チケットぴあがお届けする新着記事一覧 (57/342)
20周年を迎えた畠中恵の人気小説「しゃばけ」シリーズを原作にした舞台『シャイニングモンスター ~ばくのふだ〔Shining 編/Shadow 編〕~』が3/13(土)に開幕する。錦織一清が演出、神楽澤小虎が脚本、西寺郷太(NONA REEVES)が音楽を手掛ける本作について、出演する前川優希と反橋宗一郎に話を聞いた。「しゃばけ」とは、病弱だけどやさしくて知恵の働く若だんなと彼を見守る不思議で愉快な妖(あやかし)たちが江戸で起こる難事件珍事件を解決していく人気時代小説シリーズ。これまでもさまざまなカタチで舞台化されており、本作では『ひなこまち』(新潮社刊)所収「ばくのふだ」「ろくでなしの船箪笥」を原作に、歌ありダンスありの“超エンタメ”な舞台になるという。小中学生時代に「しゃばけ」シリーズを読んでいたという前川は「子供の頃に図書館でよく読んでいたので、今年20周年だと聞いて感慨深い気持ちになりました。自分が初めて読んだときの『おもしろい!』とか『素敵!』という気持ちを思い出して演じたいです」と笑顔で語る。前川、反橋共に錦織とは初タッグ。前川は「錦織さんの演出だと母に伝えたら『すごいじゃん!』と喜んで、錦織さんのパフォーマンス映像を見せてくれました。どんな演出をつけていただけるか楽しみにしています」、反橋も「お名前を拝見しただけで緊張しました。僕は歌とダンスが好きなので、それを錦織さんに演出していただけるのが光栄です」と明かす。NONA REEVES西寺が手掛ける音楽は「『しゃばけ』からは想像できない音楽だと思います。タイトルが『シャイニングモンスター』であることにリンクしましたね」と反橋。期待が高まる。前川が演じるのは主人公の若だんな(一太郎)。「僕がすごく健康なので(笑)、病弱な一太郎をどう演じるのか、特に歌やダンスでどう表現するかは考えたいです。歴史あるシリーズの主人公なので、ファンの方の気持ちを裏切らないように演じたいですね」、妖の屏風のぞきを演じる反橋は「相手によって関係性が違う役で、例えば一太郎には同じ目線でものを言うけど、他のキャラクターからはいじめられたりする(笑)。いろんな遊びどころがありそうで、稽古が楽しみでしょうがないです」。<Shining 編><Shadow 編>の2作同時上演となるが、反橋は「片方だけでも楽しめますし、両方観るとなおさら楽しんでいただけると思います。楽曲も作品でアレンジが変わるので、そういう楽しみ方もしていただけそうです」。役者陣に加え、人気ミュージシャン真城めぐみも参加するなど、注目ポイント盛りだくさんの本作は、3/13(土)から21(日)まで東京・CBGKシブゲキ!!にて。取材・文中川實穂
2021年03月04日2021年3月11日、Bunkamuraオーチャードホールで宝塚OG 毎日希望奨学金チャリティーコンサート「忘れない~天国の大切なあの人へ~」を開催する。この公演は、東日本大震災で保護者を亡くした震災遺児支援を目的に、毎日新聞社が設立した「毎日希望奨学金」のためのチャリティーコンサート。東日本大震災で亡くなった方への手紙を投函する岩手県陸前高田市の「漂流ポスト」に寄せられた愛のメッセージを、宝塚OGの北翔海莉、桜一花、壱城あずさ、如月蓮、妃海風の5人が、愛をテーマにした歌とともに届ける。今年は東日本大震災から10年の節目の年。と同時に、新型コロナウイルスという新たな脅威も出現した。こうした変化の中で、出演者の舞台にかける思いは例年以上だ。4度目の出演となる元星組男役トップスターの北翔海莉さんはこう語ってくれた。「今、コロナ禍が世界中を覆っています。多くの方が苦しみや不安を抱える中で、生の舞台の醍醐味(だいごみ)やエンターテインメントの光を消してはいけない。コンサートや公演など、エンタメには生きる力、精神力を生み出すエネルギーがある。祈るような気持ちで舞台に上がるつもりです」。元星組トップ娘役の妃海風さんも「手紙に書かれたことの意味を感じ、歌も含めてその繊細な思いを大事に丁寧な公演にしたい」と意欲を見せる。今回の公演は、バラエティー豊かなセットリストに注目が集まっている。前半は手紙の朗読とともにJ-POPの名曲が心に響く。後半は宝塚歌劇団のナンバーをOGが時に華やかに、時に切なく歌いつなぐ。「天翔ける翼」「運命よ、今夜は女神らしく」では宝塚の感動の舞台が再現され、「美女と野獣」を北翔さんと妃海さんコンビがロマンティックに歌う。「恋は元々アンフェア」は壱城と如月のコラボ、「JUMP!」は桜を軸に舞台「オーシャンズ11」の感動が思い出される。その他、宝塚ファンならずとも心に元気と癒しをくれる珠玉の名曲ばかりだ。また、北翔さんがトップ男役時代の思い出の宝塚が甦る構成になっている点にも注目だ。元星組のトップスターコンビ、北翔さんと妃海さん。桜さんは北翔の一期後輩。壱城さんと如月さんは北翔さんと同じ星組に所属していた。本公演は、有料生配信も実施。3月17日まで会場の感動を繰り返し楽しむことができる。震災10年となる「特別」な公演をぜひお楽しみに。
2021年03月04日1999年に発表された、野田秀樹作・演出による傑作舞台『パンドラの鐘』。本作が約20年の時を経て、熊林弘高演出により現代に甦る。そこでキャストのひとりで、昨年から舞台出演が続いている金子大地に話を聞いた。彩の国シェイクスピア・シリーズ第35弾『ヘンリー八世』で初舞台を踏み、二兎社『ザ・空気 ver.3 そして彼は去った…』でも好演を見せる金子。この2作ですっかり舞台に開眼した金子だが、今回は少し勝手が違うようで…。「舞台は今やっていて一番楽しいお仕事ですね。ただ『パンドラの鐘』は…、やばいです!熊林さんがとても大切にされている戯曲のひとつなので、すでにものすごいプレッシャーなんです。しかも熊林さんが求められているレベルが尋常ではないくらい高くて…。ただ、役者としてひとつ殻を破りたいと思っていた時期だったので、このような機会をいただけて本当にありがたいです」物語の舞台は、太平洋戦争開戦前夜の長崎。巨大な鐘が考古学者たちの手により掘り起こされ、それを機に、葬られたはずの古代王国を巡る秘密が明るみになっていく。「熊林さんは北九州のご出身で、戦争や原爆に対して近いところで育っていらっしゃるんですよね。その想いに触れて僕はすごく怖かったのですが、まずは自分の中にある戦争に対する感情、のようなものを納得させなければと思っています。それは苛立ちなのか、怒りなのか、悲しみなのか…。今はまだわかりませんが、そのモヤモヤと沸き上がってきているものが、この作品に取り組む上でのヒントになりそうな気がしています」今回、熊林ならではの演出となるのが、現代と古代の登場人物を一人二役で演じるというもの。金子は葬儀屋のミズヲと、考古学者助手のオズを演じる。「役についてはまだまだで、漠然とも語りたくないぐらい、一筋縄ではいかない作品だと思います。中でもミズヲが生まれた時の記憶、その景色をお客様に伝えなければならないのは、すごく難しいことだと思っていて。もともと難しい事に挑戦するのは好きなので、逆に燃えてもいます!」演劇界にも大きな影響を与えている、このコロナ禍。いつ公演中止になってもおかしくない状況下で、金子は、一回一回の公演を「奇跡」と語る。「今舞台に立っていて改めて感じるのは、お客様に来ていただけることのありがたさです。この『パンドラの鐘』でも、観に来てくださる方に少しでも元気になってもらえるよう精一杯頑張りますので、期待していてください!」取材・文:野上瑠美子
2021年03月04日3月27日(土)、28日(日)に鎌倉芸術館 大ホールで行われるプレビュー公演を皮切りに、大阪・名古屋・東京で順次上演されるブロードウェイ・ミュージカル『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』のメインビジュアルが公開された。本作は、『Hamilton』で全世界に新風を贈り、一躍有名となったブロ-ドウェイの異端児リン=マニュエル・ミランダが原案・作詞・作曲を手掛けた出世作。米ニューヨーク市マンハッタンの北西部に位置する移民が多く住む町シントンハイツを舞台に、夢追う人々と彼らに巻き起こる奇跡を描く。2021年夏にはジョン・M・チュウ監督による映画の公開を控える中、初演以来7年ぶりとなる日本版の再演が決定した。演出・振付は初演から引き続き、安室奈美恵やSMAP、AKB48などJ-POPの振付師としても知られ、ミュージカル『刀剣乱舞』振付やオリジナル・ミュージカル『THE CIRCUS!』シリーズの企画・構成・演出・振付と幅広く活躍するTETSUHARU。主人公・ウスナビ役も初演に引き続き、卓越したラップスキルと温かな演技で観客を魅了するMicro(Def Tech)と、ミュージカル『RENT』での好演も記憶に新しい平間壮一がWキャストで務める。公開されたビジュアルに映るのはMicroや平間だけではなく、物語のもう一人の主人公である、ウスナビの幼馴染ベニー役をWキャストで務める林翔太と東啓介。さらに共演に名を連ねるニーナ役の田村芽実、ヴァネッサ役の石田ニコル、ソニー役の阪本奨悟といったメインキャストの姿も。本公演にはさらに、エリアンナ、青野紗穂、エリック・フクサキ、山野光、戸井勝海、未来優希、田中利花といった、華と実力を兼ね備えた布陣で上演される。■公演情報Broadway Musical『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』<鎌倉・プレビュー公演>日程:3月27日(土)・28日(日)会場:鎌倉芸術館 大ホール<大阪公演>日程:4月3日(土)・4日(日)会場:オリックス劇場<名古屋公演>日程:4月7日(水)・8日(木)会場:日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール<東京公演>日程:4月17日(土)~28日(水)会場:TBS赤坂ACTシアター
