2023年6月4日(日)、シンキングサッカースクール吉祥寺校が無料体験会を開催します。本スクールは、サカイクを運営する株式会社イースリーが運営するサッカースクールです。10年以上吉祥寺地域のサッカースクールとして活動しており、サカイクキャンプを行っているコーチ達が毎日指導を行っております。子どもたちにはサッカーを楽しむことを第一に質問をベースにしたアプローチで考える力を身につけサッカーを本質から知り、プレーしてもらえるように活動しております。ぜひお気軽にご参加ください。<開催概要>場所:シンキングサッカースクール吉祥寺校東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目10−1フットサルパーク吉祥寺※ロフトのビル屋上(8階)です【対象・定員】年少~小学校4年生(U-6・U-8・U-10クラス)各クラス20名迄※男女問いません【開催日時】2023年6月4日(日)12:00~12:50(U-6クラス)13:10~14:10(U-8クラ)14:30~15:40(U-10クラス)【申込方法】LINEからお申込みください。吉祥寺校公式LINEをご登録後、お申込するための必要事項が自動返信にて届きますので、必要事項(赤枠)をコピーして、内容を記載の上ご返信をお願いいたします。※現在、事務局が在宅勤務のため電話での対応が出来かねます。そのため、体験会やスクールに関するお問い合わせにつきましても、上記のURLから公式LINEをご登録頂きお問い合わせください。▼LINE申し込みページ赤枠の内容をご返信ください※下記の画面が表示されて詳細に行けない方は、画像右上の×印(赤枠部分)を押してください。
2023年05月15日未だに罰走させるコーチ。誰か一人に原因があるときも、全員を走らせる。サッカー協会のライセンスの中でもそんなの推奨されてないはずなのに、どうしたらやめてくれるのか。相手はチームに大きな影響を持つベテランだけど、角が立たないよう上手く伝えたい。どうしたらいい?とのご相談をいただきました。今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ご自身の体験や元日本代表監督イビチャ・オシムさんのエピソードをもとに指導者の悩みに答えます。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<選手のノイズになるから細かい声かけをやめたら、チームが盛り上がってない印象に......試合中の声かけ、何を心がければいい?<お父さんコーチからの質問>こんにちは。街クラブでU-9年代の指導を手伝っている保護者コーチです。チームを長く指導しているベテランコーチの「罰走」についてのご相談です。その指導者は、誰かひとりに原因がある時もチームとして走らせることも多いです。しかし、罰走はJFAのライセンスの中では禁止されていると伺いました。かなり年上で指導歴も長く、チームに対して大きな影響を持つ方なので、そのコーチに対してやめるべきだとなかなか言いづらい状況です。やめてもらうにはどのような対応がありますか?<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。日本サッカー協会(JFA)のライセンスのなかで、罰走を禁止するといった具体的な措置は取られていないと思います。ただし、2013年になされた暴力根絶宣言はJFAも賛同していますし、それについてサイト上などでキャンペーンを実施しているようです。■なるべく全体の問題にして前向きな議論ができるように持っていこうさて、本論です。ベテランコーチの罰走についてですが、私から三つほどアドバイスさせてください。まずひとつめ。チームでこの問題を共有したほうがいいかと思います。クラブがどれくらいの規模なのかわかりませんが、多くの場合定期的に全体のコーチ会議などが開かれていないでしょうか。例えば「最近、スポーツ指導における暴力やパワーハラスメントがよく話題になっていますが......」というような言い方で切り出します。そして、クラブとして罰走についてどう考えるか。意見をお聞きしたい、と提案してはいかがでしょうか。つまり、実際に罰走を命じているベテランコーチ個人を責めたり、批判したりするのではなく、あくまでも全体の問題提起にします。さらにいえば、ご相談者様のほうから「良くない」「ダメだ」というのではなく、なるべくミーティングの中で他のコーチから意見を引き出すよう努めましょう。パワハラ的な指導や事件なども報じられていますが、罰走はどうなんでしょうね?と言って、課題問題をコーチ全員で共有する重要性を訴えてください。そうする過程で、まずは自分たちの指導を見直そう、最新の指導法を学ぼうといった機運が高まればと思います。例えばエコロジカルアプローチ。ライフキネティック。最新のコーチング方法には、罰走もひとつの方法などとは書いていませんし、今よりもよりよい指導をするにはどうしたらいいのか。そんなふうに前向きな議論にしましょう。ストレートに「暴言やパワハラはやめよう」といえば、だれがしているのかと犯人探しのようになるので、なるべく全体の問題にして前向きな議論にします。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■外部の目を入れて、今の指導についてみんなで聞く機会を設けるふたつめは、外部から識者を呼んで話をしてもらいましょう。セミナーの実施などです。クラブのアドバイザーをしてもらってもいいでしょう。私がアドバイザーをしているチームにも、70代のベテランコーチがいらっしゃいます。彼には「今の時代は違いますよね」と私から話をするようにしています。そうすると、以前よりも指導が随分変わってきました。子どもたちに対し「なにしてんねん」「ちゃんとやれ」といった言葉は出てきますが、決してひとりを痛めつけるものではありません。外部の方に、実際に自分たちの指導を見てもらってもいいでしょう。罰走させたり、怒鳴ったりと、旧い指導を選択されている方々は、そもそもその人自身の個人的な問題ではありません。端的に言えば、その人が悪いわけではない。要するに、その方法しか学んでこなかったわけです。しかし、今の時代はこんなふうに考えられていますよと。伝えてくれる人を招いてみんなで話を聴いてください。理想なのは、ナショナルトレセンの関東や関西など、ブロックでコーチングデベロップをされている方などがきてくれると良いのですが。学校の先生は上手に話してくれるかもしれません。その場合自分のチームでもパワハラと無縁の指導をしていることも重視してください。■オシムさんも選手に「走れ」と言っていたが、罰の意図ではなかった(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)先ごろ刊行された『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』という本では、私もインタビューを受けています。オシムさんはミスをしたジェフの選手に「走れ」と命じましたが、私はそれは罰ではなかったと考えています。そのことが、以下のように書かれています。命じられた選手は、走っているか歩いているかわからないくらいダラダラ行く。走り始めは全員、嫌な顔をしている。ところが、グラウンド1周の半分ぐらいを過ぎてくると、うつむき加減だった顔が上がってくる。辛そうにゆがんでいた顔が引き締まる。目をかっと開き「次はどうしたらいいか」を考えている顔つきに変わった。「(ミスして混乱した)頭を冷やす時間を、オシムさんは選手たちに与えていた。ミスすると走らされるという恐怖を与えるのとは違うのです」と池上。罰ではなく、考えさせる時間。それは即ち岸本の言った「準備」の一環なのだ出典:島沢優子.オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉.竹書房,2023-05-01最後に出てくる「岸本」とは、ジェフでゴールキーパーコーチだった岸本浩右さんのことです。私が育成部長などを務めた京都サンガでジュニアユースの監督でした。15年のJユース杯でガンバ大阪を下して優勝させた際、オシムさんから「監督の仕事は試合前に終わっている」と言われた話をあげて「僕が立って、わめいて、指示を送ったりするというのは、この1週間準備をしてこなかったということになる。試合に出てくる彼らのミスは、実は僕のミスですから」と話しました。見本になるコーチはたくさん存在します。コーチ全員で学ぶ。学びの場や機会をつくることが大切です。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2023年05月12日サカイクでは『あなたが変われば子どもは伸びる! 池上正コーチングゼミ』でお馴染み、池上正コーチによる親子サッカーキャンプを開催しています。次回の開催は7月1〜2日・箱根で行われます。池上コーチによる親子サッカーキャンプでは、池上さんによるサッカー指導に加え、保護者のお悩み相談に答える懇親会も開催。オンザピッチ、オフザピッチともに、たくさんの気づきや学びが得られると、参加者のみなさんから大好評です。そこで今回は、キャンプに参加した経験を持つタカシマさんに話をうかがいました。「キャンプに参加して、サッカーの本当の意味を知り、人生が変わった」と話すタカシマさんが得た気づきとは?(取材・文鈴木智之)■親子キャンプに参加した理由タカシマさんの息子さん、ユウトくんは小学2年生。池上キャンプに参加したのは1年生のときでした。お母さんによると「もともと、人見知りをしない性格」だそうで、「ユウトが知らない世界があるよ。新しいお友達やコーチとの出会いは楽しみだね」と提案したところ、すぐに「行きたい!」と言ったそうです。「池上キャンプに参加する前、小学1年生のときに、サカイクのキャンプに参加させたことがありました。箱根で行われたのですが、東京駅まで送って行って、そこからキャンプ参加者だけでバスに乗って行きました。私は子どもが一人でできないとは思ってはいなくて、知らないだけだと思っているんですね。だから、その世界を知ってほしいと思って、前向きな言葉で誘導していったら『行きたい!』と即答でした(笑)」お母さんは「小学1年生だから、できないだろうと決めつけるのではなく、人としてどうかを見ているので、この子だったら一人で参加しても大丈夫だろうと思いました」と、当時を振り返ります。その後、池上キャンプの存在を知り、春と夏の2度参加しました。参加する理由が「私自身、サッカーの勉強がしたかったのと、子どもとの接し方を知りたかったから」と言います。 「1回目は主人とユウトが参加しました。2回目は主人が仕事の都合で行けなくなり、『池上さんの話を聞いて、すごく勉強になったから、絶対に行ったほうがいい。人生変わるよ』と言われたので、私が行くことにしました」お母さん自身、ユウトくんのお兄ちゃんのサッカーに関わる中で、指導者の声かけや接し方について、「その声かけで、子どもたちが楽しくサッカーができて、成長できるのだろうか」と疑問に持つことがあったそうです。「疑問は浮かぶのですが、その答えがわかりませんでした。どのチームを見ても、高圧的な指導をする人が多くて、自分の子どもをそういうチームには入れたくないなと思っていたんです」 そのようなモヤモヤを抱いて池上キャンプに参加したところ「子どもたちへの接し方も、サッカーに対する考え方も、一気に視界が開けた」と、大きな刺激を受けたと言います。■サッカー(スポーツ)の本質を学び、成功体験を通して成長した「まず池上さんは『サッカーは遊びの延長だ』みたいな感じでおっしゃって。遊びなんだから、キックもきれいなフォームで蹴る必要ないよ、ゴールができれば何だっていいんだよという感じだったんですね。そこで、私が今まで感じた違和感は、そこにあったんだ!と気がつきました」池上さんの指導に触れ、新たな視点と、それまで探してきた「答え」の一端を知ることができたタカシマさん。キャンプに参加して「サッカーは自分らしさを出せるスポーツ、個性を活かせるスポーツなんだ」と感じたそうです。ユウトくんも、キャンプに行く前と後では、プレー中、味方にかける声の内容が変わったそうで、「プレー中、ポジティブな声かけをするようになった」と言います。