり好ましくありません。1、2年生のような小さい子どもの場合、楽しさが伴っていなければただ機械的にこなすだけになってしまい、なかなか学習効果が上がらないからです。ただの反復には意味がないのです。そういう意味では、いろいろと工夫をすることが必要。たとえば、「木」という漢字を書いて覚えるにも、子どもが「木」と書いたら、「これ、なんの木?」と聞いてみましょう。子どもは「桜の木」なんて答えるかもしれない。そうしたら、「じゃ、桜のピンクに塗ってみようか」と色鉛筆を与えるのです。あるいは、ピンクの色鉛筆で「木」と書かせてもいいですよね。また、漢字の「はらい」や「はね」を覚えさせるためにできる工夫もあります。「木」のはらいの部分を書くときに、親が「滑り台みたいだから、滑り台を想像して『シューッ』と書こう」といって、実際に「シューッ」といいながら書く。子どもも面白がって「シューッ」といいながら書くようになります。どちらも子どもにとっては遊び感覚で漢字の書き取りをすることになりますし、脳をしっかり使ってイメージを膨らませていますから、きちんと覚えられることになります。また、いろいろな漢字が書かれている紙を用意して、「このなかから、食べものの漢字を探そう!」なんて遊びもいいと思います。たとえば「公」という漢字は、「ハム」と読めますよね。そんな工夫がされている教材もたくさん市販されていますから、それらを使ってみてはどうでしょうか。しかも、そういう教材をやって漢字の面白さを知ったあとなら、子どもは一般的な漢字ドリルも楽しんでやるようになるものです。いずれにせよ、まだ小さい子どもには「勉強って面白い!」と思わせてあげることがなにより大切です。小さいうちから成績を気にし過ぎる必要はありませんし、「勉強は面白い」と思っていれば、自然に勉強を続け結果的に成績も伸びてくるものですからね。会話力を上げるには会話を重ねるしかない国語力を伸ばすためには、会話力の向上も外せないものでしょう。人と会話をするには、さまざまな言葉をきちんと使えることが求められますからね。子どもの会話力を向上させたいと思ったら、とにかく親が子どもとたくさんおしゃべりをすることに尽きます。子どものためのスピーチ教室なんてものもありますが、やっていることは、用意された原稿をただうまく読む訓練をしているだけ。実際の会話とは、そういうものではありませんよね?相手のいったことに対して瞬間的に反応し、自分の思いを適切な言葉で表現できてこそ会話になる。そう考えると、やはり実際に会話をすることでしかその力は伸びていかないのです。子どもと会話をするにあたって、親の立場として「いいインタビュアーになろう」と心がけることも重要なポイントです。学校から帰ってきた子どもがどことなくうれしそうにしていたら、「なにかいいことがあったの?」「それでどうしたの?」とどんどん聞き出してあげる。そのとき、親自身がそのインタビューを楽しむことが大切です。親が会話を楽しんでいる気持ちが伝われば、子どもはどんどん冗舌になっていくはずです。『たし算ひき算 10マス計算ドリル 左利き用』杉渕鐵良 著/学研プラス(2019)■ 東京都公立小学校教諭・杉渕鐵良先生 インタビュー一覧第1回:先取り学習はこうやれば効果的。「就学前学習ってどうなの?」に“教育の鉄人”が回答!第2回:「ちゃんと宿題やりなさい!」に効果がない理由。子どもに“響く”声かけの方法とは?第3回:子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方。国語力アップの決め手は家庭にある!第4回:算数の力は“楽しく”伸ばす!地味で単純な「四則計算」を笑うほど面白いものにする工夫(※近日公開)【プロフィール】杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)1959年生まれ、東京都出身。東京都公立小学校教諭。小学校教諭となって7年目に子どもたちのやる気を引き出す独自の授業「ユニット授業」を開発。その成果により、「教育の鉄人」と呼ばれ、2011年には「ユニット授業研究会」を設立。若手教員の指導にあたる他、講演のために全国各地を飛び回っている。『小学校教師だからわかる 子どもの学力が驚くほど上がる 本物の家庭学習』(すばる舎)、『全員参加の全力教室2 燃える! 伸びる! 変わる! ユニット授業』(日本標準)、『1日1枚5分でできる 漢字パズル』(すばる舎)、『自分からどんどん勉強する子になる方法』(すばる舎)、『子どもが授業に集中する魔法のワザ!』(学陽書房)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月26日自己肯定感を育むことができるのは「存在承認」なのだそう。存在承認とは、「生まれてくれて、ありがとう」「あなたがいてくれるだけで、うれしい」など、存在そのものを承認すること。対して、「行動承認」というのもあります。これは、「テストで満点」「スポーツで1位」など、行動を承認すること。「〇〇ができてえらいね」「△△してくれたから、大好きだよ」というほめ言葉などを指します。この行動承認の言葉――ついつい言いがちですが、子どものためには「ありのままのあなたを愛しているよ!」、そんなふうに伝えたいものですね。■参照コラム記事はこちら↓「大好きだよ!」で子どもは育つ。“愛されている自覚”が自己肯定感を高め、勉強姿勢までも変える
2019年05月26日小学校に入学した子どもが長男や長女の場合、学校生活に伴って、子どもたちはもちろん、親もいくつもの初体験をすることになります。そのなかで、「子どもが宿題をやりたがらない」「子どもの通知表があまり良くなかった」など、さまざまな悩みや不安に直面することでしょう。そういった場合、どう対処すればいいのでしょうか。子どものやる気を引き出す独自の授業で注目され、「教育の鉄人」とも呼ばれるカリスマ教師・杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)先生にアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)一緒に宿題をやれば親の言葉の重みが変わるまず重要なのは、なにごとも「子どもと一緒に」という考え方を持つこと。子どもが宿題をやりたがらないのなら、「ちゃんとやりなさい」なんていって子どもにやらせるのではなく、一緒にやってあげればいいのです。同じ「ちゃんとやりなさい」でも、実際にやった人がいえば、言葉の重みがちがってくるのは明白です。スポーツでも同じですよね。炎天下で一緒に汗を流している人が「頑張ろう」というのと、ただ日陰で涼んでいる人がいうのでは、いわれる側が受け取る意味はまったくちがってきますよね。そもそも、子どもにとってはひとごとのように頭ごなしに怒られることがいちばん嫌なものです。「ちゃんとやりなさい!」といっている親御さんは「子どものため」だと思っていることでしょう。では、そういうときに自分の言葉を録音して聞いてみてください。わたしは実際にある親御さんにそうしてもらったことがあります。すると、自分の言葉を聞いたその親御さんは「これは自分じゃない」なんていうんです。自分はしつけをしている、子どもに大切なことを教えているつもりなのに、客観的に見ればただ怒鳴っているだけということは珍しくありません。もちろん、「子どものため」と思っているのは本当なのでしょう。でも、怒鳴り声ではその気持ちは子どもには伝わらないのです。愛を押しつけているだけではただのストーカーです。子どもに「お父さん、お母さんに愛されている」と思わせてあげてください。話を宿題に戻しましょう。実際に子どもの宿題をやってみれば、親御さんなりになんらかの感想を持つはずです。たとえば、「塾に通わせていることを考えると宿題が多過ぎる」「子どもの負担になっているのではないか」と思うこともあるでしょう。そういう場合、親子で話し合ったうえで、宿題を減らせないかと担任教師に相談してみてはどうでしょうか。おそらく、いまの時代の教員ならかなり柔軟にそういう相談にも対応してくれるように思います。家庭によって教育方針はちがいますし、子どもが目指す進路もそれぞれですから、わたし自身も各家庭とやり取りをしてなるべく要望に応じられるよう心がけています。通知表が良くなければ親が通知表をつけるさて、宿題に続いて親御さんの悩みの種となるのが通知表ではないでしょうか。その評価によってつい一喜一憂してしまいますよね。あまり評価が良くなかった場合には、親として子どもにどう接してあげればいいのかと頭を悩ませてしまうはずです。ただ、通知表はあくまでひとりの教員による評価に過ぎず、それが絶対のものではありません。だとしたら、親御さん自身が子どもの通知表をつけてあげればいいのではないでしょうか。「先生はこういっているけど、お母さんはあなたのこういうところはもっといいと思うよ」という具合に。そもそも、通知表というひとつの評価にとらわれる必要はありません。もし親が通知表の結果を気にし過ぎることになれば、子どもも結果だけを気にするようになってしまいます。そうすると、子どもは「結果を出さないと怒られる」と思って、なにかしらのズルをするということだって起こり得ると思うのです。親が通知表の結果だけにとらわれるということは、子どもに対して「結果を出さないとあなたを応援しないよ」というメッセージを送ること。そうではなくて、「結果が出なくてもあなたを愛している」というメッセージを送ってあげなければなりません。そうでないと、子どもは親の前でも等身大の自分を出せなくなりますからね。そもそも、親自身も完璧ではありませんし、あらゆることに秀でている人間なんていません。長所も短所もある等身大の子どもを愛して、プレッシャーにならない程度に期待して応援してあげてほしいと思います。褒めて伸ばすには実感が必要ただ、あまりに褒め過ぎることには注意も必要です。最近は「褒めて伸ばす」ことが注目されています。「叱ることは子どもを否定することだけど、褒めることは子どもを肯定するからいいんだ、やる気を引き出すんだ」なんていわれます。でも、褒めるも叱るも、子どもに外から刺激を与えて良い方向に導く行為という点では同じものです。それなのに、「褒めるのがいいから」と褒めてばかりいると、褒められないとなにもしない子どもになってしまうこともあるのです。褒めるということはじつはすごく難しいし、なんでもかんでも褒めればいいというものではありません。では、褒めると叱るをどう使いわければいいのでしょうか?その基準は、「実感に従う」ことで見えてきます。たとえば、漢字の書き取りをするにも、子どもと一緒にやってみてください。パソコンやスマホで文章を作成することで、手書きをすることが減っている大人の場合、いくつも漢字を書くうちに手が痛くなってくることもあるでしょう。そうすると、「お母さん、もう手が痛くなってきちゃった」「あなた、すごいね」なんて褒め言葉が自然に出てくるはずです。そういう「実感」が伴っている、つまり「心からの言葉」は子どもにきちんと響きます。叱る場合も同様です。もし子どもが、倫理的、人間的に良くないという問題を起こしてしまったら、親は「反省してほしい」と心から思って叱るものです。だけど、叱る理由が「世間体が悪いから」といったものなら、やはり子どもには響きません。「褒めるのがいい」なんて言葉を鵜呑みにして小手先のテクニックのようにただ褒めるのではなく、親御さん自身の実感や心を持って、子どもに接してください。『たし算ひき算 10マス計算ドリル 左利き用』杉渕鐵良 著/学研プラス(2019)■ 東京都公立小学校教諭・杉渕鐵良先生 インタビュー一覧第1回:先取り学習はこうやれば効果的。「就学前学習ってどうなの?」に“教育の鉄人”が回答!第2回:「ちゃんと宿題やりなさい!」に効果がない理由。子どもに“響く”声かけの方法とは?第3回:子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方。国語力アップの決め手は家庭にある!(※近日公開)第4回:算数の力は“楽しく”伸ばす!地味で単純な「四則計算」を笑うほど面白いものにする工夫(※近日公開)【プロフィール】杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)1959年生まれ、東京都出身。東京都公立小学校教諭。小学校教諭となって7年目に子どもたちのやる気を引き出す独自の授業「ユニット授業」を開発。その成果により、「教育の鉄人」と呼ばれ、2011年には「ユニット授業研究会」を設立。若手教員の指導にあたる他、講演のために全国各地を飛び回っている。『小学校教師だからわかる 子どもの学力が驚くほど上がる 本物の家庭学習』(すばる舎)、『全員参加の全力教室2 燃える! 伸びる! 変わる! ユニット授業』(日本標準)、『1日1枚5分でできる 漢字パズル』(すばる舎)、『自分からどんどん勉強する子になる方法』(すばる舎)、『子どもが授業に集中する魔法のワザ!』(学陽書房)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月25日小学校にまだ入学していない幼い子どもがいる親であれば、いわゆる就学前学習などの「先取り学習」に強い興味があるはずです。その効果はどれほどのものなのか、そもそも必要なのか――。お話を聞いたのは、東京の公立小学校教諭・杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)先生。子どものやる気を引き出す独自の授業で注目され、「教育の鉄人」とも呼ばれるカリスマ教師です。実際の教育現場から見た先取り学習の価値とはどんなものでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)学習内容のつながりを意識した「先取り授業」ひとことで「先取り学習」といっても、さまざまな種類があります。わたしの授業スタイルも先取り学習といえるものです。たとえば、本来のカリキュラムでは順に教える足し算と引き算もわたしは同時に教えます。また、掛け算と割り算も同様です。なぜかというと、足し算だけを先にやってしまうと、「足し算脳」とでも呼ぶべき頭の使い方が子どものなかでできあがってしまうから。そうなると、引き算を学ぼうとするときにその足し算脳が邪魔をして、なかなか引き算ができるようにならないということが起こるのです。掛け算と割り算の場合も同じです。先に掛け算だけを教えてしまうと、九九はしっかりできるのに、なぜか割り算は苦手だという子どもが続出してしまう。それは、本来であればひとつながりのものなのに分断して学ばせているからです。ピアノでいえば、課題曲全体を聴かせてもいないのに、頭から順に教えようとしているようなもの。どんな曲なのか全体像が見えていなければ、学習効果が高まるはずもありませんし、子どもは自分がなにをしているのかが見えずに不安になってしまいます。楽しければ、勉強も大好きな絵本と同じ感覚になるとはいえ、そういう授業スタイルを取っている教員はそうはいないでしょうから、ここでは一般の家庭でもできる先取り学習について、わたしの考えをお伝えします。先取り学習と聞いたときにまずイメージするのが、学校での学習内容を前もってやるというものでしょうね。小学校に入る前の就学前学習はその典型です。それらの先取り学習については、子どもにどんどんやらせてほしいと思います。というのも、「学校での勉強が復習になる」からです。そういった先取り学習については、「子どもが学校の勉強に興味関心を示さなくなるから駄目だ」という意見もあります。でも、映画にだって予告編があるじゃないですか?予告編を観て、その作品を観たくなったという経験はほとんどの人にあるでしょう。それに、好きな映画を3回も4回も観る人もいます。その場合、1回観ただけでは気づかなかったことに気づくということもある。つまりそれは、復習の効果に他なりません。「先取り学習が子どもの興味関心を奪う」なんてことは大人の発想で、子どもにとってはちがうのです。それこそ、大好きな絵本だったら、親が「また?」とうんざりするほど、何回も何回も「読んで」と子どもがせがむこともありますよね。勉強だって、楽しくできるように大人がちゃんと導いてあげれば、子どもにとっては映画や絵本と変わらないのです。とはいえ、先取り学習をさせるにも注意が必要です。やっぱり楽しくなければ子どもは興味を示しません。学校の教科書の内容を勉強するような先取り学習を無理に押しつけてしまうと、小学校に入る前に「勉強は楽しくない、面白くない……」と子どもに思わせて、まったくの逆効果となってしまいかねません。子どもの「学びの感覚」をつくる親子の対話また、とくに幼い子どもの家庭における先取り学習となると、学校の学習内容を先取りするタイプの学習の他にも大切なものがあります。それは、学びのための「感覚」を身につけるということ。たとえば、親子で一緒に出掛けたときには、「夕焼けって綺麗だね」とか「あれは三日月っていうんだよ」というふうに、目に入ったものを子どもに優しく教えてあげてください。家にいるときも、たとえばご飯を食べるときには「ハンバーグ、美味しいね」などと話しかける。内容はなんでもよくて、とにかく話しかけることが大切。そういった親との対話を通じて、子どもは学びのためのさまざまな「感覚」を身につけていきます。また、「感覚」という点では、体の「感覚」を使って学ぶことも大切です。ひらがなやカタカナを書いて覚えるにも、幼い子どもは鉛筆をまだうまく使えません。ですから、鉛筆ではなく大きな紙にクレヨンで書かせるとか、砂場で手を使って書かせる、あるいは尻文字で書かせることをおすすめします。そうすれば、体の感覚を通じて文字を覚えていくのです。それから、日常生活のなかでは、算数の勉強の橋渡しになるような数字に親しませるということもできます。スーパーに子どもと一緒に買物に行ったとします。親は「リンゴが5個ほしいのよね」といいながら、買い物かごに3個のセットをふたつ入れようとする。子どもが「お母さん、それじゃ6個だよ」なんていってくれたらしめたもの。「じゃ、どうすればいい?」と聞く。子どもは自分なりに考えて、3個のセットをひとつとバラ売りのものを2個持ってきてくれるかもしれません。そういうふうに、日常生活のなかにも学校の勉強につながるような要素はいくらでも転がっているものです。親御さんがそういう意識を持って、日常的な就学前学習を子どもにやらせてあげるように心がけてほしいですね。『たし算ひき算 10マス計算ドリル 左利き用』杉渕鐵良 著/学研プラス(2019)■ 東京都公立小学校教諭・杉渕鐵良先生 インタビュー一覧第1回:先取り学習はこうやれば効果的。「就学前学習ってどうなの?」に“教育の鉄人”が回答!第2回:「ちゃんと宿題やりなさい!」に効果がない理由。子どもに“響く”声かけの方法とは?(※近日公開)第3回:子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方。国語力アップの決め手は家庭にある!(※近日公開)第4回:算数の力は“楽しく”伸ばす!地味で単純な「四則計算」を笑うほど面白いものにする工夫(※近日公開)【プロフィール】杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)1959年生まれ、東京都出身。東京都公立小学校教諭。小学校教諭となって7年目に子どもたちのやる気を引き出す独自の授業「ユニット授業」を開発。その成果により、「教育の鉄人」と呼ばれ、2011年には「ユニット授業研究会」を設立。若手教員の指導にあたる他、講演のために全国各地を飛び回っている。『小学校教師だからわかる 子どもの学力が驚くほど上がる 本物の家庭学習』(すばる舎)、『全員参加の全力教室2 燃える! 伸びる! 変わる! ユニット授業』(日本標準)、『1日1枚5分でできる 漢字パズル』(すばる舎)、『自分からどんどん勉強する子になる方法』(すばる舎)、『子どもが授業に集中する魔法のワザ!』(学陽書房)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月24日4年生にもなると学習内容はぐんと難しくなり、保護者の方も教えるのに四苦八苦するような問題がたくさん出てくるようになります。3年生まではなんとかついていけていたお子さんも、隠れた苦手ポイントが表面化する時期でもあるので、学習に取り組む姿勢から見直さなければならないことも。今回は、3年生から4年生に進級したお子さんが学習面で陥りがちがな苦手ポイントや、家庭でできるフォローの方法などを詳しく見ていきましょう。4年生、学習面での不安はどんなこと?進研ゼミの保護者を対象にベネッセがアンケートを実施したところ、3年生から4年生に上がる際に学習面で準備しておいた方がいいことや、親が注意深く見ておくべきことについて、次のような回答が得られました。□学年が上がるにつれて家庭学習の時間の確保が難しくなる。生活習慣を整えて、勉強時間をきちんと決めておくことが大切。□低学年で学んだ基本ができていないと、どんどん難しくなる勉強に対応できなくなる。わからない問題をそのままにせずに、しっかりと復習して理解するように心がけさせる。これまでのように、わからない問題にじっくり取り組む余裕がなくなってくるのが4年生からです。4年生に進級するまでの積み重ねが表面化される時期でもあるので、各教科の基礎的な部分がきちんと理解できているか改めて確認する必要があるようですね。その際には、テストの点数だけで判断するのではなく、ノートに書かれている内容も確認してみましょう。本人も気づかないような苦手ポイントが見つかるかもしれません。4年生の国語。学習のポイントは?4年生で習う漢字は3年生と同じく200字です。「養」「熱」「議」など、難しい文章の中で出てくるような複雑な漢字も出てきます。また低学年のときと比べて、格段に長く難しい文章を扱うようになり、登場人物の気持ちの深い部分まで読み取る問題も増えてきます。音読の宿題はなくなっていても、読解力を深めるためにも声に出して文章を読む習慣は続けましょう。さらに、作文や読書感想文では書く内容の中心を明確にし、内容のまとまりで段落をつくったり段落相互の関係に注意したりして、文章の構成を考える能力が求められます。最終的には自分の考えとそれを支える理由や事例との関係を明確にして、書き表し方を工夫する必要も出てくるため、普段から文章の構成を意識しながら本を読むようにするといいでしょう。また、ことわざや慣用句、故事成語などの意味を知り、使えるようになることも求められます。子どもから意味を聞かれてもすぐには答えずに、漢字の意味から読み解かせたり、辞書を引かせたりしましょう。自分で考えて調べることで、より記憶に残ります。4年生の算数。学習のポイントは?教育評論家の親野智可等先生は、4年生の算数について「基本的な四則計算が身についていないと授業でつまずくケースが多い」と指摘します。