2021年03月04日3月2日、新国立劇場は2021/2022シーズンの舞踊ラインアップを発表、吉田都芸術監督による説明会を実施した。「芸術監督就任後、6カ月とは思えないほどの濃い日々を過ごさせていただいています」と、コロナ禍の中でスタートした今季前半を振り返る吉田。「いろいろな方が手を差し伸べてくださった。私たちに何ができるかといったら、質の高い、いい舞台を作るべく努めること」。来季の上演リストには、その強い思いを映すかのようなチャレンジに溢れた作品が並んだ。まず10月のオープニングでは、ライト版『白鳥の湖』に再挑戦。昨年、吉田の芸術監督就任第1作として期待されるも、感染拡大の影響により実現できずにいたが、「ダンサーたちは今、私がどんな表現を求めているかということを少しずつ感じてくれるように。より深い作品づくりができるのでは」と、1年の延期を前向きに捉える。その後のクリスマス・シーズンは、恒例の『くるみ割り人形』(イーグリング振付)の上演だが、初の試みとして、新年3日までなんと計12回もの公演を実現。続く「ニューイヤー・バレエ」は、吉田が敬愛する振付家、アシュトンの『夏の夜の夢』に初挑戦。バランシン『テーマとヴァリエーション』とのダブルビルだ。2月の〈吉田都セレクション〉は、鬼才フォーサイスの『精密さによる目眩くスリル』、オランダの巨匠ファン・マーネンの『ファイヴ・タンゴ』、プティの小粋なセンスが光る『こうもり』より「グラン・カフェ」と、大人の雰囲気。「新国初のフォーサイス作品は、かなりのチャレンジになる」とも。来年4月〜5月の『シンデレラ』に先立ち、エデュケーショナル・プログラムvol.1として「ようこそ『シンデレラ』のお城へ!」を2月に実施。「舞台が作られていく過程をお見せし、舞台をより身近に感じていただけるように」と準備を進める。6月の『不思議の国のアリス』は、海外からゲストを迎えての再演だ。またダンス公演では「DANCE to the Future: 2021 Selection」(11月)、小野寺修二 カンパニーデラシネラ『ふしぎの国のアリス』(2022年3月)、森山開次による『新版・NINJA』を予定。開幕公演前の今年7月に上演する、こどものためのバレエ劇場2021『竜宮』も森山の作品だ。あらゆる年齢層に訴える多彩な作品が揃う来シーズン。吉田芸術監督の采配に、今後も注目していきたい。文:加藤智子
2021年03月04日4月3日(土)に大阪城音楽堂にて、ライブイベント『GREENS presents “Blossom” - NO LIVE , NO GREENS -』が開催される。「GREENS presents “Blossom” - NO LIVE , NO GREENS -」チケット情報本公演は、2020年に30周年を迎えた関西のコンサートプロモーターGREENSが企画したもの。昨年、“感謝感激あめあられ”と題してGREENSらしいイベントをたくさん計画していたが、コロナ禍で悔しくも開催に至らないものもあった。今年も変わらず、アーティストやスタッフ、オーディエンスへの感謝の気持ちと共に、ライブエンタテインメントの灯を消さぬよう、昨年以上に音楽のなる場所を創り出していきたいと意気込む。本公演には、昨年4月の開催が見合わせとなってしまった30周年記念ライブに出演を予定していた、Creepy Nuts、go!go!vanillas、ストレイテナー、BiSHの4組が出演。1年越しに大阪に集結する!“ライブのないGREENSはない”。チケットは、3月3日(水)18:00から8日(月)23:59までオフィシャル抽選先行を実施。
2021年03月03日新国立劇場の2021/2022シーズン(2021年10月~2022年7月)のオペラ公演ライナップが発表され、芸術監督の大野和士が会見に臨んだ(3月2日・新国立劇場オペラパレス・ホワイエ)。演目は10演目全45公演。うち新制作が4演目で、ロッシーニ《チェネレントラ》(2021年10月)、ワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》(同11~12月)、グルック《オルフェオとエウリディーチェ》(2022年5月)、ドビュッシー《ペレアスとメリザンド》(同7月)というラインナップ。大野は、この4本をある流れで括れることに「ピンと来た」という。会見で語ったのは以下のような内容。グルックといえば「オペラ改革」。装飾的な声の名技性に偏りがちだった18世紀のバロック・オペラは、グルック以降、ドラマを重視し、音楽と言葉が結びついたオペラへと変貌していく。19世紀に入って、その精神を継承した一人がワーグナーで、ドイツのためのドイツ語のオペラは頂点を迎える。一方でそれ以前にロッシーニが書いていたオペラは、より人間的な、19世紀の庶民の「個人」を確立しているという意味で現代の私たちとつながっている。ワーグナーに心酔していたドビュッシーは、やがてそのドイツ・オペラのあり方から離反し、グルックの改革をも否定する。大野は、たとえばワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》で、延々1時間もかけて描かれた愛の表出が、フランス・オペラの金字塔である《ペレアスとメリザンド》では、たったひとこと「Je t’aime」で描かれていることを象徴的な例として挙げた。オペラにおける「真実」の変遷といえばいいだろうか。新制作4本に、大野芸術監督はそんな連環を見出しているようだ。《チェネレントラ》はイタリアの巨匠マウリツィオ・ベニーニの指揮、粟國淳の演出。主役アンジェリーナを脇園彩が演じる。大野自身が指揮する《ニュルンベルクのマイスタージンガー》は、イエンス=ダニエル・ヘルツォークの演出。昨年夏に予定されていた「オペラの夏の祭典」のプロダクションで、ザルツブルク・イースター音楽祭、ザクセン州立歌劇場、そして東京文化会館との国際共同制作だ。昨年予定されていたキャストとまったく同じキャストでの上演を、大野は「奇跡的」と語った。《オルフェオとエウリディーチェ》は鈴木優人指揮、勅使川原三郎演出の初顔合わせ。(ダンスのない)ウィーン版と、改訂された(バレエ曲のある)パリ版をミックスした上演で、勅使川原だけにダンスの要素が大いに期待される。シーズン掉尾を飾る《ペレアスとメリザンド》も大野の指揮。どちらかというと脇役であるペレアスの母親ジュヌヴィエーヴを、大野監督自身が直電で依頼したという浜田理恵が初役で歌う。他のレパートリー演目にもそれぞれに適役を得た。コロナとの兼ね合いが気がかりだが、予定どおりの上演を心から願う。(宮本明)
2021年03月03日3月から新たにスタートする神奈川県立音楽堂での「アフタヌーンコンサート」シリーズ(主催:神奈川芸術協会)に出演する、NHK交響楽団第1コンサートマスター篠崎史紀。「音楽堂はすごく響きのいいホール。客席がせり上がっていてお客の顔が見えるので一体になりやすい。僕が大好きな、サロンの感じがあるよね」聴衆と奏者が近くで感じ合える小規模のサロン・コンサートには、音楽会本来の醍醐味があるという。今回も、演奏曲目の半分は当日のトークで発表という、親密なサロンの雰囲気を醸し出す。でも、単なる名曲コンサートにしないのがこの人らしいところ。あらかじめ発表されているシューベルトとドヴォルザークの作品には、「アイデンティティの提示」というテーマが隠れている。「シューベルトは一生をウィーンで過ごした唯一の大作曲家。ウィーンの“地”の作曲家だから、歌いまわしにウィーン風の訛りが、理屈でなく、当たり前に入っている。自分のアイデンティティをそのまま出せた音楽家だった。一方でドヴォルザークは、誰に聞いたってチェコの作曲家だけど、実は当時のチェコはハプスブルク家が統治するオーストリア。自分たちのアイデンティティをもぎ取られた民族だったわけです。アメリカへ行って作曲した《新世界より》では、チェコの音楽にアメリカ先住民の音楽を取り入れていますが、あれはドヴォルザークが、虐げられた民族同士の共通点を感じたんだと。僕はそれを18歳でウィーンに留学した時に音楽史の先生に教わった。実は先生自身がチェコから亡命して来た人だったんだけど、『お前もアメリカに占領された日本の人間なんだからわかるだろう?』と言われてハッとしました。その頃、そんなこと考えたことがなかったから」「アイデンティティ」を切り口にすると、実に対照的な二人の作曲家ということになるのだ。でももちろん政治的なメッセージを音楽で声高に主張するのではない。ゆったりと楽しむ平日午後のコンサートらしく、両者の、愛らしい《ソナチネ》を聴かせてくれる。共演のピアノは若き名手・入江一雄。「作曲家への最大の敬意を持ちつつ、音楽に一番大事な独自性、彼にしかできないことを示すことができる」と、才能を高く評価し、「惚れた」と告白する。公演は3月12日。あの3・11から10年。今またわれわれは困難な日常に見舞われている。「音楽は記憶の引き出しだと思うんです。聴くことによって、忘れていた記憶を呼び戻してくれたり、それが未来へのスタートになったりする。逆に、だからこそ今、記憶に留めておかなければならないことがあるはず。そうすることで初めて、未来を、夢を考え始めることができる。『夢があるから人生が輝く』というのが僕の好きな言葉。未来へ向かう、その瞬間を一緒に味わえたらいいなと思います」取材・文:宮本明
