StudyHackerこどもまなび☆ラボがお届けする新着記事一覧 (18/27)
日常生活のなかで、子どもに対してどのような言葉をかけることが多いでしょうか?「○○しなさい!」「駄目でしょ!」といった類のものであるなら要注意。そういう声かけを続けていると……子どもは自分で考えられない人間になってしまうかもしれません。自ら学び、考えられる子どもに育てるための方法や注意点を、発達心理学と認知心理学の専門家である十文字学園女子大学の大宮明子先生が教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)本を読むだけでは本当の語彙力は育たない子どもというのは、なにかを意識的に学ぼうとするのではなく、自分が好きなことを楽しんだ結果として学ぶという習性を持っています(インタビュー第1回参照)。そういう学びを日常的にできるかどうかは、親御さんのしつけのスタイルの影響がとても大きいといっていいでしょう。以前、2,700人くらいの未就学児とその親御さんを対象にある調査を実施しました。その調査の内容は、子どもには読み書きの力と語彙力の検査、親御さんにはどういうしつけをしているかというアンケートです。結果として、しつけのスタイルは大きく3つのタイプにわけることができました。ひとつが「共有型」で、これは子どもを主体としたスタイルです。子どもの自主性を大事にして、子どもの気持ちに親が寄り添うかたちでしつけをしていくようなイメージでしょうか。そういう親御さんの場合は、子どもに対する日常の接し方を見ても、子どもを認めたり褒めたりすることがとても多いのです。2つ目が「強制型」で、共有型とは対照的に親が主体のスタイルです。親の意のままにしつけをして、「○○しなさい!」「駄目でしょ!」といった指示・命令の言葉がすごく多く、子どもはそれに従うだけです。3つ目が「放任型」。これはただ放任しているというものの他、親御さんが育児不安などで精神的に参ってしまって子どもを放置しているというものも含まれます。興味深いことに、しつけのスタイルのちがいによって、子どもの語彙力にはっきりとしたちがいが見られました。想像できるかもしれませんが、共有型のしつけをされている家庭の子どもの語彙力は、強制型の家庭の子どものそれを大きく上回っていたのです。放任型に関しては一定の傾向はありませんでした。語彙力が高い子どももいれば、そうではない子どももいた。親に放置されていたとしても、たとえば本が好きな子どもの場合は語彙力がある程度伸びたということもあるのでしょう。しかし、それには限界があります。というのも、言葉の力はひとりでは育つものではないからです。なぜ、共有型の家庭の子どもの語彙力が大きく伸びていたのでしょうか。それは、親が子どもに寄り添うことによって、親子間のコミュニケーションが密になっているからです。本を読めば、たしかにある程度の語彙を手に入れることはできるでしょう。でも、言葉ですから、本当の意味で身につけるには、実際にその言葉を使ってやり取りをおこなうことがとても大事になる。かかわってくれる人がいなければ、子どもはせっかく知った言葉を使う練習をすることができないのです。答えを待つ子どもにしてしまう親の「先回り」しつけのスタイルは、これからの時代を生きる子どもに必要とされる「自ら学ぶ、考える」姿勢にも影響を与えます。たとえば、子どもが新聞紙で坂道をつくって、ペットボトルのキャップを転がすという遊びをはじめたとしましょう。子どもはキャップをなんとか真っすぐ転がそうとしますが、新聞紙は柔らかいので、なかなかうまくいかない。そこで、子どもは壁をつくってみるなどいろいろと工夫します。そういった試行錯誤こそ、子どもが「自ら学ぶ、考える」ということなのです。そして、一生懸命に工夫した結果、キャップが真っすぐ下まで転がったら、「やったー!」と大きな達成感を得ることになる。でも、お父さんやお母さんが「それじゃ駄目でしょ」「こうしたほうがいいんじゃない?」なんていってしまったらどうでしょうか?もちろん、親が子どもの遊びにかかわることは悪いことではありません。ただ、子どもが考える前から答えを与えてしまっては、子どもの試行錯誤、粘り強く頑張ること、その結果の達成感などをすべて奪い取ってしまうことになるのです。そんな「先回り」を繰り返していると、子どもに「遊びなさい」といったところで、「ママがやってよ」というようになる。小学校に上がって勉強をはじめる前から、答えを教えてくれることを待つ子どもになってしまうのです。そういう姿勢で育った人間は、残念ながらこれからの時代では活躍できないかもしれません。あちこちでいわれているように、これからの時代は多くの職業が機械(AI)に取って代わられるようになります。そんな時代に活躍するためには、機械にはできないことをできる人間にならなければなりません。そういう人間に必要なものこそ、「自ら学ぶ、考える」姿勢なのです。子どもと遊ぶときは「お友だちになったつもり」ででは、子どもの遊びに対して、親はどうかかわればいいのでしょうか。それは、もちろん子どもの気持ちに親が寄り添う共有型の関わりです。子どもと一緒に遊ぶ際には「大人を捨てる」ということをアドバイスしておきましょう。大人は行動の前につい頭で考えてしまいがちです。でも、子どもは「これをやったらどうなるのか」なんてことを考えず、ぱっと見て「わあ、面白そう!」「なにこれ!?」と感じた途端に動きはじめます。そういう子どもに寄り添うには、大人を捨てて子どもになればいいのです。子どもの仲良しのお友だちになったつもりで、ときにはわざと失敗する、知っていることも知らないふりをするというようなことをしてみてもいい。大人として子どもに接すると、子どもは「この人は大人だ」と思って構えてしまいます。とくに親の場合には、ときには叱る人だと思っていますから、なにか失敗したり変なことをいったりすると「怒られちゃうんじゃないか?」とか「おやつをくれないんじゃないか?」と思ったりもする。そう思った結果の子どもの振る舞いは、本来の自然な子どものものではないですよね。子どもと遊ぶときは、「子どもの仲良しのお友だちになったつもり」で――。そう心がければ、自然と共有型のスタイルで子どもに接することができるはずです。『幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究』大宮明子 著/風間書房(2013)■ 十文字学園女子大学教授・大宮明子先生 インタビュー一覧第1回:東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと第2回:「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワード第3回:「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴(※近日公開)第4回:絵本の目的は学びにあらず。子どもの興味の芽を摘む、読み聞かせ後の「最悪の質問」(※近日公開)【プロフィール】大宮明子(おおみや・あきこ)6月5日生まれ、東京都出身。十文字学園女子大学人間生活学部幼児教育学科教授。1988年、中央大学法学部法律学科卒業。1997年、お茶の水女子大学教育学部教育学科心理学専攻3年次編入学。2001年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科発達社会科学専攻博士前期課程修了。2008年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達科学専攻博士後期課程修了。人文科学博士。発達心理学、認知心理学、とくに子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月09日今年のゴールデンウィークは10連休ととても長いものでしたね。遠方にお出かけしたり、野外で遊んだり、子どもたちは思い切りこの10連休を楽しんだことでしょう。そんな連休が終わり学校が始まりましたが、連休の疲れを引きずっていたり、学校生活に戻るのが辛いと感じているお子さんもいるかもしれません。5月は運動会シーズン。体育の授業や運動会の練習が本格化する学校もあるでしょう。子どもたちには、疲れ知らずで元気に過ごしてもらいたいものですね。今月の『まなびの保健だより』では、現場の養護教諭や保育士が「少し気になる」「どこかおかしい」と実感している問題を取り上げました。それは、子どもの「体力と睡眠」です。一見健康そうに見える子どもたちが、転んでも手が出なかったり、朝からぼんやりしていて元気がなかったりすることがあります。病気ではないものの健康とは言えない、まさに「おかしいなあー」という状態です。皆さんのお子さんにも、似たような様子が見られることはありませんか?こうした子どものちょっとした異変がどこから来ているのか、詳しく解説していきます。毎日の子どもたちの生活の仕方を、ぜひ見直してみましょう。今の子どもたちは、スポーツはできても体力がない「転んでも手が出なくて顔のけがが増えた」「すぐに疲れて座り込んでしまう」。このように現場の教師や保育士たちが「近頃子どもたちの体や訴えが変わってきたな」と感じ始めてから、実はずいぶん経ちます。このことは、今日になっても改善されるどころかますます深刻になってきているのです。まずは、「子どもたちの体力」について考えてみましょう。体力には、行動体力と防衛体力があります。行動体力とは、一般的に「体力」と言われているもの。文部科学省が定める「新体力テスト」の各項目で測られます。<新体力テスト項目>握力・上体起こし・長座体前屈・反復横跳び・20mシャトルラン・50m走・立ち幅跳び・ボール投げ毎年、文部科学省が体育の日の前に「体力・運動能力調査結果」を発表しています。その平成29年度版を見ると、小学生の各項目の成績の年次推移は、ボール投げや握力などの項目で落ちていますが、上体起こし、反復横跳び、シャトルランなどは上昇しています。この結果から、今の子どもは以前の子どもに比べてすべての項目において体力が落ちているのではなく、体を上手にコントロールする力や身体操作能力が低下していると言えるのです。これは今の子どもたちが、小さな時から遊びを通して多様な運動をするよりも、サッカーや野球など固定したスポーツしかしていないことに原因がありそうです。実際、野球はすごくうまいけれど逆上がりができない子や、スキップができない子などもいるんですよ。また、近頃では運動をする子どもとしない子どもの二極化も問題になっています。運動をする子はしっかりするけれど、しない子は全然しない傾向にあるのです。特定のスポーツに励むことが悪いわけではありませんが、子どもは本来なら、木登りや鬼ごっこなどをして友だち同士で遊び込むことが大切です。幼児期や小学生時代は、多様な遊びを通してバランスよく体力を向上させましょう。そうすれば、転んでも手が出ず顔を怪我することも、疲れてすぐに座り込んでしまうこともなくなるはずですよ。また、もうひとつの「体力」である「防衛体力」についても少し触れておきましょう。防衛体力とは、病気やストレスに対する抵抗力のこと。近年、子どもたちの防衛体力の低下が問題になっています。防衛体力は、しっかり食べたり充分な睡眠をとったりすることによって向上させることができるものです。というわけで、次は「子どもたちの睡眠」へと話を移します。子どもの就寝時刻は年々遅くなり、睡眠時間は世界一短い学校で午前中ぼーっとしている子どもや、遅刻して登校する子どもは、今や珍しくありません。その理由は、子どもの就寝時刻が年々遅くなっているからです。こちらのグラフを見てください。1歳半~5歳の幼児のうち夜10時以降に寝る子どもの割合はどの年齢でも例外なく年々増加しています。また、『平成28~29年度児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書(日本学校保健会)』によると、小学生の就寝時刻は1・2年生で9時過ぎ、高学年になると10時を過ぎています。そして、その時刻は年々遅くなる傾向にあるのです。子どもの就寝時刻が遅くなり睡眠時間が短くなると、以下のような悪影響が懸念されます。<夜更かしをすると>・睡眠不足になり肥満につながる。・心身の成長が妨げられる。・慢性的な時差ボケ状態になり集中力がおちる。・セロトニンの分泌が減り、イライラが増し、感情のコントロールが困難になる。・メラトニンの分泌が減少し、性の早熟化を招く。(神山潤著『子どもの睡眠―眠りは脳と心の栄養』(芽ばえ社)参照)睡眠不足の弊害について詳しく説明しましょう。・睡眠不足は、心・体・脳の成長を妨げる「寝る子は育つ」という諺がありますが、人の体の中では眠っている間に「成長ホルモン」が出て、骨や筋肉を成長させたり、傷んだ細胞の修復をしたりします。だから「寝る子は育つ」は本当なのです。成長ホルモンが足りないと肥満にもなりやすくなるので、体の健やかな成長のために睡眠時間の確保は大切です。また、脳は眠っている間に記憶を整理しながら自らを休ませています。睡眠をしっかりとらないと脳は充分休むことができず、集中力や記憶力が減退し、イライラしたりやる気が出なくなったりしてしまうのです。・睡眠不足は、良い眠りを促すホルモンの分泌を阻害する良い眠りのためには、暗くなると分泌される「メラトニン」というホルモンが必要です。このホルモンは、眠気をもたらし、しっかり眠るために必要なホルモンですが、暗くならないと分泌しません。夜遅くなってもテレビやスマートフォンなどの明るい画面を見ていてはいけないのです。また、メラトニンの材料になるセロトニンは、昼間たっぷり活動することによって作られます。良い睡眠に不可欠なメラトニンやセロトニンをたっぷり分泌させるためには、「夜になったら暗くして眠る、朝明るくなったら活動する」という生活が子どもにとってとても大切です。・睡眠不足は、体内時計を乱す人間は昼行性の動物なので、暗くなったら寝て、明るくなったら起きて活動するリズム(サーカディアンリズム、体内時計)が脳に刻み込まれています。にもかかわらず夜更かし・朝寝坊をしてしまうと、自律神経の働きが乱れ、更年期障害のような症状(頭痛・頭がぼーっとする・体がだるいなど)が出てしまいます。日本学校保健会が調べた、寝起きの状態に関する子どもたちの自覚症状を見てみましょう。すっきり目覚めた子どもは少なくて、「少し眠かった」「眠くて起きられなかった」と答えている子どもが低学年で6割、高学年だと7割ぐらいいます。夜遅くまで起きていれば、当然朝すっきり目覚めることなどできません。睡眠不足のまま登校するのですから、午前中にぼーっとしてしまうのは言うまでもないこと。実際、午前中に体調が悪くて保健室を訪れる子どもや、「イライラする」「やる気が出ない」と訴えてくる子どもたちは睡眠不足のことが多く、ベッドに寝かせるとお昼ぐらいまでぐっすり眠ってしまったり、教室で机にうつ伏して眠ってしまったりする子もいます。小学校低学年の子どもには、10時間以上の睡眠時間が必要です。登校時間から逆算して朝6時半に起きるとすると、夜9時前には就寝することが必要です。みなさんのご家庭では、実践できているでしょうか?夜遅く、カラオケボックスや居酒屋さんで親に連れられた子どもの姿が見られることがありますが、これが良い状態だと言えないのは誰の目から見ても明らかなこと。驚くべきことに、日本の子どもたちは世界一睡眠時間が短いとも言われています。それほど、日本の子どもたちの睡眠に関する問題は深刻なのです。これをお読みの親御さん方は、お子さんの就寝時刻、睡眠時間をぜひ見直してみてください。「うちの子は疲れやすいのかも」と心配しすぎないでここからは、この時期の親御さんのお悩みに“養護教諭の視点から”アドバイスをするコーナーです。最初の質問はこちら。【親御さんからの質問 1】うちの子は、運動会の練習があった日は帰宅した時点でもうくたくたです。でも他の子のお母さんに聞くと、そんな日でも放課後たっぷり外遊びしている子が多い様子。うちの子は他の子より疲れやすいようです。「体力のある子」と「疲れやすい子」の違いはどんなところにあるのでしょうか?子どもは体格にも個人差があるように、体力にも個人差があって当然です。一般的に言えば、よく食べる子、よく眠る子は元気でよく遊びます。食事が細かったり、睡眠が充分とれていなかったりすると疲れやすくなり、外遊びもしなくなります。食事の食べ方にもかなり個人差がありますが、食べられない子には無理に食べさせるというより、バランスよく食べさせること。そのためには、できるだけ間食を減らして3度の食事をしっかりとらせることが大切です。あとは、早寝早起き、体を動かすことなどを心がけるといいでしょう。他の子どもたちとあまり比較しないで、疲れたら休ませればいいのです。しっかり眠って、次の日に元気になっていれば問題ありません。体だけでなく心も休養を。おすすめの週末の過ごし方【親御さんからの質問 2】共働き家庭のため、平日は寝るのが遅くなりがちで、子どもは睡眠不足気味。土日たっぷり寝ることで体力は復活するのですが、一週間が始まると、月曜日が終わった時点でさっそく疲れてしまうようです。疲れをとるだけでなく、より疲れにくい体を作るために、子どもには土日どう過ごさせればいいのでしょうか?基本的には「寝だめ・食いだめ」はできません。土日、たっぷり寝ることで、一見疲れが取れているようには見えますが、寝だめによる生活リズムの崩れはかえって次の1週間に影響してしまいます。最近は、土日になると午前中はベッドの中、食事は1日2食という家庭もあるようですね。大人はそれでもいいですが、成長期の子どもにはNGです。休日も、家族そろって朝食を食べ、少し体を動かし、昼食や夕食もしっかり食べましょう。その方が、次の週を元気に過ごせます。「休みの日をゆっくり過ごす」とは、「遅くまで寝ている」ことではなく、「いろいろなことに追われないで、家族で散歩したり、一緒に夕ご飯を作って家族でゆっくりお話ししながら食べたりする」こと。そんな生活が望ましいですね。「1週間に一度は、家族そろって素材から調理したものを一緒に食べる」。こんな休日の過ごし方をお勧めします。疲れを取るためには、体の休養だけではなく楽しく過ごすという心の休養も必要です。遊び疲れて宿題ができないなら「朝宿」を【親御さんからの質問 3】学校から帰ってくると「疲れたー」と言って宿題もしないのに、お友だちから「遊ぼう」と誘われると途端に元気になって外へ出て行ってしまいます。外遊びから帰ってくれば当然クタクタでますます宿題を嫌がるので、つい叱ってしまう毎日です。「疲れたー」と言う子どものマインドをサッと宿題へ向けさせる、効果的な声掛けはないでしょうか?「疲れたー」と言って帰ってきても、友だちから誘いがあれば元気に出かけていくのが子どもです。当然、遊んだ分体は疲れますが、そんな時は早く夕ご飯を食べてお風呂に入り、すぐに寝させるといいでしょう。宿題ができなかったら朝やればいいのです。そのほうが、人間の生体リズムに合っていて能率は上がります。「朝宿」がおすすめですよ。子どもの体力アップの3か条子どもは成長・発達していく途上にあります。子どもに元気にすくすく育ってほしいと思うのなら、家庭の生活リズムは大人ではなく子ども優先にすることが大切です。子どもの「行動体力」や「防衛体力」を高める秘訣は、なんといっても、「体を動かして遊ぶ」「おなかをすかしてしっかりご飯を食べる」「夜は早く寝て朝は早く起きる」この3つです。お子さんの成長のために、できるだけ大人が子どもの生活に合わせたいですね。
2019年05月09日私は小学生用の辞書が大好きです。そこには、大人の辞書には少ない、挿絵があるからです。何か言葉を引いたとき、そのページにある挿絵をじっと見てしまいます。例えば「このあいだ」のページには、「こはぜ」と「こぶし」と「コブラ」の挿絵が載っています。私はこれを見て、「こはぜ」という物を初めて知りました。未だに知らない言葉に出会えるのがうれしいですね。こんにちは。ゆか先生です。前回は、国語辞典をさっと使えるようにする仕掛けについてお伝えしました。外箱を外し、名前を書いて、リビングに置く。これで準備はOKです。さあ、当たり前ですが、このままでは辞書を引けるようにはなりません。今回は文字の引き方、付箋紙やノートを使った辞書引き学習の方法など、実践方法をお伝えします。国語辞典の基本出版社によっては、ガイドブックが付属しているところもありますが、基本的に、文字の引き方については辞書のはじめに載っています。そこを読めばだいたいのことは分かりますが、今回、注意点も含めまとめてみますね。1. まずは五十音を体感日本の国語辞典は、五十音順に載っています。未就学児、小学校低学年の場合、細かいルールはそれほど気にしなくても構いません。ただし、五十音の順番は分かっていた方が引きやすいです。まずは「あ段」の言葉の順番を覚えましょう。本の開く側を「小口」といいますが、そこに「あ・か・さ・た・な……」と書いてあります。その順番をまずは覚えると良いでしょう。しかし、そこだけ暗唱させて覚えるなんて方法はナンセンス。辞書を引くことで自然と分かるようになりますので、辞書を引く機会を利用し、「あ・か・さ・た・な……」と口で言うようにすると良いですね。次に例えば「ぬ」が「な行」にあるという感覚も必要になります。それは、五十音表などを活用して覚えるようにしましょう。壁に五十音表を貼るのも手です。手始めに、自分の名前が何行の何段にあるのか指でさせるようになるといいですね。これは全ての調べ学習の基礎になります。そして、これは一朝一夕に身につく力ではありませんので、毎日の生活の中で取り入れていくと良いでしょう。「『ぬ』はどこ?」と問いかけ、探させるゲームのような方法も、子どもが楽しみながら学べるので、とても良いと思います。2. 活用に注意「先生『買った』がのっていません」そんな気づきにはっとさせられます。大人の辞書には言い切りの形で載っています。大人の場合は「買った」を「買う」で引きますよね。「買った」は「買う」の変化であることを知っているからです。ところが子どもには言い切りの言葉が想像できません。子ども向けの国語辞典は、このあたりを実に細やかに工夫してあり、言い切りでない形で引いたときも、言い切りの形に誘導するようになっています。「買った」「買わない」「買おう」などの変化した形からでも「買う」に誘導されるようになっているのです。ここが大人の国語辞典と大きく違うところですね。もし家に子ども用の辞典がある場合は、試しに「買った」を引いてみてくださいね。なお、全ての語について変化形が載っているわけではありません。この件についても、辞書を引くうちに、言葉がどういう形で辞書に載っているのか分かるようになります。文法も自然と分かるようになります。辞書引きにはこのような良い面もあるのですね。もしも、変化した言葉が辞書に載っていなくて、子どもが言い切りの言葉を思いつけない様子であれば、保護者の方が手伝ってあげてください。「その言葉は○○という形で載っているよ。一緒に探そうか」などと、アドバイスしてあげるとよいでしょう。3. 引いても意味が分からない最初のうちは、引いても意味が分からない場合が多いです。何しろ言葉を習い始めた時期なわけです。大人でいえば、まるで英英辞典を引いているような気分だと思います。その場合にはやはり保護者の方のフォローは必須。意味をかみ砕いて説明してあげましょう。これ、言葉の再発見にもなり、大人にもとても良い勉強になります。例えば「右」という言葉、みなさんならどう説明しますか?私が持っている小学生用の辞書では「日の出に向かって南側に当たる方」と書いてあります。子どもにはちょっと難しいかもしれません。その際は実際に、一緒に日の出の方向を向いてみると良いでしょう。また、具体例を織り交ぜると、ぐっと理解しやすくなりますので、そのような工夫も大切かと思います。【例:記念】意味思い出として残しておくこと。また、そのもの。具体例「○○ちゃんは、幼稚園の卒園式で△△をもらったよね。あれは、○○ちゃんが幼稚園楽しかったなーっていう気持ちをずっと残しておいて、いつでも思い出せるようにしてあるんだよ。そういうものを記念のものっていうの」付箋紙大作戦私の講座では、入会時に、保護者の方向けに3冊の本を推薦図書としています。『どの子も伸びる国語力』岸本裕史小学館『小学校1年で国語辞典を使えるようにする30の方法』深谷圭助明治図書出版『学力は家庭で伸びる―今すぐ親ができること41』陰山英男小学館の3冊です。おすすめの理由、本の詳細については、こちらをご覧ください。その中の『小学校1年で国語辞典を使えるようにする30の方法』で取り上げられている付箋紙による辞書引き方法は、とても効果が高いと実感しています。辞書を引いたら、調べた言葉を付箋紙に書き、番号を振り、そのページに貼っていくという方法です。保護者の方々の報告では、付箋紙を貼ることは、本当に励みになるようです。私の受講生の中で、実際にこの方法で取り組んで、効果を上げた生徒を紹介します。まずはIくん。小1で入会して、今は6年生です。1年生から辞書引き学習を始めました。これは最近の写真です。付箋紙がはみ出していて、もはや辞書には見えませんが(笑)。 付箋紙は、彼にとっては勲章なのでしょう。これを見るたびに、自分が積み重ねてきたものを誇りに思うに違いありません。最初は1枚、2枚と寂しい感じだったでしょう。ところが、10枚、20枚となってくると、俄然何かのスイッチが入ります。4月に始めたのですが、5月には620枚になり、12月には1,500枚になっていました。これは、1年生の9ヶ月で1,500の文字を辞書で引いたということです。学校ではしないことですので、どれだけ彼の語彙が増えたのか、想像できると思います。彼は、語彙がどんどん増え、文章も上手になり、読書感想文などで賞も取るようになりました。また、中学年の夏には、真っ白な自由帳に自分で線を引いて、「読書帳」を作りました。自分なりにハートに火が付く学習法を見つけたようです。もう一人、これは去年入会した2年生のMちゃんです。調べた言葉と番号だけでなく、例文も書いたらいいのではないかということを自分で思いつき、書いているそうです。保護者の方のお話では「目的の単語を調べるのに、まだ時間がかかるので、私と一緒に辞書を引いています。ゆか先生のおすすめの本を参考にして受講時から付箋を使用しています。先生のおかげで親子で学習するきっかけができています。ありがとうございます。」とのこと。大学生になる私の息子も、小学1年生から辞書を引かせ、付箋紙学習をしていました。彼は引いた語の一覧がほしかったようで、ノートに作っていました。他にも付箋紙を貼っていく方法で頑張っている生徒がいますが、共通することが、自分で新しいアイディアを試したり、工夫を重ねたりしていることです。そして、親に言われたやり方ではなく、自分独自の方法を作り出していく力があると思います。さらに、どの子も語彙を増やすだけでなく、文章全体が上手になっていく傾向があるようです。知っている言葉が増えると、表現が豊かになる結果なのでしょう。現在、この辞書引き学習法は、さらに発展していて、著者の深谷先生のサイトでも詳しく紹介されていますので、興味のある方はぜひ試してみてください。ゲーム感覚で競争!ある程度、文字が引けるようになってからは、目的の言葉にたどり着くまでの時間を親子で競争するのも面白いでしょう。子ども用のかるたを使う方法が便利です。かるたには、子どもが知っている言葉がのっていますので、それに出てくる言葉を辞書で引いてみるのです。かるたがない場合は、絵本でも、テレビでもなんでも良いので、目に付いた言葉を引いてみます。教科書に出てくる言葉でも良いのですが、ちょっと「宿題」を思い起こさせてしまい、やる気がなくなってしまうかもしれません。なるべく「生活」に近い言葉の方が良いでしょう。また、調べる言葉をお子さん自身が探すというのも良いと思います。兄弟でする場合は、様子を見てハンデをつけましょう。保護者の方は、同じ言葉を和英辞典で探し、出てきた英単語を英和辞典で探す、なんていうのも面白いかもしれません。親が辞書を引く姿を子どもに見せる「分からない言葉は調べなさい」なんて口で言うのは簡単ですが、実際親はスマホで済ませようとしてしまいます。昔は、言葉が分からない場合は、ケイタイではなく辞書を使って調べていました。お子さんの辞書引きを習慣化させるためにも、ぜひ、そのお手本になってください。日常の場面で、知らない言葉に出会った時、「○○ってどういう意味かしら。調べてみようっと」と言って辞書を引くのです。これは、スマホで言葉を検索することになれてしまった保護者の方にも良い機会となるはずです。その姿を見て、子どもは自然と「分からない言葉があれば辞書を引けば分かるようになる」と知るでしょう。そして何より、連載第1回でもお伝えしましたが「分からないことをそのままにしない」という姿勢を親からも学べます。まずは、今日、知らない言葉に出会ったら、スマホを手に取る前に、辞書で調べてみてください。新しい気づきがありますよ!■ 連載『ゆか先生の 国語辞典の世界へようこそ』各回の内容第1回:国語辞典でこの時代を生きぬくための基本動作が身につく第2回:子どもにぴったりの国語辞典を選ぼう! 電子辞書ってどうなの?第3回:初めての国語辞典。カバーは?置き場所は?どんなふうに引くの?第4回:ゲーム感覚でやる気をアップ! 付箋紙やノートで記録する方法など第5回:漢字辞典、百科事典、ことわざ辞典、四字熟語辞典、語源辞典など、子どもの世界の辞典いろいろ(※近日公開)第6回:まとめ国語辞典を使えるようになった子どもたちのその後(※近日公開)