そして一度苦手意識を抱いてしまうと、それ以降積極的に授業に関わりにくくなるため、これまで以上に注意深く見てあげる必要があるとのこと。とくに気をつけてあげるポイントは次の2点です。■四則計算、基礎はできている?たとえば「612÷27」の場合、612は約600で27は約30だから、答えはだいたい20いくつになるな、と実際に計算をする前に答えの見当をつけることを「四則計算の結果の見積もり」といいます。これができるかできないかで、今後の算数の授業への理解度は大きく変わってきます。■図形の構造、理解できている?立方体、直方体の見取り図と展開図はかなりの苦戦が予想されます。平面図形に比べて、立体図形はスムーズに理解することが困難なので、親御さんの協力が必要になるでしょう。たとえばいらなくなった空箱を分解したり、展開図を作成して組み立てたりと、工夫次第で家庭でも図形を構成する要素について学ぶことができるはずです。4年生の理科。学習のポイントは?4年生の理科では「空気と水の性質」「金属、水、空気と温度」「人の体のつくり」などについて学習します。その中でもつまずきやすいのは次の単元です。■水の三態変化は台所で学べ!水が温度によって固体、液体、気体と変化することを意味する「水の三態変化」。これは中学で習う物質の状態変化につながる重要な内容ですので、習い始めのこの段階でしっかりと理解を深める必要があります。そこで役に立つのは「料理を手伝うこと」だと親野先生は説きます。なぜなら氷を作ったりお湯を沸かしたりする台所は、「水の三態変化」を実体験するのにうってつけの場所だからです。料理をするときは必ず火を使ったり、水を容器に移したりしますよね。その一連の作業は理科の実験と非常に似ているため、家で料理のお手伝いをしている子どもは、学校での理科実験にも積極的になる傾向があります。理科的思考を身につけるためにも、お手伝いは有効だというわけです。■数字と天気と肌感覚を結びつけるまた、「天気による1日の気温の変化」も苦手とする子どもが多いとのこと。天気を観察して気温を測り、その変化をグラフにして天気と気温の関係を理解することが求められるこの単元は、算数的要素も含まれます。算数でも出てくるグラフに対する苦手意識がつまずきの元になっているのでしょう。「自然現象を数値化する」という考え方は理科の基本的なスタンスであり、今後学年が上がるにつれてもっと複雑になる内容でもあります。朝は1日の天気予報を確認して、「気温が○度なら昨日よりも少し寒いね」「湿度○%なら雨が降るかもしれないね」と、数字を絡めて会話をするように心がけましょう。4年生の社会。学習のポイントは?4年生の社会は、3年生より広い範囲の地域や環境に目を向けた学習をします。その目的は、社会的事象への理解を通して地域社会に対する誇りと愛情、地域社会の一員としての自覚を養うこと。つまり、4年生からは広い視野で物事を見て、自分なりの理解を深めることが重要視されるのです。身近なところでは、飲料水や電気・ガスを供給する事業が、安全で安定的に供給できるように進められていることや、地域の人々の健康な生活の維持と向上に役立っているということも学びます。毎日当たり前のように使っている水や電気も、それを安全に行き渡らせてくれる人や仕組みがあってこそ。家庭における親からの教えも社会科の勉強として充分に役立ちますね。身近な生活の中で生じた疑問は、そのまま社会科の調べ学習につなげることができます。ガス会社や電力会社のホームページにも、子ども向けにわかりやすく説明しているページがあるので、親子で一緒に調べてみましょう。□東京ガスホームページ|キッズ東京ガス□東北電力ホームページ|でんきアドベンチャー***まだまだ小さな子どものように見えて、4年生ともなれば学習内容もかなり難しくなります。そんなとき「うちの子、ちゃんと勉強についていけるかしら……」と不安になるのではなく、子ども自身の“学ぶ力”を信じて見守ってあげることも大切です。また、家庭の中でも学びにつながる機会はたくさんあります。子どもの勉強の「苦手」をちょっとでも「好き」にさせるヒントは、家の中にもあるのです。(参考)Benesse 進研ゼミ保護者通信|新学期準備「コレ重要!」先輩保護者ランキング~高学年(小4ー6)編~文部科学省|小学校学習指導要領(平成29年告示)親力講座|小学4年生の勉強のポイントは?子どもはどこでつまずく?その対策とは?東京ガスホームページ|キッズ東京ガス東北電力ホームページ|でんきアドベンチャー
2019年05月23日親であれば、訪れる前から気になるのが子どもの反抗期ではないでしょうか。すでに反抗期を迎えた子どもとの接し方に悩んでいるという人も多いはずです。そこで話を伺ったのは、アンガーマネジメントの専門家であり、「キレやすい子ども」をテーマにした著書も多い早稲田大学教育学部教授・本田恵子先生。反抗期とはいったいどういうものなのか?その意義も含め、反抗期の子どもとの接し方についてアドバイスをもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもに訪れる3つの反抗期子どもの反抗期には大きく3つの段階があります。ひとつは3歳くらいで訪れるもの。いわゆるイヤイヤ期と呼ばれるもので、これは自我が出てきたことによるものです。もちろん、自我がなければひとりの人間としてきちんと成長していくことなんてできませんから、イヤイヤ期は親としては歓迎すべきものでしょう。次が10歳頃の反抗期。これはさまざまな試行錯誤をして創造力が伸びる時期だからこそ出てくる反抗です。この時期にはルールで縛りつけ過ぎないように注意しなければなりません。「こうしたほうがいいよ」と親の理想を押しつけると、お手本どおりの解答はできるけど、独自性がない子どもに育ってしまうからです。独自性がないまま育つと、作文を書くにも、綺麗だけど面白みはない、どこかの誰かが書いたような文章しか書けなくなる。「個性が大事だ」とよくいわれますが、そう願うのなら、この時期の子どもには思い切り自由に発想力や創造力を働かせてあげてほしいのです。そうさせるうち、子どもは自分で自分なりのルールをつくるようになっていくでしょう。最後が14、15歳で訪れる反抗期です。反抗期というと、一般的にはこの時期のものをイメージするでしょう。この時期の反抗は、親などの大人や世のなかの価値観に対する反抗で、それらに対して「なぜ?」と疑問を持ち、その解決を通じて大人になっていくわけです。そういう意味でも、とくに14、15歳の反抗期にある子どもには、自分としっかり向き合ってくれて「世のなかとはこうだ」と答えてくれる大人の存在が必要です。そういう大人に対して子どもは自分の論理をぶつけて話し合う。そうしていきながら、大人になるために重要な道徳性や倫理を学ぶのであって、反抗してあたりまえなのです。対立するふたりのあいだに仲介者が入る対立解消法先に10歳頃の反抗期には、思い切り自由にさせてあげることが大切だとお伝えしました。ですが、親からすれば子どもに反抗されるのですから、「話し合いが必要だ」という場合もあるでしょう。でも、14、15歳の子どもとはちがって、10歳の子どもの場合は言葉が未熟なので、自分の論理をきちんと表現できないということもあります。そういう場合には、誰かがあいだに入ってあげるという対立解消の方法があります。仮にお父さんと子どもが対立しているのなら、お母さんがあいだに入って仲介する。こういう親子間の対立の場合、よくよく見てみると揉めているのは「方法論」だけという場合もよくあるケースです。たとえば、「子どもの成績を上げたい」と、お父さんは「あの塾に行くべきだ」と主張しているとします。それに対して、子どもは「別の塾に行きたい」「通信教育を受けたい」と主張しているといった具合です。この場合、「成績を上げたい」という目標はお父さんも子どもも共通しています。そうであるのなら、仲介者であるお母さんが「目標は共通している」ということを指摘して、お父さんと子どもを向かい合わせることができますよね。子どもは親の思いどおりには育たないここまでですでにおわかりとは思いますが、反抗期というのは子どもの成長に欠かせないものであり、あってあたりまえのものです。逆にいえば、反抗期がなければ「うちの子は大丈夫かな」と不安になってしまうかもしれませんね。でも、なかには本当に穏やかに育って反抗期がないという子どもも存在します。それは、子どもの欲求を上手に親が受け止めていた場合です。そういうケースにあてはまるかどうかはともかく、反抗期がないからと不安になる必要はありません。ただ、代わりに自分の言動はつねにチェックしてほしい。大切なのは、子どもの意見をきちんと聞いているかということ。子どもがなにかをいいだしたときに、子どもの言い分を最後までさえぎらずに聞いているか。それだけは意識的にチェックしてください。なぜ子どもの言い分を聞くことが大切なのか。それは、子どもをひとりの人格を持つ人間として考えることの証明だからです。親が自分の思いどおりに子どもを育てようとするのではなく、子ども自身がどのように育ちたいのかということをちゃんと受け止めることが大切です。子どもというのは、親の思いどおりには育ちません。子どもは親とは遺伝子もちがいますし、子どもをめぐる友だちや学校などの環境の影響も大きく受けます。それこそ、ジャガイモという同じ材料であっても、それをコロッケにするのか肉じゃがにするのかを決めるのは子ども自身なのです。そういう意味では、きちんと「自分で決められる」子どもに育てることこそ親が重視すべきことだと思うのです。自分で選んで自分で判断する――その力を子どもにつけてあげることこそ、親にとっての大事な役割だと思います。『キレやすい子へのアンガーマネージメント―段階を追った個別指導のためのワークとタイプ別事例集』本田恵子 著/ほんの森出版(2010)■ 早稲田大学教育学部教授・本田恵子先生 インタビュー一覧第1回:子どもが「キレやすい」人間に育ってしまう、“絶対にNG”な親の振る舞い方第2回:意外と言いがち!子どもがますます反抗する、親のフレーズ3パターン第3回:「10歳の反抗期」に親がすべきこと。子どもは親の思いどおりには育たない!【プロフィール】本田恵子(ほんだ・けいこ)早稲田大学教育学部教授。中学、高校の教員を経験したあと、教育現場にカウンセリングの必要性を感じて渡米。アメリカにて特別支援教育、危機介入法などを学び、カウンセリング心理学博士号取得。帰国後にスクールカウンセラー、玉川大学人間学科助教授等を経て現職。学校、家庭、地域と連携しながら、児童、生徒を支援する包括的スクールカウセリングを広めている。2000年代からは、矯正教育の専門家を対象としたアンガーマネジメント研修の講師も務める。著書に『改訂版 包括的スクールカウンセリングの理論と実践』(金子書房)、『脳科学を活かした授業をつくる 子どもが生き生きと学ぶために』(みくに出版)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月23日元号が変わり、言葉に対する興味が高まっています。今年は例年にない「国語ブーム」の予感がします。こんにちは。ゆか先生です。5回に渡り、国語辞典がなぜ子どもに必要なのかということや、選び方、引き方など、いろいろなお話をして参りました。最終回は、まとめとして、国語辞典を使えるようになった子どもたちのその後、また子ども用辞典から一般の国語辞典への移行についてお話しします。質問もいくつか届いていますので、それにお答えしたいと思います。国語辞典を使えると第1回でもお話しましたが、辞書を引くとは「分からないことをどうやって調べるか」の基本動作を身につけることです。辞書が上手に引ける子は、調べ学習の基本動作が身につくのです。この動作に慣れてくると、辞書を引くことがおっくうだと思わなくなり、むしろ楽しむようになってきます。私の生徒の中にも、授業の途中で何回も辞書を引く子がいます。例えば「これはどういう意味だか分かる?」と聞いた時、辞書を引く習慣がない子は「分からない」とか「知らない」と答えます。そしてそのままで、私が「これはね……」と意味を説明するのを受け身でずっと待っています。「分からない」と答え、まるで任務を果たしたような顔をする子もいます。「分からない」と思った段階で、ではどうしたらいいかという次の行動がとれないのです。この状態は何も辞書に限ったことではありません。世の中の様々なシーンで見られます。痛ましい事故が起きたらショックを受けるだけで、ではどうしたらそういう事故が起こらないようにできるかという考えまで発展しない、不利益を被ったら憤るだけで、対応策を練れない、そんな若い人もいます。どうして次の行動を考えないのか聞くと、それさえ「そんなこと知らなかった」と言います。「教えてもらっていない」というどうしようもない回答も。もちろん、国語辞典がこれら全ての問題を解決するわけではありませんが、「分からない」→「調べる」の反射的な行動がとれるようになると、「問題」→「解決」の基本動作が楽になります。また、当然ですが、辞書をよく引く子は、語彙が豊富です。知っている言葉を使う機会があると、どんどん使います。そうして、もやもやとした気持ちやあやふやな考えを言語化して、より相手に伝わりやすくできます。【例】1. おもしろかった。2. どれもこれもおもしろくて、まるで夢を見ているような一日だった。1. 弟がどんどん散らかすので、いや。2. 幼い弟が、片付けるそばから散らかすので、私は途方に暮れる。同じ状況を表しているにしても、ずいぶん印象が違いますよね。言葉を知っていると、こういう差が出るのです。作文を書かせてみると、国語辞典を引いて言葉を多く知っている子は、感情のひだが深い気がします。もしかしたら、感情自体もより深まっているのかもしれません。私が一番有利だと思うのは、自分の気持ちが説明できる点です。楽しい時はどんなふうに楽しいのか、そして、いやなとき、しんどいときはもっと大切です。反抗期に入ると、親からのアプローチが難しい辞書を引く学習はいつからでも取り組めます。でも、第1回でお伝えしたように、学校で始める小学校3年生、4年生の時期では遅すぎるというのが私の考えです。その理由として「反抗期」の存在があります。いわゆる親の言うことを聞かなくなる時期です。この時期「親に反抗する」ことは、人間が成長する上で本当に大切なこと。ですから、むしろ成長の証として反抗期自体は歓迎するのですが、「親子で辞書を引いてみる」状態をスタートさせるのには、かなりエネルギーを要します。そういった意味でも、小学校低学年くらいがちょうどいいと考えます。大人の国語辞典への移行では、低学年から取り組めたとして、次のステップは何でしょう。そうですね、大人の国語辞典への移行時期です。これは特に何歳からという定規はありませんが、お子さんが子ども用辞書に飽きたような顔をした時が替え時です。つまり、たいていの言葉を引き終わった、説明が幼すぎる、そんな状態が出てきます。「ぼくの辞典じゃ載っていないけど、ママの辞典にはあった」なんてことがあったら、それはズバリ乗り換え時期ですね。急に大人用に移行しても構わないのですが、ここで中学生向けの辞書を紹介します。大人の辞書では、引いた言葉の意味を理解できない場合があります。言葉の説明に使われている漢字が読めない場合もあるでしょう。そんな時は、このあたりの辞書を過渡期に使っても良いと思います。■ 三省堂『例解新国語辞典』第九版林四郎(監修)/篠崎晃一(編修代表)、相澤正夫・大島資生(編著)★出版社のページでセールスポイントをチェック!■ 学研『現代標準国語辞典』改訂第3版林史典、林義雄、金子守(編集)★出版社のページでセールスポイントをチェック!■ 旺文社『標準国語辞典』第七版古田東朔(監修)★出版社のページでセールスポイントをチェック!国語辞典に関する保護者の方からの質問国語辞典に関する質問もいただいているので、少しお答えしたいと思います。【質問】片付けないで、リビングに置きっぱなしになっています。【回答】置きっぱなしでOKです。例えば、靴下やおやつの袋など、本来リビングにあるべきものではない物が置きっぱなしになっていたら、片付ける必要がありますが、第3回でお伝えしたとおり国語辞典はリビングにあった方が良いものです。ですから置きっぱなしでOKです。ふとしたときに家族も手に取ることができて、便利です。学習効果が二の次になっても良いのであれば、インテリアを優先しても良いと思いますが……。【質問】調べた時に、書いてある意味が分からず、親がかみ砕いて説明しなければならないことがあります。【回答】親にとっても大きなチャンスですね!ぜひ、かみ砕いて説明してあげてください。引いた言葉の意味が分からない時にどうしたらいいかについては、第4回で詳しく解説しています。【質問】そもそも知らない言葉を知ることはできないのでは?【回答】深イイ質問ですね。基本的に辞書は知らない言葉を見聞きした時に引くものです。なので「知らない」ということを自覚しないと引けないのです。その言葉の意味が分からないと先に進めない時などは、まさにそうで、切迫して調べるものです。私の息子も小学3年生の時に、ハリー・ポッターの本を読みたい一心で、辞書を引きながら読んでいました。あまりに知らない言葉が多かったのでしょう。それでも、先を読みたい気持ちが、辞書引きの面倒くささを上回ったようです。本は読み進められても、引いたあと、意味を忘れてしまうこともあります。でも、「知らない言葉」と「忘れた言葉」は違うのです。付箋紙による辞書引き方法は第4回で紹介したとおりですが、引いた言葉に付箋紙を貼ると、二度目に引いた時、「その言葉を忘れている」ということを知ることができます。本来、人間「忘れている」ことは、思い出せないのです(笑)。私の子ども時代は付箋紙というものがありませんでしたから、辞書で引いた言葉に赤ペンを引いていました。二度目の出会いは、自分の記憶力の低さにがっかりもしますが、もう一度覚え直す良い機会になりました。また、言葉を増やすことは、知識を増やすだけでなく、概念を増やすことになります。例えば「敷居」という言葉があります。門の内外や部屋の内外を仕切る戸・障子・襖などをあけたてするために、地面や床に渡した溝付きの横木のことを言います。バリアフリーのマンション事情で、この「敷居」がない家があります。そうすると、その家に住んでいる子の概念に「敷居」は存在しません。では、この子は一生「敷居」という言葉に出会わないかというと、そうではありませんよね。大人になってから「あの店、すっかりご無沙汰で。敷居が高くて入れなくなっちゃったんだよ」とか「どこの馬の骨とも分からないやつに、うちの敷居はまたがせない!」(笑)なんて言われた時に、敷居の前で初めて辞書を引くなんてことはないわけです。この「敷居が高い」は「高級店に入りにくい」という使い方は間違いで、「不義理があって入りづらい」時に使いますが、そういう「慣用句」としても使いますし、上にある「鴨居」とセットだと分かったときに、日本建築の美にも触れられます。「そういえば、布団って『しく』って言う?『ひく』って言う?」なんて雑談にも発展させられます。そして、たとえ家になくても、言葉から覚えてしまうという方法もあるというわけです。また、言葉は、もやっとした概念に名前をつけるという意味を持ちます。学校の授業で習った言葉を辞書で引き、あとになって、その言葉に実体験の場で再会した時、初めて腑に落ちるということもあるでしょう。さらに、調べた言葉のそばに載っていた言葉の方が気になって、読んでしまい、そちらの言葉が、以前から名前をつけられなかった感情と結びつくこともあります。差別、嫉妬、希望、後悔。たとえばこんな言葉は赤ちゃんの辞書にはないわけです。でも、成長し、心のひだが増えるにつえ、これらの言葉の持つ感情を経験し、この感情には名前があるのだと知った時、これは名前をつけるほど、誰にでもある感情なんだということを知るでしょう。それはとても大切なことなのです。おわりになんだか壮大な話になってしまいましたね。でも「言葉」とはそういうものです。人間は、考える時と表現する時に言葉を使います。どちらも、語彙が多いほど、深くなります。チコちゃんのせりふではありませんが、ボーッと生きてるんじゃないよ!と叱られるような大人にならないために、できるだけ多くの言葉を教えたい。私はそう感じます。その方が個としても役に立ちますし、社会としても良くなるのです。学校では小学校3年生や4年生で教える国語辞典。でも、言葉に強い興味を抱き始める時期はもっと早いということ、そして、反抗期前ということで、親子一緒に取り組める時期であるということ、こういう点から、5、6歳の時期に、国語辞典と出会うことがとても大切であるということがおわかりいただけたと思います。ぜひ、お子さんと書店に出かけてみてください。そして、国語辞典のコーナーを覗いてみてください。素敵な辞書に出会えますように。そして素敵な言葉たちに出会えますように。■ 連載『ゆか先生の 国語辞典の世界へようこそ』各回の内容第1回:国語辞典でこの時代を生きぬくための基本動作が身につく第2回:子どもにぴったりの国語辞典を選ぼう! 電子辞書ってどうなの?第3回:初めての国語辞典。カバーは?置き場所は?どんなふうに引くの?第4回:ゲーム感覚でやる気をアップ! 付箋紙やノートで記録する方法など第5回:漢字辞典、百科事典、ことわざ辞典、四字熟語辞典、語源辞典など、子どもの世界の辞典いろいろ第6回:まとめ国語辞典を使えるようになった子どもたちのその後