2021年03月03日ジャニーズの人気グループ「ふぉ〜ゆ〜」の辰巳雄大が主演を務める舞台『ぼくの名前はズッキーニ』が2021年2月28日(日)から、東京・よみうり大手町ホールで開幕した。2002年にフランスで発行され、世界中でベストセラーになった同名小説を世界で初めて舞台化。養護施設に連れてこられた孤独な少年・ズッキーニ(辰巳雄大)が、厳しい現実の中でも前を向いて生きようとする姿が描かれている。ズッキーニだけでなく、リーダー格のシモン(稲葉友)、父親が逮捕されたアメッド(上村海成)、両親が失踪したジュジュブ(本多力)、迎えにこない母を待つベアトリス(三村朱里)、叔母の家で虐待をうけているカミーユ(川島海荷)といった“複雑な”背景を持つ子どもたちの日常や葛藤、そして、子どもを見守る養護施設の職員や警察官ら大人たちなりの事情もあわせて語られる舞台だ。あらすじだけ聞くと重い作品に思えるかもしれないが、全体的にポップな仕上がり。田中馨が手掛けた音楽やカラフルな衣装もさることながら、一番の理由は美術とそれを生かした演出にあろう。壁と床が黒板のようになっており、俳優たちはチョークを使って、役名や話のキーとなるモノなどを描き加えていく。脚本と演出を手がけるノゾエ征爾が、自身が主宰する劇団「はえぎわ」の『ガラパコスパコス〜進化してんのかしてないのか〜』(2010)などで編み出してきた演出手法を取り入れた形だ。開場時は何もなかった舞台が、最後には1枚の楽しいスケッチブックのようになっていく。自由な「子ども心」が見て取れて、面白かった。初日を前にした取材会で、辰巳は6歳の子どもを大人たちが演じることについて、「自分が愛している演劇をやらせていただいているなと実感した。どんどんスタートから終わりにかけて完成していく、自分たちで作品を作っていくという感じが強い作品。僕にとってターニングポイントの作品になると思った」と語っていた。辰巳自身、6歳の姪っ子がいるといい、その動画を見ながら“子どもらしさ”を研究したことを明かす。「稽古の序盤は逆に子どもらしくしすぎる芝居をしてしまったが、稽古を重ねていく上で、どんどん要らないものを削ぎ落とした方が、一番子どもっぽくなる。僕らは今、飾ってしまっているんだなと感じた」などとも話していた。東京公演は3月14日(日)まで。大阪公演は3月19日(金)〜21日(日)まで、COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール。取材・文:五月女菜穂
2021年03月03日ダンサー兼アーティストのasamicro(アサミクロ)が企画、演出、振付するegg lifeの旗揚げ公演『白く、壊れて、生まれる』が、2月27日、PIA LIVE STREAM で生配信された。神奈川県のSTスポットで開かれた無観客ライブで、3月6日(土)23:59までアーカイブで楽しめる。asamicroは幼少のころからストリートダンスを始めた。2012年から朝ごはんや朝の時間を毎日撮影し続け、日々の暮らしや生活をテーマに踊り、映像、写真などで表現している。今回旗揚げにあたりegg lifeという名前には、「割った卵の殻のように、同じようで同じではない毎日への尊敬と愛情を込めた」という。まず、友情出演の北川結(モモンガ・コンプレックス)がテーブルのまな板の上でゆで卵の殻をむいて壊す。「ひび割れた隙間からやつは流れ出る」などとナレーションが入り、北川がテーブルの椅子から崩れ落ち、フライパンの上に広がった卵の白身のようにのたうちまわる。「きみのいない完璧な丸い白が誕生した」という声とともに、本物の卵に囲まれた円形ステージでasamicroがゆっくりと踊り出す。体をうねらせたゆたったり、ロボットのように小刻みに震わせたり、ストリートダンスやコンテンポラリーダンスなどが交じったジャンルレスな踊りに釘付けになった。途中で電車の音や横断歩道を渡る時に流れる鳥の声が入り、「卵が人間の胃の中に入り、一緒に仕事に行くのだろうか」と考えてしまう。公演のメイキングビデオでasamicroは「ストーリーは特別なものではなく、生活を頑張って生きている皆さんときっと何か共通することがあるはず」と話している。見る者それぞれが想像していいのだろう。明日、卵を割る時、自分の細胞が彼女たちのように踊ってくれたらいいのにと思う。後半には再び北川が登場し、二人で楽しげに所狭しとステージを跳ね回った。続いての作品は、ダンサーのAtsumi、愛由、TETSUOが登場。ブレイクダンスやヒップホップなどの経歴を持つ3人が息ピッタリに踊る。無機質な音やアフリカの太鼓、犬の鳴き声のような音が入り混じり、猛々しかったり、洗練されていたり、機械的だったりする多様でスピーディーなパフォーマンスが楽しめた。次はどんな踊りか予測がつかない、asamicroの身体の可能性を無限大に使った振付もきいている。彼女は「明日、生きることが楽しくなり、何かいたずらしたくなるような気持ちになっていただけたら」と話している。egg lifeの誕生の時を、ぜひ、見届けてほしい。3月6日(土)23:59までPIA LIVE STREAMにてアーカイブ配信中。取材・文:米満ゆう子
2021年03月02日生まれ育ったドイツ作品の翻訳劇を中心に目覚ましく活躍する演出家・小山ゆうなと、演劇界を代表する スターの一人、浦井健治の初顔合わせにより、社会主義体制が永遠に続くかに見えた時代の若者と愛情 の物語を、三部構成で上演することが決定した。本作は、映画「Time Stands Still」(1981年、ハンガリー、ペーテル・ゴタール監督)や、映画「A Time to Love and a Time to Die」(1958年、エリッヒ・マリア・レマルク原作、ダグラス・サーク監督)などからインスピ レーションを受け、ドイツの作家フリッツ・カーターが綴った三部構成の戯曲。東ドイツで生まれ、東ベ ルリンで育った彼は成人後、西ドイツに移住。ベルリンの壁崩壊後、再びベルリンに戻り、創作活動を行う。ベルリンの壁崩壊前の社会主義体制下で青春期を過ごした作家自身の経験を活かし、社会主義国家 の息苦しい日常や反体制運動、西ドイツへの逃亡などを背景に、ときにコミカルに、ときにシリアスに、またときにメランコリックに、普遍的な人間の感情を描いたのが『愛するとき 死するとき』だ。翻訳・演出を手掛けるのはドイツで生まれ育ち、劇団NLTの演出部を経て、現代劇、リーディング、ミュー ジカルと幅広く活躍する小山ゆうな。世田谷パブリックシアター主催公演では『チック』『イザ ぼくの運命の ひと』に続く三作目の演出作品となる。『チック』での複数の演劇賞受賞を機に、様々なジャンルの演出 経験を積み上げた小山にとって、本公演は凱旋公演とも言える。出演者には、ミュージカル、ストレートプレイ、映像作品と他分野で安定した演技力を披露する浦井健治が決定。世田谷パブリックシアター主催公演では、シェイクスピア作『トロイラスとクレシダ』で戦いに翻弄さ れ変わっていくトロイラスを、イプセン作『ペール・ギュント』で幸せを追い求め彷徨うペールを、繊細な演技で体現した。シアタートラムには本公演が初出演となる。『愛するとき 死するとき』は2021年11月~12月にシアタートラムで上演予定。
