サカイクがお届けする新着記事一覧 (5/34)
厳しいコーチに代わってからチームは強くなったけど、試合前に腹痛を起こすようになった。怒鳴ったり選手を番号で呼ぶこともあるし、こんなチームにいさせたくない。近隣の弱いけど楽しんでいるチームに入れたい。本人も「怒鳴られるとチャレンジできない」と言っているのに、サッカー経験者の夫と実兄が反対する。我慢の先に何があるの?というご相談。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、お母さんにアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<息子が周りに酷いこと言われてるのに、「〇〇(息子)も言ってるからお互い様」と言うコーチに不信感を抱いてます問題<サッカーママからの相談>こんにちは。小学5年になる息子のことでご相談させていただきます。息子は幼稚園の頃から現在所属している少年団にいます。サッカーが大好きで誰とでも仲良くなれるそんな子でした。3年生になり、コーチが変わりました。それまで中学生を主に教えていたコーチということもあり全体的に強くなってきましたが、同時に厳しい(から)と仲間が辞めていく姿もありました。4年生になり、試合前に腹痛を起こすようになったので相談した際も「メンタルが弱い」と言われたのですが、本人の続けたいという意思もあり、前向きにとらえ頑張らせていました。4年の後半になると息子に対する要求がさらに高まり、怒鳴る姿が見られました。ひどいときには番号で呼び、私自身はもうこの指導者の元でサッカーをやってほしくないと思い、夫にも相談していました。近所にある別の少年団は、試合に勝ったことのない弱小と言われているチームですが、みんな優しく楽しくプレーをしています。息子にはこんなチームでやってほしいと考えていますが、「先々をみたとき今の指導者のほうが良い」と夫は反対しています。本人は「怒鳴られると自分のやりたいプレーにチャレンジできないから、自分のやりたいことがやれるチームなら行きたい」と話しています。ただ、サッカー経験のある夫や兄からは「やりたいことをやるには味方の強さも必要だから耐えるべきだ」と言われます。私にはサッカー経験がないし、感情的になっているだけなのかもしれません。でもあと1年半我慢した先に何があるのか私にはわかりません。現在はチームの平日練習は休み、スクールに週2日通い、週末の練習と試合には参加しています。このまま今のチームにいるのが正解なのでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。メールの文章だけでの判断なので、理解が届かない部分があるかもしれませんがどうぞご理解ください。結論から申し上げますと、息子さんがしたいようにやらせてあげてください。その理由を二つほどお伝えします。■息子さんの判断が正解委縮させる指導者の下にはいない方が良いまず1つめ。息子さんが口にした「怒鳴られると自分のやりたいプレーにチャレンジできない」という主張は至極もっともです。サッカーに限らず、スポーツの指導者から怒鳴られたり、強い口調で叱られれば、子どもは委縮します。「失敗したらどうしよう」「コーチの言うとおりに出来なかったらまた怒鳴られて怖い」と震え上がります。そうなると「失敗しないようにしよう」と無難なプレーしか選択しなくなります。サッカーで無難なプレーというのは、例えば横パスやバックパス。それらと違うのが前線にフィードするパスですが、ゴールにつながる前線へのパスは、相手に厳しくマークされるため出す側も受ける側も難易度は高くなります。よって指導者の質が少しずつ上がってきた近年は、子どもたちにチャレンジしてもらうためにも指導者は怒鳴ったり、怒ったりしないことは当然のように言われています。ミスを恐れてバックパスばかりしていれば、技術は全く上がらないからです。そういったことを息子さんは知っているのかもしれません。サッカーが上手くなるには、難易度の高いプレーに挑戦しなくてはいけない。そのためにも、自分を委縮させるコーチのもとにはいないほうがいい。そのような判断です。息子さんがせっかく良い判断をしているのですから、お母さんだけでもまずは後押ししてあげてください。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■腹痛は心理的なプレッシャーがある環境への拒否反応2つめ。冒頭で申し上げたように、相談文のみでの判断なのでもしかしたら私の見立てが間違っているかもしれません。が、メールを読む限り、今現在担当してもらっているコーチは指導をよく学んでいないようです。怒鳴る指導がよくないのは明白ですが、子どもの心のありよう、つまり初歩的な児童心理を理解していないと思われます。例えば息子さんが試合前に腹痛を起こすようになった際「メンタルが弱い」と決めつけています。子どもがこのような症状をきたす場合は、心理的にプレッシャーがあるなど、その環境に拒否反応を示しています。そういったことは数年でも子どもに向き合っていれば、どこかで入れられる知識や情報です。いまどき、子ども側のメンタルの弱さに結び付けているようでは考え方が古すぎます。どうかアップデートしてもらいたいものです。本来ならば、指導者と保護者とで学び合ってお互いに成長できる機会を持っていただきたいですが、子ども側は待ったなし。息子さんがチームをかわりたいというのであれば、一日も早くそうさせてあげましょう。■やりたいプレーの実現に味方のレベルは影響するが、威圧に耐えてまで優先するものではない加えて、お父さんをいかにして説得するかが肝要です。お父さんのおっしゃる「やりたいことをやるには味方の強さも必要だから耐えるべき」は、なんとなくですが理解できます。サッカーはチームスポーツですから、パスを受ける側や出す側の技術レベルの一致はある程度必要だという見解でしょう。しかしながら高学年になると、徐々にそこまでの差はなくなってきます。暴力的な指導に耐えてまで大事に確保すべき環境とは私には思えません。暴力的な指導によって生まれるリスクのほうにより注目してもらいたいです。■やる気のメカニズムがある行動の先に良いことが予測されないとやる気は出ないある行動をとろうとするときに、その行動の先に快感(良い気分)が予測されるからこそ、私たち人間は「やる気」がわきます。例えば、一度机の上を片付けたら良い気分になった。達成感があるからです。この良い気分をつくっているのはドーパミンで、分泌するドーパミン神経の束は、報酬系、快感系ともいわれます。この「片付けをする=良い気分」のマッチングが繰り返されると、その結びつきは強化されます。サッカーであれば、こうやって練習したら上手くなるに違いないと思えばやる気が出ます。過去に「こうやったらできた」といった経験がもとになるのも同じ構造です。その際、その行動と快感を結びつける働きをするのが、左右の大脳半球の下側にある「線条体」という神経核だそうです。この線条体、他者に褒められたり認められると活発に動いて意欲をもたらしてくれます。逆に、怒鳴られたりすると線条体は動かなくなりやる気はつぶされてしまいます。以上の脳科学的根拠をもって、お父さんを説得する材料にしてください。その視点から、息子さん本人が言ったように怒鳴られずにのびのびと楽しくプレーできる環境を選択したほうがいいと考えます。■自分の気持ちを言語化できている息子さんはGood(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)息子さんは自分の気持ちをきちんと言語化出来ていて、さすが高学年だなと感心しました。このように彼が意欲的に取り組めていることと、やる気のメカニズムをぜひお父さんに伝えてください。ご夫婦がともに気持ちよく息子さんをサポートできることを祈っています。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。
2024年06月12日子ども自身が、サッカーが上手くなることや勝利を目指すことは大事なことですが、親御さんの方が熱が入ってのめりこんでしまっていることはありませんか。子どもがサッカーを楽しんで自ら伸びていくために大事なことがあります。クラブチーム、少年団などの所属先、チームの強弱やサッカーの上手い下手関係なく、全てのサッカー少年少女の保護者に大事にしてほしい親の心得「サカイク10か条」。サカイクでは4月に希望チームを募り、10か条のチラシを保護者に配布してもらいました。その中のいくつかのチームに、保護者の反応を伺いました。写真はサッカー少年のイメージ<<関連記事:子どものやる気が見えない時どうすればいい?先輩ママがやってる声掛けなどを紹介 サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■ポジティブな声かけに変わった教員でもあり、スポーツ少年団も代表を務めるAさんは、もともと子どもが悩み、自分で考えて答えを出すことが大事だという考えで、子どもたちに考えさせる指導をしていて、サカイクにも賛同していたそうです。サカイクのSNSで10か条の存在を知り、特に第2条、3条、9条に共感してくれていたとの言います。第2条:今日の結果ではなく、子どもの未来に目を向けよう第3条:子どもの力を信じて、先回りせずに見守ろう第9条:サッカー以外のことを大事にしよう今回の応募の理由は、上記のような接し方の理由を理解していただくことと、保護者の皆さんに親のスタンスをご理解いただきたかったためだそう。実際に配布してみて保護者の皆さんの反応はというと、特に試合での声かけが変わったとのこと。以前は「何やってんだ」「下手くそ」と言った声が多かったそうですが、最近では試合に負けていたり我が子のプレーにちょっとイライラする様子はあっても、それを声に出さず、ポジティブな声援を送るようになり、チームの雰囲気が変わりつつあると教えてくれました。第6条「ダメ出しや指示ではなく、ポジティブな応援をしよう」が響いたようですね。かける言葉を変えるのは、親御さんにとっても取り組みやすいのかもしれません。■チーム代表も「これ良いね」と賞賛、ラミネートして部室に掲げた2人目は、幼少期からサッカーを始め現在でもシニアでプレーをするBさん。甥っ子がサッカーを始めたことで現在のスポーツ少年団で指導を始め、指導歴22年になるベテランコーチです。ケンカが絶えない子どもたちへの接し方に悩んでいた時期にサカイクに出会い、賛同してくださっているそう。今回の応募のきっかけは、どうしても子どもたちにダメ出ししがちな保護者の皆さんに、10か条で親の在り方を伝えたかったから、と教えてくれました。10か条を配布したところ、保護者よりもチームの代表(監督)が「これいいね」と誰よりも賛同してくれて、ラミネートして部室に貼ってくれたそうです。「サカイクも自分たちの方針と同じようなことを言っている」と、指導者たちの背中を押す存在として、次回は保護者会でチーム理念を伝えるとともに配布したいとの要望もいただきました。■自分だけが知っているのはもったいない良いものを共有したかった写真はサッカー少年のイメージ3人目は、中学の教員でありスポーツ少年団で保護者兼コーチをしているCさん。部活動の顧問を任されたときに、指導方法や練習メニューに悩みサカイクの連載(あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ])に出会い、考える力の大切さや子どもたちの主体性を伸ばす大人の在り方に、「自分の考えで良いんだ」と背中を押されたそうです。現在指導している少年団では、勝敗よりも楽しさを重視し、全員出場させる方針とのことで、サカイクの理念と親和性の高いチームなのだそう。10か条に応募したきっかけは「自分だけが10か条を知っているのはもったいない。良いことはみんなに共有したい」という思いからだと教えてくれました。保護者とコーチ陣が同じ方針のもと一体感をもって子どものサッカーを見守る姿勢も大事だと、自分に対しての戒めでもある、とも。10か条を受け取った保護者の皆さんは、我が子を応援するのは良いけど、親が過保護になってあれこれ手を出し過ぎない「見守りのスタンス」が大事だということに理解を示していたそうです。どうしても「まだ子どもだから」とあれこれ親が世話をしてしまったり、プレーへのダメだし、大会に出るようになると勝敗ばかり気にしてしまう......。など親として気になることはあると思いますが、サッカーは親がしているものではなく、子どもがしているのです。親があれこれやってしまうのは自立を妨げてしまいます。サッカーを思い切り楽しみ、自ら考えて動く、それが選手として人間としての成長につながるということをご理解いただいて、保護者のみなさんは子どもたちを見守ってポジティブに応援していきましょう、というのがサカイク10か条でお伝えしていることです。そうすることで、保護者の皆さんも子どものサッカーがもっと楽しい時間になるはずです。子どもが心からサッカーを楽しむための親の心得「サカイク10か条」に興味がわいた、もっと知りたいという方はこちらからご覧ください。サカイク10か条か条チラシをチームへ配布を希望されるかたは、下記よりお申込みください。お申し込みフォームサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年06月10日サッカーにつきもののケガやアクシデント。受傷後の応急処置について、サポートする保護者としては正しい知識をしっかり身につけておきたいものですね。医療情報は年々新しくなるので、最新情報も知っておきたいところです。いざ応急処置をすることになったときに慌てないよう、日本サッカー協会のスポーツ医学委員でJクラブのドクターも務める大塚一寛先生(あげお愛友の里施設長)にお話を伺いました。(取材・文:小林博子)写真は少年サッカーのイメージサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■RICE処置はもう古い?局所冷却療法はアイシングではなく「クーリング」が主流患部を冷やすのは大事ですが、アイシングではなく「クーリング」の温度で行うこと有名な「RICE処置」(RICEは、Rest〈安静〉・Ice〈冷却〉・Compression〈圧迫〉・Elevation〈挙上〉の頭文字)ですが、このうちIce、つまりアイシングは現在は古いとされていると大塚先生は説明してくれました。アイシングを1978年に提唱したドクターが、現在はその説を自ら否定する論文を発表しています。アメリカではアイシングは廃れた方法になっていて、メジャーリーグやNBAなどではアイシングをしている選手をここ数年で見ることはなくなったはずです。アイシングに変わって行われている処置が「クーリング」。アイシングが氷を使って0度以下に冷やすのに対し、クーリングは6~20度以下に冷やすことです。■「冷やしすぎ」に注意。回復を遅らせる恐れが人間の体は炎症するから治るようになっているもの。ところが過度の冷却は炎症活動を低下させる(=治癒力を下げている)にもかかわらず、痛みだけ取ってしまうため良くなっていると身体に勘違いさせてしまいます。また、アイシングで冷やしすぎてしまうと、神経を傷つけてしまう恐れもあり、結果的に回復が遅くなる可能性があるそうです。大塚先生によると、アイシングをした群としなかった群のその後の回復を調べた実験結果では、「した」群のほうがその後の強度やスピードが低下していたことがわかっているそう。■「正しいアイシング」であればOKただし、アイシング自体がすべて否定されているものでもありません。やり方次第では、今も有効な応急処置とされていて、それが受傷後6時間以内の短時間スパンのアイシングです。10〜15分アイシングをし、20〜30分のレスティングをすることを、ケガをしてから6時間繰り返すというものです。■タオルを1枚間に入れて冷やせば簡単にクーリングに近い温度にアンダーラップはテーピングの下に巻く保護テープ写真のオレンジのものNBAやメジャーリーグで行われているクーリングは専用の機械を使って温度管理された水を流し続けるというものです。当然ながら少年サッカーの現場でその機械を持っているチームはないため、NBAやメジャーリーグのように適切な温度とされる6〜20度を保ちながらクーリングを行うのは現実的ではないはず。そこでおすすめなのが「アンダーラップ」を使うこと。アンダーラップとは、テーピングの糊から皮膚のかぶれを防ぐために巻くテープです。ケガをした部位をアンダーラップで覆い、その上から氷嚢を当てる方法です。直接肌に触れないので0度以下になることはありません。「アンダーラップがなければタオル1枚でもOK」と大塚先生はアドバイスをくれました。■ケガから2日過ぎたらクーリングも意味なし受傷から48時間経った後は、冷やしても意味がないことも知っておきましょう。それ以降は冷やすことよりも温める温熱療法に切り替えるほうが治癒力は高まるそうです。現場での応急処置はチーム帯同者や保護者の皆さんが行うことが多いでしょう。これまでケガの応急処置といえば「RICE処置」とされてきましたが、日々研究が進み、現在はICEではなく冷やしすぎない「クーリング」になっていることは、まだ多くの方に知られていません。子どもたちが安全な環境でサッカーを楽しむためにも、大人たちが情報をアップデートすることは大事なことです。今回ご紹介した「クーリング」であると便利なアンダーラップは、薬局やドラッグストアで簡単に手に入るので、チームの救急箱に入れておきましょう。大塚一寛(おおつか・かずひろ)医師、あげお友愛の里施設長。1996年からはJクラブのドクターとしてチームとともに帯同を続けている。現在はVプレミアリーグの上尾メディックス(女子)のチームドクターも兼任。そのほか、『日本サッカー協会スポーツ医学委員』を務め、全カテゴリーの選手の健康管理(脳震盪・ヘディング・熱中症・整形外科的外傷など)に携わっている。多数の講演にも出演し、現場のノウハウや選手のケガ、障害予防などの啓発活動も積極的に行っている。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年06月04日毎年、春と夏に開催しているサカイクキャンプ。サッカーの技術、戦術だけでなく、ライフスキル(リーダーシップ、コミュニケーション、感謝の心、考える力、チャレンジ精神)の向上にも重点を置き、子どもたちの成長へと繋げています。 今回は、サカイクキャンプやシンキングサッカースクールで長くメインコーチを務める菊池健太コーチと、興國高校サッカー部監督として、30人以上のプロ選手を輩出し、現在は奈良クラブアカデミーのテクニカルダイレクター兼U-18コーチを務める、内野智章氏による対談を行いました。後編のテーマは「人間的な成長と、選手としての成功の関連性」について。サカイクキャンプやシンキングサッカースクールでたくさんの子どもたちを指導してきた菊池コーチ、プロになる選手を何十人と見てきた内野氏は、人間的な成長の重要性をどう感じているのでしょうか?(取材・構成鈴木智之)<<前編:「小学生年代で身につけておいて欲しいライフスキルとは?」内野智章×菊池健太対談■好きにやっている子の方が、特徴が伸びる菊池:内野さんはプロになる選手を何十人も見てきたと思いますが、人間的な成長と選手としての成功の関連性に関して、どう感じていますか?内野:サッカーはチームプレーなので、人としての成熟は必要ですよね。人として「いいやつ」じゃないと、チームで浮いてしまいます。(永長)鷹虎もボールを持ったら、パスを出さずにドリブルを仕掛けてシュートばかりしていましたけど、人間的にいいやつなので、周りも「あいつだるいわ」とはならなかったですし。菊池:いまの子たちはすごく上手なので、人間的な部分を伸ばしていけば、もっといい選手になれるのではないかと思っているんです。内野:年齢にもよりますよね。小学生のときは、変に賢い子よりも、好きなようにやっている子の方が、特徴が伸びるのかなと思います。菊池:サカイクキャンプでは、人間的に成長してもらいたいという想いがあり、オフザピッチの部分も非常に大切にしています。キャンプで掲げている5つのライフスキル(リーダーシップ、コミュニケーション、感謝の心、考える力、チャレンジ精神)は、ピッチの外でも育むことができると思っています。■練習しすぎるよりも遊んだ方がいい内野:人間性を高めるためには、サッカー漬けじゃないほうがいいですよね。友達との遊びや家族とのふれあいの中で、育まれていく感性もあると思います。僕は遊びがある選手が好きなので、練習しすぎるよりも、もっと遊んだ方がいいんちゃうかなと思っています。これを言うと、子どものサッカーに真剣な親御さんに否定されちゃいますけど(笑)菊池:子どもと一緒にいられる時間は、小学生の間だけと言っても過言ではありません。うちの子もサッカーをしているのですが、中学に入ってからお互い忙しくなり、一緒にいる時間がほとんど取れなくなりました。それもあって、保護者の方には「一緒にいられる時間は少ないので、サッカー以外のことをするのも大切ですよ」と伝えています。内野:この記事を読んでくれているのは、お子さんのサッカーに熱心な保護者の方だと思いますが、あまり親が真剣にならず、子どもの好きなようにやらせてあげてほしいと思います。■反省会はいらない菊池:保護者の中には、「子どものサッカーを見るのが苦痛」という人もいます。うちの子が試合に出られない、ミスをした、勝った負けたで一喜一憂しすぎる傾向にあるので「サッカーで幸せになってほしい」と、よく言っています。試合のビデオが、反省会の材料になっていたりするので......。内野:反省会は絶対にいらないです。菊池:ある選手が「試合後の車の中が地獄だ」って言っていました。内野:絶対いらないですよね。僕は聞かれるまで何も言わないですね、自分の子どもには。菊池:できなかったことを指摘するのではなく、まずは親子で一緒に楽しむことが大事ですよと、保護者の方にも伝えているんです。内野:僕が「ウチノメソッド」で目指しているのが、公園やストリートで楽しくサッカーをすることであったり、近所のめちゃくちゃ上手いお兄ちゃんに教えてもらう環境を作ることなんです。菊池:素晴らしいと思います。内野:樺山(諒乃介)は小学生のとき、サブで試合に出られず、悔しさのあまり一人で公園に行って、YouTubeを見ながらドリブルの練習をしていましたし、宮原(勇太)は小学生のとき、「ドリブルで全員抜きたいから、ゴールキーパーを志望した。ボールを捕ったら、ドリブルで全員抜けるから」って。もうわけわからないでしょ(笑)。鷹虎もそうですが、小学生のときに、自由にプレーさせてもらえる指導者、クラブのもとでプレーできたから、ああなった部分もあったと思います。菊池:小学生年代は、とくに大人の影響は大きいですよね。その子の、最初のコーチになるわけですから。憧れのコーチでありたいですよね。内野:絶対にそうです。いつまでサッカーをするかは、小学生時代の指導者との出会いで決まるんじゃないですか。7割ぐらいは、選手のサッカー人生が決まるんじゃないかなと思いますけどね。菊池:「好き」は入り口の大事な部分ですもんね。内野智章コーチ監修オリジナルドリブラーになるための動作改善スクール「UCHINO METHOD」>>■相手よりも上手くなって、試合に勝とう内野:僕は小学3年のときにサッカークラブに入ったんですけど、試合がなさすぎて、1年ぐらい、練習に行きませんでした。楽しくなかったから。代わりに、親父と釣りに行っていました。サッカーが楽しかったら、好きになってずっとやるじゃないですか。菊池:そう思います。どうなると楽しいのかと言うと、技術があったら楽しいし、自分の思う通りプレーできたら楽しいし、活躍できたら楽しいし、もっと上手くなりたいと思う。このサイクルに乗せるのが大事ですよね。内野:そのとおりで、試合に勝つためには判断とかももちろん大事ですし、メンタルも大事ですけど、小学生のときは「技術的に上手くなって、試合で活躍する」という感覚が大事だと思います。小学生の頃は「相手よりも上手くなって、試合に勝とう」という感覚がないといけない。菊池:そうですよね。今回は貴重なお話、ありがとうございました。ウチノメソッドも楽しみにしています。内野:ありがとうございました。お互い、頑張りましょうね。