2019年05月22日子どもの「学び」に強い関心をお持ちの読者の方であれば、もうすでにご存知かもしれませんが、「学力」と「体力」は深い関係にあるのです。今回は、学力と体力の関係、そしてなぜ体力が必要なのか、どうすれば子どもに体力をつけられるのかを説明します。持久力が高い子どもは「記憶力」が優れている学力と体力の相関関係については、これまでさまざまな研究により証明されてきました。そのひとつが、2001年にカリフォルニア州教育局が行なった、学業成績と運動との関連性についての大規模な研究調査です。小学5年生約35万人、中学1年生約32万人、中学3年生約28万人を対象に、心肺機能や筋力、持久力、体脂肪率などの体力スコアと、数学およびリーディング(英語読解)の成績との関連性を分析しました。その結果、体力スコアの高い子どもほど、成績優秀であることが確認されました。なぜ、体力が学力に影響を及ぼすのか——。この疑問についても、さまざまな説があります。例えば、海馬の成長が関係しているという説です。海馬とは、記憶に関わる脳の器官で、運動による刺激を受けると成長するといわれています。実際、これまでの研究により、持久力の高い子どもは、同世代で持久力の低い子どもと比べ海馬が大きく、記憶力が優れていることが確認されています。一方で、運動そのものが学力によい影響をもたらすことも明らかになっています。フィンランドの調査では、よく歩く子ほど勉強を苦にしないことがわかりました。また、アメリカの実験では、有酸素運動で心拍数を増やすと、算数の試験の得点が上がるという結果が出ています。さらに、別の調査では、身体を動かした直後、物事に集中できる時間が長くなることが立証されました。乗り遅れ注意!今、子どもの体力は向上傾向にあるしかしながら、体力を向上させるのはそう簡単なことではありません。特に現代は、子どもたちの運動量が減っています。その原因のひとつは、交通手段の発達や、電化製品の普及など、生活が便利になったこと。また、外遊びをする時間や場所の確保、仲間づくりがしづらくなっていることも関係していると考えられています。さらに、深刻なのは、保護者の意識の低下です。体力の重要性に対する認識不足が、子どもの運動機会を減少させているとも言われています。そんななか、子どもたちの体力は、近年向上傾向がみられるようになりました。スポーツ庁が平成20年度から開始した「全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」によると、平成30年度の体力合計点は、小学生女子は過去最高値、男子は平成22年度に次ぐ2番目に高い値、中学生は男女ともに過去最高値でした。その主な要因としては、各学校や教育委員会が、体力の重要性に気づき、向上に向けてさまざまな取り組みを行ってきたことが挙げられます。つまり、地道な努力と工夫次第で、体力は向上できるということです。環境や時代背景のせいにして、それらを怠っていると、遅れをとってしまいます。逆を言えば、少し意識を変えるだけで、体力・学力ともに人一倍抜きん出ることができるかもしれないのです。体力をつけるための食事・運動・睡眠子どもの体力向上のために、家庭でできることは何でしょうか。いろいろなことが考えられますが、絶対に欠かせないのは健康な生活習慣の定着です。国は、子どもたちの健康な生活に必要なものとして、「調和の取れた食事、適切な運動、十分な休養・睡眠」という健康三原則を掲げています。この食事・運動・睡眠の3つは、体力向上にもつながる要素です。では、具体的にどんな食事・運動・睡眠を心がければいいのでしょうか。【1. 調和の取れた食事】健康増進にも体力向上にも、栄養バランスの取れた食事は欠かせません。特に、カルシウム(乳製品、小魚類など)・ビタミン(魚類、きのこ類など)・たんぱく質(肉類・魚類・卵など)は、丈夫な身体づくりに必要な栄養と言われており、バランスよく取り入れたいものです。とはいえ、毎食栄養バランス満点なメニューをつくるのはなかなか大変です。そこで、もっと手軽なことから始めてみましょう。それは、「何を食べるか」ではなく、「規則正しく食べる」ということです。「毎日朝食を食べる」「毎日決まった時間に夕食を食べる」——この2つを習慣としている家庭の中学生は、そうでない家庭の中学生より男女ともに体力があるという調査結果が出ています。朝ギリギリまで寝て、朝食を抜いている家庭や、その日の都合に応じて夕食時間がバラバラという家庭は、そこから改めていくとよいでしょう。【2. 適切な運動】体力向上には、当然ながら運動習慣が不可欠です。運動量の目安として、1週間に420分以上運動している小中学生は、そうでない同年齢の小中学生より体力があるという調査結果が出ています。1週間に420分ということは、毎日同じ時間運動するとすれば1日60分です。まずは、この時間数を目標に、運動する習慣をつくってみましょう。とはいえ、運動が苦手な子どもは、たった1時間の運動もしたがらないかもしれません。であれば、遊びに運動を取り入れてみましょう。その際のポイントは、できるだけ多様な動きができる遊び方を選ぶことです。例えば、鬼ごっこなら、歩く、走る、くぐる、よけるなどの動きを経験することができます。慣れてきたら、「スキップで移動する」「両手でタッチする」など、動き方にルールを加えてみるのもよいでしょう。また、遊びには保護者が積極的に関わることも大切です。必要に応じて手を添えたり、見守ったりするほか、遊具の使い方を教えたり、周囲の状況に気づかせたりなどして、安全を確保しましょう。【3. 十分な休養・睡眠】睡眠も運動と同様に、どれくらい必要なのかわからないという方がいるかと思います。目安として、1日の睡眠時間が8時間以上の小学生、および6時間以上8時間未満の中学生は、それ以外の同年齢の小中学生より体力があるようです。よほど夜更かししない限り、現実的な睡眠時間と言えるのではないでしょうか。ただ、単純に長時間眠ればいいわけではありません。食事と同様、同じ時間に就寝し、同じ時間に起床することが重要なのです。例えば、身体の代謝や免疫を活発にする「コルチゾール」、精神の安定を促す「セロトニン」というホルモンは、朝5時から7時くらいに大量に分泌されます。それらが適切に分泌されるようにするには、毎朝だいたい同じ時間に早起きすること、しっかり朝日を浴びることなどがよいとされています。ですから、曜日などにかかわらず、「夜は9時までに寝て、朝は6時頃起きる」といった睡眠ルールをしっかり決めておくとよいでしょう。***こうして見てみると、体力向上を目指すことは、学力向上ばかりか健康増進にもつながることがわかります。また、子どもだけでなく、大人も一緒に心がけることで、効率よく行えます。これを機に、家族全員の生活習慣を根本から見直してみてはいかがでしょうか。(参考)文部科学省|3子どもの体力の低下の原因文部科学省|子どもの体力向上のために文部科学省|幼児期運動指針スポーツ庁|平成30年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果東洋経済オンライン|子どもの学力と体力の知られざる深い関係プレジデントオンライン|脳細胞が増える運動「3つの条件」COOP共済|今月のテーマ『体力・運動能力がアップする子どもの食事』「早寝早起き朝ごはん」全国協議会|なぜ「早寝早起き朝ごはん」が必要なのでしょうか大学ジャーナル|アクティブで持久力がある人は記憶力も優れている筑波大学サカイク|「早寝」「早起き」の子が、体力が向上するのはなぜ?
2019年05月21日日本でも徐々に浸透しつつある「アンガーマネジメント」という言葉。一般的には「怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング」とされ、ビジネスパーソンやアスリートが自己コントロールのために取り入れているほか、いまでは学校教育の現場にも広まりつつあります。その学校教育向けのアンガーマネジメントプログラム開発に深くかかわっているのが、早稲田大学教育学部教授・本田恵子先生です。怒りっぽい子どもに手を焼いているという親のために、家庭でもできるアンガーマネジメントのコツを教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)キレやすい子どもが増えている時代背景アンガーマネジメントが広まっている要因としては、感情をコントロールできない子どもが増えたことも挙げられます。その背景にあるのは環境の変化です。いまはまさにデジタル全盛の時代で、かつてのアナログの時代とは子どもをめぐる環境は大きく変わりました。携帯電話が普及する前なら、友だちに電話するにも、友だちの親など誰かに取り次いでもらうことが普通でした。そうやって、ふつうにコミュニケーション能力や社会性が育つ時代だったのです。また、当時は「待つ」ということがあたりまえの時代でもありましたよね。電話もすぐつながるわけではありませんし、情報を得るにもニュースの時間や新聞が届くのを待つ必要がありました。でも、いまは別世界。『LINE』を使うにも、子どもたちの場合はそれこそ「数秒ルール」です。いつも「返信しなきゃ!」と思っていますし、友だちから遅れまいとスマホを介して情報に追われ、つねに不安と興奮をいったりきたりしている状況といえます。そんな状況では、感情が安定するわけもありません。それこそ、感情をコントロールできる「キレない子ども」に育てるとなると、そういう状況を変える必要があります。たとえば、家族で食卓を囲むときにはテレビを消すとかスマホは使わないといったルールをつくることも有効でしょう。家族のあいだできちんとコミュニケーションができなければ、自分の感情をコントロールして他人と適切な人間関係を築くことなどできるはずもありません。そういう意味でも、親が子どもとしっかり対話することが大切になります。本来のアンガーマネジメントは多くの時間が必要親子間の対話におけるポイントを紹介する前に、アンガーマネジメントとはどういうものかをまず知ってもらいたいと思います。怒りなどの感情をコントロールできない人は、自分の欲求を間違ったやり方で出してしまうという特徴があります。アンガーマネジメントとは、その欲求の正しい出し方を学び直すという時間がかかる教育プログラムであり、本来なら予防的なプログラムでも最低で6回の講習を受けてもらう必要があります。最低6回のプログラムを受けると聞いて、「そんなに回数が必要なの?」と、ちょっと驚いた人もいるかもしれません。いま、ビジネスパーソンやアスリートに広まっているアンガーマネジメントというのは、そのエッセンスを抜き出して、ちょっと怒りを感じたときなどにその場で対処するための簡易的なテクニックといった側面が強いものですから、意外に思う人がいるのもわかります。でも、すでにキレやすくなってしまっている子どもの場合、そもそも言葉で自分の行動が制御できない状態になっているのですから、それらの簡易的なテクニックは使えませんし、正しく欲求を表現することを学び直すには本当に時間がかかるものなのです。キレにくい子どもを育てるために、親は子どもとしっかり対話することが大切だとお伝えしました。そのためには、親が自分と子どもの気持ちや欲求をわけてとらえる力を持っていることが大切になります。「あなた(子ども)のため」といいつつ、実は「わたし(親)のため」に指示を出したり話したりしていることが多いからなのです。キレやすい子どもに育ててしまう親の言葉アンガーマネジメントプログラムでは、まず、子どもに対するNGワードを親や教員に学んでもらうことにしています。そのなかから、基本中の基本といえる3つのNGワードをお伝えします。【1】事実を確認する前に決めつける言葉例:「あなた、○○したんだって?」「話、聞いてないでしょ」【2】気持ちの代わりに「なんで?」を使う言葉例:「なんでここを汚すの?」「どうしてそういうことをいうわけ?」【3】ものごとを否定的に伝える言葉例:「ルール違反!」「規則を守れないなら、もう来ないで」【1】の例を他に挙げてみましょう。たとえば、子どもの部屋を見たときにテレビゲームの電源が入っていたとします。つい、「またゲームしてるの?」といってしまうのが一般的ではないでしょうか。でも、もしかしたら子どもは、そろそろゲームをやめて勉強をしようと思っていたところかもしれません。すると子どもは、「いま、勉強しようと思っていたのに……」「だったらもう勉強はやめた!」と思ってしまう。決めつけられることを子どもはとても嫌がります。そうではなく、「WHAT」を使って話をしましょう。この場合なら、親からすればたとえゲームをしているところに見えても、「なにしてるの?」と聞くのです。そうすれば、子どもは「いまから勉強するところ」と、安定した状態を保つことができます。【2】の場合は疑問形になっていますが、親の本当の気持ちを考えるとどうでしょうか?多くは理由を知りたいわけではないはずです。ならば、本当の気持ちを伝えてあげればいい。「どうしてそういうことをいうわけ?」では子どもはますます反抗してしまいますが、「そういうことをいわれると、お母さん悲しいな」といわれれば、子どもも素直に「ごめんね」と受け入れてくれます。【3】は比較的わかりやすいかもしれませんね。否定される言葉をかけられれば誰しも気持ちいいものではありません。なかでも、「マイナスとマイナスの組み合わせ」の言葉はとくに注意が必要。たとえば、どこかに出かけなければならないのに、子どもがぐずっていたとします。「来ないんだったらもう知らないわよ」なんて怒鳴られれば、そんなに怒っている親がいる場所に子どもが行きたいと思うわけがないですよね。そこで、その言葉を「プラスとプラスの組み合わせ」に変えてあげればいいのです。この場合なら、「いま来たら、乗りたい電車に間に合うよ!」という感じですね。きちんと自分の感情をコントロールできる子どもに育てたいという願望は親であれば誰にでもあるものです。日頃からこれら3つのNGワードを使っていないか、ぜひチェックしてみてください。『キレやすい子へのアンガーマネージメント―段階を追った個別指導のためのワークとタイプ別事例集』本田恵子 著/ほんの森出版(2010)■ 早稲田大学教育学部教授・本田恵子先生 インタビュー一覧第1回:子どもが「キレやすい」人間に育ってしまう、“絶対にNG”な親の振る舞い方第2回:意外と言いがち!子どもがますます反抗する、親のフレーズ3パターン第3回:「10歳の反抗期」に親がすべきこと。子どもは親の思いどおりには育たない!(※近日公開)【プロフィール】本田恵子(ほんだ・けいこ)早稲田大学教育学部教授。中学、高校の教員を経験したあと、教育現場にカウンセリングの必要性を感じて渡米。アメリカにて特別支援教育、危機介入法などを学び、カウンセリング心理学博士号取得。帰国後にスクールカウンセラー、玉川大学人間学科助教授等を経て現職。学校、家庭、地域と連携しながら、児童、生徒を支援する包括的スクールカウセリングを広めている。2000年代からは、矯正教育の専門家を対象としたアンガーマネジメント研修の講師も務める。著書に『改訂版 包括的スクールカウンセリングの理論と実践』(金子書房)、『脳科学を活かした授業をつくる 子どもが生き生きと学ぶために』(みくに出版)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月21日17歳前後の少年が相次いで凶行を起こしたことで、「キレる17歳」という言葉がメディアをにぎわせたのは、2000年頃のこと。それから約20年が過ぎましたが、その間にも、いわゆる「キレる」子どもたちの存在による学級崩壊等の問題は報じられ続けています。では、子どもをキレにくい人間に育てるにはどうすればいいのでしょうか。カウンセリング心理学博士であり、アンガーマネジメントの専門家でもある早稲田大学教育学部教授・本田恵子先生にアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「キレる」人間には3つのタイプがある一般的に「キレる」というと、興奮して怒っている状態をイメージするでしょう。でもそれだけではなく、「キレる」人間には大きく3つのタイプがあります。ひとつは、そのすぐに興奮して怒りっぽいタイプ。わたしは「赤鬼」タイプと呼んでいます。アドレナリンが出やすく、いろいろな刺激に対してすぐに興奮してカッとなるタイプですね。このタイプは、八つ当たりをしやすく周囲に自分の感情をまき散らします。大人でも、パワハラをするような人はこのタイプに属します。その逆にあたるのが「青鬼」タイプ。強い不安を抱えていて、ひきこもる傾向にあります。自分が安心できる場所にいたり活動をしたりしているときは安定していますが、そこに他者が侵入してきてやりたいことを止められたり、無理やり外に出されそうになったりすると、激しい攻撃をすることもあります。さらに「凍りつき」というタイプもあります。これは、虐待やいじめ、それから支配的な家庭に育った子どもに多いタイプですね。子どもは3歳くらいになると、「こういうことをやりたい」といった自我が出てきます。でも、自我を出したときに親に否定されると、子どもは「いい子でいないといけない」と思うようになります。ただ、自我に逆らって「いい子」でい続けるのは大変です。小学校ではずっと「いい子」だった子どもが、中学生になるといきなり不登校になっちゃった――。「いい子」でいることに疲れてしまうと、こういうことが起きるのです。親が怒鳴るときは子どもの脳も怒鳴っているそういった点も含めて、「キレやすい子ども」になってしまうかどうかは、親のかかわり方にかかっているといってもいいと思います。じつは、安定した子どもになるかどうかのまず第1段階は、生まれてから3カ月くらいのあいだに決まってしまいます。生まれたばかりの赤ちゃんは、まだはっきりとものを見ることができません。音は聞こえてにおいも感じられるけど、その正体はわからない。だから、とっても不安です。体も動かせませんから、赤ちゃんができることは泣くことだけ。その泣き声を聞いた親が、しっかりと赤ちゃんの不安を察知して、おむつを替えてあげたりミルクをあげたりするなど、赤ちゃんが感じているいろいろな不快を快に変えることで、赤ちゃんは少しずつ安心して穏やかになっていくのです。その3カ月のあいだに、たとえば未熟児で生まれたりなんらかの病気を持っていたりしたことで親から離される経験をした子どもの場合、分離不安を生じやすくなります。だから、幼稚園や保育所に行く際にもすごく泣く傾向にある。その原因は、生まれてから3カ月のあいだの親との接し方にあるのです。そのあとも、子どもがキレやすくなるかどうかは、親のかかわり方が大きく左右します。3歳くらいになって感情が出そろってくると、子どもは親の感情や行動を真似していくようになります。自分にとってマイナスになる場面では、うそをつくとうまくいくことを見ていると同様の行動をする。また、親から怒鳴られている子どもは、人と接するときや人になにかをしてもらいたいときには怒鳴るようになる、という具合です。だから、親から虐待された子どもは、学校ではいじめっ子になりやすくなるといいます。このことには、脳内にある「ミラーニューロン」という神経細胞の働きが関連しています。これは、文字通り、「鏡の神経細胞」です。これによってどんなことが起こるのか。たとえば、父親が母親に暴力を振るっている場面を子どもが見てしまった。すると、子どもの脳のなかでは、ミラーニューロンによって子ども自身が暴力をしているときと同じ活動をする。つまり、親が怒鳴っているのを見たら、子どもの脳も怒鳴っているというわけです。「三つ子の魂百まで」という言葉がありますが、これは脳科学的にも正しいといえます。頭ごなしの否定は絶対にNG子どもをキレやすい人間にしないためには、親は自分の行動を振り返って見直すしかありません。そのチェックポイントともいうべき行動指針はいくつもありますが、重要なことをいくつかお伝えするならば、まずは「肯定的で具体的な行動を起こす声かけ」を意識することではないでしょうか。頭ごなしの否定の言葉はNGです。「○○しないで」といわれると、子どもはなにをしていいのかわからず不安になってしまいます。電車のなかで静かにしてほしいときなら、「騒がないで」ではなくて「お口を閉じましょうね」「本を読もうか」というといった具合です。また、さまざまな試行錯誤をさせてあげることも大切です。子どもは3歳くらいになると、いろいろと「実験」をしたがります。お風呂で石けんやシャンプーなどを混ぜて遊んでいるなんてこともあるでしょう。もちろん、危険が伴うことはやめさせなければいけませんが、ある程度の試行錯誤、実験は許容してあげてほしいのです。すると、そういった遊びなどを通じて、子どもは「これをやると怒られるんだ」「こういう遊び方はケガをするんだ」と、実体験に基づいた説得力のあるルールやパターンを学んでいくことになる。そのなかには、「うまくお友だちと付き合うにはこうすればいいんだ」というふうに、人間関係にかかわることも含まれます。いずれにせよ、大切なのは子どもに対する親のかかわり方。それを肝に銘じて子どもの目線に立ち、子どもに暴力的な場面を見せていないか、頭ごなしに子どもの欲求を否定していないかと、普段の行動を振り返るようにしてほしいですね。『キレやすい子へのアンガーマネージメント―段階を追った個別指導のためのワークとタイプ別事例集』本田恵子 著/ほんの森出版(2010)■ 早稲田大学教育学部教授・本田恵子先生 インタビュー一覧第1回:子どもが「キレやすい」人間に育ってしまう、“絶対にNG”な親の振る舞い方第2回:意外と言いがち!子どもがますます反抗する、親のフレーズ3パターン(※近日公開)第3回:「10歳の反抗期」に親がすべきこと。子どもは親の思いどおりには育たない!(※近日公開)【プロフィール】本田恵子(ほんだ・けいこ)早稲田大学教育学部教授。中学、高校の教員を経験したあと、教育現場にカウンセリングの必要性を感じて渡米。アメリカにて特別支援教育、危機介入法などを学び、カウンセリング心理学博士号取得。帰国後にスクールカウンセラー、玉川大学人間学科助教授等を経て現職。学校、家庭、地域と連携しながら、児童、生徒を支援する包括的スクールカウセリングを広めている。2000年代からは、矯正教育の専門家を対象としたアンガーマネジメント研修の講師も務める。著書に『改訂版 包括的スクールカウンセリングの理論と実践』(金子書房)、『脳科学を活かした授業をつくる 子どもが生き生きと学ぶために』(みくに出版)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月20日子供にウソをつかれたら、親はショックですよね。子供が何度もウソをつくことに不安を感じて、叱った経験があるかもしれません。安心してください、子供はウソをつくものです。しかし、子供がウソをつくことに対して、親が何も対応をしないわけにはいきません。子供がウソをついたとき、親はどのように対応すればよいのでしょうか。今回は、子供のウソの種類と対応策について紹介します。子供はウソをつくもの子供はウソをつくものです。そもそも、大人ですらウソをつくのですから、子供がウソをつくことは自然なことですよね。臨床心理士の井上序子さんは、ウソをつく子供について次のように述べます。嘘をついたことがわかっても、嘘をつく悪い子というように性格に原因を求めるのではなく、「何があるのだろう」と考えてあげることが大切です。(引用元:大阪市|【第9号】「子どもの嘘~どう対応する?」臨床心理士・精神保健福祉士井上序子)その子の性格が悪いから、ウソをつくわけではありません。大切なのは、どうして子供がウソをつくのかという原因をわかってあげることです。では、どうして子供はウソをつくのでしょうか?ここからは、ウソの原因とそれぞれの原因に応じた対応策を3つ紹介します。子どもがウソをつく原因1:事実と空想の区別がつかない子どもがウソをつく原因の1つ目は、子どもが事実と空想の区別をつけられないことがです。実は、ウソは心理学的に高度な技術。したがって、子供がウソをつくようになったということは、それだけ子供が成長したということを意味します。井上さんは、子供の成長とウソの関係を次のように説明します。子どもは2歳半頃から嘘をつくようになります。これより幼い頃は、空想や願望を話すことはあっても、嘘をついているという意識はないことが殆どです。3歳頃になると自分の言っていることが現実とは異なっていることや、嘘をつく目的を意識できるようになります。違う見方をすると知能が発達しているということです。