2021年03月01日3/16(火)に配信されるXRを駆使した無観客オンラインライブ「NEXT VISION JAPAN 2021 XR LIVE」に、中毒的なファニーボイスとキャラクターが人気のナナヲアカリが出演する。本イベントは、文化庁委託事業「文化芸術収益力強化事業」の一環として、株式会社IMAGICA GROUP、株式会社IMAGICA EEXなどを中心に、新たなライブエンタテインメントの可能性を追求する実証実験として行われる。テーマは「TRANSFORM (変容)」。日本科学未来館に特設ステージを設置し、音楽ライブとXR映像テクノロジーとの融合で、新しいオンラインライブ体験を実現する。ナナヲアカリが出演するライブでは、TikTokやYouTube等での人気楽曲演奏時に、テレビ会議システムを利用し、株式会社IMAGICA EEX、株式会社IMAGICA Lab.、ぴあ株式会社の3社協力によって視聴者との双方向コミュニケーションを実施。XRテクノロジーと融合させ、新しい映像コミュニケーションの形を目指す。イベント公式サイトでは、双方向コミュニケーションへの参加者を3/7(日)まで募集中。<開催概要>文化庁委託事業「文化芸術収益力強化事業」「NEXT VISION JAPAN 2021XR LIVE」 (略称:NVJ2021 XR LIVE)開催日時:2021年3月16日(火) 20時~※予定配信プラットフォーム:YouTube等視聴料:無料主催:文化庁、株式会社IMAGICA GROUP<出演者>酸欠少女さユり(ソニー・ミュージックレーベルズ)、Co shu Nie(コシュニエ/中村未来(Vo&Gu&Key&Manipulator)、松本駿介(Ba)、藤田亮介(Dr)/ソニー・ミュージックレーベルズ)、ナナヲアカリ(ソニー・ミュージックアーティスツ)、I IxR(アイル) from AKB48(小栗有以、久保怜音、西川怜、山内瑞葵、大盛真歩)、上野水香(東京バレエ団プリンシパル)、新日本フィルハーモニー交響楽団
2021年03月01日ミュージカル『GHOST』が3月、東京・シアタークリエで上演される。原作は1990年に公開された映画『ゴースト/ニューヨークの幻』。暴漢に襲われた恋人モリーを助けたサムが、犯人追走ののちモリーのもとに戻ると、そこには血だまりに沈む自分がいて……。死してなお事件の真相を突き止め恋人を守りたいサム、突然いなくなった恋人への思いを捨てられないモリー、映画版にもましてふたりの深い愛が感動を呼ぶと評判を呼んだミュージカルの、待望の再演だ。主人公サム役の浦井健治、ヒロイン・モリーをダブルキャストで演じる咲妃みゆ、桜井玲香に話をきいた。作品の見どころは「人と人の繋がり、寄り添う心のすばらしさ、そういうメッセージが込められているのが第一の魅力。このコロナ禍の時期だからこそ伝えられるものがあると思います」と浦井。咲妃は「楽曲での心情表現がかなり色濃く提示されます。映画とは違う角度からこの作品を楽しんでいただけるのでは」とミュージカル版ならではの魅力をアピールした。2018年の日本初演では、日本版ならではの繊細な役作りにも評価が高かった。演じるサムについて浦井は「モリーを本当に愛しているのですが、言葉はなくても行動で示しているから伝わるよね、というタイプ。男性特有のわがままではありますが、照れもあるんです。そういう純粋さがある男です。右脳派左脳派でいったら右脳派、感覚人間」と分析。初演を経ての今回のサムは「今回、友人のカールを演じる水田航生君が、サムもモリ―も甘えられるカールという役作りをしています。そのトライアングルの中にいると、これくらい自由にいられるんだ、と楽しい。一方で直感的に動くサムにカールはかなわないと思っている、というのが面白い」と話した。モリーについて「芯の強い女性というのは大切にしていかなければいけないところ」と話すのは咲妃。「ただ、我の強い女性ではない。サムのことを一途に愛していますが『幸せいっぱい!』という女性ではないのかなと思っています。アーティストとしても成功していきたいという強い気持ちがある。安定を幸せとしない女性なのかな」と話した。一方で桜井は「芯が強いだけじゃなくて優しさもあるので、ただ強い女性と表現しちゃいけないなと。でもまわりの人を動かす力がある女性ですよね。彼女が強い意志で何かを追求しようとしたからこそ、幽霊となったサムのことも感じられるんだと思います」。今回初参加、「難しい役です」と言葉を選びながら話す桜井に、「私もまだまだ研究段階」(咲妃)、「それぞれが、人間味あふれているよね」(浦井)と優しく声をかける先輩ふたりの姿も印象的だった。「映画のもともと良いところを“良いとこどり”した上に、素晴らしい楽曲があわさり、さらに舞台ですから目の前で行われている分、ぐいっと一歩深く『GHOST』の世界に入り込めます」と桜井。公演は3月5日(金)から23日(火)までシアタークリエにて。その後愛知、大阪公演もあり。(取材・文:平野祥恵)
2021年03月01日昨年デビュー20周年を迎えたAIの、20周年記念ミニアルバムシリーズの第二弾となるミニアルバム『IT’S ALL ME -Vol.2』が2月24日(水)にリリースされた。AI チケット情報デビュー以来、その歌声でジャンルや国境をボーダレスに飛び越え、人々に笑顔と感動を届けてきたアーティスト=AI。前作『IT’S ALL ME -Vol.1』からの連作となる今作には、次世代リーダーが集まる青年版ダボス会議「One Young World Japan」のテーマソングとなり、リミックスには最重要アーティストAwichをフィーチャリングに迎え、その圧倒的なパフォーマンスで話題となった『Not So Different』、『Not So Different Remix feat.Awich』や、みんなの力でがんを治せる病気にするプロジェクト「deleteC」とのコラボレーション曲『HOPE』など、音楽性に富んだ全6曲を収録。初回限定盤にはそれら楽曲のMV&メイキングをふんだんに盛り込んだ映像集を特典収録。連作となるアート・ディレションは今作もとんだ林蘭が手がける。<形を持たない想いを届ける>というテーマの元、AIのサウンドに更なる深みと奥行きの魅力を加えるビジュアルが出来上がった。コロナ禍により昨年から延期になった全国ツアー「AI 20周年記念TOUR “IT’S ALL ME”」もこのリリースと共に再スタート。大阪公演は、3月27日(土)・28日(日)フェスティバルホールにて開催される。チケットは、2月28日(日)23:59まで先行先着プリセールを実施中。
2021年02月26日震災直後の2011年5月の開催から10年。ついに「がんばろう日本!スーパーオーケストラ」が最終回を迎える。東日本大震災で保護者を亡くした震災遺児の学業継続を支援する「毎日希望奨学金」のためのこのチャリティーコンサートは、全国の交響楽団などで活躍する演奏家たちが毎年一夜限りの「夢の楽団」を結成し、音楽を届けてきた。本公演は、新型コロナウイルスの影響で延期となって1年越しのコンサートでもあり、出演者たちの意気込みは例年以上だ。ピアノの實川風さんは、この新型コロナ禍で「客席に生の音を届けることのできる喜びや大切さを、以前よりも強く感じます」と話す。だからこそ「震災から10年という中でのコロナ禍に、被災地のみなさんはさらに大変な日々を過ごされているのではないかと思います。少しでも日々のパワーにつながる演奏をお届けしたいと思います」と気持ちを新たに演奏に臨む。バイオリンの辻彩奈さんは、演奏曲であるブルッフのスコットランド幻想曲に触れながら、「特に光が差してくるような美しいメロディーの第3楽章が、新型コロナの感染拡大によって制限ある世の中で生きる私たちの心に寄り添ってくれると思います。聴いてくださる方の心に届くような演奏を目指したい」と話す。そして、指揮を執る山下一史さんは「音楽に癒やしがあるかどうかは今もわかりませんが、作曲家が曲に込めた思い、それを演奏する演奏家の思い、聴衆の思いがつながった絆が、音楽に力を宿らせることはできます。新型コロナの恐怖が収まらない中、会場に足を運んでくださいとはなかなか言えませんが、この渦中にある我々だからこそ、震災に思いをはせることには特別な意味があります」と力を込める。コンサートは、ライブ配信でも、アーカイブ配信でもお楽しみいただける。アーカイブ配信は3月9日23時59分まで。指揮、ソリスト、そしてスーパーオーケストラが一体となった演奏をぜひお楽しみに。