2019年05月08日「10歳の壁・9歳の壁・小4の壁」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。9~10歳のころに、子供が勉強面や心理面でつまずいてしまうのは珍しくありません。「壁」を乗り越え、将来、自立した大人になるためには、この時期に自分に自信をつけることが大切です。今回は、子供が自分に自信を持つべき理由と、そのために親ができることを2つ紹介します。劣等感が生まれる!?「10歳の壁」とは10歳の壁とは、10歳前後の子供が直面する課題として、よく知られています。「9歳の壁」「小4の壁」と言われることもありますね。文部科学省は、この時期の子供について、次のように説明しています。対象との間に距離をおいた分析ができるようになり、知的な活動においてもより分化した追求が可能となる。自分のことも客観的にとらえられるようになるが、一方、発達の個人差も顕著になる(いわゆる「9歳の壁」)。身体も大きく成長し、自己肯定感を持ちはじめる時期であるが、反面、発達の個人差も大きく見られることから、自己に対する肯定的な意識を持てず、劣等感を持ちやすくなる時期でもある。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:文部科学省|3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題)子供の考え方は9~10歳の時期に大きく転換します。この転換によって、抽象的な「5-2=3」という式を、「5個のミカンを2つ食べたから残りは3個」などの具体例を介さずに理解できるようになります。また、抽象的な概念だけでなく、他人の目から見た自分の姿も理解し始めます。抽象的な考え方ができるようになるまでの期間は個人差があるので、子供たちは自己と他人を比べてしまい、自己肯定感を失いがちです。そして、このときに自己肯定感を失ったままだと、その後の成長に大きな影を落としかねないのです。10歳の壁を壊す「自己肯定感」の大切さ多くの企業・学校で活用されている行動習慣化メソッドを開発した人材育成研究家の永谷研一さんは、自己肯定感の大切さを次のように述べます。自己肯定感が高い人は、楽観的に物事を考えることができるので、少々不安であっても前向きな行動を起こすことができます。また自分の気持ちを開示することができるので、周りからのアドバイスも受けやすく、ぐんぐん成長することができます。その逆に自己肯定感が低い人は、悲観的に物事を考えてしまう傾向があります。新しい行動を起こそうとしてもリスクを考えて踏みとどまってしまい、前に進むことができません。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:東洋経済ONLINE|「自己肯定感」が低い人に現れる”残念な症状”伸びる人と停滞する人の差にもつながる)自己肯定感を失ってしまった子供は、「どうせ頑張ったって、できないんだ」と考えるようになり、次第に挑戦をしなくなります。自分から行動を起こすことはなくなり、将来、指示待ち人間となってしまう可能性もあるでしょう。そして、人の後をついてゆくだけの人間にとって、これからの時代を生き抜くには厳しそうです。「東大・京大で一番読まれた本」として知られる『思考の整理学』の著者・外山滋比古さんは次のように述べます。僕が本に書いたのは、“墜落してもいいから飛行機になれ”ということです。グライダー型人間はモノマネが得意だけれど、新しい事態や時代の変化に対応できません。しかも現在は30年前よりはるかに時代が進み、学校で学んだ知識がより通用しなくなった。人工知能(AI)やITなどが発達した今こそ、他人に引っ張ってもらって飛ぶグライダー型人間ではなく、自力で自分のめざす場所まで飛べる飛行機型人間が求められています。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:NEWSポストセブン|外山滋比古氏の提言「墜落してもいいから飛行機になれ」)子どもが将来活躍するためには、主体性を持って行動する必要があります。そのため、主体性を生みだす自己肯定感はとても大切な要素なのです。では、10歳の壁に負けず、子供に自己肯定感を身につけさせるためにはどうすればよいのでしょうか?叱ってばかりだと、自己肯定感はボロボロに……一番大切なのは、親が子供を信頼し、行動を見守るということです。子供が行動するとき、失敗しそうで不安になり、あれこれ口を出していませんか?「早く宿題をやりなさい」や「部屋をきれいにしなさい」などと、子供の行動に毎回口をはさみ叱っていると、子供はどんどん挑戦する心を失っていってしまうのです。教員出身の教育評論家、親野智可等(ちから)さんは次のように述べます。待てない親や先生は必ず子どもを傷つけます。目先のことばかり見て「○○ができてない。ちゃんとやらなきゃダメでしょ」と否定的に叱り続け、結局は子どもの自己肯定感をボロボロにしてしまうのです。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:親力|やる気のスイッチが入る人と入らない人、その差はどこに?)子供は自分で必要だと感じたら、その時に自分で考えて、何とかしようと行動します。そして、その行動をやり遂げることによって、子供たちは「自分なら大丈夫だ、自分もできるのだ」と思えるようになるのです。したがって、自己肯定感を身につけさせるには、まず、子供の行動を見守ってあげることが大切なのです。「頭がいいね!」で自己肯定感は伸びないまた、親が子供をきちんとほめてあげることでも、子供の自己肯定感は高まります。その際、ほめ方に注意が必要です。褒めるときは子供の能力ではなく、行動を褒めましょう。スタンフォード大学で行われた実験によると、能力をほめられた子供は学習意欲が下がってしまうのだそう。ドゥエック教授は、子どもを対象としたテストで「頭がいいから成績がよかった」と能力をほめたグループと、「がんばったから成績がよかった」と努力をほめたグループのその後の行動を観察しました。すると、能力をほめたグループの子どもは新しい課題に消極的になったり、なかなか解けない難題に対して「楽しくない」「自分はできない」とあきらめてしまったりしたそうです。一方、努力をほめたグループは新しい課題にも積極的に取り組み、難問にも根気よくがんばる姿勢を見せ、最終的にいい成績を収めたといいます。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:サイバーユニバーシティ株式会社|能力ではなく「努力」をほめる!効果的なフィードバックの方法)人間は能力を評価されると、その「能力が高い」という評価を維持するために行動してしまうのだそう。「頭がいいね」と褒められた子供たちは、「自分が問題をとけない、つまり頭がよくない」という評価を避けるために、「そもそも挑戦をしない」という決断をしてしまうのですね。また、米カリフォルニア大学サンディエゴ校とカナダのトロント大学、中国杭州師範大学の研究者らが行った研究では、「頭がいいね」と褒められた子供たちは、不正行為をする可能性が高くなるという結果でした。したがって、子供を褒めるときは、子供が努力した姿に注目してあげるようにしましょう。***9~10歳の子供は、勉強・身体の成長・人間関係などあらゆる面で大きな変化を迎えます。そんな子供がのびのびと挑戦し育ってゆくためにも、親はどーんと構えて子供を見守ってあげましょう。そうすることで、子供は主体性のある大人に成長できるでしょう。文/村瀬裕一(参考)文部科学省|3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題ダ・ヴィンチニュース|225万部突破! なぜ『思考の整理学』は東大生から根強く支持されるのか?AllAbout|「10歳の壁/小4の壁」子供がぶつかる勉強の見えない壁への対策3つ親力|やる気のスイッチが入る人と入らない人、その差はどこに?AERA dot.|「9歳・10歳の壁」を乗り越える3つの法則帝京科学大学学術リポジトリ|児童期の認知発達と心理発達の特徴と支援について産経新聞|写真で褒める「ほめ写」子供の自己肯定感アップJ-CASTニュース|子どもを「賢い」と褒め続ける教育ご用心!インチキする子になりますよ
2019年05月07日教育熱心な親御さんのなかには、「プレイフル・ラーニング」という言葉を耳にしたことがある人も多いかもしれません。いわゆる詰め込み型教育の対極にあるものとして、「遊びながら学ぶ」というイメージを持っているのではないでしょうか。でも、ちょっとだけ、そのとらえ方のニュアンスがちがうようです。では、そもそもプレイフル・ラーニングとはなにか。そして、家庭教育に生かすための方法にはどんなものがあるのかを、発達心理学と認知心理学の専門家である十文字学園女子大学の大宮明子先生に教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)楽しんでいるなかに学びがあるプレイフル・ラーニングとは、同志社女子大学の上田信行先生が提唱された概念で、一般には2000年代前半頃から認知度が高まってきました。「プレイ」という言葉から、「遊びながら学ぶ」教育手法だと思われがちですが、プレイフル・ラーニングの根底にあるのは「楽しんでいるなかに、そもそも学びがある」という考え方です。「楽しんでいるとき」ですから、いわゆる「遊び」でない場合もあります。ただ、子どもの場合、楽しんでいるときにしていることというと、基本的には遊びが多いですよね。ですから、必然的に子どもにとっては遊びから学ぶことが多くなるのです。親御さんに意識しておいてほしいのは、大人と子どもの学び方はまったくちがうということ。決定的なちがいは、「目的や目標があるかどうか」という点です。大人が学ぶときには、ほとんどの場合はなにかのスキルを身につけたいといった目的や目標がありますよね。そして、その目的や目標を達成するために本を読んだり講座を受けたりするわけです。大人は、「学ぶこと」とはそういうものだと思っています。でも、子どもの場合は多くの学びがある遊びをするにも、なにかを学びたいといった目的や目標を持っていません。ただ楽しくお人形さんごっこをやっていたら、いつの間にか自分の着替えもできるようになった。これも立派な学びですが、その子は「着替えができるようになりたい」と思っていたわけではないのです。子どもの学び方は、あらかじめほしい結果があるのではなく、楽しく遊んでいたら、結果としてなにかを学んでいたというかたちだと思っていいでしょう。好きなことを追求していた難関突破経験者幼いときのプレイフル・ラーニングは、将来的には学力を大きく伸ばすことにもつながります。以前、先の上田先生、お茶の水女子大学の内田伸子先生とわたしの3人でおこなった研究を紹介しましょう。その研究では、東大や京大といった難関大学合格者、あるいは司法試験や医師試験の合格者という「難関突破経験者」とその親にウェブ調査をおこないました。調査内容は、幼児期になにをしていたことが難関突破につながったか、ということです。結果は、見事にプレイフル・ラーニングでした。普通、そういうエリートと呼ばれる人たちなら、小さいときから塾に通って先取り学習をするなど一生懸命に勉強していたのではないかと考えるのが自然です。でも、実際にはそうではなかった。彼らが幼いときになにをしていたかというと、それぞれが好きなことをとことんやり続けた。そして親は、子どもが好きなことに一緒に取り組むなどして、子どもを応援していたのです。たとえば、ある人は虫が大好きでひたすら網を持って虫取りばかりしていたそうです。他には、とことんサッカーをしていた、野球をしていたという人もいます。いわゆるお勉強からは程遠いことをしていた人たちばかりでした。それがなぜ知的なレベルの学習にもつながったのか?その部分にはみなさんも関心があるでしょう。その答えは、その人たちが幼いときにやっていたことは、親に強制されたものではなく、自分が好きなことだったということ。そして、親がそれを止めることなくやり続けさせた。そうして、持続力や集中力が身についたのだろうと推測できます。また、好きなことを通じて、彼らは自分なりに学びに向かうための方略を身につけていきました。虫好きの子どもなら、知らない虫を捕まえてくれば自分で図鑑を開いて調べる。そして、単にバラバラの知識を頭に入れるのではなく、「この虫とこの虫はここが似ているから、きっとこういう似た場所にいるのだろう」というふうにも考えたりもする。つまり、自ら学ぶ姿勢を身につけ、さらには自分で得た知識を体系立てる、構造化するということも、小学校に入る前からしていたというわけです。そんな学びの姿勢がある子どもの興味の対象が教科になったとしたらどうでしょうか?学力が一気に伸びることは明白ではありませんか。ものを過剰に買い与えることも要注意!大切なことは、子どもにとっては遊びのなかに学びがあるからといって、「はい、これで遊びなさい!」と強制してもなんの意味もないということ。子ども自身が「やりたいと思うこと」を思う存分やらせてあげることがポイントです。すると、「なるべく選択肢が多いほうがいいだろう」と考えて、いろいろなものを買い与えようとする親御さんもいるようです。しかし、その考えは要注意。大人にとっては珍しくもなんともないものでも、子どもにとっては「これ、なんだろう?」と思うものが家のなかにはあふれているものです。それこそ、単なるテレビのリモコンだって、幼い子どもにとっては興味の対象になるのです。それなのに、お店で少しでも子どもが興味を示したからと、あれやこれやと買い与えると、子ども部屋はものであふれかえります。すると、ものがあり過ぎるためにものが風景の一部になり、子どもはどこに注意を向けていいのかわからなくなり、かえってものに対して興味を示したり集中したりすることができなくなるのです。意識的にものを与えなくても、子どもは子どもなりに周囲のものに必ず興味を示します。そして、その興味を邪魔することなく、子どもの行動、遊びを見守ることを心がけてください。『幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究』大宮明子 著/風間書房(2013)■ 十文字学園女子大学教授・大宮明子先生 インタビュー一覧第1回:東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと第2回:「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワード(※近日公開)第3回:「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴(※近日公開)第4回:絵本の目的は学びにあらず。子どもの興味の芽を摘む、読み聞かせ後の「最悪の質問」(※近日公開)【プロフィール】大宮明子(おおみや・あきこ)6月5日生まれ、東京都出身。十文字学園女子大学人間生活学部幼児教育学科教授。1988年、中央大学法学部法律学科卒業。1997年、お茶の水女子大学教育学部教育学科心理学専攻3年次編入学。2001年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科発達社会科学専攻博士前期課程修了。2008年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達科学専攻博士後期課程修了。人文科学博士。発達心理学、認知心理学、とくに子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月07日親子のコミュニケーションの一環として、あるいは寝かしつけのおともとして、多くの家庭で取り入れられている「絵本の読み聞かせ」。しかし、「なんとなく教育によさそうだからやっているけど、どういいのかはわからない」という親御さんも少なくありません。絵本の読み聞かせには、子どもにとってたくさんのメリットがあります。具体的に知っておいて損はないはずです。とりわけ、学びに関するメリットについては、「こどもまなびラボ」の読者のみなさんにとっても興味深いものではないでしょうか。今回は、絵本の読み聞かせのメリット——なかでも学力向上につながる効果と、それを高める読み聞かせ方をご紹介します。絵本は「心の脳」に働きかける!?子どもに絵本を読み聞かせると、その内容に応じて子どもがニコニコしたり、目を見開いたりする様子が見られます。ときには、日常生活では見られないような複雑な表情をすることも。そんな我が子の一面を見て、読み手である親もうれしい気持ちになるでしょう。このように、読み聞かせ中に聞き手である子どもの表情がクルクル変わるのは、子どもの脳内で喜怒哀楽を司る大脳辺縁系が活発に動いているから。元東京医科歯科大学大学院教授の秦羅雅登先生は、大脳辺縁系のことを「心の脳」と表現し、それが子どもにどんな影響をもたらすか次のように説明しています。読み聞かせは子供の「心の脳」に直接働きかけることがわかっています。言葉はわからないけど「心の脳」はしっかり働いて、うれしい、たのしい、こわい、悲しいがちゃんとわかる子が育ちます。(引用元:東京都教育委員会|脳科学の先生が考える“絵本の読み聞かせ”って?)スポーツにトレーニングが欠かせないのと同じように、脳も使わなければ発達しません。「心の脳」も同様です。絵本の読み聞かせにより、「心の脳」をしっかり動かし、発達させることで、感情が豊かになっていきます。また、「心の脳」が発達すると、その子の行動も発達するといいます。心がうれしい、楽しいと感じれば、「もっとやりたい」と思って行動するし、悲しい、怖いと感じれば、「やめよう」という判断ができるからです。絵本の読み聞かせは、子どもの脳に働きかけ、心や体を動かす糧となることがわかります。語彙力を鍛え、学力向上にも効果あり!絵本の読み聞かせの効果は、それだけに留まりません。学力向上にも効果があるのです。「2013年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」(国立大学法人お茶の水女子大学)をもとにつくられた、絵本の読み聞かせと学力の関係を示すデータがあります。それによれば、子どもが小さい頃絵本の読み聞かせをしていた家庭の子どもは、そうでない家庭の子どもより、国語と算数の正答率が高かったのだそう。小学6年生と中学3年生を対象とした調査ですが、その傾向は両方に見られました。一方で、2015年に実施された「大学生意識調査-東京大学編」(KUMON)では、「子どものころ、親にしてもらって感謝している教育とは?」という問いに対する東大生の答えで最も多かったのが、「本の読み聞かせ」でした。つまり、実際に学力の高い学生の多くが、小さい頃に絵本の読み聞かせをしてもらい、それがよかったと感じているということです。なぜ、絵本の読み聞かせで学力が向上するのでしょうか。絵本スタイリストの景山聖子さんは、その要因のひとつに「語彙力」を挙げます。ここでいう語彙力とは、どれだけ多くの言葉を知っているか、その言葉をどれだけ適切に使えるか、を示す力のこと。景山さんは、次のように説明します。お子さんに絵本を読み聞かせてあげるだけで、自然と語彙力が鍛えられます。その上、多くの言葉を理解することで、文章理解力も増します。さらには、小学校で全教科の先生の話がより深く理解できるようになります。その結果、学力の高い子どもが育ちます。(引用元:Study Hackerこどもまなびラボ|「読み聞かせ」でなぜ学力が上がるのか?絵本がもたらす ”驚きの効果”)景山さんの言うとおり、語彙力や文章理解力は国語のみならず、全教科で活かされます。言葉や文章がまったく使用されない教科はないからです。逆に、語彙力が乏しいと、授業中に先生が何を言っているのかわからない、テスト中に問題文の意味が理解できない、なんてことも起こりえます。絵本の読み聞かせで鍛えられた語彙力は、学校に入ってからの学びをそっと支えてくれるでしょう。効果を高める読み聞かせ方とは!?では、こうした効果をより高めるには、どのように読み聞かせればいいのでしょうか。まず、読み聞かせる絵本の選び方としては、毎日違う絵本をたくさん読み聞かせるより、同じ絵本を繰り返し読み聞かせるほうが、語彙力を鍛えるのには効果的であるといえます。イギリスで行われた研究では、1冊の絵本を何度も読み聞かせたグループと、複数の絵本を読み聞かせたグループで覚えた単語数を比較したところ、前者が後者の2倍も多く覚えたのだそうです。一方で、「ただ読むだけでは、理想的な語彙力や文章理解力はつきません」と、教育環境設定コンサルタントの松永暢史さんは言います。松永さんが効果的な読み聞かせ方として推奨しているのは、絵本に書かれた一字一字のすべてをハッキリ発音する、「一音一音ハッキリ読み」です。街中で移動販売車から聞こえてくる、「いしや〜きいも〜」「たけや〜さおだけ〜」などの呼びかけをイメージするとわかりやすいかもしれません。一音一音切って、下記のように母音を正しく発音し、口を大きく動かして読み聞かせます。「あ」→最大限に口を開く発音。自分の口にゲンコツを入れるイメージで広げ、腹の底から音を出す「い」→「あ」の状態から左右を思いっきり口を引き裂くイメージで。「う」→口を前にとがらせて、しっかり止める。「え」→唇を少しかたくして、口をやや縦に開いて発音する。「お」→口を結びかけて下あごを下げ、口の中に空洞を作る。(引用元:EhonNavi|『将来の学力は10歳までの読書量で決まる!』松永暢史さんインタビュー)この読み聞かせ方をするときは、子どもにわかりやすいように言い換えたり、抑揚をつけたりする必要はありません。子どもの耳から体内へ注入させるようなイメージで、ゆっくり淡々と読み聞かせるのがポイントです。なお、集中力のない子や、じっとしていられない子に読み聞かせるときは、親子で一緒に寝転がって読むとうまくいくかもしれません。松永さんによれば、この読み聞かせ方を実践した親御さんから、「今まで、じっと聞いていられなかった子どもが、じっと聞いている」という報告があったそうです。読み手がしっかりと言葉を発することで、聞き手もしっかりとその音を聞き、言葉のひとつひとつを理解しようとするのでしょう。***絵本の読み聞かせのコツについては、あらゆる媒体で様々な情報が公開されています。大切なのは、読み手である親御さんがいろいろ試してみて、一番楽しく読み聞かせることができるやり方を知ることです。読み手が楽しめなければ、聞き手も楽しめませんし、長続きしません。親子で一緒に楽しむことが、絵本の読み聞かせの最大のコツといえるのではないでしょうか。(参考)東京都教育委員会|脳科学の先生が考える“絵本の読み聞かせ”って?Study Hackerこどもまなびラボ|「読み聞かせ」でなぜ学力が上がるのか?絵本がもたらす ”驚きの効果”Study Hackerこどもまなびラボ|「東大生が親に感謝していること」堂々1位!本の読み聞かせの効果と “学力を上げる” 本の選び方。EhonNavi|『将来の学力は10歳までの読書量で決まる!』松永暢史さんインタビューStudy Hackerこどもまなびラボ|国語力は“〇〇の音読”で爆発的に伸びる。読むだけで子どもの頭がよくなる名作本の選び方
2019年05月06日恐竜が大好きで、幼稚園から小学校低学年のころにかけて、いろいろな種類の恐竜について図鑑で調べて名前を覚えたり、恐竜のおもちゃを欲しがったりする子は意外と多いものです。恐竜に限らず、「熱中する」「ハマる」という体験は、一時的なブームとして終わるものではなく、この先のお子さんの学習姿勢を大きく左右するのだそう。今回は、恐竜好きなお子さんの「もっと知りたい」という探求心をくすぐり、「学び」へとつなげるコツについて紹介します。恐竜好きな少年がたどり着いた研究者への道NHKラジオで長い間子どもに親しまれている「夏休み子ども科学電話相談」という番組をご存じでしょうか。子どもたちの素朴な「なぜ?」に、各分野のプロフェッショナルがわかりやすく丁寧な解説で相談にのる人気番組です。この番組で「恐竜」のテーマを担当する北海道大学総合博物館・小林快次博士は、中学生のころ化石に出合ったのをきっかけに「恐竜博士」へと突き進んだのだそう。中学一年生で化石に出会って以来、毎日のように化石を採集する日々を過ごしました。大学でアメリカに留学し、日本人で初めて恐竜の博士号を取得。(引用元:NHK|夏休み子ども科学電話相談)もともと理科が好きだった小林先生は、中学で入った理科クラブのアンモナイトの化石採集で、周りの人がたくさん化石を見つけているのに自分だけは見つけられなかったのだそうです。あまりに悔しくて、その後何度も同じ場所へ足を運んで化石を掘り続けていたとき、先生から「石を割れば割るほど化石が見つかる可能性は上がる」と声をかけられ「スイッチ」が入ったと言います。その後、日本の大学へ入るものの1年でワイオミング大学地質地学物理学科へ留学、飛び級するほどの目覚ましい才能を開花し、日本で初めて恐竜の「博士号」を取得したという経歴の持ち主です。あまりに化石をよく見つけることから、研究仲間から「ファルコンズ・アイ(ハヤブサの目)」や「イーグルズ・アイ(鷲の目)」「ホークス・アイ(鷹の目)」といったニックネームを付けられたのだそう。現在も1年の5カ月ほどは、恐竜の化石を発掘するために世界中へフィールドワークに出かけ、恐竜の化石発掘の第一線で活躍されています。そんな小林先生の恐竜学者としての道のり、そして大発見をなしとげるようになった現在までのお話がたっぷりつまった本がこちら。ドキドキワクワクしながらページをめくってください。『ぼくは恐竜探検家!』小林快次(講談社)恐竜に「ハマる」経験は、小学校6年生の理科につながる興味をもって「ハマる」経験は、小林先生のようにそのまま将来の職業につながるような才能を開花することもありますし、普段の学習においても探求心を育むための大切な基礎を作ります。たとえば現在、小学校6年生の理科では「土地のつくりと変化」というテーマのもとに、土地は礫(れき)、砂、泥、火山灰、岩石からできる地層が積み重なってできていること、地層には化石が含まれていること、火山の噴火や地震によって土地が変化することなどを学びます。恐竜好きなお子さんは、博物館や子ども向けのイベント会場で開催されるような「化石発掘体験」に参加することも多いでしょう。そこで得た経験や知識は、小学校6年生の理科の授業で必ずいかせるはずです。「もっと知りたい!」そんな子どものためにできること4つ子どもの「恐竜が好き、もっと知りたい」という探求心をくすぐるには、昔ながらの本や博物館以外にデジタルコンテンツなども活用しましょう。ここでは、オススメの「図鑑」「デジタルコンテンツ」「博物館」「発掘作業」を紹介します。<図鑑>『DVD付 新版 恐竜 (小学館の図鑑 NEO)』監修・執筆/冨田幸光(学研プラス)恐竜図鑑のベストセラー。専門家の監修のもと細部まで表現されたイラストや世界中から集めた恐竜の写真、国内で発見された恐竜についての情報など充実した内容が評価されています。また、ドラえもんとのび太がナビゲートして、一緒に恐竜の世界を冒険するDVDも付録で収録されています。『DVD付恐竜 (学研の図鑑LIVE)』監修/真鍋真(学研プラス)1点ずつ細部までチェックされた実物に近づけたイラストは迫力満点。BBC(イギリス放送協会)「プラネットダイナソー」の映像がDVD、スマホ・タブレットで見ることができる3D・ARなど、「本物」にこだわった図鑑です。『こども百科 4・5・6歳のずかんえほん きょうりゅうの本 (えほん百科シリーズ)』監修/真鍋真(講談社)種類別に分けた恐竜をわかりやすいイラストで紹介しているのが特徴の絵本です。すべての文字がひらがなで、カタカタにもルビが振られているほか、巻末には内容をおさらいできるクイズやなぞなぞも掲載され、子どもが1人で開いて楽しめるように工夫されています。<デジタルコンテンツ>先に紹介した図鑑には映像がDVDで収録されているほか、専用サイトを開設している出版社もあります。また、NHKや海外のテレビ局が制作しているドキュメンタリー番組にも良質なコンテンツが充実しています。■【もっとNHKドキュメンタリー】「これが恐竜王国ニッポンだ!」・近年、日本各地で「むかわ竜」をはじめ、さまざまな恐竜の化石が見つかっている・“恐竜を愛する”専門家や化石愛好家たち発掘や生態の解明に挑む姿を追う・恐竜たちの姿を超リアルなCGで再現海の巨大は虫類「モササウルス」も!(引用元:もっとNHKドキュメンタリー|これが恐竜王国ニッポンだ!)■【BBC Earth Unplugged】Walking With DinosaursBBCワールドワイドが運営する自然ドキュメンタリーのオリジナルチャンネル『Earth Unplugged』。その中のひとつである「Walking With Dinosaurs」では、迫力ある恐竜たちの姿が楽しめます。最新技術を駆使したCG映像が魅力です。<博物館>世界三大恐竜博物館として知られる「福井県立恐竜博物館」をはじめとして、親子で楽しく学べる博物館は国内各地にあります。■福井県立恐竜博物館(福井県勝山市)■国立科学博物館(東京都台東区)■北九州市立いのちのたび博物館(福岡県北九州市)■群馬県立自然史博物館(群馬県富岡市)<発掘体験>化石の発掘体験は、上記に紹介したような博物館のほか、全国各地で夏休みに開催されるイベント型フィールドワークもあります。また、家庭で簡単に発掘体験ができるキットも販売されています。Geoworldの「恐竜発掘キット」は、ティラノサウルス、トリケラトプス、ステゴサウルス、プテラノドンなど子どもたちが大好きな恐竜がそろっている人気のアイテムです。***かつて男の子だったパパにとって、「恐竜」にロマンと懐かしさを感じる人も多いのではないでしょうか。お子さんが恐竜に興味をもったら「ここはパパの出番!」かもしれません。一緒に図鑑を開き、博物館へ足を運び、そして発掘作業を楽しんでみるのもいいですね。(参考)NHK|夏休み子ども科学電話相談Webナショジオ|小林快次恐竜化石フィールド日誌 第5回恐竜を研究する意味Webナショジオ|小林快次 恐竜化石フィールド日誌 第1回 恐竜化石は「歩いて探す」文部科学省|学習指導要領「生きる力」第2章各教科第4節理科小学館|小学館の図鑑NEO〔新版〕恐竜学研の図鑑LIVE|学研の図鑑 LIVE恐竜AllAbout|恐竜図鑑 人気おすすめ10選!2018年最新版もっとNHKドキュメンタリー|これが恐竜王国ニッポンだ!BBC Earth Unplugged |Walking With DinosaursNIKKEI STYLE|大迫力にワクワク恐竜を楽しめる施設、ベスト10