(引用元:同上)つまり、心理的な発達が不十分な2歳半までのウソに、「事実を偽ろう」という意識はありません。そして、成長すれば、事実と空想は区別できるようになります。なので、2歳半までの子供のウソに対して過度に敏感になる必要はありません。大人がしっかりと子供を見守って話を聞き、子供の言葉が空想なのか事実なのかを判断しましょう。子どもがウソをつく原因2:かまってほしい子どもがウソをつく原因の2つ目として挙げられるのは「もっとかまってほしい」という気持ちです。子供の中には、親にかまってほしいがためにウソをつく子がいます。具体的には、お腹が痛くもないのに痛いと言ってみたり、学校での出来事を実際より大げさに表現したりしてしまうのです。こうしたウソの原因は、子供とのスキンシップ不足。仕事が忙しくなると、ついつい子供との会話やスキンシップが減ってしまうかもしれません。また、妹や弟ができると、上の子にかまってあげられる時間が減ってしまうでしょう。すると、子供は寂しくなってウソをついてしまうのです。こうしたウソへの対応はシンプル。子供との会話や、スキンシップの時間をつくってあげるとよいでしょう。子どもがウソをつく原因3:自分の身を守りたい子供がウソをつく最大の原因は「自分の身を守りたい」という気持ちです。具体的には自分の失敗を「〇〇くん/ちゃんのせいで、こうなった」と、友達のせいにしたり、まだやっていないのに「宿題はやったよ」と言ったりするウソが当てはまります。こうしたウソを聞くと、ウソをやめさせるために厳しく叱ってしまいたくなりますが、それは逆効果。懲罰的な環境では、上手なウソをつく子供が育ってしまう可能性があるのだそう。心理学者であるTalwarさん(マギル大学)とLeeさん(トロント大学)の論文によると、西アフリカの懲罰的な学校に通う3〜4歳の子供たちは、懲罰的ではない学校に通う子供達よりもウソをつく傾向がありました。したがって、子供が保身のためにウソをついた場合は、子供を追い詰めるほど叱らないほうがよいのです。教育評論家の親野智可等(おやのちから)さんは次のような対処法を紹介します。子どもの愚痴、失敗談、要求、わがままなども、門前払いせずに、まずは共感的に聞いてあげましょう。もちろん子どもの要求に対して、最終的には「ノー」と断る場合もあります。でも、そういうときも、まず取り敢えずは共感的に聞いてあげることが大切です。このように共感的で寛容な親なら、子どもは親を信頼して安心して生きられます。ウソをつく必要もなくなり、正直になんでも言えるようになります。(引用元:親力|親が寛容なら子どもはウソをつく必要がなくて正直になる)どんな言葉でも、子供の言葉をまずはしっかりと聞いてあげるようにしましょう。そうすることで子供は安心して正直な言葉を話せるようになりますよ。***いずれのウソの場合も、常に厳しく叱ることはよくありません。まずはきちんと子供の言い分を聞き、冷静に「自分の身を守るようなウソはよくない」など、よくないウソが存在することを伝えてあげましょう。また、子供が3〜4年生になってくると、ウソに合わせて自分の行動を変えられるようになるため、ウソは見破りにくくなります。それまでに子供とウソについて話し合ってみるとよいかもしれません。文/村瀬裕一(参考)大阪市|【第9号】「子どもの嘘~どう対応する?」臨床心理士・精神保健福祉士井上序子親力|親が寛容なら子どもはウソをつく必要がなくて正直になるAll About|子どもにうそをつかせないための親の心得5カ条All About|嘘つきは泥棒のはじまり?子どもの嘘に気づいたらTalwar, Victoria and Kang Lee (2011), “A Punitive Environment Fosters Children’s Dishonesty: A Natural Experiment”, Child Development, Vol. 82, Issue 6, pp. 1751–1758.
2019年05月19日今年も運動会シーズンがやってきました。「お父さん、お母さん、がんばったよ!」、我が子がそう笑顔で言ってくれたら、親として嬉しいですよね。でもせっかく走るのならば、「少しでも速く!」――お子さまも親御さまもそう思っているのではないでしょうか。そこで今回は、運動が苦手な子どもが主役の運動教室『スポーツひろば』代表である西薗一也先生に、速く走るコツをお聞きしました。子どものかけっこは言葉かけで速くなる!?西薗先生よると、幼稚園~小学校低学年の子どもの場合は、テクニックだけでなく、「親の言葉かけ」でも速くなるのだそう。「子どもにとって親の言葉かけはとても重要です。言葉かけだけでも十分速くなりますよ。まず、お子さまとかけっこの練習をするときは、とにかくたくさん褒めてあげてください。そして、子どもにわかりやすい言葉を意識して使いましょう。『頑張って速く走ろうね!』といった抽象的なアドバイスでは子どもはどうやって頑張ったら速く走れるのか、理解ができません。電車が好きなお子さまであれば、『次は特急電車のスピードで走ってみよう!』などがいいでしょう。また、練習時間は短めに。かけっこは(フォームも大切ですが)全力で走ることがポイントです。それなのに、長い時間、練習をさせてしまうと、子どもの集中力や体力が落ちてしまうのです。短期集中で頑張ってくださいね」この3つのポイントですぐに速くなる!速く走るためのテクニックがたくさんある中で、西薗先生が「まずはこの3つに気をつけるだけでかけっこが速くなる」という言葉かけポイントをご紹介します。■「スタートからゴールまで、ずっと前を見ていよう!」当日はもちろん、練習中でも、お父さんやお母さんの顔をチラチラ見てしまう子は多いそう。そうすると、集中力もキープできませんし、スタートダッシュも遅れがちです。「ヨウイ!」のときから走り終わるまで、よそ見をせずにまっすぐ前を向いて走るように練習してみてください。キョロキョロせずに走るだけで、タイムが全然違います。■「ゴールの3メートル先まで走ろうね!」ゴール地点を目指して走ってしまうと、ゴール直前でスピードが落ちてしまいます。すぐには止まれないくらいの勢いで駆け抜けましょう。ゴール直前で、1人お友だちを追い抜くくらいの気持ちが大切です。「もし一番でなかったとしても、最後まであきらめずに走ったらかっこいいよね!」など、練習中の声かけも忘れずに。■「100%の力で走ろうね!」練習のとき、「今の走りは何%の力だった?」と聞いてみてください。「う~ん、70%くらいかな」と子どもが答えたら、「じゃあ次は100%の力で走ってみようか!〇〇君(〇〇ちゃん)ならきっとできるよ」と伝えてあげてください。そうすると、ほとんどの子どもが1回目よりも速く走れるのです。もちろん、「すごい!さっきよりも速くなってるよ」としっかり褒めてあげてくださいね。そして、このアドバイスのほかに、もうひとつ大事なことがあるようです。西薗先生は、「練習中にできないことがあったとしても、子どもを責めないで」と話します。「子どもたちは一生懸命頑張っているんです。もしかしたらその子は、かけっこがあまり好きではないかもしれない。でも、速く走るために、頑張って練習をしているんです。それなのに、大好きなお父さんやお母さんに、『なんで前を向けないの!』『ゴールの3メートル先まで走る、って言ったでしょ』なんて言われたら、悲しくなってしまいます。できなかったことを責めるのではなく、できたことを見つけて褒めてあげてください。『さっきより集中できていたみたいだね』『ゴールで止まらず走れたね。よーし、次はもっと駆け抜けるイメージで走ってみようか』と、少しでもできたことを褒めてあげれば、子どものやる気は持続しますから」かけっこが今より速くなるテクニック!次に、実際に走る際のポイントも教えてもらいました!上述した内容も含め、スタートからゴールまでの流れでご説明しましょう。【スタート時】①前を見る前方を見つつも、あごを突き出さないように注意しましょう。②手の握り方は生卵が割れないくらいの力加減③肘は「小さく前へならえ」の角度④1歩目に出す足を決めておく「ヨウイ!」と言われたときに自然に引いたの足が一歩目の足です。スタートから3歩が非常に重要なので、練習をするときは、スタートから5メートルだけをたくさん練習しましょう。⑤体に力を入れすぎない全身に力が入ってしまうと、すぐに体が動かず、スタートダッシュが遅れてしまいます。脱力したポーズが◎。⑥スタートの音をよく聞く「ヨウイ!」のとき、スタートの姿勢をつくった状態で目を閉じます。そして、「ドン!」の合図で目を開け、一歩を踏み出します。本番前に何度か練習しておくといいでしょう。【走り方】①腕を後ろに大きく振る腕は前に振り上げるときは小さく、逆に後ろに引くときは大きく引く。腕を大きく振って、肘の後ろでたいこを叩くようなイメージです。腕の振りが速いと足も速く動きますよ。②かかとは地面につけず、つま先で走るかかとが地面についている時間が長くなると、ドスンドスンとした走り方になり動きが遅くなってしまいます。タッタッタ!と軽やかに走れるといいですね。③ゴールの3メートル先まで走る④100%の力で走るかけっこが速くなる簡単トレーニングかけっこ練習のほかにも、自宅でできるトレーニングを西薗先生に教えてもらいました。走るときの歩幅が広がると、かけっこが速くなるのだそう。太ももや腰を鍛えて、一歩一歩を大きく踏み出しましょう。2つとも室内でできるトレーニングです。親子で楽しくやってみてくださいね。【太ももを鍛える】アキレス腱を伸ばす形から、徐々に膝を下げ、次にゆっくり元の姿勢に戻ります。1日、左右5~10回ずつやってみてください。かけっこに使う筋肉がつきますよ。【お尻歩き】膝を伸ばして、お尻で歩きます。2メートルくらい前に進んだら、今度は後ろに下がりましょう。ポイントは上半身の姿勢を保つことです。かけっこで本当に大切なこと最後に西薗先生にかけっこの一番のポイントを聞いてみました。「本当に大切なことは、『これ以上速く走れない!』というくらい全力で本気で走ることです!かけっこの順位なんて、どうでもいいのです。私は、教室に来てくれている子どもたちにいつも話しています。『一番かっこ悪いのは、ビリになることじゃなくて、全力で走らないことだよ』と。だから、お父さんお母さんも、ぜひ『全力で走ったこと』をたくさんたくさん褒めてあげてください。きっとその子の自信になるはずですし、かけっこが好きになると思いますよ。」***ご自身も小学校のころは “大きめ体型” で、運動が得意ではなかったという西薗先生。「だからこそ、運動があまり好きじゃない子に、運動の楽しさを知ってもらいたいのです」と話していました。今回、こどもまなび☆ラボ読者の親子(小1、小2)に協力をお願いしたのですが、練習を見守っているお母さんが、「そうじゃないでしょ」と言いそうになり、言葉をグッとこらえる、という場面が印象的でした。そして、西薗先生にたくさん褒めて(本当に小さなことでもかなり褒められていた)もらった2人は、実際にかけっこが速くなったそうですよ!【プロフィール】西薗一也(にしぞの・かずや)株式会社ボディアシスト取締役。スポーツひろば代表。一般社団法人子ども運動指導技能協会理事。運動が苦手な子どもを対象にした体育の家庭教師の事業をはじめとして、子ども専用の運動教室の開設や発達障害児向けの運動プログラムの開発など、新たな体育指導法の普及 に幅広く取り組む。著書に『発達障害の子どものための体育の苦手を解決する 本』(草思社)『うんどうの絵本』(あかね書房)。運動が苦手な子のための運動教室『スポーツひろば』運動を心から楽しめる!諦めない心を育てる!スポーツひろばは『心を育てる』運動教室です。『うんどうの絵本かけっこ』(あかね書房)監修:西薗一也絵:左藤芳美かけっこが速くなるコツがたくさん詰まっています。とても分かりやすい内容なので、練習前にぜひお子さまと一緒に読んでみてください。体の使い方だけでなく、親の声かけの仕方も詳しく載っており、大変ためになりますよ!【SPECIAL THANKS】『NPO大江戸』ちょっとのコツで速くなる「かけっこ倶楽部」はいつも大盛況!理事長の橋本直和さん、理事のえびさわけいこさんインタビューはこちら。
2019年05月19日「子どもの集中力が続かない」というのは、子育て中によく聞かれる悩みのひとつです。また、集中力はあっても「自分が興味のあること限定」というお子さんも少なくありませんよね。今回は「子どもの集中力が続かない原因と改善方法」についてご紹介しましょう。子どもの集中力を低下させる原因は?子どもの集中力が低下する原因には、さまざまものがあります。代表的なものは以下の通りです。・長時間のゲームやテレビ鑑賞ゲームやテレビ、スマートフォンを閲覧する時間が長くなってしまうと、脳の中で記憶や学習、感情のコントロールに深くかかわっている前頭前野という部分が疲れてしまい、注意力散漫になったり、集中力が低下してしまったりするといわれています。・不規則な生活夜ふかしをして十分な睡眠時間がとれていないと、イライラしやすくなったり、ケアレスミスが多くなったりしやすいといわれています。また、朝起きるのが苦手でいつも遅刻ギリギリの時間まで寝てしまい、朝食をとる時間がないと、集中力が足りなくなるともいわれているのです。不規則な生活の中に、集中力が低下する原因がいくつも潜んでいるといえるでしょう。集中力のある子とない子の違い一般社団法人教育デザインラボ代表理事で、都留文科大学特任教授の石田勝紀氏は、集中力に関して「人間は『集中タイプ』と『拡散タイプ』の2つに分かれている」と述べています。「集中タイプ」は、先天的に集中力が高いケース、自分の興味のあることに関しては抜群の集中力を発揮するケース、「習い事や部活動で忙しく、短時間で宿題をこなさなければいけない」など必要性に迫られることで集中力を発揮するケースがあるといいます。勉強は好きではないものの、歴史小説や歴史漫画が好きで、歴史の成績だけは常にトップクラスであるという子どもや、趣味に没頭すると誰かが話しかけてもまったく反応しない子どもなどはこのタイプです。一方の「拡散タイプ」は、周りの人々や環境のことが常に気になりやすく、集中力があまり高くありません。それゆえに「落ち着きがない」と思われることも。しかし、見方を変えれば、「よく気がつく」「他の人の様子を察知できる」ということでもあり、将来的にサービス業などで活躍する可能性が高いのだそう。集中力があるに越したことはありませんが、集中力がないからといって子どもを否定的に判断したりせず、「この子はこういうタイプなのだ」と見守ることも大切だと言えますね。子どもの集中力をアップさせる方法子どもの集中力をアップさせるためには、普段の生活の中に以下を取り入れましょう。・集中モードへの切り替えを促す何かに集中するためには、「集中モード」に入ることから始まります。大人の場合でも、就業時間になったからといってすぐに仕事に没頭できるわけではなく、今日のタスクをチェックしたり、デスクの上をキレイにして仕事をしやすい環境を作ったりして、徐々に集中モードに切り替えていくという方が多いのではないでしょうか。ぜひそれを子どもにも習慣づけてみましょう。具体的には、テレビやスマートフォンから離れる、机に向かってノートや鉛筆を準備する、ひらがなや漢字の書き取りといった簡単な勉強から始めることなどが効果的です。・子どもに「集中力がない」と言わない教育評論家の親野智可等先生によると、親に「集中力がないんだから!」と言われ続けた子どもは、無意識のうちに「自分は集中力がないんだ」と思うようになります。その結果、子どもは「どうせ自分は集中力がないから」と何事もすぐに諦める癖がついたり、自己肯定感が低くなったりしてしまいます。そうならないためにも、子どもが何かに集中していたときは、「集中力があるんだね!」と褒めてあげましょう。勉強ではなく、遊びでもかまいません。親に集中力があると認めてもらえた子どもは、たとえ集中力が切れそうになったときでも「自分には集中力があるんだから、まだやれる!」と自分自身を奮い立たせることができるようになります。・ゲーム機はルールを設けて楽しむ2017年に朝日学生新聞社が小学1年生~6年生の男女457人を対象に行なった調査によると、「“ゲーム機を持っているが使用を禁止されている子ども” よりも、“ゲームをしてもOKな子ども” の方が勉強への集中力が高く、宿題にも自主的に取り組み、親との会話も多い」という結果が出ています。長時間の使用によって集中力を妨げる可能性があるゲームですが、だからといって禁止するのではなく、家庭内でルールを決めて使用することでメリットがあるようです。***子どもの集中力がないと、親はつい焦ったり、時にはイライラしてしまったりすることもあります。でもそれは、子どもが本来持っている集中力が発揮できない状態になっているだけかもしれません。生活環境を整えたり、普段の言葉がけを意識したりすることで、子どもの集中力を育てるためのサポートをしてあげましょう。文/田口るい(参考)Study Hackerこどもまなび☆ラボ|子どもの「集中力」を養う方法。遊びや習い事を活用しよう!東洋経済オンライン|子どもの集中力は、こうやって作り出せる!ベネッセ教育情報サイト|子どもに集中力をつけるには?[教えて!親野先生]All About|学習集中力の高め方!ゲームと勉強で態度が違う理由ITmedia NEWS|「ゲームOK」の子の方が勉強に集中し、親との会話も長い……朝日小学生新聞調査
2019年05月18日教育といえば「何かを教える」というイメージが強いですよね。しかし最近では「教えない」教育が重視されています。今回は、教えない教育がもたらすメリットや、家庭でもできる教えない教育について紹介しましょう。詰め込み教育から「教えない」教育へこれまでの教育は、試験や受験に役立つ知識をただひたすら詰め込む形が主流でした。教科書の内容を暗記したり、計算問題をひたすら反復練習したりして知識を蓄えることこそが、正しい勉強方法だと考えていらっしゃった親御さん方も多いのではないでしょうか。しかし、時代は変化しました。今やロボットやAIが人間の代わりに仕事や作業をすることが当たり前になりつつあります。その結果、これからを生きる子どもたちに必要なのは、知識を詰め込むことではなく、物事をより柔軟に、かつ自主的に考える力を身に付けることに変わってきているのです。こうした力を育てるためには、かつての教育とは真逆ともいえる「教えない」教育が有効だとされています。教えない教育がもたらすメリット教えない教育とは、子どもに何も教えずにただ放置することではありません。学びの基礎となる部分をしっかり教えたり、安全な環境を整えたりした上で、その先を子ども自身に考えさせることに重点を置いた教育です。結果として、子どもには以下のようなメリットがあります。・思考力が身につく教えない教育は、言い方を変えれば「子どもに考えさせる教育」です。「どうしたらこれが達成できるのか」「どうしたら前よりもうまくできるのか」などと考えることで、思考力がどんどん身についていきます。・自分の意見を言えるようになる教えない教育では、自分の中の考えをまとめて実行したり、相手にわかりやすく伝えたりすることが必須です。その結果、子どもは、自分の意見を言うことに慣れていき、やがてプレゼンテーション能力が向上していくことも期待されています。・問題解決能力が伸びる子どもが自分なりに試行錯誤することで、納得のいく答えを導き出したり、自分の本意とは違う結果を受け入れたりする場面が、教えない教育ではたくさん存在します。そうした経験をした子どもは、問題にぶち当たった時にも諦めたりせず、どうすれば解決できるのかをしっかりと考えることができるのです。・知的好奇心が伸びる教えない教育を行うと、子どもは新しい発見にたくさん出会います。その結果、自分で考えることの楽しさや、気づくことの喜びを知っていくようになり、知的好奇心がどんどん伸びていきます。子どもが「学びたい」と思える環境づくりのコツ教えない教育を通して、子どもが自ら「学びたい」と思えるようにするために、以下に取り組んでみましょう。・子どもが集中している時は見守る子どもが何かに集中している時間は、まさに「自ら学んでいる」状態です。そんな時はついつい「すごいじゃん!」「ママ(パパ)にも見せて!」などと声をかけたくなりますが、その気持ちをぐっとこらえて見守るようにしましょう。教えない教育では、子どもが行なっていることに親がやたらと手出しをするのではなく、子どもが安心して集中できる環境を整えてあげることこそが重要とされています。・自然の中で遊ばせる自然には、木の香りや太陽の光、土の感触や鳥の鳴き声など、五感への刺激が溢れています。脳科学分野の権威である小泉英明氏は、自然がもたらすさまざまな刺激についてこう述べています。「光、音、様々な形や色、感触――自然は、意図しない刺激に満ちています。一方、人間が与える教育は、意識上の言語で作られたもの。良い教育をしているつもりでも知らず知らずのうちに意識下への刺激がカットされて、刺激が狭められてしまう危険性があるのです」(引用元:日経DUAL|“教えない”早期教育を脳科学者らが勧める理由)さらに小泉氏は、意欲ややる気にかかわっている脳の内側を鍛えるためには、ひらがなや数字を教えるといった知育的な学びよりも、まずは自然に触れることが大切だとおっしゃっています。子どもと自然がいっぱいの公園などで遊ぶのはもちろん、キャンプや農作業体験をするのも、教えない教育の一環として有効です。・子どもの質問にすぐ答えを出さない子どもに「どうしてこれはこうなるの?」と質問されたら、「それはこうだからだよ」と答えを教えて説明する親は多いでしょう。しかし、それでは子どもの考える機会を奪うことにつながる場合もあります。そのため、子どもに質問されたら「どうしてだと思う?」と質問返しをして、子どもなりの考えを引き出しましょう。そうして自分の考えを言えたら「しっかり考えたんだね」と褒めてあげるのがコツです。そんなやりとりを通して、子どもは考えることの楽しさを覚えていきます。***昨今では、低年齢から塾や習い事をする子どもも多く、親はつい「うちの子にも何かさせなければ……」と焦りがちです。しかし、何かを教えたり与えたりする教育だけでなく、あえて教えない教育も、子どもの成長を促すことを知っておきたいですね。文/田口るい(参考)プレジデントオンライン|ペラペラな親ほど早期英語教育に“冷淡”日経DUAL|“教えない”早期教育を脳科学者らが勧める理由プレジデントオンライン|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣日経ビジネス|先生が「教えない」ほうが学力は伸びるぎゅってweb|一生モノの「集中力」は子どものときにベネッセ教育情報サイト|どうなる?大学入学共通テスト小学生のうちから「考える」習慣づけが大切に!?Study Hackerこどもまなび☆ラボ|2020年度から「大学入学共通テスト」がスタート!親が今からやっておくべきことは?