2021年02月26日2006年初演で、2018年に新曲を加えた新バージョンとして上演されたミュージカル『マリー・アントワネット』が、東急シアターオーブでの東京公演を終え、3月2日(火)より大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演される。2018年からアントワネットの恋人でスウェーデンの貴族フェルセンをWキャストで務める田代万里生に話を聞いた。ミュージカル「マリー・アントワネット」チケット情報幼少の頃からピアノやヴァイオリンを習い、大学在学中にオペラデビューを果たした田代。今作で描かれるフランス革命については、モーツァルトやグルックの音楽を通して触れていたという。「モーツァルトはアントワネットとほぼ同世代で、貴族から注文を受けて貴族のために作曲していました。一方、アントワネットとルイ16世が結婚した年に生まれたベートーヴェンは、自分がやりたい音楽や貴族に支配されない音楽を作りたかった人。貴族と平民が対立していたのは音楽的にも同じ。革命後、フェルセンは民衆が怖くなり、壮絶な人生を送るんです」。今作は、遠藤周作の小説『王妃マリー・アントワネット』をベースにしたオリジナル作品。豪華絢爛の生活を送っていたアントワネットが、同じMAの名を持つ庶民のマルグリット・アルノーとの出会いや、フェルセンとの悲恋を通して、革命の渦にのみ込まれていく様が描かれる。脚本や音楽を手掛けるのは、『エリザベート』でおなじみのミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイだ。「リーヴァイさんは、クラシックもロックも自由自在に作曲されますが、フェルセンに関しては、クラシカルな歌唱を求められる。僕が学んできたルーツをとても生かせる役柄です。ただ、アントワネットへの無償の愛ゆえに常に自制している役ですが、その表現が難しい。僕は『エリザベート』のフランツ・ヨーゼフや、『ラブ・ネバー・ダイ』のラウルなど自制する役を演じることが多くはあるのですけどね(笑)」。張りのある歌声と端正なルックスで貴公子的な存在だ。そのイメージを裏切ってみたくはならないのだろうか。「自分であまり決めないようにはしています。演出家によって自分の知らなかった部分を引き出してもらえる経験をしてきたので、得意なものだけで勝負しようとは思わないし、ないものを出そうとも思わない。目の前にある役に必死に向き合うことで、必然的に出るものが大事だと思っています。今回も新たにわきあがる感情を大切にしたいと思います」。前回は、『ラブ・ネバー・ダイ』に出演するため、大阪と名古屋公演でフェルセンを演じることがかなわなかった。「アントワネット役の笹本玲奈ちゃんに『万里生君はクリスティーヌの元に行ってしまうのね』と言われて(笑)。今回は大阪でもしっかりと務めますので、楽しみにしていてください」。大阪公演は、3月2日(火)から11日(木)まで、梅田芸術劇場メインホールにて。チケット発売中。取材・文:米満ゆう子
2021年02月25日舞台『子午線の祀り』が、2月21日(日)よりKAAT神奈川芸術劇場 ホールにて開幕した。『子午線の祀り』は、木下順二が『平家物語』を基に“天”の視点から人間たちの葛藤を描き、平知盛や源義経をはじめとする源平合戦にかかわった登場人物たちを躍動感をもって浮き彫りにし、心理描写も巧みな壮大な歴史絵巻に仕立て上げた戯曲。日本語の“語り”の美しさと荘厳な響きを引き出す群読という独特な朗誦スタイルを随所に用い、演劇史に確固たる地位を築いてきた作品として広く知られてきた。その戯曲を受けて宇野重吉、観世栄夫、木下順二らの演出による初演が1979年。能・狂言、歌舞伎、現代演劇で活躍する俳優、スタッフがジャンルを越えて創り上げ、高く評価された。その後、幾たびもの上演を経て、この伝説的な舞台が、野村萬斎の新演出により世田谷パブリックシアターで上演されたのが、3年前の2017年のこと。世田谷パブリックシアターとKAAT神奈川芸術劇場の共同制作となる今回は、2017年版をベースにした新演出で、野村萬斎が再び作品を立ち上げた。初日を終えた野村は、「『子午線の祀り』という戯曲そのものが持つ宇宙観を生かしながらも、より凝縮した“ドラマ”になった」と手応え十分の様子。成河は、「簡単には越えられない山に全員でタックルして、立ち向かっているという感じですね」と全員が一丸となって舞台に挑んでいることを明かす。若村麻由美は「劇場に共にいる喜びを分かち合い一期一会のタイムトラベルを千穐楽迄果たします」と感染症予防対策に努めながら来場した観客に向けて、感謝のメッセージを送った。本舞台は神奈川公演に続き、名古屋、久留米、兵庫、東京と3月30日(火)まで上演される。『子午線の祀り』作:木下順二演出:野村萬斎音楽:武満徹出演:野村萬斎、成河、河原崎國太郎吉見一豊、村田雄浩、若村麻由美ほか企画制作:世田谷パブリックシアター共同制作:KAAT神奈川芸術劇場
2021年02月24日デビュー40周年を迎えた佐野元春が、4月4日(日)に大阪城ホールで特別コンサートを開催する。「佐野元春&THE COYOTE GRAND ROCKESTRA」チケット情報1980年にデビューし、今もクリエイティブに走り続ける佐野元春という奇跡。本公演ではこれまでファンに愛されてきた数々のオールタイムヒットから最新の重要曲まで、まさに40周年に相応しいセットリストが用意される。特別なワンナイト・スタンド。その歴史的な瞬間は見逃せない。バッキング・バンドは、THE COYOTE GRAND ROCKESTRA。深沼元昭(g)、藤田顕(g)、渡辺シュンスケ(key)、小松シゲル(ds)、高桑圭(b)に加えて、大井スパム(per)、Dr.kyOn(key)、山本拓夫(brass section)らが参加する。公演は、新型コロナウイルス感染拡大予防対策を万全に整え開催される。政府によって示されたイベント開催制限条件に基づき、感染拡大防止対策ガイドラインを遵守した人数制限(会場キャパシティの50%以下、収容人数5000人以下)で実施、換気・消毒・検温など最新の医学的見地にもとづいた万全の対策をとってのライブ開催となる。また、今回のコンサートの収益の一部は、コロナ禍の逼迫する最前線において、治療や感染予防に懸命に対応されている医療従事者の方々への支援金として役立てることが発表されている。チケットは、2月22日(月)18:00から3月3日(水)23:59まで先行抽選プレリザーブの受付を実施。【佐野元春からのコメント】「緊急事態宣言」words by 佐野元春無闇に恐れないで無駄に油断しないでいつものフローで行こう記念ではなく祝祭でもなく唄う理由を知るためのまぎれもない証今ここに迎えた40年ではあるが今ここで舞台に立てることに感謝直の場仮想ではなく現実の場リアルな場、本物の場君に会えるのはこれで最後になるのだろうかそうであってもそうでなくても明日は来るここにささやかな場を仲間たちに捧げたい守って、祈って準備ができたら知らせてほしい門は開けっぱなしにしておくよ一緒に過ごそう2021.2 佐野元春
2021年02月22日この春、聖徳太子の予言の書を巡る青春時代活劇『未来記の番人』が全国4か所で上演される。築山桂の人気小説を初舞台化。主演は来年デビュー10周年を迎えるA.B.C-Zの戸塚祥太。大阪市内で開かれた会見で戸塚は、殺陣の稽古に入ったことを報告。これまで使ったことのない筋肉に反応が出て四苦八苦中だが「さらに練習を重ねれば対処法が分かるので、長期間の公演に耐えうる肉体が作れる」と頼もしい。「未来記の番人」チケット情報時は寛永19年、徳川三代将軍家光の時代。将軍に仕える時の権力者・天海大僧正(笠原章)の命により、聖徳太子の予言書「太子未来記」を手に入れるため、大坂四天王寺へ向かう千里丸(戸塚祥太)と上忍・早瀬士郎左(松田悟志)。千里丸は千里を見通す異能者だが、大坂で異能の僧侶・道啓(勝野洋)や豪商・泉屋理兵衛(曽我廼家寛太郎)、銅吹き職人の巽(冨岡健翔)らと出会う。そんな中、千里丸の運命を左右する異能少女・紅羽(惣田紗莉渚)が現れる。様々な出会いを経て成長する千里丸役の戸塚は、とりわけ紅羽との場面が重要と話す。「天海様に仕えることが彼の生きるすべてだった千里丸にとって、紅羽との出会いはショッキングだった。彼女が千里丸に新しい命を吹き込んだとも言えるので、ふたりの関係はしっかり表現したい」笠原章ら手練れな舞台人らに殺陣や所作などを学びつつ、見せ場のダンスカンタービレでは培ったアクロバティックなダンススキルも存分に披露する。「先輩たちは一太刀の説得力が違うので、貴重な機会にひとつでも体得したい。ダンスカンタービレではみんなが個々の心情を表現できるよう、今は稽古で体が動くようにスタンバイしています。またジャニーズJr.冨岡健翔との場面では、面白いコンビネーションで見せられれば」と硬軟織り交ぜた役作りに期待が高まる。異能者たちが繰り広げるファンタジックな時代活劇は、現代にも通じる作品とアピールする。「実際に予言書があって、本当に未来が書かれていたとしても、今日を生きるのも明日の生き方を選ぶのも自分自身、その人一人ひとりの考えによるものだと思うので。今はコロナの影響もあり、個人が試される場面も多い。千里丸のように一体自分は何者で、どこから来てどこへ辿り着くのか。そういうことを一層考えていく時代になっているのかなと思います」。公演は3月12日(金)から21日(日)まで東京・新橋演舞場、3月27日(土)に愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホール、3月30日(火)に福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール、4月3日(土)から11日(日)まで大阪・大阪松竹座にて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2021年02月22日“ダンス×演劇×J-POP”を掛け合わせ、セリフを使わず身体表現をメインに物語を立ち上げるダンスエンタテインメント集団・梅棒。彼らの新作、11th STAGE『ラヴ・ミー・ドゥー!!』が東京・サンシャイン劇場にて現在上演中だ。3rd STAGE 『男なら、やってやれ!!』の数年後が描かれ、代表の伊藤今人を中心に、鶴野輝一、遠山晶司、塩野拓矢、櫻井竜彦、楢木和也、天野一輝、野田裕貴が出演する本作。