2024年06月03日毎年、春と夏に開催しているサカイクキャンプ。サッカーの技術、戦術だけでなく、ライフスキル(リーダーシップ、コミュニケーション、感謝の心、考える力、チャレンジ精神)の向上にも重点を置き、子どもたちの成長へと繋げています。 今回は、サカイクキャンプやシンキングサッカースクールで長くメインコーチを務める菊池健太コーチと、興國高校サッカー部監督として、30人以上のプロ選手を輩出し、現在は奈良クラブアカデミーのテクニカルダイレクター兼U-18コーチを務める、内野智章氏による対談を行いました。前編のテーマは「小学生年代で身につけておいて欲しいライフスキル」について。サカイクキャンプやシンキングサッカースクールでたくさんの子どもたちを指導してきた菊池コーチ、プロになる選手を何十人と見てきた内野氏は、ライフスキルの重要性をどう感じているのでしょうか?(取材・構成鈴木智之)■いかに上手くコミュニケーションをとれるか菊池:サカイクキャンプでは、2017年からライフスキルプログラムを導入しています。子どもたちに習得してもらいたいのは、リーダーシップ、コミュニケーション、感謝の心、考える力、チャレンジ精神の5つです。内野:いいですね。菊池:なかでもコミュニケーションは重要で、キャンプの会場で初めて会う子ども同士が多く、どう打ち解けて、自分の意見を言えるかが課題になっています。内野さんは高校生を長く指導されましたが、高校年代では、どういったコミュニケーション力が求められますか?内野:高校に入ってきたときもそうですし、高校から大学、プロへと進んでいく中でもそうですが、いかにして、年上の選手と上手くコミュニケーションをとるかは重要だと思います。年上に"かわいがられるキャラ"でいる方が、いいのかなという気がしますね。菊池:僕はサカイクキャンプやスクールを通じて、たくさんの子たちと触れ合っていますが、いまの子たちはオンラインでのコミュニケーションが多い環境で育っているので、サッカーを通じて人と会話したり、勝ち負けの感情も含めて、自分を出せる環境がもっとあるといいなと思うんです。内野:日本の場合は「空気を読むこと」が大事ですよね。初めて集まる人たちの中で、どうコミュニケーションを取るか。サカイクキャンプやワンデイのスクールなど、初めて合う人達がいるコミュニティに連れて行くことは、コミュニケーション能力を高める方法のひとつだと思います。■自己主張の重要性内野:ただ、日本では自己主張だけしていると難しいですよね。海外でプレーしている選手と話すと、どれだけ馬鹿騒ぎの中に入れるかという、大阪の芸人さん的な能力と、その中で相手の空気を読む力が求められると言っていました。海外の場合、自己主張しないと、ミスをしても「自分は悪くない」と言ってくるから、そこで引いてしまうと全部自分が悪いことになる。文化の違いを読み取れるかどうかが大事ですね。菊池:僕は東北や関東でもサカイクキャンプをやらせてもらってますが、大阪の子たちの自己主張の強さは、飛び抜けているなと感じます(笑)内野:それは僕でも思いますよ(笑)。大阪人が他の地域より自己主張が強いというわけではないですが、比較的そうですよね。主張がうまい人が多い。菊池:僕も、話し終えたあとに「ほんで?」とかよく言われます(笑)。大人と会話できるのはすごく大事なコミュニケーションで、サカイクキャンプだと、自己主張をあまりしない子もいます。チームでもおとなしかったり、最初は2人組を作ることすら難しい子がいる中で、自分を出していくことや誰かと関わることの重要性を、サッカーを通じて伝えています。■「チャレンジを大切」に背中を押す内野:海外の選手に話を聞くと、一発芸ができるかどうかで受け入れられるスピードが全然違うそうです。大阪では、下のカテゴリーから上がってきた選手が、あいさつとともに一発芸をすることがあって、そこで滑り倒すと怖いものがなくなります(笑)。永長鷹虎がフロンターレに練習参加したとき、言われていないのに、自己紹介のときに一発芸をやって滑り倒したのがウケて、めちゃくちゃかわいがられた話を聞きました。菊池:それは最高ですね(笑)内野:最初に思いっきり恥をかいたら、怖いものがなくなるんです。日本の子は恥ずかしがったり、失敗や人前で恥をかくのを嫌がる傾向が強いですよね。菊池:そう思います。ミスをして恥をかくのが嫌だから、そつないプレーを選んだり、横パスから入ることが多かったり。なので、サカイクキャンプでは「チャレンジ」を大切に、子どもたちの背中を押すような接し方や声かけを心がけています。内野:それはすごくいいことだと思います。「失敗する勇気」をどう持たせるかが大事です。僕は「ウチノメソッド」を通じて、子どもたちに技術やコーディネーションを教えていますが、観察していると、できないことが恥ずかしいのか、リフティングの課題を途中で止めてしまう子もいます。そのときに「できないことは悪いことじゃないけど、チャレンジしないのはよくないこと。できないから練習するんだよ」と声をかけています。■積極的に失敗しよう菊池:できない自分が恥ずかしいから止めてしまうのか、悔しいから練習するのかで、その後の成長が変わってきますよね。なぜうまくいかなかったのかを考えて、頭の中を整理してチャレンジすることが大切なわけで。コーチの関わりで前向きにさせていくことや、一緒にチャレンジしていくことも必要かもしれないですね。内野:コーチが最初に手本を見せて、ミスをするのもありだと思うんです。「最初はできなくていいよ。積極的に失敗しよう」って。とにかく日本人は失敗を恐れています。常に失敗を恐れているのと、周りの目が非常に気になる。菊池:それはよくないですよね。とくにサッカーではマイナスに働きます。内野:自己主張に関しても、日本は自己主張が過ぎるとダメな空気なんで。「あいつ出しゃばってる」とか「うるせえ」ってなっちゃう。「自己主張が和を乱す」と言われたり。菊池:学校教育の問題になるんですかね、大きく考えると。内野:学校は難しくなってきてますよね。これ言っちゃいけない、あれやっちゃいけないがすごく増えてきているので、難しいんだろうなとは思います。■個性豊かな選手がプロになる菊池:できるだけはみ出ないように、みんな同じ形に育っていきますね。とがってる部分をそぎ落とされて、みんな丸くなっていく。内野:先生がそうなんで、みんなを丸くしていくんですよ。当たり障りないように、問題が起きないようにって。学校内でもそうですし、保護者に対しても、生徒に対してもそうです。どんどん個性を殺していく傾向にあるんで。自分の個性が消えていっちゃってる人に教えてもらうと、個性的ではなくなっていきますよね。菊池:高校で活躍する子は、個性豊かな選手が多いですか?内野:そこはほぼ間違いないんじゃないですかね。活躍する子は大変な子が多い。一言で言ったら「変わってんな、あいつ」みたいな子の方が多いですね。全員じゃないですけど。ポジションによるかな。ボランチとかはしっかりしてますけどね。菊池:個性というか、自分の良さをしっかり持てる子ですよね。指導をしていると、どうしてもダメなところの指摘が多くなってしまうと思うんです。内野:仕方のないことでもありますけどね。菊池:僕らはサカイクキャンプで、その子のキラリと光る部分だけを伝え続けて、悪いところを直していくというよりは、いいところをどんどん伸ばしていく。「いまのプレーはよかったね」とか、「シュートが得意ならどんどん打ってこう」という話をしていって、できるだけ得意な部分を伸ばして欲しいという想いを持っています。<後編に続く>
2024年06月03日2024年6月1日(土)、千葉県八千代市で小学4年生以下を対象とした少年サッカー大会「マルハン×シント=トロイデンVVカップ」が開催されました。この大会は八千代市サッカー協会の主催で、ベルギー1部リーグに所属するシント=トロイデンVV(以下シントトロイデン)と、そのクラブと資本提携している株式会社マルハン東日本カンパニーの特別協賛により実現。今年で2回目となるこの大会には、八千代市内から10チームと招待チーム2チーム、計12チームが参加。元サッカー女子日本代表の澤穂希さん、山根恵里奈さん、海外で活躍したカレン・ロバートさんら特別ゲストの見守る中、熱戦が繰り広げられました。決勝戦では東習志野FCが勝田台FCを3対2の接戦で制し見事優勝。閉会式ではプレゼンターを務めた澤穂希さんは「これからの長いサッカー人生をしっかり楽しんで、サッカーを続けていってください」と選手たちにメッセージを送りました。午後のイベントでは、大抽選会が開催され、シントトロイデンで活躍する小川諒也選手や元サッカー女子日本代表の岩渕真奈さんも参加。人気サッカーYoutuberのマキヒカさんや梅ちゃんも一緒に大会をさらに盛り上げました。往年の名プレーヤーや現役選手たちを前に、子どもたちだけでなく、大人も大興奮。サインや写真を求める親子連れの列にゲストたちも笑顔で応えていました。マルハングループは八千代市内でデイサービス事業、パチンコホール2店舗、ゴルフ場の運営に加え、2023年からは「ルーケストサッカースクールPowered byシント=トロイデンVV」をスタートさせるなど、スポーツ事業にも力を入れています。この大会を通じて、シントトロイデンや地域との共創関係を深め、今後もサッカーをはじめとするスポーツを通じて子どもたちや地域社会の発展に貢献する活動に力を入れていくとのことです。
2024年06月01日子どもに「今日はサッカー行きたくない」と言われたとき、休ませるのが良いか、サッカーしなくても連れて行った方がいいか、悩む保護者は多いのでは?楽しんでいたはずのサッカーに行きたくないのは理由があるはず。心がSOS出してる?無理やり行かせるよりは心が落ち着くまで休ませたいけど、そのままやめ癖がついちゃいそうで迷う......。というご家庭もあると思います。こんな時、先輩ママであるサカイクアンバサダーの皆さんはそんな時どうしているのか聞いてみました。写真はサッカー少年のイメージ<<関連記事:子どものやる気が見えない時どうすればいい?先輩ママがやってる声掛けなどを紹介 サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■無理に行かせない子どもがサッカーに行きたくないと言われると、素直に休ませるべきか、簡単に休ませると辞め癖が付くから行かせるべきか悩むという保護者も多いもの。サカイクInstagramのアンケート結果サカイクアンバサダーの回答で多かったのは「休ませる」でした。・休んだら?と言う。小学生だし、遊びたいときもあると分かっているから。すると逆に「やっぱり行く」と言うこともある・行かなくても良いよ、と言っていた。本人も「じゃあ休もうかな」って感じだった(子どもは現在中学生)・わかった、そんな日もあるよね。って休ませた。新学期とか学校もスポーツもレベルが上がってしんどいのは理解できるからと、無理に行かせないという回答を多くいただきました。もちろん子どもの状態をよく理解して「今日は友達と遊びたいんだな」「チームで何かあったのかな」など気持ちを思いやったうえで、状況にあった対応をしていただけたら良いのではないでしょうか。■サッカーしなくていいからグラウンド行ってみる?と声かけ他にはこのような声も。・とりあえず練習行ってみよう?見てるのも勉強になるよ。今日はひとつだけ目標作ってそれをクリアしよう、などと声かけました特に原因はなく「何となく」行きたくない時もあります。サッカーが嫌になったわけでなければ、「練習しなくていいよ」と安心させつつも大好きなサッカーに触れさせることで、「次は行こうかな」と前向きな気持ちになれることもあるのではないでしょうか。■それ以外の対応休むか行かせるかの判断以外についても、ご自身の体験を教えてくれた方がいるので紹介します。・アロマオイルを塗ってあげる。普段あまり日常を話さないタイプですが、寝る前に塗ってあげると、自ら悩んでいることを話してきたりします。話して背中に塗ってそのまま寝るので、翌日はスッキリしていることがほとんどです。直接顔を合わせないからこそ、子どもも素直に悩みを打ち明けられるのかもしれません。サッカーで疲れた足のマッサージなどでもいいかもしれませんね。■自分から話して来たら聞いてあげる写真はサッカー少年のイメージ今回の質問テーマも、回答の根底にあるのは「子どもにはサッカーを楽しんでほしい」ということでした。「ただ上手くなるのではなく、サッカーを楽しむために練習して欲しい」というお考えで子どもに接しているという方は、「上手くなれば自身もつくし、ボールを思い通りに動かせたり、身体を思った通りに動かせたら試合ももっと楽しくなりそうじゃない?」と問いかけると、お子さんのやる気がわいてくるそう。「以前は練習や試合にダメ出しばかりしていた」という方も、今では「サッカーを楽しむことの方が大事」という考えでお子さんに接しているそうで、サッカーについてあれこれ聞かないようにしているとのこと。そのうえで子ども自身が話してきたら「うんうん」と聞いてあげることにしていると教えてくれました。いかがでしょうか。サッカーが好き、楽しいという気持ちさえ消えなければ、少しぐらい休んでもまたサッカーがしたい気持ちがわいてくるものです。アンバサダーのみなさんは、そこを大事にしてお子さんに寄り添っていることがうかがえました。全ての子どもに効果があるものではないかもしれませんが、先輩ママたちの対応策を参考にして、お子さんのサッカーをもっと楽しんでください。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年05月30日最近なんだかサッカーに対してのやる気が感じられない。という状況も保護者の皆さんを悩ませる原因の一つですよね。自主練もしない、練習も行きたがらない時がある。子ども自身、何か悩んでる?と感じてもどうしたらいいか意外と分からないもの。先輩ママであるサカイクアンバサダーの皆さんはそんな時どうしているのか聞いてみました。写真はサッカー少年のイメージ<<関連記事:サッカー少年のママたちの大敵「人工芝」先輩ママがやってる対策を紹介サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■サッカーに対してやる気がないとイライラする?心配する?子どものサッカーを楽しんでることが一番だけど、何となくやっているだけに見えたり、自主練をしないなど、やる気が感じられない状況にイライラやきもきしてしまうこと、ありませんか?サカイクInstagramのアンケート結果「周りの子みたいにやる気を出してほしい」「自分から『やる』って始めたのに」といった嘆きを聞くこともあります。一方で、もしかしたらチームで嫌なことがあったのかな?サッカー行きたくないのかな?と心配になることもありますね。お子さんによって対応は変わりますが、先輩ママのエピソードを参考にしてみてください。■褒めたり、本人の良いプレー集を見せて気分を良くするサカイクアンバサダーの皆さんからは以下のような回答をいただきました。・他の好きなことで満たしてあげた・とにかく良い時のプレーを褒めたり、良いプレーやゴールシーンだけを編集して見せた。良いシーン集はうちの子にはテンション回復にかなり効果があります。・いい時のプレーを見せたり、プロの試合を一緒に見たり、一緒に自主練しようと誘って、とりあえずどんな些細なことでも褒める。低学年なこともあるけど、基本はサッカーが大好きだから、気分を上げるのは今のところは簡単です(笑)・行きたくないと言った時、「じゃあ休んだら」と言ったことはあります。小学生ですし、まだサッカーだけが全てじゃないので。それで休んだことも、やっぱり行くー!ってなったこともあります・行きたくない日は休ませました。本人も「今日は休もうかな」って感じで。現在中学生ですが、サッカー続けてますなど、サッカー以外の好きなことをさせたり、撮り溜めていた良いプレー編集して見せるなど親の愛情が感じられる回答でした。■本人の気づきを促す上記以外にも・将来どうなりたいのか、そのために何が必要なのか、それで夢は叶うのかと言葉をかけるといった回答や・活躍された方が小学生年代に悩んだ気持ちが書かれた本を読んであげたり、インスタに上がっている元選手の名言集(本田圭佑さんやイチローさんなど)を見せる。うちの子には親が『頑張って』と言うより効くようですと、本人に気づかせる対応をしている方も。■子どものサッカーで何より大事にしているものAチームからBチームになった、試合でミスしたことをからかわれた、サッカーやってない友達と遊びたい、などサッカーに行きたくない理由もその子によって違います。ですので、親の対応はそれぞれですが、多くの方から寄せられたのは「言い方には気を付けている」ということです。みなさん「サッカーを楽しんでほしい」「サッカーを好きでいて欲しい」との思いを一番大事にされているので、追い詰めるような言い方はしないよう心掛けているようです。「親は監督、コーチじゃないし応援するだけ」「親は子どもの一番のファンだから」といった声も寄せられました。■子どもは親が思うより考えている写真はサッカー少年のイメージ中学生以降のお子さんを持つお母さんからは、子どもが小学生だったころを振り返ってこんなアドバイスも。「子どもって意外と考えて、頑張ってやってるから。やる気がないって思ってるのは親だけ。親が『うちの子やる気ないな』と感じていることを子どもも感じ取るから、ますます子どものテンションが低くなるのかな、と。今日は疲れているのかな?ぐらいの感じで子どもとコミュニケーションを取ったら良いと思います」■小学生年代で上手い下手、出れる出れないは最重要じゃなかったそして、先輩ママからサッカー少年少女の保護者に伝えたいこととして、今目の前の結果に一喜一憂しないことが大事だと教えてくれました。「小学校の時は、上手い下手とか、出れる出れない すごい一気一憂してたけど、高校生になると、今までサッカーが好きで続けてることにすごい価値を感じるようになりました。仲間やいろんな人とふれあえて。そう思うと、小学生の時は『もっとうまくなって欲しい』と思っていたけど、大事なのはそこじゃなかった。それを小学生の保護者さんに伝えたいですね」いかがでしょうか。好きで始めたサッカーのやる気が感じられなくなると、親は色々心配してしまうものですが、先輩ママたちが教えてくれた「こんな風に乗り切ってます」というエピソードを参考にして、思い詰め過ぎないようにしてくださいね。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年05月29日攻撃で手詰まりなときにボールを受けに行く動き、FWがDFの裏に抜ける動きを教えたいが、言葉での説明が苦手なこともあり、小学生に理解されない。相手のマークを外す動きを教えるのに良い練習法はある?とのご相談をいただきました。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、実際にやっているメニューを交えてアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<思春期?上手いけど一旦機嫌が悪くなるとチームメイトも腫れ物扱いする子に指導者はどう接したらいいか教えて<お父さんコーチからの質問>こんにちは。子どもが所属しているスポ少で保護者兼コーチとしてチームに関わっています。(対象はU-11)お聞きしたいのは「相手のマークを外す動き」をどう教えたらいいのか、ということです。攻撃の時に味方が手詰まりなときにボールを受けに行く動き、FWがDFラインの裏に抜ける動きを教えたいのですが、説明下手なこともあり、うまく理解させられません。相手のマークを外す動きを理解させるためには、どんなメニューで何と伝えるのが良いでしょうか。マークを外すときの動きのポイントなども、あれば教えていただけますでしょうか。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。最近の話ですが、関西で以前から私を講習会などによく呼んでくださる市で、少年の大会を観戦しました。そこで、マークを外す動きやメニューの話になりました。指導者から「オリジナルの練習を作り出すのは知識が必要ですよね?」と質問がありました。もしかしたら、私が自分で考えたメニューで練習させることがあるからかもしれません。皆さんコーチとしてさまざまな知識を身につけないといけない、それには時間が必要だと感じていらっしゃるようでした。■練習メニューの知識より、目の前の現象をしっかり見ることが必要これについて、私は知識よりも目の前で起きている現象をしっかり見ることが必要だと考えています。子どもたちの様子を見て、その状態に合うメニューを行えばいいのです。やってみてうまくいかなかったら、例えばプレーしているグリッドのサイズを変えます。人数を変えます。ボール2個でやっていたのなら、1個に戻します。逆にスイスイできるのであれば、ボールを2個にします。そんなふうにちょっとずつ練習のルールを変えるのです。よく言われる練習のオーガナイズです。そのように微調整することで、期待した効果が生まれます。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■適切なメニューはチームの状態によって違うやってみては変えることにトライしようもちろん、練習メニューはすべてオリジナルでなくてもいいです。相談の中にも「どんなメニューがいいのか」とありますが、それはチームの状態によって異なります。上述したように、ご自分でやってみては考えて、変えていくことを繰り返しまずはトライしてほしいです。メニューについては、皆さんにネットや書籍から探すことを提案しています。ネットであれば、例えば検索エンジンで「マークを外す動き メニュー サッカー」と打っただけで42万5000件出てきます。「画像」に切り替えれば、イラストで説明されたメニューが紹介されているし、あらかじめ動画表示にして検索すると、動画で説明されたメニューがたくさん出てきます。ぜひ一度調べてみて、チームの子どもたちの課題修正にアジャストしそうなものをいくつか選んで試してみてください。■マークを外す動きを覚えるメニュー「縦関係の2対1」「L字ラン」マークを外すことを学ぶシンプルなメニューとしては、私が以前から推奨している2対1があります。例えば、縦関係の2対1について説明しましょう。攻撃する側として、ゴールに近いほうに選手がひとり、離れたほうにボールを保持したひとりが立ちます。守備側のひとりは、ゴールに近いほうにいる選手に密着マークをします。つまりパスを受ける側の選手は、密着マークを外して動かなくてはなりません。このときに「どんなふうに動けばいい?」とその選手に尋ねます。最初から手取り足取り「こうやって動け」と指示するのではなく、まずは選手に自分で考えてもらいます。私にとって師匠である祖母井秀隆さんは、相手を振り切るやり方として「L字ラン(RUN)」についてよく話してくださいました。まっすぐ走っては、いきなり90度の直角に曲がる。そうすると相手マークを外しやすくなります。例えばゴールに向かって走り出す相手は懸命についてくるので、スッと90度に曲がります。どこへ動いても同じように90度に曲がります。ディフェンスから離れる(ディフェンスを振り切る)ためのひとつの方法として「こうしてみたら?」と教えます。祖母井さんから聞いたので、恐らく(祖母井さんが指導を学んだ)ドイツのコーチたちがやっていたことだと思います。練習のときは、最初から足でやる必要はありません。ハンドパスゲームにしてL字ランをやります。パス5本つなぐと1点といったゲームにして行うといいでしょう。■マークを外す練習で味方との関係性や全体を俯瞰で見る空間認知能力が育つ私は、講習会でデモンストレーションを行うとマークをどんどん外し講師の方に褒められたことがあります。選手時代はセンターフォワードだったので、どうやったらマークを外せるかをいつも考えていました。この練習をしていくことで、他の選手と自分の関係性や全体を俯瞰で見る空間認知能力が育ちます。