2019年05月17日2年生から3年生に進級するとき、学習面での不安を抱える保護者の方がとても多いそうです。算数がぐっと難しくなる、理科・社会が教科に加わるなど、2年生までと比べて3年生からは高学年につながる学習のベースを作らなければならなりません。そのため「つまずき」を感じる子どもがぐんと増えるのです。ここでつまずくと、高学年になって取り戻すことが難しくなります。だからこそ、勉強に対する「劣等感の芽」は早めに摘んでおかなければなりません。今回は、2年生から3年生に進級したお子さんが学習面で陥りがちがな苦手ポイントや、家庭でできるフォローの方法などを詳しく見ていきましょう。3年生、学習面での不安はどんなこと?進研ゼミの保護者を対象にベネッセがアンケートを実施したところ、2年生から3年生に上がる際に学習面で準備しておいた方がいいことや、親が注意深く見ておくべきことについて、次のような回答が得られました、□3年生になると授業の進み方も早く、内容が難しくなる。家で軽く予習復習ができるといいと思う。□理科・社会という単元が増え、覚えることも多くて大変。その結果余裕がなくなり、得意だった漢字や計算を間違えるなど他の教科にも影響が出てきた。□6時間授業も増えてくる。忙しさで余裕がなくなる。3年生からは本格的に勉強との向き合い方を見直さなければならない様子がうかがえますね。授業数が増えて放課後の自由な時間が減ることで、忙しさから余裕がなくなる子どもたちが多くなるとのこと。子どもが不安を抱えているのなら、親は安心できる居場所を作ってあげなければなりません。家庭での学習はもちろん大切ですが、まずは生活習慣や平日の時間の使い方、休日の過ごし方について、3年生に進級したタイミングで見直すことをおすすめします。3年生の国語。学習のポイントは?学習指導要領によると、3年生からは「筋道を立てて考える力や感じたり想像する力を養い、考えをまとめる力や伝える力を養う」ことに注意しながら国語の学習を進めるとのこと。その一歩として、主語と述語の関係、修飾と被修飾との関係、指示する語句と接続する語句、段落の役割についての理解を深めることを目標としています。さらに、文章の構成力をつけるだけではなく正しい文法を学び、ことわざや慣用句を使った表現力を身につけることも求められるようになるのです。■覚える漢字は200字に「漢」「業」「筆」など何通りもの読み方がある漢字や、漢字の組み合わせによっては日常的に使わないような単語を覚えることも。普段からいろいろなジャンルの本を読んだり、テレビのニュースで映し出される字幕を意識させたりすると、子どもの記憶に残りやすくなります。■国語辞典を家庭でも活用しよう3年生からはいよいよ国語辞典を学習に取り入れます。できればもっと早いうちから辞書に親しんでおくといいですね。文章力養成コーチの松嶋有香先生は、こどもまなび☆ラボで連載中の『国語辞典の世界へようこそ』の中で、学校の授業以外でも辞書を活用することをすすめています。辞書を引くことで調べ学習の基本動作が身につきます。そして、わからないことをそのままにしない姿勢は他の教科でも役に立つだけではなく、「生きる力」を子どもに与えるのです。ぜひご家庭のリビングにも一冊国語辞典を置いておき、いつでも調べられる準備をしておきましょう。3年生の算数。学習のポイントは?よく聞くのは「3年生から算数につまずく子が増える」ということ。しかし、決して急に学習内容が難しくなるわけではありません。実は、2年生のうちにマスターしておくべき基礎ができていなかったために「つまずき」が生じてしまう子も多いのです。■3ケタ、4ケタの計算が子どもを混乱させるまず、多くの子どもが4ケタの足し算・引き算でつまずきます。たとえば「3007ー2258」といった繰り下がりが2回ある引き算で混乱してしまい、計算に時間がかかって次第に授業についていけなくなることも。さらに「307×57」のように、3ケタ×2ケタで0が入るかけ算でつまずく子もたくさんいます。教育評論家の親野智可等先生は「このような計算は算数の基礎。つまずくようであれば、できるだけ早い段階で修復できるようにしましょう」と注意を促しています。算数は「積み上げ」の教科です。テストの点数だけで判断せずに、毎日使っているノートをチェックして、ちゃんと理解できているか確認しましょう。■図形の学習は作図がネックになることも3年生からは三角定規やコンパスを使いますが、作図する作業が難しくて算数が苦手になる子も多いといいます。どうしても苦手なら、家でコンパスを使って模様を描いて遊ぶといいでしょう。できあがった模様に色を塗ってみると、楽しみながらコンパスの使い方に慣れることができますよ。■表とグラフを積極的に生活に取り入れる親野先生は、数値や項目などの複合的な情報を関連づけて読み取る勉強を苦手としている子どもが多いと指摘します。その理由として「普段の生活の中で馴れ親しむ機会のないまま、教科書で初めて表とグラフに出会うから」と述べています。確かに日常的に家庭の中でグラフなどに触れる機会は少ないですよね。では、日頃から表やグラフに馴れ親しむにはどうしたらいいのでしょうか。親野先生おすすめの方法をご紹介します。□カレンダーに毎日の天気を書き入れる。毎日コツコツ続けることで、立派なデータとして活用することができます。体重や気温などの数字を入れるのもいいですね。□親子でじゃんけんなどのゲームをしてその勝ち負けを表にする。タテ軸とヨコ軸の組み合わせで表を作ります。「2回目と4回目はぼくが勝った」というように、表から情報を読み取る訓練になりますよ。□表に慣れたらグラフの基本である棒グラフを作成してみる。夕食のおかずを棒グラフにするのも面白いですね。1ヶ月集計した結果、「一番多いメニューはカレーだね」「お魚のおかずが少なかった」など、驚きや発見が出てくるかもしれません。3年生の理科・社会。学習のポイントは?いよいよ始まる理科・社会。これから学び始める教科なので、できるだけ苦手意識を持たせないように、楽しく学ぶ姿勢を身につけるための工夫が必要です。■理科:疑問が芽生えたときがチャンス!3年生で学ぶ理科の内容は、「物質、エネルギー」「光と音の性質」「磁石の性質」「電気の通り道」「電気の通り道」などです。とくに子どもたちがつまずきやすいのは「物の形や体積と重さの関係」について。ですから「材料・体積が同じなら、物の形が変わっても重さは変わらない」「体積が同じでも重さが違う物がある」、この2点を理解できるかがポイントになります。家庭でできる簡単な方法として、空のペットボトルに砂を詰めて量り、今度は同じペットボトルに水を入れて量ってみましょう。「同じ大きさの入れ物に入れても、重さが違うよね」と親子で確認し合えば、理解を深めることにつながります。例えば、親子で散歩や買い物に出かけた際には、ただ漫然と歩くのではなく、目にする草花や虫、その日の気温や風の向きなど、様々なことに子どもの関心を向けさせてあげて下さい。日々の生活の中で子どもを意識的にリードしてあげることが大切なのです。(引用元:親力講座|小学3年生の勉強のポイントは?子どもはどこでつまずく?その対策とは?)理科の学習において効果的なのは、実際に体験すること。家の中や近所の道端にも、理科を好きになる要素はたくさん潜んでいます。■社会:身の回りの環境が学びにつながる3年生の社会の授業では、「身近な地域や市区町村の様子を大まかに理解する」ことを目的としています。理科と同じように、実際に見て、感じることでスムーズに理解できるようになるでしょう。たとえば、散歩のときや車や電車でお出かけしたときに「この畑では何が取れるんだろう?」「この川はどこからどこまで流れているんだろう?」などと意識づけしてあげたり、街角に設置されている看板に目を留めたりすることで、自分の住む街や身近な環境への興味が高まります。また、観察・調査した内容を白地図などにまとめる力も求められます。日頃から地図に慣れ親しんでおくために、リビングやお風呂に貼っておいてもいいですね。***3年生では1、2年生のときとは違って「勉強」への意識を高めていく必要があります。遊びの延長のように楽しみながら学ぶよりも、自分なりの学習姿勢をしっかりと固める時期に入っていきます。そのためにも、日常生活の中から学習につながるヒントを見つけて関連づけてあげるのも、親としてぜひやってあげたいことですね。(参考)Benesse 進研ゼミ保護者通信|新学期準備「コレ重要!」先輩保護者ランキング~低学年(小1ー3)編~文部科学省|小学校学習指導要領(平成29年告示)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|ゆか先生の国語辞典の世界へようこそ|たった5歳の子どもにも国語辞典を与えるべき理由。“辞書を引く”ことの莫大なメリット親力講座|小学3年生の勉強のポイントは?子どもはどこでつまずく?その対策とは?親力講座|算数の表とグラフの勉強は生活の中で慣れ親しんでおくことが大切
2019年05月17日小学校に入学して1年も過ぎると、生活面や学習面でさまざまな悩みが出てくるのではないでしょうか。お子さん自身は学校生活に慣れるのに精一杯ですが、ずっとそばで見ている親御さんは、我が子の “苦手” に気づき始めているころだと思います。今回は、1年生から2年生に進級したお子さんが学習面で陥りがちがな苦手ポイントや、家庭でできるフォローの方法などを詳しく見ていきましょう。2年生、学習面での不安はどんなこと?進研ゼミの保護者を対象にベネッセがアンケートを実施したところ、1年生から2年生に上がる際に学習面で準備しておいた方がいいことや、親が注意深く見ておくべきことについて、次のような回答が得られました。□先生の言うことを一方的に聞くことが多かった1年生のころと違い、自分たちで話し合ったり計画したりして授業や行事の計画を進めていく機会が増える。自分のことは自分でするように親子で一緒に確認するなどサポートが重要。□教科書にざっと目を通しておくなど、習うところを保護者が把握しておき、子どもの質問にすぐに答えられるようにする。□生活の中で学習のヒントになるようなことがあれば、積極的に話題に出す。1年生のころは、勉強といっても、言葉や数字に親しんだり、読み書きの基本を学んだりするくらい。子どもたち個人個人の能力に大きな差が生まれることはありませんでした。しかし2年生からは、覚える漢字は倍になり、計算問題は複雑に、さらに2学期からは九九をマスターしなければなりません。より難しくなる授業内容を理解するためにも、家庭における学習サポートはまだまだ必要になるでしょう。2年生の国語。学習のポイントは?文部科学省の学習指導要領によると、1年生と2年生で学ぶ国語の目的は「日本語の言語文化に親しむことや理解する」「伝え合う力を高める」「自分の思いや考えをもつ」こと。つまり、1年生と2年生では内容の難しさに違いはあるものの、その目的は共通しています。1年生で学んだことをさらに深掘りするイメージですね。■覚える漢字の量は2倍!2年生の国語の授業における最大の難関は「漢字」です。1年生では80字の漢字を覚えなければなりませんでしたが、2年生になるとなんと倍の160字に!しかも「顔」「線」「曜」など画数が多く、バランスを取るのが難しい漢字もたくさん出てきます。家庭学習のときには、姿勢や筆記用具の持ち方、筆順に従っているかなど、注意深く見てあげるといいでしょう。基本をしっかりと身につけるまで、何度でも繰り返し教えてあげるのがポイントです。■正しい文章を書く基礎をかためる2年生では文章の組み立てを考えて書くことが求められます。・「はじめ」に何を知らせたいかを書く・「中」に知らせたいことを詳しく書く・「おわり」にまとめのことばを書くこの決まりを守って文章を書くのは意外と難しく、とくに日頃から本を読む習慣がない子どもはつまずきやすいといいます。学年が上がるにつれて文章がより長く複雑になるため、順序を整理して、構成を考えながら文章を作成する力を身につけましょう。普段から家族で短い手紙のやり取りをしたり、映画や本の感想を短い文章にまとめるなど、日常の中で「文章を組み立てる」訓練をするといいですね。2年生の算数。学習のポイントは?1年生の算数の目的は「数や図形に親しみ、算数の楽しさを感じること」とされています。数を正しく数えることや時刻と日常生活を関連づけるなど、身近な数について学ぶことが学習のメインでした。2年生ではさらに進んで、「数の概念についての理解を深める」ことを目的とします。たとえば「買い物に行ってすばやく計算できると便利!」というように、数理的な処理を生活や学習に活用しようとする意識を求められるのです。■基礎の基礎を再確認する東京大学名誉教授で教育学者の汐見稔幸先生は、算数こそ最初につまずかないように家庭で見てあげるべき、といいます。たし算のルール、ひき算のルール、さらに九九といった基礎の基礎のところがきちんとわかっているかどうか、とても大切なので、ここは家庭で意識的にみてあげてください。この基礎部分ができていないと、2ケタや3ケタのたし算、ひき算、やがてわり算などのステップに進むことができなくなります。(引用元:汐見稔幸(2008年),『汐見先生の素敵な子育て「子どもの学力の基本は好奇心です」』,旬報社.)算数は積み重ねていく勉強です。一度つまずくと取り戻すことが難しいからこそ、低学年のうちに理解を深める必要があるのです。■ぐんと複雑になる計算問題2年生では、足し算・引き算・かけ算の3つが計算問題に上がります。進級した時点で「繰り上がり・繰り下がり」をしっかりとマスターできていないと、筆算でつまずいてしまうでしょう。「アメが3つの箱に6つずつ入っています。3つ食べたら残りはいくつ?」このような文章問題では、どの計算からやるのかを考える必要があります。つまり文章問題の読解力も求められるため、複合的な考える力をつけておかなければなりません。■油断しているときにこそ九九の確認を九九が始まる2年生の2学期ごろには、家庭でも毎日くり返し練習をして応援してあげることが大切。夕食後、ホッと一息ついているときやお風呂に入っているときに「九九、忘れていないよね?7の段は?」と突然聞いてみるなど、フォローしてあげるといいでしょう。■基本的な図形の概念を理解する2年生では図形を構成する要素に着目し、身の回りのものの形を図形として捉えることが求められます。日頃から「まっすぐ」「てっぺん」ではなく、「直線」「頂点」といった用語を用いることを心がけましょう。文章問題がすんなり理解できるようになります。理科・社会のベースになる「生活科」2年生までは1年生と同様に「生活科」の授業があります。これは3年生から本格的に始まる理科・社会のベースとなる教科です。たとえば次のような内容の学習をしていきます。□まちたんけん□野菜を育てよう□身近な生き物、小さな虫□廃材を使った遊び、動くおもちゃを作る□赤ちゃんのころの話を親から聞き、“自分新聞”をつくる□これからの自分、目標や夢についてまとめる(光村図書の教科書『せいかつ 下 みんなともだち』を参照)このように生活の授業では、地域の生活に関わることを通して身近な人々や社会、自然との関わりについて考えることを目的としています。また、自分自身を見つめることを通して、自分の生活や成長、身近な人々の支えについても考えます。生活科とは、まさに家庭でも一緒に学べる「生きた学習」です。身の回りの物事に関心を持ち、普段見過ごしているようなことに目を向けると、たくさんの発見があるのだということを知ってもらいましょう。***1年生ほど簡単でもなく、3年生ほど複雑にはなっていない2年生こそ、しっかりと基礎を固める大切な時期です。「ちょっと苦手かも」「よくわかってないけど、なんとなく点数が取れているからいいか」と思っていると、3年生以降のつまずきに直結します。苦手の芽は早め早めに摘んでおきましょう。(参考)Benesse 進研ゼミ保護者通信|新学期準備「コレ重要!」先輩保護者ランキング~低学年(小1ー3)編~文部科学省|小学校学習指導要領(平成29年告示)汐見稔幸(2008年),『汐見先生の素敵な子育て「子どもの学力の基本は好奇心です」』,旬報社.『せいかつ 下 みんなともだち』,光村図書.