「池上キャンプに参加する前は、チームメイトに対して、積極的に声をかけるタイプではありませんでした。でもキャンプに行って、自分らしくやっていいんだと自信を持ってからは、周りの子を見ながら、声を出してコミュニケーションをとるようになりました」池上キャンプでは「大人対子ども」のサッカーの試合をすることがあり、そこで子どもたちは「声をかけて一致団結しないと、大人には勝てないぞ」と感じたそうです。「そういう状況で声を出すようになり、子どもチームが点を取れるようになってきたんです。そのような経験を経て、声を出すことも大事なんだと感じたのかもしれません」■保護者の考え・行動がお子様の行動に影響するお母さん自身、池上さんとの対話で勉強になることもたくさんあったようです。「たとえば食事について、どんなものを食べさせればいいですか? と聞いたら『お母さんが作ったご飯であればなんでもいいですよ』とか、チーム選びも『練習が終わって、すぐ家に帰ってきて、お母さんのご飯を食べられるところがいい』とか、トータルで見てアドバイスをくれるんです」お兄ちゃん、ユウトくんと、子どもたちとともにサッカー人生を歩む中で、お母さんは「子どものサッカーは、親がどう考え、行動するかが影響する」と言います。「親がたくさん練習させたいと思って、本人が良ければ練習量も増えますし、親がそんなにやらなくてもいいんじゃない? と思えば、練習量が減ったりするわけです。周りを見ると、長時間練習している子が多いので、ユウトにもそうさせた方がいいのかなと思うこともあります。でも、池上さんの話を聞く中で、いやそれは違うなと本質に立ち返ることができるので、自分にとって考え方の軸になっています」池上さんに出会って、サッカーや子育てに関して、大きな影響を受けたと話す、お母さん。 池上キャンプに参加して「ユウトはサッカーの楽しさを知ったと思いますし、私自身もいわゆる一般的なサッカーの考え方ではなく、サッカーの本当の意味を知って、人生が変わった気がします」と話してくれました。新たな視点を獲得することができ、抱えている悩みを解消するヒントが得られる池上キャンプ。興味のある方は、ぜひ参加してみてください。きっと親子ともども、思いがけない発見があるはずです。【7月1〜2日箱根】池上正コーチによる親子サッカーキャンプ>>
2023年05月12日リフティングなど技術が苦手なのに自主練を促しても「できない」と言う。上手くなりたいと言うのにアドバイスすると怒るし、褒めると調子に乗り練習しない。他の子はどんどん上手くなっているのに、自分の子は口だけで上達しないのでどうしたらいいかわからない。どうすればいい?というご相談をいただきました。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見やご自身の体験をもとに、いまお母さんがどうすればいいか3つのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<他の子と差をつけられている息子、試合に出るとがっかりされるしツライ。我が子を心から応援できません問題<サッカーママからのご相談>初めまして。息子は小3年生でサッカーを始めて1年半になります。近所の子どもたちが集まっているサッカーチームなので、友達と一緒にできると言って通っています。リフティングなどの技術が苦手で、自主練をしようと言っても「できない」と言ってすぐに辞めてしまいます。試合や試合形式の練習では積極的にボールを行かずに来たボールだけ蹴るという感じなので、やる気がないと思われており、すぐにコートから出されてしまいます。本人に聞いても「やってるもん」しか言いません。親もサッカー経験がなく、仕事で時間がないため具体的なアドバイスができず。本人がもっと上手くなりたいというので別のサッカースクールにも通わせているのですが、そこでもすぐに友達と話したり、ドリブルでも最後までやらずに諦めてコースから外れてしまったりしています。親がサッカー経験のある方のお子さんはどんどん上手くなっているのに、うちの子は上達せず、本人も口だけでやらないので、どうしていいのかわかりません。ボールが怖いとか、うまい子ばかりで卑屈になっているのであれば辞めればいいとも言っているのですが、上手くなりたいとは言いますが、それに向けて練習をしようとはしないのでイライラしてしまいます。親がアドバイスを言わないほうがいい、褒めたほうがいいといいますが、アドバイスすると怒る、褒めると調子にのり、練習しないという感じになるので、どうしていいかわかりません。誰よりも上手になってほしい訳ではないのですが、試合中ぼーっとするのだけはやめてほしいのですが、どうすればいいでしょうか?<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。息子さんが自主練をしない、積極的にボールにかかわらない、スクールで友達とおしゃべりをする、ドリブル練習を最後までやらず諦めてしまう......目の前のわが子の立ち振る舞いにイライラしてしまう気持ち、とてもよくわかります。私の息子も、他の選手が一生懸命走っているのに走れない子でした。下を向いたまま歩く姿を一緒にビデオで観ながら「なんで地面見てるの?ボール見なきゃダメじゃん」と怒っていました。でも、そうやって怒ったことをあとで後悔し、私は自分を変えました。なぜならば、親がガミガミ言ったとて子どもが変わることはあり得ないことを、脳科学や心理学を学んで理解したからです。■「そんなことじゃ○○だよ」と発奮させる危機感をあおって頑張らせるやり方では、努力が長続きしない脳科学の先生に「一発学習」と「強化学習」の違いを教えてもらいました。別名「恐怖学習」と呼ばれる一発学習は、子どもがうまくいかないとき「そんなことでは万年補欠だよ」とか「次の試合に出て活躍しないとクラブはやめさせるよ」などと脅したり、恐怖をもって追い詰めることで子どもを発奮させて学習を頑張らせるやり方です。それをすると、一発で子どもが頑張って走ったり、勉強であれば一瞬成績がアップします。ところが、恐怖という刺激を与え続けなければ子どもは発奮しないので、長続きしません。しかも、与える恐怖はどんどん強度を上げなくてはいけません。子どものほうが怒られ慣れてしまうからです。一方の「強化学習」は、子どもが自分から取り組める環境を大人側が設定します。ミスを責めない。ほんの少しの進歩を褒めて認めることで、子どもが心地よく過ごせるよう努める。何かに対しなかなか取り組まなくても、自分でやり始めるまで待ってあげる。そのような大人の姿勢があってこそ、子どもは自分で主体的に動き、さまざまな学びを獲得するわけです。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■親御さん自身の「気づき」がなければ、お子さんを変えることもできないそのような話をしても、お母さんには通じないかもしれないと私は考えています。恐らく「そんなきれいごとを言われても......」と困っているのではないでしょうか。私から「これが正しい子育てだからこうしなさい」と言われても、頭でわかっていてもできないよ~となっていませんか?お母さん自身が「今のやり方じゃダメだ。このままじゃ息子をつぶしてしまう。やり方を変えよう!」と自ら考えなくては、強化学習をほどこす親にはなれません。この感情は、実は息子さんも同じです。自主練も、練習を一所懸命にやることも、息子さんが「これをできるようになりたいから自主練しよう!」とか「このメニュー、面白いから、下手だけどやってみよう」となることが重要です。■アドバイス①いま目を向けるのは子どもではなくあなた自身「頑張れない子」を育てているのは誰?以下、三つほどアドバイスさせてください。ひとつめ。息子さんに対してではなく、自分に矢印を向けましょう。お母さんの相談を読むと、息子さんへの苦情がずっと続きます。「うちの子は上達せず、本人も口だけでやらない」「上手くなりたいとは言いますが、それに向けて練習をしようとはしない」「試合中ぼーっとするのだけはやめてほしい」お母さんは息子さんを「ダメな子」と感じているように映ります。15年ほど前になりますが、都内のサッカースクールで指導していた30代のコーチが私にこう言いました。「少年サッカーの現場では、指導者が子どもをめちゃくちゃ叱りつけています。馬鹿とか帰れとかめちゃくちゃですよ。試合になると、今度は親までが子どもに『なんで頑張らないの!?』と怒っています。でも、そういう子どもを育てているのは誰なんですか?って僕は思う。天に唾(つば)してるわけですよね?」とても言いづらいことですが、お母さんも同じかもしれません。天に吐いた唾は自分にかかってきます。まずは「どうしたら自分は良い親になれるのか」を学びましょう。例えばこの連載は今回で157回になります。良かったらアーカイブを読み返してみてください。お母さんと似た相談をしている人は少なくないので、必ずやためになるヒントが落ちているはずです。逐一息子さんができないこと、ダメなことに対して矢印を向けるのではなく「自分は親としてどうあるべきか」を考えてください。自分がどうあれば、目の前の子どもは伸びるのか?そこを考えましょう。■アドバイス②自己肯定感が身につけば自分からやり始める子どもを信じてひたすらまとう二つめ。具体的には、息子さんと距離をとることを勧めます。私の場合も「親は何もしない」でした。口出ししない。わが子を信頼して、本人がやり始めるまでひたすら待つ。こちらが信頼し始めると、親のこころの変化に敏感な子どもはそのことに気づきます。言語化はできないけれど、何となくママは自分を信じてくれている、と感じ始める。そのことが息子さんの自己肯定感につながります。自分を肯定して自信をつけた子どもは自走します。逆に、親から信頼されない子どもは、なかなか自分から取り組めないのです。■アドバイス③大人が変われば、子どもは変わる子どもを信頼すること(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)三つめ。私はダメな親なんだと落ち込む必要はありません。子育ては誰もが初心者です。仕事など、どんなことも経験を積みトライ&エラーを重ねてスキルを伸ばして一人前になりますよね。ところが、子育てはずっと初心者マークをつけたままです。第一子でも、第二子でも同じです。初心者マークははがれません。なぜならば、相手が違います。私たちは10人産んでも初心者です。だから、子育ては大変。ただ、だからこそ面白いのです。ただ、目の前の個体(子ども)は違っても、普遍的な子育ての軸は存在します。例えば、上述した「信頼する」ということ。そういったスキルを磨いてください。まずは何かを強制したり、指示命令するのをやめましょう。ボーっとしているのを見るのが嫌なら見なければいいのです。親御さんたちは「嫌なこともやらなきゃいけないこともある」と言って、子どもに強制しがちです。そうなると、大人は自分のやり方が間違っているのに「怒られ慣れちゃって、本当にダメなやつだ」と子どもを責めますね。いつまでたっても矢印は子どもに向いたまま。大人は変わることができません。30年間、育成や子育ての現場を見てきた私は断言できます。親が変われば、子どもは変わります。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年05月10日市内でも下から数えた方が早いチーム。とある公式戦で久しぶりの勝利にベンチのコーチ陣も盛り上がったが、選手たちが嬉しそうじゃない。選手の話を聞いて、試合中の指示がノイズになるならと気づきを与えるに留めるようにしたら、選手はやりやすくなったが、試合会場では相手チームに比べ盛り上がりに欠ける雰囲気だし何となく押し込まれているような印象に。チームを盛り上げる声かけって、どうすればいい?とのご相談をいただきました。今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが指導者の悩みに答えます。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<チーム内で技術差が大きい、上手い子とそうでない子に分けて練習するべき?