また、このような練習を行うと、ポジションがその子に合っているかどうかが見えてきます。もうすぐパリ五輪ですが、日本代表のU23でさえポジションに合っていないかもと思わせる選手がいます。空間認知がいまひとつだと感じさせます。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■4種年代から常に考える練習を取り入れなければならない(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)そう考えると、私たち日本の指導者は、4種の段階でこういった練習をもっとやらなくてはいけません。簡単なものでは、低学年のころに鬼ごっこなどをたくさんやります。相手を出し抜く、だますといったずる賢いことが考えられる。もっと言えばいつも考える頭になれば変わってきます。それなのに、トップの子は体格がよいか、足の速い子がベースになります。本当にそれが正しいのでしょうか。私が見ている中学生は、小学生のときからフォワードですが、性格が真面目でやるプレーが相手にわかってしまう子でした。相手の裏をかけないのです。ところが、その子をボランチに置いたら才能が生きました。体力もあるので、よく動き相手の攻撃の芽を摘んでくれるのです。そんなことも考えながら日々学んでいただければと思います。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2024年05月24日周りとレベル差がある息子。練習でチームメイトに「出来てない!」と言われ「行きたくない」と。コーチも事情を知っているのに次の練習の時「○○(息子)も言うほうだから、お互い様」という。言った言われたの話じゃなく、チームメイトに「ポジティブな声掛けを使用して」で良くない?指導者ってそこも踏まえて指導してくれるものでは?コーチに不信感です。というご相談。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、お母さんにアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<練習や試合を直前で休みたいと言い出す息子に疲れました問題<サッカーママからの相談>こんにちは。息子はサッカーを習い始めてまだ4か月で、少し慣れてきたとはいえ、前からやっている子達とはレベルも違います。そんな中、練習でチームメイトみんなに「出来てない!」と言われ、モチベーションが下がり、「次のサッカーは行かない。行きたくない」と言いました。子どもの言う事なので、そこまで目くじら立ててるわけではなく、リーダーに経緯を話して、お休みするかもと伝えました。それはコーチの耳にも入っています。次の練習の時に、コーチに「行きたくないって言っても、◯◯(息子)も言う方だからお互い様なんだけどね」と言われました。私が思うのは、言った言われたの話ではなく、コーチがそこを踏まえて指導していただけないのか?ということです。「出来てない」と言った子たちに「そうゆうのではなく、もっとポジティブな声かけしていこうよ!!」でいいんじゃないでしょうか。親が口出すべきではないしお任せしてると思ってるので、練習中には口をだしたくありません。うちの子守ってよ!などとも思っていません。ただ、息子を含め、チーム全員に注意するべきなのではないでしょうか?それなのに「ん?お互い様なのに休むの?(笑)」みたいなニュアンスに聞こえたのでなにかモヤモヤして、コーチへの不信感で親の私がサッカーへ行きたくなくなりました。少しですが、贔屓も見て取れる場面もあり、もう一つのサッカークラブは試合はなくとも、楽しくサッカー出来ていてるので、そちら一本にしたい気持ちです。このようにコーチに不信感抱いてしまった場合は、親としてどのようにしてあげたらいいのでしょうか?他の親御さんはどのようにしているのでしょうか?<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。メールの文章だけでの判断なので、理解が届かない部分があるかもしれませんがどうぞご理解くださいね。■今の状況を俯瞰で見てみるとわかってくる事があるかもお母さんはコーチの指導について、言った言われたの話ではなく、ご自分の息子さんを含めチーム全員に注意するべきではないのか?と疑問を投げかけています。もちろんその通りだと私は思います。ただ、もしかしたらお母さんの見ていないところで、見ていないときにコーチたちはそういった話をしているかもしれませんし、全体像はわかりません。文章のトーンからみてずいぶんお怒りのようです。が、少しだけ冷静になって今の状況を俯瞰で見てみませんか。この話、シンプルに言えば「あなたの息子さんも仲間に文句を言うことがあるからお互い様ですよ」ということですよね。お母さんにとって皮肉に聞こえたかもしれませんが、息子さんも負けずに言い返しているかまではわかりませんが、少なくとも言われっぱなしではないようです。そこを踏まえて、まずはコーチの指導がいいか悪いかはではなく、息子さんの様子に注目してみましょう。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■言い返せるのはむしろ喜ばしいことただ、必要以上にレベル差を感じているのかも息子さんは、仲間から「出来てない」と言われたことで傷ついたから練習に行きたくない、とお母さんに言った。お母さんは「子どもの言う事なので、そこまで目くじら立てていない」と書いています。コーチが言うには息子さんも言い返しているようだ。であれば、それこそ目くじらを立てる必要はありません。それはある意味、喜ばしいことではありませんか?サッカーを始めてまだ4か月で前からやっている子達とはレベルも違う。そのなかで息子さんなりに頑張っている。ただ、みんなが出来ていることがひとりだけ出来ない。ドリブル、トラップ、パス。サッカーにはさまざまな細かい技術があります。そのひとつひとつが劣っていることを、息子さんは必要以上に感じてしまい気持ちが落ちているのかもしれません。まだ7歳です。そんなことは気にせずにどんどんサッカーを楽しめばいい。時にはけんかしたり、言い合いになるのも子どもの自然な成長過程です。そのように受け止めて、息子さんにこう話してみませんか。「何かが出来るとか、出来ないとかはお母さんはどうでもいいいと思ってるよ。サッカーを楽しむのが一番大切だよ。人の言うことなか気にせず、やってごらんよ」■どうしても子どもの出来不出来が気になるなら、一度自分を見直してみようそれでも出来不出来を気にするようであれば、いい機会です。一度お母さんの子育てを見直してみましょう。お母さん自身が、何かが出来るか出来ないかを気にしていなかったか。建前ではなく、本音の部分で振り返ってみましょう。私自身、子どもが試合に出してもらえなかったとき、悔しくて悲しくて途中で家に帰ってしまったことがあります。帰途、情けないことに夫に泣きながら電話までしました。コーチの扱いがひどくて悔しい、と。夫から「〇〇(息子)のほうが悔しいと思うよ」と言われ、はっとしたのを覚えています。子どもは親が思う以上に、やさしい生き物です。親の望む姿でありたいとどの子も思っています。それがなかなか叶わないと、何か他のことに原因をつくろうとすることがあります。しかし、それも良い悪いといった物差しで測ろうとしないでください。それも成長の過程のひとつだと受け止めましょう。■他の子のせいだ、と言われたように感じた可能性もあるさらにいえば、コーチにとっては預かっている子どもたちはある意味身内なわけです。息子さんが練習を休んだ時、お母さんがリーダーに対しどのように説明したかはわかりません。お母さんはただただ、仲間も言われて落ち込んでいるから休みますと説明したことが、お母さんがその仲間に対し文句を言ったように伝わってしまったかもしれません。コーチも人間です。他の子どものせいで練習を休んだと言われたと感じ、少し感情的になってしまったのかもしれません。話というものは、ひとりの人間を挟むと、そのひとりの感情がそこに乗り移って伝わりがちです。できれば、そんなふうに理解してみませんか。■まだ7歳、これから技術も追いつく親はどんと構えていた方が成長する(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)それでも不信感を抱いてしまったとしても、そこはお母さんの問題として胸にしまってください。息子さんがまた立ち上がってそのチームの練習に行くというのなら、行かせてあげましょう。まだ7歳です。これからどんどん技術も追いついて、高学年になるころには体も大きくなります。周囲との関係も変化します。そう心得て、どんと構えるほうが子どもは成長しますよ。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。
2024年05月22日海外のサッカー少年少女の親って、日本と何か違うの?と気になるとき、ありませんか?2023年夏、東京都葛飾区、墨田区で活動する「クルゼイロサッカースクール」の小学生たちが、ブラジル遠征を慣行。2週間弱の遠征でトップチームの施設を訪れ、ブラジルの子どもたちと合同練習を行い、汗を流しました。そこで感じたブラジルの親について、クルゼイロジャポン指導部門責任者の小林ヒロノリコーチに、話をうかがいました。「ブラジル遠征で感じた、保護者のあり方」とは日本とどう違うのかご紹介します。(取材・文鈴木智之)(写真提供:クルゼイロジャポン)<<前編:現地の食事を食べられることも世界で活躍するサッカー選手のバロメーターサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■意外!?ブラジルの親の方が過保護(写真提供:クルゼイロジャポン)クルゼイロサッカースクールの小林コーチは、ブラジル遠征で感じたこととして、「ブラジルの保護者と日本の保護者の関わり方の違い」を挙げます。「ブラジルの親の方が、日本より過保護だと感じました。家族を大事にして、守るという気持ちが強いんです。クラブも『親御さんは、しっかりお子さんを守ってあげてくださいね』と伝えているそうです」その背景には、ブラジルの社会環境があると分析します。「ブラジルは社会基盤が整っていない部分が多いです。街には危険な場所もありますし、電車やバスは日本のように、時間通りに来ません。そこで何もせず、ただ待っているだけだと、生活はスムーズにいかないわけです。周りの人に訊いたり、調べて、スムーズにいく方法を見つけなければいけない。停電も多いので、電気が消えたらこういうアクションを取ろうとか、いろんな経験をしているから、柔軟に行動することが体に染みついているんですよね」■不便な方が自分で考える力がつく?子どもがすね当てを忘れても届けない理由(写真提供:クルゼイロジャポン)不便さがあるからこそ考え、実行する。それが自分で考えて行動すること、すなわち自立につながるのかもしれません。小林コーチは「日本は安全で快適な素晴らしい国です。そんな環境で育った子どもを自立させるために、どういう働きかけをしなければいけないのか。そこは常に考えています」と明かします。「それならば、わざと不便な形を作り出す方がいいのか。とか考えるんですが、自分の子どもにはできるんですけど、よそのご家庭のお子さんにはどうかなと悩んだりしますね。うちは幼稚園の頃から、サッカーの準備は自分でさせています。子どもが目を離した隙に、入れておいた服をカバンの外に出しておいたり、そういう意地悪を自分の子にはできるんです(笑)」さらに、こう続けます。「うちの子が通うクラブのコーチから『すね当てを忘れたようです』と連絡が入っても放置です。忘れたキミが悪いでしょって。何で届けなきゃいけないの。サッカーするのは自分なんだからねと、自分の子には言えるんですけど、お預かりしているお子さんにどこまで言えるのか。そこは難しいところですね」■ブラジルの選手には「止め方」を教えなければいけないが、日本人選手は違う(写真提供:クルゼイロジャポン)サッカーは国民性が出るスポーツです。生活環境や文化がプレーに表れます。小林コーチは、守備を例にあげて説明します。「日本では足を出すな、突っ込むなという指導が多いですよね。ボールを奪うことよりも、抜かれないこと、相手を遅らせてグループで守る考え方が主流です。でもブラジルの選手は、何も言わなければ、ボールを奪うために突っ込んでいくので、止め方を教えなければいけません」ボールを奪いに行く、アグレッシブなメンタリティがない子には「もっと行け」と言い、行き過ぎるブラジルの子たちには「むやみに行くな」と教える。それは日常生活も同じで、だからこそブラジルの保護者は「子どもを守ってあげなければいけないという気持ちが強いのではないか」と分析します。「日本の多くの子どもたちは、すでに親に守られています。その環境で『もっと守りなさい』と言ったら、それはただの過保護ですよね。スタート地点が違い、日本の場合は十分に守っています。だから、もっと子どもひとりで行かせなさい、チャレンジさせなさいという心構えが必要なのではないかと思います」■子どもには成長の段階がある安全な環境の中で失敗を繰り返せばいいチャレンジに失敗はつきもの。失敗から学ぶことはたくさんあり、小さな失敗を乗り越える経験をすることで強くなれます。「僕としては、失敗してもいいと思っています。ブラジル遠征でも、安全は僕やクラブが頑張って確保するから、もっと積極的にチャレンジしてほしい。それはサッカーの上でも、日常生活の食事や現地の人とのコミュニケーションも同じです」小林コーチは「家でも学校でも、安全が確保されているのであれば、失敗を繰り返していけばいい」と、言葉に力を込めます。「子どもには段階があるので、保護者も長い目で見てくれるといいですよね。いまこの瞬間には失敗かもしれないけど、長いスパンで捉えると、失敗が失敗ではなくなり、いい経験をしたなと思えるはずです」■子どもが失敗しないよう、親が先回りして躓くリスクを排除していないか親と子の距離が近い現代。子どもが嫌な思いをしないように、失敗しないようにと、親が先回りしてリスクを排除して、綺麗な道を歩かせてあげているとも言えます。小林コーチは「子どもが転びそうになる前に、親が先に手を出して、転ばぬ先の杖になってあげている状態ですよね。親が舗装した綺麗な道を、子どもと伴走して歩いている」と表現します。「ブラジル遠征を通じて感じたのは、保護者のあり方の違いであり、子どもたちの自立を促すために、チャレンジさせることの大切さでした」日本を離れて、違う価値観に触れることで、たくさんの気づきと発見があり、それこそが成長につながります。コロナ禍を経て子どもたちの成長に影響が出ている今こそ、保護者の関わり方が問われているのかもしれません。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年05月20日「かわいい子には旅をさせよ」という言葉があります。サッカーは世界とつながるスポーツで、ボールを通じて、様々な人とコミュニケーションをとることができます。2023年夏、「クルゼイロサッカースクール」の小学生たちがブラジル遠征を慣行した際、日本とは異なる環境の中で、言葉や文化の壁を感じながら、様々な体験をした子どもたち。2週間弱の遠征でしたが、現地の子と日本の子では「自立の程度」に差があると感じたそうです。はたしてどんな点が違ったのか。クルゼイロジャポン指導部門責任者の小林ヒロノリコーチに、話をうかがいました。(取材・文鈴木智之)(写真提供:クルゼイロジャポン)サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■ブラジル遠征ではストリートサッカーや本物のジンガを体験(写真提供:クルゼイロジャポン)ブラジル遠征に参加したのは、小学3年生から5年生まで、4名の子どもたち。期間は2週間弱で、成田空港からエチオピアで乗り継いでサンパウロに行き、そこからクルゼイロのあるミナスジェライス州に向かいました。乗り継ぎを含めると、片道36時間もかかるため「往復で3日間を移動に費やしました」と小林コーチは笑顔で振り返ります。「ブラジルでの2週間弱のスケジュールは、とても充実していました。私からは、滞在中に2~3回の対外試合を行うことと、体力を見ながら2部練習を実施することをお願いしました。午前と午後に1回ずつサッカーの活動を入れ、その中に試合も組み込んでもらいました。それ以外にクラブ側は、市内観光やお土産購入、現地の試合観戦なども企画してくれました」グラウンドでのトレーニング以外にも、ブラジルの音楽とダンス、格闘技が合わさった、「カポエラ」を体験したり、裸足でストリートサッカーをしたり、本物のジンガ(体をゆすりながらステップを踏む動き)を教えてもらったそうです。■遠征ではどれだけ現地の食事を食べられるかが適応のバロメーター(写真提供:クルゼイロジャポン)日本ではできない体験をした子どもたち。様子を尋ねると「若干、引っ込み思案なところも見られました」と回想します。「慣れない環境に飛び込むのは、勇気がいることだと思いますが、初めての異文化体験に対して、少し臆病になっている様子が見られました」なかでも、苦労したのが食事です。過去に何度もブラジル遠征に参加している小林コーチは「どれだけ現地の食事を食べることができるかを、適応のバロメーターにしています」と話します。「現地の食事を受け入れられるかどうかは、サッカーのパフォーマンスにも直結します。普段食べないものでも、食べられるものを探してしっかり食べることが大切です。ブラジルの選手はよく食べます。1日5回の食事(朝食、昼食、トレーニング後の補食、夕食、夜食)があり、量も質も非常に高いです。肉料理が3種類、豆料理、ご飯、野菜、色とりどりのフルーツが並んでいました」日本の子どもたちは、日本とは違う食文化、味付けに戸惑い、慣れるのに時間がかかったそうです。「お母さんのご飯が恋しい、日本食が食べたいと言う声も聞こえてきて、パンとバナナとオレンジぐらいしか口にできない子もいました。食事への適応は、サッカーへの適応と同じです。いつもと違うコーチ、練習内容、環境。それらを受け入れ、その中で自分を出していくことが求められます」今回の遠征では、4人全員が食事面で苦戦していましたが、なんとか最後までやり遂げたそうです。■日本人同士で固まらないよう、現地の子とペアを組ませた(写真提供:クルゼイロジャポン)遠征中は、午前か午後のどちらかはブラジル陣のコーチが個人・グループのテクニックや戦術を、つきっきりで教えてくれました。小林コーチは「とても贅沢な時間でした」と振り返ります。「午後は外部のスクール生を呼んで、ブラジル人の子どもたちと一緒に練習や試合を行う機会を設けてくれました。クルゼイロのトップチームの施設で練習できることは、現地の子どもたちにとっても、夢のようなことのようです」小林コーチは日本の子どもたちに「日本人同士で固まらず、練習のペアはブラジル人と組もう」と伝えたそうです。「そうした小さな努力の積み重ねが、異文化適応につながると信じています」現代の子どもたちは、コロナ禍の影響で他者との関わりや、集団で行動することに対する経験が、例年以上に乏しいです。小林コーチは「コロナ禍の子どもたちは、例年よりも2、3歳ほど、子どもっぽい印象があります」と述べます。「だからこそ、サッカーにしても食事にしても、それ以外の時間の過ごし方にしても、いろいろな刺激を与えてあげたい。今の子どもたちは、サッカー漬けの日々を送り、親の送り迎えで完結する、狭い世界に閉じこもりがちです。サッカーを辞めてしまったら何も残らないので、サッカー以外の面でも多様な経験をさせてあげたいと思っています」■海外を経験したことで、日本の価値や親への感謝に気づけることもその狙い通り、ブラジル遠征で様々な経験をし、刺激を受けた、クルゼイロサッカースクールの子どもたち。それにより、日々の生活や親のサポートに感謝する気持ちが芽生えてくるのではないかと、小林コーチは考えています。「2週間、ブラジルで過ごす中で、大変なこともたくさんありました。だからこそ、日本の良さに気づけた部分もあったと思います。当たり前に食べられる日本食のありがたみ、家族への感謝の気持ちなど、異文化を体験したからこそ、自国の文化の価値に気がつくことができました。日本という箱庭で育った子どもたちが、世界を見て『日本っていいな』『お母さんの料理はおいしいな』と改めて思うようになる。それだけでも意味があったと思います」日本を離れて過ごす中で、改めて日本の良さや家族への感謝の気持ちを感じることができた子どもたち。この遠征で得た経験は、心に残り続けることでしょう。次回の記事では、「ブラジルの保護者と日本の保護者の関わり方の違い」について、紹介します。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年05月16日サッカーの技術・戦術面に加えて、オフ・ザ・ピッチの成長にもつながると評判のサカイクキャンプ。2024年夏は関東と関西で開催されます。そこで今回は、サカイクキャンプのメインコーチを務める菊池健太コーチと、チームビルデイングでおなじみ、福富信也さんに「挑戦・レジリエンス~折れない、しなやかな心を育むのに、サッカーが良い理由」をテーマに話を伺いました。子どもたちの指導に長く関わるお二人は、昨今のサッカー指導や保護者の関わりについて、どう感じているのでしょうか?今回の記事では「しなやかな心を育むのに、サッカーが適している理由」について、お届けします。(取材・構成鈴木智之)写真は過去のサカイクキャンプ<<前編:失敗を恐れ「挑戦」をしない子どもたち、子どもたちのチャレンジ精神を育むために大人ができることサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■サッカーは競技特性上ミスがつきもの&自分でコントロールできない要素が多い菊池:子どもたちにもよく話すのですが、サッカーはミスが多いスポーツです。競技の特性上、至る所でミスが発生します。だからこそ、チャレンジし続けることが大切で、一つ一つのミスやうまくいかなかったことに一喜一憂せず、やり続けることが大事なんだよと伝えています。福富:サッカーにはミスがつきもので、自分でコントロールできないことも多いですよね。そもそも相手がプレーを妨害してくるスポーツなので、思い通りにいきません。仲間にも意思があるので、パスを出した場所に走ってくれるとは限りません。つまり、自分でコントロールできない、不確実要素が圧倒的に多いのです。菊池:そうですね。だからこそ、うまくいかないことやできないことを周りの人がサポートしたり、皆が同じ目標に向かってプレーすることが大切なわけです。「この子には、こうしてあげよう」とか「あの子はこういうことが得意だから」など、他人のことを思いやる心が芽生えるのも、サッカーがしなやかな心を育むために、適している部分だと思います。■プレー中はチャレンジを繰り返さなければならないので、一つのことで落ち込んでいられない福富:自分自身に目を向けられるようになることが、しなやかさの一部分なのかもしれません。とはいえ、誰しも思い当たると思いますが、コントロールできないことに対して、あたかも自分はコントロールできるかのように、イライラしてしまうことがありますよね。菊池:はい。福富:コントロール可能なのは自分のことだけなのに「なぜあの選手はそこに走らないんだ」「なんで自分にパスを出してくれないんだ」とイライラしてしまう。それは、しなやかな心とはかけ離れています。菊池:自分自身に目を向けることは、とても大切なことですよね。子どもたちには、3日間のサカイクキャンプで、どのように変わっていきたいかを考えてみようという話をしています。サッカーという競技自体がミスの多いスポーツなので、その点においては耐性がつきやすく、心のあり方に目を向けやすいのかなと思います。福富:サッカーはチームスポーツなので、他人との関わりを通じて、自分自身が変わることができます。「あの選手はあそこに走るのが嫌なのかな」「じゃあ、こっちにパスしてみようかな」など、一つのことにこだわらず、違うアプローチを考えてみる。