昨夏メンバーに加わった多和田任益のお披露目公演で、ゲストの押田岳、新垣里沙らが華を添えている。アイドルオタクの内気な少年(多和田)、パーカーを特徴的に着こなすストリートギャング(押田)、歌とダンスをこよなく愛する少女(新垣)は、ある共通項から熱い友情を育むものの離れ離れに。数年後に再会を果たした3人の住む世界は、当時と圧倒的に異なっていて──。劇中は、これらの人間模様とアイドルオーディションの行方が同時進行で描かれる。梅棒EXTRAシリーズ『ウチの親父が最強』へのゲスト出演を経て、メンバーとして初参加する多和田は終始、ネルシャツをボトムスにインしたオタクスタイル。頭にバンダナを巻き、デコうちわ&サイリウムを掲げるヲタ芸ダンスで“推しのいる尊さ”を全身で体現する。作・総合演出を務める伊藤が開幕に際して寄せた「愛するもののためならどんな困難も乗り越えられる」というコメントを象徴する存在に感じられた。正統派のアイドルダンスで客席を魅了する新垣には、元・モーニング娘。である彼女らしい見どころも。本作のベースとなった『男なら、やってやれ!!』には新垣をモデルとする役が存在し、今回の続編に本人が出演するとあって、伊藤も「いよいよこの作品に魂が宿る」と感激しきりだ。喜怒哀楽を爆発させる巧みな表情にも注目したい。主人公もヴィランも、愛する者を応援したい気持ちは一緒。これらが舞台上をほとばしる圧倒的なエネルギーや牽引力となって、ストーリーは輝きを増しながらぐんぐん進んでいった。“推し”のいる人すべての心に刺さるであろうステージ、ぜひご賞味あれ。東京公演は2月28日(日)まで。その後、3月6日(土)〜7日(日)に愛知・ウィンクあいち、3月11日(木)〜14日(日)に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールと巡演する。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2021年02月22日フェスティバルホールの建て替え後、2013年のオープニングシリーズより2年に1度開催している『祝祭大狂言会』。5回目の今回は、人間国宝・野村万作を筆頭に、息子・野村萬斎、孫・野村裕基ら三代がそろった野村家一門の出演で贈る。通常の狂言会は400~600席規模の能楽堂での上演がほとんどだが、『祝祭大狂言会』は2700席あるフェスティバルホールの大空間を活かした演出となり、その新たな味わいに狂言初心者から通まで人気が高い。今回は萬斎の楽しくわかりやすい解説に始まり、『二人袴』、『月見座頭』、関西初登場の新作『鮎』という狂言三作品のプログラム。その見どころと意気込みを万作、萬斎が語った。「祝祭大狂言会2021」チケット情報「フェスティバルホールでは舞台上の人間が小さく見えます。俯瞰して見るという目線で人間の滑稽な側面を描き、人間っていいもんだなと愛おしくみせるのが狂言。この広いホールで俯瞰した目線を持つことは、かえって客観的に観ることができて楽しい。そういう特性があるのではないかと思いますね」と萬斎。この広さでの狂言会は東京にもなく、“グランド狂言会”という捉え方でこのホールならではの演出を生み出してきた。最初の演目『二人袴 三段之舞』は、「まずはコロナ禍で閉塞感を感じている時に、大笑いして底抜けに楽しんでいただきたい。大甥の太一郎と息子の裕基が兄弟を演じるのは本邦初公開です。三段之舞でお囃子も入れてにぎにぎしくお見せします」(萬斎)。次に「狂言の中で異色な曲」と萬斎が言う『月見座頭』は、万作とふたり、息の合った親子共演で。「人間の両面性が盛り込まれている狂言です。昔なら盲目の人を哀れな人と演じていたと思いますが、私は現代的に捉え、人間を考えるテーマに磨きをかけてやりたいと思っております」と万作。盲目の人が見る月とは…その至芸を秋野の風情の中で。そして、池澤夏樹の作品を萬斎が演出・補綴し、2017年に国立能楽堂で初演。今回が関西初上演となる『鮎』について萬斎は「狂言ならではの機知に富んだ演出で鮎たちを表し、その鮎が劇を進行していく。視覚的なおもしろさと、都市と地方、若者の未来を考えるテーマを含んだ作品です」。フレッシュなドタバタもの、不条理な月の世界、新しい発想の新作。違った味わいが楽しめる三演目だ。「三世代それぞれの良さを味わっていただき、狂言で心を解放して生きることへのエールを送れるように。皆さんが勇気と覚悟を持って劇場に来てくださるからには、ますます頑張って、その行動にお返ししたい思いでいっぱいでございます」(萬斎)。公演は、4月25日(日)大阪・フェスティバルホールにて上演。チケット発売中。取材・文:高橋晴代
2021年02月22日俳優の小沢道成が、作・演出・美術までも手がける演劇プロジェクト「EPOCH MAN」。2019年に初演されて好評を博した舞台『夢ぞろぞろ』が2021年2月19日(金)から、下北沢・シアター711で上演される。本作は、小沢と田中穂先(柿喰う客)による二人芝居。とある駅の売店で働く60歳の夢子(小沢)と、ある日電車に乗ることができなくなった27歳の夏目(田中)の物語だ。呼吸が荒く、何やら様子がおかしい夏目。駅の売店に立ち寄って、飲み物を買おうとするが、いくら呼んでも店員はいない様子。困った彼はカウンターにお金を置いて、お茶を飲み干す。すると突然、店員の夢子が現れて、夏目が万引き犯だと騒ぎ立てる。くすりと笑わせるコメディ作品。かと思いきや、過去と現在を鮮やかに行き来して、一気に緊張感が走る場面もあって……。コロナ禍ですっかり忘れていたが、思えば、街には、見知らぬ者同士が交わす他愛もない会話であふれていた。電車で隣に居合わせた人、落とし物を拾ってくれた人、同じ空間で同じ作品を楽しんだ人。たまたま交わした会話で、心が温かくなったことも、背中をそっと押されたこともあった。本作の夢子と夏目のような会話が懐かしくも、羨ましくも、微笑ましくも思えた。脚本は初演の時から変えていないそうだが、初演をご覧になった方でも、きっと違う見え方をするのではないか。小沢が手がけた美術もいい。舞台中央に、どでんと置かれた箱型の売店。飲み物やお菓子などが所狭しと陳列されていて、壁には「カラオケ1曲30円」なんていう貼り紙も見える。精巧に作り込まれた「箱」がくるくる回転することで、過去と現在を行ったり来たりしながら、物語は加速していく。物語をより魅力的なものにさせる美術だった。なお、パンフレットも力作である。小沢自身の創作日記が書かれているほか、宮崎吐夢との対談もあって、読み応え十分。本作の「続編」で、昨年6月に本多劇場での一人芝居無観客生配信「DISTANCE」内で上演された『夢のあと』(小沢出演・脚本・演出)の脚本も併せて掲載されている。作品が生まれていった過程が垣間見えるので、観劇の際はぜひ合わせて読んでみてほしい。上演時間は約75分(“換気タイム”はあるが、休憩はない)。公演は28日(日)まで。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2021年02月22日ゴジゲン第17回公演『朱春(すばる)』が4月に上演される。松居大悟と目次立樹に話を聞いた。取材をしたのは2月上旬。約1年3カ月ぶりとなる新作公演について、作・演出を手がける松居は「どうしたらいいんだろうと思っています」と明かす。というのも、「幕が開く4月1日がどんな世の中になっているのかが読めないから。ようやく演劇観れるぜ!という状況なのか、なんとか勇気を出して劇場に行く、という状況なのかで違うなと思っていて、それを言い訳にしてまだ考えていないんですけど(笑)」。それに対し目次は「そうやって変化していく世の中の状況をはねのけるくらい、ゴジゲンたちはこれ!というものが僕は観たいかな。前作『ポポリンピック』は、オリンピックやパラリンピックを題材にしたけれど、今回はそういう時事ネタではなく、僕らのエッセンスを凝縮したようなものが観たい」。つまりまだ内容は未定なのだが、ゴジゲンの作品の特徴のひとつが、稽古場では全員でテーマについて話し、共有しながら芝居を立ち上げていくスタイル。そうやって生まれたものだからこその生々しさに、観客は胸を掴まれる。今、松居が今作のテーマにしようとしているのが「居場所」。「最近はゴジゲンのメンバーも各々の大切な居場所ができはじめて、前はずっとうだうだしていたのに『稽古が終わったら家に帰ります』という感じになってきました。僕はそれが寂しいから、それについてみんなで考えたいなと思っていて。答えは出なくてもいいんですけど」。タイトルを『朱春』にしたのも「『青春』の次は『朱夏(しゅか)』というのですが、僕らは青春は終わったけど『朱“夏”』まではいってない気がする。『朱“春”』くらいがちょうどいいと思いました」(松居)。全員30代だからこその変化。目次はどう感じているのか。「でも、ゴジゲンの稽古と公演の2か月間は、自分勝手でいられる時間なんです。他のメンバーも他の現場だと“仕事”って感じで、目の色も違うのですが、この中だと緊張もなにもないし、したらいけないこともほとんどない。結構わがままな時間なんだと思いますね」。だから公演を前にした今は「謎のワクワク感と安心感があります。脚本がなくても別に不安はないですし(笑)」と笑う。約4年ぶりの劇団メンバーのみでの上演となるため「コアで狭い話にしたい。あとくだらない話。外よりもきれいな桜が見せたいなと思います!」(松居)という『朱春』は、4月1日(木)から11日(日)まで東京のザ・スズナリにて上演。チケットぴあでは2月21日11時より先行先着販売がスタート。文:中川實穂