2019年05月16日毎日学校から出される宿題。入学したてのころは親御さんが管理をしてあげていたかもしれませんが、学校生活に慣れてくると次第に子ども任せになってしまいがちです。すると気づけば「そういえば今どんな内容の勉強をしているんだっけ?」と、お子さんの学習の進行状況が把握できなくなっていた……といった事態に!宿題を通して子どもの苦手に気づいてあげること、そしてたくさん褒めて伸ばしてあげることができれば、親子のコミュニケーションを深めることにもつながります。今回は「子どもの宿題との関わり方」について詳しく見ていきましょう。子どもの宿題、“ながらチェック” していませんか?プレジデントファミリー編集部が2018年に全国の小学生の子どもを持つ母親505人にアンケート調査を実施したところ、子どもの学習習慣の悩み第1位は「言われないと勉強しない」(46%)でした。また「どのくらい子どもの勉強を見ている?」という質問に対して、41%が「10分未満」、19%が「まったく見ていない」と、半数以上が子どもまかせにしている様子がわかります。教育・子育てアドバイザーの鳥居りんこさんは、このアンケート結果を受け、自身の子育てを振り返りながら次のように述べています。子供が家にいる時間帯は、食事の準備や後片付けで忙しくて、落ち着いて勉強を見られなかったことを思い出しました。毎日、皿洗いをしながら宿題の音読を聞き流して、『聞きました』のスタンプだけを押していた。そうやって見てこなかったツケが中学校受験で回ってきて、私が思っていた以上にできないわが子にがくぜんとしたのが小学校高学年でした。(引用元:プレジデントムック(2018),『プレジデントFamily 2018秋 東大生192人 頭のいい子の本棚』, プレジデント社.)低学年のうちは、宿題は音読や簡単なプリントだけという学校も多いはず。そのため、親もついつい聞いているフリや確認したフリをしてしまいがちですよね。しかしそれでは、子どもが本当に学習内容を理解しているのかがわからないだけではなく、「ちゃんとやっても適当にやっても、親はたいして見てくれない。宿題って意味があるのかな」と、家庭学習そのものの意義すらも見失ってしまうでしょう。だからこそ、低学年のうちから親がきちんと子どもの宿題に向き合い、一緒に考えてあげる余裕を持つことが大切なのです。宿題をしない子にイライラするのは無意味とはいえ、親だって人間です。余裕があるときは優しく諭すことができても、忙しくて視野が狭くてってしまうこともあるはず。そんなとき、子どもが約束通りに行動しない、一度注意しただけでは態度が改善しないとなったら、つい感情的になって「宿題しないならゲームは捨てるよ!」「毎日同じこと言わせないで!」と怒鳴りつけてしまうこともあるでしょう。『「つい怒ってしまう」がなくなる 子育てのアンガーマネジメント』(青春出版社)の著者で、日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久美さんは、「怒り」の感情について次のように述べています。怒りというのは、自分の中にある「こうあってほしい」「こうあるべき」という思いが、その通りにならないときに生まれます。(中略)「べき」にはその人が大事にしている価値観が表れます。親の場合、自分の考えこそが常識だと考え、子供に「べき」と思う価値観を押し付けてしまいやすいのです。(引用元:プレジデントムック(2018),『プレジデントFamily 2018冬 算数が大得意になる』, プレジデント社.)つまり、親御さん自身が無意識のうちに「言われなくても宿題をやるべき」「言われたらすぐに宿題をするべき」といった感情にとらわれていることにより、その通りに行動しないわが子に対して必要以上に怒りを覚えてしまうのです。そんな「べき」にがんじがらめにならないためには、どうしたらいいのでしょうか。戸田さんは「怒る・怒らないの境界線を明確にすること。また、子どもが最終的に約束を守ったなら“まあいいか”とすること」が重要だと説きます。昨日は許されたのに今日は怒られた、お母さんは許してくれるのにお父さんには怒られる、というように曖昧な基準で怒ってしまうと、子どもには「自分の行動によってではなく、親の機嫌で怒られる」という印象しか残りません。まずは、勉強やゲームの時間について家族みんなで話し合って「境界線」を明確にすることが大切です。「ゲームは1日30分まで。続けてやっていいのは15分間。宿題をした後に15分、夕食後に15分、と決めたらその時間を守ろうね」「一度声をかけて行動したら怒らないよ。ただし、2回声をかけてもすぐにやらなければ、お父さんもお母さんも怒るからね」このように、一度親子間での認識を確認し合いましょう。母親だけに宿題のプレッシャーを背負わせない続いて、宿題をするのに適した時間帯について考えていきます。筑波大学付属小学校国語科教諭の青木信生先生は「基本的には夕食前が効率的」としながらも、「家庭学習で大事なのは、時間帯よりも必ず親が関わり、子どもまかせにしないこと」だと述べています。なぜなら学習習慣のついていない子は、親がそばにいたほうが集中して問題に取り組むことができるからです。そうなると、最適な時間帯は “親が家にいられる時間” ということになりますね。一般的に、母親の方が子どもと接する時間が多くなってしまうので、宿題を見てあげる役割になりがちですが、父親も宿題の点検係として意識的に生活のリズムを見直しているご家庭も多いようです。父親が子供と顔を合わせることができる時間帯ということで、出勤前の朝の時間を活用している家庭も多い。それはその家庭ごとのサイクルでいいと思います。(引用元:プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.)各家庭によってさまざまな事情があり、生活のパターンもそれぞれ違います。大切なのは、ご両親のどちらかでも宿題を通して子どもの変化や成長を注意深く見てあげることです。そうすることで、子どもは安心して毎日の宿題に取り組むことができます。すると、高学年になってもっと難しい宿題が出されるようになっても、すぐに諦めたりごまかしたりせずに、真剣に向き合って一生懸命取り組めるようになるでしょう。まずは「褒める部分を見つける」ことから「子どもに勉強を教えるときのコツは、子どものプライドを大事にすること」と述べるのは、東京大学名誉教授で教育学者の汐見稔幸先生です。つい「こんなこともわかってなかったの?」と呆れた反応を見せてしまっていませんか?そうすると、子どもは小さいながらも親御さんの期待に応えられない自分を責めたり、恥ずかしいと感じたりします。こんなときは「ああ、そうそう、こういうことってみんなよく間違えるよね」と優しく言ってあげましょう。できないことやわからないことは恥ずかしいことじゃない。そう伝えてあげるだけで、子どもの学びへの意欲は失われずにすむのです。また、教育評論家の親野智可等先生は「宿題をやると褒められる」パターンを作ることが効果的だと述べます。親野先生によると、多くの親はほめるどころか逆に「もっとていねいに字を書きなさい」「間違いだらけじゃないの」などと叱りがちだといいます。そこで、つい注意したくなる気持ちをぐっと抑えて、雑に書かれた字の中でも綺麗な字を見つけて部分的にでも褒めてあげましょう。大事なのは、宿題への取りかかりをスムーズにするために「宿題をやると褒められる」という意識を強く持たせることなのです。***お母さんがせっかちで優しく教えるのが苦手なら、お父さんにバトンタッチしてもいいでしょう。それでもつい感情的になるようだったら、おばあちゃんやおじいちゃんにも協力してもらいます。見守る人のスタンスによって宿題をプレッシャーに感じたり、褒められることでやる気がわいたりするので、お母さんが一人で抱え込んでしまうのではなく、周囲の大人がみんなで見守ってあげることが大切です。(参考)プレジデントムック(2018),『プレジデントFamily 2018秋 東大生192人 頭のいい子の本棚』, プレジデント社.プレジデントムック(2018),『プレジデントFamily 2018冬 算数が大得意になる』, プレジデント社.プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.汐見稔幸(2008年),『汐見先生の素敵な子育て「子どもの学力の基本は好奇心です」』,旬報社.洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』,洋泉社.親力講座|こうすれば、子どもの宿題がスイスイはかどるーー親の工夫で「やる気になる環境」は作れる
2019年05月15日昔、武田鉄矢さんが「言葉の成り立ちや語源を調べるとエクスタシーを感じる」と仰っていました。言葉を調べて、語源や意味が分かったときのあの感覚が、私も大好きです。それは子どもたちも同じだと思います。もともと人間は知らなかったことを分かるようになる「学習」が好きなのです。そのとき、快感を得るのは、人間だけにある素晴らしい特性なのかもしれません。こんにちは。ゆか先生です。前回は、国語辞典の実践的な使い方を紹介しました。今回は、子どもの「学習欲」を満たす、漢字辞典、百科事典、ことわざ辞典、慣用句辞典、四字熟語辞典、語源辞典など、子ども向けの辞典を紹介します。お子さんの興味にあわせてゆっくりそろえていくのも良いでしょう。漢字辞典で自分の名前を引いてみよう漢字辞典を選ぶ基本条件は、連載第2回でもお伝えした国語辞典の選び方と同じです。まず、子ども自身が選ぶこと、そして実際に書店で引いてみることです。また、国語辞典と違う点は、書き順や成り立ちについての項目ですね。それらが詳しく載っているものがよいでしょう。トメハネなども詳しく書かれていると良いです。試しに、自分の名前で使われている漢字を引いてみるといいと思います。漢字辞典は、国語辞典と違い、まだ読めない漢字を引くわけですから、「引きやすい」ことが大切です。小学生のうちは、部首から引くことは少ないと思います。部首の判別が難しいからです。ですから、総画数や読み方で、きちんと目的の言葉にたどり着けるものを選びましょう。漢字辞典は、移行措置期間辞書によっては、学習学年順に並んでいるものもあります。その際注意してほしいのは、今(2019年)が、新要綱への移行時期にあるという点です。新要綱では、都道府県に用いる漢字25字が4年生に配当されます。それにともない、児童の漢字学習の負担を軽減するため、32字の配当学年が移行しました。また、小学生で学習する漢字の移動ならば良いのですが、今回は小学生用の漢字辞典にはない漢字も25字加わったので、古い辞書だと載っていない場合があるということです。対応済みのものもありますが、そうでないものは、対応表が付録で付いているはずですので、きちんと確認しましょう。例:4年生で学習することになった、元、中学校で習っていた漢字茨、媛、岡、潟、岐、熊、香、佐、埼、崎、滋、鹿、縄、井、沖、栃、奈、梨、阪、阜このほか、賀、群、徳、富の4字が5年生から、城の1字が6年生から4年生へ移行。主な小学生向け漢字辞典■ 学研『新レインボー 小学漢字辞典』改訂第5版小型版加納喜光(監修)学研からは、他にワイド版、ミッキー&ミニー版などが出ています。また幼児向けに『新レインボー はじめて漢字辞典』もあります。★出版社のページでセールスポイントをチェック!■ 光村教育図書『小学新漢字辞典』改訂版甲斐睦朗(監修)★出版社のページでセールスポイントをチェック!■ 三省堂『例解小学漢字辞典』第五版林四郎、大村はま(監修)/月本雅幸、濱口富士雄(編集)★出版社のページでセールスポイントをチェック!■ 小学館『例解学習漢字辞典』第八版・オールカラー版藤堂明保(編集)、深谷圭助(編集代表)小学館からは、他に通常B6版も出ています。また、ドラえもん仕様の『ドラえもん はじめての漢字辞典』もあります。★出版社のページでセールスポイントをチェック!百科事典は調べ方を楽しく練習するのに最適百科事典は、語彙というより知識を増やすものです。眺めるだけでも楽しいのですが、こちらも「調べ学習」の基礎となる力が養えるものですから、親子で調べ方を練習するのも良いかと思います。眺めるだけでも楽しい『どうぶつ』や『しょくぶつ』などの事典は、分類がしっかりしているものもありますので、調べごととしても使えます。また、DVD付きのものもあり、小さい子でもスムースに興味が持てるように工夫されています。さらに、動物、植物などのカテゴリをこえ、絵入り国語辞典のように、子どもが興味を持ちそうな、さまざまなことがらについて五十音順に並べた事典もあります。■ 小学館「プレNEOシリーズ」(3歳~)★出版社のページでセールスポイントをチェック!■小学館『小学館子ども大百科』★出版社のページでセールスポイントをチェック!■ ポプラ社「ポプラディア大図鑑WONDAシリーズ」★出版社のページでセールスポイントをチェック!選び方に注意が必要!知識を増やす辞典のシリーズことわざ、慣用句、四字熟語など、いわゆる「知識分野」の辞典も数多く出ています。私の講座では、小2で慣用句、小3でことわざ、小4で四字熟語を教えています。発達段階に応じたカリキュラムを考えた時に、この設定にしましたが、問題なく、効果的に学習できているようです。ただ、未就学児や小1では難しいかもしれません。でも、例えば上に兄弟姉妹がいる場合などは、上のお子さんが習うこのような知識分野に、早くから興味を持つこともあります。そのときの「興味の芽」のようなものを摘まないようにしたいもの。最近はイラストも多く、漫画で解説しているものも多いので、読み物として自然に学習できると思います。この分野の本は、特に、シリーズ化されているものが多いですね。ひとつ買ったらそのシリーズでそろえたくなりますが、ちょっと注意が必要です。1. 登場人物の性格や背景が分かるものを選ぶ「虎の威を借る狐」ということわざがあります。力のある者に頼って、威張る小者のことをいいますが、例えば「ドラえもん」だと、このことわざを説明するために使われる登場人物は、ジャイアンのそばにいるスネ夫がふさわしいでしょう。実際に、以下のリストにある、ドラえもんのシリーズでは、このような例文が載っています。のび太:スネ夫って、ジャイアンがそばにいるときって生意気で困るよねしずか:ああいうのを「虎の威を借る狐」っていうんでしょう?これは、ジャイアンとスネ夫の正確や力関係を知っているほど、理解が深まる例といえますね。キャラクターものはついそろえたくなりますが、その際は、登場人物や背景についてよく知っているものにする方が、知識定着の効果があると思います。このキャラクターものには、ドラえもんシリーズ、ちびまる子ちゃんシリーズ、トムとジェリーシリーズ、クレヨンしんちゃんシリーズなどがあります。■ 小学館「ドラえもんの学習シリーズ」★出版社のページでセールスポイントをチェック!■ 集英社「ちびまる子ちゃん 満点ゲットシリーズ」★出版社のページでセールスポイントをチェック!■ 河出書房新社「だいすき!トム&ジェリーわかったシリーズ」★出版社のページでセールスポイントをチェック!■ 双葉社「クレヨンしんちゃんのなんでも百科シリーズ」★出版社のページでセールスポイントをチェック!2. シリーズでそろえなくてもいいシリーズでそろえると調べ方が似通っているので、その点では良いのですが、辞典によってそれぞれ監修者が違いますから、実際に書店に出向いて、同じ言葉を引いてみて、比較して選ぶ方法でも良いと思います。キャラクターに頼らないシリーズでも良いものがあります。■ ことわざ辞典いろいろ■ 慣用句辞典いろいろ■ 四字熟語辞典いろいろ■ 語源辞典いろいろ再びインターネット検索との比較分からない言葉や事象に出会ったとき、インターネットで調べるのは確かに早いです。しかし、第2回でもお伝えしましたが、まずは紙の辞書で言葉を調べる方法を学びましょう。そしてその時、寄り道も楽しみましょう。子どもを、わざと言葉の海に航海させるのです。また、安全面でも、インターネット検索にありがちな、関係のない寄り道、ネットサーフィンの機会がないことが、紙の辞書の最大の特徴かもしれません。調べたあとが重要。知識の定着に何より大切なこと。さて、このように知識を増やすタイプの辞典ですが、何よりも大切なことは、調べた言葉を日常生活で使いこなせるようになることです。そのために、保護者の方ができることがあります。それは、実際に使ってみせることです。お子さんは、大人が使っているのを聞いて「そうか!それはそうやって使うのか!」とだんだんと分かっていくのだと思います。【例】どんな日常シーンが浮かびますか?ことわざ……「百聞は一見にしかず。見に行こうか!」慣用句……「これは骨が折れる仕事だわ~」四字熟語……「一朝一夕には身につかないわよ」以前勤務していた、中学受験専門の塾で「今週は慣用句を50個覚える」なんて週がありました。当時は、私もそういうカリキュラムで教えたこともあります。しかし、そのようにして覚えた慣用句は、果たして「慣用」なのでしょうか。私はその点に疑問を感じ、オリジナルのカリキュラムを作り、今の講座開設に至ったという経緯もあります。言葉は使うためにあるのです。試験に出るから覚えるのではなく、日常生活の中で使ってこそ意味があるのだと思います。ぜひ、家の中で、また出かけたときなどに、親子で使ってみてくださいね。■ 連載『ゆか先生の 国語辞典の世界へようこそ』各回の内容第1回:国語辞典でこの時代を生きぬくための基本動作が身につく第2回:子どもにぴったりの国語辞典を選ぼう! 電子辞書ってどうなの?第3回:初めての国語辞典。カバーは?置き場所は?どんなふうに引くの?第4回:ゲーム感覚でやる気をアップ! 付箋紙やノートで記録する方法など第5回:漢字辞典、百科事典、ことわざ辞典、四字熟語辞典、語源辞典など、子どもの世界の辞典いろいろ第6回:まとめ国語辞典を使えるようになった子どもたちのその後(※近日公開)