自分でコントロールできることだけに目を向けていくと、イライラせずに、しなやかな心を持つことができるのではないでしょうか。菊池:サッカーはチャレンジを繰り返さなければならないので、一つのことで落ち込んではいられませんよね。気持ちを切り替えることも大事ですし、プレーが止まることなく続くので、一喜一憂せずにプレーすることが大切なのだと、子どもたちに話しています。■相手ではなく自分に矢印を向けることで「何をすべきか」が明確になる福富:大事なのは「自分でコントロールできるのは、自分の考え方や自分のプレーだけ」と、気づいているかどうかです。あまりうまくいっていない人は、コントロールできないこと、例えば風が強いとか、強い相手に勝てるわけがないとか、この先発メンバーでは無理だとか、外的環境に言及していることが多いと感じます。そこで私は「他にできることを探そう」「自分でできる、別の方法を探そう」というアドバイスをしています。菊池:それは素敵ですね。相手どうこうではなく、自分に矢印を向けることで、何をすべきかが明確になります。その結果、子どもたちが無邪気にサッカーを楽しんだり、キャンプに参加して自信をつけて、生きるためのしなやかさにつながってくれたら嬉しいです。■結果ではなくプロセスを評価することが大事福富:サカイクキャンプの「ジャッジしすぎない」という方針も大事だと思います。シュートを決めた時だけ「ナイスシュート」と言うと、「決めないとナイスじゃないんだ」と思ってしまいます。それよりも「動き出しがよかったね」と言ってあげたほうがいいと思います。結果ではなく、プロセスを評価することが大切です。菊池:チャレンジしたことに目を向けてあげたいと、常に思っています。チャレンジすること自体が、大切な過程だからです。うまくいかなくても、そのプロセスを認めてあげて、次はどうしたらシュートが入るかを一緒に考えるほうが、選手のモチベーションは上がりますよね。■キャンプで劇的に変わるわけではない、子どもの「楽しみ方」が変わるタイミングを見守って福富:私の息子がサカイクキャンプに参加しましたが、帰ってきて「何が身についた?」など、野暮なことは聞かないようにしていました(笑)。2泊3日のキャンプで結果を聞くのは、KPI(重要業績評価指標)の世界になってしまうと思うからです。3年後くらいに、理由はよくわからないけれど、この子は変わったな、もしかしたらサカイクキャンプも役に立ったのかな、くらいの感覚でいいのではないでしょうか。菊池:おっしゃるとおりだと思います。子どもは大人が思っている以上に、敏感に感じ取ります。「ここはチャレンジしても大丈夫な場所なんだ」と感じてもらうことで、自然とチャレンジが増え、できることも増えていきます。保護者の方には、少し離れた位置から、子どもの可能性を信じて見守っていただけたらなと思います。福富:すぐに身についたものは、すぐになくなってしまいます。たとえば会社で研修を受けてレポートを提出し、「研修を受けたのだから、明日から変わりなさい」と言われても、無理な話でしょう。高額な研修を受けたからといって、すぐに変われるわけではありません。親ができることは、愛情を持って、子どもを見守り続けること。それが、子どものやる気を高めることであり、しなやかな心を育むために、大切なことではないでしょうか。菊池:最初は子ども同士でボールを蹴って遊ぶ楽しさから、相手との駆け引きができるようになったり、やりたかったことができるようになったりと、楽しみ方が変わるタイミングがあります。そのタイミングまで、保護者の方には我慢してほしいと思います。多くの子どもは、家で親に管理されているので、サカイクキャンプが、羽を伸ばせる場所であったら嬉しいです。福富信也(ふくとみしんや)信州大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。横浜F・マリノスコーチを経て、2011年に東京電機大学理工学部に教員として着任(サッカー部監督兼務)。日本サッカー協会公認指導者S級ライセンスで講師を務め、Jリーグのトップチームや年代別日本代表など、幅広い対象へのチームビルディング指導を行う。2024年からFC東京のアドバイザーに就任。最新著書『サッカーがもっと楽しくなる40のヒント ~なぜカメはウサギに勝てたのか~』菊池健太(きくちけんた)サカイクキャンプヘッドコーチ。約20年にわたり未就学児から小学生まで指導。私生活では4児の父。4人ともサッカーをしており、サッカー選手を育てる保護者でもある。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年05月15日サッカーの技術・戦術面に加えて、オフ・ザ・ピッチの成長にもつながると評判のサカイクキャンプ。2024年夏は関東と関西で開催されます。そこで今回は、サカイクキャンプのメインコーチを務める菊池健太コーチと、チームビルデイングでおなじみ、福富信也さんに「挑戦・レジリエンス~折れない、しなやかな心を育むのに、サッカーが良い理由」をテーマに話を伺いました。子どもたちの指導に長く関わるお二人は、昨今のサッカー指導や保護者の関わりについて、どう感じているのでしょうか?(取材・構成鈴木智之)写真は過去のサカイクキャンプ<<関連記事:「小学生年代で身につけておいて欲しいライフスキルとは?」内野智章×菊池健太対談サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■失敗を恐れるあまり挑戦をしない子どもたち菊池:最近の子どもたちを指導していて感じるのは、失敗を恐れるあまり、難しいことや新しいことにチャレンジしなくなっているのではないか? ということです。「うまくいかないかもしれない」という不安から「できない」「難しい」と尻込みしてしまう傾向にあるのかなと感じています。福富:私は大学の教員をしていますが、似たようなことを感じます。効率を求めて、極力、無駄なことをしたくないと考えている世代なのかもしれません。例えば、「これは就活に役立ちますか?」などと尋ねてくる学生もいます(笑)菊池:そうなんですね。福富:でも私は、もっと無駄なことをたくさんした方がいいと思っています。タイパやコスパという言葉に代表されるように、今の子たちは時間もお金も経験も、無駄を省きたがります。そのような考えを持っていると、失敗はただの無駄になってしまうんです。でも、失敗は無駄ではなく、最短距離で成功に辿り着くことが、良いこととは限りません。失敗も成功も、その過程で経験することが大切なのだと思います。■子どもの可能性を引き出すには、親から離れて信頼できる大人に預けることが有効菊池:昔は「とりあえずやってみよう」という子が多かったのですが、今は慎重になり、失敗を避けようとする子が目立ちます。サカイクキャンプに参加してくれるのは、どちらかというと積極的に前に出るタイプではない子が多いこともあり、「サッカーを通じて挑戦すること」や「失敗から学ぶこと」を経験してほしいと考え、子どもたちと接しています。福富:私の息子もサカイクキャンプに参加したことがありますが、子どもが親から離れて行動することは、非常に重要な意味があると思います。親がそばにいると、親は手助けしたくなり、子どもは親に頼りたくなってしまうんですよね。でも、子どもの限界を引き出すのは、親ではなく、信頼できる第三者である可能性が高いんです。菊池:なるほど。福富:私の母校の大学では、幼稚園児を対象に3泊4日のキャンプを実施していました。親は同行せず、大学の先生と学生が子どもたちの面倒を見るのですが、その3日目に登山があるんです。幼稚園児が終日かけて、自分の荷物を背負い、2000m弱の山を登り切るんです。菊池:それはすごいですね。福富:親がいたら、絶対にできないことです。子どもは親の前では「疲れた」「抱っこして」「リュック持って」などと甘えてしまうからです。でも、親がいなくて、同年代の仲間と一緒にいると甘えない。子どもの可能性を引き出すためには、親から離れて、信頼できる大人に預けることが有効だと感じました。■信頼できる大人がいると安心してチャレンジできる菊池:すごく勉強になるエピソードです。サカイクキャンプは、以前は3、4年生が多かったのですが、コロナの影響でお泊り保育ができなくなったこともあり、1、2年生の参加も増えてきました。サカイクキャンプが、初めての宿泊体験になる子も多いです。福富:うちの子もそうでした。菊池:キャンプに参加するだけでも、子どもたちにとっては大きなチャレンジですよね。ましてや小学生のうちから、初めての場所で、初めてのメンバーと共同生活を送るのは、本当に大変なこと。それを成し遂げられるのは、とても幸せで立派なことなんだと、参加者全員に伝えるようにしています。大人でもなかなかできない経験なので、自信を持っていいんだよと後押ししてあげるんです。福富:キャンプには、菊池コーチのように信頼できる大人がいるので、子どもたちは安心して挑戦できるのだと思います。親にできることは、どんなことがあっても常に子どもの味方でいること、そばにいてチャレンジを応援し続けること。つまり、先回りして手を出すことではなく、愛情をもって見守ることなのだと思います。■他の子と比べることで劣等感が生まれる子ども自身の可能性を信じて菊池:私も子育てをしているので、つい先回りしてしまいたくなる気持ちもわかります。そうすれば楽だし、安全だし、時間も節約できる。でも、子どもの可能性を信じることが大切なのだと実感します。実際、子育てを通じても、保護者の方々と話していても、親が思っているよりも、子どもはずっと多くのことができるものなんです。福富:そう思います。菊池:「うちの子はこれが苦手で......」と言う親御さんもいらっしゃいますが、いざキャンプに参加してみると、全然そんなことはなかったり、自分のことは自分でできたりする。謙遜して言っているのかもしれませんが、実際はそんなことないんだと、フィードバックするようにしています。福富:他人と比較することで、自分を卑下してしまうのかもしれません。例えば、トレセンに選ばれた子がいると、「あいつの方が上なのか」などと考えてしまう。強い者には弱く、弱い者には強いという社会の縮図のようなものですね。人との比較の中で劣等感が生まれたり、「こいつにはマウント取っても平気だ」といった考えが生じたりする。菊池:キャンプでも、サッカーが上手い子は、生活面でも強いという傾向があります。福富:私は、序列を作ったり、自分より強い者には弱く、弱い者には強いという二面性を持つことは、とてもかっこ悪いことだと思っています。子どもたちにも、そういうのはかっこ悪いんだということを理解してほしい。大切なのは、他者との比較ではなく、自分自身のチャレンジをすることなんです。菊池:そのとおりですね。他人と比較することには意味がありません。福富:ウサギとカメの話のように、カメはウサギというライバルの存在を気にせず、自分のペースで目標に向かってコツコツと歩み続けたら、結果的に勝利を収めました。一方、ウサギはカメに勝つことだけを考え、勝てると思ったところで気を抜いて休憩してしまいました。菊池:実は、親御さんの方が、他人と比べているのかもしれませんね。子どもの問題というよりも、親自身がどう変われるか、どのように子どもにチャレンジする機会を与えられるか。自分の子どもに焦点を当てることの大切さは、我々指導者が訴えていかなければならない部分でもあると感じています。■キャンプで「できた」とういう達成感やチャレンジした充足感を味わうと、自信がついた顔つきに変わる福富:親元を離れて参加する子どもたちは、キャンプという非日常の環境で、普段教わっているコーチとは違う人からアドバイスを受けることで、今までとは違う価値観に気づいたり、刺激を得たりと、成長するきっかけになるのは間違いないですよね。菊池:はい。初日は不安そうだったり、どうしようという表情をしている子も、最終日には少し自信がついた顔つきに変わります。そのために、私たちスタッフはあまり「こうしなさい」とは言わないようにしています。福富:すごく、いいことだと思います。菊池:「自分のことは自分でやろうね」と伝え、手をかけずに、目をかけるスタンスを大切にしています。その中で「ひとりでできた」という達成感を味わえたり、チャレンジすることで充実感を感じられる。そういった経験は、非日常の環境だからこそ得られる、貴重なものだと思います。<後編に続く>福富信也(ふくとみしんや)信州大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。横浜F・マリノスコーチを経て、2011年に東京電機大学理工学部に教員として着任(サッカー部監督兼務)。日本サッカー協会公認指導者S級ライセンスで講師を務め、Jリーグのトップチームや年代別日本代表など、幅広い対象へのチームビルディング指導を行う。2024年からFC東京のアドバイザーに就任。最新著書『サッカーがもっと楽しくなる40のヒント ~なぜカメはウサギに勝てたのか~』菊池健太(きくちけんた)サカイクキャンプヘッドコーチ。約20年にわたり未就学児から小学生まで指導。私生活では4児の父。4人ともサッカーをしており、サッカー選手を育てる保護者でもある。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年05月14日サッカーにケガはつきものです。寒い時期にケガが増えると思われがちですが、実は1年のうち5月から6月が「ケガしやすい時期」ということはあまり知られていません。さらに知って驚くのは、この時期のケガは防げた可能性が高いものだとか。新学年でのスタートダッシュをケガなく充実したものにするための心がけについて、日本サッカー協会のスポーツ医学委員でJクラブのドクターも務める大塚一寛先生(あげお愛友の里施設長)に伺いました。(取材・文:小林博子)写真は少年サッカーのイメージサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■医療業界では常識!? 5月にケガが多くなる理由「ケガは夏や冬に多い」というイメージが漠然とある方は多いことでしょう。ですが医療の現場では、スポーツ外傷が多いのは春と秋なのだとか。特に5月~6月はその中でも多い時期だといいます。その理由は新学期になって1か月経ち、チームが本格始動するタイミングだからだそう。学年が上がったり、ジュニアからジュニアユースへとステージが上がったりすることで、子どもたちがサッカーをする環境のレベルはどの子も1段上がります。練習量や運動量が増えることに加え、今までと違う練習方法や練習時間になります。ついていくことがやっとという子も少なくないはずです。そんな環境の中、子どもたちは多少無理をしてでもついていかなくてはと、気持ちをふるわせて頑張ります。どうにか「できる」けれども、実際はフィジカル的には「できる」のレベルに至っておらず、無理をしてしまう。十分に体が使えていない中でさらにストレスをかけることが恒常的に続き、ターンオーバー出来ないまま続けがちになりケガに繋がる......。これが春にケガが増えるメカニズムです。■春先に増えるケース「足首・ひざを非接触で受傷」その原因とは起こりがちなケガの部位は競技ごとに異なり、サッカーの場合は足首とひざが圧倒的に多いのが特徴です。具体的なケガとしては、前十字靭帯の断裂やひざのお皿の脱臼などで、ジャンプをした後の着地に失敗したり、転んだりすることで起こりがちです。その大多数は非接触(ノーコンタクト)でのケガ。全体のケガの7割がこれにあたります。残りの3割は相手との接触で起こりますが、これはいわば事故のようなもので、避けることはできません。それに対し、ノーコンタクトでのケガは事故ではない分、正直もったいないケガだと考えられます。フォームが悪いまま強い負荷を与え続けてしまった、筋力が足りないのに120%の力で動き続けてしまった......。そういった原因からくるものです。そしてその割合が春は多くなります。■周りのスピードが上がることで、ついていくために無理をして負荷がかかる前述したように、サッカーをする周りのレベルが上がるので、周りの走るスピードが速いことも原因の1つになります。自分の動きを制御することが難しくなり、例えるならオートバイにF1のエンジンを付けてしまったような状態。自分のフィジカルに相応しいスピードより早く動いてしまい、ブレーキがうまく効かずに止まれなくなり、ひざや足首に負担をかけてしまいます。防げたかもしれないケガで、大切なスタートの時期に思いっきりサッカーができなくなるのは避けたいところですよね。筋力や体力をつけ、上がったステージに相応しいフィジカルになることがケガ予防の観点からも重要になってきます。張り切って無理をしすぎないことも大切ですが、子どもがそう意識するのは難しいので、コーチや親御さんが気をつけてあげられることも大事です。目の前のお子さんの調子を気にかけるようにしましょう。■男性の4~6倍!女性の方がひざのケガが多い理由スポーツ外傷のうち前十字靭帯の損傷の男女差は、年齢に限らず女性のほうが圧倒的に多く、男性の4~6倍もあるそうです。要因としては、女性の股関節から下の骨格の特徴(股関節が外側を向き、ひざが内側に入り込んでいる、いわゆる"内股"の状態)や、臀筋(お尻の筋肉)やハムストリングスが女性のほうが弱いことなどが挙げらます。例えばサイドステップをしたときに、きちんと止まることができず膝が外板して(爪先が凱旋して)しまう事が多い為靭帯を損傷します。骨格が原因で女性の方が膝が内側に入りやすい(資料提供:大塚一寛先生)そして、女性のほうが体が柔らかい人が多いのも、男性より圧倒的に前十字靭帯の損傷率が高い理由の1つ。ひざや足首が動きすぎてしまうからです。これは「体が柔らかいとケガしにくい」とは逆の理由でケガが多くなるわけです。■4つ当てはまったらケガに注意「全身弛緩性の7項目」全身弛緩性の7つのポイントというものがあり、このうち4項目以上当てはまったら、「体が柔らかい=全身弛緩性がある」と大塚先生は教えてくれました。チェックしてみましょう。1.手関節、指が前腕の拳側につく2.膝が10度以上反張する3.お辞儀をさせて手のひらが床につく4.肘を15度以上逆方向に曲げることができる5.背中で指を組むことができる6.足首が45度以上背屈できる7.股関節が180度以上開く全身の弛緩性をチェックする7つのポイント(資料提供:大塚一寛先生)■「体が柔らかいほうがケガしにくい」とは限らないケガしにくい体づくりとして多くの人が考えるのが「体の柔らかさ」かと思いますが、「体が柔らかいとケガしにくい」とも言い切れないのも実は知られていないこと。もちろん柔軟性はあって良いものではありますが、全身弛緩性がある人は膝や足首のケガに注意が必要です。柔らかいがゆえに、より大きなストレスがかかってあらぬ方向に膝や足首が曲がってしまい、大ケガに至ってしまいます。全身弛緩性がある人は、大腿四頭筋やハムストリングス、及び体幹のいわゆる体の中心部分を鍛えることがケガ予防につながります。今回は大塚先生に新学期が始まったばかりの5月6月にケガが多くなる理由を教えていただきました。学年が上がってサッカーの強度も高くなり、頑張りたい時期に防げたはずのケガで離脱したくないですよね。選手自身、防げる可能性があるなら意識を向けたいはず。子どもにサッカーを楽しんでほしいなら、レベルアップしたチームでの練習で無理をしすぎないよう家庭での言葉がけなどに気を配ってください。大塚一寛(おおつか・かずひろ)医師、あげお友愛の里施設長。1996年からはJクラブのドクターとしてチームとともに帯同を続けている。現在はVプレミアリーグの上尾メディックス(女子)のチームドクターも兼任。そのほか、『日本サッカー協会スポーツ医学委員』を務め、全カテゴリーの選手の健康管理(脳震盪・ヘディング・熱中症・整形外科的外傷など)に携わっている。多数の講演にも出演し、現場のノウハウや選手のケガ、障害予防などの啓発活動も積極的に行っている。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年05月13日普段はみんなを盛り上げるような声も出せて、プレーでも周りから頼りにされる選手だけど、急にイライラ仕出しチームメイトに酷い言葉を投げかける選手。チームメイトもコーチも腫れ物に触るように接している。思春期だから?このような選手への接し方に悩む。というご相談をいただきました。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、海外視察で目にしたエピソードやご自身の体験を踏まえてアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<相手のラインを崩し、スペースを作って前に運ぶ動きコンビネーションを理解させるにはどうしたらいい?<お父さんコーチからの質問>池上さんのコラムなどをいつも拝見しており、日々の活動の参考とさせていただいております。今回は当少年団に所属するU-12の選手の件でアドバイスをいただきたく、ご連絡をいたしました。この選手は調子のいいときはみんなを盛り上げられるような声も出し、よく走り、点も決めてくれる、選手たちからは頼りにされる選手です。私たち指導者も非常に楽しみな選手なのですが、気分の浮き沈みが激しい選手です。(試合、練習関係なく元気だったにも関わらず急にイライラし始めたり、チームメイトに気に入らないことをされると急激に不機嫌になり、倫理に反するような行動、言葉を投げかけるなどがある)。直接の担当コーチはその選手の機嫌をとるような言葉をかけたり、チームの雰囲気が悪くなっていてもその選手を試合で使い続けるなど、腫れ物に触るような対応で私からすれば「そこまで気をつかわないといけないかな?」と思う対応をしています(効果については不明)。私がその学年に帯同した場合は、その選手が倫理的に問題がある行動の場合は本人とその件について話を個別でする(怒るのではなく、そのことがいい行動かどうかを考えさせるようにしています)などの対応をしています。また、試合や練習中にイライラしたり、不貞腐れ始めると一旦、冷静にさせるためにメンバーから外し、少しその選手1人の時間をつくるなどさまざま試しているのですが、効果があるのかどうかが不明です。一旦乱れ始めると周りの選手もとても気を遣っている姿があります。何とかしていい方向に持っていきたいのですが、どうすればよいでしょうか。年齢的にも思春期の入り口にいると考えられますし、難しい年齢であることも理解しています。私としてはサッカーを存分に楽しんでほしいですし、仲間たちからも調子のいいときは頼られているだけに残念でなりません。これまでいろんな年代の選手に指導してきた池上さんなら、このような選手にどう接しますか?アドバイスをお願いいたします。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。小学6年生は「前思春期」という時期ではありますが、この選手の行動を思春期が原因としてよいかどうかは意見が分かれるところでしょう。■ドイツで目にした、相手選手へのイラつきを鎮めさせる方法要因がどこであれ、このようにすぐキレてしまう癖は子どものうちに早く直したほうがいいでしょう。このような事象を、イングランドなどの指導者たちは「bad habit」(バッド・ハビット=悪癖)と呼び、見つけたら早々に修正するようです。昨夏に訪ねたドイツで、こんな場面に遭遇しました。小学生の試合を視察したときのことです。プレーしている中でとても上手いセンターバックの子がいました。危ない場面では必ず相手を止めていました。ボールを取られた相手はまた奪い返そうとしますが、そのCBはボール扱いが上手く視野もあるのでできません。相手は徐々にイライラして、激しくチャージし始めたのです。ファウルを取られてもおかしくないようなマークが続くなかで、そのCBはとうとうやり返しかけました。その瞬間、コーチが大きな声でその子の名前を呼びました。ベンチのほうに来るよう手招きし、やってきた子をくるりとコート側に向けさせると、その背中を抱きしめながら試合を見せました。しゃがんで頬を近づけ、指差ししながらアドバイスもしていました。10秒ちょっとの短い時間です。