2021年02月19日「はい、全員優勝ー!」と声高らかに、勝利のラッパを吹き鳴らしたくなる。主演の山田孝之“王様”を筆頭に、仕込みかアドリブか、キワキワ路線を攻めるでお馴染みの演出家・福田雄一がタッグを組んだミュージカル『モンティ・パイソンのSPAMALOT』が絶賛、大阪・オリックス劇場で開幕中だ。出演者が全30曲、生オーケストラの演奏で歌い踊る。お気楽なのに見応えたっぷり、聴きごたえ満点な約3時間が楽しめる。ミュージカル「モンティ・パイソンのSPAMALOT」featuring SPAM(R)の公演・チケット情報本作は、福田監督が敬愛する『コメディ界のビートルズ』こと、イギリスの人気コメディ・グループ“モンティ・パイソン”の大ヒット映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(1975年公開)を元にミュージカル化したもの。メンバーのエリック・アイドルが脚本・作詞を手掛け、2005年にブロードウェイ初演。奇抜な発想で本場の観客から爆笑をさらい、トニー賞14部門ノミネート、最優秀ミュージカル賞を含む3部門を受賞した、紛れもない名作だ。日本では福田演出で2012年初演、2015年再演を経て、この度キャストを一新し、6年ぶり3度目の上演が実現した。ヨーロッパの有名な物語『アーサー王と円卓の騎士』をモチーフにした……、あたりですでに瞼が重くなり始めた嬢ちゃん、坊ちゃん、歴史や古典が苦手でも大丈夫。「アーサー王が忠誠を誓った騎士たちと聖杯探しの旅に出る」と、順調に進めば5分程度(は言い過ぎにしても)で終わる単純な物語を約3時間の超大作たらしめる理由は、その大半がコントで構成されているから。しかも通常は台詞の変更が認められにくいブロードウェイ作品にあって、「笑いにこそ文化の違いが出やすい」とお察しのエリック・アイドル様から、アレンジ許可が下りているというから凄い。当然、日本の時事ネタ満載の本作は、言うなれば「福田雄一お笑いショー」。そう断言できるかは、ぜひ劇場で確認してほしい。主演の山田孝之はどんな小ネタもイケボと真顔で対応、その頑なさが笑いを誘う。新妻聖子はドーム級の声量で、頓珍漢な歌詞も一大ミュージカルソングに仕立てる凄技を連発。賀来賢人はそろそろ俳優兼芸人としても異論はなさそうなほどの尺を任され、しっかり期待に応える活躍ぶり。安心感では、お笑いコンビ「シソンヌ」の存在が頼もしい。じろうと長谷川忍のテンポ感が物語に弾みを付けるから、何事も「初めまして」な矢本悠馬、小関裕太、三浦宏規らと絡む場面は想像以上に見もの。予測不可能な緊張感が伝わり、違った意味で見応えがある。全編を通し、演者自身が作品を楽しんでいるのが伝わってくる。ライブ感溢れる演出で、笑う楽しさを味わわせてくれる。大阪公演は2月23日(火・祝)までオリックス劇場にて上演中。取材・文:石橋法子
2021年02月19日『よろず占い処陰陽屋へようこそ』のオンラインリーディングライブが、3月7日(土)に2年ぶりに開催される。原作者・天野頌子先生完全書き下ろしストーリーを豪華声優陣が熱演。原作小説は、海外にも多くのファンを抱える人気シリーズで、累計発行部数は130万部を超える。今回の配信公演では、海外からのチケット購入も可能。キャストと世界中のファンが同じ時間を体験、共有するという、リアルタイム配信ならではの贅沢な楽しみ方を体感したい。公演ではメインとなるリーディングライブに加え、キャスト陣によるアフタートークも予定している。チケット販売中。◆メインキャストからコメントが到着!諏訪部順一(安倍祥明 役)本作の朗読イベントは過去にも行われたことがありましたが、今回はライブ配信での実施となります。国内はもとより一部の海外の方にもご覧いただけるそうなので、より一層頑張りたいと思います。今回披露するのは天野頌子先生書き下ろしの物語。陰陽屋シリーズファンのみなさまは特にお見逃しなく!松元惠(沢崎瞬太 役)陰陽屋は、読んだ方がどこかしら自分の身近に感じられる空気を持つ、元気を貰える魅力ある作品だと個人的に感じています。今回はご自宅に居たまま寛いで楽しんで頂けるなんて、陰陽屋らしくてピッタリで素敵な企画だなあと感動しました。そして何より、また皆様にこうして陰陽屋の物語をお届けできることが本当に嬉しいです。がんばります!小野友樹(高坂史尋 役)高坂史尋役、小野友樹です。前回の公演が約2年前と伺って驚きました…!今回はオンラインリーディングという形で、皆さんに朗読をお届けします。是非、楽しい時間を一緒に過ごしましょう。どうぞお楽しみに!遊佐浩二(山科春記 役)今回、「よろず占い処陰陽屋へようこそ」のリーディングライブに参加させていただくことになりました。こういう状況ですので、オンラインで無観客となりますがご自宅でじっくり楽しんでいただけることと思います。ただ、登場人物も限られる分セリフ量は多いと思います。緊張する舞台ですが精一杯努めさせていただきます。◆開催概要【イベント名】 「よろず占い処 陰陽屋と琥珀の瞳」オンラインリーディングライブ【日時】 3月7日(日)開演:17:00【出演】 諏訪部順一/松元惠/小野友樹/遊佐浩二/竹内想
2021年02月19日2月17日(水)に新宿のシアターサンモールで開幕を迎えた舞台「HAPPY END」。ソーシャルディスタンスを保って実現できる最大限かつ最上の舞台表現として辿り着いた“最少人数での演劇”=“ひとり芝居”。この時代だからこそ生まれたといえる、新たな舞台表現と物語“SOLO Performance ENGEKI”の第一弾作品が「HAPPY END」。広い舞台にひとり立つのは、『刀剣乱舞』シリーズ(2019年~)等の話題作への出演が続く注目の俳優・梅津瑞樹。100年後に地球が滅ぶことが分かっている“未来のない世界”で、人類はどのような生き方を選ぶのか。ひとりの青年の日常を通じ、時代を超え描き出されていく壮大な物語。SOLO Performance ENGEKI 「HAPPY END」の公演・チケット情報開幕直前には公開ゲネプロが行われ、梅津自らが「手ごたえを感じられた」という圧巻の演技を見せた。開幕を目前に控え、梅津は「たったひとりで観客席に演じる喜びを届けることができる贅沢をかみしめている。本当に演じるのが好きだということが伝わり、演劇って楽しいものだと、みんなに感じて欲しい」と語った。また脚色・演出を手掛ける粟島瑞丸は「役者とふたりで作ってきた舞台。まるで親心のように感動している」と語ってくれた。エンタテインメントは不滅であることを強く信じさせてくれる感動の“ひとり芝居”、SOLO Performance ENGEKI 「HAPPY END」は新宿シアターサンモールにて2月23日(火・祝)まで上演。チケットはいずれもチケットぴあで購入できる。■タイトル:SOLO Performance ENGEKI 「HAPPY END」■会期:2021年2月17日(水)~2月23日(火・祝)■脚本:宮本武史■脚色・演出:粟島瑞丸(演劇集団Z-Lion)■音楽:坂部剛■出演:梅津瑞樹■会場・日程 東京:シアターサンモール
2021年02月17日「Daiwa House Special Broadway Musical『The PROM』Produced by 地球ゴージャス」の製作発表が行われ、主人公カップルを演じる葵わかな・三吉彩花らキャスト10人が登壇した。2018年に米ブロードウェイで上演され、翌年のトニー賞で7部門にノミネートされた本作。メリル・ストリープやニコール・キッドマンが出演した映像化作品がNetflixで配信され話題を集めたミュージカルの日本版を、地球ゴージャス主宰の岸谷五朗による脚本・訳詞・演出で届ける。同性の恋人アリッサ(三吉)と参加しようとしたダンスパーティー“プロム”が中止になり、その原因になったといじめを受けるエマ(葵)の存在を知ったブロードウェイの元スターたちは、自分たちの話題づくりのためにエマを助けようとして──。製作発表の冒頭で行われたパフォーマンスでは、葵とアンジー役の霧矢大夢が「ZAZZ」で、D.D.アレン役をトリプルキャストで務める大黒摩季、草刈民代、保坂知寿らが「目立ちたくないのよ!私」で歌声を披露。三吉のソロで始まった「It’s time to dance」ではホーキンス校長役をWキャストで務める佐賀龍彦(LE VELVETS)とTAKE(Skoop On Somebody)も加わり、ラストは全員で力強いハーモニーを響かせた。レズビアンの女子高生であるエマを、葵は「複雑な環境に身を置いている役」と表現。「自分にとっての当たり前を貫くためにどうしたらよいか葛藤し、成長していく彼女の“強さ”を表現したい」と覚悟を覗かせると同時に、「アリッサとの恋路に邁進する、10代のキラキラした要素も見せていけたら」と意気込む。