2019年05月05日「協働力」をいう言葉をご存知ですか。普段の生活の中ではあまり聞かない言葉かもしれません。しかし、これからの時代に子どもたちに求められる大切な能力のひとつ。アメリカでも、リーダーシップの必須要素として重要視されているそう。詳しく解説していきましょう。たくさんの人と協力して道を切り拓く力「協働」とは、同じ目的のために、対等の立場で協力してともに働くことを意味します。グローバル化が進み、少子高齢化、生産年齢人口の急減、また労働の多くが人工知能やコンピュータに代替されていくこれからの時代、この「協働」が求められているのです。私たち親の世代では、知識から正解を早く導き出すことや、他者よりも上に立ち、勝者となることが良しとされてきました。しかし、これからの時代は、解決すべき課題を発見する力や、学び続ける強い意志、協働により課題解決の道すじを切り拓く力こそが重要となってくるのです。“尾木ママ”の愛称でおなじみ、教育評論家の尾木直樹先生も次のように言っています。(先進34か国が加盟する「経済協力開発機構OECD」は)2030年に求められる力として、たくさんの人と協力して答えを見つけていく力、情報を整理するか、複数の要素を結びつけ、新たな価値を生み出す力などをあげているんです。(中略)そして、それらの力を身につけさせるためにはコミュニケーション力や協働性、創造性、批判的思考能力、好奇心等をはぐくむ教育が必要だと説いています。今後ますます国と国の垣根が低くなり、価値観の異なる人どうしが一緒に暮らすようになります。難しい言葉でいうと、多文化共生社会に突入するの。その社会の中で必要な力なのです。(引用元:さぽナビ|尾木ママが語る!グローバル化時代に求められる子育ての視点 (1))また、文部科学省のホームページにも、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」「他者と協働して課題解決を行う人材」が求められると書かれています。今後、学校ではこういった能力を伸ばすためのディスカッションやプレゼンテーションの場が増えていくでしょう。トップダウン型のリーダーではもう勝ち残れない!ところで皆さんは、リーダーと聞いてイメージするのはどんな人物でしょうか。人を引っ張っていく、いわゆる「ボス」タイプのトップダウン型のリーダーを想像するのではないでしょうか。日本ではこういったリーダー像が一般的ですよね。しかし、アメリカではすでにそういったリーダーシップ育成は行われていないようです。個人の利益ではなく、自分が属するコミュニティ、社会がどうすればより良くなるかを考え、多くの人や異なる強みを持つ他者と協働できる人間こそがこれからの時代に求められるリーダー像であるとされているのです。“社会起業家”というコンセプトが一般的になりつつあるアメリカでは、ただお金を儲けるだけの企業にはリーダーシップがない、発展性はない、と見なされることも多いそう。近い将来、日本もきっと同じようになっていくのではないでしょうか。協働力アップのための3つの方法では、協働力を高めるためにはどうすればよいのでしょうか。ライフコーチ、アートコンサルティングであり、自身の娘が「全米最優秀女子高生」に選ばれたボーク重子さんは、著書の中で「協働力」がアメリカでも重要視されていることを挙げ、その能力を高めていくための方法を紹介しています。ぜひ参考にしてみましょう。【1】家族のルールを決めてそれを全員で守る協働力を鍛えるためには、「コミュニティに属し、同じ目標に向かって進んでいる」という自覚が必要。そこで誰でもすぐに実践できるのが「家族」というコミュニティ。家族が協力してより良い未来を作り上げていくことが、協働力を伸ばすことにつながるのです。ボーク重子さんの家庭では、以下のルールを決めているそう。■家族の中の自分の役割に責任を持つ■夕飯は可能な限り一緒に食べ、その日の出来事をオープンエンドで話す■自分でできることは自分でやる■年1回家族一緒にボランティアをする 【2】共感力を高める「協働力を育むためには何よりも『共感力』が必要」とボーク重子さんは言います。共感力とは、相手がいまどんな立場に置かれているのか、どのような背景が今のその人を形作っているのかなど、自分自身が持っている先入観をなくし、オープンマインドに考えられる力を指します。そして、この共感力を高めるためには、以下のような「多くの疑似体験」が効果的なのだとか。■地域のボランティアやインターンに参加する■ノンフィクションの本やドキュメンタリー番組を見る■演劇鑑賞をする■絵本の読み聞かせをするこれらは子どもの共感力アップにつながると言われていますので、ぜひ実践してみてくださいね。【3】家族以外との自然体験独立行政法人国立青少年教育振興機構で理事長を務める鈴木みゆきさんは、「家族以外の人との自然体験」を勧めています。一般の親子が参加できる『ファミリーキャンプ』というものも数多く実施しています。これは、青少年自然の家など全国に散らばるわたしたちの施設でお互いに知らない親子同士がキャンプをするというもの。自然体験をとおして親子の絆を深めることが大きな目的なのですが、子どもを寝かせた後に親だけでくつろぐうち、親同士が仲良くなっちゃう。すると、親たちのコミュニケーションが子どもにも伝染するんですよね。そうして、子どもは家族以外の人間とのコミュニケーション力や協働力を身につけるというわけです。(引用元:Study Hackerこどもまなびラボ|「大人の愛」と「協働力」が子どもを大人に導いていく――親以外の人との交流によって広がる子どもの視界)海や山など、気持ちの良い自然に囲まれた場所なら、親も子も開放的な気分になり、他人ともコミュニケーションがしやすくなるのかもしれませんね。こういった機会があれば、ぜひ積極的に参加したいものです。***これからの社会で、子どもたちが求められるであろう「協働力」。ただ、冷静に考えれば、「相手の立場にたって物事を考える」「人と協力し合って行動する」という昔から重んじられてきたことでもあります。家庭でも意識的に取り入れていけば、きっと身につくのではないでしょうか。文/鈴木里映(参考)ボーク重子(2018),『世界最高の子育て』,ダイヤモンド社.Z-KAI|求められる「学力」が変わるって本当?主体性・多様性・協働性を問う出題とは文部科学省|現状と課題子どもまなびラボ|観劇に出かける親子は驚異的に少ない。メリットだらけの演劇鑑賞、しないなんてもったいない!さぽナビ|尾木ママが語る!グローバル化時代に求められる子育ての視点 (1) Study Hackerこどもまなびラボ|「大人の愛」と「協働力」が子どもを大人に導いていく――親以外の人との交流によって広がる子どもの視界
2019年05月04日「小学校入学前にひらがなやカタカナを覚えたし、簡単な足し算・引き算なら大丈夫!」というご家庭が多くなっています。出遅れないようにと準備して臨みますが、小学校低学年で習う内容は簡単なので、入学後は親子で拍子抜けしてしまうかもしれません。ところが、簡単な低学年での学習内容こそが、中学年以上での理解度を大きく左右する大事な基礎となります。簡単なのに絶対外せないのが低学年の学習内容なのです。今回は、低学年(1~2年生)で習う国語と算数の学習内容からいくつか例を挙げ、どんなポイントが重要なのか、何に気をつけて学習すれば学年が上がっても苦労しないのかを紹介していきます。【国語】漢字は成り立ちから考える。音読は具体的に褒める。まず国語ですが、文部科学省の学習指導要領には1年生の授業全体850時間のうち306時間が、2年生は910時間のうち315時間が定められ、実に3分の1以上の授業時間が費やされるほど重視されています。【重要ポイント】ひらがな、カタカナ、漢字の読み書きによって、物の名前や動きや様子、自分や相手の気持ちを理解し表現できるようになります。漢字は1年生で80文字、2年生では160文字を習いますが、身の回りのことを伝えるのに必要な、数、方向、位置、形状、色、時間、自然、天気、学校生活でよく使う日常生活に密着した文字が中心になります。<↑1年生で習う漢字><↑2年生で習う漢字>【勉強のコツ】正しい文字を習得するには、書けることよりも読めるようになることが先で、ひらがな、カタカナ、漢字のどれにも同じことがいえます。その中で、■形がよく似ている文字を比べてどこか違うのかを見つける■ひらがなとカタカナは1文字ずつ対応していることが分かる■漢字にはよく似た仲間(部首)があるといった、文字の比較から部首の存在に気づけると、漢字の成り立ちや意味をスムーズに理解できるので、その先の漢字学習が楽になります。ただくり返し書くだけでなく、漢字にインパクトを持たせることが重要なのですね。また、低学年の教科書に取り上げられている文章は、シンプルでリズムが良いのが特徴で、何度も繰り返し音読してフレーズに親しむことで、文章の組み立て方や表現の仕方を学ぶことができます。語彙や表現方法の幅が広がると文章力アップにつながります。子どもの音読は聞き流しせず、「おじいさんのセリフがとてもよかったよ」「大きな声で読めていたね」と具体的に褒めてあげましょう。【算数】足し算・引き算をとにかくしっかり定着させる次に、算数の授業時間数は、1年生では授業全体850時間のうち136時間が、2年生では授業全体910時間のうち175時間が文部科学省の学習指導要領に定められています。国語に比べて時間数は少ないですが、この先の算数や数学へつながる基礎を作る内容ですのでしっかり理解しておく必要があります。【重要ポイント】算数の勉強といえば、足し算や引き算からスタートというイメージもありますが、実は「数の仕組み」から始まります。ものの個数を数えたり数字で表したり、あるいは「前から○番目」「右から○人」といった順序数を学びます。そのうえで、繰り上がりや繰り下がりも含めた足し算・引き算について学び、2年生になると掛け算へと発展していきます。また、数や計算以外にも量や長さ、広さ、時間といった図形や単位に関わる学習も始まります。【勉強のコツ】数の仕組みを最初に学習するとき、お子さんが何番目といくつ分の違いをしっかり理解しているか確認しましょう。これは日常生活の中で「上から3段目の棚の右から2番目にあるお皿を1枚取ってくれる?」「100円で39円のきゅうりは何本買えると思う?」といった問いかけで理解度を確認できます。単位や時間についても同じように、机以外の場所で「水を150ml用意してくれる?」「この番組は30分だったから、今日はあと30分テレビが見られるね」など、なるべく具体的なものや形を使って問いかけるといいでしょう。子どもはクイズが大好きです。「えー!すごいね、合ってるよ!」など大げさに褒めてあげてください。足し算や引き算は計算カードで繰り返し何度も覚え、タイムを計って読み上げる宿題を出す学校もあります。数式をみるたびに数の増減を考えるのではなく、見た瞬間に答えが口をついて出るまで慣れておきましょう。というのも、2年生や3年生で登場する掛け算や割り算は、足し算と引き算が繰り上がったり繰り下がったりしながら何重にも関わる「積み上げの学習」ですから、掛け算や割り算をスピーディに計算をするには基本となる足し算や引き算がいかに定着しているかがカギになります。勉強が簡単なうちに身につけたい「学習習慣」と「問題解決力」一度子どもが「なんだか国語(算数)って難しい……」と感じてしまうと、なかなかスムーズに学習が進まないようです。簡単に理解できて「勉強って楽しい!」と感じる段階から、少しずつ勉強の習慣づけをしていくことが大切です。低学年のうちは、家庭での学習時間は5~10分もあれば十分とも言われます。しかし、学校の授業は45分単位と子どもが集中できる時間に比べて長いので、これに慣れるためにも30分くらい続けて机に向かうことができるのが望ましいでしょう。学校から出された宿題を済ませたあとは、図書館で借りた本や授業で使う副読本を読むのもいいですし、席を立ってうろうろ歩き回らなければ、塗り絵やパズルなどで遊ぶことも立派な勉強だと認めて褒めてあげてください。低学年のうちに「1日30分、必ず机に向かって勉強する」ことを毎日達成して自信につなげるようにします。また、内容が簡単なうちに「分からないところを分かるようにするクセ」をつておくことも重要です。特に、算数は上述したように1年生の学習から積み上げていくものですから、どこかでつまずいたまま進んでいくと、その先の理解をストップさせてしまいます。ひとつずつ問題をクリアしていく問題解決力を養うためにも、毎日の学習で分からないところを分かるようにしましょう。***大きくなってからでは、なかなか身につかない勉強の習慣。低学年のうちにしっかり身につけるには、お父さんやお母さんがお子さんの横で勉強を見届け、頑張っている姿を認めて褒めてあげると効果的です。しばらく時間はかかるかもしれませんが、親御さんの声かけで子どもは自分に自信がつき、学年が上がってからも机に向かうようになりますよ。(参考)文部科学省|平成29年改訂小学校学習指導要領浜学園教育情報TIPS|小学校低学年から身につけたい学習方法浜学園教育情報TIPS|高学年の成績に直結!低学年のうちに最低限 身につけたいこと【算数編】ベネッセ教育情報サイト|元小学校教員が語る!低学年のご家庭でやっておきたい3つのことって?
2019年05月03日子どものさまざまな能力には、身体だけでなく脳が関係していることが知られています。そのため、昨今では脳を育てることに注目が集まっています。しかし、具体的にはどんなことをすればいいのでしょうか?今回は、脳を育てることの重要性や、そのためのポイントについてご紹介します。「脳を育てる」ことが重要すぎるワケ脳を育てることは、子どもが心身ともに健康に成長していくことや、社会性や学力の向上に大きくつながっています。脳の中でも、子どもの成長に特に影響を及ぼす部位は、脳幹、大脳新皮質、前頭葉、シナプスの4つです。脳幹は、中枢神経系を構成する重要な部位が集まる器官です。睡眠欲や食欲、呼吸など人間が生きていくために必要な機能を担っており、情緒面にも影響しています。五感からの刺激によって、特に2~6歳の時期に大きく育つのだそう。大脳新皮質は、言語能力や手指を使った細かい動きなどの機能を担っており、親からの言葉や仕草から刺激を受けています。前頭葉は記憶力や集中力、論理的思考などの機能を司り、心の状態にも大きくかかわっている部分です。運動やコミュニケーションなどで活性化するといわれています。シナプスは、脳の中にある神経細胞同士のつながりのことです。神経細胞同士がうまくつながると、脳がよく働きます。シナプスは会話やスキンシップによって増えていくものです。これらの部分を育てることで、子どもが生きていくうえで欠かせないさまざまな力が身につくのです。健康体、ストレスフリー、チャレンジ精神……。脳が育つとメリットだらけ!脳が育つと、以下のようなメリットがあります。・規則正しい生活が送れるようになる脳が育っていくことで、体内時計がしっかり働くようになるため、朝は自然に目が覚めて活動的になり、夜は自然に眠くなってぐっすり寝ることができるようになります。よって、健康体になっていきます。・自分の気持ちをコントロールできるようになる脳の中でも、前頭葉がしっかりと育つと、自分の気持ちをコントロールできるようになります。そのため、嫌なことがあっても気持ちを切り替えることができたり、不安になった時にも解決策を探して安心できたりと精神が安定するのだそう。さらには、自分の気持ちをしっかりと相手に伝えられるため、ストレスを溜めにくくなります。・好奇心旺盛になるシナプスが増えて脳が発達していくと、好奇心旺盛になり、運動や勉強など何事にもチャレンジできるようになります。そして新しい刺激をたくさん受けることによって、さらに脳が活性化されるという好循環につながるのです。「脳を育てる」ために、すぐにでも始めたい5つの習慣子どもの脳を育てるために、以下の事柄を始めてみませんか?・朝型の生活をする朝は、睡眠によって脳内のシナプスが整理された状態となっており、脳を育てるのに適したタイミングです。親子で早起きして、運動や散歩をしたり、ゆっくりと朝ご飯を食べながら会話を楽しんだりすることは、脳を育てるのに有効です。ぜひ習慣にしましょう。・会話に具体性を取り入れる子どもの言葉や表現を引き出すために、会話の中で具体性を意識することも脳を育てるのに役立ちます。例えば友だちと遊んだ後は「楽しかった?」だけでなく、「どんなことをして遊んだの?」「その時、〇〇ちゃんはなんて言ってたの?」などと、より具体性のある質問を投げかけましょう。記憶を辿ったり、表現を考えたりしながら話すことで、子どもの脳が刺激されます。・食事中はテレビをつけない食事は、料理のにおいや味、色合いや温度などで、あらゆる五感が刺激されるため、脳を育てるのに欠かせません。しかし、その際にテレビをつけてしまうと、五感からの刺激がなくなってしまいます。食事中はテレビを消すルールを作りましょう。・魚料理を定期的に出す魚の脂に含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳の神経細胞の主な成分でもあり、脳の働きを高めるといわれています。ぜひ普段の食卓に魚料理を取り入れましょう。時間がない時には缶詰やフレークなどを使うのもおすすめです。・ピアノなどの楽器を演奏させるアメリカのバーモント大学で行なわれた200人超の子どもを対象にした調査では、楽器を演奏することによって脳の運動機能を司る部分が活性化することがわかりました。また、音を司る脳の領域と言語を司る脳の領域は非常に近いため、楽器を演奏することは言語能力の発達や外国語の習得にも役立つといわれています。***子どもの脳を育てる工夫を行なうことで、親の脳の活性化にもつながる場合がたくさんあります。ぜひ親子で脳を活性化させていきたいですね。文/田口るい(参考)こどもまなび☆ラボ|“親の愛情” で子どもの海馬が大きくなる!?子どもの脳を育てる5つのヒントPHPファミリー|6歳までが勝負です!才能の芽がグングン育つ「脳の鍛え方」日経DUAL|脳科学者が教える「努力する子を育てる10カ条」ダ・ヴィンチニュース|一番最初に始める習い事のおすすめは? 脳科学で解明する賢い子の育て方マイナビニュース|脳を育てる食事ってどんなもの? 子どもの成功を支える食生活の秘訣
2019年05月02日『触って感じて想像する美術遊びをしよう!家にある素材ですぐできる「コラージュ」』では、雑誌やチラシの切り抜きを使ったコラージュ、家にある素材で簡単にできるコラージュをご紹介しました。今回はちょっとステップアップ編。絵具やクレヨンを使ってみましょう。そして、この世に一冊だけの手作りコラージュ絵本を作ってみませんか?文・作品提供/芸術による教育の会講師後藤和人色の変化や組み合わせを楽しむ「コラージュ」「コラージュ」には、写真や異素材を使って貼り合わせていく方法がありましたね。さて、今回は「素材」から作りますよ。年長さんや小学生以上の子どもたちが楽しめる内容ですので、ぜひ汚れてもいい服装で挑戦してみてくださいね!まず、素材制作の過程では、色の変化や模様を描く事にフォーカスします。猫や犬、車など、意味のある形を描くのではなく、クレヨンの線と絵の具の色の組み合わせでできる模様を楽しむのです。複雑に絡み合ったクレヨンと絵の具の組み合わせは、いつものお絵かきでは表現できないテクスチャー。そんな、いつもとひと味違う素材を使って、世界にひとつだけの作品を作ります。子どもたちは目をキラキラさせながら作業をするでしょう。できた素材は、ハサミで必要な形に切って、それぞれを好きなように組み合わせていきます。頭は黄色、胴体は紫など、この工程では形を意識し、イメージにあった色合いの素材を選びながら作品を仕上げていきましょう。<材料>・画用紙、新聞紙、色紙、包装紙などの紙類※それぞれの紙はハガキサイズ程度に切っておくと便利です・水彩絵の具、クレヨン、カラーペン、墨など・ハサミ・のり・ラミネートフィルム(なくても良い)<コラージュのやり方>①ハガキサイズに切ってある紙にクレヨンで模様を描いていきます。何かを描くというより、線や模様を楽しめると良いです。②クレヨンの上を絵の具で着色していきます。クレヨンの線がはじく程度の濃さで絵の具を塗ると、綺麗に模様ができます。③①と②を繰り返し、できるだけ多くの素材を作りましょう。④作った素材を切って、のりで貼りながら制作をしましょう。白い紙を貼って「目」を入れても◎です。⑤完成した作品はラミネート加工をしてみてはいかがでしょうか(手貼りのラミネートフィルムもあります)。ラミネートがない場合は、画用紙などの台紙に貼り付けても素敵ですよ。唯一無二の「名作コラージュ絵本」を完成させよう!さあ、次はいよいよコラージュで絵本を作ってみましょう!『はらぺこあおむし』などの作品で知られるエリック・カールや、独特の世界観を持つ『わたしの家』の作者、クラウディア・レニャッツィなど、コラージュを使った絵本はたくさん出版されています。表現に奥行のあるコラージュの絵本は、ほかの絵本とはまた違った魅力がありますよね。そんなコラージュ絵本を作るのですが、今回は少し小さな「手のひらサイズの絵本」です。子どもたちは、想像力をかき立てながらストーリーをどんどん作っていくはず。子どもによっては、絵本のストーリーに一貫性がないこともあります。でも、それはただの “大人の感覚”。その子にとっては、頭の中のイメージをぎゅっと詰めこんだ作品なのです。できた絵本がハチャメチャな内容でも、ぜひ楽しんであげてください。<コラージュ絵本の作り方>①八つ切りまたはB4サイズ画用紙を縦長半分に切ります。②切った画用紙を半分に折り、2枚の画用紙を重ねると冊子状になります。画用紙の折り目を紐で縛るとページがバラバラになりません。③まずは表紙をコラージュで作ってみましょう。最初からどんなストーリーにするか決める必要はありません。楽しく表紙を作ることが大事なのです。④冊子を開いて中のページにもどんどん制作をしていきましょう。コラージュにカラーペンなどで文字や細かい部分を描き足していきましょう。⑤絵本のページが足りなくなった場合は、①に戻ってページを付け足してください。⑥完成した絵本をみんなに見せてあげましょう!今回のコラージュ制作は、「色や模様にフォーカスする工程」「形の組み合わせにフォーカスする工程」があります。それぞれにフォーカスするテーマがあるので、子どもたちにとって、どちらの制作も集中しやすいと思います。また、できた作品もいつもの作風とは違うことが多いので、子ども自身が自分の新たな才能に気づくこともあるでしょう。お父さんやおじいちゃん、おばあちゃん、たくさんの人に「名作絵本」をお披露目してあげてくださいね!【プロフィール】芸術による教育の会(げいじゅつによるきょういくのかい)東京、神奈川、埼玉、千葉、インターネット上に約100教室の美術教室を運営。在籍生徒数約3800人。「世界の子どもたちとアートを通してつながりたい!」を将来のビジョンとし、言葉の壁をアートで乗り越えた未来を目指しています。■芸術による教育の会ホームページ「芸術による教育の会」は、5つの事業と60年以上の実績をもとに美術を通して、子どもたちの成長に寄り添います。■お家でビジュツ!動画で学べる!作品を掲載できる!どこでもアート!!「びじゅつでつながろうどこでもアートきっず」・インターネット美術教室なので、自宅でレッスンが受けられます。必要な教材は発送します。・お子さまに合わせたカリキュラムを作成し、個性を引き出して伸ばします。・それぞれの成長段階や個性に合わせた技術指導を行います。・YouTubeの動画もあるよ。いろんな工作動画を見て下さい。どこでもアート公式チャンネルはこちら
2019年05月01日ヘヴィ・メタル(以下、メタル)と聞いて、みなさんはどんな印象を持ちますか?ただ叫ぶだけの音楽?不良が聴くような音楽?そのように、一般的には悪いイメージを持たれるメタルですが、脳科学者の中野信子さんは中学生のころから一貫してメタルを愛聴してきたといいます。そして、むしろ思春期の子どもには、メタルは「心にも頭にも良いかもしれない」と提案します。2019年1月には、メタルが脳に及ぼすポジティブな影響を考察した『メタル脳 天才は残酷な音楽を好む』(KADOKAWA)を上梓した同氏に、メタルを聴くと本当に「心が整うのか」「頭が良くなるのか」を聞きました。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/辻本圭介写真/櫻井健司(インタビューカットのみ)子どもにクラシック音楽を聴かせると頭が良くなる?書店の児童書売り場に行くと、クラシック音楽の「効能」を謳う本や教材がたくさん並んでいます。「クラシックを聴くと情動が落ち着いた子に育つ」「子どもの頭に良い影響がある」……。そんな「クラシック信仰」とでもいうべき見方が、世の中には根強く存在しています。幼い子どものころにモーツァルトを聴かせると頭が良い子に育つという、いわゆる「モーツァルト効果」を頭から信じ込み子どもに聴かせる親もいまだに多いようです。わたしは、こうしたことを「ちょっと問題がある行動では?」と感じています。子どもにクラシックをすすめることにどのような背景があり、聴くと具体的にどんな効果が見込めるのかを理解してすすめるなら問題ないのですが、「うちは落ち着きがないから、なんとか模範的な子どもに育ってほしい」と願って押しつけるような親には、疑問を抱かざるを得ません。「モーツァルト効果」が広まったのは、1993年に『Nature』に掲載された「モーツァルトを聴かせたら大学生の認知力テストの成績が上がった」とする研究報告がきっかけです。「モーツァルトを聴くだけで頭が良くなる」という方法は、子どもの教育に悩む親が欲していた手軽な解決策であり、また「そうであってほしい」と願っていた結果でもあったので、発表されるとまたたく間に全世界に広まりました。「モーツァルト効果」 が存在しないのは研究者のなかでは常識しかし、その6年後、心理学の専門誌『Psychological Science』に掲載された論文によって、その研究結果は再現性がないとして否定されます(※1)。「モーツァルト効果」が、「アーティファクト(人工的に出てきた結果)」であることがあきらかになったのです。「アーティファクト」といっても、けっして悪意のある捏造などではなく、おそらく最初の研究者は、「モーツァルトを聴くと頭が良くなるはずだ」と思い込んで研究したのでしょう。すると、一般的な科学実験でも起こることですが、真実の効果ではなく「研究者が見たいと思う効果」が見えてしまうことがあるのです。つまり、「モーツァルト効果がある」と仮定して実験していると、それを補強するデータだけを拾ってしまう現象が起きるのです。さらに、ハーバード大学のクリストファー・チャベス氏をはじめ、そのほかの研究者たちもモーツァルト効果を否定する論文を発表し(※2)、現在では「モーツァルト効果」など存在しないことは研究者のあいだでは「常識」となっています。でも、古い研究しかご存じない方や、「モーツァルト効果」を謳ったビジネスを展開されている先生たちは、現在でもそうした主張を繰り返している可能性があります。そして、子どもの行いが悪くて勉強もしないといった理由からか、せめて音楽はクラシックのような「良い音楽」を聴かせたいと考える親がいます。子を思う親の純粋な気持ちが謎のビジネスの資金源にされていることを思うと、なんとも残念でなりません。メタルで「不安傾向」を埋めると、「頭が良くなる」可能性が高いそこで、根拠のない「モーツァルト効果」がいまだ音楽産業や教育産業のPR・マーケティングとして使われ続けている現状を見て、わたしは「むしろメタルのほうが、ある思春期の子どもたちには良い効果があるのでは?」と考えるようになりました。もちろん、これもあくまで推論ですが、ある程度のレベル以上の成績優秀者に限っていうと、メタルを聴いている子どものほうがより「頭が良くなる」と考えることができるからです。というのも、成績が良い子というのはちょっと先生に怒られたり、ちいさなミスを犯したりしただけで、「もっと悪いことが起きるかも……」と不安に感じてしまうような不安傾向が高い子どもが多いから。脳科学的にいうと、心のバランスを取る役割を持つホルモンである「セロトニン」があまり出ないような脳の持ち主です。そんな子どもは、勉強においても「ここが悪かったんだ」「次は良くしなきゃ」というように、自分に対してネガティブなフィードバックをする傾向にあります。まさに、それゆえに成績が良くなる面があるのですが、この高すぎる不安傾向をメタルがうまく埋めてくれることで実力を発揮しやすくなったという報告があるのです。ちなみに、不安傾向の高さと成績の良さの関連性も、推論の域を出ないものではありますが、ペーパーテストについていえば、90点で満足する子どもと90点しか取れなかったと悲観する子どもでは、どちらのほうがより成績が伸びるかという単純な比較はできそうです。「なぜまちがったのだろう?」「次は絶対失敗しないぞ!」と思って繰り返し勉強を続ける子どものほうが、モチベーションとしても成績は上がりやすいと推測できるでしょう。激しい音楽を聴きながら手術に臨む外科医たち世間一般的に成績優秀者と認められている医師たちが、じつは手術中に流す音楽は「ハードな音楽がもっとも多い」という面白い調査もあります。この調査ではメタルは広義のロックに含みますが、音楽のストリーミング配信サービス『Spotify』と医師向けInstagram『Figure 1』がアメリカの医師をリサーチしたところ、90%の外科医が手術中に音楽を流していると答え、もっとも人気なジャンルはロックだったのです(49%)。49%という数字は、単なる偶然の一致とはいえない数字ですよね?なかでも、メタリカやレッド・ツェッペリンなどの人気が高く、ある医師は「ロックを流すと快適になり、患者に集中できる」とコメントしたほどです(※3)。わたしたちは、手術室は無音、もしくは音楽をかけていたとしてもクラシックやヒーリングミュージックが流れている程度だと想像しがちです。しかし実情は、激しい音楽を聴きながら手術に臨んでいる医師がもっとも多かったのです。医師は若いころは当然成績優秀者であったはずで、そのころに激しい音楽を聴いて不安が解消された情動の記憶を持っている人が多いのでは?とわたしは推測しています。もちろん、手術室に「ぶち壊せ!」と叫ぶこともある音楽が流れているとなると、歌詞ではなくリズムに乗って集中していると思いたいですけどね……(笑)。ストレス耐性を上げて、不安を直視する力をメタルが与えてくれるふだんの学校での勉強や近い将来に控えた受験などを心配して、不安に感じない子どもは少ないでしょう。ただ、不安傾向が高すぎると、「学校や社会から疎外されている」と感じたり、「大事なときに本来の力が出せない」という実行面で影響が出たりすることもあり、その心理的ブレーキをやわらげてくれるなにかが必要になります。不安がパフォーマンスを左右することについては、2011年にシカゴ大学の心理学者シアン・ベイロック氏らが実験を行い、「試験についての不安を試験直前に書き出すことで、成績が向上する」という実験結果を発表しました(※4)。簡単に内容をまとめると、学生をふたつのグループにわけて2回の試験を受けさせて、1回目と2回目の成績を比べました。このとき、まず2回目の試験前に重要な試験であることを伝えてプレッシャーを与えます。そのうえで、片方のグループには10分間時間をとって「試験について不安なこと」を書き出させ、もう一方のグループはただ静かに座らせました。すると、不安を書き出したグループのほうが、1回目のテストより正答率が5%向上し、もう一方のグループは正答率が12%も下がったというのです。つまり、この実験で見えてくるのは、不安をうまく扱うためには、むしろ「不安を直視したほうが良い」ということ。そこでわたしは、子どもに不安を直視させるためにもメタルが役に立つのではないかと考えています。なぜなら、メタルの歌詞や破壊的な音を聴くことで、「自分と同じようなストレスや疎外感を持って生きている人がいるんだ」というメッセージを音楽から得て、一時的にストレスを軽減する効果があると推察しているからです。さらに、イギリスのウォーリック大学の研究チームが成績の優秀な学生を選んでメタルに関する調査を実施したところ、メタルにはストレス発散や欲求不満の解消に役立つ効果が認められました(※5)。