レベル差のあるチームの指導を教えて<お父さんコーチからの質問>いつも記事を拝見しとても勉強になっています。 「伸ばしたいと思うなら離れなさい」の書籍は見つけた時に「これだ!」と思い同じ学年の保護者同士で回し読みをしていた程です。U-11、12の指導をしていますが、試合中の声かけについてご相談があります。うちのチームは決して強くはなく市内でも下から数えて何番目......というレベルですが、選手達は仲良く楽しくサッカーができていると思います。今、私は試合中の声かけは最低限を心がけています。 前述の通り決して強いチームではないのですが、以前、公式戦で勝てそうな展開の試合がありました。結果、めでたく勝つことができたのですが、試合後の選手達の表情を見て大きな疑問が湧きました。せっかく掴み取った久しぶりの勝利なのに選手が全く嬉しそうでないのです。その後、色々と観察し、話も聞いてみると、どうやら試合中にベンチの指示が多すぎた事が気になっているようでした。良い展開のためベンチも盛り上がり声が増えていましたが、自分たちの大事な試合を指導者に横取りされた......、みたいな気持ちなのかと推測しています。そのような事もあり、また、展開の早いサッカーの試合中に簡潔にメッセージを伝える難しさを実感し、選手達のノイズになるくらいなら余計な事は言わないでおこう、と思いました。 試合中は良いプレーを(ボールに絡んでなくても)とにかく見つけて褒める、アドバイスはプレーの合間に「逆サイド空いてたよ、見えてた?」「後で呼んでたのは聞こえてた?」などの気付きを与える程度に留め、細かい振り返りは試合後にする事を意識しています。選手もその方がやりやすいらしく、逆にこちらのメッセージをよく聞いてくれるようになりました。 ただ、そうなると相手チームのベンチと比べて自チームのベンチが盛り上がっていない、選手の後押しをしていない、という雰囲気になり、何となく試合全体の空気も押し込まれたものになる印象を受けています。選手にもチーム内で良いプレーを褒める、意思表示をする、という声を出すように伝えていますが、まだ試合の空気を動かす程にはなっていません。池上さんは試合中のベンチからの声かけはどのような事を心がけていらっしゃいますでしょうか? また、チームを盛り上げるベンチからの声かけについてアドバイスをいただけると嬉しく思います。以上よろしくお願いいたします。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。拙書も読んでくださったようで、ありがとうございます。さて、試合に勝っても子どもたちがこころから喜んでいなかったと反省した、言い過ぎだったという結論に達して過度な声かけをやめたら、ベンチがおとなしいことに気づいた、とあります。「相手チームのベンチに比べて盛り上げっていない」と、対戦相手のベンチと比較していますが、このベンチが指導者が盛り上げていたのか、選手だけで支えていたのでしょうか。いずれにしろ、大人が引っ張らないと静かになってしまうことの原因を探らなくてはなりません。■声が出ていなかったのはどうしてか、を子どもたちに問いかけよう「自分たちの仲間がピッチで戦っていて、いいプレーがあっても声が出ていなかったね。どうしてだろう?」まずは、子どもたちに問いかけてください。4種(小学生)の監督さんのなかには「自分たちのプレーで観ている人を喜ばせよう」と子どもに伝える方もいらっしゃいますが、私は違和感があります。小学生がサッカーをするときは、自分たちが嬉しくて、楽しくてたまらない。それしかないはずです。ここでいう「自分たち」は、試合に出ているレギュラーも、ベンチにいるサブのメンバーも全員のはずです。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■子どもたちにとってサッカーが「自分ごと」になっているか一つめ。全員が試合に出ているか?交代しながら出ているのか?自分も目の前で行われている試合に出ると思えば、その試合は「自分事(じぶんごと)」です。一方で、試合に出るのは先発メンバーだけ、交代してもひとりか二人といった状況であれば、その試合は子どもの目から見れば「他人事(たにんごと)」に映ります。中学生や高校生には「チームのためにひとつになれ」「チーム一丸」といった価値観は通用します。しかし、サッカーの入り口である小学生には通用しません。何より、そういった言葉で説得させるのではなく、全員をなるべく均等に出場させてほしいと私は思います。このような「試合における環境設定」に問題はないか、考えてみましょう。■子どもたちのサッカー認知度は育っているか確認しようサッカーを理解してないと声が出ないもの二つめは、サッカーの認知力が育っているかどうかを振り返りましょう。サッカーを知っているからこそ、ベンチから声を出せます。よく理解していなかったり、自信がなかったりすると声が出ません。そのチームの子どもたちがどのくらいサッカーのなりたちを理解しているかは、ベンチメンバーがピッチにいる仲間にかける指示や声かけでそのレベルがわかります。例えば、自陣のゴール前まで攻め込まれたとき、守備をしている選手がそのボールを取り返したとします。そのとき、子どもたちはどんな声かけをしているでしょうか?「大きく蹴って!」とベンチから叫んでしまうチームはどうでしょうか?そうではなく、「ほら、キーパーがいるよ」とか「つないで!」と声をかけるチームは、多くの場合良いサッカーをしています。つなごうとしてキーパーに戻してミスしたとしても、結果はどうでもよいのです。何も考えずただ蹴り出してしまえば、同じ場面がきて、カウンターに切り替えられるパスが出せるのに結局また蹴り出してしまいます。■子どもが声を出しやすい環境か、チーム全体の雰囲気を観察しよう三つめ。試合をしている子どもたちの様子はどうでしょうか?嬉しくて、楽しくて、生き生きと試合をしているでしょうか?勝たなければいけない、ミスしてはいけないと委縮してはいないでしょうか?子どもは大人の目や周囲の目を気にして縮こまってしまうと、声は出ません。そういったチーム全体の雰囲気はどうなのかを、よく観察してください。コーチは、試合までに準備するのが仕事です。よって、試合中に指示や命令を出さなくていいはずです。子どもたちに「相手チームの特長はわかった?」「トップに足に速い子がいるね」などと話します。子どもたちに「あとは考えてね。練習してきたことを思い出して試してみよう」と試合前に声をかければ、それで役目は終了です。そのような三つのことを、他のコーチや保護者など大人たちで話し合って、どうすれば子どもたち全員が楽しく生き生きと試合をできるのかを考えてみましょう。大人が子どもたちの気持ちやチームの空気を感じることが重要です。そこをきちんと感じ取って、良い方向に替えていってください。■いい試合でも選手は「外から修正してほしかった」と......ピッチの中と外で感じ方は違うもの(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)私は現在も、幼児、小学生、中学、高校とすべてのカテゴリーを指導しています。つい先日、かかわっている高校の公式戦がありました。選手は集中し、インテンシティ(強度)も高く、とてもいい試合でした。結果は0対0のスコアレスドローで、強い相手から勝ち点をもぎ取れました。しかしながら、選手たちに尋ねると、彼らは試合内容に満足していませんでした。ナイスゲームだったねと声をかけても「いい試合ではなかった」と言います。なぜなの?と理由を聞くと、「中盤が受けられなかった」といった声が出ました。「外(ベンチ)から、ポジション修正するとか、選手交代してほしかった。システム変更とかをベンチにしてほしかった」と言うのです。しかし、ベンチから観ればいい試合だったので、何かを動かす必要はないと考えていました。このように、外からの目と、中にいる選手の考えはすれ違うことが往々にあります。であれば、外(ベンチ)からどう声かけしようが、あまり意味はないということです。ベンチが騒がしければいいわけでもありません。ぜひ、様々な角度からチームのあり方を見つめ直してみてください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2023年05月01日日本サッカー協会(JFA)は、2022年9月より、全国の巡回指導先の保育園や幼稚園、認定こども園を対象に、無料でボールとミニゴールを贈呈する事業を行っています。無料ボール、ミニゴールともに、JFAキッズアンバサダーのストライカーポケモン「エースバーン」が入っていることもあり、子どもたちに大人気です。栃木県益子町にある『認定こども園 たから幼稚園』は、寄贈されたモルテン社製の3号球とアルファギア社製のアルファゴール(折りたたみ式)を、子どもたちのサッカーに活用しています。そこで今回は、たから幼稚園園長の馬場章信さんと、栃木県サッカー協会の稲垣浩充さんに、ボールとミニゴールを使用した感想をうかがいました。(取材・文:鈴木智之)贈呈されたゴールでサッカーを楽しむ園児たち写真提供(C)JFA<<関連記事:2,438の保育園・幼稚園にサッカーゴールとボールを無料贈呈!JFAが巡回指導を拡大贈呈された「アルファゴール」はこちら>>■一昔前から、園庭でケガをする子が増えたたから幼稚園は、およそ25年前から、子どもたちの成長にサッカーを取り入れています。その理由を、馬場園長は次のように話します。「昔は園庭でブランコをしたり、自転車に乗ったり、かけっこをしたりと、それぞれが好きなことをしていても、ぶつかってケガをする子はあまりいませんでした。でも25年ほど前からケガをする子が増えてきたので、楽しみながら周りを観たり、自分の行動をコントロールできるような活動を取り入れたいと思い、幼稚園にサッカー部を作り、親子サッカーなどの活動を始めました」幼児期は身体操作の他に、道具を使うことを通じて、巧緻性(こうちせい、運動の際に体を器用に動かす能力)を身につけていくことに適した時期です。馬場園長は「サッカーボールは足で扱うので、なかなか思い通りにはなりません。その中で、思い通りにコントロールする力が大事だと思っています」と話します。贈呈された「アルファゴール」はこちら>>■いかにして楽しみながら身体の動かし方を身に付けるかいかにして、楽しみながらボールを操る力を身につけるか。そこで出番となるのが、栃木県サッカー協会の巡回指導スタッフのみなさんです。長年巡回指導をしてきた稲垣浩充さんは「ボールとたくさん遊ぶ中で、気がつくと『ボールを追いかけて止まることができた』『相手にぶつかりそうなときに、避けることができた』など、自然に体が動くようになるよう、構成しています」と述べます。「たから幼稚園には1人1個ボールがあるので、まずはゆっくり歩きながら『先生にボールをぶつけてみよう』『先生にぶつからないように逃げよう』『止まっている子には行かないけど、動いてる子には近づくよ』などと言うと、子どもは自然と止まることを覚えたりします。そういう繰り返しが、サッカーにつながっていけばいいなと思っています」■JFA寄贈のボール、ゴールは子どもたちに大好評たから幼稚園には大小様々なゴールがありますが、その中でも「特別なゴールに見えるからか、寄贈されたゴールの人気は絶大」と稲垣さんは言います。「『ゴールはたくさんあるから、どこのゴールにシュートしてもいいよ』と言うと、子どもたちはこのゴールを一目散に目指します。そこで私が、あえてゴールの前でシュートの邪魔をすると、なかなかシュートが入らないわけです」さらに、こう続けます。「他のゴールには邪魔をする人がいないので、そちらを見つけて方向を変えれば、シュートも入ります。そのときに、周りを観ることや空いている場所を探すこと、ドリブルで方向を変えることなどを学んでいくのかなと思います」馬場園長は「JFAさんからいただいたボールには、ポケモンのキャラクターが描いてあって、カラフルなので、子どもたちの食いつきが違います。子どもたちの意欲を喚起してくれるボールだと思います」と笑顔を見せます。■ゴールにシュートを入れた感覚があるゴールについては「大きさがちょうどいいですよね。