これを受けた三吉も「わかなちゃんとは初共演ながら、波長が似ていると感じたんです。周りからもそう言われる機会が増え、カップルらしさが出てきたようで嬉しかった」と続く。そして「何といっても女子高生役。演じる私たちは20代前半ですが落ち着いて見られるので、もっとフレッシュさを出していけたら」と笑顔を見せた。バリー・グリックマン役としてキャストに名を連ねる岸谷は、2018年のトニー賞ノミネート作品を現地で10本近く鑑賞。その中に本作も含まれており、「帰り際の観客がいちばん幸せそうな顔をしていたから」という理由で日本版の上演を決意した経緯を語る。その提案を受けた岸谷の盟友で、トレント・オリバー役の寺脇康文も「地球ゴージャス25周年を終えたあとの展望に新しい風が吹く予感がした」と劇団名義で初となる海外作品への挑戦に向けた思いを述べた。公演は3月10日(水)〜4月13日(火)に、東京・TBS赤坂ACTシアターにて。その後、5月9日(日)〜16日(日)に大阪・フェスティバルホールと巡演する。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2021年02月17日2月放送開始の大河ドラマ『青天を衝け』への出演をはじめ、歌舞伎界の枠を超えて活躍する尾上右近が京都・南座公演『三月花形歌舞伎』に登場する。中村壱太郎、中村米吉、中村橋之助ら注目の若手と挑むのは、三大名作のひとつ『義経千本桜』より『吉野山』と『川連法眼館』をAプロ・Bプロの役替わりで上演。加えて彼ら4人が日替わりで『歌舞伎の魅力』を解説する。「三月花形歌舞伎」チケット情報『吉野山』は義経を追って形見の鼓を携えて旅をする静御前が、お供の佐藤四郎兵衛忠信とはぐれ、後に再会するまでの道行きを艶やかな舞踊で表現する。『川連法眼館』は忠信が義経の元を訪ねたところへ、静御前が実は子狐が化けた忠信を伴い現れる。子狐ははぐれた忠信に代わり、母狐の皮が張られた鼓と静御前を守って来たのだ。両作品で忠信役を勤める右近は、自主公演「研の會」第一回公演で同役を選ぶほど、思入れの強い「憧れのお役」と明かす。「スチール撮りでは、衣裳を着ただけで感動して涙が止まらなかったことを思い出しました。まさか本興行で実現するとは。信じていれば願いは叶うと、23歳だった当時の自分に教えられた気がする」と感慨もひとしお。Bプロで同役を勤める橋之助は後輩でもあり「負けられない」と一 層の気合が入る。通常ダブルキャストでは踏襲する型や指導者が異なるが、今回は共に(七代目 尾上)菊五郎に指導を仰ぐ。「『川連法眼館』の狐忠信は中性的な役ですが、立役の橋之助さんと、本興行では圧倒的に女方が多い私がやる中性的なお役とでは、型は同じでもおのずと違いが出る」と見る。ペアを組む壱太郎は互いに自主企画の公演や作品に出演し合うなど苦楽を共にし、夢を語り合う間柄。「尊敬する先輩という関係を超えた精神的な恋人」と絶大な信頼を寄せる。また同級生の米吉は、「醸し出す華やかな雰囲気や舞台度胸が圧倒的。何よりお喋りが上手なので、お芝居もそうですが彼が案内役をつとめる『歌舞伎の魅力』はとても楽しくなると思います」と期待する。歌舞伎俳優を父に持たない右近。様々な分野で経験を積み、いつか後輩が憧れる「稀有な存在」 となり得るその日まで、信じた道を邁進する。「今回、音羽屋ゆかりの演目『川連法眼館』の狐忠信は、本興行のお役としては初めて菊五郎のおじさんに教えていただきます。また『吉野山』の忠信の引っ込みの演出では僕がまだ本名だった頃にご縁をいただいた(四代目市川)猿之助のお兄さんから許しを得て、澤瀉屋(※)の型『ぶっ返り』に挑戦させていただく。いろいろミックスしながらも自分の形を模索している姿をこの重要な公演で提示できるのは嬉しいです。テレビ、映画など、どのジャンルも本気ですが、歌舞伎ほど分かりやすい本気は見逃してほしくないですね」。(※)「澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です。公演は3月6日(土)から21日(日)まで(12日(金)は休演日)、京都・南座にて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2021年02月17日赤堀雅秋が1年ぶりに手がける新作のテーマは、「8050問題」。母親の死後から引きこもりになった弟とその兄、老齢の父親、さらにNPO法人の相談員たちが紡ぎ出す、濃密な人間ドラマだ。そこで作、演出、出演の3役を兼ねる赤堀と、長男役の三宅弘城に話を聞いた。M&Oplaysプロデュース「白昼夢」の公演・チケット情報20年来のつき合いながら、赤堀作品に三宅が参加するのは今回が初。三宅は「念願の赤堀作品」と切り出し、「赤堀さんの書く世界と、演出する空気感がものすごく好きで。正直、赤堀さんの作品ならなんでもいいくらい(笑)。俳優としてはナイロン(100℃)で共演したことがあるんですが、すごく真面目ですし、赤堀さんが出て来ると途端に場が生々しくなる。そういうのを体験して、ますます一緒にやりたいと思うようになりました」と、全幅の信頼を寄せる。赤堀に三宅の俳優としての魅力を聞くと、「ご本人を前に恥ずかしいな」と照れつつも、「常に前向きで、少しでも面白くするために常に何かを打破しようとしている。すごく尊敬している俳優さんです」と、こちらも信頼の強さを伺わせた。キャストは5人のみ。長男を三宅、次男を荒川良々、父親を風間杜夫、NPO法人のスタッフを赤堀と吉岡里帆が演じる。この顔ぶれを見て赤堀は、「いいキャストだと思いますよ」としみじみ。「ちゃんと舞台の上で反応し合える人たちだと思うので、その化学変化みたいなものが楽しめるのではないかと思います」と、期待を膨らませる。三宅も「皆さん一緒になって作っていってくれる、チーム感のあるカンパニーになりそうですよね。こちらも気を抜いていられないなと思います」と、背筋を伸ばす。赤堀作品に関して、風間、荒川はすでに経験済みだが、異色なのは吉岡。ドラマ『あさが来た』で共演経験のある三宅は、「『私、小手先で出来ないんです』って言うくらい、すごく体当たりで熱い子」と当時を振り返ると、赤堀は「じゃなきゃ出ないですよね、このメンツで」とニヤリ。さらに「ほんわかしたイメージがありますけど、せっかくならグロテスクな部分も引き出せたら面白いかも」と、気になる言葉も飛び出した。現段階での物語の設定は前出の通りだが、実際どうなるかは赤堀のみぞ知るところ。当の本人は「僕が一番知りたいですけどね」と笑うも、最後にこう語る。「変な手触りの芝居になればいいなと思います。抽象的な言い方ではありますけど、この5人で、等分で、混沌とすればいいんじゃないかなと思いますね」。取材・文:野上瑠美子撮影:源賀津己
2021年02月16日現在、絶賛公演中の博多座2月公演『二月花形歌舞伎』。初日を前に行なわれた公開稽古に松本幸四郎が登場、意気込みを語った。母親が博多出身ということで、博多を「第二の故郷」と呼ぶ幸四郎にとって、博多座は「前回よりも大きくなった姿を見ていただきたい」という思いで挑む特別な舞台。今回は座頭として中村歌昇、中村壱太郎、 大谷廣太郎、中村米吉ら、華も実力も兼ね備える花形俳優たちを率いての登場となる。「平均年齢の低い一座ですが、その分情熱とパワーあふれる熱い舞台を楽しんで頂けると思います。昼の部、夜の部ともにそれぞれお芝居と舞踊がひとつずつという組み合わせ。歌舞伎を観た!という満足度の高い演目ばかりです」。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、客席の前後左右を 1 席ずつ空けるなど様々な対策を実施しての上演。また、名物となっている歌舞伎トークイベントを『歌舞伎ナイト・オンライン in 博多座~年男・幸四郎、仲間と語ってよかろうもん!~』と題し、オンラインで配信することも話題だ。本公演の見どころはもちろん、過去の博多座出演時に印象に残った演目の話や、YouTube でよく見ている動画の話、そして夜の部『元禄花見踊』の大道具の魅力を、幸四郎自らが舞台上で紹介するなど盛りだくさんの 1 時間半(※予定。配信映像は事前収録)。「せっかく博多座に行くのだから、少しでも歌舞伎との距離を縮めてほしいという思いで続けているイベントです。今回も僕の進行でダラダラしゃべりました。面白かったのは僕だけだったのでは?という懸念もありますが(笑)、素のトークを楽しんで欲しいですね」と笑顔。「このような状況の中、歌舞伎の公演をさせていただけることに改めて感謝しております。大変な状況は続きますが、そんな中でも立ち止まるのではなく、少しずつでも進んでいくことが必要。まずはこの公演を全員で完走することが目標です」と締めくくった。「二月花形歌舞伎」は2月24日(水)まで福岡・博多座にて上演中。配信は 2 月 17 日(水) 20:00~チケットぴあ「PIA LIVE STREAM」にて。アーカイブ配信は一週間。チケットはどちらも発売中。
2021年02月15日