成績優秀であることは、自分自身への期待に加え、まわりからの期待によって大きなプレッシャーを抱える場合があります。しかしメタルを聴くことでそんなプレッシャーを一時的に忘れ去り、ストレス耐性を上げる可能性が言及されたのです。「良い子にならなきゃ」というプレッシャーが、子どもの才能を潰すこのようなことからも、「子どもにメタルなんか聴かせるのは良くない!」といった意見が、いかにステレオタイプな見方であるかがおわかりになるはずです。別に成績優秀者に限らず、思春期の子どもはストレスを感じやすい存在です。そんな子どもが、自分自身を過度な不安傾向から守り、「ここぞ!」というときに力を発揮するには、「メタルも役立つかもしれないな」という認識を新たに持っていただけると良いと思いますね。どれだけ美しいクラシックでも、励ましのメッセージが詰まった音楽でも、そんな音楽をきれいごとに感じる子どもにとっては、「ウソをつけ!」となって逆効果です。むしろ、不安傾向が高い子どもには、「現実に向き合え!」「騙されるな!」と歌ってもらったほうが、「うんうん、そうだよな」と納得できることもあります。「世界は残酷で噓だらけの場所なのだ」とあらかじめ認識しておくことで、心の安定に寄与することがあるというのがわたしの考えであり、また偽らざる実感でもあるのです。たしかに、メタルという音楽ジャンルは一般的なイメージこそ良くないかもしれません。でも、「イメージが良くない」ことが大事なのです。「良い子にならなきゃ」という不安やプレッシャーが、子どもたちの成績を落とし、才能を潰します。ノーベル賞を受賞した科学者たちは、ほぼみんな「好きなことをやれ」といっています。むしろ、親のいうことに従ってしまう子どものほうが怖いかもしれない。「うん、わかった」といいながら、とんでもないことする子どもだっているのですから。そこで親は、「清濁併せ呑む」度量を持っていることを示したほうが良いのだと思います。そして、子どもに無条件の愛情を与える。たとえば、成績が良いときはほめて甘やかすのに、落ちたらものすごく叱ったり、「おまえの味方だ」といいながら子どもが悪いことをしたら責めるだけだったりすると、子どもはとても混乱します。「悪いことをしたけど、おまえを信じている」というのが無条件の愛情であり、存在を受け入れるということ。子どもが安定した愛着を築いていくためにも、親は「悪いところも良いところも受け入れる」という真の愛情を示すことが必要なのだと思います。※1:『The Mystery of the Mozart Effect: Failure to Replicate』 July 1,1999, Psychological Science, Kenneth M. Steele, Karen E Bass, Melissa D. Crook※2:『Muting the Mozart effect』Dec 11,2013, The Harvard Gazette※3:Spotify and Figure 1 team up to hear what surgeons are playing in the OR, Figure1※4:Writing about worries eases anxiety and improves test performance, Jan 13,2011, uchicago news※5:『Gifted Students Beat the Blues With Heavy Metal』 March 19,2007, University of Warwick, Stuart Cadwallader and Professor Jim Campbell『メタル脳 天才は残酷な音楽を好む』中野信子 著/KADOKAWA(2019)【プロフィール】中野信子(なかの・のぶこ)脳科学者、医学博士、認知科学者。東日本国際大学特任教授。1975年生まれ。東京大学工学部応用化学科卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2008年から2010年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。脳科学、認知科学の最先端の研究業績を一般向けにわかりやすく紹介することで定評がある。コメンテーターとしてテレビ番組に出演する傍ら、ベストセラーも多数。近著に『サイコパス』(文春新書)、『あの人の心を見抜く脳科学の言葉』(セブン&アイ出版)、『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書)、『不倫』(文藝春秋)などがある。
2019年04月30日先行きが見えないといわれるいまの時代に子育てをしていると、親はこれまで以上に子どもの将来を心配しているかもしれません。そのため、親の注目を集める新しい教育手法が次々に生まれています。アクティブ・ラーニングやプレイフル・ラーニングと呼ばれるものもそれらのひとつです。人の学習について研究をしている慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみ先生に、アクティブ・ラーニングやプレイフル・ラーニングの要素を家庭教育に取り入れるためのアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)学びは夢中になる行為の副産物皆さんは、人がいちばん学べるときはどんなときだと思いますか?それは、自分で「楽しい」と感じていて、それをもっと「知りたい」「やりたい」と思っているときです。もしかしたら、本人は学んでいるつもりがないかもしれません。でも、楽しくて夢中になる行為の副産物として「学び」が残るのです。そういう過程で得た学びがいちばん深く定着する学びになるという考えから、いま教育界には「プレイフル・ラーニング」というものが広まりつつあります。簡単にいえば、遊びと学びが連動していて、「遊びながら学ぶ」というものです。遊びというと、たとえばアウトドアで体を動かすような遊びなどをイメージしがちだと思いますが、じつは学校での授業も内容によってはプレイフル・ラーニングと呼べるものになり得ます。本当に生き生きしている学級では、学び自体が完全に楽しく、ワクワクするものになっているのです。その内容は、先生が睡眠時間を惜しんでひたすら考えてお膳立てをしたというようなものではありません。大切なのは、子どもになにをしたいのかを尋ねて子どもに決めさせること。同じものを学ぶにしても、子どもに主体を持たせるというわけですね。知識は他人が入れようとして入るものではないこれまでの教育のほとんどは、学習指導要領をいかに解釈して、どれだけ効率的に子どものなかに知識を入れられるかという視点でおこなわれていました。そして、そういった授業こそがいいものとして評価されてきたのです。でも、じつは、「生きた知識」は外から「入れ込む」ことはできないものです。とくに、子どもが興味を持っていないことに関しては、外から入れようと一生懸命に教師が頑張っても、それは子どもを素通りしてしまいます。多くの人が、なにかをわかりやすく説明してもらえればすべて理解できると考えます。でも、人がどのように情報処理をするかという観点から考えると、どんなにわかりやすく説明されたとしても、10の内容のうち3くらいが記憶に残れば上出来だといえます。なぜなら、人間の注意や記憶に限界があるからです。説明された直後は、誰もがすべて理解できたつもりになります。でも、10の内容すべてに注意を向けて、そこで得た内容がこれまでの知識と結びつき、10の内容すべてがずっと残るということはあり得ないのです。でも、自分が興味を持っていることなら話は別。自分が主体的に働きかけて疑問に思ったこと、知りたいと思って調べたり聞いたりして発見したことは確実に残っていきます。そういう学びこそ、プレイフル・ラーニングなのです。重要なのは形式ではなく学び手の主体的な行為子ども教育に興味がある人なら、「アクティブ・ラーニング」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。一般的には、議論形式やグループ形式の学習方法を指すことが多いものです。でも、アクティブ・ラーニングは、特定の学習形式を指すものではないとわたしは考えています。座学形式ではなく、グループでわいわいと勉強すればアクティブ・ラーニングになるわけではありません。アクティブ・ラーニングとは、子どもたちに知識を入れるのではなく、子どもたち自身が主体的に知識を得ようとする学習のこと。無理やりグループ形式の学習を押しつければ、子どもがアクティブになるのでしょうか?一方、子どもたちが主体的となり「自ら学ぼう」という姿勢を持てば、これまでと変わらない座学形式であっても、それはアクティブ・ラーニングといえます。そういう学びこそが、本当に実社会で役立つ「生きた知識」を生んでいくのです。もちろん、アクティブ・ラーニングと同様に、プレイフル・ラーニングもある形式を指すものではありません。ダンスや体操を通じて学ぶというプレイフル・ラーニングも存在しますが、子どもが興味を持っていないのに、大人が設定した場に子どもを押し込んでも、プレイフルではないのです。逆に、はたから見れば遊んでいるようには見えなくても、子ども本人が楽しんでいれば、その学びはプレイフル・ラーニングといえます。アクティブ・ラーニングもプレイフル・ラーニングも、学び手の能動的な行為によって定義づけられるものなのです。ここまでの話を聞くと、「子どもがあまり興味を持っていないのに、親が家庭教育をすることにもあまり意味がないのではないか?」と考える人もいるかもしれません。でも、そこであまり難しく考えてほしくはありません。家庭での教育をアクティブでプレイフルなものにすることはそう難しいことではないからです。親が子どもと一緒に遊びながら学ぶ。それがいちばんの方法です。子どもは、無条件にお父さんやお母さんのことが大好き。そんな大好きな親となにかを一緒にすることがいちばんうれしく、ワクワクしながら多くのことを学ぶことができます。家庭で学ぶものは、子どもが興味を持っているものならどんなものでもかまいません。昆虫かもしれないし、怪獣かもしれない。子どもが大好きなものなら、それについてお父さんやお母さんが、逆に教えられてしまうなんてこともあるはずです。そんな時間は、子どもにとっては本当にうれしいもの。そして、「学ぶよろこび」を得ることにも大きくつながっていくのです。『科学が教える、子育て成功への道』キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ 著今井むつみ、市川力 翻訳/扶桑社(2017)■ 慶應義塾大学環境情報学部教授・今井むつみ先生 インタビュー一覧第1回:我が子の「成功」を願う親が、絶対に伸ばしてやるべき子どもの“力”第2回:小さな子どもが喜ぶ「デジタル絵本」に、実は“学びの効果”は期待できない第3回:「コミュニケーション能力を重視しすぎ」な親が、犯しかねない過ちとは第4回:家庭での学びが「アクティブ」で「プレイフル」になる、いちばんの方法【プロフィール】今井むつみ(いまい・むつみ)慶應義塾大学文学部西洋史学科卒、慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了、ノースウェスタン大学心理学部博士課程修了。1993年より慶應義塾大学環境情報学部助手。専任講師、助教授を経て2007年より教授。専門は認知・言語発達心理学、言語心理学。とくに語彙(レキシコン)と語意の心のなかの表象と習得・学習のメカニズムを研究している。著書に『学びとは何か――<探求人>になるために』(岩波書店)、『言葉をおぼえるしくみ 母語から外国語まで』(筑摩書房)、『ことばの発達の謎を解く』(筑摩書房)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年04月29日公共の交通機関での子連れ移動は本当に大変ですよね。「静かにできないなら、〇〇に着いても何も買ってあげないよ」「いいかげんにしなさい!」――楽しいはずのお出かけなのに、一気に不機嫌モードになってしまうこともしばしば。もう絶対にお出かけなんてするもんか!と感じることも一度や二度ではありません……。どうやら、移動中に子どもの聞き分けが悪くなるのには理由があるようですよ!■参照コラム記事はこちら↓長距離移動中に子どもの聞き分けが悪くなるのには理由があった!【年齢別 伝わる言葉かけ】
2019年04月28日変化のスピードはどんどん増し、ほんの数年後の世界がどうなっているのかも誰にもわからない時代――。そのなかで、未来を担う子どもには「6つの力」が必要だと提唱している研究者がアメリカにいます。ただ、彼女たちの著書『科学が教える、子育て成功への道』(扶桑社)を翻訳した慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみ先生は、「6つの力を伸ばすことにこだわり過ぎることも危険」とも語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもの成功のために必要な能力とはなにかわたしが翻訳した、『科学が教える、子育て成功への道』(扶桑社)のふたりの著者は付き合いの長い友人です。その本では、これからの時代に必要な力として「6Cs」というものを提唱しています。まずは、その6Csを順に説明していきましょう。【これからの時代に求められる「6Cs」】1.コラボレーション(Collaboration)自分をコントロールして他者とコラボレーションすることは、大人、子どもを問わず、わたしたちすべてに求められるスキルの中核であり、社会的に有能であるための基本です。2.コミュニケーション(Communication)コラボレーションを基盤にして築かれるのがコミュニケーション。コミュニケーションスキルの高さが、より健康な状態を育み、学業とかかわるスキルの高さにも関連するという研究結果もあります。3.コンテンツ(Contents)コンテンツとは知識といっていいでしょう。新しい情報に出会ったときに、どんな戦略を取ってアプローチするかという、学ぶスキルもコンテンツに含まれます。4.クリティカルシンキング(Critical Thinking)莫大な情報にさらされる時代、一歩引いて考え、なにが本当に必要かを見極めて、答える必要のある問いを選ぶ、クリティカルシンキング(批判的思考)の力を発揮できる人こそ、これからの時代において目指すべき人物像です。5.クリエイティブイノベーション(Creative Innovation)コンテンツとクリティカルシンキングをともに働かせた結果、生まれるのがクリエイティブイノベーションです。コンテンツを身につけないまま自由に発想しても、創造性は育ちません。6.コンフィデンス(Confidence)問題に直面したときに必要となるのは、すぐにあきらめることなく、自分自身の気持ちと行動をコントロールし、失敗を乗り越えようとするコンフィデンス(自信)です。いかにして「生きた知識」を得るかじつは、これら自体は新しい概念ではありません。ただ、未来を生きていく子どもが成功に至るためには、いわゆる学力と同じくらい、あるいはそれ以上に大事なものがあるとして、綺麗にまとめたことに大きな意味があります。これまで、数値化してランクづけができるハードスキルと呼ばれるものが「学力」と呼ばれてきました。一方、たとえば「他人の気持ちを推し量る」といった、「6Cs」を含むソフトスキルと呼ばれる能力は数値化することが難しいものです。学校という場所では、学力で生徒を評価します。なぜなら、数値化できるので評価しやすいからです。しかし、ハードスキルは人が成功するために必要とされるもののほんの一部に過ぎません。学力は学力テストや大学入試には使えるものです。でも、実社会に出たときの問題解決にはあまり役に立たないという側面も持っています。学力は大事なものですが、使えない知識をいくら持っていてもそれでは意味がありません。いわばそれは、「死んだ知識」です。それに対して「生きた知識」というものは、それを使うことでどんどん新しいことを学習できる知識です。たとえば、言葉の知識は「生きた知識」のとてもよい例といえます。ある言葉を知っていることで、新しく出会った言葉の意味を推論することができるからです。これはまさに、知識を使って新しい知識を生んでいるということ。そういう好循環を生むのが、「生きた知識」なのです。人が学ぶときに注意しなければならないのは、あるコンテンツのピースを単体で学ぶだけではあまり意味がないということ。それでは、単発の知識になってしまい、「使えない知識」「死んだ知識」を得るだけになるからです。そうではなくて、ある一定以上のボリュームのピースを学び、そこにある規則性などを発見していく必要があります。それは、すでに持っている知識と新たに得た知識をリンクさせるということ。それが、知識を「生きた知識」にするための鍵です。「6Cs」にこだわり過ぎることも危険?話を「6Cs」に戻しましょう。たしかに、「6Cs」はこれからの時代を生きていく子どもたちにとって大切なものです。だからといって、6つすべての能力を伸ばすということは難しいですし、完璧を目指してはいけないとも思うのです。さまざまな能力の高さには、個人によって「凸凹」があって当然です。たとえば近年、多くの人が大切だと述べているのが、コミュニケーション能力です。でも、コミュニケーションが得意な人もいれば不得意な人もいる。それはあたりまえのことです。そして、仮にコミュニケーションが苦手であっても、黙々と自分がやるべきことに打ち込んで成功している人も世のなかにはたくさんいます。コミュニケーション能力が大事とはいっても、逆に周囲をシャットアウトして自分の道を自分のスタイルで進んでいけるということも、コミュニケーション能力とは対極にある力だと思うのです。大切なのは、子どもそれぞれの個性を伸ばしてあげるということ。幼稚園にも、他の子どもとのお遊戯にはあまり興味を示さずに、ひとりで園庭に走っていって虫ばかり見ているような子どももいるかもしれません。ならば、その興味を大切にしてあげなければなりません。コミュニケーション能力が大事だからとその子を虫から無理やり引き離してしまうと、本来、伸びるはずだった力が伸びないということになりかねないからです。そういう過ちを犯さないためにも、自分の子どもはどんなことに興味を持っているのか、どんな能力が伸びそうなのかといった子どもの個性をしっかりと見てあげてほしいのです。教育という分野も研究が進み、どんどん新しい考え方が出てきます。「こういう教育が大事だ」と、主流になるようなものもあるでしょう。ただ、いくら世間一般的に重要なことだといっても、不得意なことを無理にさせることは、子どもの成長にとって決していいことではないのです。やはり重要なのは、その子の興味がどこにあるのかということ。まずはその部分を大切にしてください。『科学が教える、子育て成功への道』キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ 著今井むつみ、市川力 翻訳/扶桑社(2017)■ 慶應義塾大学環境情報学部教授・今井むつみ先生 インタビュー一覧第1回:我が子の「成功」を願う親が、絶対に伸ばしてやるべき子どもの“力”第2回:小さな子どもが喜ぶ「デジタル絵本」に、実は“学びの効果”は期待できない第3回:「コミュニケーション能力を重視しすぎ」な親が、犯しかねない過ちとは第4回:家庭での学びが「アクティブ」で「プレイフル」になる、いちばんの方法(※近日公開)【プロフィール】今井むつみ(いまい・むつみ)慶應義塾大学文学部西洋史学科卒、慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了、ノースウェスタン大学心理学部博士課程修了。1993年より慶應義塾大学環境情報学部助手。専任講師、助教授を経て2007年より教授。専門は認知・言語発達心理学、言語心理学。とくに語彙(レキシコン)と語意の心のなかの表象と習得・学習のメカニズムを研究している。著書に『学びとは何か――<探求人>になるために』(岩波書店)、『言葉をおぼえるしくみ 母語から外国語まで』(筑摩書房)、『ことばの発達の謎を解く』(筑摩書房)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年04月27日2020年からはじまる新たな大学入学共通テストは、より「思考力」が問われる内容に変わります。そのことにも表れているように、多くの教育関係者が口をそろえるのが「これからの時代を生きる子どもたちには『思考力』が必要だ」ということ。認知科学の専門家で、人の学習について研究をしている慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみ先生によれば、思考力を育むために有効なものが「絵本」なのだそう。新たな子ども向け教材がどんどん生まれているいま、絵本というむかしながらのメディアにどんな力があるのでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)親子の対話が子どもの思考力を伸ばす先行きの見えにくいいまの時代、子どもを「成功」に導くには、「言葉の学習を通じて思考力を高める」ことが大切です(インタビュー第1回参照)。では、子どもの思考力を高めるために家庭でなにができるでしょうか?まず、なによりも「子どもと話す」こと。すごく基本的ですが、これはとても大切なことです。いまはたくさんのアプリが存在するなど、子ども向けの教材が豊富な時代です。ただ、それを子どもになんでも手渡せばいいと思っている親御さんが多いことが残念ですね。もちろん、親は良かれと思ってやっていることですが、そういったものをただ手渡されても、子どもはあまり学べないのです。大人の場合はテキストなど教材からも十分に学べます。でも、子どもの場合は「一方通行」の情報では学ぶことはできない。子どもは、親御さんなど周囲の大人が見ているものに注意を向けます。大人と注意を共有しながら、さまざまなことを学んでいくのです。そういう意味では、絵本の読み聞かせは子どもの思考力を高めるためにとても有効だと考えることができます。その学びとは、ただ文字を覚えるといったものではありません。お父さんやお母さんと絵本を読むという場を共有し、絵本を読んでいる親の視線をたどっていく。そのような、絵本に書いてあること以外にもその場にあるたくさんの状況の手がかりがあると、「この言葉はこういう意味なのか」と子どもは理解します。テキスト情報だけではなく、親の視線や表情といった情報を受け取り、推論して理解していくのです。デジタル絵本では子どもは学べない?先に、いまはアプリなどの子ども向け教材が豊富だと述べました。絵本にだってたくさんの種類があります。注意してほしいのは、絵本が子どもの思考力を高めるために有効とはいっても、いわゆる「デジタル絵本」や「動画」は、ただ、子どもにポンと手渡すだけではその効果はあまり期待できないということです。デジタル絵本や動画を与えると、子どもはよろこんで見入ります。しかし、じつはそれらからは子どもはなにも学んでいません。それは、そのように使われたデジタル絵本や動画が一方向性のものになりがちだからです。デジタル絵本や動画は綺麗な絵が動いたり音声も出たりと、すごく情報がリッチで刺激的です。でも、それらをただ一方的に与えられても子どもはそのリッチな情報をうまく消化することができないのです。もちろん、子どもの年齢や使い方によってはデジタル絵本や動画も子どもの思考力を高めるためにいいツールになり得ます。子どもとひと口にいっても、2歳と5歳ではまったくちがう生き物だと理解することが重要です。5歳になれば、子どもがデジタル絵本や動画からもある程度学ぶこともできるでしょう。でも、2歳の場合は効果がほとんど期待できないといっていいかもしれません。そもそも、すごく情報がリッチだということが、じつはネックなのです。情報が多いがために、子どもはなにに注目していいのかがわからなくなってしまう。小さい子どもの場合であれば、むしろ情報はミニマムのほうがいい。そのミニマムな情報のなかから、お父さんやお母さんが見ているものに注目して、子どもたちは学んでいきます。「わからない」は子どもの学びに重要また、大人が紙の絵本を読み聞かせする場合は、読み手が子どもを観察しながら間髪入れずに反応できることも大きなメリットになります。子どもがなにを聞きたいのか、どこに注目しているのか。そういうことを表情などから読み取りながら、たとえばある部分を大げさに読んでみたり、読むスピードを変えてみたりと変化をつけられますよね。そういうちょっとしたテクニックを入れることが、子どもがより深く学ぶことにつながっていきます。もしかしたら、今後、子どもの反応をカメラでとらえ、分析して音声などに変化をつけるというようなデジタル絵本が生まれるかもしれません。それが生の大人の反応と同じ効果を生むのかどうかは、実証的に検証する必要がありますが……。そんなわたしも、テクノロジーを一概に否定しているわけではありません。ただ、デジタル絵本などのつくり手は、どうしても「テクノロジーありき!」という考えを持っているように感じるのです。「テクノロジーがあるから絵本をつくる」ということに主眼を置いていて、子どもがどういうふうに使うかとか、それが子どもの学習をどう助けられるのかという観点が足りていないのではないかと思います。いずれにせよ、現時点のデジタル絵本は紙の絵本での生の読み聞かせには勝てないでしょう。やはり、質という点では、生のコミュニケーションにはかなわないからです。とくに小さな子どもというのは、直接の生のコミュニケーションをとおしてもっともよく理解し、学ぶことができることが多くの研究で実証されています。もちろん、子どもにとって学びになるコミュニケーションは、絵本の読み聞かせだけではありません。普段の会話もとても大切です。そのなかで、子どもの理解度を見極めながら、同じことを別のいろいろないい方で話すように心がけてみてください。使う言葉を変えてもいいですし、構文を変えてみるのもいいでしょう。そのような対話の中で、子どもは「わからない」言葉にたくさん出会います。じつは、子どもの学びにとって「わからない」ことがあるのはすごく大切なことです。わからない言葉を聞き、会話の内容や文脈からその意味を推論する。そうやって子どもは学んでいくのです。語彙力、推論力が高い子どもの親御さんはそういうことを日常で自然にやっている場合が多いのです。親をはじめとしたまわりの大人の語りかけの量と質が子どもの言葉力に大きな影響を与え、それがさらに思考力を磨いていくのです。『科学が教える、子育て成功への道』キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ 著今井むつみ、市川力 翻訳/扶桑社(2017)■ 慶應義塾大学環境情報学部教授・今井むつみ先生 インタビュー一覧第1回:我が子の「成功」を願う親が、絶対に伸ばしてやるべき子どもの“力”第2回:小さな子どもが喜ぶ「デジタル絵本」に、実は“学びの効果”は期待できない第3回:「コミュニケーション能力を重視しすぎ」な親が、犯しかねない過ちとは(※近日公開)第4回:家庭での学びが「アクティブ」で「プレイフル」になる、いちばんの方法(※近日公開)【プロフィール】今井むつみ(いまい・むつみ)慶應義塾大学文学部西洋史学科卒、慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了、ノースウェスタン大学心理学部博士課程修了。1993年より慶應義塾大学環境情報学部助手。専任講師、助教授を経て2007年より教授。専門は認知・言語発達心理学、言語心理学。とくに語彙(レキシコン)と語意の心のなかの表象と習得・学習のメカニズムを研究している。著書に『学びとは何か――<探求人>になるために』(岩波書店)、『言葉をおぼえるしくみ 母語から外国語まで』(筑摩書房)、『ことばの発達の謎を解く』(筑摩書房)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年04月26日「どうして?」「なんで?」と、好奇心旺盛なお子さんはいろいろなことに興味津々。親御さんとしては、何度も同じような質問に答えるのは大変ですし、忙しいときに質問攻めにあうと困ってしまいますよね。しかし、このような子どもの「知りたい」という好奇心はとても大事なこと。そこで、子どもの「もっと知りたい」を大事にしたい理由をご紹介します。子どもの好奇心は “もっと知りたい” の原動力になる何かに夢中になると、子どもは「もっと知りたい!」と考えるようになります。これが、知的好奇心です。知的好奇心とは、物事に対して知ることへの欲求や、知りたいと思う気持ちのことを指します。たとえば、図鑑を見ていて恐竜について興味を持ったら、次々と新しいことを知りたいと興味を広げるお子さんもいるでしょう。「恐竜についてもっと調べたい」「実物の化石を見てみたい」など好奇心が旺盛になり、インターネットで調べたり、博物館へ行ったりと、行動範囲を広げていきます。このとき、脳内ではどんなことが起こっているのでしょうか。実は、子どもが何かに興味を示すとき、脳内で盛んに脳細胞同士のネットワークの道がどんどん作られ、情報伝達が行われています。成長とともに興味を持ったことに関する道は太くなり、興味がないものに関する道は減っていきます。ですから、小さい頃にできるだけたくさんのことに興味を持つことは大切なことなのです。音楽やスポーツなどでも同じことが言えます。子どもの頃から絵を見る機会を作る、ピアノなど楽器を弾く、スポーツを体験するなど、何か興味のありそうなものをさまざまに経験させると、「おもしろいなあ」「もっと知りたいなぁ」と思い、そこに興味のアンテナが張られていきます。好奇心を持つということは、知ろうと思うことの「原動力」になるのです。好奇心はどのようにして刺激されるのだろうか。心理学・行動経済学者のジョージ・ローウェンスタインが提唱した「情報の空白」という考え方がヒントになる。新しい情報よって無知を自覚し、自分の知識の空白地帯の存在に気がついたときに好奇心が生まれるというものだ。ここで重要なのは、「少し知っていること」が好奇心に火をつけやすいということ。好奇心は、何も知らない事柄に対して湧いてくるかのようなイメージを持たれがちだが、実際には、人はまったく知らないことには興味を持ちにくい。「何を知らないか」すら分からない状態では、疑問を膨らませることも難しくなる。(引用元:東洋経済ONLINE|土台の知識の有無が「好奇心格差」を生み出す)つまり、未経験なことが多い子どもの好奇心が刺激されるには、小さい頃にさまざまな経験や体験を広くさせることが大切なのです。