ネットにポケモンのキャラクターが入っていて綺麗ですし、シュートを打って、ゴールに入れた感覚がしっかりあるのもいいと思います」と述べます。長年、巡回指導に携わる稲垣さんも「大きいゴールの場合、パワーのある子が力いっぱい蹴ると、入ってしまいがちです。でもミニゴールはサイズが絶妙なので、コースを狙って蹴るようになります」と話してくれました。「ゴールが大きいと、10m離れていても、シュートを打てば入るかもしれません。でも寄贈されたゴールは小さいので、『確実にシュートを決めるために、あと5m進もう』といったアドバイスもできます。それがドリブルなどサッカーにもつながるので、その上でゴールを決めた喜びを体感してほしいと思っています」簡易的なゴールだと、シュートを打ったとしても、ボールがゴールネットに吸い込まれる感覚が乏しかったり、強いシュートを打つと動いたり、強風に煽られて倒れてしまうこともあります。稲垣さんは「アルファゴールはそういったことがないところも良いですよね」と、使用感を話します。■ボール、ゴールのプレゼントは継続中サッカーを始めとする様々な活動を通じて、子どもたちの成長に寄与するたから幼稚園。今後も、楽しみながら成長するために、JFA寄贈のボールとゴールを活用するそうです。ボールとゴールを贈り、子どもたちに日常的に楽しく身体を動かしてもらうこのプロジェクトは、保育園・幼稚園が対象で、各都道府県のサッカー協会から申し込むことができます。費用は無料なので、興味のある方はアクセスしてみてはいかがでしょうか?きっと、子どもたちの喜ぶ顔がたくさん見られるはずです。●贈呈品・ボール10球幼児向けサッカーボール軽量3号球(モルテン社製)・ミニゴール2台据置型(モルテン社製)あるいは折畳型(アルファギア社製)から選択●贈呈先2022年の贈呈先はこちら>>●申込み新規巡回指導のご希望は各都道府県サッカー協会で受け付けています>>(JFA問合せ窓口050-2018‐1990)※寄贈するボール・ゴールは数やお届けする期日に限りがある場合があります贈呈された「アルファゴール」はこちら>>
2023年04月27日幼稚園の頃から所属しているのに、年々ぐっと伸びる子がいて差が開いてつらい。子どもが出ない試合は応援する気にもなれず、出場した時の周りのがっかり感にもいたたまれない。上手い子のママが強いし、ママたちのかかわりもストレス。子どもはやめたくないというが、自分が逃げ出したい。どうすればいい?というご相談をいただきました。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見やご自身の体験をもとに、お母さんがラクになれるアドバイスを送ります。わが子にどうしてサッカーをさせているのか、改めて考えてみてください。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<「センスがないからサッカーやめろ!」暴言を吐く幼稚な夫を変えたい問題<サッカーママからのご相談>「試合に出られない息子。上達しないのに時間の無駄と思う自分がイヤです問題」の記事を読ませていただきました。私も同じ悩みを持っています。9歳の息子は幼稚園の頃から現チームに所属していますが、年々ぐっと伸びる子がいて、どんどん息子との差が開いていきます。期待の隣に嫌悪感と悦びがあると知って、とても腑に落ちました。息子が一番つらいと考えてなるべく期待はしないようにと頑張っているのですが、どうしても無理です。試合を見に行くのも辛いので、なるべく夫に任せて見ないようにしていても試合に出られなかったと知るだけで泣けてくるし、自主練をしない息子にもイライラします。高学年になり、遠征やイベント運営など親が出ることも多くなって、他のママとの関わりもとてもストレスになっています。やっぱりうまい子のママが強いし、同じレベルのグループができているように感じます。我が強い人が多いので、何かあるたびにもめて振り回されてストレスがたまります。毎日の送迎、週末の試合、お弁当作りなど出費もかさみます。やめたくないと言う息子のためにとは思いますが、逃げたしたくて仕方ないです。息子が出ない試合で他の子を応援する気にもなれず、交代で息子が出たときの周りのがっかり感の空気を見るのも嫌で、試合に行ったときは離れたところにいます。どうやったら、割りきって応援できるのでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。過去記事を読み「期待の隣に嫌悪感と悦びがある」という学びを得たうえで、自分で何とか気持ちをコントロールしようとしている様子が伝わってきます。■試合の出場機会が均等にならないのは、未だに残る勝利至上主義の影響お母さんが参考にされた方も、5年近く前に配信された過去記事(試合に出られないのに自主練提案しても手応えなし...。競争心の無い息子にイラつく自己嫌悪ママの問題)を読んだうえでご相談されています。こんなにも多くの親御さんが苦しんでいることに驚かされます。そもそも、四種(小学生)の間は全員が均等に試合の出場機会を得られるよう指導者が考えていただければ、何の問題もありません。そういったチームは少しずつ増えています。ところが、現実的にそのようなチームは圧倒的に少数派です。そうならないのは、サッカーのみならず日本のスポーツ育成に勝利至上主義が色濃いからでしょう。よって、全員を試合に出すチームを選んで子どもを入団させてほしいのですが、息子さんのチームはそうではないようです。では、どうすればいいのか。お母さんに二つほどアドバイスさせてください。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■まずは、お子さんが何のためにサッカーをしているのか、を整理しようひとつめ。まずは、息子さんにとってのサッカーは何か?ここを整理しましょう。お母さんは、息子さんを是が非でもプロ選手にしたいわけではないと思います。では、何のために息子さんはサッカーをしているのでしょう?「やめたくないと言う息子」とあるので、サッカーをやめてはどうかと提案、もしくは命令したこともあるようです。それでも息子さんは続けたいというのですから、サッカーに魅力を感じているのでしょう。息子さんになぜやめたくないのかを聞いたことがありますか?恐らく仲間といるのが楽しかったり、練習が楽しかったりするのだと思います。小さいなりに、サッカーをすることへの大義ともいえる確固たる意味が彼の中にあるのです。そのような貴重な居場所を、親の勝手な感情で奪ってはいけません。チームに暴力やパワハラがない限り、彼のほうから「サッカーをやめたい」とか「チームを移りたい」と言うまで、親のほうからアクションを起こさないでください。上手くいかないと親が主導して次々チームを替わるサッカージプシーの親子をいくつか見てきましたが、子どもに主体性が身につかないだけでなく親子関係が悪化する傾向があります。子どもの世界に親が過度に干渉すると、ブーメランのように返って来るわけです。そのことはぜひ覚えておいてください。■今のあなたの態度は、息子さんの存在を否定ているふたつめ。お母さんの気持ちを整理しましょう。試合を見に行くのも辛い。試合に出られなかったと知るだけで泣けてくる。自主練をしない息子にイライラする。このようなお母さんの態度は、息子さんの存在を否定しているように思います。似たような葛藤を抱えている方々は「息子の前ではマイナスの感情は見せないようにしています」とおっしゃいます。しかし子どもというものは、自分のことを親がどう思っているのかを容易に見破るものです。不甲斐ないプレーをして、お母さんを辛くさせている。自分が試合に出られないと、お母さんは泣くほど悲しむ。自主練して頑張っているところを見せないと、お母さんの機嫌が悪くなる。以上のような気持ちが100%でないにしろ伝わっているとしたら、息子さんの自己肯定感は下がるばかりです。9歳という年齢は「どんな自分でもお母さんは愛してくれる」という親への信頼感が、とても重要です。その気持ちが「自分は何があっても大丈夫」という自己肯定感を育む種になるからです。ああ、そんなこと、わかっています。そんな声が聴こえてきそうです。私の連載を読んでいるのですから、恐らく子育ての原理はわかっている。でも、頭に気持ちがついていかないのではありませんか?私自身も経験があります。お母さんの気持ちを100%理解できないかもしれませんが、察することはできます。ママ友からのストレス、送迎などの出費もある。相談文を読むと、息子さんがサッカーをすることは、お母さんにとって何ひとついいことがありません。では、息子さんがレギュラーだったら?エースだったら?恐らく世界は一変するでしょう。出費だなんてきっと思わないでしょう。お母さんが書いた「我の強い人」の仲間入りをしていたかもしれません。ところが現実は絶対的なレギュラーでも、エースでもない。でも、親が辛いからと子どもからサッカーを取り上げられない。だから悩むのですよね?あなたはすごくいいお母さんです。子どものために自分がどうあるべきか、自分がどうあれば子どもが幸せになれるかを懸命に考えています。そうであれば、今の状態は一見ピンチのようですが、お母さんが親として成長できる大チャンスです。■親の見栄や承認欲求を満たさない子では不満?お母さんがラクになる方法は......(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)私たちは子どもに試されています。自分の親はどんな人間?と。自分の見栄や自己承認欲求を埋めてくれる子どもでないと、不満な人なのか。子どもの成長を第一に考え、ゆっくりと長い目で見守ってくれる人なのか。もしまだ前者であるならば、一旦息子さんのサッカーから離れましょう。夫に今の自分の辛さや葛藤をきちんと話し、サッカーについては夫に任せ距離を置きましょう。そのぶん、子どもの食事つくりや他の子育てで頑張れば良いのです。息子さんのサッカーに縛られず、しがみつくことなく過ごしましょう。できれば、自分の趣味や生きがいを子ども以外で見つけることに時間とエネルギーを割いてください。まずは、お母さんが生き生きと過ごすことです。「お母さんも○○を楽しむから、君もサッカーを楽しんでね。でも、何かあれば相談に乗るからね」そんなふうに言える日が来ることを願っています。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年04月26日この4月から子どもがサッカーをはじめとする何らかのスポーツを始める、または始めたご家庭は多いのではないでしょうか?子どもの成長にとって「スポーツは素晴らしい」のはいうまでもありませんが、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。シンキングサッカースクールで子どもたちにサッカーを教えている菊池健太コーチにお話を伺いました。子どもだけではなく、親にもいいことがたくさんあるとのお答えも必見です。(取材・文:小林博子)写真はサカイクキャンプサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■スポーツを通して学べる事はたくさんある「スポーツを通して子どもが学べること、身につけられることは、本当にたくさんあります」そう答えてくれた菊池コーチによると、その「たくさん」の内訳は協調性とチームワーク、洞察力や思考力、礼義など、親として子どもに身に付けてもらいたい能力がずらりと並びます。学校や家庭での学びだけではなく、スポーツもプラスすることでそれらが身に付く理由として大きいのが多様な価値観に出会えるからだということ。もちろんスポーツをしていなくてもさまざまな価値観を持つ人にこれからの人生ではたくさん出会いますが、「スポーツを通して」というところがポイントなのだとか。例えば、菊池コーチが指導しているシンキングサッカースクールでは、「作戦会議」の時間を設けています。子どもたちはその時間を通して、自分とは違う考え方があることを知り、時には意見が食い違っても受け入れ、「聞く力」を身につけていきます。大好きなサッカーを通してなので、その経験がより受け入れやすい状態であることも見逃せないポイントです。