2019年05月15日子どもの遊び場として、一番身近な場所として挙げられるのが公園。何気なく遊ばせているという親御さんが多いと思いますが、実は公園遊びが子どもの運動能力アップに大きく影響しているようなのです。ただ、遊ばせ方にもちょっとしたポイントがあります。詳しくご紹介していきましょう。カギは「自由に遊ばせる」子どもの運動神経を育む運動教室「リトルアスリートクラブ」代表トレーナーで、これまで都内を中心に200以上もの公園を巡って独自に調査を行なってきた遠山健太氏は、子どもの公園遊びのメリットについて次のように指摘しています。近年は、運動やスポーツに慣れていないために、身体の動きを正しくコントロールできない子が増えています。運動のコツをつかむためにはさまざまな運動体験が必要で、その基本となる動作は全部で84種類あると言われています。これらをなるべく多く体験することが将来の運動スキルの向上につながります。(引用元:マイナビニュース|子どもの将来は”公園遊び”で決定!? わが子がグングン成長する公園のススメ)公園には滑り台やブランコ、ジャングルジムなど様々な遊具があり、広場ではボール遊びや鬼ごっこなどもできますよね。公園は、子どもが遊びながら様々な動作を行なえる絶好の場所というわけです。ならば、なるべく多くの遊具で遊ばせるように、親が指示したり仕向けたりするべき……?と思ってしまいますが、それは必要ないようです。滑り台に夢中になっていたかと思うと、急にどんぐりを拾い出したり、原っぱを走り出したり……。子どもは大人からするとまったく想像できないような動きをしますよね。その自由な状態で基本動作の数を計測してみると、なんと指示した時よりも数値が倍に増えたんです。つまり、自由に遊ばせた方が子どもの運動神経の向上につながると言えます。(引用元:マイナビニュース|子どもの将来は”公園遊び”で決定!? わが子がグングン成長する公園のススメ)同様なことは、東京学芸大学名誉教授の杉原隆氏の調査でも明らかになりました。幼稚園の保育時間で体育指導を受けている子どもたちと、指導を受けず自由に遊んでいる子どもたちの運動能力を比べたところ、自由に遊んでいる子どもの方が運動能力が高いということがわかったのです。子どもは好奇心の塊。自由にさせることで、自らの意思で「飛び跳ねる」、「蹴る」、「投げる」など様々な動きをします。そうすることで身体の様々なパーツが鍛えられ、結果的に運動能力や体力を高めることができると言えそうです。ただし、自由に遊ばせているときも親は子どもから目を離さないのが鉄則。ある程度の年齢になると、つきっきりでなくてもよさそうに見えますが、事故を起こすのはほんの一瞬です。高い場所に登っているときなどは、特に注意して見ているようにしましょう。公園遊びで伸ばせるのはこんな身体能力早稲田大学教授・日本幼児体育学会会長の前橋明氏も、公園遊具を使った遊びを推奨する専門家のひとり。公園の遊具で次のような力が伸ばせるのだそうです。筋力・瞬発力・持久力・協応性(身体の2つ以上の部位の運動を、ひとつのまとまった運動にする力)・バランス感覚・すばやさ・器用さ・柔軟性・リズム感・スピード感覚・身体認識力・空間認知能力――全部でなんと、12種類もあります。具体的に例を挙げてみましょう。■すべり台……姿勢を保つための筋力、下半身の筋力、バランス感覚■ジャングルジム……身体認識力、空間認知能力、バランス感覚■ブランコ……バランス感覚、腕と足、腰を連動させる力■鉄棒……腕の筋力、バランス感覚、身体認識力■うんてい……リズム感覚、筋力(握力、腕力、背筋、腹筋)、空間認識力■砂場……協応性、器用さ、身体認識力■鬼ごっこ……走力、スピードの緩急、反射神経、急な方向転換、素早さ■ボール遊び……筋力、道具を上手に使う識別能力、素早さ、リズム感、バランス感覚■縄跳び……筋力、リズム感、バランス感覚上記以外にも、最近よく見かける「複合型遊具」は、滑り台、のぼり棒、縄はしごなど多種の遊具が組み合わさっていますよね。一度に多くの運動スキルを身につけられるうえ、子どももワクワクしながら遊べるので、オススメです。すばしっこく動いたり、バランスを取ったり、リズムに合わせて動いたりする力は、「コーディネーション能力」とも呼ばれ、いま日本のスポーツ界でも注目されてきています。基礎的な運動能力に加えて、このコーディネーション能力を早い時期に習得することが、運動神経を高めるのに最適な方法なのだとか。公園遊びが子どもの運動能力に与える影響は、想像以上に大きいということがわかりますよね。午後3時~5時がゴールデンタイム!ところで、1日の中で公園遊びに最も適した時間帯をご存じですか?それは午後3時~5時。目覚めてから8~9時間経ち、しっかりウォーミングアップができていることもあり、体温が高まり、身体がよく動き、学びの効果を得やすい時間帯とされているのです。このゴールデンタイムに、しっかり遊ぶことでホルモンの分泌も高まり、睡眠、食事、運動が連動した良いリズムが自然にできるのだとか。この時間に遊べば、お腹も空いて夕飯も美味しく食べられそうですよね。ぜひ覚えておきましょう!***子どもの運動神経は、ゴールデンエイジと呼ばれる5歳~12歳の時期に著しく発達すると言われています。まさに、親やお友だちとの公園遊びが楽しい時期ではないでしょうか。特に幼児期は、野球やサッカーなどひとつのスポーツの習い事をするよりも、公園遊びのほうが運動能力をトータル的に伸ばせる、という専門家もいるくらいです。気持ちのいいお天気の日は、ぜひ子どもと一緒に公園へ出かけませんか。文/鈴木里映(参考)前橋明(2015),『公園遊具で子どもの体力がグングンのびる!』,講談社三木利明(2017),『運動神経のいい子に育つ、親子トレーニング』,日本実業出版社マイナビニュース|「子どもの将来は”公園遊び”で決定!? わが子がグングン成長する公園のススメ」マイナビニュース|「いま”公園は選ぶ”時代–子どもがすくすく育つ”推しパーク”の見つけ方」公園のチカラLAB|「公園で外遊び ~ 遊ぶことで、育ち、学んでいく理想の空間」公園のチカラLAB|「運動好きな子どもは好奇心の塊、なるべく自由に遊ばせましょう」ベネッセ教育情報サイト|「運動神経がよい子に育つ運動環境とは?幼児期にやらせておきたい運動」
2019年05月14日黙っていても宿題をする子がいる一方で、何度注意しても一向にやろうとしない子もいます。毎日頭を悩ませている親御さんは、つい「もう知らないよ!困るのは自分だからね!」と突き放してしまいたくなることも多いでしょう。しかし教育評論家の親野智可等先生は、「宿題をやりたがらない子どもに対して叱ったり嘆いたりしても、なにも改善はされない。親は子どもが宿題をやる気になるような合理的な方法を工夫したり、やる気になるような言葉がけを考えたりすることが大切である」と述べています。具体的にはどのような工夫や言葉がけが効果的なのか、考えていきましょう。子どもの「宿題やだ!」に効果的な対処法『「自分で考える力」が育つ親子の対話術』(朝日新聞出版社)の著者で「伝え方」のスペシャリスト・狩野みき先生は、子どもが「宿題やりたくない!」と言ったときの対処法について、「まずは受け止めてから次に問いかけるのが有効」だと述べています。具体的には次のような対話が良いそうです。子:「宿題やだ!」親:「そうなの?どうしてやりたくないの?」子:「みんなやってないもん」親:「みんなって誰?」子:「○○ちゃんと、△△くんと……」親:「みんながやっていないからやらないの?あなたの良いところは無理して人に合わせるんじゃなくて、自分がしたいと思ったことを一生懸命やるところだと思うよ」子:「そうかなぁ。じゃあ、やろうかな~」実際にはこのようにスムーズにはいかないかもしれません。しかしこの対話のポイントは、まず子どもの発言を受け止めて、やりたくない理由を問いかけて引き出している点です。そのうえで、やんわり反論しながら少しほめてあげることで、良い流れを作り出すことができます。「ああ、またわがまま言い始めた……」とうんざりしたり、「何バカなこと言ってるの!さっさとやっちゃいなさい!」と頭ごなしに叱ったりしたところで、いつまでたっても自発的に宿題に取り組むようにはなりません。子どもを前向きに行動させるのも「親のひとこと」があってこそ。親子の会話を楽しみながら、スムーズに宿題に取りかかる流れを作りたいですね。『「つい怒ってしまう」がなくなる 子育てのアンガーマネジメント』(青春出版社)の著者で、日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久美さんは、「イラっとしても、まずは落ち着いて6秒我慢してみてください」といいます。どんなに強い怒りが生じても、そのピークはたったの“6秒”。感情のままに言葉をぶつけたところで結果は良くなりません。カッとなったら、次のように言い換えてみましょう。×「なんで宿題しないの!?」○「何時からするんだっけ?」×「どうして同じ問題を間違えるの!?」○「またここ間違えちゃったね。次に間違えないようにするにはどうしたらいいと思う?」親も子どもも無駄にイライラせずに、次に進むための前向きなやりとりをすることを心がけたいですね。「ごほうび=ほめ言葉」が原動力になる!諏訪東京理科大学共通教育センター教授の篠原菊紀先生によると、子どもにやる気を起こさせるには、脳に報酬を与えることがカギになるそうです。人間は報酬を得ることでドーパミン神経系が働き、快感を得ます。報酬=親からほめられること・認められることでもあるので、「宿題(勉強)をする」という行動と「ほめられる」という報酬が結びつくことで、やる気が起こるというわけです。いずれは子ども自身が「問題が解けて嬉しい!」といった報酬を得られるようになるのが理想。でもそれまでは、親が「ほめる」という報酬を与えるといいでしょう。ほめ方にはコツがあります。もし、まだ勉強をする習慣がついていないのなら、どんなことでもかまいません。とにかくほめまくること!○「すぐに諦めなかったね。すごい!」○「難しい問題なのに頑張って解いたね!」また、“素質” ではなく “行動” をほめてあげると、やる気に結びつきます。×「あなたは頭がいいね」×「全問正解するなんてすごいじゃない」このようなほめ方では、自分の「賢さ」を守るために間違えるのを恐るようになり萎縮してしまいます。○「このあいだ間違えた問題も解けるようになったんだね。努力したんだね」○「集中を切らさずに頑張ったから、いつもよりも短い時間で終わったね」このように「努力」をほめるようにすると、より認められたいという意識が芽生えて、積極的に挑戦するようになりますよ。毎日の宿題が「やり抜く力」をつける毎日毎日コツコツと宿題をこなす習慣をつけると、子どもにとってどんな良い影響を及ぼすのでしょうか。それは「やり抜く力」「粘り強さ」です。しかし、本格的なロジカルシンキングを取り入れている学習塾ロジムの塾長・苅野進先生は、「ただ机の前でがんばるだけでは真の粘り強さは身につかない」といいます。では、本当の粘り強さはどんなときに身につくのか。それは「手ごたえを感じながら前に進んでいる」とき。「前進している」という実感を得てこそ、「もう少しがんばろう」という粘り強さにつながっていくのです。そして、答えに近づいている、という手ごたえを感じるには、親の声かけも大きな役割を果たします。■悪い例・時間かけすぎじゃない?・こんなに簡単なのにわからないの?・この前も同じような問題が出ていたよね?■良い例・がんばって取り組んでるね。・集中してがんばっているね。・さっきより進んでいるね。・間違えたけれど、これでひとつわかったことが増えたね。ポイントは前向きな言葉がけを意識すること。たとえ子ども自身がピンときていなくても、何度も繰り返し親からほめられることで自己肯定感が芽生えて、粘り強さにもつながっていきます。高学年になってからあきらめ癖を治すのは難しいので、できれば低学年のうちに、毎日の宿題をきっかけにして粘り強さを身につけたいですね。シンプルだけど効果的な工夫を取り入れようほかにも、スムーズに宿題に取りかかるための工夫をいくつかご紹介します。■帰ったらランドセルの中身をすべて出す教育評論家の親野智可等先生によると、子どもが幼いほど自分がやるべきことを可視化させると効果的とのこと。たとえば、学校から帰ってきたらすぐに、ランドセルの中身をすべて広くて浅い箱に出させます。筆箱から教科書、宿題に必要なプリントまで、とりあえず全部を箱に出しましょう。そうしたら遊びに行ってもOK。遊びから帰ってきたら箱の中身が目につき、スッと宿題に取りかかれます。プリントがランドセルに入ったままだと、後回しにしてしまったり忘れてしまったりしがちです。家に帰ったらランドセルの中身を全部出す。親野先生によれば、たったこれだけのことで「宿題をしなさい」とがみがみ言わなくてすむようになった、という親御さんもいるそうです。■「とりあえず1問」だけでもOK宿題全体がどのくらいで終わるか見通しをつけるだけでも、宿題へのハードルはぐんと下がります。先に1問だけ解いて残りを後回しにしても大丈夫。または簡単な計算でウォーミングアップするのもいいでしょう。もしくは漢字の書き取りなど、ただ書き写すだけであれば難易度は低いはずです。■脳をだまして苦手教科を好きになる国語の宿題はすぐにやるけど、算数は苦手意識が強くてなかなか取りかかろうとしない、ということはありませんか?大人でも、苦手なものには集中力が持続しないものです。しかし、すでに脳の中に「苦手回路」ができあがってしまったものでも、それを「好き」と思い込むことで脳をだませることはご存知ですか?その効果を利用して、苦手教科で使用するノートにお気に入りのシールを貼る、心地良いBGMを流すなど、子どもが好きなものを取り入れるのです。すると苦手意識が和らぎ、脳が「この教科、好きかも」と思い始める、というわけです。■暗示語を取り入れるほかにも、「よし、やるぞ!」と声を出すのもいいでしょう。脳は自分が発した言葉に反応して、心身の状態を変化させるはたらきがあります。これは「暗示語」と言い、集中力を高める効果が期待できるため、スポーツ選手もよく取り入れている方法です。***いくつか提案した言葉がけや宿題をする前の工夫など、取り入れやすいものから試してみてください。きっとお子さんの宿題にまつわる悩みが軽くなるはずです。(参考)親力講座|こうすれば、子どもの宿題がスイスイはかどるーー親の工夫で「やる気になる環境」は作れる汐見稔幸(2008年),『汐見先生の素敵な子育て「子どもの学力の基本は好奇心です」』,旬報社.洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』,洋泉社.親力講座|親野智可等さんに聞く!どうやったら子どもが勉強をするようになりますか?(前編)洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』, 洋泉社.
2019年05月14日日々成長を遂げている子どもの身体と心。「もうこんなに背が伸びたんだね」「ちょっとしたことで泣かなくなったね」と、その成長を見届けることは、親としてなによりの喜びなのではないでしょうか。でも、成長しているのは身体と心だけではありません。目には見えませんが、子どもの『脳』も “段階的に” 成長することはご存知ですか?その発達段階に適した教育をすることで、本来持っている能力を最大限に伸ばしてあげることができます。今回は、子どもの年齢に合った『育脳』について詳しくお教えします。脳には学びの適齢期がある!?脳医学者の林成之先生は「子どもの脳の発達段階に合わせて育てると、能力を驚異的に伸ばすことができる」と述べています。つまり、脳の成長に合わせた刺激を与えることで、本来子どもに備わっている能力を最大限に引き出すことができるのです。たとえば、0歳から3歳くらいまでは視覚や聴覚などの「五感」が発達する時期です。だからこそ、この時期にたくさん読み聞かせをしてあげることは、脳にとって非常に良い結果をもたらします。小さいうちから脳に良い刺激はどんどん与えてあげるべきでしょう。だからといって、脳の仕組みを理解しないまま、闇雲にたくさんの習い事をさせることはあまり意味がなく、子ども自身にもあまり良い影響を与えません。東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授は、次のように述べています。使う脳の部分によって、伸ばしたい能力によって、成長の始まるタイミングは違います。脳は、そんな性質を持っているのです。ある能力が一番伸びやすい時期に、その能力に関係する習い事を始める。次の時期になったら、違う習い事を試してみる。それを繰り返すことで、子供の能力を効率的に伸ばすことができますし、子供自身が感じる学習ストレスを大幅に減らすことができるのです。(引用元:瀧 靖之(2016年),『「賢い子」に育てる究極のコツ』,文響社.)脳の発達段階に合わせた学習は、成長に沿って無理なく結果に結びつくので、親にとっても子どもにとってもストレスなくスムーズな学びにつながるのです。【年齢別】脳の発達段階:0歳~3歳文教大学教授で小児科医の成田奈緒子先生は、0歳~3歳は『からだ脳』が成長する時期だといいます。『からだ脳』とは「動物として生きるための脳」であり、基本の生活習慣や愛情形成をはぐくむ時期です。だからこそこの時期には、太陽の動きに合わせた起床・就寝、おいしい食事、ふれあいや声かけ、散歩など、五感からの刺激が何よりも大切。脳神経細胞が増え続ける時期なので、未熟な脳に負担をかける知識の詰め込みはNGです。また、要求をそのまま言葉や行動に表す時期です。わがままをおおらかに受け止めてあげて、我慢できたときはたくさん褒めてあげましょう。■0歳〜3歳に適した育脳この時期には耳を鍛えることが有効です。遊びの中に歌や楽器を取り入れると◎。できれば音階のあるものを使いましょう。ドレミの音階を聞き分ける能力を鍛えておくと、集中力や反射神経などが良くなります。まだ子ども自身の「好き・嫌い」の判断が未熟なので、脳がたくさんの情報を受け入れられるように工夫しましょう。たとえば、「お母さんは虫が嫌いだから、虫の図鑑は置かない」と大人中心に物事を判断するのではなく、できるだけたくさんのジャンルに触れさせてあげるといいですね。【年齢別】脳の発達段階:3歳~7歳3歳~7歳は『おりこうさん脳』が成長する時期。『おりこうさん脳』とは「人間らしさの脳」ともいえます。この時期は、思考の中枢となる大脳皮質や、まっすぐ立ったり指を使って作業したりするための運動機能を調整する小脳が鍛えられます。そのため、勉強・スポーツ・芸術などに必要な言語機能や、手先を使った微細な動きといった知能全般の発達が期待できる時期なのです。大人との会話や遊びから刺激を受け始め、幼稚園や学校などでさらにたくさんの人たちとの関わり合いによって飛躍的な成長を遂げます。昼間たっぷり刺激を受けて、夜眠っている間に神経回路網として定着させていくため、日中の過ごし方が重要になるでしょう。■3歳~7歳に適した育脳この時期は、勉強もスポーツもできる脳を育てましょう。まずは、正しい姿勢と歩き方で体のバランスを鍛えることを意識します。良い思考力には正しい歩き方が大切。身体のバランスが整って視覚的に正しい空間認知ができることによって、脳に良い影響を与えるのです。正しい姿勢で正しく筋力を使う運動がおすすめです。縄跳びやキャッチボールなどは空間を予測しながら遊べるため、空間認知能力を伸ばす効果が期待できます。また言語能力が発達する時期なので、言い訳をするなど口が達者になったと感じることも。以前に比べて親の言うことに反論するようになったと思っても、まずは子どもの意見を聞き入れましょう。それで失敗しても大丈夫です。「失敗して、考えさせて、行動を変えさせる」の繰り返しが脳を育てます。■巧緻運動を取り入れると◎細かい動作をする「巧緻運動」をつかさどる運動野がピークに発達するのがこの時期、とくに3歳~5歳であると言われています。考えながら手を使うことによって、頭でイメージしたとおりに身体を動かす「錘体路(すいだろ)」という神経回路が発達するため、紙を折ったりハサミで切ったり、のりで貼ったりといった手指や身体の器用な動きを取り入れた遊びがおすすめです。また楽器の習い事を検討しているのなら、この時期に始めるといいでしょう。楽器の演奏は聴覚を発達させる効果もあるため、聴覚野のそばにある言語野にもいい刺激を与えます。前出の瀧靖之教授も、「この時期に楽器や運動を始めたことで身につけた能力は、将来、種類や競技を変えたとしても「基礎的な能力」として、その子のプラスになる」と強くすすめています。【年齢別】脳の発達段階:7歳~10歳7歳~10歳は『こころ脳』が成長する時期。いわゆる「社会の脳」ともいえる『こころ脳』の成長時期は、言語の発達がピークを迎え、語学力が総合的に伸びます。大人と変わらない話し方をするようになり、相手によって言葉を使い分けることができるようになるなど、著しい成長を感じる親御さんも多いはず。さらに、相手の表情を読み取る、必要なときには我慢する、想像力を駆使して何かを作り出すといった能力が伸びることで、コミュニケーション能力や集中力、想像力、自制心などが鍛えられます。■不安定な子どもの心とどう向き合う?自分が他者から認められ、受け入れられていると実感することで、自己肯定感が高まり自立と自律が進む大事な時期なので、本格的な思春期に入る前に親子間の信頼関係をしっかりと築く必要があるでしょう。たとえば、家族の前で弱音を吐いたときには決して突き放さず、まずは共感して安心させることが大切です。小学校高学年、『こころ脳』の完成時期に近づくと、子どもは社会(学校)では理性的にふるまえるようになる一方で、家庭ではまだまだわがままを言ったり甘えたりすることも多いでしょう。そこで、親は子どもの甘えを受け止める余裕を持つことを心がけなければなりません。赤ちゃんや幼児のころに比べると、ほとんど手がかからなくなる時期ですが、心が不安定になったり親に反発したりすることは格段に増えます。親として心配になりますが、必要以上に不安にならずに、いつでも落ち着いた穏やかな対応を心がけたいですね。■7歳~10歳に適した育脳情報伝達回路がさらに発達して大人の脳に近づく時期であり、本格的な学習を始めるのにベストなタイミングです。言語野が発達するので、語学の学習に挑戦するといいでしょう。ただしこの時期は、基本的に子ども扱いするのはNG。「自分でやりたい」気持ちが働いているので、子ども扱いしてその芽を潰さないようにしましょう。質問形式で「どうしたいのか」「どうするのか」を自分で考えさせて、自分で決めさせます。親御さんはそれを達成できるようサポートしてあげるだけで大丈夫。この時期の脳には「指示・命令」は避けるべき、と覚えておきましょう。また『こころ脳』を育てるには、勉強や習い事よりも責任を持って家事をする方が効果が期待できます。家事は注意力、同時処理能力、段取り力、処理速度が鍛えられるので、家事を通じて試行錯誤することが脳への刺激になるのです。***10歳を過ぎると、思考やコミュニケーションなどの高次認知機能をつかさどる前頭前野が著しく発達します。そのときにしっかりとした社会性を獲得するためにも、『からだ脳』『おりこうさん脳』『こころ脳』がちゃんと育っている必要があるのです。お子さんの豊かな未来のために、脳の発達段階を考えながらサポートしてあげましょう。(参考)林 成之(2011),「子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!脳を鍛える10の方法」,幻冬社新書.瀧 靖之(2016年),『「賢い子」に育てる究極のコツ』,文響社.PHPファミリー|年齢別!子どもの脳を育てる甘えさせ方洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』, 洋泉社.