知的好奇心が旺盛な子は賢いのはなぜ?最初に興味を持つことは、恐竜でも昆虫でも、動物、魚、鉄道でも、何でもいいのです。まずは、興味を持つこと自体が大切。その次に、興味を持つことができたその何かに対して、さらに知的好奇心が湧いてきて「もっと知りたい!」を積み重ねていきます。それを繰り返すことで、子どもは好きで夢中になることができる何かを見つけます。やがて、この知的好奇心は、学ぶ意欲にも結びつくのだそう。『「賢い子」に育てる究極のコツ』の著者でもある脳医学者の瀧靖之先生によると、賢い子の条件は「自分から“知りたい”と思える、知的好奇心が旺盛な子ども」だと言います。好きなものを極めるために、「これは何?」「なぜ?」「どうしてそうなるの?」ということを自発的に考えるようになります。自分なりに色々な角度から問いを立てて考えていくのです。そして、本を読んだり、人に聞いたり、インターネットで調べたり、様々な手段でその問いを解決していこうとするのです。もしかしたら外国の本を読み始めることもあるかもしれません。子どもの頃のこうした経験が下地となって、勉強にも仕事にも、そして趣味にもつながっていく。だから知的好奇心をもって動く経験を基に、何かに熱中した体験ができると、子どもの「学びに向かう力」が伸びていくのです。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|世界最先端の脳研究が解き明かした!「賢い子」の育て方とは?)また、瀧先生によると、小学校のときにとても成績が良かった子のうち、中学校や高校に進学してからも学力が伸びている子と、そうでない子との違いについて調査をした結果、成績が伸びている家庭の大半が子どもの頃に、本や図鑑などのバーチャルの世界を通じて好奇心を引き出されていたことがわかりました。そして、子どもが興味を持ったことをきっかけに、次は親が実際に本物を見せに連れて行くなど、本や図鑑で見た世界が、実際に手を触れられる距離に現れる経験をしているのです。それは視覚だけではなく、聴覚や触覚、嗅覚など脳の幅広い領域を同時に刺激しながら、より多面的な学びを得ることができるようです。また、人は物事に夢中になって「楽しい」と感じると、脳は神経伝達物質のドーパミンを分泌します。ドーパミンには記憶力を高めたり、やる気を出させたりする働きがあると言われており、高次認知機能が活性化されるのです。つまり、好奇心旺盛で何かに夢中になることは、脳の活性化にも大きな影響があるのです。子どもの知的好奇心を高めるためのコツとはでは、親御さんが子どもの知的好奇心を高めるために、何かできることはあるのでしょうか。日常生活の中でできる4つのことをご紹介します。<ポイント1>好奇心を育てる最強アイテムは「図鑑」高校や大学で学力が伸びた子どもは、幼い頃から図鑑を見ていたという分析もあるそうです。特に、3〜4歳ぐらいまでは、図鑑に触れると効果的だと言います。動物や植物、乗り物、宇宙、恐竜など、図鑑をリビングなどにそろえておきましょう。たとえば、テレビを見ていて子どもが何か興味を示したら、それに関する図鑑を開いて見せてみたり、水族館や動物園に出かける前に図鑑を開いてみたりするなど、親子で図鑑を楽しむ時間を持つことも大切です。<ポイント2>いろいろな経験をさせたり、新しい場所に連れて行く水族館で魚を見たり、動物園で動物を見たり、科学館へ出かけたり、美術を鑑賞する、ピアノを弾くなど、子どもが興味のありそうなものを経験させると、興味のアンテナが張られていきます。その中できっと、「これ、おもしろいなあ」「もっと知りたいなぁ」というふうに思えるものがあるはずです。図鑑などで興味を持ったことを、実際に出かけて目で見せる経験も積極的にさせてみましょう。いろいろなものに興味を持つことが当たり前になり、それは大人になっても習慣、そして経験として残っていくのです。<ポイント3>親自身がワクワクする感覚を忘れないお子さんが好奇心を持つように、いろいろな場所へ連れていくといったことをすでに実行している親御さんも多くいるでしょう。しかし、その前に大切なのが、親自身がワクワクするような好奇心を持つことです。好奇心を持ったことに対して、「学ぶ姿勢」を日々の生活の中で表現できているかどうかということが重要なのだと言います。そのような姿勢を日頃から見せることで、親の持つ好奇心は子どもに伝播するのです。<ポイント4>学習を日々の生活とリンクさせるお子さんは、書き取りや計算など単純な学習を楽しんで行っていますか?それだけでは、つまらないと感じる子もいるでしょう。理由は、日々の生活とリンクしていないからだと言います。例えば子どもがお菓子作りに興味をもった場合、作り方が書いてある文章を読むには「字」が読める必要があり、分量を知るには「数字」が必要になりますね。「好奇心」→「興味関心分野」→それに達するための「読み書き計算といった“道具”」という流れができるのです。そして、読み書きや計算の練習をするにつれて、自分がワクワクすることや知りたいことを、もっと知ることができるという手応えが出てきます。こうして、「読み書き計算といった“道具”」→「興味関心分野」→「好奇心」というサイクルが生まれ、さらに好奇心が強化されていきます。(引用元:東洋経済ONLINE|伸びる子の親は日々「好奇心」で生きている)このように、好奇心を持ったことを実現させるためには、学習することが必要だということが分かってくれば、子どもは積極的に学ぶようになります。***お子さんが小さい頃は、好奇心の元となるタネを撒きましょう。リビングに図鑑をそろえておいたり、家族で新しい場所へ出かけたり、子どもにさまざまな体験をさせたりするなど、何でもいいのです。その経験の中で夢中になる何かを見つけ、「もっと知りたい」という知的好奇心が生まれ、それが学ぶ意欲にもつながります。そして何より、親御さん自身が好奇心を持つことを忘れずに、それを楽しむ姿勢を見せることも大切です。文/内田あり(参考)ベネッセ教育情報サイト|世界最先端の脳研究が解き明かした!「賢い子」の育て方とは?ベネッセ教育情報サイト|脳医学者も実践!子どもの「知的好奇心」を伸ばす“たった1つの秘訣”東洋経済ONLINE|伸びる子の親は日々「好奇心」で生きている東洋経済ONLINE|土台の知識の有無が「好奇心格差」を生み出すSTUDY HACKER|好奇心は成長の秘訣!ビジネスにこそ活きる好奇心の “育て方”ソニーライフ|子ども脳も大人脳も「好奇心」で成長する 脳に効く習い事
2019年04月25日我が子の成功を願わない親はいません。ただ、ひとことで「成功」といっても、解釈は人それぞれでしょう。認知科学の専門家で、人の学習について研究をしている慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみ先生は、成功とは「自分で自分が幸せだと思えること」と定義づけます。そして、自らを成功に導くには、「言葉の学習を通じて思考力を高める」ことが重要だと語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもの言語学習には学びのエッセンスがたくさん詰まっているまずはわたしが行なっている研究内容についてお伝えします。専門としている「認知科学」は取り扱う分野がたいへん広く、人に関する科学的な研究のすべてともいえます。なかでもわたしがいちばん関わってきたのは、「人の思考や知識の在り方」、そして「学習」です。たとえば、脳のなかに知識はどういうかたちであるのか、知識というのは学びによってどう変わっていくのか、といったことです。その問題に実証的にアプローチするために、主に「子どもの言語の学習」を中心に据えて研究しています。なぜなら、子どもが言語を学習して自分のものにしていく過程には人の学びのエッセンスが凝縮されているからです。大人が外国語を学ぶ場合、「教えてもらう」「覚える」ということが基本ですよね。でも、赤ちゃんが言葉を覚えるプロセスはまったくちがう。大人が話している言葉を理解できないところからはじまり、入ってくる刺激を分析し、大事なことを発見していく。それこそが、学びの純粋なかたちといえます。子どもの言語の学習を研究することで、大人の学習にとってもすごくたくさんの示唆を得られるのです。思考力育成にシフトしつつある学校教育では、本題に移りましょう。親であれば、誰もが子どもの「成功」を願います。でも、その「成功」とはどんなことでしょうか?これは、科学的観点ではなく、人としての視点からの考えになりますが、成功とは「自分で自分が幸せだと思える」ことではないでしょうか。たとえば周囲からはうらやましがられるようなセレブであっても、本人が幸せだと思っていなければ、成功しているとはいえません。世間の基準ではなく、あくまでも自分の主観で幸せだと思い、自分に価値や意味を見出すことができる。また、自分がしていることをもっと深めていきたいと思えて、それが楽しい、生きがいだと思える人こそ成功しているといえるとわたしは考えます。子どもを成功する人間に育てるには、あたりまえですが教育が重要となります。いま、日本の公教育は過渡期にあるように感じます。有名大学に入って大企業に就職するというような古い成功モデルをまだ持っている人も少なくないですが、それに疑問を持ちはじめている人も増えているように思うのです。わたしがかかわっているある自治体の学校では、全国学力調査の結果ではなく、「どれだけ本質的に子どもが深く学べるか」といったことを重視し、教育改革をおこなっています。学力を測るためのアセスメント、評価基準として、「覚えただけの知識」を問うのではなく、思考力を問うようなものをつくっています。そのアセスメントは、子どもの順位づけをするようなものではありません。子どものさまざまな資質を多角的に見ると同時に、資質同士がどのように関係して子どもの思考力、学力をかたちづくっていくのかを理解するためのものです。思考力を高めるためには知識も重要多くの人は、思考力と言葉の力は別物と考えていると思います。しかし、認知科学、学習科学の研究の成果は、言葉の力が思考力の発達に大きな役割を果たしていることを示しています。言葉こそ思考の道具、思考するためにいちばん重要なものだからです。しかし、誤解しないでほしいのは、言葉が大切だといっても、ただ闇雲に語彙のサイズを大きくする、つまり知っている単語の数を増やせばいいわけではありません。子どもは言葉の学習を通じて考える力を高めていきます。言葉の理解のプロセスには思考が存在します。人が知らない言葉に出会ったとき、人はその言葉が使われた文脈にある知っている言葉を手掛かりに、この新しい言葉は「きっとこういう意味だ」という推論をする。その推論の連鎖によって、はじめて新しく出会った言葉の意味を知るのです。つまり、子どもが新しい言葉に多く出会うことは、たくさんの推論の連鎖を経験し、推論力、思考力を深めるということに他なりません。周囲にただ教わるのではなく、自分で意味を見つけた言葉をたくさん知っている子どもというのは、持てる知識を使って、新しい知識を生み出す練習、経験を重ねているということになるのです。これからの時代を生きていく子どもたちは、そういった経験を重ねて思考力を深めておく必要があります。というのも、いまの社会は10年後にどうなっているのか、なにが主流になっているのかが誰にもわからないからです。いま現在主流のものを覚えても、それが10年後に使える保証はありません。とはいえ、誤解してほしくないのは、決して知識が不要というわけではないということです。新しい言葉の意味を推論によって知るプロセスにもいえることですが、新しい情報に注目するにも、いま持っている知識というフィルターをとおしておこなうからです。知識は必要です。でも、さまざまなことをただ覚えただけでは意味がありません。知識をどう使って新しい知識をつくり出していけるか、ということが大切なのです。まさにいま現在、過渡期にある日本の公教育ですが、それこそ学びの基本的な姿勢がつくられる幼稚園や小学校の学習は、そういう視点でのものが中心になっていってほしいですね。『科学が教える、子育て成功への道』キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ 著今井むつみ、市川力 翻訳/扶桑社(2017)■ 慶應義塾大学環境情報学部教授・今井むつみ先生 インタビュー一覧第1回:我が子の「成功」を願う親が、絶対に伸ばしてやるべき子どもの“力”第2回:小さな子どもが喜ぶ「デジタル絵本」に、実は“学びの効果”は期待できない(※近日公開)第3回:「コミュニケーション能力を重視しすぎ」な親が、犯しかねない過ちとは(※近日公開)第4回:家庭での学びが「アクティブ」で「プレイフル」になる、いちばんの方法(※近日公開)【プロフィール】今井むつみ(いまい・むつみ)慶應義塾大学文学部西洋史学科卒、慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了、ノースウェスタン大学心理学部博士課程修了。1993年より慶應義塾大学環境情報学部助手。専任講師、助教授を経て2007年より教授。専門は認知・言語発達心理学、言語心理学。とくに語彙(レキシコン)と語意の心のなかの表象と習得・学習のメカニズムを研究している。著書に『学びとは何か――<探求人>になるために』(岩波書店)、『言葉をおぼえるしくみ 母語から外国語まで』(筑摩書房)、『ことばの発達の謎を解く』(筑摩書房)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年04月25日小さい体に大きくて真新しいランドセルを背負った1年生。通学路ではそんな子どもたちが一所懸命歩いている姿を見かける季節になりました。何もかもが始まる春。こちらまでわくわくしてきます。新しい習慣の一つとして「辞書を引く」ということを取り入れてみましょう。実は子どもの学習環境を見直すことで、大人にも良いヒントがたくさん得られるんですよ。その1外箱をはずそう!こんにちは。ゆか先生です。前回は、国語辞典の選び方をお伝えしました。記事を読んで、親子で書店に出向いた方も多いのではないでしょうか。辞典売り場で、どれが良いかと選んでいる微笑ましい親子を見かけるたびに、こちらもとてもうれしい気持ちになります。「もしよろしければアドバイスしますよ」と声をかける怪しいおばさんがいたら、それは私です。何でも聞いてくださいね。さて、辞典を買ったらまずすることが3つあります。今日はそのお話をしますね。さて、何ごとに関しても、それを習慣づけるためには、準備にかかる時間や動作を最小限にすることがポイントです。例えば、身近な例で言うと、体重計。ダイエットや健康管理の目的のために、毎日体重を量ると決めたとしましょう。もし、体重計が脱衣所の棚の奥、ケースに入っているとしたら、それを棚から出して、箱から出して、乗って量るまでに何秒かかりますか?実は人間というものは、その間にも「量るのをやめる理由」をあれこれ思いついてしまうのです。「今日は食べ過ぎちゃったからやめとこ。増えているのわかりきっているし!」こんなふうに数秒の間に考えてしまうのです。増えているのがわかりきっているけれども、あえて量るからこそ、意味があるのですよね?量ったらドキッとするから量ることに決めたわけですよね?わかりきっているけれども、量ってみてはじめて「明日は気をつけよう」という反省につながるはずですよね?だから、目的がダイエットだとしたら、いいわけ無用でいつでもさっと量れるように体重計を出しておくのが正解なのです。他に、毎朝ウォーキングをしようと決意したら、起きてすぐに着替えられるようウエアを枕元に置いておく。家計簿を毎日つけたいと決心したのなら、帳簿は引き出しの奥ではなく、最上段の開けたらすぐ見える場所に置いておく。楽器を習い、毎日練習すると決めたなら、いつでも練習できるよう、楽器をケースに入れないで出しっぱなしにしておく。こんな工夫が該当します。逆に、やめたいと思っている悪習については、スタートするのに時間がかかるようにしておけばいいのです。スマホのゲームアプリは一番奥の画面に、しかもフォルダを作ってその中にしまう。ついつまみ食いしてしまうクッキー類は、さっと食べられないように、タッパーにうつして野菜室の奥にしまうなどです。おもしろいでしょう?ちなみに私は、スマホのゲームアプリフォルダに「ひまなの?」という名前をつけ、最後尾に置きました。そのフォルダにたどり着くまで「またやるんだ、私……」といや~な気分になり、フォルダ名を見るたびに自分が情けなくなり、その一週間後には、見事フォルダごと削除できました。今、スマホにゲームアプリは1つも入っていません。わかりやすいようにと大人の話にしましたが、実は子どもの学習にも同じことが言えます。続けてほしい良い習慣に関しては、とりかかるまでにかかる時間を最小限にするようにします。やめてほしい悪い習慣については、手間をかけないとできないようにするというわけです。さて、辞典の話に戻しますよ。国語辞典の目的は「言葉の意味を調べる」ことです。辞書が主体ではありません。つまり「さあ、今日は国語辞典の勉強をしよう」ではなく、何か本来の勉強などがあり、その途中で分からない言葉があったときに初めて国語辞典の出番となるわけです。ですから、本棚から出す、外箱をはずす、その手間をなくすために、外箱自体をなくしてしまおうということです。外箱は捨ててしまって大丈夫です。 もう二度と使いません。「いつまでもきれいに使いたい」こういう大人の気持ちも分からなくありませんが、いつまでもきれいに使うために、お子さんはかなりのエネルギーを使います。そのエネルギーがもったいないですよね。また、小学生用の国語辞典は、早い子で4、5年生、遅くても6年生までしか使いません。その後は中学生用や大人用の辞書に切り替えます。それまでの期間だったら、毎日使ったとしても、綴じてある糸がほつれるほどにはなりません。むしろ、ぼろぼろになるまで使われた辞書って、天命を全うした感じがしませんか?その2名前を書こう!私が次にすべきこととして推奨しているのが、本の「天」か「地」、まっすぐに立てた時の上か下ですが、そこに名前を書くことです。「自分だけのたからもの」としてもらうのです。ぜひお子さん自身に書かせてください。これにも抵抗がある保護者の方がいるようです。買ったばかりの本にマジックで名前を書くなんて。しかも子どもの字で?と。また、できるだけきれいに使って下の子に、と思う人もいると思いますが、前回お話ししたとおり、兄弟姉妹がいてもそれぞれの辞書を使うことを強くおすすめします。ましてや、教育漢字改訂中です。下の子に、という考えは少し無理そうです。人間は、人と共有のものより、自分のものを大切に扱います。名前を書いてあるものは特にそうです。そして自分で書いたならなおさらですよね。子どもも同じです。どんなに心配でも、ぜひ、お子さんに書かせてみましょう!そして「きちんと書けたね」の言葉もお忘れなく。「今日からこの辞典はあなただけのお友達ね!」とも声をかけてあげましょう。その3リビングに置こう!使うまでの手間を省くのに、外箱をはずす話を書きましたが、置き場所に関しても同じ法則が適用されます。使う時にさっと手に取れる場所にあることが大切。そのために、どんなシチュエーションで辞書を利用するか想像し、その場所に置けば良いということが分かります。小学生の子どもを持つ友人で、すでに国語辞典を利用している方たちにアンケートをとってみました。ご協力くださいましたみなさん、ありがとうございました。これによると、リビングの本棚、テーブルなど、6割強の人たちが、リビングに置いていることが分かります。これは、国語辞典を使う機会がリビングにいる時に多いからです。地球儀や世界地図、百科事典もリビングに置くといいということはここ数年、いろいろな教育雑誌でも取り上げられているもので、すべて「調べたいと思った時に調べる」というアクションがリビングで起きやすいことが原因です。お笑い芸人が何か言ってみんなが笑った。その言葉を知らなかったから調べる。ニュースでキャスターが何か言った。その言葉を知らなかったから調べる。お父さんがお母さんに何かを言った。その言葉を調べる。本を読んでいたら、知らない言葉が出てきたから、調べる。そんなシチュエーションがリビングにはあふれていると思います。連載第1回でも書きましたが、知らないことをそのままにしないことが大切です。保護者のみなさんも、知らない言葉があったら、スマホではなく辞書を開いてみましょう。百聞は一見にしかず。スマホでインターネット検索したのとは全く違う世界を感じることができますよ!次回からは、具体的な辞書の引き方について、基本的な方法と、発展的な方法についてお伝えします。■ 連載『ゆか先生の 国語辞典の世界へようこそ』各回の内容第1回:国語辞典でこの時代を生きぬくための基本動作が身につく第2回:子どもにぴったりの国語辞典を選ぼう! 電子辞書ってどうなの?第3回:初めての国語辞典。カバーは?置き場所は?どんなふうに引くの?第4回:ゲーム感覚がやる気をアップ! 付箋紙やノートで記録する方法など(※近日公開)第5回:漢字辞典、百科事典、ことわざ辞典、四字熟語辞典、語源辞典など、子どもの世界の辞典いろいろ(※近日公開)第6回:まとめ国語辞典を使えるようになった子どもたちのその後(※近日公開)
2019年04月24日グローバル化が進む昨今、私たちの日常生活も徐々に変化してきました。街中で見かける外国人観光客の数は明らかに年々増加していますし、コンビニや飲食店の店員が外国人であることも今や全く珍しくありません。海外出身の方と一緒に働く職場も増えてきているのではないでしょうか。もちろん、子どもたちを取り巻く環境も同じように変化を続けています。園や学校のクラスメイトに外国人のお友だちがいるというケースも増えていることでしょう。このような社会の流れを受け、子どもたちにも「グローバル人材」の資質が求められています。とはいえ、やみくもに英語だけを学べばいいというものでもないようです。家庭内でどのようなことに気をつければ、子どもをグローバル人材に育てることができるのでしょうか。今回は、子どもがグローバル人材になるために大切なことについてご紹介します。これからのグローバル人材の3つの要素とは?これからの時代に求められるグローバル人材になるためには、どのような能力が必要になるのでしょうか。2020年から小学校でも英語が必修化されることもあり、多くの方が語学力の必要性は理解されていることでしょう。しかし、単にネイティブスピーカーのように英語が操れるだけでは、真のグローバル人材として不十分。大切なことは、「英語を使ってどんなはたらきかけをするか」です。官邸主導のグローバル人材育成推進会議が定義した「グローバル人材」の要素は次のとおりです。「グローバル人材の要素」要素I:語学力・コミュニケーション能力要素II:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感要素III:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー(引用元:首相官邸|グローバル人材育成戦略(グローバル人材育成推進会議 審議まとめ))海外の相手とコミュニケーションを図るには、語彙力だけではカバーできない部分もあります。自分とは異なる価値観や文化的バックグラウンドを持つ人々のことを理解する柔軟性や、失敗を恐れず積極的にチャレンジするタフさなど、幅広い力が必要とされるのです。このような能力は、かつては一握りのエリートやリーダーに求められていたものですが、これからの時代は多くの人に求められるようになっています。では、基本的な要素である語学力・コミュニケーション力を除いた要素II、要素IIIは、どのようにして身につけることができるのでしょうか。グローバル人材に必須なのは「自己肯定感」グローバル人材の要素IIにあたる「主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感」は、あらゆる能力を身につけなければ得られないような印象を受けますよね。しかし、実はこれらに共通するのは「自己肯定感」、つまり「自分は価値のある存在だ」「自分ならできる」という気持ちです。自己肯定感が育まれている子どもは、要素IIの能力を楽に伸ばすことができるでしょう。家庭で自己肯定感を高めるのに効果的な「言葉がけ」の仕方を考えてみましょう。例をいくつかご紹介します。■子どもの気持ちに共感する子どもが習い事のレッスンなどでうまくいかず悔しがって泣いているときには、子どもの気持ちを受け止めてあげることが大切です。自分のことを分かってくれているという安心感が自己肯定感アップにつながります。【NGワード】「悔しいんだったらもっと練習していけばいいでしょう」「泣いたってどうしようもないよ」【OKワード】「今日はうまくできなかったから悔しかったんだね」「実はお母さんも昔できなくて泣いたことがあるんだよ」■過保護になりすぎない親は、子どもが失敗して辛い思いをしないようにあれこれ先に手を回したくなるものですが、過保護になりすぎているようなら要注意。子ども自身に考えさせる声かけを心がけるのがおすすめです。【NGワード】「ほら、○○を忘れずに持っていきなさいね」「いいわよ、ママがやってあげる」【OKワード】「何を持っていけばいいんだっけ?」「あなたはどうすればいいと思う?」■人と比べないうまくいかないときでも、他の子と比べるような発言をすると、子どもは「友だちと比べて自分は劣っているのだ」と受け取ってしまいます。子どもが自分に自信を持つには、子ども自身の成長ぶりを少しずつ認めて褒め「今の自分を認められた」と感じさせることが必要です。【NGワード】「〇〇くんはテストが100点ばかりなんだって」「△△ちゃんはもう自転車にスイスイ乗っているのに」【OKワード】「前よりも10点上がったね」「もうすぐ補助輪も取れそうだね」このように、子どもを否定したり自立心を奪ったりすることなく、「自分ならできる」と感じさせるような言葉がけをすることによって、子どもの自己肯定感を高めることができます。グローバルな人材教育は、まず日本を知ることからでは、要素IIIにあたる異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティーは、どうしたら身につけられるのでしょうか。外国人とのコミュニケーションでは、「あなた自身はどう考えるのか?」と意見を聞かれることがあります。これは、「あなた自身=日本人」としての意見を期待されていることが少なくありません。みなさんも、普段は「日本人としてのアイデンティティー」について考えることはほとんどありませんよね。そのため、外国人と交流した際に、日本について質問をされて答えに困ってしまったり、自分たちよりも日本のことを詳しく知っている外国人に出会ったり……。という経験はないでしょうか?そこで、将来を担えるグローバル人材になるために、教養としてお子さんが「日本らしさ」を知る機会を増やすことをおすすめします。お子さんが小さいうちから、四季折々の日本の自然にふれたり、年中行事や習わしを一緒に体験したりして、身近な「日本の文化」を学べるように環境を整えることが大切です。さらに、自分の国について知っていることで、相手の国を理解しやすくなることもあります。東京都教育委員会は、異文化理解の心は自国の文化理解のもとに育まれるため、日本の伝統や文化を通して日本人というアイデンティティを確立する教育を推進することが必要だと述べています。異なる文化や風習などの「多様性」を受け入れられる許容性や柔軟性は、グローバル人材として成長するための基礎となるのです。***グローバル人材に育てるためには、特別な何かを与える必要はありません。むしろ、子どもの「自己肯定感」を高める言葉がけと、私たちの身近にある「日本らしさ」の経験の豊かさが大切だといえますね。(参考)首相官邸|グローバル人材育成戦略(グローバル人材育成推進会議 審議まとめ)河合塾Kei-NetGuideline4・5月号|特集2 グローバル人材の育成-こどもまなび☆ラボ|「自己肯定感の高い子どもは学力も高い」は本当?自己肯定感アップに効果的な3つのこと。東京都教育委委員会|日本の伝統・文化理解教育の推進こどもまなび☆ラボ|英語学習だけで大丈夫?子どもがグローバル社会で活躍するために本当に大切なこと|日経DUAL|「リスクを取れて、前向き」が世界を生き抜ける子