子どもの心の成長の加速度はサッカーだからこそ高まるともいえます。多様な価値観があることが早い段階からわかっていることは、心の発達にもつながります。いろんな価値に触れ、尊重しあう経験を通して心が豊かな子どもに成長してくれることでしょう。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは■勝ち負けがあるのは悪いことじゃない結果が目に見える=実感できる多くのスポーツが他と大きく違うのは、わかりやすい結果があること。例えばサッカーでは試合ごとに勝ち負けがあります。日々の努力や向き合う姿勢次第で、その結果が変わるというのは、小さな子どもはまだあまり経験してきていないこと。これも心の成長には欠かせません。ちなみに、いわずもがなですが体の成長度もスポーツを通してぐんと高まります。しっかり運動をして適度に疲れ、よく食べてよく眠ることがいいことなのはいうまでもありません。生活にメリハリをつけてくれることにも繋がりますし、体力がついてより健康的な生活ができるようになる子も多いものです。成長目覚ましい子どもの時期だからこそ身につけられる技術もあります。■感謝の心を持つことができれば「礼義」は自発的に身につく多くの親御さんが子どもの習い事で身につけてもらいたいと思うのが「礼義」ではないでしょうか。しっかり挨拶をすること、相手をリスペクトする姿勢などは、普段の生活だけよりも、スポーツや習い事の場で家族以外の人間関係を経験することで身につきやすい能力のひとつです。「礼に始まり礼に終わる」武道などでは、それらをしっかりとルーティンとして身につけることができるのもメリットのひとつ。メリハリのある態度で練習や試合に臨むことができるようになることでしょう。なお、サカイクが提唱している「ライフスキル」の一つである「感謝の心」は、子どもたちから自然な形で礼儀を引き出すことにもつながります。自分がサッカーができるのは、親御さんをはじめとした周囲の大人のサポートやコーチ陣の指導、審判や相手チームの選手たちなどがいてこそ。そう気づくと、周りの人たちへの感謝の心が育まれて態度に現れ、挨拶や態度などの「礼儀正しさ」に反映されるからです。「ちゃんと挨拶をしなさい」と大人から言われるよりも自発的に礼儀が身につくのです。■親としてのスタンスもよりよいものにさまざまな「いいこと」があるスポーツ。最後に菊池コーチが伝えたいとおっしゃったのが「親の成長」でした。それにはこんなエピソードが。菊池コーチが指導を行うシンキングサッカースクールやサカイクサッカーキャンプで子どもたちが使っている「サカイクサッカーノート」には、子どもたちへの質問が書かれ、それに答える形で子どもの気持ちや考えを言語化するページがあります。「サッカーを通してどんな力を身につけたいですか?」「サッカー選手になるための技術」「試合で活躍する力」などを想定しがちですが、この問いに、こう書く子どももいるそうです。「人を大切にする力」この子は前述した「感謝の心」があるからこそ、そう記入したに違いありません。家に帰れば、小学生、中学生のサッカーをする4人の男の子のお父さんでもある菊池コーチ。休日は子どもとサッカーをしたり、お子さんが所属するチームの練習に顔を出す時間もあるといいます。そんな"パパ目線"でも、「サッカーを通して身につけたいのは人を大切にする力」という答えに、はっと気付かされたそう。子どもの成長につれ親もだんだん欲が出てきて「上手くなってほしい」「試合に出て活躍してほしい」と思ってしまいがち。大切な子どもが大好きなサッカーを楽しめるようにという親心からくる願望でもありますね。とはいえ、もっと大切なことを、子どもの心の成長から、学んだ瞬間だったそうです。スポーツを通して子どもが身につけた豊かな心が、親としての子育てのスタンスも良い方向へ導いてくれた好例ではないでしょうか。■スポーツは身体づくりや運動能力だけでなく、心の成長にもつながる身体だけでなく、心の成長にたくさんのメリットをもたらしてくれるスポーツ。それぞれの種目の特徴によって身に付くものに細かな違いはありますが、総じて言えるのは「スポーツは心を豊かにし、人間として成長させてくれる」ということです。「春から何か始めさせてあげたい」とお思いでしたら、ぜひその何かをはじめてみてはいかがでしょうか。その時に「サッカー」もぜひ選択肢にいれてもらえたら、サカイクとしては嬉しいです。菊池健太(きくちけんた)サカイクキャンプヘッドコーチ。約20年にわたり未就学児から小学生まで指導。私生活では4児の父。4人ともサッカーをしており、サッカー選手を育てる保護者でもある。<資格>日本サッカー協会C級JFA公認キッズリーダーキッズコーディネーショントレーナー佐倉市立井野中学校サッカー部外部指導員<経歴>VERDY花巻ユース 日本クラブユース選手権出場(全国大会)中央学院大学 千葉県選手権 優勝千葉県1部リーグ 優勝サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2023年04月21日日本の若者は、先進諸外国に比べて、自己肯定感が低いというデータがあります。『子ども・若者白書』(平成26年版/内閣府)によると、日本の若者(13歳~29歳)で、自分自身に満足していると答えた人の割合は、アメリカ(86.0%)、イギリス(83.1%)、フランス(82.7%)、ドイツ(80.9%)、スウェーデン(74.4%)、韓国(71.5%)に対し、わずか45.8%にとどまりました。そこでサカイクでは、サッカークラブやコーチの関わりが子どもに与える影響について調査しました。令和4年度 全国学力・学習状況調査 調査結果資料【全国版/小学校】における設問に対し、東京都大田区で活動する大森FCの選手85名に回答してもらい比較したところ、全国調査に比べ、自己肯定感がとても高いという結果が出ました。「自分には、よいところがあると思いますか」への回答「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」で79.3%出典:令和4年度 全国学力・学習状況調査 調査結果資料【全国版/小学校】同じ質問の大森FCの回答「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」で100%、「どちらかといえば、当てはまらない」「当てはまらない」という回答は無かった強豪クラブによくある、所属選手がJクラブへと移籍する際の、自己肯定感の重要性とは?(取材・文:鈴木智之写真提供:大森FC)写真提供:大森FC<<前編:スポーツの特性やコーチの関わり方が子どもの自己肯定感や幸福度にどの程度影響するのか【サカイク調査結果】サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■大森FCに所属することで感じる、自己肯定感の高まり本田さん大森FCは親身になってくれるというか、コーチ陣の雰囲気が温かいと感じます。練習試合に行くとよくわかるのですが、いまだにコーチが怒鳴ったり、人格否定するような言葉をかけるチームはたくさんあります。もちろん、大森FCのコーチもただ優しいだけでなく、指導として必要なときは厳しく言ってくれますが、愛ある指導というか、感情的にダメだと怒ったり、怒鳴るようなことはありません。それも、子どもたちの自己肯定感を高めることにつながるのかなと思います。だから、コーチのことが好きで、サッカーも嫌いにならずにやっていけているのではないでしょうか。周りの子のレベルが高くて、たくさん要求されて上手くプレーができなかったり、コーチが厳しすぎて自分が出せずに、サッカーが嫌いになるという話を聞くこともありますが、うちの子がそうならずに、楽しみながらも厳しく、上を目指して頑張れているのは、コーチのおかげもあると思います。西川さんコーチが作る雰囲気もそうですし、子ども同士が、お互いの良いプレーを言い合うことが多いんです。「お互いの良いところを言い合ってみよう」と言ったら、ポンポン出てくると思います。スタメンの子もサブの子もいる中で、互いにそれぞれの良さがわかっているんですよね。サッカー面で良いところを言う子もいれば、「この子はポケモンカードをいっぱい持っていてすごい」とか(笑)、サッカーだけに拘らない価値観を共有しながら、サッカーをすることができる環境って、なかなかないんじゃないかなと思います。子どもが子どもらしくいられて、なおかつサッカーも楽しめるのが良いところだと思います。小島代表サッカーだけに集中させないというか、いろんな価値観を持っていいよという雰囲気づくりは意識しています。たとえば、Jクラブに行けるかもしれない子がいた場合、無条件に行かせてあげるのではなく、コーチ陣でミーティングをして、「その選手はJクラブに行ったとして、自己肯定感を感じることができるか」については、結構話し合います。自分よりも上手な子がいる中へ入っていくことで、その選手の自己肯定感は高まるのか。それとも自信をなくしてしまい、自己肯定感が下がるのか。子どもの性格や状態によっては「いまは止めておいたほうがいい」と言うこともあります。当然、選手の自己肯定感が高く、失敗から学ぶことができる状態であれば、何も問題はありませんが、レベルの高い環境に行くことで、自信をなくして、つらくて心が折れてしまうこともあります。それであれば、良い状態になってから移籍しても遅くはありません。そこは、その選手の人生に関わることなので、選手とも保護者とも、コーチともたくさん話をして決めて頂いています。大事なのはチームが強くなることよりも、大森FCに関わるみんなが成長することであり、サッカーが生きがいになること。そのためには、選手もスタッフも保護者も、みんなでチームとしてやらないといけません。コーチ同士も結構な量で話をしていますし、クラブの価値観を共有することで、子どもたちの中にちょっとずつ伝播していってくれたらと思っています。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは■子どもが失敗したときの、自己肯定感を損なわない接し方写真提供:大森FC本田さんできなかったことを責めると、自己肯定感が高まらないと思うので、サッカーにしても勉強にしても、できなかったことに対して、「こういうところがいけなかったから、こういう結果になったね」と話をするようにしています。上手くいったとき、成功したときは、「勉強なりサッカーを毎日やったから、こういう良い結果になったね」と、しつこいぐらいに言います。たとえば、セレクションがあるからリフティングを頑張ろう。朝練を一ヶ月間やろうと言って、実際にやって良い結果が出たときに「毎日頑張ったから、この結果になったんだよ。自分の努力でそうなったんだよ」というような声をかけます。成功も失敗も「原因があって、結果があるんだよ」と伝えることが大事だと思っています。その中で、失敗だけを指摘するのではなく、次に繋げられるような声かけを心がけています。そうすると「やればできる、やらなかったらできないんだ」ということが理解できるかなと思うのです。「自分は何をやってもできない」と感じてしまうのが、一番怖いことなので「やればできる」「やったからできた」「やらないとできない」という気持ちを忘れないような接し方を心がけています。それが自信につながり、「自分はできるんだ」という自己肯定感につながるのだと思っています。西川さんうちの子は3月生まれなので、「みんなはもうできるのに、自分はできない」というところからのスタートでした。そこでまずは「できないならできないでいい。できない自分を受け止めよう」という話をしました。そして「できないことで、何が嫌だったの?」と、彼の気持ちを言語化するようにしました。「何でもかんでもみんなと同じにできるようにならなくていいよ」「自分がやりたい道をみつければいいよ」という話をしました。それが自己肯定感につながるのかはわかりませんが、長い目で見てあげることも大事なのかなと思います。小島代表大森FCには「ローカルヒーローズ」という言葉があります。地域のヒーローという意味で、三笘薫選手や久保建英選手のように、地域から世界へ羽ばたいていけばいいねと。そこを目指して育成する中で必要なのは、その選手が持っている武器です。