2019年05月13日「朝ごはんを毎日食べている子どもほど、学力が高くなる」そんな文部科学省のデータがあります。また、50m走や持久走、瞬発力を判定するような調査についても同じような結果が出ているのだそう。忙しい朝の時間帯ですが、朝食の時間はしっかり確保したいものですね。■参照コラム記事はこちら↓朝食で子どもの未来が決まる!?恐ろしい……ウソのような「朝ごはん」の事実。
2019年05月13日子どもの知能を示す「IQ」とは別に、昨今では「SQ」という指数に注目が集まっていることをご存知でしょうか?SQが高い子どもは、一人ひとりの個性や多様性が重視されるこれからの社会で活躍できるといわれています。今回は、SQの意味や役割、それを高めるポイントについてご紹介しましょう。そもそも「SQ」って?今、子ども達に求められる能力とは「SQ」とよく似た言葉に、IQとEQがあります。しかし、この2つはSQとは少し異なったものです。IQは、Intelligence Quotient(知能指数)の略で、俗にいう「頭の良さ」を指すものとしてよく知られていますよね。そして、EQはEmotional Intelligence Quotientの略で、「感情指数」や「心の知能指数」とも呼ばれています。自分自身の感情を把握してコントロールすることで、その場に合った言動をとれるかどうか、また相手の感情を理解しながら適切な配慮をし、他者との関係を良好にできるかどうかを指しています。SQ(Social Intelligence Quotient)とは、著書『EQこころの知能指数』を通してEQの認知度の向上に貢献したアメリカの心理学者ダニエル・ゴールマンが発表した概念であり、コミュニケーション能力や社会性の高さを指すものです。「社会的指数」や「生き方の知能指数」などとも呼ばれています。SQが高い人は、自分の考えを相手が理解できるようにまとめて、わかりやすく伝えることができ、人に何かをお願いしたり、されたりといった協力することの大切さをしっかりと理解できる傾向にあります。さらには、自分なりの目標を作って取り組んだり、成功しても謙虚な気持ちを忘れずにまた新たな挑戦ができたりするという特徴も。ダニエル・ゴールマンは、EQの考え方に脳科学研究をプラスすることで、SQを生み出しました。著書『SQ生きかたの知能指数』では以下のように述べています。人生でかかわりあう人々から受ける作用によって、気分だけでなく身体そのものが影響され、形成されることを自覚して、賢明に行動しなければならない。また、逆に自分自身が他人の情動や健康にどのような影響を与えるかも、よく考えてみなければならない(引用元: ダニエル・ゴールマン(2007),『SQ生きかたの知能指数』,日本経済新聞出版社.)人が生きていくためには、家族や友だち、学校の先生や職場の人々など、誰かとコミュニケーションをとることが不可欠です。周りの人々とうまくかかわれるかどうかは、自分がその環境で快適に過ごせるかどうかや、社会に出てからの生き方に大きく影響します。そのため、小さな頃からSQを高めていくことは、子どもが人とのつながりからさまざまなことを学んだり、子ども自身が生きやすくなったりするためにも非常に重要なのです。「SQの低さ」が招きかねない恐ろしい将来とは昨今では、不登校や引きこもり、犯罪行為など、さまざまな問題が子どもたちを取り囲んでいます。こうした問題を回避するためにも、SQを育てることが重要です。SQが低いと、共感力が低く相手の気持ちが理解できなかったり、友だちや家族と信頼関係を結びづらくなったりするなどの弊害があります。さらに、キレやすく攻撃的な性格になって人をいじめたり、周囲から孤立したりしてしまうことも……。こうなってしまうと、子どもは生きにくさを感じるようになり、自己肯定感が低くなったり、強い孤独感を覚えたりするようになります。そこから不登校や引きこもりになってしまったり、危険行為や犯罪行為に走ったりする危険性があるのです。子どもがすこやかで楽しく、安心・安全な毎日を送るためにも、SQを育てることは欠かせないといえるでしょう。SQを育むために重要な3つのポイントSQは「愛情が感じられるやりとり」をすることで育っていくといわれています。具体的には、子どもと接する際に以下のポイントをおさえることが有効です。・愛情をめいっぱい表現する子どもと接する際には、愛情表現を忘れないようにしましょう。愛情表現にはさまざまな種類があります。例えば、アイコンタクトを欠かさない、タッチやハグ、手をつなぐなどのスキンシップを習慣にする、子どもの話にしっかりと耳を傾けてリアクションする、などです。いずれも当たり前のように思えますが、忙しさに追われるとついつい忘れがちになってしまうことでもあります。これらを意識して行うことで、より子どもに愛情が伝わりやすくなりますよ。また、親が子どもに対して表情豊かに接することで、子どもの免疫力が高まるという説もあるのだそう。・「親は子どもの絶対的味方」であることを伝えるどんなときでも、「ママ(パパ)はあなたの味方だよ」「あなたのことが大好きだよ」と伝えてあげましょう。言葉で伝えるのももちろん良いですし、字が読める場合はお手紙にして子どもに渡すのも良いでしょう。子どもにとって「どんな自分でも味方でいてくれる存在」がいることは、精神的な安定はもちろん、他者に優しく接することにもつながります。ただし、お手伝いをした際や、テストで良い点をとった際など、「いい子だったとき」にしか褒めないというのはNGです。この場合、子どもは「『いい子でいる自分』しか受け入れてもらえない」と思うようになり、本音を隠すようになったり、ストレスをうまく発散できなくなったりする可能性があります。・テレビやインターネットはほどほどにテレビやインターネットには、さまざまなコンテンツがあり、「子どもの教育に良い」と謳っているものもたくさんあります。もちろん、これらを観て楽しむのもよいのですが、何時間も見せっぱなしにするのは避けましょう。感情の変化や他者への思いやりなどは、テレビからではなく人間同士のかかわりから学んでこそ、実践できるようになるからです。***SQの高さは、学校の成績や運動能力だけでは測れない、人間としての魅力でもあり、トラブルや悩みにぶち当たったときの助けにもなります。普段の接し方を意識して、子どものSQを高めましょう。文/田口るい(参考)ダニエル・ゴールマン(2007),『SQ生きかたの知能指数』,日本経済新聞出版社.All About|SQ(社会的指数)とは?子育てにおける7つのポイントAll About|子供の性格を「良い子=SQ(社会的指数)高い子」に育てるにはカオナビ|SQとは? 人間の社会性や対人能力を示すSQとEQとの違いについて日本の人事部|SQ
2019年05月11日子どもに人気がある学びのツールといえば、絵本の読み聞かせがあるでしょう。むかしから変わらない、大定番のツールです。発達心理学と認知心理学の専門家である十文字学園女子大学の大宮明子先生によれば、「もちろん、読み聞かせにはたくさんの学びの要素がある」とのこと。ただ先生は、「その学びが読み聞かせの目的だと思ってはいけない」とも語ります。その理由はいったいどんなものでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)読み聞かせがもたらすさまざまな学び幼い子どもに絵本の読み聞かせをする場合、親御さんとしてはどうしてもその「学びの効果」を期待してしまうものですよね。もちろん、子どもは読み聞かせによって多くのことを学び、吸収していきます。第一に、絵本を読み聞かせしてもらうことで、それまで知らなかった言葉やその使い方を知るということが挙げられますし、さまざまな概念も覚えるでしょう。たとえば絵本に「宅配便」が登場したら、「宅配便って荷物を運んでくれるお仕事のことなんだ」と知ることができる。実際にはまだ見たことがないものであっても、絵と文章によって新たな概念を覚えられます。また、読み聞かせのシチュエーションがちがえば、子どもが学ぶことにもちがいが出てくる。たとえば、家庭でなく幼稚園や保育所などでお友だちと一緒に読み聞かせしてもらうことには、マンツーマンになりがちな家庭での読み聞かせとはまたちがった学びがあります。それはなにかといえば、共感するということ。ドキドキするような少し怖いストーリーなら、ひとりだと不安になってしまいますよね。でも、隣に同じようにドキドキしているお友だちがいれば、互いに気持ちが通じ合ってちょっと安心できる。ストーリーが進んで怖い場面を過ぎれば、「ああ、よかった」と一緒にほっとするするかもしれない。そのようにして、お友だちと一緒にドキドキしたり悲しくなったりよろこんだりして、自分自身の心に気づき、心を動かす楽しさを知りながら、共感力を高めることになるのです。子どもは絵本で学びたいわけではない?ただ、それらが読み聞かせの目的だと考えてしまってはいけないとわたしは考えています。子どもが「絵本を読んで」と親におねだりするときは、なにかを学びたいわけではありませんし、もっといえば絵本の内容を知りたいわけでもないという場合もあります。つい昨日も読んだばかりの絵本を子どもが持ってきて、親としては「またこれ?」と思うこともあるはずです。子どもは同じ絵本をなぜ読んでほしいのでしょうか?それは、絵本の内容を知りたいのではなく、絵本を読んでもらうことで親と一緒にいられる時間が楽しいとか、その時間だけは大好きなお父さんやお母さんを独り占めできてうれしいとか、そういう気持ちがあるからなのです。また、子どもには子どもなりの絵本の楽しみ方があります。「昨日は絵本の左ページばかり見ていたから、今日は右ページをよく見てみたい」といった単純なことも、子どもの楽しみ方だと思うことが大切です。それから、親が一生懸命に読んでいるのに子どもは上の空で聞いているように見えることもありますよね。そういうときは、絵本のストーリーを自分で膨らませて、絵本のなかの世界に自分も入っているような想像を広げているということもあります。ですから、学びを意識するのではなく、そういった子どもなりの楽しみ方を大事にしてあげてほしい。「どんなお話だった?」は最悪のNGワードそう考えると、読み聞かせのコツも自ずと見えてくるはずです。ちょっとまずい読み聞かせとしては、大人がただ音読しているようなもの。まるでアナウンサーがニュースを読んでいるようにさらっと読んで「はい、おしまい」という感じの人が少なくないのです。とくに、男性に目立つタイプですね。それでは、子どもが自分なりに楽しむどころではありません。あくまで読み聞かせですから、「聞かせ」に重点を置く必要がある。子どもが聞いて楽しめるかと考えながら読むことがポイントです。保育士さんとちがって、一般の親御さんの場合は恥ずかしさも邪魔します。その恥ずかしさを取っ払って、登場するキャラクター別に声色を変えてみたり、場面によってはゆっくり読んでみたりと工夫をしてみましょう。それから、読むスピードも意識してほしい。まるでルールが決まっているようにどのページも同じスピードで読んでしまう人がいます。そうではなくて、子どもがじっと注目しているなら、そこで止まってあげる。子どもが満足したようなら、「じゃ、次にいこうか」というふうに進んであげてください。逆に、子どもがそのページに興味を示さず、先をめくりたがるという場合もありますよね。そういうときはさっさと進んであげればいいのです。「ちゃんと聞きなさい」「飛ばしちゃったらお話がわからないでしょ?」なんていうのは、単なる大人の理屈に過ぎません。子どもにとっての絵本の楽しみ方はストーリーを追うことだけではありません。子どもが興味を持ったところで止まり、興味の移ろい次第では前のページに戻ってもいい。読み聞かせは子どものためにするのですから、あくまでも主体は子どもにあるのです。そういう意味で、最悪なNGワードは、読み聞かせのあとの「どんなお話だった?」というもの。これをいってしまうと、子どもは絵本を読んでもらったあとは必ずそう聞かれると思って、絵本を楽しむことができなくなります。信じられないことに、「せっかく読んであげたのに聞いていないんだったらもう読んであげない」なんてことをいう親御さんもいます。それでは、親がわざわざ子どもの興味の芽を摘んでいるようなものです。誰かの「おすすめ絵本」は参考程度にどんな絵本を選ぶかも、子どもの興味に合わせていくことがベストです。子どもの好みはそれぞれちがいます。ストーリーものを好む子もいれば、図鑑っぽいものを好む子もいます。ですが、図鑑っぽいものにしか興味を示さない子どもの場合、親御さんとしてはストーリーものを楽しめない子に育つのではないかと心配してしまうかもしれませんね。そういうときにも工夫できることがあります。たとえば、働く車の図鑑ばかりを見たがる子どもだったら、働く車が主人公のストーリーものを選んであげればいい。そういう子どもも、ストーリーものはなんでもかんでも嫌いというわけではなく、たまたま内容物に興味がないだけというケースもありますからね。いずれにせよ、子どもがどんなものに興味を持っているのかをしっかり観察して、夢中になれる絵本を選んであげましょう。どこかの誰かが「おすすめの絵本」として挙げているような名作も、子どもによってはまったく興味を示さないことも大いにあり得ます。そういう名作リストは、参考程度と考えるようにしてください。『幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究』大宮明子 著/風間書房(2013)■ 十文字学園女子大学教授・大宮明子先生 インタビュー一覧第1回:東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと第2回:「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワード第3回:「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴第4回:絵本の目的は学びにあらず。子どもの興味の芽を摘む、読み聞かせ後の「最悪の質問」【プロフィール】大宮明子(おおみや・あきこ)6月5日生まれ、東京都出身。十文字学園女子大学人間生活学部幼児教育学科教授。1988年、中央大学法学部法律学科卒業。1997年、お茶の水女子大学教育学部教育学科心理学専攻3年次編入学。2001年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科発達社会科学専攻博士前期課程修了。2008年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達科学専攻博士後期課程修了。人文科学博士。発達心理学、認知心理学、とくに子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月11日幼い子どもがいる親御さんには、小学校での勉強に子どもが置いていかれないようにと、いわゆる就学前教育を検討している人もいるはずです。でも、発達心理学と認知心理学の専門家である十文字学園女子大学の大宮明子先生は、「いわゆる先取り学習にはあまり意味がない」と語ります。しかし、就学前教育のやり方次第では、その後の学力の伸びを左右する大きな効果も期待できるのだそうです。その鍵を握るのは「語彙力」です。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)先取り学習にはあまり意味がない?就学前教育はおおまかに3つの種類にわけられます。ひとつはピアノなどの音楽、お絵描きといった芸術系の習い事。もうひとつがスイミング、体操、リトミックなどの体育系の習い事。そして3つ目が、小学校で学ぶ内容のいわゆる先取り学習、知育系の教育です。就学前教育といった場合、最後の知育教育をイメージする親御さんが多いようです。そして、その効果も気になるところ。たとえば幼児期に先取りして漢字を覚えれば、小学1年の段階ではやっていない子どもよりは国語の成績は良くなります。それは至って当然のことですよね。でも、追跡調査をしてみると、じつは小学2年の1学期が終わる頃にはほとんど差がなくなってしまうのです。つまり、先取り学習にはあまり意味がないといっていいかもしれません。ここで、多くの親御さんが持っている誤解を解いておきましょう。全国には49の国立大学付属幼稚園があります。いわゆるエリートコースの幼稚園と思われているのですから、それらの園では先取り学習をしていると思うのが自然ですよね。でも、実際のところ、いっさい勉強をしていません。ひらがななどの文字学習もまったくやらないのです。これには明確な意図があります。平成30年に幼稚園教育要領と保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領が改訂され、幼稚園や保育所では「遊びを主体とした学び」を小学校以降の学びにつなげていくという方針が明文化されました。国としても、幼いときには子ども一人ひとりが自主的に好きなことをとことんやっていく、遊んでいくことが将来的な学びの力につながると考えているわけです。幼児期の語彙力がその後の学力を予測するでも、親御さんはやっぱり不安なのでしょうね。「そうはいっても、小さいときから勉強をしたほうがいい」と考えてしまう。もちろん、知育系の教育にしろ、芸術系、体育系の習い事にしろ、子ども本人が「やりたい!」と思っていることなら、さまざまなものを得ることができるでしょう。そのなかでも、わたしが注目しているのが語彙力です。わたしも携わったある研究では、なんらかの習い事をしている子どもは、一切習い事をしていない子どもより語彙力が高いという結果が出ました。大好きな習い事をしていれば、先生や同じ教室に通う友だちとも積極的に話すことになります。そのコミュニケーションによって、語彙力が伸びたのだと推測できます。ただ、面白いことに、知育教育を受けた子どもが、たとえば体操教室に通った子どもより語彙力が高いかというと必ずしもそうではありませんでした。語彙力というと、知育教育で伸びるイメージを持つと思います。でも、なによりも言葉は実際に使わないと身につきません。語彙力の伸びという点では、習い事の種類ではなく、習い事をすること自体に意味があるのです。そして、語彙力と学力には非常に強い相関関係があります。幼児期の語彙力が高いほど、小学校以降の学力が伸びることがある研究であきらかになっているのです。その理由について、わたしの考えをお伝えしておきましょう。語彙力というと、たくさんの単語を知っていることだと思うものですよね?もちろん、ある程度の数の単語を知っていることも重要ですが、その使い方も知っておかなければ、本当の意味で語彙力があるとはいえません。小学校以降になると、たとえばテストの問題文に使われているそれぞれの単語がいったいどういう意味を持ち、ひとつの文としてなにを要求しているのかを理解する必要があります。幼児期に触れる具体物を指す言葉とちがって一気に抽象度が上がり、そういう内容も含めて理解できる語彙力が求められることになる。高い語彙力を幼児期に身につけておけば、勉強の最初の段階(小学校)でつまずくこともないでしょう。だからこそ、幼児期の語彙力が学力の伸びに大きく関与していると考えることができるのです。楽しく豊かな会話が子どもの語彙力を伸ばすそうなると、「幼いときから子どもの語彙力を伸ばしてあげたい」と親御さんは考えますよね。そのために親御さんができることは、日常で豊かな会話をするということ。豊かな会話とは、なるべく具体的な言葉を使う会話です。「こそあど言葉」を多用する家庭で育った子どもとそうではない子どもでは、後者のほうが小学校の成績が優秀だという研究結果があるほどです。「これ」とか「それ」は、会話相手が目の前にいるのなら通じる言葉ですよね。でも、隣の部屋にいる人に「それ、取って」といったところで、話は通じません。はっきりと対象物を名前でいって、どうしてほしいかということまで動作を表す言葉を使っていわなければ意図が伝わらないからです。「それ、取って」ではなくて、「テレビの横にあるリモコンをわたしのところに持ってきて」といった具合です。ちょっと回りくどいようですが、そういった積み重ねが子どもの語彙力を大きく伸ばすことになります。わたしもずいぶんたくさんの家庭を追跡調査してきましたが、やはり親御さんがきちんとした言葉を使っている家庭の子どもの語彙はとても豊富だという実感があります。子どもは周囲の大人を真似して言葉を覚えますから、それも当然のことかもしれませんね。ですが、「きちんと具体的に話さなきゃ……」と思うあまり、親御さんが自然にしゃべれなくなってしまっては本末転倒です。大人でもつねに厳密な日本語を使っているかというとそうではないですよね。こそあど言葉をなるべく使わないようにするという意識は重要ですが、そのことに余計に注意を向けることなく、まずは、子どもとの会話を楽しむことを心がけてください。お父さん、お母さんとの楽しい会話こそ、子どもの語彙を豊かにしていくものなのですから。『幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究』大宮明子 著/風間書房(2013)■ 十文字学園女子大学教授・大宮明子先生 インタビュー一覧第1回:東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと第2回:「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワード第3回:「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴第4回:絵本の目的は学びにあらず。子どもの興味の芽を摘む、読み聞かせ後の「最悪の質問」(※近日公開)【プロフィール】大宮明子(おおみや・あきこ)6月5日生まれ、東京都出身。十文字学園女子大学人間生活学部幼児教育学科教授。1988年、中央大学法学部法律学科卒業。1997年、お茶の水女子大学教育学部教育学科心理学専攻3年次編入学。2001年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科発達社会科学専攻博士前期課程修了。2008年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達科学専攻博士後期課程修了。人文科学博士。発達心理学、認知心理学、とくに子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月10日