2019年04月23日皆さんは、子どもがスマートフォンを使うことに関して賛成ですか?反対ですか?昨今、幼い子どもにスマートフォンを使わせる「スマホ育児」や「スマ放置」が問題になるなど、子どもにスマートフォンを与えることに関しては悪いイメージが先行していますよね。しかし、スマートフォンは必ずしも諸悪の根源というわけではありません。スマートフォンならではの特徴を生かして上手に付き合えば、子どもたちの学ぶ意欲をより高めるツールにもなります。では、日常生活において、最適な方法でスマートフォンを使うにはどうしたらいいのでしょうか。スマートフォンとの上手な付き合い方を考えてみましょう。「スマホ使うほど学力下がる」って本当?ニンテンドーDSソフト「脳トレ」シリーズの監修者であり、脳トレブームの立役者とも言える東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太教授は、平成25年度仙台市標準学力検査および仙台市生活・学習状況調査とスマホの利用状況から、スマホの利用時間と学力に下記のような相関関係があることを警告しています。(画像引用元:仙台市|「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」作成リーフレット 平成25年度版)このグラフから、携帯やスマホを使う時間が長ければ長いほど、数学の平均点が下がっていることは明らかですね。また、驚くべきことに「2時間以上勉強していながらスマホを4時間以上使っている子」の平均点が「30分未満しか勉強していないけれどスマホを使わない子」の平均点よりも低いという結果も出ています。せっかく勉強しても、スマホを使う時間が長ければ、勉強した時間がムダになってしまうといっても過言ではありません。この傾向は、数学のみならず理科、社会といった他の教科でも見られたのだそう。学力低下の原因は、スマホ利用で奪われる「あの時間」?実際のところ、スマホの利用と学力低下についての直接的な因果関係は明らかになっていません。しかし、学力低下の要因として大いに考えられるのは、スマホ利用によって生じる「睡眠不足」です。睡眠改善インストラクターで昭和西川専務取締役の西川ユカコ氏は、睡眠不足と学力低下の関連性について次のように指摘しています。学力の観点では、寝不足だと大脳の前頭連合野が打撃を受け、勉強する意欲や集中力が薄れ、論理的な思考もしにくくなるほか、記憶にも障害が出てきます。たとえば10時間の睡眠が必要な子どもが8時間しか眠らなかった場合、足りない睡眠時間は2時間です。「2時間の睡眠不足」は、お酒を飲んでほろ酔いの時と同じくらいの脳の働き(働かなさ)になるといわれています。(引用元:東洋経済ONLINE|「成績のよい子」は、だいたい何時に寝るのか)スマホで動画を観たり、ゲームをしている時間が長くなると、睡眠をとるべき時間が削られます。その結果、勉強への意欲や集中力の欠如のほか、論理的な思考ができなくなったり記憶にも支障が出るという弊害が起こるのです。スマホをどれだけ使うかではなく、どう使うか電車やバスといった公共の乗り物に乗っているときや待ち時間などには、騒いで周囲に迷惑をかけたりしないようスマホで静かにさせたいというのも本音ではないでしょうか。それでも、スマホによって何か悪影響があるかもしれないと思うと不安ですよね。子どもの脳の発達や学力向上は、スマホの使用時間がどれくらいかではなく、人とのやり取りがあるかどうかに関係があるという意見もあります。小児科医でお茶の水女子大学副学長の榊原洋一氏は以下のように話しています。「かつてテレビの視聴時間が長い子どもは、言葉の数が少ないという研究結果がありましたが、さらに詳しく研究すると、視聴時間が長くても家族の会話が多ければ言葉も多いという結果が出てきました。子どもの発育に重要なのは、テレビやスマホなどの視聴時間の長短よりも、生身の人間とのやり取りがあるかどうかです」(引用元:NHK生活情報ブログ|「スマホ育児」発育に影響は?)やむを得ずスマホを利用するときにも、使い方さえ気をつければ影響を少なくできるということです。スマホの動画やゲームで待ち時間を過ごすときなどは、子どもに与えっぱなしにすることなく、一緒に視聴したり話しかけたりしてみてはいかがでしょうか。また、学力低下と併せて気にしたいのは、スマホによる「視力低下」。国立成育医療研究センターで小児眼科を専門とする仁科幸子先生は、スマホを見る距離はテレビよりも近く、目にはその分の緊張が強いられるため疲れやすくなると指摘します。子どもの視力が低下しないよう、スマホを見せる際には以下のことに注意しましょう。・画面から30cm以上離れ、明るい場所で視聴する・連続で視聴する場合は30分を限度としタイマーで時間を計る・ベビーカーや車などの揺れている場所では見せない・親子できちんとルールを決め節度を持って使用させる***「スマホを長時間使っているから学力が低下する」という説を裏づける科学的な根拠は現在のところ明らかではありません。しかし、学習のための時間がスマホに奪われたり、ゲームや動画が気になって学習に集中できなかったりということが、学力低下につながる可能性は否定できません。目にも負担をかけすぎないようにお家でルールを決めて、上手な活用をサポートしてあげられるといいですね。(参考)毎日新聞|スマホ警告ポスター「使うほど学力下がります」日医作製日本小児科医会|スマホの時間 私は何を失うかPRESIDENT Online|“スマホが学力を破壊する”これだけの根拠東洋経済ONLINE|「成績のよい子」は、だいたい何時に寝るのかNHK生活情報ブログ|「スマホ育児」発育に影響は?子どもたちのインターネット利用について考える研究会|乳幼児とスマホ 保護者のためのセルフチェック
2019年04月23日前回の『美術鑑賞は“ぶらぶら歩きでいい加減に”。子どもがアートに目覚める瞬間』では、アート鑑賞で得られる能力と鑑賞の極意についてご紹介しました。「美術館はぶらぶら歩きで、いい加減に見るのがコツ」と言われたら、子どもと一緒でも気が楽になり、とてもリラックスして美術館を巡れそうですよね。そして「自分のアンテナに引っかかった作品を見つけたらそれをじっくり鑑賞する」とお伝えしましたが、その際に役立つのがMoMA(ニューヨーク近代美術館)推奨のVTSという鑑賞法です。今回は、子どもの “生きる力” をぐんと伸ばしてくれるアートの見方をご紹介します!MoMAが確立したVTS(Visual Thinking Strategy)とはVTSとは、MoMAの教育部部長だったフィリップ・ヤノウィン氏と認知心理学者のアビゲイル・ハウゼン氏が1980年代に生み出したアート作品鑑賞教育です。美術を鑑賞することにより、「観察力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」を高めることを目的としています。つまり、人間教育の一環としてアートを活用しようというもの。具体的には、グループで1つの作品をじっくり鑑賞し、その後、その作品について感じたこと、考えたことなどを話し合います。教育効果が認められ、VTSは欧米諸国で広がりました。ディスカッションはファシリテーター(調整役)がリードして行なわれますが、その際問われる質問はたったの3つだけです。(1)絵の中では何が起きていますか?(2)作品のどこをみてそう思いましたか?(3)もっと発見はありますか?VTSでは鑑賞者の自主性を何より大事に考えるため、ファシリテーターの発言はできるだけ抑えられます。そして一番大切にされているのは、最初に「作者や作品の情報なしに、1つの作品を10分以上じっくり純粋に見ること」。その後ディスカッションをすることで、総合的な創造的思考能力が磨かれていくのです。日本で開発されたACOP(Art Communication Project)次にご紹介するACOPはVTSを基に京都造形芸術大学で開発された対話型鑑賞法。1つの作品をじっくり鑑賞し、グループでディスカッションするスタイルは同じですが、こちらがより重視するのは「対話」です。同じものを見て、感じたり思ったりしたことを共有、共感することで多面的発見があり、一人だけでは到達できない解釈を得ることができるのです。これにより、「みる・考える・話す・きく」という人の基本能力が高められます。ACOPではナビゲーター(VTSではファシリテーター)と言われるリード役がとても重要で、作品と鑑賞者を深くつなげるために、より大きな役割を担っています。対話の主導はあくまで鑑賞者側ですが、求めに応じて情報を提供したり、鑑賞を深めるプロセスをスムーズに運ぶため、熟練のスキルが必要になります。鑑賞に正解なんてない!親子で感じたことを語り合う方法方法がわかったとしても、個人で本格的な実践はなかなか難しいですよね。そこで、前編でご紹介した専門家のアドバイスと対話型鑑賞法のエッセンスを融合して、親子で美術館を訪れた際に試せる方法をまとめてみました。この方法の目的は「観察」と「感想」をリンクさせるクセをつけること。なぜそう感じたのかの答えは観察による発見の中にあるのです。<親子で対話型鑑賞する方法>(1)美術展や作者に関する情報は得ずに、先入観なしの真っ白な状態で美術館へ(2)気楽にぶらぶら見て、親子でお気に入りの作品を1つ選ぶ(3)【HOW】「どのように描かれているか」じっくり観察し、お互いのポイントを出し合う(4)【WHAT】「その作品をどう思うか、何を感じたか」について語り合う(5)【WHY】(3)と(4)を関連づけることで、作者の意図や時代背景などを想像したり、発想をとばして楽しむ今回はみなさんがよく知る絵画「モナ・リザ」を例に【HOW】【WHAT】【WHY】の過程を具体的に試してみましょう。【HOW】絵を見て気づいたことをなんでもいいのであげてみましょう。じっくり見れば見るほどたくさん見えてくるものがあります。「姿勢がいい」「優しそう」「こっちをみてる」「少し微笑んでるかな?」「肌の色が白い」「肌が柔らかそう」「眉毛がない」「椅子に座ってる」「左手の上に右手をのせてる」「着心地がよさそうなドレスを着てるね」「後ろに道路や緑豊かな山や湖か川が見える」「よくみたら橋も見えるね」「絵の色が古めかしく見える」【WHAT】“HOW”の発見から受ける印象や感じたことを語りましょう。「姿勢も身だしなみも良くて、優しそうな笑みが優雅な感じ(育ちが良さそう)」「肌や洋服の質感がリアルで、絵が生き生きとして見える」「薄い微笑みが謎めいても見える」「見つめられているようでドキドキする」「後ろに自然が広がっているからか、ほっとする」「絵の色が褪せて見えるから古い絵だと思う」【WHY】これまでの観察と感じたことから、作者はなぜこの絵を描いたのか、どんな時代だったのかなど、観察したことをふまえて、様々なことを想像してみましょう。「古そうだし、これはすごく昔の絵で、モナ・リザさんは貴族だと思う」「えらい人だから、自分の肖像画を画家に描かせてるんじゃない?」「貴族は普段は都会に住んでると思うから、ここは別荘なのかも」「とてもリラックスしているように見えるから、モナ・リザさんと画家さんは仲良しだったんじゃないかな」以前ご紹介した、歌とアニメで “世界のびじゅつ” を紹介するテレビ番組『びじゅチューン』のように、想像力にまかせて、絵から発想を飛ばしたストーリーを作ってみるのも楽しいですね。大切なのは、見たこと感じたことを語り合うことにより、気づきや学びが生まれ、アートを身近に楽しいものだと思えるようになることです。正解はありません。まずは直感を大切にして自由にやってみましょう。対話型鑑賞法を試す前にオススメの絵本『あーとぶっく』シリーズ最初から対話型鑑賞法を試すのは少し難しすぎるのでは?と思われる方もいらっしゃるでしょう。でしたら、お試し前の準備体操として、鑑賞のヒントとなりそうな絵本があります。それが、『あーとぶっく』です。皆が知っている有名な画家を自由な楽しい発想で分析するように書かれた絵本たち。作家の特徴をクローズアップして、子どもたちが興味を持ちそうなおもしろい発想で綴られているので、「観察→発想」のプロセスをイメージしやすいものです。対話型鑑賞法に過剰な知識はNGですが、アートへのハードルを下げるはじめのステップとして、また、小さなお子さまにもとてもいい絵本です。シリーズは全13巻(ゴッホ・モネ・ピカソ・ルノワール・ルソー・スーラ・シャガール・ゴーギャン・クレー・マティス・ローランサン・モディリアニ・ミロ)、ぜひお子さまと一緒に読んでみてくださいね。『ゴッホの絵本―うずまき ぐるぐる(小学館あーとぶっく)』結城昌子著(小学館)「なんかしっくりくるなあ、この絵」気が合う名画と、うまく出会えたらしめたもの。あなたはもう名画を鑑賞しているのではなく、名画を体験しているのです。このシリーズは、名画と友だちになるための私なりの絵本。(引用元:artand結城昌子オフィシャルサイト|小学館『あーとぶっく』シリーズ全13巻)シリーズの著者である結城昌子氏は、『あーとぶっく』についてこのように話しています。自分なりの方法で、名画と友だちづきあいをしてみませんか?***最後に――VTSを日本に紹介し、ACOPを開発するのに尽力されたのが京都造形芸術大学教授の福のり子氏。コミュニケーション力育成を重要視するACOPの目指すところを次のように語ってらっしゃいます。「あなたはそう感じる。でも、私はそう感じない」というときに、単に「人は多様だ」ということで片付けてしまっては、その相手との関係性はそこで終わってしまう。そうではなくて、「私にはそういう風には見えないけれど、あなたの説明をもっと聞きたい」という姿勢によるコミュニケーションがあること。その上で、賛成はしなくても「確かにその説明を聞くと、あなたにそう見えたのは納得できる」というところまでいくことが、ACOPのコミュニケーションなんです。それぞれの見かたがある人たちがどのように関わっていくのか、ということが一番大切ですから。(引用元:DNPミュージアムラボ|感覚をひらく人たち)これは、今の多様性の時代にいちばん求められている、とても大事な素質ではないでしょうか。「アート」の語源は “生きる技術” なのだそう。人と人をつなぐアートが子どもたちの “生きる力” を育み、豊かな人生を歩む道しるべになるなんて、すばらしく、素敵なことですね。(参考)リクナビNEXTジャーナル|必要なのは、自由な発想だけ!MoMA開発「対話型アート鑑賞」で磨ける、ビジネスの役立つスキルとは?artand結城昌子オフィシャルサイト|小学館『あーとぶっく』シリーズ全13巻ルーブルDNPミュージアムラボ|感覚をひらく人たち京都造形芸術大学アートコミュニケーション研究センター|コンセプト和樂 2019.2ー3月号 『日本美術は自由だ!』, pp42-43. 小学館.岡崎大輔著(2018), 『なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?』, SBクリエイティブ.フィリップ・ヤノウィン著/京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センター訳(2015), 『どこからそう思う?学力をのばす美術鑑賞 ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ』, 淡交社.DNPミュージアムラボ|感覚をひらく人たち
2019年04月22日「本選びのプロ」がとっておきの情報を教えてくれる連載『まなびの本棚』第5回です。新学期が始まり、子どもたちはまだ新しい環境に緊張しているかもしれませんね。幼稚園や小学校での心配事や不安なことは、親子で一緒に解決策を考えるなど、日々の暮らしの中で工夫して乗り越えていきたいものです。でも、もしそこで親御さんにも解決策が見出せなかったら、本の中にその答えが見つかるかもしれません。親子で一緒に本を読み、その中から自分の気持ちに寄り添ってくれる言葉を探したり、「こういう時はこうしたらいいんだ!」と心が楽になる方法が見つかったりすると、子どもの視野はぐんと広がりますよ。この連載では、日販図書館選書センターで選ばれた本のランキング、そして選書のプロ・コンシェルジュによるコラムをご紹介します。きっと子どもの本選びのお役に立つはずです。選書センターについて、詳しくはこちらをお読みください→図書館司書や教育関係者が足繁く通う『日販図書館選書センター』って知ってる?2018年度の人気図書ランキング1位鳥獣戯画を読みとく五味文彦 監修岩崎書店2位失敗図鑑いろは出版編著いろは出版3位学校プールのヤゴのなぞ星輝行少年写真新聞社4位辞書びきえほんもののはじまり陰山英男ひかりのくに5位鉱物・宝石のひみつ松原聰岩崎書店(※2018年4月~2019年3月 累計)今回は、2018年度最も人気のあった図書をご紹介しています。物語よりも、ひとつの分野をより深く、さらに濃く突き詰めたラインナップが印象的ですね。子どもの「もっと知りたい!」という探究心を満たすような、充実した内容の図書がずらりとランクインしています。インターネットで簡単に情報が手に入るこの時代に、あえて1ジャンルに特化した本をじっくり読み込むという体験は貴重です。興味の対象をとことん突き詰めることは、きっとお子さんの粘り強さや集中力をはぐくむ一助となるでしょう。コンシェルコラム"本選びのプロ"選書センターコンシェルジュのおすすめの本『平成』から『令和』へ。今だからこそ元号について親子で学ぼう!天皇陛下の生前退位にともない、4月1日に新元号『令和(れいわ)』が発表されました。引用元の万葉集にも世間の注目が集まるなど、新元号にまつわる話題で連日盛り上がりましたね。このように、大人も子どもも天皇や元号に対する関心が高まっていますが、「元号はいつから使われているの?」「なぜ元号が変わるの?」「天皇陛下のお仕事って?」といった子どもからの質問に、意外と答えられない方も多いのではないでしょうか。本書は「天皇」「元号」そして両者の関わり合いをテーマにした図書です。幅広い分野ですが、小学生〜中学生向けにわかりやすく簡潔にまとめられています。本文はオールカラーで、写真や資料が豊富に掲載されているので、時代背景をイメージしながら調べ学習をすることができます。さらに、教科書に名前が登場する天皇については、その時代背景や功績などの詳しい解説があります。天皇と元号を理解するための入門編としておすすめします。『天皇と元号の大研究日本の伝統と歴史を知ろう』高森 明勅PHP研究所
2019年04月21日成長するにつれて、子どもの個性は色濃く出てきます。長所も短所もその子の個性であり、良いところはどんどん伸ばしてあげたいですよね。一方で、短所になり得る点を早いうちから直してあげるのも、親としての大事な役目です。親の声かけや対応、周囲の環境などは、子どもの成長に大きな影響を及ぼします。今回は、物事が続かない・すぐにあきらめてしまうお子さんを変えるヒントをお伝えしましょう。「すぐにあきらめる子」は将来どうなる?「もういいや」「つまらない」「飽きちゃった」「どうせ僕(私)にはできないよ」ーーこれらの言葉がよくお子さんの口から出てくるとお悩みではありませんか?もしくは、お子さんの普段の様子を観察してみると、次のような傾向があるのではないでしょうか。・遊びや勉強など、最初のうちはやる気満々で夢中になって取り組むが、すぐに飽きる。集中力が持続しない。・あれもこれもと興味の対象が多いわりに、どれにも執着しない。・困ったことに直面しても、すぐに「まあいいか」と言って真剣に向き合おうとしない。たとえまだ小さな子どもでも、少し気になるこれらの言動。しかしこのまま放っておくと、高学年以降の成長過程においてさまざまな悩みの種になりかねません。勉強やスポーツでも、続けることでしか手に入らない結果があります。ちょっと壁にぶつかったくらいですぐにあきらめてしまうようでは、本人が望む成果は得られないでしょう。するとそのうち「自分は何をしてもダメなんだ」「結果が出ないのは自分の能力が低いせいだ」と、自己肯定感が低下していくのです。大人になって就職しても、変化のないルーティンワークからは刺激を感じられず、与えられた業務をおろそかにするようになります。その結果、周囲からの評価を得られないどころか、自分の実力に向き合うことをせずにすぐに環境を変えたがり、転職を繰り返す可能性もあるでしょう。「飽きっぽい」「あきらめが早い」ということは、大きな成功から遠ざかるひとつの要因にもなりうるのです。「あきらめ癖」がついてしまったのはなぜ?そもそも、なぜ「あきらめ癖」がついてしまうのでしょう。脳の仕組みを見てみると、熱しやすく冷めやすいタイプは、行動を促進するドーパミン神経系の活性化を求める傾向があると言われています。新しいものや刺激のあるものを求めることは、脳にとって決して悪いことではないのです。しかし一方で、コツコツがんばって続けられる人や、刺激を追い求めずに安定した日々を送る人もいます。「すぐにあきらめる人」との違いは一体何なのでしょう?そのヒントは、親の日頃の言動に隠されているようです。『ほめると子どもはダメになる』(新潮社)の著者で心理学博士の榎本博明氏は、「親から投げかけられた言葉や親の口ぐせは、自己観や人生観の土台になります」といいます。つまり、親の口ぐせが子どもの人生を方向づけると言っても過言ではないのです。たとえば、何かにつけて「どうせ無理」「きっとダメだよ」と言ってすぐにあきらめてしまう子は、親自身が後ろ向きなものの見方をしていることが多く、親の口ぐせを無意識のうちに心の中に取り込んでいるそう。とくに、次の2つの思考パターンには注意が必要です。■子どもを自分の思い通りにコントロールしようする「なんでできないの!」「こんなこともできないなんてダメね!」常日頃からこのような言葉を投げかけていると、子どもの自信はみるみるしぼんでいきます。それにより「どうせ何をやってもダメなんだ」と、あきらめ癖がついてしまうのです。■すぐに感情的になるたとえば朝、子どもが準備に手間取っているとします。そこで感情的になって「もう!モタモタしないで!」と思いつくままの言葉をぶつけていませんか?すると子どもは萎縮し、本来ならスムーズにできることもうまくできなくなり、ますます自信が失われてしまいます。私が実施した意識調査でも、子育て中の親のほとんどが、「子どもが思い通りにならない」といってイライラしています。社交的な親は、内気な子にイライラしています。神経質な親は、大ざっぱな子にイライラします。でも、子どもは親とは別人格、親の思うようには動きません。このことをしっかりと頭に刻んでおきましょう。(引用元:PHPファミリー|親がかける言葉で、子どもの人生が変わる)今からでも少しずつ親御さん自身の口ぐせや思考パターンを変えるように心がければ、お子さんの「あきらめ癖」も改善されていくはずです。ポイントは、前向きな言葉を口ぐせにすること。「モタモタしないで急いで!」ではなく、「さあ、もう少し急ごうね。がんばって!」と前向きな言葉をかけてあげるだけで、子どもは「自分はやればできる」と自信を失わずにすむのです。あきらめが早い=切り替えが早い!?枠にとらわれない思考法「リフレーミング」とはここでは少し視点を変えて、「あきらめ癖」について考えてみましょう。教育評論家の親野智可等氏は、わが子の短所ばかりが目につき、つい必要以上に心配したり叱ったりすることに悩む親御さんに向けて、「リフレーミング」という手法をすすめています。たとえば、「新しいおもちゃも、最初のうちは夢中になるけれど、すぐに飽きて見向きもしなくなる」「何かをやり始めたとき、ちょっとでも壁にぶつかると途端にあきらめる」「やる気が持続しない」という傾向があるとします。親からすると「こんな調子で将来大丈夫かしら?」と不安になりますよね。それこそが、一定の枠組み=“フレーム”を通してしかものを見ていない証です。「リフレーミング」とは、そのフレームを外して別の角度から見直すことを意味します。そうすることで、マイナスポイントに思えるものが、一転してプラスの側面を見せてくれるのです。「飽きっぽい」「あきらめが早い」といったマイナス要素を、別の角度から見直してみましょう。すると、「気持ちの切り替えが早い」「多様性を受け入れられる」「楽天的」「自分の気持ちに正直」……などの長所が思い浮かびます。それは将来、仕事に就くうえでも確実にプラスにはたらきます。あきらめ癖があるということは、決して悪いことばかりではないのです。その個性をうまく引き出せば、良い方向へと伸びていく可能性を秘めています。必要以上に心配しないようにしてくださいね。あきらめ癖がある子どもが粘り強くなる3つのコツとはいえ、すぐにあきらめて何ひとつまともに続かないのは困りものですよね。世の中には、続けることでしか手に入れられないものがたくさんあります。簡単に投げ出してはいけないものがあるのだということも、小さいうちから知っておく必要があるでしょう。ここでは、あきらめ癖がついてしまった子どもが「あきらめない心」を手に入れる方法をご紹介します。■クリアできそうな目標を常に用意するがんばればクリアできそうな目標に向かって取り組むと、快感にかかわる脳のドーパミン神経系の働きが最大化すると言われています。もっとも効果があるのは、子どもが50~75%の確率で達成できそうな目標を設定すること。スモールステップをクリアすることを繰り返せば、いつのまにか「やり抜く力」が身につくでしょう。■目標は「肯定的」で「具体的」に!否定語を入れないのがポイントです。「宿題が終わるまでゲームをしない」よりも「ゲームをしたくなったら窓の外を見る」というように、肯定的なフレーズを入れると◎。また「1年生のときよりも勉強をがんばる」では達成感がわかりにくいので、「テストでは毎回80点以上をとる」と具体的な目標を立てましょう。■「成功体験」を積み重ねることを意識する本格的なロジカルシンキングを取り入れた学習塾ロジムの塾長、苅野進先生は、「粘り強さを手に入れるためには、何かを成し遂げた『成功体験』が必要です」と述べます。「あのときうまくいったから、次もうまくできるはず」と思うことでさらに頑張れるというわけです。子どもにとって一番身近な成功体験は、親に褒められること。ただし結果を褒めるのではなく、問題に取り組んだことや、少しずつでも前進していることを褒めてあげましょう。たとえ失敗しても、チャレンジしたことを褒められれば、それが成功体験となります。***親の声かけによって子どもの粘り強さが身につくのなら、どんどん褒めてあげたいですね。「がんばって取り組んでるね!」「さっきより進んでるね!」「失敗したけど、ひとつわかったことが増えたね!」と、ありのままの姿や物事に取り組む姿勢を褒めてあげると、子どもの自信につながりますよ。(参考)洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』, 洋泉社.PHPファミリー|親がかける言葉で、子どもの人生が変わる東洋経済ONLINE |「いい子」「悪い子」すべては”親の決めつけ”だ洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』, 洋泉社.Study Hacker こどもまなび☆ラボ|才能よりも大切な「GRIT」!子どもの“やり抜く力”の育て方~家庭内ルール~
2019年04月20日最近は、施設やイベント面で子どもを意識する美術館が増えてきました。そのため、子どもたちが美術館に行くことへのハードルも、少しずつ下がってきています。とはいえ、訪れる頻度は決して多いとは言えないのが現状。せっかく足を運んだなら、アート作品に触れる貴重な機会を生かして、存分に楽しみ、たくさん学んでほしいですよね。子どもたちのフレッシュな感性を解き放つ鑑賞法があるのをご存知ですか?見方次第でアートがさらに身近に、親子のコミュニケーションにも一役買いそうな美術館の楽しみ方をご紹介します。アート鑑賞が引きだす意外な能力美術館を定期的に訪れる人はアート好きで、作品を目の当たりにすることで感性を磨いています。しかし最近は、それだけではないビジネス面でのメリットも話題に。アート鑑賞がもたらす「創造的思考能力」の発達が、アメリカ・コロンビア大学の調査で証明されたのです。その能力とは、具体的に以下の4つです。・問題解決力:より多くのアイデアや問題解決へのアプローチが考えられる・オリジナリティ:より多くの創造的な問題解決アプローチを生み出せる・進化させる力:問題を解決するプランを作成する際、より詳細なプランを練ることができる・粘り強さ:多様な価値観を受け入れ、早計に判断を下さない。また解決策に対してすぐに満足しない(引用元:Forbes JAPAN|世界のエリートに学ぶ「創造的思考力」の伸ばし方)アートには “正解” がありません。作者の意図があったとしても、受け取り方は人それぞれ自由。そのため、「自分で考える」ことが必要になってきます。さらに、「それを人に伝え、人の意見も聞いて、判断する」というプロセスを経ることで「創造的思考力」のトレーニングになるのです。そして、これらの能力は、将来仕事をする際に、どの業界でも共通して発揮できるもの。子どもたちが幼い頃からアートに慣れ親しむことは、将来的に彼らの大きな力になりえるのです。子どもがアートに目覚めるきっかけは親2013年に行われた株式会社ライフメディアの美術館・美術展に関する調査(対象10~60代男女)によると、「美術館にはほとんど行かない」という人が半数を占め、「1年に1回以上行く」人は約3割でした。そして、「アートを身近に感じるか」の問いに対して「感じない」と答えた人は、なんと6割近くも。忙しくて時間がないこともあるのでしょうが、想像以上に日本人にとって “アートはハードルが高い” というイメージがあるのかもしれません。別の調査では、この1~2年間に子どもと一緒に美術館に「1回以上行った」と答えた人は約4割、「1回も行かなかった」が約6割という結果が(「小学生の親の芸術教育・美術館に対する意識」2007年第一生命調べ)。また、「家庭教育で心がけていること」の中に、「美術館や博物館に連れていく」と答えた人は3割強でした。(文部科学省による平成19年調査)全ての調査において、「美術館に行った」と答えた人は親自身アートに興味がある人が多く、さらに子ども時代に親が美術館に連れていってくれた経験のある人が多く含まれています。つまり、親がアートに対してハードルが低ければ、子どももそうなる傾向があるのは明らかです。子どもがアートに目覚めるきっかけは親が握っているのです。美術館鑑賞のコツは “いい加減に” 見ることなぜ日本人は、アートにハードルの高さを感じてしまうのでしょうか。その原因のひとつとして考えられるのは、鑑賞の仕方に縛られていること。作品を鑑賞する際、頭でっかちになっていませんか?作者、作品の時代背景、作風やテクニックに関する知識などなど……。自分の感性ではなく、情報と知識の目を通して見てしまい、真面目になりすぎて、「楽しむ」という観点がどうしても抜け落ちてしまいがちなのです。美術史家であり岡田美術館館長の小林忠氏は、「美術館はぶらぶら歩きで、いい加減に見るのがコツ!」とおっしゃっています。これ、子どもとの鑑賞にぴったりですね。本当にあなたがお好きなものは作品のほうから呼びかけてくれるから。そうしたら立ち止まって、ゆっくりと細部までていねいに見てほしい。(中略)じっくり見るのは1点か2点でいいんです、って。心に留めて、目に浮かべることができるようになるまでようくご覧になって、できたらミュージアムショップでその作品のがあったら絵葉書1枚でもいいし、カタログでもいいからお持ち帰りになって、と言いました。(引用元:和樂 2019.2-3月号『日本美術は自由だ!』, pp42-43, 小学館.)たくさんの作品を全部真面目に見ていたら疲れてしまう。気に入ったものを集中して見ればそれでいいと。どんな展覧会でも肩の力を抜いて自由に、「自分で見つけて、感じて、考える」、それに慣れたら美術館へのハードルは徐々に低くなっていきそうですね。***次回は、自分が好きな作品を見つけたらどういうふうに見たらいいのかの参考になるMoMA(ニューヨーク近代美術館)発の鑑賞法をご紹介します。(参考)リクナビNEXTジャーナル|必要なのは、自由な発想だけ!MoMA開発「対話型アート鑑賞」で磨ける、ビジネスの役立つスキルとは?第一生命|Report②小学生の親の芸術教育や美術館に対する意識 研究開発室 的場康子文部科学省|子どもの育ちをめぐる現状等に関するデータ集マイナビウーマン|1年に1回以上、美術館・美術展に行く人は32%—ライフメディア調べForbes JAPAN|世界のエリートに学ぶ「創造的思考力」の伸ばし方和樂 2019.2-3月号 『日本美術は自由だ!』, pp42-43. 小学館.岡崎大輔著(2018), 『なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?』, SBクリエイティブ.フィリップ・ヤノウィン著/京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センター訳(2015), 『どこからそう思う?学力をのばす美術鑑賞 ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ』, 淡交社.