その子が落ち着いたと見極めたのでしょう。コーチは「さあ、行っておいで」というように背中をトントンとたたいて、コートに送り出しました。私は感心しました。なるほど。後ろから抱きしめるのかと。とてもいいものを見せてもらった気がしました。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■年齢にかかわらず良くない振舞いは指導者がきちんと伝えた方が良いさて、ご相談者様の話に戻りましょう。小学6年生であれば、自分のサッカーキャリアを思い描いたり、目標を持てる年齢です。より高みを目指せるよう、やってはいけないこと、良くない振舞いなどを指導者がきちんと伝えましょう。それは思春期だからとかではなく、対象が低学年でも同様に対処してください。■対応方法:1on1で個人的な話として伝えることでは、どうするか。前述したような話を1on1でしっかり伝えましょう。みんなの前で言うのではなく、その子と二人になれるところで、あくまで個人的に話します。そのような時間を確保してください。もちろんすぐには修正できないでしょう。その後、試合中や練習中に同じように感情的になったり、我を忘れる姿を見かけたら、呼び寄せます。そこで「今やっていてどう?」「今どんな感じ?」と話しかけます。それでその子には伝わるはずです。コーチの短い言葉が「今、君はどんな状態ですか?それで良いですか?」という問いだと、その子は受け止めるはずです。そこで気持ちが落ち着いたら、またコートに出ていけばいいのです。■話すときに気を付けること「絶対ダメ」など頭ごなしに否定しない選手と話すときにもっとも気をつけて欲しいのは、「絶対ダメ」などと頭ごなしに言わないことです。ありがちなのは「キレるなら試合に出さない」と罰則規定を作ることですが、それもよくありません。試合に出たいからキレないようにするのは、道理が違います。冒頭でお話ししたドイツのコーチのような姿を、日本では残念ながら見かけません。選手が感情を抑えられなくなると、「もう出ろ」と試合から外すことが多いようです。もしくはそのままプレーさせながら「落ち着け」と声を掛けます。なかにはコーチも同じように感情的になっている場合もあります。■腫れ物に触るような扱いは不要小学生年代に特別扱いしないこともしくは、逆に腫物に触るように遠慮がちに言うか、黙ってみていることもあります。ご相談者様が書かれている他のコーチの方々と同じです。このような態度は、その子にとっても、他の子どもたちにとっても決して良くありません。よくない扱いのツケはあとできます。小学生のときにチームの中心で活躍していた子どものなかには、上述したような扱いを受けてしまい、天狗のまま中学生になります。私はそんな子たちを数多く見てきました。そういう中学生を変えるのはとても大変です。よって、どんなに上手でも、チームの中心であっても、小学生時代に特別扱いしてはいけません。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■変化を促すために、撮影して本人に見せるのも一つの手(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)以前、すごいドリブラーに出会ったことがあります。そこで中学生とやらせました。すると1か月もすると、中学生のディフェンスを抜けなくなりました。小学生のうちにそういうことを体験させる必要があります。小学生のチームだと自分ひとりでやってしまい、フリーの子にパスしない子どもをよく見かけます。そんなときはこんな話をします。「フリーの子にパスしたら?そうすれば、みんな嬉しいよ。サッカーはチームでやるものだよ」そういった上手い子は、ミスした子を責めることもあります。そのときも「みんなでやるスポーツだ」と言い続けることが重要です。それがチームのスローガンになれば、パスしなかった子も変わっていきます。その子の様子をビデオで撮って見せるのもいいでしょう。胸でトラップするとき、手を広げてトラップしようと伝えるのですが、どうしてもできない中学生がいました。注意しても「僕は手を広げてる」と言い張ります。パスを出さずひとりでドリブルする子でした。手を広げないと審判からはハンドに見えることがあるので習得してほしい技術です。よってビデオに撮って見せました。観念したような様子でしたが「これは僕じゃない」と言いました。そんな子でも、少しずつ変わっていき、次第にパスができるようになりました。指導者によって選手は変わります。子どもを伸ばしてあげてください。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2024年05月10日サッカー少年少女のママたちを悩ませる「ソックスにつく人工芝取れない」問題。子どもがサッカーを始めてすぐにぶち当たる壁と言っても過言ではありませんよね。サカイクでもインスタグラムで「子どものサッカーでの悩みに」ついてアンケートを実施したところ、約6割が人工芝の洗濯と回答。そこで、サカイクアンバサダーの皆さんはどう対応しているのか聞いてみました。練習、試合後の「取る」作業だけでなく、そもそも人工芝がつきにくくする方法も教えていただきましたので参考にしてみてください。ママたちを悩ますソックスに着いた人工芝サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■ソックスだけでなく気付けば床や壁にも......子どもがサッカーを始めると、練習着やソックスの洗濯が増えますよね。その際に困るのがソックスに絡みつく人工芝。気付けば床や壁など家の中にも付着している人工芝にイライラさせられる方もいるのでは?サカイクInstagramのアンケート結果着いてしまった後の処置だけでなく「予防」も実践して、子どものサッカーに関わる親の負担を減らすことで、今よりサッカーが楽しめるはずです。■ユニフォームやソックスに着いた人工芝、どうやって取ってますか?アンバサダーの皆さんが人工芝を取るのに使っている道具は・ガムテープ・コロコロ(※カーペットクリーナー)・毛玉取り・特にない、手で取ってる・濡れた手で払うといった回答で、テープにくっつけて剥がすという方が多かったです。意外に感じる方もいるかもしれませんが、毛玉取りで絡め取るのもかなりキレイになるようです。ほとんど取れたら洗濯ネットに入れ、他の洗濯ものに芝がつかないように気を付けているという声も聞かれました。人工芝を床や壁に付けないための洗濯以外の対策としては、家に入る前に子ども自身で落としてもらう、というのがありました。外である程度払うことでその後の手間が省けるのだとか。■そもそも人工芝を付けない予防策がある多くの方は「ついてしまった人工芝」の対策に苦心していますが、アンバサダーの中には「つかないように予防」しているという声も。人工芝がソックスにくっつく主な理由は静電気。人工芝はプラスチック素材からできているためです。ですので、アンバサダーの中には「市販の静電気防止スプレーを使うことで予防している」というお母さんもいました。さすがに全くつかないというのは難しくても、だいぶ軽減されるそうです。スーパーやドラッグストアで簡単に手に入るので、ぜひやってみてはいかがでしょうか。柔軟剤にも静電気防止効果があるので、「サッカーのアイテムに?」と思うかもしれませんが、洗濯するときに柔軟剤を使うのもおすすめのようです。■練習前の準備だけでなく、帰ってからの片付けまでがサッカーちなみに、人工芝を取る作業を子ども自身にさせている家庭も多く、「自分のことは自分で行う、を意識させているから」と、まずは本人に対応させて気になる部分があったら親が仕上げをするというママたちもいました。練習前の準備だけでなく、帰宅後に洗濯物を洗濯機に入れるまでがサッカーだ、と小学生のころから認識させるのは自立の一歩かもしれません。■あまり細かく気にしない、だいたい取れたらOKの気持ちも大事今回教えてくれたママたちからも、「だいたい取れたら後は洗濯ネットに入れて、見えないふりをする」「私はあまり細かい性格でもないので、子ども自身がある程度取れるようになったから自分がチェックせずに洗濯することが増えた」など、おおらかに対応している声も聞かれました。親御さんたちも日々仕事に家事育児に忙しいので、ラクできるところはラクをして心に余裕を持つことが大事です。先輩ママたちの経験を参考にして、人工芝取りのストレスを減らし、お子さんのサッカーを楽しんでくださいね。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年05月09日サッカーの技術習得に役立つと評判の『テクダマ』。これはサカイクやコーチユナイテッド等を運営する株式会社イースリーと、ドリブルを中心としたトレーニングで技術と身体操作を高める指導で有名な三木利章コーチが、何度も試作を重ねて制作した、トレーニング用のボールです。ジュニアからプロまで、様々なレベルの選手が使用し、技術向上に役立てています。そこで今回は武相高校サッカー部(神奈川県)の鈴木翔大監督と選手たちに、テクダマの使用感についてうかがいました。神奈川の上位を目指す伝統校は、どのようなトレーニングで技術の向上に取り組んでいるのでしょうか?伝統校も使っているテクダマ■少数精鋭でトレーニング野球の強豪として知られる武相高校。サッカー部も過去に全国大会出場経験があり、OBに武藤雄樹選手(柏レイソル)がいます。社会人サッカーでプレー経験のある鈴木翔大監督のもと「ボールを大事に、ゴールを目指すサッカー」を掲げ、日々練習に励んでいます。武相高校サッカー部は、1学年15名程度、全体で40名ほどの少数精鋭です。学校のグラウンドは人工芝で、トレーニング環境も良好。チームとして大事にしている「止める、蹴る、運ぶ」の技術を高めるため、意欲的に取り組んでいるそうです。鈴木監督は言います。「止める、蹴るは言葉にすると簡単ですが、それを定義づけて、止めるとはどういうことなのか、蹴るとはどういうことなのかを、新入生が入ってくる4月の段階で明確にしています」さらには「数センチのパスにこだわりを持つ」をテーマに、「今のパスは左足の方がいいんじゃないか」などと声をかけながら、パスの質にこだわってトレーニングを行っているそうです。チームの目標は、神奈川県大会でベスト8に入ること。全国レベルの強豪が揃う上位リーグのチームを倒さなければならない挑戦ですが、選手たちは高い意識でトレーニングに臨んでいます。■テクダマを使うことで、脳に刺激が入るそんな武相高校が、練習で活用しているのが『テクダマ』です。鈴木監督は、テクダマの印象を「不規則に変化するボールなので、対応することで脳に刺激が入りますよね。特にGKはディフェンスに当たってボールの軌道が変わることもあるので、反応のトレーニングにいいと思います」と話します。武相高校ではトレーニングに、5号球の重さがある3号球を取り入れており、ウォーミングアップやパス練習などで活用しているそうです。それに加えてテクダマを使用することで、様々な動きのバリエーション獲得が期待できます。鈴木監督は、最近読んだ「エコロジカル・アプローチ」という本を引き合いに出し、「技術の習得を考えたときに、いつもと同じ環境、同じボールでやるよりも、サイズが小さくなったり、重さが変わる方が、学習効果が高いのかなと思います」と、通常とは異なる環境での練習の重要性を指摘します。ほかに、「対面パスもそうですし、3対1や4対1のボール回しでも、不規則に変化するわけですから、予測力、対応力が身につきますよね。瞬間的な反応なども高まっていくと思います」と、テクダマを練習へ組み込むアイデアを教えてくれました。指導者に話題の学習理論「エコロジカルアプローチ」■意識次第で技術は向上する止める・蹴るを始め、基礎技術を大切にする、武相高校サッカー部。鈴木監督は、「高校生の時期であっても、意識次第でボールテクニックは大きく向上する」と言います。「止めるというのは、1度のタッチでボールに回転をかけず、完全に静止させ、どこにでも運べてどこにでも蹴られる場所に1度で止めようと意識するだけで、反復していると、ピタッと止まるようになります」と、意識づけ次第でスキルは上がると言います。選手たちにテクダマの印象を尋ねると「いきなり跳ねたり、不規則な動きをする」(MF植村恵吾)「回転をかけたら、いろんな動きをするからおもしろい」(DF安田夏樹)「普段と違う回転やバウンドがあり、いろんな神経を使うので練習になる」(DF立川嵩空)と好評でした。さらに植村選手は「普段は人工芝でトレーニングしていますが、公式戦は土のグラウンドでやることが多いので、テクダマを使うことで、土のグラウンドと同じように、突然跳ねたり、不規則に動くボールに対応するトレーニングになると思います」と、活用イメージを話してくれました。■多様な環境で練習することの重要性武相高校サッカー部の取り組みから見えてくるのは、基本技術習得と、不規則な状況への適応力を高めることの重要性です。エコロジカル・アプローチの観点からも、様々なボールやピッチ状況など、多様な環境での練習が、学習効果を高めることが明らかになっています。日々、情熱を持って指導にあたる鈴木監督のもと、練習に創意工夫を凝らすことで、選手たちは着実にステップアップしているようです。技術面の向上に加えて、様々な変化に対応するためにも、テクダマを活用してみてはいかがでしょうか?きっと、トレーニングに新たな刺激が加わり、選手たちを上達に導くことでしょう!
2024年05月09日練習の直前に「行きたくない」と言い出す息子。最近では試合前や試合中にお腹が痛くなることも......。元々運動能力向上のために親がサッカーをさせたので、本人の決断を待とうと思うけど、毎回直前に言われると憂鬱。「今日は休もう」と言ってあげるのが良いか、「頑張ろう」と励ますのが良いか。親としても疲れてしまった、というお悩みをいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、3つのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<試合があることさえ知らされない息子が情けない。移籍したほうがいいかな問題<サッカーママからの相談>親としての対応について悩んでいます。サッカーを2年生の冬から始めて約2年半になります。もともと運動がそんなに得意ではなく、サッカーを始めたのは親からの働きかけによるもので、少しでも運動能力が向上したらいいな、仲間を作って継続的に運動してくれたらいいなと思ってのことでした。その後チームメンバーの入れ替わりなど多々ありましたが、メンバーにも恵まれ楽しく通っていたのですが、ここ2か月ほど前から直前になると行きたくないと言うようになりました。親としては続けてほしい気持ちもあり初めのうちは半ば強引に行かせていたのですが、試合前や試合中にお腹が痛くなることがでてきました。精神的なものが身体にも出てきて、週末が家族みんな楽しくなくなるのであれば意味がないと思い、本人にもサッカー辞める?と聞くのですが、辞める決断はできないようで辞めるとはなかなか言いません。練習も試合も行ってしまえばある程度楽しくはやっているようです。ただ、他のメンバーのようにもっとやりたいという気持ちはなく、気持ちも技術もついていけなくなっているとも感じています。本人が決断できるまで待つつもりでいるのですが、毎回直前に行きたくないと言われるので、その度に憂鬱になりますし、欠席連絡をするのも気まずいです。本人も行きたくないと言っていることはあまり知られたくないという葛藤もあります。この先、行きたくないと言った場合、じゃあ今日は休もうとすぐに言ってあげるべきなのか、それとも頑張ろう!と説得するべきなのかどうするのがいいのでしょうか?できれば続けて欲しいと思っている気持ちと、もう対応に疲れたからサッカー自体やめてほしいという気持ちの狭間で揺れています。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。息子さんをよく見ておられるなと感心しました。本人が決断できるまで待つつもりではいる、と書かれています。お母さんとしては息子さんの気持ちに寄り添おうと努力していらっしゃいます。けれども練習のたびに行きたくないと言われれば、やはり憂鬱になりますね。葛藤し続けた末にご連絡くださったようです。■子どもが「行きたくない」と言ったときに無理強いはしないで息子さんの姿は、私には不登校の子どもたちと重なって見えます。本当は学校に行きたい。友達と一緒に学んだり、遊んだりしたい。それなのに、朝になると布団から出られなくなる。そのように不登校になっている小中学生は、2022年度で29万9048人と過去最多になりました。前年度から2割強と10年連続で増え続けています。特に著しいのは小学生の不登校で、10年前の約5倍(中学生は約2倍)です。息子さんもサッカーに行きたいけれど、何らかの理由で行けないのです。ご存じかと思いますが、子どもが「学校に行きたくない」と行き渋りを見せたとき、私たち親は「頑張って行きなさい」などと無理強いしてはいけません。このような「登校刺激」をしないほうがいいことは、小中学校の教員の間では共通認識されています。私は不登校についても多く取材してきましたが、無理に学校へ行かせようとするなど親のマルトリートメント(避けるべき子育て)によってこころを病んだ子どもたちをたくさん見てきました。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■「頑張って行きなさい」と言ってはいけない理由「頑張って行きなさい」と言ってはいけない理由を考えてみましょう。そもそも学校に行きたくないと感じた時点で、子どもたちはすでに疎外感や敗北感を抱いています。みんな平気で通っているのに、自分はおかしいのかな、ダメなやつなのかなと自己肯定感が落ちています。そして何より、お母さんやお父さんを悲しませる、がっかりさせると思っています。したがって子どもが親に「学校に行きたくない」と告げるのは、非常に勇気がいります。もちろんサッと自分の気持ちを言える子もいますが、多くの場合は我慢に我慢を重ねています。必死で頑張り抜いた末に告白しているのです。■子どもは親の「運動能力向上」「仲間づくり」の願望を知っているここからは、不登校をサッカーの行き渋りに置き換えてお話ししますね。息子さんはお母さんが「少しでも運動能力が向上してくれたら。仲間を作って運動してくれたらいいな」と願っていることをきっと知っていることでしょう。だから今まで頑張ってきた。でも、だんだん頑張れなくなってきた。そこで勇気を出して自分の気持ちを明かしたのです。それなのにお母さんから「そんなこと言わないで頑張れ」と言われたら、息子さんはどう感じるでしょうか。もしかしたら「お母さんは僕の気持ちを全然わかろうとしてくれない」と落ち込んでしまうかもしれません。■アドバイス①理由を子ども自身が言語化できないから「なぜ?」と聞かないことでは、どうすればいのか。三つほどアドバイスさせてください。すでに「頑張って行きなさい」と言ってはいけないことはご理解いただけたかと思います。ここでもうひとつ言ってはいけないのが「なぜ行きたくないのか?」と理由を尋ねてしまうことです。10歳といえば小学3年生か4年生ですね。まだ自分の気持ちをうまく言語化できない学齢です。加えて、何かをしたくない、行きたくないといった行動の背景には複数の原因があります。つまり、理由は複合的なのです。「お母さん、僕にもいろいろあるんだよ。上手く言えないけど、とにかく行きたくないんだよ」そう叫びたいのだと私は考えます。「理由はどうでもいいよ。行きたくないなら行かなくていい」そう言ってあげましょう。サッカーも学校も、親は「子どもが楽しめているか」を軸に考えてあげましょう。■アドバイス②何かのきっかけでサッカーとの縁がつながることも決断を急かさないこと2つめは「いつ辞めるの?それとも辞めないの?」と決定を急かさないこと。大人はつい急ぎたくなります。しかし、子どもの気持ちの流れと大人のそれは全く違うものです。そこを理解して、最後まで自分で決めさせましょう。サッカーの始まりは親主導だったと書かれています。であればなおのこと、どうするかは本人に任せてください。行きたくないなあと思っていても、何かのタイミングで行ってみたら楽しかった。もう一度行ってみたら、今までできなかったことができた。そんなふうにしてサッカーとの縁がつながることもあります。お母さんも「続けて欲しいと思っている気持ちと、もう対応に疲れたからサッカー自体やめてほしいという気持ちの狭間でも揺れています」と書かれています。お母さんと息子さんの振り子は恐らく同じでしょう。息子さんも「続けたいけど、疲れたからやめたい。やめたいけどやめるのも恥ずかしい」そんな感情があるのかもしれません。■アドバイス③親自身が孤独にならないよう、周囲に話を聞いてもらおう(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)最後の3つめ。家庭ではサッカーの話はせずにリラックスさせてあげること。ただ「サッカーのこと、何か話したくなったらいつでも言ってきてね。お母さんもお話聞きたいから」と言ってあげてください。そこで、心配だからとか、お母さんも当番とかあるからなどと大人の都合を出さないほうがいいでしょう。そして何よりもお母さん自身が孤独にならないよう、お父さんがいればお父さんに気持ちを話しましょう。2人の子どもですからどんなことでも背負う重さを共有してください。もしシングルであるならばママ友や話ができる人に聴いてもらってください。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。
2024年05月08日子どもたちが自分で考えプレーし、サッカーを心から楽しめる環境づくりをサポートしたい。そんな思いから昨年実施した「あなたの(開催する)大会をサカイクが応援します!【サカイク大会応援プロジェクト】」。主催者がサカイクの考えに賛同していること、参加チームが6チーム以上の大会を条件に、オフザピッチ、オンザピッチ問わず、大会期間中、もっとも選手自身が考え行動できていたチームに送る「サカイク賞」としてサカイクサッカーノートと賞状、サカイク10か条の大会掲出用ポスターを提供するプロジェクトを年間を通じて実施しております。子どもたちにサッカーを楽しんでほしい、サカイク10か条を保護者も含むチームの共通理解にしたい。というチームのみなさん、この機会にお申込みください。お申し込みフォーム>>昨年実施したチームがクラブのSNSなどにアップしてくれた写真昨年当選したチームに、大会を開催してみてどんな反響があったかを伺ったのでご紹介します。■大会で初めて「サカイク10か条」を知るチーム・保護者も大会では、サッカーノートと賞状・ポスター以外に、参加選手の保護者には「サカイク10か条」を記載したチラシをお渡ししていただきました。埼玉県の川越ライオンズさんは、6年生の親善試合で応募いただきました。普段からクラブのFacebookなどで記事をシェアしてくれているそうですが、今回改めて保護者の方にサカイク10か条などを周知したいというのが応募のきっかけだと教えてくれました。普段から記事をシェアしてくれていることもあり、チームの保護者の方は10か条のポスターやチラシに大きな反応はなかったそうですが、対戦相手のチームの方などは初めてサカイクを知った様子の方はいらしたとのこと。川越ライオンズさんは、個性を活かした『サッカーを通しての自立』を目指すことを掲げているチームで、小学生のうちは楽しむことを大事にしています。最近は親御さんの方が熱量が高く、わが子の才能を信じて強豪クラブに移籍し、そこでBチームになり出場機会を失う子どもがいる実情もあるそうで、心を痛めているそう。今回のプロジェクトを実施しての感想を伺うと、「まだサカイクを知らない方々が、このようなプロジェクトでサカイク10か条を知って、子どもが楽しむ姿勢を見守ってくれるのが当たり前になるといいですね」とコメントを寄せてくれました。■10か条を見て「うちのチームでも取り入れたい」という保護者も神奈川県で活動しているAZスポーツクラブさんは、U-8とU-12年代で実施。それぞれ12チームずつご参加いただきました。クラブの代表を務める加藤さんがサカイクのサービス開始当時からその理念に賛同していただいていることもあって、今回このプロジェクトを知って、保護者の皆さんたちにももっとサカイクの理念が広がってほしいとご応募いただいたとのこと。U-12年代ではすでにサカイクを知っているチームばかりだったそうですが、U-8年代では、サカイクの存在をこの大会で知った方も少なくなかったそう。保護者にお配りしたチラシや、掲出ポスターでサカイク10か条を初めて目にした方もいたそうですが、「(10か条)こういうの、いいですね」と共感して下さる方や、「うちのチームでもサカイクの考えを取り入れたいと思うのですが、どうしたらいいでしょう」と本部テントに相談にいらした保護者もいたと教えてくれました。■申し込みはこちら子どもたちが自分で考えプレーし、サッカーを心から楽しめる環境づくりをもっともっと進めていくために「あなたの大会をサカイクが応援します!【サカイク大会応援プロジェクト】」を通年で実施することを決定いたしました。当日のお写真や、大会結果などをお送りいただければ、サカイクのサイトやSNSでご紹介します。自分たちの大会にぜひ、というチームの皆さん、この機会にぜひご応募ください。お申し込みフォーム>><<サカイクからお渡しする内容>>◆サカイク賞の賞品・賞状:1枚・サカイクサッカーノート:20冊(1チーム分)◆サカイク10か条のポスター:5枚(A3サイズ)◆保護者へのサカイク案内チラシ:大会参加人数分(A4サイズ)※大会参加者の皆さんにお渡しくださいお申し込みフォーム>>サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」