キックが強い、足が速い、性格が明るいなどなんでもいいのですが、その武器を発揮してチームに貢献できたときに、自己肯定感は高まるのではないでしょうか。一方で、自分にはこれができない、この選手はここが足りないと、「足りないもの探し」をすると、いつしか自信は失われていきます。そもそも、足りないものに目を向けていてもキリがありませんよね。できなかったことよりも、できることに目を向けて、その選手の特徴や個性、武器を軸に、問いかけをするようにしています。「キミのこの部分、めちゃくちゃ良いね!」というように認めてあげることで、自己肯定感も高まっていくのではないでしょうか。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2023年04月17日子どもたちの技術に差があって、トレーニングがスムーズにいかない。レベルで分けた方が良いのか、同学年は一緒に練習させた方が良いのか。というお悩みをいただきました。同じ悩みは多くのチームで聞かれますが、みなさんはどうしていますか。今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが指導のアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<サイドバックの攻撃を活かす攻撃が特徴のチーム、小4に2トップと中盤のポジショニングを教えるのが難しい。どうすればいい?<お父さんコーチからの質問>はじめまして。少年団で指導をしています。相談したい年代はU-9です。チーム内でも技術に差があります。鳥かごやパス練習でもスムーズにいかない部分があります。このような場合、うまい子、そうでない子に分けてやるべきですか?それとも同学年同チームであれば混合してやるべきでしょうか?<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。9歳なので3年生でしょうか。練習はスムーズにいかないからこそやるものです。練習がうまくいくのであれば、その練習はする必要はないとも考えられませんか。うまくいくことがいいわけではありません。■子どもには「さまざまな環境」が必要小学生年代の練習の運び方として「М―T―М(マッチ・トレーニング・マッチ)」を日本サッカー協会が推奨しているのはご存知かと思います。練習の最初に試合(ミニゲーム)をやって、手をつけたほうが良さそうな課題を抽出してそれを練習する。そして、そこを意識しながら、最後に再び試合をします。この場合、試合でこのあたりがうまくいかなかったけど、どうする?と子どもたちと相談しながら練習を進めます。その際に「じゃあ今日はこんなメンバーでやろうか」と、技術が進んでいる子どもとそうでない子に分けてやってもらうことがあってもいいでしょう。その逆で、どちらの層も混ざって行うこともある。さまざまな環境を用意してあげましょう。この「さまざまな環境」が子どもには必要です。エコロジカルアプローチ「運動学習理論」(※)をご存知ですか。指導者が環境設定することで、子どもは自分で学んでゆくと言われています。この考え方を参考にする指導者がいま増えています※参考:『エコロジカル・アプローチ「教える」と「学ぶ」の価値観が劇的に変わる新しい運動学習の理論と実践』 植田文也 ・著サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■安易に技術の優劣で分けるのではなく、チームスポーツであることを意識させる環境づくりをつまり指導者の役割は、環境の設定なのです。例えば何かを行う人数グループ分けも、練習の「環境」に入ります。4人でやるほうがいいのか、2人なのかといった設定を、簡単ではなく、かといって凄く難しいものではなく、全員が楽しみながらトライできるものにしてください。最初からできてしまうのであれば、それはトライにならないのでそこの見極めが必要です。「グループ分けはこうしたほうがいい」というものはありません。上手い子とそうでない子が混ざると、例えばこんなことが起きます。上手い子がわがままになります。自分より技術が劣る子にボールを預けるとミスすることが増えるので、周囲の状況を見ずに、仲間にパスもせず、自分で勝手にドリブルしてしまいます。だからといって安易に技術の優劣で分けて練習するのではなく、そこで「サッカーはチームスポーツだよね?どうやってみんなで点を取るか考えるスポーツだよね」といったことを伝える機会にもなります。そういう部分を育ててあげてください。■小さいころに技術習得に時間を割きすぎると、大きくなってから認知や判断の時間にもっと時間がかかる過去にも申し上げたように、日本は止める、蹴るといった足元の技術指導から入ります。そうではなく、サッカーの入り口に立つ子どもたちには、サッカーの認知や判断する力を養うための環境を設定することが必要です。欧州などとは育て方が逆なのです。小さいころに技術が大事だからとそこに時間を割き過ぎてしまうと、少しずつ体が大きくなってフルパワーで蹴ると、ボールのコントロールが難しくなります。学年が上にいくと、小さいときは上手かったのに試合に出られなくなるなど、漏れてくる中学生や高校生が出てきます。認知や判断する力をつける練習をもっと増やさなくてはいけません。欧州では、大きくなってパワーがでてくるときに、もう一度技術をやり直します。コーチはひとり一人見てあげています。ところが、日本の中高生は、部活動やクラブで「勝つか負けるか」が最優先になる環境にいます。そのチームの戦術に当てはまる子どもは試合に出られますが、そこから外れると使ってもらえません。プロになったり日本代表になる選手の中に、Jクラブのユースに上がれなかった例は少なくありませんが、上記のような背景があるのです。■インサイドキック一つ取ってみても、一人ひとり有効な蹴り方が違うまた、技術差があるのが悩みのようですが、これも先ほどお伝えした運動学習理論に基づくと、以下のことが言えます。同じことを繰り返す反復練習が技術の習得に役立つと、長い間言われてきました。たとえそうだとしても、子どもたち一人ひとり有効な蹴り方は違ってきます。なぜなら骨格や筋肉の付き方や質も違うからです。例えば、同じインサイドキックを蹴るにしても、使う筋肉は変わるためひとり一人に合ったように動かすことを学んだほうが良い。要するに「はい、みんなこうやろう」といった全員一緒にやっても効果は期待できません。全員一斉指導は通用しないのです。例えば、手の上におぼんを乗せて、いっぱいいっぱいに水の入ったコップを移動させるとします。おぼんを目の高さに持ってくるとき、へその高さに持ってくるとき、左右に平行に移動させるとき。たったそれだけの動きでも、何百もの筋肉や神経が動いています。そして、人ぞれぞれで使っている神経や筋肉、肩関節の可動域も異なります。前述したように、集団指導は限界があります。であれば、指導者の皆さんはどう解決なさいますか?■元日本代表監督オシムさんらのトレーニングは理にかなっていた(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)そこには、現在多くの指導者が始めている「考えさせる」指導が有効です。自分で考え、深めて思考し「こうしてみよう」と選択する習慣をつけるほうが、技術の定着が早く、応用も効きます。欧州の有名な監督、オシムさんやハリルホジッチさんらの考えさせるトレーニングは、理に適っていたと言えます。どうか、子どもに自ら考えさせる習慣をつけ、さまざまなトレーニング環境を用意することに努めてください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2023年04月14日センスがないから辞めろ、試合に行くと口出ししたくなるから観に行かない。と下手な我が子を情けなく思っているのを隠そうともしない幼稚な夫を変えたい。というご相談をいただきました。みなさんの身近にも、子どもが下手だと興味を失う親御さん、見たことありませんか。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、言葉で子どもを傷つける父親への対応を含め、子どものサッカーに関わる保護者としてどうあればいいか、アドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<試合で相手にボールを譲る消極的な息子を何とかしたい問題<サッカーママからのご相談>こんにちは。この連載でも時々でてくるお話かもしれませんが、下手な子どもを認められない親についてのご相談です。うちの夫は9歳の子どもに対して、センスがないから辞めろと言い、観に行くと口出ししたくなるのでもう観に行かないと幼稚な発言をしています。下手な息子を不甲斐ない、情けないと思っているのを隠そうともしないのは子どもにとっても良くないですよね。実際子どもは父親のことを好きではないし、会話もほとんどありません。プロを目指すわけでもないし、本人が楽しんでいるならそれで良いのではと思うのですが、子どもを認められない父親をどうしたら変えられるでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。私はこのような連載以外で、運動部活動や少年サッカーなどスポーツの指導現場にかかわる悩みや困りごとの相談も行っています。つい最近、小学生の親御さんからジュニアユースクラブのセレクションについての相談を受けました。■子どもに対する言葉のバイオレンスから守らなければならない皆さんご存知のように、サッカーのジュニアユースクラブに入るには、多くの場合セレクションがあります。実施後に合否が出るのですが、合格させた後に「いま入団しないなら、後で来ても入れないよ」と言われることがあります。もうひとつ、全体人数の調整のために「内定は出るから待っていて」と待たせて他のクラブのセレクションを受けさせないケースもあります。私が受けた相談は後者で、結局内定は出ませんでした。他のクラブに入る選択肢はあったのですが、大人不信に陥り傷ついたお子さんはサッカーをやめてしまいました。非常に不幸なケースでした。ただし、話を聴いていくと、ご家族の問題のほうが深刻でした。つまり、こちらのご相談者様と同じように父親が問題でした。強豪クラブの内定を逃した(というより裏切られた)息子を責めるような言動が多数ありました。それらは、私からすればドメスティックバイオレンスです。まずは、夫の口撃に対し息子を守れない母親の精神状態を立て直すことから始めました。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■3年生ぐらいだと親の言葉をストレートに受け取り傷つくこともあるこの事例とは問題の種は異なりますが、夫を矯正しなくてはいけない点は今回のご相談者様も同じです。もしかしたら、子どもさんが小学3~4年生と、前述した事例よりも年齢が低いことを考えると、こちらのほうが深刻かもしれません。6年生くらいになると「僕の父親はこういう人だから仕方ない」「人としてダメだ。父親のほうがおかしい」と客観的な判断も子どもによってはできるようになります。が、3年生くらいだと、父親の言葉をストレートに受け取ってしまって深く傷つきます。つまり、親が「うちの子はあれもできない。これをやろうとしない」と嘆き悲しむのは、車からガソリンを抜いているようなものです。その一方で、息子さんのことを「人と争うようなことが嫌い」と書かれているように、お母さんは息子さんの性格を知っています。であれば、そこを息子さんが自分で乗り越えるのを気長に待っていればいいのです。■夫を変えようとするのではなく、まず自分を変えましょうお母さんの質問は「子どもを認められない父親をどうしたら変えられるか」です。父親、つまり夫を変えることを目指してしまうと、なかなかうまくいかないかもしれません。恐らく年齢は30~40代でしょうか。息子さんに「センスがないから辞めろ」とか「もう観に行かない」などと言ってしまうのは、感情的になりやすい性格に加えて、子どもの人権に対する意識が希薄なためわが子を私物化する傾向にあるのだろうと推測します。「センスがないから辞めろとか、そういう暴言は吐かないで。