2019年04月19日やる気が出る要因には、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の2種類があることを知っていますか?子どものやる気を引き出し、それを継続させるためには、内発的動機づけを高めることが重要です。親はつい「早く〇〇しなさい!」と言ってしまいがちですが、そもそも親の言うとおりに行動したからといって、そこに「やる気」はありません。どうやら、子どものやる気スイッチを押すには、ちょっとしたコツが必要なようです。今回は、内発的動機づけの仕組みや、内発的動機づけを高めるための言葉かけについてご紹介します。「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の違いまず、内発的動機づけと外発的動機づけの違いから見ていきましょう。【内発的動機づけ】自分自身でやる気を引き出して物事に取り組んだり、その行為自体を楽しんだりすることです。たとえば、「ピアノを弾くのが好きだから、毎日欠かさず弾いている」「計算問題を解いていくときの達成感が好きで、算数の授業になるとつい張り切ってしまう」など。物事の結果よりも行為や過程を重視し、その意味を自分なりに見出していることが特徴です。内発的動機づけは、簡単にいえば「それが好きだから、おもしろいからやっている」という状態なので、意識せずとも高いモチベーションを維持することが可能といえます。【外発的動機づけ】内発的動機づけとは違って、賞罰や第三者といった自分以外の何かによってやる気が引き出されることです。具体的には「給料がもらえるから仕事をする」「親や先生に褒められるために勉強をする」など。親が子どもに対してやりがちな「お手伝いをしてくれたらご褒美をあげる」「テストで〇点をとったら欲しかったものを買ってあげる」というのも外発的動機づけに該当します。外発的動機づけもやる気を引き出す方法として有効ではありますが、結局のところ「誰か(何か)にやらされている」状態です。そのため、外発的動機づけばかりに頼ってしまうと、ご褒美がないとお手伝いをしなかったり、テストで高得点をとって欲しいものを買ってもらうためにカンニングをしてしまったりする可能性もあります。子どもの「やる気」は成績に影響する子どもの内発的動機づけは、自分自身でやる気を引き出せるようになることから、学校での成績にも大きく影響するといわれています。ベネッセ教育総合研究所の「小中学生の学びに関する調査報告書(2015)『研究レポート2自律的な理由で勉強することが適応的である』」の中には、このような報告があります。小学生、中学生ともに、「内発的動機づけ」が高く「外的動機づけ」が低い自律的動機づけタイプの子どもが、学校での成績が最もよいという結果が得られました。自律的動機づけタイプの子どもは、“楽しいから勉強する”といった内発的動機づけに基づいて勉強しており、外的な報酬や罰は必要なく、そこから得られる達成感や充足感が報酬となるため、自発的に、そして積極的に学習に従事し、しかも継続的に取り組むことができるのだと考えられます。その結果、望ましい成績につながるものと考えられます。(引用元:ベネッセ教育総合研究所|研究レポート2自律的な理由で勉強することが適応的である)また、内発的動機づけから自分の好きなことに取り組むことができれば、子どもの得意分野や特技を見つけることにもつながります。親がそれを伸ばせる環境を整えてあげることで、やがて子どもが自分に自信を持てるようになったり、特技を生かした将来の職業選択を意識するようになったりするでしょう。実際のところ、大人の場合は「家族を養うために、仕事が嫌でも毎日出勤しなければならない」など、外発的動機づけによる行動がルーティンになってしまうこともあります。しかし、子どものうちに内発的動機づけがスムーズにできるようになっておけば、外的要因に左右されることなく、どんな状況でも自分自身のやる気を引き出せるようになるのです。子どもの内発的動機づけを高める3つの声かけ前述したように、内発的動機づけには結果ではなく過程を重要視するという特徴があります。結果はその日の体調や運、競争相手に左右されることもありますが、過程は子どもが実際に行なってきたことであり、着実に能力として身についていきます。子どもが本当に親に見てほしいのは、この「過程」なのです。そのため、親が子どもの内発的動機づけを高めるためには、以下のような声がけを意識しましょう。■「○○ができてすごいね」内発的動機づけを高めるためには「結果ではなく、それまでの過程をこなせたこと=子どもの能力」を褒めることが大切です。例えば、テストで100点がとれたときは「100点をとれるなんて、すごいね」と声をかけるよりも「問題を正確に、しかも完璧に解けるなんて、すごいね」などの声がけをしましょう。■「成長したね」自分の成長を実感でき、喜べるようになることは、内発的動機づけを高めるのに有効です。たとえ結果が出なくても「この前よりはうまくなったね」「すごく成長したね」と声をかけてあげましょう。すると、子どもは「自分がやってきたことは良いことで、前向きに捉えるべきことなんだ」と認識し、より自分のやる気を引き出せるようになります。■「楽しんでみよう」結果にこだわらず、物事を楽しむという経験は、内発的動機づけにつながります。特に、子どもが新しいことに挑戦したり、苦手なことに取り組もうとしていたりするときには、「まずは楽しんでみればいいんだよ!」と声をかけ、不安な気持ちを取り除いてあげましょう。***子どものうちに内発的動機づけを高めることは、学校での成績や将来設計にも大きく影響します。勉強やお手伝いをさせたいときには、子どもをついつい「物で釣ってしまう」こともありますが、まずは普段の声かけを工夫することで内発的動機づけを高めてみましょう。文/田口るい(参考)PRESIDENT Online|アドラー心理学で解明「やる気」の出し方ベネッセ教育総合研究所|自律的な理由で勉強することが適応的であるホウドウキョク|子どもの“やる気”はどう作る? 自主性を引き出すための“声かけ&質問”を学ぼうPRESIDENT Online|子供が見違える「短い声かけフレーズ10」
2019年04月19日この連載のタイトルは「ものがたりが開く世界への扉」ですが、ちょっと目を上に向けていただけるとサブタイトルが見えるかと思います。「子どものための英文学」となっていますね。一番最初の記事ではこんな風に書きました。実は「英文学」というくくりには数多くの問題があるのですが、とりあえず、今の段階では「英語で書かれた」「主にイギリスの」文学、としておきましょう。堅苦しく考えることはなく、ピーター・ラビットも、不思議の国のアリスも、ハリー・ポッターも英文学の世界の住人です。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|英語をただ学ぶだけでは身につかない?英文学から得られる文化的な読解力「文化リテラシー」)ここで言っている「数多くの問題」について、今日は「英」の部分を取り上げて、少しだけ考えてみましょう。お父さんとお母さんが気付いているかどうかで、物語を読んだ後の子供への声がけが変わってくるでしょうし、そもそもどんな本を子供と読むべきかという判断も変わってくるだろうと思うからです。「国」と「言葉」と「物語」は一直線ではつながらない?「英文学」の「英」とは、「英語」なのでしょうか、「英国」なのでしょうか?さらにいえば、「英国」はいつの時代のことをさしているのでしょう?かつて大きな帝国を持っていたイギリスの国境は、時代によって大きく動きます。そのうちの、どの国境が「英文学」について話をする時に適用されるのでしょう?今年2月に公開されたディズニー映画『メリー・ポピンズリターンズ』を親子で観に行ったという方もいるかもしれません。その原作となった、古典的な児童文学の名作『メアリー・ポピンズ』を例にあげてみましょう。ロンドンを舞台にした、とてもチャーミングで人気のある物語です。けれども、原作の作者のP.L. トラヴァースは、オーストラリア生まれです。子供時代をオーストラリアで過ごし、大人になってからイギリスに移住しました。イギリス生まれの父親を持ち、オーストラリアとイギリスの二重国籍者です。さて、『メアリーポピンズ』は英文学でしょうか、それとも、オーストラリア文学でしょうか?英語話者=50数ヶ国語話者!?○ヶ国語という表現の落とし穴「英文学」という言葉の中には、「国」や「言葉」や「文学」に関わる概念が複雑に入り混じっています。この国と言葉と物語の関係性について、子供達にできるだけ柔らかい態度を持っていてもらいたいのです。多くの日本の人は、なんとなく漠然と「言葉」と「国籍」と「住んでいる国」がきれいな形で繋がっていると思っています。けれども実際は、言語と国籍と居住国は、必ずしも一致するとは限りません。日本語が使える外国人は数多くいますし、日本語しか使えない外国籍の人も数多くいます。私も含め、日本の外に住んでいる日本人も少なくありません。生まれた時の国籍と、大人になった時の国籍が異なる場合だってあるでしょう。英語という言語は一つですが、英語を公用語とする国は現在50を超えるはずです。つまり、英語と日本語を話す私は基本的には2言語話者ですが、屁理屈を言えば50数ヶ国語話者でもあるのです。「○ヶ国語」のように、「国」と「言葉」を一本の線で結びつけて言語や社会を理解しようとすることに、そもそも無理があるのかもしれません。「単なる日本語の表現の問題じゃないの?」と思われるかもしれませんね。確かに、「2言語」というのか「2ヶ国語」というのかは、とてもささいなことです。けれど、国や言葉、文化について考えていく、とても身近なきっかけでもあります。それを潰して欲しくはないなあ、とも思うのです。言葉と文化と国の関係に柔軟な姿勢を、幼少期から育むためにこれから先、子供達が暮らしていくであろう世界は、必ずしも国と言葉と文化や文学が一本の線で単純につながっていくような世界ではないだろうと予想がつきます。「イギリスに住むイギリス人が、母語である英語を使ってイギリス人の心を描いたのが英文学」と単純にくくることができないように、「日本に住む日本人が、母語である日本語を使って日本人の心を描いたのが日本文学」と言うことが適切でない世界に、子供達は育っていくでしょう。細かいことを言えば、これからの子供達がそういう世界に育っていくのではなく、もともと世界はそういうもので、今まで私たちの多くが気づかなかっただけなのかもしれませんね。「英文学」「英語の物語」という言葉を聞いた時に、「イギリスの」あるいは「アメリカの」物語だけを思い浮かべるのではなく、もう少し、広い世界を想定できること。そして、「国、言葉、文学(文化)」が一直線で繋がらない、という、シンプルだけれどとても重要なことを理解していること。言葉と文化と国の関係に柔軟であることは、やがて子供達が、自分の暮らす社会や、もっと広い世界を理解しようとする時に、手助けになるだろうと思うのです。英語の物語の世界の広がりを味わえる絵本様々な歴史のせいで、世界のあちらこちらで使われている英語は、国と言葉と文化は多元的・流動的だという実感を育むために、良い下地を作ってくれるのではないかと思います。英語で書かれた物語の世界の広がりを感じさせる作品を、いくつかご紹介しましょう。まずはオーストラリアの子供だったら、誰でも必ず読んだ事のある絵本、Possum Magic(『ポッサムの魔法』本邦未訳)。オーストラリアの記念硬貨にモチーフが使われたことがあるくらい、よく知られた作品です。ポッサムはオーストラリアの動物です。日本の方にはあまり馴染みがないかもしれませんね。おばあちゃんポッサムが魔法を使って孫娘を透明にするのですが、元に戻すことができなくなってしまいます。孫娘をもう一度見えるようにするために「人間の食べ物」を食べるのです。オーストラリアの動物たちとオーストラリアの名物料理がたくさん並ぶ、楽しいお話です。数多くの読み聞かせ動画もあります。台湾系アメリカ人作家によるA Big Mooncake for Little Star(『小さなお星さまの大きな月餅』本邦未訳)も可愛らしい物語です。舞台は空。お母さんが作った大きな月餅を、本当は食べちゃいけないのに、食べてしまいたい小さなお星さま。月餅は、台湾では重要な民俗行事、中秋節(旧暦8月15日)に、お月見をしながら食べるもの。なんとも微笑ましいお話です。中国やアフリカの赤ずきんちゃん!?日本語訳もある絵本中国生まれの作家、エド・ヤングによる『ロンポポ——オオカミと三人のむすめ』は、中国に伝わる民話を元に、英語で書かれたお話です。1990年、アメリカで出版されたもっとも優れた児童文学に授与されるコールデコット賞を受賞しました。英語版では「中国の赤ずきん」という副題で愛されています。南アフリカの作家ニキ・ダリーによる『かわいいサルマ』。こちらの副題は「アフリカのあかずきんちゃん」。原色の挿絵が美しいだけでなく、街角の様子も楽しいのです。英語の読み聞かせもネット上で見つけることができます。文化や言葉は国境を超えていきます。最初から難しいことを子供に説明する必要はありません。世界のあちらこちらで描かれている物語を楽しみながら、いずれ、大きくなってきたときに、ほんの少し、言葉と文化と物語の関係を考えてもらえるといいな、と思うのです。英語で書かれた物語の中には、世界の様々な地域へと扉を開いていくものが確実にあるからです。(参考)映画.com|メリー・ポピンズリターンズMem Fox, Possum Magic, (LindfieldL Scholastic Australia, 2018., 初版1983)Grace Lin, A Big Mooncake for Little Star (New York: Little, Brown and co., 2018)エド・ヤング『ロンポポ——オオカミと三人のむすめ』(古今社、1999年)ニキ・ダリー『かわいいサルマ——アフリカのあかずきんちゃん』(光村教育図書、2007年)
2019年04月18日子どもの成長のためには、充分な睡眠と規則正しい生活習慣が必要です。子どもに質の良い睡眠を取らせるには、どんな工夫をしたら良いのでしょうか。早寝早起きの工夫やヒントを、睡眠の専門家である明治薬科大学の駒田陽子先生にお聞きしました。構成・編集/木原昌子(ハイキックス)取材・文/田中祥子写真/児玉大輔(インタビューカットのみ)朝と夜の明るさのメリハリを味方に睡眠習慣をつくる眠りは長さと質とリズムを考えることが大切です。人間は昼に活動して夜は寝る昼行性の動物なので、体の中に備わっている体内時計をそれに合わせて整えなければいけません。生まれたばかりの子どもは、寝たり起きたりを数時間ごとに繰り返します。日中に寝ているときは明るいままにして、夜に起きたときにはあまり明るくしないであげましょう。昼夜で明るさのメリハリをつけることによって、子どもの体内時計のリズムがはっきりとしてきます。体内時計は24時間より少し長い周期になっています。そのため、私たちは夜更かしと朝寝坊をしやすいのです。ずれた時計を前倒しして毎日を24時間に合わせるには、午前中に光の信号を目から入れて脳に知らせることが必要です。子どもは昼間は太陽の下でたくさん動くことによって光を浴びることができます。“昼間の活動が多い” “光が明るい” という2つの条件が整うと体内時計がきちんと作動し、夜ぐっすり眠る体を作ってくれます。寝る前のテレビやゲームは睡眠を阻害する眠りを促す「メラトニン」という物質は周辺が暗くなると分泌され始めるので、夕方以降は部屋の照明の明るさを少し落とし気味にすると良いでしょう(インタビュー第3回参照)。ブルーライトはメラトニンの分泌を抑制する作用があるので、オレンジ色の白熱灯色の光の間接照明やダウンライトなどの利用をおすすめします。テレビやスマートフォンのディスプレイにも注意が必要です。電子機器を使うことで頭も興奮してしまうので、寝つきが悪くなってしまいます。気持ちを落ち着かせるような雰囲気で過ごさせることも大切ですね。そして、朝すっきりと起きるにはコツがあります。先ほどもお話しましたが、体内時計は光の信号で調整されるので、朝はカーテンを開けて部屋を明るくして、起きる時間だと体に知らせてあげると良いでしょう。それから、「コルチゾール」というホルモンには、血糖値と血圧を上げて起床の準備をする働きがあります。興味深いことに、起床時間を意識することでもコルチゾールの分泌を調整することができるのです。ある実験で、寝る前に「朝9時まで寝てもいい」と「6時に起こします」と言った場合とを比べてみると、6時に起こすと伝えた条件では朝5~6時にコルチゾールが多く分泌されたのに対して、9時まで寝ていいと伝えた条件では朝5~6時のコルチゾール分泌は少ないものでした。つまり、起きる時間を意識することで、寝ている間でも体の中で起きるための準備が始まるのです。夜寝る前に「明日は7時に起きようね」と声を掛けてあげることも大切なのかもしれません。また、朝から活動できる体をつくるためには、朝食も大切です。体内時計の中心は脳の中にありますが、体のあらゆる細胞も体内時計を持っています。内蔵の時計はきちんと食事を取ることで作動するのですよ。朝食を英語では “breakfast” といいますが、これは “fast(断食)” を “break(破る)” ことを意味する言葉です。朝食が7時、昼食が12時、夕食が夜7時とすると、寝ている間が1日で一番長い食べない時間(断食)になり、朝食が “breakfast” になります。この断食を破ることが、体内時計の朝のスイッチになっているのです。もし朝食を食べないで昼食、夕食、夜食を食べたとすると、昼食が “breakfast” になり、内臓の体内時計がずれてしまいます。週末はゆっくり起きて朝食と昼食を合わせてブランチを取るというご家庭もあるかもしれませんが、朝食は毎日決められた時間に摂ることが大切なのです。週末にのんびりすると「ソーシャルジェットラグ」に!ソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)という言葉をご存じでしょうか。週末にいつもよりゆっくり起きたり、夜更かしをしたりすることで、海外旅行で長距離の飛行機に乗ったときと同じような時差ボケ状態を作り出してしまうことを指します。ソーシャルジェットラグになると、体内リズムが乱れます。その影響は翌週の前半まで及び、日中のパフォーマンスを低下させてしまうのです。また、子どもの日中の活動機能や学業成績にも、ソーシャルジェットラグは影響します。日本の幼稚園・保育園児を対象とした研究では、朝型の子どもに比べて夜型の子どもはソーシャルジェットラグが大きい傾向にあり、多動傾向があるほか、仲間関係にも悪影響があることがわかっています。さらに、子どものゴールデンウィークや夏休みなどの長期休暇の生活習慣の乱れは深刻な影響を与えます。不登校の児童が休み始めた時期は7~9月が最も多く、夏休み明けの睡眠専門クリニックは小中学生が多く相談にきます。多くの子は学校が始まれば元通りに起きられるようになりますが、夏休みの習慣がなかなか解消できずに起きられなくなってしまうこともあります。ソーシャルジェットラグを起さないためには、休みの間も規則正しく過ごすことが大切です。大人が率先して睡眠時間確保することから始めましょう米国睡眠財団は、子どもに規則正しい睡眠生活習慣を身につけさせるには、それを妨げるような習慣(夜の光、うるさい音楽など)は親がきちんと禁止すべきだとしています。さらに、大人が手本になるように、生活の中で睡眠の優先順位を上げてよい睡眠を実行することを説いています。日本では、30~40代の女性が他の年代の女性や男性に比べて睡眠時間が少なくなっています。子育てに加えて仕事や家事、介護の負担による影響が大きいのでしょう。大人でも、寝るということは体の土台となるものなので、睡眠時間を何とか確保してもらいたいと思っています。親御さんは、お子さんを寝かしつけるときに少し寝てしまって、また起き出して残りの家事を片付けることもあるかと思いますが、ばらばらに分断された睡眠はかえって辛いものです。思い切ってお子さんと一緒に早く寝て、朝早く起きた方が、まとまった睡眠時間が確保できて良いかもしれません。子どもに大切な「成長ホルモン」は、大人にとっては肌など全身の細胞のメンテナンスに必要なものです。睡眠不足になると太りやすいのは大人も同じ(インタビュー第2回参照)。忙しい大人も子どもも睡眠は大切です。家族一緒になって睡眠を確保するように心掛けてください。***現代の子どもたちは幼児期から忙しいスケジュールで行動し、結果的に睡眠が削られるケースが多く見られます。でも睡眠を軽視することは、後々の体や心の発達に負債を抱えさせてしまいます。正しい睡眠習慣でたっぷり寝かせることが、子どもが成長するための一番の課題なのです。■ 明治薬科大学准教授・駒田陽子先生 インタビュー一覧第1回:“世界一寝不足”な日本の子ども。「11時間37分」が示す、眠りにまつわる切実な問題第2回:寝るのが遅いと自己肯定感が下がる。デメリットだらけの「子どもの睡眠不足」第3回:「昼寝のせいで夜なかなか寝ない」問題の解消法。朝のグズグズ防止にも効果大!第4回:「起きる時間」を意識させるだけ!子どもの早起きを楽にするちょっとしたコツ【プロフィール】駒田陽子(こまだ・ようこ)明治薬科大学 リベラルアーツ准教授。早稲田大学にて博士号(人間科学)取得。日本学術振興会特別研究員、国立精神・神経医療研究センター特別研究員、東京医科大学睡眠学講座准教授を経て現職。日本睡眠学会、日本時間生物学会の評議員を務める。睡眠が心身の健康に及ぼす影響の研究に従事。