2024年05月02日相手のラインを崩し、スペースを作る2人目、3人目のコンビネーションを高めたい。仲間とイメージを共有すること、3人目の動きが合わない。連動した動きを教えるのに最適な練習法はある?とのご相談。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、コンビネーションを理解する練習法をお伝えします。(取材・文島沢優子)サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<U-10年代の守備の基本、状況認知やボールを奪う動きをどう教えればいい?<お父さんコーチからの質問>街クラブで指導者をしています。今の担当は5年生です。(4年生の頃から知っている子ばかりです)チームの課題は、2人目、3人目のコンビネーションを高めることです。相手のラインを崩し、スペースを作って前に運ぶ動きを身につけさせたいのですが、仲間とイメージを共有することや、3人目の動きが合いません。2人目、3人目のコンビネーションを教えるのに最適な練習法はありますか?指導者として自分も日々学んでいかなければ、情報をアップデートしなければと思っていますが、リアルではなかなか自分のチーム以外に関わることがなくて......。池上さんは現在もチーム指導をされているようですが、指導の際の伝え方(言葉、子どもがイメージしやすい伝え方)などの注意点もあればぜひご教示いただけると幸いです。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。お尋ねいただいた「複数で崩して前に運ぶ」という部分を、日本ではうまく教えられていないようです。この部分を、欧州ではグラスルーツで根気よく指導しているようです。■ドイツでは10歳以下で3人目のコンビネーションができるようになっているご相談者様は5年生を教えているようですが、例えば、ドイツは10歳以下でいつの間にか3人のコンビネーションができるようになっています。未就学児から「フニーニョ」と呼ばれる3対3のゲームをやっているからでしょう。日本でも少年サッカーの指導者が取り組んでいるので、ネットやメニュー本に載っていると思います。コーチが少しずつアタックの基本を教えながら取り組むと、2人目、3人目を見ることができるようになります。それを考えると、攻撃のベース作りが5年生できていないとしたら少し遅れているのかもしれません。この年代では3人目が見える状態であることが望まれます。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■「ノッキング」を意識させる私は自分のクラブに今年度から中学1年生のチームを設けました。そのクラブの小学生チームからあがってきた中学1年生に比べると、他クラブから加入してきた中学1年生はやはり周りが見られないようです。そこで、視野をつけるさまざまなトレーニングを行っています。例えば、守備を付けない状態で3人でダイレクトパスをしながら、どんどん動きます。グリッドを定めず、移動していいことにします。そこで私は選手に「ノッキングを意識しよう」と伝えます。ノッキングとは、走りながらボールを受けて次にパスをするまでに、一瞬躊躇して動作を止めてしまうことです。それはパスを受ける側だけの問題ではありません。みんなで前に進もうとしているのに、後ろにボールが来てしまうとその人は止まらなくてはなりません。その逆で、ボールが前に行き過ぎてもだめです。全体がスムーズに動けません。よって、スムーズにパスができるよう、まずは守備を付けずパス交換を行います。そのあとで守備を付けて練習をします。ベースとしては2対1をやります。いつ味方を使うのか?そんなことを整理するメニューです。2対1をやるとワンツーパスを使いやすくなります。そこで相手をドリブルではなくパスで抜くことを学びます。パス一本で相手を崩すイメージを植え付けます。■2対1でいつパスをするのか、ドリブルなのかなど崩し方を理解する先日、関西のある学校で中学生を教える機会がありました。その際、2対1をやりました。マーカーでゴールを2つ作ります。2つのゴールの間隔は5メートルほど。つまりゴールはコートに4つある状態です。よって選手は右でも左でもいけます。そこでどんなときに誰にパスを出したらいいかを学んでもらうのです。もしくはパスを出すように見せかけて自分で抜いてもいいのです。次に3対3へ切り替えました。すると、全然点が入りません。中学生は2対1の関係がわかっていないようでした。そこでまた2対1などいくつか基本的な動きを理解する練習をして、最後にまた3対3を行いました。すると、崩し方が良くなって点がたくさん入りました。選手はとても楽しそうでした。後日、中学校の先生が、選手たちが書いた練習の振り返りを見せてくださいました。多くの中学生が「あのような練習をして崩し方がよくわかった」と書いていました。一見簡単そうな2対1で何を磨くか。いつパスをするか、ドリブルなのか、ワンタッチか、ツータッチでよかったのか。そういったことをまずは指導者が理解したうえで練習をすることが重要です。観察する視点が違ってきます。■足が速くもない、身体も小さい、でもJクラブに入るような選手が育つ理由京都には、私が指導を続けている子どもたちがいます。そこのコーチたちは2対1が大事だということを知っていて、ずっと取り組んできました。そのクラブからJリーグクラブのジュニアユースに入る子も出てきました。足が速いわけではないし、体も小さいです。ただ、人を使うのが非常に上手い。練習やコーチ次第でそういう子が育つのです。そういったことを私は経験しているからこそ、確信をもって指導をしています。ここまで説明したような練習は、私が外部指導員として教えている高校生にもやってもらっています。彼らを見始めて今半年ほど経ちますが、ようやく3人目を見られるようになりました。できればこのような練習を小学生からやってほしいと思います。■説明や指示は短くシンプルに最後に指導の仕方を話しましょう。私は長くしゃべりません。説明や指示はシンプルにやります。コーチの話す時間を短くしてプレー時間を長くすることを心がけています。練習中、全体に修正したいことがあるときはいったん集めて説明しますが、ここでも言葉をできるだけコンパクトにします。その際「これって理屈だからね」という言い方をします。あくまで理屈だから、実際にやると違うことも起きる。その都度自分たちで考えるしかない。毎回考えながらやってくださいと伝えます。■コーチがドリブルやパスを逐一指導してたら相手を崩して前に運ぶ力が身につかない(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)コーチが気を付けないといけないのは、練習がうまくいかなかったからといって「こうしなさい」とコーチがすぐに答えを教えないことです。さまざまなチームの練習や試合を見ますが、コーチがドリブルやパスを指示する場面が目立ちます。それをやっている限り、相手を崩して前に運ぶ力は身に付きません。数年前から、指導者を「コーチ」と呼ばなくなってきました。代わりの名称が「チューター」です。補助する人、助ける人という意味です。企業などでは、若手社員に指導する先輩を指すようです。そのようなマインドセットで指導に臨んでください。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2024年04月26日公式戦が始まったけど、試合があったことをチームのインスタで初めて知る、ということが何度もあった。同級生は呼ばれているのに息子が呼ばれてない。親として恥ずかしいしショック。これから頑張っても試合のメンバーに選ばれないなら移籍すべき?と悩むお母さんからご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、3つのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<出場時間の短い息子、興味があるバレーボールに転向したほうが良いという妻と意見が割れてます問題<サッカーママからの相談>初めまして、よろしくお願いします。息子は小学3年生で県内でも強豪のクラブチームに所属しております。2年生から公式戦も始まったようですが、息子には声がかかっていないので、試合があった事さえ知らないのです。チームのインスタで試合があった事を初めて知るという事が何度もありました。同じ小学校の友達は試合に呼ばれているようで、なんだかこの状況が親として恥ずかしく感じてきました。2年生ですでに選抜されている事にショックなのと、これから頑張っても選抜されないのではないかと不安になっております。このままこのチームに所属して練習のみに参加するべきか、他のチームに移籍するか悩んでおります。 ここからの逆転劇はありますでしょうか?毎日家でもコツコツ練習していて、確実に上手くはなっています。 サッカーも大好きで、息子はチームが好きなのでここで続けたいと言います。高学年になり、試合にも呼ばれないと同じ小学校のチームメイトから馬鹿にされたりしないかなど勝手に私が心配しています。本当に情けないのですが、アドバイスを頂けたら幸いです。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。チームのインスタグラムでチームメイトが試合に参加することを知るなんて、息子さんはどんなにかショックだったことでしょう。ぜひ励ましてあげてください。■レギュラーだけに試合を告知するチームのやり方はおかしいとはいえ、お母さんが「なんだかこの状況が親として恥ずかしく感じてきました」という告白は、少し残念です。解釈が間違っていたら申し訳ないのですが「親として恥ずかしい」の言葉が、息子が試合に呼ばれていないことを指しているととれるからです。受け取り方はさまざまあるでしょう。しかし、私はこの「レギュラーにだけ試合告知する」というチームのやり方に憤りを感じます。少年団ではなく民間のクラブチームですから、クラブ員全員に平等なプレー機会と楽しくプレーできる環境を与えるのが本来の使命です。人数が多ければ参加する大会を分けて、子どもたちにその都度説明すべきです。それをこっそり隠れてエントリー組にだけ知らせて試合に連れていくなど、教育的配慮に欠ける以上に人としてどうでしょうか。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■戦力ダウンになるからレギュラー以外帯同させなかったチーム実は、都内にあるクラブが以前、都大会の地域予選で同じことをしました。8人制です。記憶があいまいで申し訳ないのですが、エントリーが十数人。1試合のうち確か12人程度を必ず試合に出場させなくてはならないレギュレーションでした。ほかのチームはエントリーぎりぎりまでの人数を参加させ、12人出場を順守していました。ところが、そのクラブは9人しか連れてきていませんでした。レギュラー以外の子どもを出場させると戦力ダウンになるからです。■補欠だからしかたない、ではなくチームの大人に情けなさを感じてほしいあとで、そのクラブで試合に呼ばれなかった子どものお母さんから話しを聞くことができました。お母さんは「うちのクラブはガチガチの勝利至上主義なんです。試合があることを知らされなくても、私たち補欠組は仕方ないねとあきらめています」と涙ぐんでいらっしゃいました。聞けば、そのクラブは代表であるコーチの方の息子さんはJリーガー。プロを輩出したクラブとしても有名でした。さまざまなブランド力の前に、誰も何も言えない状態でした。十数年前の話ですが、いまだに同じようなことが行われていることにがく然とさせられます。息子さんが試合に呼ばれないことを、お母さんが残念に思う気持ちは私も同じ親としてよくわかります。しかしこの場合は、息子さんよりも所属するクラブの大人たちに対して情けなさを感じて欲しいです。■お子さんにはどうあって欲しい?レギュラーで活躍するのが最優先なのかここから三つほどアドバイスさせてください。ひとつめ。まずは子育ての原点に還ってみましょう。一度胸に手を当てて考えてみてください。お母さんは何のために子育てをしているのでしょうか?子どもにどうあってほしいですか?「このままこのチームに所属して練習のみに参加するべきか、他のチームに移籍するか悩んでおります。 ここからの逆転劇はありますでしょうか?」とあります。サッカーではいつもレギュラーで活躍してほしくて、そうではない息子さんを許せないのでしょうか?違いますよね?お母さんは、息子さんをサッカーのプロ選手にするために産んだわけではないと思います。それなのに、相談文には「恥ずかしい」「情けない」がたくさん並びます。息子さんに対して負の感情を抱いていることが伝わります。「私は何のために子育てしているの?」そこに注目すると、おのずとどうすればいいかが、わかると思います。■不安かもしれないが、親は我が子を肯定してあげよう2つめ。お母さん、「心配するのが親の役目だ」と昔々の子育て観に縛られていませんか?前述したように、移籍すべきかどうかと悩んだり、試合にも呼ばれないと「馬鹿にされたりしないか」と心配しています。このようにお母さんが不安になるのは、レギュラーのみ試合告知するようなクラブにいるのも理由のひとつかもしれません。息子さんのサッカー環境は決してポジティブなものではないようです。しかしながら、お母さんご自身が息子さんを肯定していないことも大きな要因ではありませんか?そうではなく、以下のように考えられないでしょうか。うちの子は試合に出られなくても、こんなにサッカーを楽しんでいる。うちの子は、コツコツと家でも練習して本当に努力家だ。うちの子は試合を知らせてくれないようなチームなのに、チームが好きだなんて、なんて寛容な人間なんだろう。そのように、お母さんが肯定することが、何よりも息子さんの力になります。逆に、心配な感情、不安な気持ちは、息子さんの自己肯定感を下げます。言葉にするとしたら「僕のことを一番知っているはずのお母さんにこんなに心配されてしまう、ダメな僕」と感じてしまうのです。自分とは違う生命を預かるのですから、誰でも不安でいっぱいです。しかし、心配してオロオロするのではなく、多少不安なところがあってもわが子を信じてあげてください。鈍感でいるか、強がること。お母さんの鈍感さや強がりが息子さんの力になるのです。そして、成果主義を卒業しましょう。いいですか?試合に出られなくて一番つらいのは、息子さんです。そこを決して忘れてはいけません。何か良いことをしなければ認められない家庭は、子どもにとって地獄とまでは言いませんがつらい場所です。サッカーや学校は評価ばかりで、ジャッジされ続ける日本の子どもにとって、家庭は安全基地でなくてはいけません。心理的安全性がある家でこそ、子どもはこころのエネルギーをチャージして意欲的になれるのです。■不安に陥りがちな「こころの癖」はどこから来るのか(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)3つめ。この機会に、子どもを心配してしまう自分の育ちを見つめ直しましょう。こちらから「子どもを信じましょう」「子どもに決めさせましょう」「自立させましょう」と方法論を伝えても、皆さんおそらく「わかってはいるけど、それが難しい」と思っていますよね?不安に陥りがちな「こころの癖」はどこから来るのか。何か発見したら、またメールをください。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。
2024年04月24日最近は少なくなってきたとはいえ、少年サッカーの現場で怒鳴る指導スタイルは存在します。周囲のチームにも影響されて大声で怒鳴る指導スタイルになっているお父さんコーチの方もいるのでは。今回は、かつては怒る指導をしていたけれど「サカイク」に出会って指導スタイルがガラッと変わったお父さんコーチにお話を聞きました。チームの保護者にも「180度変わった」と言われ、我が子との親子関係にも変化があったそうです。写真は少年サッカーのイメージサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■違和感を感じつつも、周囲と同じように怒る指導をしていた和歌山県の岩出市サッカースポーツ少年団でお父さんコーチとして活動する谷さんは、お子さんがチームに所属したことでお父さんコーチとしてサッカーに関わるようになりました。「サカイク」に出会って指導スタイルが「180度変わった」以降サッカーの魅力にますますハマり、子どもたちがサッカーを楽しめるようにと指導者ライセンスやレフェリーの資格取得など日々学び続けていますが、かつては「怒る指導者」だったそうです。「違和感は感じつつも、 よそのチームも結構怒鳴って怒っている指導者もまだまだいて、先輩たちがそうしているからと自分も怒ることが多かったです」と語る谷さん。実際、厳しい指導をしているコーチが見ている学年は県大会で上位に入ったり、結果を残していたこともあり、結果だけ見たら厳しい指導をした方が勝てるのかなと思っていた時期があったそう。■厳しい指導を受けた子たちがサッカーをやめていくのを聞いて......ですが、ずっと違和感を感じ続けていたそう。子どもたちの競技人生を考えた時に、小学生年代から厳しい指導を受けた子たちが高校、大学、社会人になってもサッカーを続けているかというとそうでないことに気づいたのだとか。強豪校に進学して選手権やインターハイに出場した子が、大学以降サッカーをやめてしまったり「もうサッカーはいいや」と離れてしまう子たちがいるのを目の当たりにして、サッカーは元々楽しいからやるのに、厳しい指導や出場機会の問題でサッカーが面白くなくなってしまうことに心を痛めていたと教えてくれました。■サカイクの考え方の方がしっくり来たもともと谷さん自身が「自分の子とは自分で決めさせる」という親御さんの考えのもとに育ってきたこともあり、「怒って指示する指導で子どもたちが伸びるのか」という疑問を持っていたと言います。そんな時にたまたま「サカイク」に出会って、サッカー少年少女の保護者の心得10か条を知り、「育成に対する考え方とか、自分にとってはこっちのほうがしっくりくるかもと思ったんです」と振り返ります。「子どものことを否定せず、大人は見守り環境を作る考えに共感した」と、サカイクを知って以降は色んな記事を読んで情報をアップデートしている毎日だそう。■勝ち負けも大事だが「サッカーって楽しい」が大前提サッカーには勝敗があり、プレーする選手は勝ちたいと思うもの。監督やコーチ、保護者のみなさんだってわが子のチームに勝ってほしいと思うのは当然です。ですが、何をしても勝てばいい、というものではありません。その年代ごとのサッカーの理解であったり、原理原則をしっかり押さえて勝利を目指す。それが指導者としての力量であり、中学、高校と競技人生を続けていくために大事なことではないか、と谷さんは言います。「チームとして勝ち負けも大事だけど、サッカーって楽しいよね」が大原則にあるうえで、攻撃や守備の目的を教えるスタンスで指導にあたっているとのこと。サッカーを始めたころから辛い思いでしかなければ、それを続けたいとは思わないものですよね。「サッカーって楽しい」という気持ちを育むことは、やる気やサッカーに取り組む姿勢にも影響するものなので、指導者や保護者の皆さんは大事にしてほしいものです。■保護者の方にも「180度変わったね」と言われた谷さんはサカイクに出会い、自分が抱えていた違和感は間違いじゃなかったと確信したそうです。子どもたちを伸ばす大人の在り方に共感し、指導スタイルを変えたと言います。以前は違和感を感じながらも周囲のチームの影響もあり、怒る指導をしていましたが、サカイクに出会ってからは怒らなくなったそう。簡単なミスに対して指摘したり、失点した際はハーフタイムで叱責したりしていたのを全く言わないようにして、選手たちにどうして失点したのかを考えさせ、話を聞いてから谷さんがアドバイスをするようなやり方に切り替えたのだとか。それまでの指導方法と真逆のやり方に、最初は保護者も「どうしたの?」と戸惑いがあったそうですが、谷さんが指導についての考え方やスタンスを伝えていくことで「そういうのが良いよね。コーチ、180度変わったね」と言ってくれたそう。他のチームの指導者からも「子どもに対するジャッジが適切になったよね」「選手にとって何が良くて何がダメか分かりやすくなってる」と言われたのだと谷さんは嬉しそうに教えてくれました。■親たちの声かけも変わった谷さんの指導スタンスに保護者の多くも共感してくださり、今では応援の声かけも変わったそう。以前はそこまで保護者の声援がなかったとのことですが、最近は「ナイスプレー」などポジティブな声かけが増えたそうです。谷さんが変わったことで、保護者の皆さんも子どものサッカーに楽しんで関われるようになっているようです。■我が子との関係性にも変化が谷さんの周囲の変化はチームの保護者だけではありませんでした。以前は親子で同じチームに所属していましたが、指導者目線と親目線もあり息子さんに厳しく当たってしまうこともあったそう。ですがサカイクに出会って「親は子どもを応援しよう」という基本スタンスを改めて心に刻み、プレーへのダメだしはしない、勝とうが負けようが褒めるところはちゃんと褒める、試合後の会話は「今日も一生懸命だったね」から始めるなど、接し方を変えたそう。息子さんがチームを移籍したこと、谷さんが変わったことなどタイミングが重なったのはあるかもしれませんが、以前より息子さんが本音で話してくれるようになった気がする。「親子関係が良くなりました」と谷さん。サッカーの話も含めて、いろんな話ができるようになったことを嬉しそうに話してくれました。大人の接し方次第で子どもが変わり、チームも雰囲気が良くなった体験でした。皆さんも参考にしてみてはいかがでしょうか。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年04月17日U-10年代に守備を教えるのに苦戦。状況の認知やボールを奪う動きをどんなやり方で教えればいい?と悩むお父さんコーチからの相談。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、守備の指導ポイント5つをお伝えします。