約束して」と言っても、元の意識の部分が同じなので今後も何か息子さんにネガティブなことが起きると「ほら、やっぱりお前はダメなやつだ」と言ってしまう、もしくはそういう顔をしてしまう。子どもは大人が思っている以上に敏感です。自分が肯定されていないことにすぐに気づきます。したがって、父親(夫)を変えるよりも、お母さん自身がまずは変わることです。そのために考えてほしい、向き合ってほしいことが三つあります。■夫の暴言を許しているのは虐待を傍観しているのと同じひとつめ。お母さんはお父さんと、パートナーとして対等な関係を結んでいるでしょうか?そこを振り返ってみましょう。お父さんが息子さんに「センスがないから辞めろ」と言ったとき、お母さんは烈火のごとく怒りましたか?私としては、そこで「暴言を吐いてしまった。すまない」と父親が謝るまで許してはいけないと思います。サッカーがあまり上手ではなく悩んでいるだろう、まだ9歳の息子に対する言葉の虐待です。人間ですから、つい言ってしまうことはあるでしょう。その場合は「悪かった」と謝ることです。お母さんもそれをさせないままスルーしているのだとしたら、虐待を傍観していることになります。パートナーの言動がおかしいと感じたらきちんと話し合える関係性をつくりましょう。ゆっくりでいいです。対等な関係性を築きたいと話をして、お父さんにも考えてもらうのです。■「サッカーが下手」といった目に見える評価だけで子どもを見ないことふたつめ。お母さん自身の息子さんに対する感情と向き合いましょう。相談文に「下手な息子を不甲斐ない、情けないと思っているのを隠そうともしない」とありますが、情けないと思うこと自体が情けないと私は思います。お父さんがそう思うのはある意味「他人」の考えなので変えようがないのですが、お母さんはどうでしょうか。三つめ。サッカーが下手だとか、勉強ができないといった評価(認知)できるものだけで、子どもを見るのはやめましょう。そのような目で見てわかる認知能力ではなく、見えない非認知能力を見てあげてください。やさしく人を思いやるこころをもっているか。自分で気づき、考えて行動できるか。何があっても「自分は今の自分で大丈夫」という自己肯定感が育っているか。そこを振り返ってください。■子どもの自己肯定感を育てるために、幼稚なパートナーへの対応を変える(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)そして大事なのは、幼稚なパートナーに対しても「こう言わないで」「こんな態度をとらないで」といった否定をしないこと。他者を否定する人ほど、自分を否定されることに弱いものです。私はこういう言葉は嫌い。好きではない。良いとは思わない――そんな「私はこう考える(思う)」というアイ(I)メッセージで伝えましょう。私たちの親世代は、子どもに対し暴言を吐き放題の家庭が多かったでしょう。センスがないからやめろと言われれば「センスがないのは本当のことだから、お父さんが言うようにやめたほうがいいかもしれない」と考える。それが普通なこととして育ってきました。すべての家庭がそうではありませんが、高い確率でそのような子育てが行われ、その影響もあって日本の若者はすでに20年近く先進国で著しく自己肯定感が低い国になってしまいました。お母さん自身が変われば、お父さんもそれに気づくはずです。そして何よりも息子さんにも変化が訪れます。母子が変わったうえで、ついでにパパが変わればいいね、くらいな心構えでいましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年04月12日『子ども・若者白書』(平成26年版/内閣府)によると、日本の若者(13歳~29歳)は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、韓国といった諸外国に比べ、自己肯定感が低いというデータがあります。自分自身に満足していると答えた人の割合は、アメリカ(86.0%)、イギリス(83.1%)、フランス(82.7%)、ドイツ(80.9%)、スウェーデン(74.4%)、韓国(71.5%)に対し、日本はわずか45.8%にとどまりました。そこでサカイクでは、サッカークラブやコーチの関わりが子どもに与える影響について調査しました。令和4年度 全国学力・学習状況調査 調査結果資料【全国版/小学校】における設問に対し、東京都大田区で活動する大森FCの選手85名に回答してもらい比較したところ、全国調査に比べ、自己肯定感がとても高いという結果が出ました。「自分には、よいところがあると思いますか」への回答「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」で79.3%出典:令和4年度 全国学力・学習状況調査 調査結果資料【全国版/小学校】同じ質問の大森FCの回答「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」で100%、「どちらかといえば、当てはまらない」「当てはまらない」という回答は無かったなぜ、大森FCの子どもたちは、自己肯定感が高いのでしょうか?クラブの代表を務める小島直人氏と小学4年生のお子さんをお持ちの保護者2名に話を聞きました。(取材・文:鈴木智之写真提供:大森FC)写真提供:大森FCサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■大森FCに子どもを通わせることになった理由本田さんうちの子は小学2年生の終わりに、大森FCに入りました。入会前に練習参加をしたところ、子どもがすぐに「このクラブに入りたい!」と言ったことがきっかけです。練習参加で緊張していたところ、周りの子が「どこから来たの?」「名前は?」などと聞いてくれて、すぐに仲間の輪に入れてくれたことがうれしかったようです。西川さんうちの子は小学3年生の4月に入りました。いくつかのクラブに練習参加したのですが、子どもが「このクラブがいい!」と即答でした。練習参加の後に、みんなで鬼ごっこをしたのが楽しかったそうです。私としても、子どもがすぐに打ち解けて、コーチもすごく良い雰囲気で鬼ごっこを見守っていたので、良さそうなクラブだなと思いました。小島代表大森FCは、以前からたくさんの子が練習参加に来てくれるクラブです。そのため、新しい子が来たときに「名前、なんて言うの?」といったように、話しかけることが伝統になっています。みんな、その経験を経てクラブに入っているので、自然とそうなっていくんですよね。コーチがそうしろと言っているわけではなく、みんなが仲間として受け入れる空間があります。それが自己肯定感の高さにつながるところはあるのかもしれません。練習参加した子が「練習後の鬼ごっこが楽しかった」と言ってくれていましたが、それも自然に発生するもので、サッカーのときもあればバスケットをすることもあります。練習が終わった後に、みんなで楽しく遊ぶのは、友達になれる時間なので、コーチは口を出さずに見守っています。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは■大森FCに入って、子どもが変わった、成長したところは?本田さん試合中に声を出すことと、自分のことは自分でするようになってきました。うちの子の学区では、小学4年生から宿泊学習をするのですが、大森FCでは頻繁に合宿があるので、荷物の準備を自分でしたり、わからないことがあれば先生やコーチに聞くことが、自分からできるようになってきました。大森FCに入るまでは、困ったことがあっても恥ずかしくて大人に聞くことができなくて、気づいてもらうのを待つことが多かったのですが、困ったことがあったら、自分から主張して、コーチなり誰かに助けてもらうことができるようになりました。西川さん大森FCのコーチは、子どもを子ども扱いしないところがあります。当初、うちの子はそれを怖いと感じていました。保育園や学校の先生は、子どもを子ども扱いして、優しく接してくれることが多かったんです。大森FCに入って、子どもを子ども扱いせず、対等に扱ってくれることに、最初は戸惑っていました。「コーチが怖い」って。私としては、「どこが怖いの?」みたいな感じだったのですが(笑)。それが、徐々に「コーチは面白い」に変わってきました。いままでは優しい先生と接することが多くて、大森のコーチに対して身構えてしまったところがあったのですが、いまはどの学年のコーチとも楽しそうに接しています。トップチームの選手たちとも絡むことがあり、あるとき「トップチームの選手にジュースをおごってもらっちゃった」と、うれしそうに話していました。同世代だけでなく、幅広い世代の人たちと接する機会が多いことで、コミュニケーション能力が上がってきたと感じます。小島代表色々な大人と接することで、感性が磨かれることはあると思います。なので、なるべく同じコーチが連続して指導をしないようにしていて、いろんなコーチのいろんなアプローチの仕方を知ってほしいです。たとえば一人のコーチと合わないときは、私にでもいいし、他のコーチでも、ユースの監督でもいいので、誰かに相談できる環境があることが大事だと思っています。海外のビッグクラブには、食堂のおじさんや掃除のおばさんなど、気軽に相談できる人が身近にいます。大森FCでも、相談しやすい人をみつけてほしいと思っています。■自己肯定感の重要性について感じること西川さん自己肯定感とは、自分を自分で受けられることだと思います。自分のことを自分で認めることができないと、自分と違う人に対してアレルギーを持ってしまいますよね。自分を理解していると、自分と違いがある人に対しても、受け入れられるようになるのかなと思います。本田さん自己肯定感が強くないと、心の悩みが増えてくるのではないかと感じます。否定されることが多い環境だと、私なんてどうせ......、という考え方になってしまいがちです。自己肯定感があると、困難にぶつかったときのベースになるというか、自分を支えてくれる根本の自信になると思います。小島代表大森FCはサッカークラブですが、売り物にしているのは、生きがいや成長です。それは全スタッフと共有していて、子どもたちはサッカーが好きで上手くなりたいと思っています。サッカーはミスのスポーツなので、失敗するのは当たり前。大事なのは、その失敗を受け入れて、どう成長していくかです。そのプロセスがサッカーには詰まっていて、コーチたちもチャレンジを奨励するような接し方をしています。その繰り返しが、自己肯定感につながっていくのではないでしょうか。■生きがいと自己肯定感写真提供:大森FC大森FCの小島代表、保護者のみなさんに話をうかがっていると、「子どもを一人の人間として認め」「チャレンジをうながして、失敗しても良い」という雰囲気を作ることで、伸び伸びとサッカーに取り組み、その結果、成長していくというプロセスを感じました。小島代表は「サッカーを通じて、生きがいを与えたい」と言っていましたが、生きがいを感じることと自己肯定感を高めることは、とても密接な関係にあるのではないでしょうか。次回の記事では、自己肯定感をなくさないために、子どもたちと接する上で心がけていることについて紹介します。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2023年04月11日サイドバックを活かす攻撃が特徴のチーム。3-2-2のフォーメーションを使っているが、U-10世代への指導が難しい。というご相談をいただきました。2トップ、中盤のポジショニングの指導に悩んでいるとのことですが、今回の池上さんの回答は......。今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、小学生年代で特定のチーム戦術を教え込みすぎる弊害なども含め、指導のアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<人数はいるけどGKやりたい子がいない、上手く褒めて1人を固定にするか複数人で回すかどちらが良いか教えて<お父さんコーチからの質問>はじめまして。子どものチームで保護者コーチをしています。指導カテゴリーはU-10~です。ウチのチームは3-2-2というフォーメーションを使っています。