2019年04月17日先日、障害のある方とお花見に行きました。いつもバスや自転車で行く公園です。目的は公園でお花見をすること。その時は公園に着くまでに普段の何倍も時間がかかりました。では私は損をしたのでしょうか?答えはいいえ!まったく!です。このお花見を開催するにあたっての苦労話を聞いたり、道ばたに咲いている花の話をしたり、子どもや奥さんがご自分の障害をどう話すかという話を聞いたり。普段の速度ではとてもできないことを経験しました。電子辞書と比較して紙の辞書の利点を考えたとき、これと同じだと思いました。急ぐときは急げ。最短距離を最速の移動手段で。でも初めての道は、お子さんと一緒に歩いてみましょうか。国語辞典は子どもに選ばせよう!こんにちは。ゆか先生です。連載第1回は「国語辞典でこの時代を生きぬくための基本動作が身につく」という仰々しいテーマでした。これはけして大げさなことではなく、調べ学習にしろ、アクティブラーニングの資料作りにしろ、「分からないことをそのままにしない」という姿勢が大切だということ、そして、辞書を引くという動作が、あらゆる検索や調査の基本動作となるのだというお話をしました。お子さんに辞書を買ってあげたい!そんな気持ちになったと思います。今日は、さっそく国語辞典を選んでみましょう。あ、選ぶのはお子さんですよー。なぜ子どもが選ぶの?国語辞典にしろ何にしろ、命に関わらないことは本人が選んだ方が断然良いです。それは、主体性を持つこと、責任を人になすりつけないことという基本的な考え方につながります。親が選んだ本には、自分に不利な状況になった場合の逃げ場があります。「ぼくが選んだんじゃないもん」ということです。辞書のことを「これは僕の選んだ本なんだよ」と言えたら素敵ですよね。進学の記念にお孫さんに辞書を贈るおじいちゃん、おばあちゃんがいますが、そのような申し出があった場合は、ぜひ、お孫さんと一緒に本屋に行ってもらいましょう。おじいちゃん、おばあちゃんもその方がうれしいに決まっています。一人に一冊兄弟がいる場合、お兄ちゃんやお姉ちゃんのお下がりでいいですか?という質問をよく受けます。国語辞典は2,000円前後です。小学校生活全般に渡り付き合う割にこんなに安い本はないのでは?と思います。また、下のお子さんほど、お下がりでない場合は喜ぶはずです。付箋を貼ったり、一度引いた言葉に線を引いたりする方法を後日書きますが、そういう自分独自の方法で辞書と付き合うためにも、一人一冊が理想です。初めての国語辞典はぜひ、本人だけのものを用意してあげてください。電子辞書ってどうよ私の国語塾の教材で「紙の国語辞典と電子辞書との違いを書いてみよう」というものがあります。2年生の教材です。対比した文を書くための教材ですが、辞典についての理解を深める役目も果たしています。それによると、主な違いは次のようなものです。1. 紙の国語辞典は重いが、電子辞書は軽い。2. 紙の国語辞典は持ち運びにくいが、電子辞書は持ち運びやすい。3. 紙の国語辞典は調べるのが遅いけれど、電子辞書は早い。4. 紙の国語辞典は、調べるのが面倒だが、電子辞書は、簡単に調べられる。5. 紙の国語辞典は1ページにたくさん他の言葉が見られるが、電子辞書は一度にたくさん見られない。他に、音がするしない、電池を使う使わない、電気屋で売っている売っていないというのも毎年出てきますがここでは割愛。1~4までは、紙の辞典が負けで、5は勝ちといったところでしょうか。ちなみに、私が選んだ、今までの最高傑作は・紙の国語辞典は、言葉をひくものだが、電子辞書は、言葉をおすものだ。です。辞書が大好きなお子さんです。言葉選びが秀逸ですね。閑話休題。結局、紙の辞書は、重くて持ち運びが大変だし、調べるのが遅いし面倒といった印象が多いようです。ですから「利便性」だけを問うのであれば、断然電子辞書の勝ちですね。「早く意味が分かりさえすれば良い」という考えは大人の場合と一緒です。確かに、辞書を引くのは、何かを調べる一手段でしかない、さっさと意味を調べて本来したかった作業に戻りたいというような大人の場合は、電子辞書でいいわけです。今は電子辞書よりも、GoogleやYahoo!などのインターネット検索の方が断然多いと思いますが。ただ、初めて言葉に出会う小学生にとってはどうでしょうか。私は5の「紙の国語辞典は1ページにたくさん他の言葉が見られるが、電子辞書は一度にたくさん見られない。」が紙の辞書の大きなポイントだと思います。1~4の利便性を束ねても、5のメリットにはかなわないと思うのです。そして、現在小学生用に売られている国語辞典はそのことを十分承知して開発されています。電子辞書に触れるのは、年齢から考えても、もう少し後が適しています。まずは紙の辞書で言葉を調べる方法を学びましょう。そして寄り道も楽しみましょう。わざと言葉の海に航海させるのです。また、インターネット検索と違い、関係のない寄り道、ネットサーフィンの機会がないことが、紙の辞書の最大の特徴かもしれません。国語辞典は小さな百科事典のようなもの先日、国語辞典の調査に大型書店に出向いた際、小学2年生くらいの男の子がずっと国語辞典を「読んで」いました。彼の目の動きを見てみると、どうやら、コラムを拾い読みしているようです。国語辞典のコラムには、各社、それぞれの工夫が凝らしてあります。面白い言葉の知識を、写真やイラストを使って説明をしたり、時にはキャラクターが登場して解説したりしています。何かを調べたついでに、しばらくそのページに没頭する。これは無駄でも何でもない珠玉の時間です。電子辞書では、現段階ではなかなかそれができません。また、最近の国語辞典は、漢字辞典の機能を兼ね備えているものも多くあります。さらに、慣用句やことわざ、四字熟語なども載っていますし、動植物を引くと写真が載っている時もあります。国語辞典は小さな百科事典のようなものなのです。そうだ、本屋に行こう!国語辞典は、競争が激しい世界なので、各社それなりに工夫をしています。そして、書店で平積みされているような国語辞典であれば、あとで後悔するようなものはありません。あとは、相性です。それは親と国語辞典の相性ではなく、あくまでも使用する本人と辞書の相性です。何年も使うものですから、ぜひ、一緒に書店に出向き、本人に選ばせてみましょう。国語辞典の選び方:7つのチェックポイント1. コンパクト版やワイド版がある!学校によっては、学校に持って行かなければならないことがあるようです。しかし、だいたいの学校では3年生までは使わないはずですので、見やすい大きいもので良いでしょう。でも、学校と家を辞書を持って往復するようであれば、コンパクト版も視野にいれましょう。また、大きい方をワイド版としている出版社もあります。いずれも、内容は同じです。2. バージョンが色々ある!こちらも最近の辞書の特徴ですが、キャラクターものや、カラーバリエーションのあるものが。中身まで凝っているものもありますので、よく見てみましょう。モチベーションがアップします。ただし「子どもっぽい」とそういうものを嫌うお子さんもいます。本人に選ばせることですね。3. 実際に引いてみる重さ、大きさ、紙の厚さ、字のフォントや大きさは、辞書によって微妙に違います。新1年生はひらがなが読めると思いますので、ためしに中にある文字を読んでみると良いでしょう。4. 総ルビはマスト!総ルビというのは、全ての漢字にルビが振ってある状態のことです。これは基本中の基本です。中を見て必ずチェックしましょう5. イラスト・写真は多ければいい?イラストの量は好みです。地味な2色刷の方が落ち着くという子もいます。本人に判断させましょう。6. 漢字は学習学年の引っ越し中!今(2019年)は、新年度要項に移行措置中です。2018年から4年生以上の漢字の学習学年に大きな変更があります。低学年の子の場合は、新年度要項に対応したものか、移行措置一覧表が付録でついている辞書を選ぶと良いでしょう。7. 帯をチェック!帯に、各社のセールスポイントが書いてあります。親が「なるほど!」と思ったポイントは中を見て確かめてみると良いでしょう。お子さんに説明しても良いのですが、どの辞書もそれぞれ工夫をしていますので、びっくりするような差はあまりありません。本当に本人との相性が大事です。全9社の24冊。幼児・小学生向け国語辞典、ゆか先生のおすすめポイントまずはお子さんと書店に出向き、実際に国語辞典を開いて中を見てみましょう。全ての国語辞典をチェックする必要はありません。1冊目で「これがいい!」とお子さんが言ったら、もうそれでいいのです。「こっちの方がいいんじゃない?」と親が他の辞書を差し出す時ほど、子どものやる気を一気になくす瞬間はありません。たまにそういう親御さんを書店で見かけますが、「そんなに、あなたが気に入ったのなら、ご自分用に買えば良いのでは?」とアドバイスしたくなる私です(笑)怪我をするわけでもありません。お子さんを信じて、選ばせてあげましょう! 「これがいいのね?よし!買ってあげるわ!」気持ちよく言えると良いですね。私が把握している全24冊を紹介します。こんなにあるんだ~とちょっと尻込みしますね。東京の大型書店ではほぼそろうと思いますが、地方では少し難しいかもしれません。それでも、できるだけ大きな書店に出向いてみてください。児童書でも参考書でも絵本でも、大型書店の方が選択の幅が断然広がります。以下に、著者・編集者情報、収録語数、おすすめポイントなどを挙げました。基本的にお子さんが好きな物を選べばOKですが、どうしても迷ったらTwitterで質問をリプしてください。国語に関する質問については、授業中でない限り、全てお答えしています。(※以下、出版社五十音順に紹介します)1. 旺文社『旺文社小学国語新辞典』■ 監修者:宮腰賢(国語教育学者。東京学芸大学名誉教授)■ 収録語数:31,000語■ ラインナップ:― 通常版― ワイド版【ゆか先生から】反対語、類義語などの関連語が豊富に載っています。また、約1,000語の英単語を収録していることも特徴です。伝統的な言語文化を大切にしている印象があります。「国語辞典の使い方」という付録もありますので、そちらも重宝すると思います。★出版社のページでセールスポイントをチェック!2. 学研『新レインボー小学国語辞典』■ 監修者:金田一春彦、金田一秀穂金田一春彦:言語学者、国語学者、文学博士。父は、言語学者の金田一京助氏。金田一秀穂:言語学者。杏林大学外国語学部教授、政策研究大学院大学客員教授。父は、金田一春彦氏。■ 収録語数:37,200語■ ラインナップ:― ワイド版― 小型版― ミッキー&ミニー版【ゆか先生から】収録語数が小学生向けでは一番多い辞書です。金田一春彦、秀穂氏の親子が監修をしていることでも有名です。幼児でも調べられるようにというコンセプトで作られており、文字が大きく読みやすいですし、イラストや写真も豊富です。収録語数が多い分、ちょっと重たいかもしれません。でも、辞書は置いて引くものですから、それほど作業自体に影響は与えないと思います。持ち歩く場合は少し考慮した方が良いかもしれません。後半、漢字辞典のようになっています。資料として、百人一首や、文法、アルファベット、ローマ字なども載っています。ミッキー&ミニー版もありますが、彼ら、中にはあまりいません。ぜひ、手に取って見てみてください。★出版社のページでセールスポイントをチェック!◎幼児向け辞書もあり学研プラスから、幼児から使える女の子向けの辞書も出ています。低学年くらいまで使えます。女の子に人気のブランド、mezzo piano(メゾピアノ)とコラボした華やかなデザインです。こちらも、金田一秀穂先生監修なので、内容に関しては安心ですね。ミッキー&ミニーのバージョンもあります。―『はじめて国語辞典 (メゾピアノ辞典コレクション)』―『新レインボー はじめて国語辞典 ミッキー&ミニー版』3. くもん出版『6歳になったらくもんの辞書引きれんしゅうシールブック』■ 監修者:深谷圭助(教育者、教育学者、博士。中部大学現代教育学部教授。「辞書引き学習法」の提唱者。非営利活動法人こども・ことば研究所理事)■ 商品紹介【ゆか先生から】公文は、幼児向けに、専用の辞書を出しています。辞書引き学習法を提唱している深谷先生の監修で、国語辞典の引き方を親子で楽しめるものです。言葉や意味、挿絵が付録シールでついているので、それを該当箇所に貼っていきます。国語辞典とはこういうものだということがよく分かります。入門編として素晴らしいと思います。★出版社のページでセールスポイントをチェック!4. 講談社『学習新国語辞典』■ 監修者:馬淵和夫(国語学者。筑波大学・東京成徳短期大学名誉教授)■ 編集者:藤井圀彦、金子守、寺井正憲藤井圀彦:国語教育学者、俳人。元東京教育大学附属小学校教諭、筑波大学講師、筑波大学附属小学校教諭、文教大学教育学部講師、初等教育研究会理事長。日本国語教育学会常任理事。金子守:ゲーム理論家・経済学者。理学博士。早稲田大学教授。寺井正憲:元文教大学講師、筑波大学附属小学校教諭。千葉大学教育学部教授。平成20年小学校学習指導要領解説国語編作成協力者。■ 収録語数:35,000語■ ラインナップ:― 通常版【ゆか先生から】筑波大学附属小学校の現役・OBの先生たちが作った、まさに小学生のための辞書です。「人名辞典」に「日本人ノーベル賞受賞者」一覧があるのも面白いですね。新学習指導要領に合わせて、古典の学習を助ける付録があるのもポイントです。★出版社のページでセールスポイントをチェック!5. 三省堂『三省堂 例解小学国語辞典』■ 編集者:田近洵一(国語教育学者、東京学芸大学名誉教授)■ 収録語数:35,500語■ ラインナップ:― 通常版― ワイド版― どうぶつケース版【ゆか先生から】定番の辞書ですね。同訓異字も説明が丁寧。これは重要で、同じ読みでも、どの漢字を選んだら良いのか分かるということです。キャラクターが付いていると恥ずかしいと思ってしまうような高学年でも使える落ち着いたデザインも長所。ワイド版、どうぶつケース版ともに中身は一緒なので、持ち歩くなら標準版、家に置いて見やすいならワイド版、動物が好きで、それでモチベーションが上がるならどうぶつケース版という選び方でもいいかもしれません。★出版社のページでセールスポイントをチェック!この辞書には、広島カープ版、阪神タイガース版もあり、「それがあるならそれに決まり!」という子どもには良いと思います。ただし、高学年以上向け。―『三省堂国語辞典 第七版 広島東洋カープ仕様』―『三省堂国語辞典 第七版 阪神タイガース仕様』6. 小学館『例解学習国語辞典』■ 編集者:金田一京助、深谷圭助(編集代表)金田一京助:言語学者、民俗学者。日本のアイヌ語研究の本格的創始者。國學院大學教授を経て東京帝国大学教授、國學院大學名誉教授。日本学士院会員。日本言語学会会長。東京帝国大学より文学博士。■ 収録語数:36,500語■ ラインナップ:― 通常版― オールカラー版― ドラえもん版【ゆか先生から】辞書引き学習法の深谷先生が編集代表です。付箋紙を貼ったときに、付箋紙で必要な文字が隠れないような工夫をしてあります。先生が選んだ7,700の新しい言葉が入っています。見出し語がゴシック体なので、文字を探しやすいです。そして何より、ドラえもん版が強いですね。カラフルで楽しい印象です。ドラえもんが好きなお子さんはこれで良いと思います。低学年のうちは、ドラえもんでモチベーションを上げておき、高学年になった時に恥ずかしがるようだったら、中学生用のものを早めに与えても良いでしょう。ただ、ドラえもんのイラストはそれほど多くありません。その辺も中身を見てチェックしましょう。漢字辞典としても使えます。★出版社のページでセールスポイントをチェック!◎幼児向け辞書もあり小学館は幼児向けにも辞書を出しています。小学校低学年くらいまで使えます。ことばあそびが充実していますし、書き込めるコーナーもあり、とても楽しい、辞書が好きになる工夫がいっぱいです。こちらの方は中身もドラえもんがいっぱいです。―『ドラえもん はじめての国語辞典』7. 文英堂『小学国語辞典』■ 編集者:時枝誠記(国語学者。文学博士)■ 収録語数:30,000語■ ラインナップ:― 通常版― ワイド版【ゆか先生から】間違った読みも見出しに立てていることが特徴です。正しい項目へ導いてくれます。大人の辞書には時々見かけるしくみですね。漢字学習もできるようになっていて、画数・部首・読み・筆順なども調べられます。コラムも充実しています。「辞書引き練習帳」「たのしい英語・常用漢字一覧表ポスター」「辞書引きふせん」が付録に付いています。★出版社のページでセールスポイントをチェック!8. ベネッセ『チャレンジ小学国語辞典』■ 監修者:湊吉正(国語教育学者、筑波大学名誉教授)■ 収録語数:35,100語■ ラインナップ:― カラー版― カラー・コンパクト版― ぐんぐんパック(辞書引きアイテム付き)【ゆか先生から】女の子大注目です。コンパクト版の表紙は、通常カラーの他に、スイートピンク、クールパープルの展開。中身は一緒ですが、装丁がとても綺麗です。表紙をデコレーションするシールも付いています。まあ、正直な話、表紙のデコレーションは他の辞書でもできますし、何なら内容にはあまり関係ないのですが、それでも、これでモチベーションが上がるなら、私は良いと思います。かわいいですし。中身は読みやすいです。文字の大きさや行間がちょうど良いと思います。また、意味が、小学生の理解しやすい言葉で書いてあることも特徴。写真やイラストがとても多いので、言葉の理解を助けると思います。書体に好みが分かれると思うので、実際に見てみると良いでしょう。★出版社のページでセールスポイントをチェック!9. 光村教育図書『小学新国語辞典』■ 監修者:甲斐睦朗(国語学者・国語教育学者。国立国語研究所名誉所員)■ 収録語数:33,000語■ ラインナップ:― 通常版【ゆか先生から】比較的、イラストやカラーが少ないのが特徴です。落ち着いた雰囲気ですから、そういうものが向いているお子さんにはとっても良いかと思います。教科書体ですから、教科書と同じしっかりした文字で読めるのも最大の特徴だと思います。重要な言葉には色がついています。★出版社のページでセールスポイントをチェック!■ 連載『ゆか先生の 国語辞典の世界へようこそ』各回の内容第1回:国語辞典でこの時代を生きぬくための基本動作が身につく第2回:子どもにぴったりの国語辞典を選ぼう! 電子辞書ってどうなの?第3回:初めての国語辞典。カバーは?置き場所は?どんなふうに引くの?(※近日公開)第4回:ゲーム感覚がやる気をアップ! 付箋紙やノートで記録する方法など(※近日公開)第5回:漢字辞典、百科事典、ことわざ辞典、四字熟語辞典、語源辞典など、子どもの世界の辞典いろいろ(※近日公開)第6回:まとめ国語辞典を使えるようになった子どもたちのその後(※近日公開)
2019年04月17日睡眠不足により脳・体・心にさまざまな影響があることが分かっています。子どもには充分な睡眠を取らせたいと思ってはいても、普段の生活ではなかなか理想どおりにいかないこともありますよね。今回は、睡眠に関するいろいろな質問に、明治薬科大学リベラルアーツ准教授駒田陽子先生が回答してくださいました。構成・編集/木原昌子(ハイキックス)取材・文/田中祥子写真/児玉大輔(インタビューカットのみ)昼寝の習慣は年齢に合わせて変えることが大切疑問1:おねしょや寝言の睡眠障害が心配です。幼年期や小学校低学年の子どもの場合、何より大切なのは生活習慣を整えてあげることです。まだ体も心も育っていく過程なので、おねしょや寝言などの睡眠障害と呼ばれるものの多くは、あまり心配しなくても良いのではないでしょうか。子どもが寝言を多く言ったり、おねしょをしたり、夢遊病で夜中歩き回ったりするのは、まだ脳がしっかりと成熟していないから。子どもには結構起こりうることです。まずは規則正しく十分な睡眠時間を確保することを心がけましょう。そのうえで昼間の行動を観察して、夜間に睡眠が取れているのに落ち着きがなかったり、何か問題だと思われることがあったりする場合は、睡眠の質が良くないかもしれません。例えば、寝ている間に呼吸が止まっていたり、足がムズムズしたり、足がピクンピクンと動いたりなどする場合、それが原因で睡眠が阻害されているという場合もあります。そういった場合には、睡眠のクリニックに相談してみることをおすすめします。疑問2:保育園で昼寝をすると夜寝るのが遅くなってしまいます。昼寝をする子どもの割合を調べると、2歳くらいまではほぼ100%が昼寝をしていますが、3歳になるとだいたい半数ぐらい、4歳では7割ぐらいのお子さんが昼寝をしなくなり、5歳になると9割ぐらい昼寝をしなくなります。そういった自然な成長の過程があるのですが、現在の日本の保育園では年齢に関係なく一律で昼寝を行い、年長(5~6歳)の年明け2月くらいから、小学校生活に慣れるために昼寝をやめるという方針をとっているところが多いようです。しかし、4歳の子が2~3歳と同じように昼寝を長く取ってしまうと、夜寝るのが遅くなる傾向が強くなります。そこから、夜更かしが始まり、朝が起きづらくなり、保育園に行きたくないという子どもが出てくることも。保育園期間にみられた「登園しぶり」や「朝の機嫌の悪さ」は、保育園を卒園した後の小学校3・4年生になるまで続いてしまうことが江戸川大学の福田一彦先生の研究で明らかになっています。本来であれば発達に合わせて昼寝を変えていくのが理想的なのです。すでに一部の保育園では、昼寝をしなくなった子どもたちは別の部屋で本を読むなどの取り組みをしているようです。保育園・幼稚園では人手不足も深刻で、年齢に合わせた昼寝時間の調整が難しいのが現実ではありますが、今後、年齢に合わせた昼寝の習慣が多くの保育園・幼稚園で広まっていくことが望まれます。私自身もこの取り組みを広げていきたいと考えています。疑問3:カフェインを摂ると寝られなくなるといいます。子どもへの影響も大きいのでしょうか。カフェインには目を覚ます作用があるのはよく知られていますね。成分が体内に残る時間は4~6時間と言われていますが、個人差があり、子どもやお年寄りはより長く体内に残ります。体内に6時間残ると考えると、就寝が夜9時の場合、昼間3時以降に飲んだカフェインも寝付きに影響する可能性があることになりますね。コーヒーはお子さんには飲ませないよう気をつけているご家庭が多いでしょう。加えて緑茶や紅茶は、茶葉から淹れるものだけでなく、ペットボトルの製品にもカフェインが含まれています。さらに、炭酸飲料やエナジードリンクにもカフェインが。子どもの睡眠を考えると、夕方以降はカフェインが含まれていない麦茶などを飲ませてあげるのが良いでしょう。夜の時間帯の青白い光は体内時計を狂わせる疑問4:夜にスマートフォンを見たりゲームをしたりすると、寝つきに影響するのでしょうか?日が沈んであたりが暗くなると、脳の中では眠りを促すための「メラトニン」というホルモンが分泌されます。朝、明るくなるとメラトニンの分泌は止まり、睡眠の状態から目覚め、体が活動的な状態へ変化するのです。このメラトニンは、明るい照明の下では分泌が抑えられてしまう性質があります。また、体内時計に作用する光の波長として一番影響度合いが強いのは、人間の目に見える光のうち短波長の青白い光(ブルーライト)であることがわかっています。スマートフォンやゲーム、パソコンなどから出るブルーライトを寝る前に見てしまうと、メラトニンの分泌を妨げ、体内時計を狂わせることにつながり、寝つきに影響が出てしまうのです。蛍光灯や白色のLEDも同様に影響があります。子どもの目の水晶体は大人より澄んでいるため透過性が高く、大人より光の影響を強く受けてしまうもの。夜遅くまで塾の蛍光灯の下で勉強していると、子どもの体内時計は夜型化しがちです。日没後はできるだけオレンジ色がかった白熱灯色の照明の部屋で過ごし、寝る前のスマートフォンやゲームも避けるようにしましょう。疑問5:普段は何時ごろに起してあげるのが最適ですか?誰もが寝起きはぼーっとしますね。この眠気を引きずっている状態を「睡眠慣性」といいます。この状態は個人差がありますが、だいたい起床から1~2時間ほどです。その時間帯に朝ごはんを食べて、体と頭をウォーミングアップする時間にしましょう。学校の授業が8~9時頃に始まるとしたら、6~7時ぐらいに起きるような習慣をつけていくと良いのではないでしょうか。ただ、早く起きることを気にして睡眠時間が短くなるより、睡眠時間の確保を優先してください。7時半に起きて学校に間に合うのであれば、それまでの時間は「睡眠」にあてて、充分に寝ることの方が大切です。***睡眠不足が借金のように積み重なり病気のリスクを高め、日々の生活の質を下げることが「睡眠負債」と呼ばれ、メディアでも取り上げられるようになりました。子どもだけでなく、親も、自分の問題としてしっかりと考えていかなければいけないでしょう。次回は駒田先生に、どうしたら質の良い睡眠時間を確保することができるのか、早寝のコツなどをお話しいただきます。■ 明治薬科大学准教授・駒田陽子先生 インタビュー一覧第1回:“世界一寝不足”な日本の子ども。「11時間37分」が示す、眠りにまつわる切実な問題第2回:寝るのが遅いと自己肯定感が下がる。デメリットだらけの「子どもの睡眠不足」第3回:「昼寝のせいで夜なかなか寝ない」問題の解消法。朝のグズグズ防止にも効果大!第4回:「起きる時間」を意識させるだけ!子どもの早起きを楽にするちょっとしたコツ(※近日公開)【プロフィール】駒田陽子(こまだ・ようこ)明治薬科大学 リベラルアーツ准教授。早稲田大学にて博士号(人間科学)取得。日本学術振興会特別研究員、国立精神・神経医療研究センター特別研究員、東京医科大学睡眠学講座准教授を経て現職。日本睡眠学会、日本時間生物学会の評議員を務める。睡眠が心身の健康に及ぼす影響の研究に従事。
2019年04月16日