(取材・文島沢優子)サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<練習の説明など長い話を聞けない低学年、説明するときの長さや伝え方のコツがあれば教えて<お父さんコーチからの質問>こんにちは。最近このサイトを知った者です。よくある話だと思いますが子どものチーム入団で他の保護者コーチに誘われてボランティアコーチをしています。自分自身は小学生時代にスポ少でサッカーをしていた程度です。攻撃的なポジションだったので、小学生年代に守備のやり方を教えるのが難しいなと感じているところです。今回相談したい内容は、U-10年代で覚えておきたい守備の基本についてです。グループで守備をする際、どのように状況を認知して動くか、どのようにしてボールを奪うのか?などについてどんなやり方で教えるのが良いか、と言うのが悩みです。また、相手との間合いの詰め方や体の入れ方をどう覚えさせるのが良いでしょうか。質問が短くてすみませんが、アドバイスをいただけると幸いです。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。日本サッカーにおけるディフェンスの問題は、ボールをとれないことだと私は考えています。ご質問は、10歳以下で覚えておきたい守備の基本ということなので、この年代では「追いかけて取る」ということを強く伝えてほしいです。指導者の間でよく出てくる言葉は、例えば「チャレンジ&カバー」とか「2人で協力してボールを奪おう」といったものです。それよりも、マンツーマンのディフェンスで、相手が保持するボールをとることを頑張ること。それに関して自分で工夫することを強調してください。■指導のポイント①「抜かれても良いからボールを取りに行こう」と伝える指導について具体的なポイントを5つほど伝えます。ひとつめ。選手に対して「抜かれても良いので、ボールをとりに行こう」と働きかけましょう。それを重ねていくと、選手は自分が相手とどれくらいの間合いで守ればよいかを見極めていきます。これは私たちコーチが手取り足取り教えてできるものではありません。もっと言えば、その子自身の能力でしかないのです。時折、育成年代の講習会をのぞくと「手を伸ばして相手に届く(体に指先がつくような)距離にいなさい」と教えることがあります。ところが、それはひとつの目安でしかありません。間合いをもっと詰めても抜かれない選手もいれば、その間合いでも簡単に抜かれてしまう選手もいます。自分で「自分の間合い」を見つけてもらう。たくさん抜かれることで、詰める距離やタイミングを学ぶのです。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■指導のポイント②ミニゲームではマンツーマンで守備をさせるふたつめ。この守備の感覚は主にはゲームで養います。練習の際ミニゲームをするときには、守備についてはマンツーマンでやらせましょう。簡単に言えば「この子を離しちゃダメだよ」「まずボールが渡らないように守ろう」説明してください。それでも相手に振り切られてボールが渡ったとしたら、マークしている自分がとりに行く。もし抜かれたとしても、仲間にカバーを期待して見ているのではなく、誰より先に自分が追いかけるよう指導しましょう。■指導のポイント③からだを当てろ、ではなく足を出せと伝える三つめは「からだを(相手に)当てろ」ではなく、「足を出せ」と口酸っぱく伝えること。ボール保持者に対し激しく守備することを「デュエル」と表現することがあります。が、日本ではそれについて「相手の体に自分のからだを当てよう」と伝えることが多いようです。しかしながら、からだをぶつけても相手がボールを隠して取られない位置に置けばボールは簡単にはとれません。そこでからだを当てるのではなく、足を出すことが重要です。相手の足下にあるボールを目がけてとりに行くよう促しましょう。足を出すことを強調せず、からだの入れ方などを細かく教えてしまうと、相手とボールの間にからだを入れようとします。それでうまくからだを入れられたらいいのですが、すり抜けられることのほうが多いようです。さらに、すり抜けられると、からだを当てにいきがちです。そうなるとファウルが増えます。悪くすれば、お互いにケガをするリスクも高まります。■指導のポイント④抜かれても叱ったり否定しないことボールを取るためには、自分の足が届く位置まで間合いを詰める必要があります。詰めていくと抜かれることも出てきます。詰めると見せかけて引いてみたり、相手をよく観察していけば少しずつコツをつかんでいきます。その進歩を支えるためには、抜かれても叱ったり否定しないこと。これが四つめです。例えば「今日のミニゲームは抜かれてもいいよ。そういう練習だから」と説明してやらせてもいいでしょう。間合いを詰めることを躊躇している子どもがいれば、コーチから「いくら抜かれてもいいから、とりに行こう」と言ってあげましょう。そのためにも日頃から選手を否定したり、安易に叱ったりしない雰囲気をつくることが重要になります。失敗を怒られてばかりでは、子どもは怒られたくないのでトライしません。今までの経験で言うと、なかなかボールをとれない子は自分で工夫していないようです。そのような子どもを見かけたら「同じタイミングで飛び込んでるみたいだよ」「ちょっとタイミングを変えてごらん」とアドバイスします。遅いようなら早く、早すぎるならもう少し落ち着いて相手をよくみることが必要です。■指導のポイント⑤ボールを奪う練習のため2対2をさせる(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)最後の5つめです。みていると、鳥かごをやり続けると「1対1でボールを奪う」という感覚が薄れるようなので注意しましょう。例えば2対2の練習を試してください。ボールを持つと攻撃方向決まっていて、ゴールラインにターゲットマンがいる。そこにパスすると1点という練習です。ターゲットマンにパスができると今度はパスしたチームがボールを受け、反対方向に攻撃をします。攻撃方向がどんどん変わるので継続して練習できます。2対2なので自然にマンマークになりますし、ボールをとらないと点にならないので子どもたちは積極的にプレーします。そこでは「自分たちでボールを奪わないと得点できないよね」「積極的に狙おう」と声がけしましょう。ボールを奪い返す練習なんだよと、そこを強調します。足を出してボールをとりに行き始めると、相手の足を踏む場面が増えます。欧州の選手は子どもでもプロでも、相手の足をよく踏んでいます。ところが、そういう場面を日本ではあまり見ません。実は私が小学生たちのなかに入ってゲームをしていると、子どもの足を踏むことがあります。「監督!足踏んでるよ」と子どもに指摘されたりします。しかし、「ボールをとりに行くとこうなるんだよ」と説明しています。池上さんの連載一覧はこちら>>サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2024年04月12日サッカー選手にとって大事なパーツである足の爪。あなたのお子さんは足の爪をご自身で切っていますか?保護者がされているでしょうか?先日サカイクで行ったアンケート結果では、このようになりました。【Twitter】【Instagram】インスタグラムでのアンケートでは、「6年生以降も親が切っている」という回答が最多に。今後は自分で切るようになる年齢だと思いますので、正しい爪の切り方やケアの方法を、引き続き、爪専科の高山定也さんに教えていただきました。ぜひ参考にしてみてください。(取材・文:前田陽子)最高のパフォーマンスを発揮するためにも足の爪は大事なパーツ<<関連記事:ボールを蹴ると爪が痛い、割れた!「足の爪」が与えるサッカーへの影響と正しいケアサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■巻き爪防止の爪の形爪は1枚ではなく、薄い爪が3枚ミルフィーユ状に重なって構成されています。爪の先が2枚に分かれた経験がある人も多いと思いますが、一番上の爪が剥がれたり、欠けたりすると2枚爪の原因になります。その原因は乾燥によるものです。爪にも保湿が大切なので、ハンドクリームを塗る、ネイルオイルをつけるなどして保湿しましょう。足の爪は基本的にスクエアオフにします。スクエアオフとは、少しだけ角を落とした形のこと。こうすることで引っ掛かりや、巻き爪を防ぎます。【スクエアオフ】■爪切りはNG、やすりを使って長さを調整長さは白い部分が1㎜ほどに揃えます。白い部分が全くなくなってしまうのは深爪です。爪は一度にカットするのではなく、少しずつ切り揃えましょう。爪切りで切ると断面ができて、2枚爪の原因になるので、爪やすり(バッファー)などで整えるのが良いです。爪やすりは、高価なものだとダイヤモンドを使った物などもありますが、100円ショップなどで安価に手に入るもので十分です。【正しい長さの爪】【深爪】■爪のケアは入浴後に足の爪の長さは、2週間に1度くらい長さを確認しましょう。爪切りなどを使用するほど伸びていない状態で確認できれば、爪やすりで整えるだけで十分です。爪の手入れは入浴後がおすすめです。長さを揃えるだけでなく、保湿もこの時間に行いましょう。入浴時には爪の間などに入った砂やゴミなどを丁寧に洗い流すことも忘れずに。爪と肌の間から雑菌が入ることも多々あります。爪ブラシがあると便利です。■爪切りを使って切るときの注意巻き爪予防爪と皮膚の間にテーピングなどをしてから爪を切ると、深爪や巻き爪の予防ができます。巻き爪になった爪はカットするとさらに巻き爪が進んでしまいます。また、巻き爪を経過して深爪すると爪切りで皮膚を傷め、そこから雑菌が入り思わぬ感染症になることも。巻き爪は自然治癒しませんが、爪を伸ばすことで好転することもあるので、巻き爪になったら爪を伸ばす努力をするよう、医療機関で伝えられます。■爪が割れたときの対処無理に剥がさず、病院へケアをしていても、プレー中の接触などで爪が割れてしまうことはあります。その際は、剥がしたりせず、テーピングなどで保護します。痛みが酷い、出血が止まらない場合は病院に行きましょう。人工爪を使用するなど対応方法はありますが、プロならまだしも、育成年代の子どもたちは痛いときはサッカーを休むことも、長引かせない秘訣です。また、爪と皮膚の間にある甘皮は細菌が入らないようにする役目を持っています。小学生では足のみならず手の甘皮を処理する必要はありません。その代わり、入浴後にクリームを塗るのを習慣にするなど保湿の意識は持ちましょう。■最高のパフォーマンスのためにも大事なパーツだから、しっかりメンテナンスをサッカーで最大限のパフォーマンスをするためにも、爪は大切なパーツです。爪があることで走ったり、ボールを蹴ったりすることができます。自分の体を自分で理解することが高パフォーマンスにつながります。親御さんたちは子どもの爪に保湿?と思うかもしれませんが、乾燥で割れるのは大人と同じです。爪の長さを保ち、毎日清潔にして、保湿する。体をメンテナンスするように、爪をケアしてケガのなくプレーできる環境を整えましょう。高山定也(たかやまさだなり)元サッカー選手。現在は医療・福祉系衛生用品を扱う株式会社スマイルズ代表取締役、一般社団法人日本爪技工士協会代表理事。「爪専科」を運営。現在はスポーツ分野でのサービス提供に向け準備中。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!
2024年04月11日神奈川の強豪・SCH.FC U12の選手も実感! フレックスクッションで、柔軟な体と高いパフォーマンスを手に入れよう!サッカー選手にとって、柔軟性は欠かせない要素の一つです。体の硬さは、パフォーマンスの低下やケガのリスクにもつながります。そこで注目したいのが、フレックスクッションです。フレックスクッションの特長は、座るだけで骨盤が立ち、体が硬い人でも効果的なストレッチができること。深いストレッチができるため、股関節を始めとする下半身の可動域を広げることができ、パフォーマンス向上にもつながります。こうした特長が認められ、プレミアリーグのアーセナルを始め、国内外25のプロサッカーチームが導入しています。今回、神奈川の強豪・SCH.FC U12の選手3名(6年生2名、5年生1名)と、樋口智哉監督に、フレックスクッションの使用感を聞いてみました。はたして、どのような効果を実感したのでしょうか?(取材・文鈴木智之)※学年は、今年3月に取材した当時のものです。座るだけで骨盤が立つフレックスクッション■3選手とも、立位体前屈の数値が向上6年生の藤崎琉久選手は、アンカーを務めており、ロングキックが得意。「硬さが原因で、ボールがずれたときに対応できないことがある」と体の硬さの悩みを語ります。フレックスクッションを使ってみると、「背筋がよく伸びて、正しくストレッチができました。股関節、膝下、腿裏がよく伸びるのを感じました」と効果を実感。さらに、立位体前屈が12cmから4cmに改善。柔軟性が上がることで、「アジリティなどの向上に活かしていきたい」と前向きです。同じく6年生の鈴木遼選手は、トップ下を担当し、スピードを生かしたプレーとミドルシュートが武器。 「股関節周りと腿裏が硬い」という悩みを抱えており、フレックスクッションを試してみると、「普段は伸ばせない腿裏と股関節が、よく伸びました」と手応えを感じた様子。立位体前屈も5cmから4cmに改善するなど「ケガのリスクが減る」「ドリブルの幅が広がる」といった効果に期待を寄せています。5年生の鈴木悠馬選手は、センターバックとして、ボールキープと距離のあるシュートを得意としています。「裏腿の硬さがあると、ヘディングで高く跳べない」といった悩みがありましたが、フレックスクッションを使ったところ、「普段伸ばせないところがよく伸びて良かった」と笑顔。立位体前屈も5cmから3cmに改善され、「切り返しなど、足首や股関節を使う動きがスムーズになる」と、柔軟性アップによるプレーの向上を期待しています。3選手に共通しているのは、体の硬さがプレーに及ぼす影響を感じていること。そして、フレックスクッションを使うことで、普段は伸ばしにくい部位がよく伸びたことです。また3選手とも、柔軟性が高まることで、ケガのリスク減少やパフォーマンスアップを期待していました。ケガをしにくい体は、選手生命を左右する大きな要因。そして、アジリティやドリブル、切り返しなどの質を高めることは、試合で結果を出すためにも欠かすことができません。■ストレッチに興味を持つきっかけにU-12を長く指導する樋口監督は「フレックスクッションを取り入れたことで、選手たちのストレッチへの意識が大きく変わりました。小学生にとって継続は難しいのですが、フレックスクッションのようなグッズがあることで、ストレッチに興味を持つきっかけになったのは、非常に良かったと思います」と話します。樋口監督自身もフレックスクッションを使い、次のような感想を話してくれました。「骨盤が立ち、いい姿勢でストレッチができます。体が硬い私でも、フレックスクッションを使うだけでかなり伸びを感じ、さらに負荷をかけることで、可動域が広がったことを実感しました」一般的に小学生は柔軟性が高いイメージがありますが、実際には関節周りの硬さが目立ち、特に股関節と足首の柔軟性が低い傾向にあるそうです。 「関節可動域が少し広がるだけで、一歩が届いたり、切り返しの深さが変わったりします。私自身、様々な選手を見てきた中で、深い切り返しができる選手や連続して動ける選手は、柔軟性が高く、自分の体を思うように扱える選手が多いと感じています。この経験を選手たちにも伝え、柔軟性の重要性を理解してもらえたらと思っています」■正しいストレッチを継続的に行うためのパートナーフレックスクッションは、正しいストレッチを継続的に行うためのパートナーとして、選手の成長をサポートしてくれるアイテムです。「今後もチームでフレックスクッションを使っていきたいです。グラウンドに置いておくだけで、子どもたちは興味本位で使ってくれます。ケガをして練習に参加できない選手も、フレックスクッションに座りながら見ているだけで、ストレッチの効果があります。3つあるので、チーム内で活用させてもらっています」体の悩みを抱えている選手も、そうでない選手も、フレックスクッションを使ってみてはいかがでしょうか。硬さを和らげ、しなやかな体を手に入れることで、より質の高いプレーにつながるはずです。何より、柔軟性を高めることでケガのリスクを減らし、少しでも長くピッチに立って、サッカーを楽しみましょう!座るだけで骨盤が立つフレックスクッション
2024年04月11日兵庫県神戸市の街クラブ、「ロヴェスト神戸」代表である昌子力さんにインタビューしました。昌子さんは、Jリーガーであり元日本代表である昌子源選手の父親です。親としてそして指導者としての2つの視点から、サッカー少年・少女を育てる保護者として大事なこと、心得についてお聞きしました。後編では指導者として接する保護者への心構えなどとともにコーチへの助言をまじえてお話しいただきました。(取材・文:貞永晃二写真:柳瀬心佑)Jリーガー昌子源選手の父・昌子力さんに、サッカー少年の保護者としてしていたことを伺いました(柳瀬心佑)子どもたち自身が成長を実感!サッカーが上達するサッカーノート>><<前編:「指導者ではあるけれど息子にサッカーを教えたことはない」昌子源選手の 父・力さんが実践していた子どもへのかかわり方とは■親が子どもの行動をストップさせるので子どもたちも言われるまで動かない―――他のチームのコーチからお聞きするのは、最近の親が以前とは変わってきているということですが、どう感じますか?私自身も感じますし、うちの若いコーチたちも言いますね。小さいときって、やっぱりいろいろな失敗体験って大事じゃないですか。失敗するからリカバーの方法も考えつくし、サッカーだけじゃなく生活の中でそんなことを繰り返し成長していくわけです。ですが、最近の親御さんはわが子に手や口を出し過ぎだと思います。親はわが子が失敗しないように心配して、良かれと思ってやってあげているんでしょうが......。あれはダメ、これもダメ、何々しなさいと、日常の中で子どもの行動をストップさせる言葉が当たり前の会話になっていますね。特に心配なのはあまり深く考えずになんとなく口に出してしまうことが多いように感じるところです。買い物に出た街の中でも「そんなことするんだったらもう連れてこないよ!」といった交換条件を出すパターンや体裁が気になるのか無理やりある姿に当てはめて、よい子を装うような言動が親に見られることです。勿論体裁や人に迷惑かけないことは大切ですが親の体裁ではないんですよね、本質は。躾ですよね、根本に置いておかないといけないものは。だから子どもたちが冒険をしない、何か言われるまで動かない。もう全国的に今はそんな感じだと思うんですよね。そういうのをやっぱり変えていきたいですよ。みんながワーッと何かやって失敗して......、すると「誰や、ボールを投げたんは!」と、昔ならそんなカミナリ親父が怒る姿が日常でした。どうやったら許してもらえるのか?どうしたらそもそも怒られずに済むのか?いろいろ知恵を働かせたものです。サザエさんじゃないけど、あんな世界が今はもう全くないですもんね。でも昔はそれなりにちょっと駄目もとでやってみようかなって思えたんです。子どもの頃からの積み重ねで、やってみて失敗もしたけど上手くいったという成功体験があるからとにかくやってみようかという思いも湧いてくるんでしょうけど、それすらもなくなってしまったという印象です。それは何か行動を起こすたびに誰かに何か言われるような社会になったからだと思うんですよ。加えてそれは年齢の逆転現象もあると思います。大人も若者を注意しなくなりました。だから余計に考えなくなったのだと思います。■関わりすぎるな=放っておけという意味ではない親が関わり過ぎるな、というのは子どもを放っておけ、という意味じゃありません。7、8年ぐらい前に「親は手をかけすぎないで」というテーマで、ある小学校のPTA向けの講演に伺ったとき、その時女性の校長に聞かされたのですが、画板持参で校外写生大会をすると知った親がその前日に集まってみんなで公園を掃除したというんです。なので、写生をしようと公園に行くと何も落ちていない。先生としては子どもたちに落ち葉やいろんなものをそのまま見たり感じたりしてほしいのに。保護者にどうして掃除したんですかと聞くと、「うちの子が葉っぱに足を取られ滑って転んだらどうするんですか?」と逆に平気な顔で言われたそうです(笑)。びっくりしてね。そんなふうだから、気持ちが一度折れると立ち上がれない。やっぱり失敗経験がないと打たれ弱くなってしまうだろうなと感じました。■「先生はどんな答えを求めているんですか?」と聞く生徒が増えた――何が原因でそうなるんでしょうね。先日高校の先生と話をしていたら、「先生はどんな答えを求めてるんですか」とか「どんなこと言ったらいいんですか」と、そんなことを質問してくる高校生がいると。本当ですか?と聞くと、そんな生徒が増えたというんです。相手を不愉快にさせないで、相手が求めていることにちゃんとストレートで答えてあげたい、そういう気持ちから出た行為にも見えますけど、そんなのは大人になってやればいいことで、子どものときにそんなふうに考えなくてもいいのにな、と思います。どうしても正解を欲しがるんですよね。「1+1=2」みたいな。そのような、すべてにおいて正解を求める気持ちに何か拍車がかかってるような気がしますね。よく例えられる話で、外国だったら「□+□=5」という問題があれば、□に何が入るかな?と聞いたら、1と4が入ったり、2と3が入ったりいろいろあるよねというそのプロセスがすごく大事だけど、そういうことが今なされていない。ここでもまさに質問力ですよ。質問によって会話や求めていくもの、得られるものが広がっていかないんですよね。■スポーツでさえも正解を欲しがる選手が増えたそんな状態で唯一の救いがスポーツのはずなんですが、そのスポーツでさえも「YES」を欲しがる傾向があるように感じます。コーチも選手のプレーに対して否定したり、そうじゃないだろうとすぐに答えを言ってしまう。選手に「今のは何か狙いがあったの?」というワンクッションを入れて尋ねてあげるということが本当に少ない、全然足らない感じがしますね。スポーツって唯一冒険ができて。サッカーなんて特に合法的に相手を騙すことが許されているスポーツなんですよ。100m走のように号砲より早く出発したら失格になる競技ではないんですよ。自分が先に動いたり先に何かをやれば、それが自分に有利になり、先手を打てる訳ですよ。なのにそれを許さない指導者が増えてしまうとちょっと残念ですね。ライセンス講習会でも見られますし、一般的な少年サッカー現場でも習慣になっちゃってるんでしょうけど、ゲームスタートさせるとき「いくぞ、いいか?せーの」とボールを入れるんです。「『せーの』なんて声かけはしないまま、ポンとボールを出して始めさせればええねん、ぼーっとしてる方が悪いねんから」と言うと、それじゃ不公平になりますから、と返ってくるんですそれは、子どもたちに気を遣いすぎですよ。だって試合というのはそんなものでしょう?ゲーム中にこぼれ球が出るたびに誰かが「せーの」と言ってはくれません。不公平、理不尽なことがサッカーにはいっぱいあって......。サッカーだけでないですね、スポーツみんなですよ。場合によっては試合のあらゆる環境にそんな理不尽さを思い知らされることもある訳です。でもそれらを含めてサッカーなんだから、サッカーの競技特性を日頃の練習に取り入れないといけないんですよ。■子どもの頃から周りを見たり、考える力をつけておくことは大事最近はやれボール扱いだの、戦術だの、フォーメーションだのってそんなことばっかり先立っていますが、そんなことは後回しでもいいんじゃないか。そのために指導者の「観る」という能力がすごく問われるんじゃないかなっていうのは、大学生を指導する場合もそうですが、最近小中学生を観ていてより一層思いますね。子どもの時にやるべきは、ボールを扱うこと、神経系に刺激を与えること、と言われますが、刺激を与えるというのは何もボールを触ることだけではないんです。ボールがあろうがなかろうが周りを見るとか、自分がどうあるべきかなって、その「考える」ことそのものに意味があると思うんです。ボールを触る=神経系への刺激=少年時代に必要なことだとか、ドリブル=少年に必要なことだとか言われますが、私はキック練習だって神経系刺激の一つだと思っています。やっぱり小さいときにちゃんと(足で)捉えるフィーリングを養っておかないといけません。近年、キックが上手くない子がすごく多い気がします。高校年代になると、やっぱりキックの質の差が如実に個人差、チーム差になっていると思います。ましてや日本代表レベルなんて、速さと上手さに加えて正確性が必要ですから。■なんでもルール通りきっちりやるのではなく、時に余韻を楽しむこと現在私が代表を務めるロヴェスト神戸は先代の代表者が「ドリブルのロヴェスト」と言われたいと、ずっとドリブルを主体にやっています。私もそれを否定はしませんが、ドリブルと同じくらい他の何かを付け加えないといけないと考えています。ドリブル主体のチームあるあるで、ボールが足元に来て「さあ、サッカーが始まるぞ」みたいなことが多くて......。ですから5割以上とは言いませんが多少はボール操作力と合わせてキック、そして飛んできたボールのワンタッチコントロールにも注力すべきだと思います。例えば飛んできたボールをコントロールしてからドリブルドリルを開始するとか。ファーストタッチで最初のドリブル操作へスムーズに移行させるコントロールをしないと実践的ではない訳です。指導者も先入観や、思い込みを捨てて常に「なぜだろう、どうしてこうなるんだろう」というところを持っていないと、子どもたちに刺激を与えられいないと思うんです。課題を与えられて挑戦し、成功もするし失敗もする。うまくいったら、「ナイス、いいぞ!」ともっと褒めてあげたらいいのにとある指導者に言うと、「次の順番を待っている子のことが気になって、一人ひとりの子どもたちを観れていない」と言ってました。私としては、「いや、何秒以内に次がスタートしないといかん、というルールでもあるんか?別にいいやん、その余韻を楽しんだら」って思うのですが、コーチたちも真面目なので「こういう風にしないといけない」という思い込みがあるみたいです。最近は真面目で一生懸命である一方で、挑戦することを不安がったりする慎重な行動をする子が多いとも感じますが、実は指導者側にもそういうタイプの人が出現し始めている感じが、ライセンス講習会や様々な講演や講習会を通して感じます。選手にも指導者にも、何かトライをするとか、失敗を失敗に見せないような努力、たとえば「こういう失敗はこうしたら防げるな」という研究心をくすぐる必要があるなと感じているところです。■子どもを成長させるには、チームと親で反比例しないこといつの時代もプロならプロ、大学なら大学、高校なら高校でトップの選手たちにはいろいろと磨かれていく環境はあると思いますけど、そこを目指す小・中学生の世界はやっぱり最後は指導者の力がものをいうと思います。そして、保護者はチームの教えと反比例することをしないことをお願いしたいです。例えば、自分のことは自分でやるように伝えているのに、ウェアの準備から何から何まで沢山のことを親がやってしまったり、失敗させないよう先回りして思考力や挑戦・調整する力を奪うような行動を控えて欲しいんです。ユニフォームは自分で用意し、もし忘れたら自分が試合に出られない......。自分で責任を持つのです。そしてその子は次の機会ではきちんと準備するでしょう。■サッカー少年少女の親として何より大事なのは、子どもをプロにすることではない――以前、サッカー少年少女を育てる親として大事なのは、子どもをプロにすることじゃなく経済的、精神的に自立させることだとおっしゃっていましたね。プロになりたいならなりたいでいいと思うんだけど、プロなんていう特殊な能力の仕事をしようと思ったら、余計に自立が必要だと思うんです。サッカーに限らず、どんな仕事でも結局その積み重ねがない人は、何をやってもちょっと物足りないだろうと思うんです。スポーツがとてもクローズアップされるのですが、歌手でも俳優でも会社でも、その筋のプロ(大きな仕事のできる人)と言われる人はそれ相当の努力を重ね、他の人にない技・技量を身につけ、いつ何時でもミスなくタスクを成し遂げるのですよ。歌手・俳優さんはいつも笑顔で苦しい顔も見せずに平然と(そう見えるように)歌い上げ、演技して見せ、歌劇団の演者はステージでミスしないです。ミスがあったとしてもわからないようにカバーもできるんだと思います。サッカーのプロを目指す人たちは普通の努力と経験だけでは簡単にプロになれるものではないからこそ、プロセスが大切なんだと思います。小さい時はサッカーを大好きになり、技の習得など"続ける"力を養いたいですね。歌手で言えば幼少期から歌うことが好きだったというような。そして年齢が上がる度に持っている技の強さ速さを磨いていく。辞めずに繰り返しレッスンする歌手志望・俳優志望の女の子のように。同時に社会を生きていくことを意識していく。ですからもっと子どもにいろんな体験をさせてあげないといけません。■グラウンドは子ども自身が思考して行動する場所、親は手をかけず見守ってサッカーは頭を使って考える良いスポーツだと思います。そんな良い土台・素材になるスポーツであるサッカーをやっているのに、そこに立ち向かう子どもに失敗を含むいろんな経験をさせないようにしているのは、言えば矛盾している行動です。グラウンドの中に入ればそんなに危険なことは起きないので、そんな過保護にならないでくださいと保護者の皆さんには伝えたいですね。それでなくても自分で行動しない環境(親が準備してしまう)が多い中、子ども自身が自ら何かを考えて行動を起こせる折角の時間(サッカー・スポーツ)に親は入ってこないでください、と。スポーツの場面でも常に親があれこれやってあげるなら、わざわざサッカーを習う必要がないんじゃないかと。それなら大事に家に置いておいたら?と言いたくなります。保護者のみなさんが、サッカーを通じてわが子にどうなってほしいのか、親はどうあることが子どもの自立につながるのか、いま一度考えてお子さんの成長を見守って欲しいです。急がば回れ。子どもをサッカー選手にさせたいのであれば自主自立です。子どもたち自身が成長を実感!サッカーが上達するサッカーノート>>
2024年04月11日息子本人は友達と一緒のクラブでサッカーを楽しんでいるが、公式戦の出場時間が短い事や監督の指導方法が気に入らず常に文句を言っている妻。本人はサッカー以外にバレーボールも好きで、妻はバレーボールに転向させたがっているが、試合に出れないサッカーじゃなくバレーボールに転向させるべき?と悩むお父さんからご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、親御さんがどうしたらいいのかアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<高熱でも試合に行かせる?学校行事よりも優先?チームの保護者が熱心すぎて怖いです問題<サッカーパパからの相談>この春小学校3年生になった子の父親です。子どもがクラブチームに入っていますが、公式戦になると出場時間が短いです。妻は監督の指導方法が気に入らず、常日頃から監督の文句を言っています。(特に遠征で行っても、出場時間が短いのは納得がいかないと苛立っています)息子本人は友達と一緒が良いと言っており、特に気にしていない様子です。また、息子はバレーボールも好きで家で遊びでやっています。妻はサッカーを辞めさせてバレーボールをやらせたいみたいですが、息子本人はどっちにするか決められないそうです。私としては、今のチームのままで良いとは思いますが、いかがでしょうか?サッカーじゃなくバレーボールに転向すべきなのでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。私の連載はこれまでお母さんからのものが多かったです。試合に出られなくてつらそう、チームで仲間にいじめられている、コーチの暴言に苦しんでいる。いずれも、わが子のこころに寄り添うからこそ生まれた悩みでした。最近は、それと似たような相談がお父さんからも寄せられるようになりました。以前ならお父さんたちは子どものサッカーに対し、技術を教えるとか体の使い方やスポーツ障害など、どちらかと言えば目に見えるものに注目する傾向がありました。それが、徐々に子どものこころの部分に目を向けていただけるようになった。とても良い傾向だと感じています。■サッカーかバレーかはどんな専門家でも判断できないさて、本題です。小学3年生の息子さんが公式戦で出場時間が短いためバレーボールをやらせてみたいお母さんと、今のままで良いと考えるお父さんとで意見が割れている。そこが今回のご相談の論点のようです。お父さんは「サッカーじゃなくバレーボールに転向すべきなのでしょうか」と直球で質問されています。サッカーかバレーか?この二択です。しかしながら、正直言って返答しかねます。これは私を含め、どんな専門家でも判断できるものではないでしょう。なぜならば、サッカーをやるか、バレーをやるかは息子さんが決めることです。これは、もう小学3年生だから自分で決められるでしょ?といったものではなく、どんなに小さくても危険が伴うことや害を及ぼすものでない限り、子どもに決めさせるべきです。私は何々すべきといった言葉はあまり好きではないのですが、どのスポーツをするかといったことは子どもに決めさせてください。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■子育ては「スキル」愛情があればどんなやり方も許されるわけではないお父さん、子育てはスキルです。愛情があればどんな子育てでも許されるわけではありません。親が高学歴で高収入だから良い子が育つわけではありません。いくら何らかの教養があっても、アップデートされた子育ての知識とスキルを身につけていなければ、ゆがんだ子育てになる場合もあります。その象徴として、私が企画した書籍『高学歴親という病』(成田奈緒子著/講談社α新書)は昨年、ベストセラーになっています。そして、私がここで伝えたいのは、この「子どもにすべて決めさせる」というスキルです。このスキルを身につけず、ついつい子どもがやることを親が決めてしまう。干渉してしまうケースが見受けられます。その場合、親御さんは子どもよりも、すでに大人である自分たちの見識や知見のほうが正しいと思ってしまい、その子に良かれと考えたうえで、あれやこれやと指図してしまうのです。実はその言動が「子どもに何かを決めさせる」という、子どもが生きる力を身につける重要な機会を根こそぎ奪っている。そのことに気づいていません。■決めささせるスキルが重要な理由その①決めさせるスキルがなぜ重要か。理由は二つあります。ひとつは、決断という行動には、決めるための情報集め、他者の意見を行く寛容さ、周囲とのコミュニケーションなどさまざまな能力が鍛えられるからです。サッカーかバレーか、自由研究は何にするか、といったわかりやすい決断以外でも、宿題をいつやるか、誰と何をして遊ぶか、女子に告るか告らないかといった日常的なものも含めて、何かを「決める」という行動をどれだけ多くやらせるか。そこが子育ての質を左右すると私は考えています。■決めささせるスキルが重要な理由その②二つめは、自分のことは自分で責任を取らせる教育につながるからです。決めさせてもらえず、親のひと声で人生が決まっていく。そうすると、その先で困難なことがあったり、ネガティブなことが起きると、決めた親を子どもは恨みます。決められたレールを懸命に走っていたのに、脱線事故が起きてしまえば、例えば子どもはこう言うでしょう。「お父さんやお母さんが○○をしろって言ったからやったのに、コーチは怒鳴ってばかりだし、仲間からは意地悪をされる。もう嫌だ」選択をさせることの重要性は、コロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授の著書『選択の科学』で解き明かされているのでぜひ読んでみてください。本の表紙には「選ぶことこそ力につながる」とあります。この本には、私たちが生きるうえで選ぶという作業がいかに重要かが膨大な事例をもって書かれています。整備された環境にいるはずの動物園の動物は、野生の動物たちよりはるかに平均寿命が短い。なぜならば、餌や行動など自分で選択することができないから。企業の社長や幹部といった重い責任を伴う人たちの平均寿命は、生涯を従業員として終えた人たちよりも長い。ハードな毎日を送っているはずなのに長生きなのは、ある程度指示通りに動く従業員と違って裁量権や選択権があるからだそうです。つまり、どんなことも自由に選ぶ権利を与えられることで、人はエネルギーを蓄える。逆に誰かに従い続けることは私たちが考えている以上に、ストレスフルなのです。■子どもにサッカーをさせているのは将来選手(プロ)にするためなのか(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)もし、お母さんがコーチの指導法が気に入らなくて、そこにお父さんも賛同できるなら一度話し合ってみてはいかがでしょうか。ただ、学びを自分から入れないコーチはそうそう変われません。息子さんは機嫌良くサッカーを楽しんでいる。そうであれば、それでいいではありませんか。サッカーやバレーの選手にするために子育てをするのではありませんよね?よりよい未来を切り開ける力を授けること。子育ての原点に、ぜひ立ち戻ってください。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。
2024年04月10日みなさんはお子さんのサッカーで一番期待することは何ですか?とにかく上達してほしい、試合に勝たせたい、プロになってほしい、など技術や成果に期待することもあるでしょう。もちろん上手くなれば本人も楽しいし、試合に勝てば嬉しいもの。ですが、育成年代である小学生の保護者の皆さんには「勝たせたい」「上達させたい」の前に、大事にしてほしいことがあります。サカイクでは、サッカー歴や上手い下手、チームの強弱に関わらずすべてのサッカー少年少女の保護者に大事にしてほしい親の心得として「サカイク10か条」を発表しています。ページをDLしてチームの保護者に配布することもできるので、入団時に配布しているチームもあります。今回はサカイク10か条を保護者に配布したチームに、その後の変化などを伺いました。写真はサカイクキャンプサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>■卒団式、保護者会で10か条配布これまでサカイクの理念に共感いただき、チームでもその考えで育成に携わっているという野登SC(三重県)の堀口さん。保護者の皆さんにも知っていただきたいと、昨年の保護者会で10か条を配布し、オンラインでサカイクキャンプの菊池健太コーチからサッカー少年の親としての在り方をお伝えする機会を設けました。保護者に10か条を伝えて約1年、チームには変化があったようです。■保護者に10か条を教えたいと思った理由堀口さんが「保護者会での10か条説明」に応募したきっかけは、親御さんたちに「子どもファースト」とはどんな応援のスタンスなのかを知って欲しかったからだそう。昨今は、保護者の応援マナーや親の方が熱くなってしまいわが子を潰してしまうケースについての情報を目にすることもあり、サッカーをする子どもを応援したいけど、どんな風にするのが良いのかわからない......。と感じている方も多いもの。そういった保護者のみなさんに、10か条のチラシをお渡しし、どうしてそれが大事なのかをサカイクのコーチが説明することで「なるほど、そういう感じなんだ」と理解いただくことが出来たようです。「今では声のかけ方なんかも含め、10か条の考えをベースに子どものサッカーを見てもらえているのかな、と思います」と堀口さんは嬉しそうに教えてくれました。■親も子どものサッカーを楽しもう子どもがサッカーを始める時は、ただ純粋に楽しんでくれればいい、サッカーを通じて幸せになって欲しいと思っていたはず。それなのに、気づくと「自主練しない」「やる気が見えない」「ケガで休んでる間みんなから遅れるのが不安」など、どんどんイライラや焦りが出てきて子どものサッカーが楽しめなくなることもよくあります。子どもの方も、保護者の過度な期待や焦りを感じてしまうとサッカーを心から楽しむことが出来ませんよね。小学生年代はまだまだ育成の入り口。「サッカーが楽しい」という気持ちを育てることが、その後の成長にもつながるのです。そのためには、親御さんももっと気を楽にして子どものサッカーを楽しむことが大事なのです。それをサカイク10か条ではお伝えしています。この新チームがスタートしたタイミングで、保護者のみなさんと共有していただければ幸いです。【4/12(金)まで】希望チームへの10か条配布を受け付けていますお申し込みはこちらから>>サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!>>
2024年04月09日年齢的にもまだまだ集中力がなく、練習の時もルールの説明など長い話を聞いていられない低学年。説明するときの話の秒数や、伝え方のコツがあれば教えて。と言うお父さんコーチからの相談。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、低学年への伝え方など指導のアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見られるCOACH UNITED ACADEMY>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<スタートが遅いと追いつけないという認識を変えたい、4年生以上とか遅く始めた子にサッカーの理解を促す練習を教えて<お父さんコーチからの質問>池上さん初めまして。サッカー経験者であるというだけで、子どもの保育園と小学校のスポ少で低学年を教えています。今のところ指導者ライセンスを持っているわけではないので、補助員として安全を管理しながら遊び相手になっているような感じですが。お聞きしたいのは、未就学児~低学年が飽きないで、楽しめて基礎トレーニング出来るメニューについてです。これまでも散々同じような質問を受けていると思いますが、この年代はまだまだ集中力がなく、長い間話を聞いていることも難しいのと、年々子どもたちの運動能力が低くなっている感じがします。説明するときの時間の目安(数十秒?)や伝わりやすい言い方、身体を自由に動かしてサッカーの基礎的な動きを実践できる方法があれば教えてください。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。Jリーグクラブ時代、時間を計ったことがあります。小学校で指導する45分間で、コーチがどのくらい説明に時間を割いているのかタイムを取ったのです。45分のうち約15分間、しゃべっていました。つまりプレータイムは30分しかなかったのです。計測されたコーチは「いえいえ、そんなにしゃべってないですよ」と首をかしげていました。本人も気づかない間に長くしゃべっているわけです。これは恐らく多くの指導者が同じ状況かもしれません。■指導者は選手たちが何ができて、何が楽しいのか、できてない理由などを把握するのが大事私たち指導者がまず考えるべきは、プレーヤーの動きです。やっていることをしっかり見て分析します。どんな状態になっているのか、何ができていて、何ができていないのか。それはなぜなのかを把握します。同時に「どんなことが楽しくて、どんなことが嫌なのか」も気づかなくてはいけません。ここを黙って見ておかなくてはなりません。したがって、目の前の選手に指示を出しながら見ていたらそこに気づきづらいはずです。しかし、コーチは自分の思い通りになっていないことが目の前で起きているので、つい言ってしまう。すぐに「集合!」と言いたくなってしまう。そこで結局お説教じみた指導になってしまう傾向があります。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■低学年の指導で良く起きるのは、ルールの理解に時間がかかることご相談者様の指導年代は6歳以下、8歳以下と低学年です。この年代によく起きるのは、練習のルールをなかなか理解できないことです。例えば2対1で「ゴールはドリブル通過ね」と告げても、コーンの間を狙って蹴ってしまう子どもがいます。あるいはドルブルのように見えるけれど、蹴って走っているだけだったりします。あまりにもみんながルールを理解してないとしたら、もう一度集めて「ルールはこうだからね。そんなことを考えてください」と説明しましょう。子どもたちに「ルールがあるのは、何かが上手くなるためのルールです。それを守らずにやってしまうと効果がなくなっていきます」といった話をしてもよいでしょう。でも、そういう話もサッと短く終わらせます。■あれこれ思案するより正直に「話を聞いてほしいんですけど」と言ってみよう加えて、なかなかこちらを向いてくれないことも多々あります。そんなことを感じたら自分のしゃべり方や内容を見直しましょう。注目されないということは、子どもたちが聞きたくなるような話じゃないということだと思います。話を聞いてもらうための努力をする必要があります。ただし、子どもたちを注目させるために何か方法を探るのではなく、正直に「すみません。話を聞いて欲しいんですけど」話しかけます。「今、聞いてない子多いよね」と言うのはOK。とはいえ、多くの初心者の指導者は「静かにして」と言った後に「話は聞かないとダメでしょ」と少し怒り気味に言ってしまうようです。そこで子どもがシーンとなっても、聞かないといけないという主旨の話を続けてしまうのです。よって、シーンとなったらその先は言わずに、OK。今やってることこうだからねという話をして、さあ、やりましょうと再開してください。コーチはエンターテイナーですよねと言われることもあります。が、別にみんながみんなエンターテイナーである必要はありません。個々でパーソナリティーは異なります。これが絶対というのはありません。■話が伝わっていないとトレーニングの効果が下がるお手本となる師匠を見て学ぶのも手それでも、私たちが理解しておかなくてはいけないのは、話が伝わっていないとトレーニングの効果は下がるということです。うまく伝える方法はそれぞれ考える必要があると思います。伝わりやすい言い方などは、子どもの様子を見ながら省みるしかありません。これは私がいつも話すことですが、良い師匠を見つけて、一緒にくっついて実際に指導を見ることもおすすめです。どれぐらいしゃべっているのか。子どもたちとどんなやり取りしてるのかとか。そんなことは実際に見ないとわかりません。コーチそれぞれが「この人の指導いいな」と感じた人を見つければいいと思います。■オランダでは指導実践の後にコーチたちがディスカッションする(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)オランダのライセンス制度は指導実践が非常に多いと聞きます。テキストもなく、何度も実践した後にみんなで何度もディスカッションをする。そのディスカッションで、コーチたちがみんなそれぞれいろんなこと言う。そこをインストラクターが聞きながらメモをして、あとで「あなたはこれぐらい理解できているから合格です」となるそうです。ところが、オランダからそんなことを学んで帰国した日本人コーチが講習会をして、さあディスカッションしましょうと声をかけても、日本人は誰もしゃべらないという。まず大人が変わる必要があると感じます。メニューはネットで検索するとたくさん出てきます。私の著書にもメニューに特化したものがあります。図やイラストでみるほうがわかりやすいでしょうから、ぜひ参考にしてください。池上さんの連載一覧はこちら>>池上正さんの指導を動画で見られるCOACH UNITED ACADEMY>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2024年03月29日