サイドバックを活かす攻撃が特徴で、ツートップはなるべく広がらず真ん中で近い距離に、というのが基本です。ですが、ツートップ、二枚の中盤のポジショニングがなかなか難しいです。このフォーメーションの場合、どのようなことから教えていくのが良いと思いますか?<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。10歳以上なので4年生でしょうか。ご相談に書かれているように「サイドバックを生かした攻撃でツートップはなるべく広がらず真ん中で近い距離にいなさい」と指示してしまうのは、少し早すぎる気がします。■小学生年代は特定のフォーメーションに特化するより、どんなサッカーにも対応できるベースを作る時期プロや大学生のチームならば、戦術はあって当然でしょう。しかしながら、わずか10歳の子どもはどんな選手に成長するのか、キャリアを積んでどんなチームに行くのかも私たちに予測はできません。したがって、私たちが行う育成は、どんなサッカーにも対応できるよう一人ひとりのサッカーのベース作りをしなくてはいけません。ドイツなどサッカー先進国と言われる欧州の子どもたちは、小さいころからサッカーの原理原則を学ばせます。トライアングル、数的優位といったサッカーの成り立ち。どんなふうにパスをつなげて点を取るか。どんなふうに守って失点を防ぐか。そういったことを学ぶために、欧州では10歳ぐらいまでは5人、もしくは7人制で試合をします。そこにフォーメーションが重要だという考えはありません。そう考えるとご相談者様のチームは、子どもがもう少し自由に自分の意志で動きを覚えられるような仕組みを考えたほうがよさそうです。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■スペースの使い方など「相手守備が困ること」を実感させる例えば、このように教えたらどうなるでしょうか。「広がると自分たちが使えるスペースがたくさんできて、パスをつなぎやすくなるね」あるいは、「広がって動けば相手は守りにくくなるね」と。そうすると、トップが広がらないというポジショニングでは「相手は守りやすい」という状況になります。自分たちが広がることによって相手守備が困ることを実感してほしいのです。しかし、ご相談者様のチームは恐らくスピードのあるサイドバックがドリブルで攻め上がる際、2トップが広がっていると邪魔になる。そのため真ん中に一緒に立っていなさいという指示になるのかもしれません。そうなると、真ん中にいるトップの選手にボールが入ったとき、もう一人のフォワードが近くにいれば相手ディフェンスも守りやすいので、選手は大変だと思います。対象が小学生ではなく、せめて高校生など大人に近い年代ならば「前のふたりで相手を崩せるからあまり広がらないほうがいいね」と指示を出せます。そのような選手の特徴を生かすことも考えられます。■高学年になって周囲のサッカー認知度が高まると、SBも今のように抜けなくなるただし、何度も言うようですが、小学生にこのような限定的な動きを教え込むことはあまり賛成できません。足の速い子を前に置いて、裏に抜けて点を取る。それができたら違うことに移るべきです。ずっと同じプレーをやらせていてはその子のテクニックは上がりません。サイドバックの子も同じです。ドリブルがうまい子がボールをもらってサイドから自分でドリブルをする。3~4年生くらいまでは通用しても、高学年になって他の選手たちのスピードや体格、サッカーの認知が上がってくると、その途端に抜けなくなります。そこでワンツーパスを使うとか、フィードするパスをして組み立てるといったことができるようにしてほしいのです。そのためにはきちんと土台をつくらなくてはなりません。■「3人目」の動き、数的優位を意識させるトレーニングをすることそれをつくるには、低学年のころから2対1などの数的優位をどう使うか。意識できるようトレーニングを積まなくてはいけません。試合でもそれを意識させてください。両サイドバックが少し高い位置を取って、真ん中に中盤の選手がいる。常にダイヤモンドの形をつくるよう心掛けてもらいます。中盤の上にはトップがいてまた別のダイヤモンドをつくれます。幅と深さ、トライアングル。ボールを持ったときに誰と誰を見たらいいの?場面によってトライアングルができることを意識して、何を見たらいいのかを学ばせてください。そういった学びを小学生の間にしてもらいたいのです。ドイツに「フニーニョ」(※フニーニョを紹介した記事に飛びます)という3対3のゲームがあります。概ね縦25~30メートル、横20~25メートルのフィールドで、攻撃方向にそれぞれ2つずつ、計4つのゴールを置いて3対3を行います。自分たちが攻めるゴールが2つあるので、トライアングルの「3人目」を意識しやすくなります。つまり、視野が広がる。視野の確保とサッカーの成り立ちを体得するのにうってつけの方法です。今の時代、ネットで探せばやり方や動画をたくさん観ることができます。ぜひやってみてください。■チーム戦術が先に来ると、そのチームでしか使えない選手になる(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)これまでブンデスリーガのクラブや、意識の高いジュニア年代の指導者がトレーニングなどに導入していましたが、ドイツサッカー連盟はこれを10歳以下のカテゴリーすべての試合で行う方向で進めています。チーム戦術みたいなことが先に来てしまうと、そのチームでしか使えない選手になってしまいます。将来を考えてあげると、何でもできるようにしておく必要がある。ぜひそのことをあらためて考えていただければと思います。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2023年03月31日消極的で足元にボールが来ても蹴らない息子。色々言われるのも嫌なようで助言しようにも話を聞かない。これから成長する姿に期待したいが、チームメイトがどんどん上達していく中、親が焦ってしまう。どうしたらいい?というお悩みをいただきました。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、子どものサッカーに関わる保護者としてどうあればいいか、これまでの知見をもとに、5つのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<最近練習に身が入らない息子、ライバルに差をつけられ親が焦っています問題<サッカーパパからのご相談>はじめまして。サッカーを始めて10か月になる小学1年の息子のことで相談です。試合(練習も本番も)や1対1などの練習でも全く積極的に動けず、自分の足元にボールが来て蹴ればゴールに入るような場面でもシュートを決めようとする姿勢もなく、立ち止まってしまいます。人と争うようなことが嫌いで、試合中でも相手にボールを譲ってしまいます。助言をしようにも色々言われるのも嫌なようで話を聞いてくれません。親としては、なんで蹴らないのかな?どうして積極的に動かないのかな?と考えると悲しくなります。チームメートがどんどん上達していく中、焦ってしまいます。これから成長する姿に期待したいのですが......。何かアドバイスがあればよろしくお願いします。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。小学1年生では体格も、物事への理解度もばらつきがありさまざまです。よって、出来ないことが多いと親も落ち込みますね。私にも経験があります。■試合中、我が子のシャツをインしに行く親の心理以前、少年サッカー3年生の大会で、試合のハーフタイムに子どもたちがベンチ前でコーチの前で半円になる状態で話を聞いていたときのことです。ひとりのお母さんが、自分の息子に駆け寄って背後からサッカーパンツにシャツをインしました。そこにいた私たち他の親は「そこは子どもの世界だよ。(親が)世話を焼かないほうがいいのでは?」と話しました。ところが、そのお母さんは「だって、うちの子だけ(シャツが)出てたんですもの。みっともないし、恥ずかしい。皆さんにも迷惑じゃないですか」と言うのです。行動の背景には「ちゃんとしてほしい」「わが子が他者によく見られたい」という虚栄心が見え隠れし、痛々しく感じられました。ほかにもシャツが入ってない子どもはいました。邪魔と感じれば自分で入れればいいのです。今回ご相談くださったお母さんの精神状態は、まさにこのシャツをインしたくてたまらない女性と同じような気がします。いわく「ゴールできそうな場面でシュートを決めようとする姿勢が見られない」「相手にボールを譲ってしまう」と、わが子が「できないこと」に焦ってしまい、居ても立ってもいられません。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■子どもは親にがっかりされると余計に自信を失うお母さんの子育て全般は相談文だけではわかりませんが、書かれてあることだけで見ると「自分の理想の姿ではない息子」にイライラしているように見えます。無論、ゴールをバンバン決めて、相手のボールを強引に奪って見せれば、お母さんは誇らしい。そうではないことに、嘆き悲しんでいるように見えます。子どもは、自分のことを一番わかっていて、最も身近な親からがっかりされてしまうと、余計に自信を失います。この「自信」は「自己肯定感」といって、「何があっても自分は大丈夫」「僕は今の僕でいい」「今の僕をお母さんは大好きなのだ」といった自分を肯定する力です。この自己肯定感はエネルギーの素。子どもという小さな車がグングン前に進むためのエンジンなのです。つまり、親が「うちの子はあれもできない。これをやろうとしない」と嘆き悲しむのは、車からガソリンを抜いているようなものです。その一方で、息子さんのことを「人と争うようなことが嫌い」と書かれているように、お母さんは息子さんの性格を知っています。であれば、そこを息子さんが自分で乗り越えるのを気長に待っていればいいのです。■子どもは変わっていくもの!サッカーの面白さに目覚めると積極的になることも息子さんはサッカーが好きで自分なりに頑張ろうとしているのだろうと思います。人を押しのけてまでぐいぐい行くことができないのかもしれません。このような子どもは珍しくありません。うちの息子も2年生くらいまでは常に団子サッカーの最後尾を走っていました。試合をすれば自ら守備側に回り、前に出ようとしませんでした。そんな性格なのです。しかしながら、だんだんサッカーがわかって来て、サッカーの面白さに目覚めると、自分からゴールに迫ったり、体をぶつけてボールを獲りに行くようになりました。サッカーが「そういうもの」であり、それが日常なので抵抗がなくなるわけです。息子さんはまだ7歳。今はまだ「お目覚めの前」なだけです。2、3年、4年生くらいになったら、例えばコーチの方から「あんなに怖がってたのにすごくアグレッシブにプレーするようになったね」と言われるようになります。どんなコーチの方に聞いても「子どもは変わっていくものだ」と皆さんおっしゃいます。■お母さんの気持ちが楽になる5つのアドバイス(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)最後に、お母さんへのアドバイスを五つにまとめますね。1)子どもには自己肯定感が大切。親が否定したり、他人と比べるなどしていないか注意しましょう。2)自分が子どもに対して辛くなるとき、その感情が自分の虚栄心からくるものではないかと自分の内面や言動を振り返りましょう。3)出来ないことがあるのは、伸びしろがあるということ。気長に待ちましょう。それでも気になるなら、子どものサッカーと距離を置きましょう。子どもの応援に行かなきゃ!などと強制するママ友は、自分の子どもがいつも試合に出ている人が多いです。やんわりと「自分の時間も持ちたいので」と断ればよいのです。4)子どもを伸ばす親の多くは、泰然自若としています。ゆったり構えて、自分の趣味や仕事にまい進する時間を大事にしましょう。5)「ありのまま」を受け止められないのは、あなたが悪いわけではありません。私たちの親の世代、日本の子育てが子どもを怒って発奮させ、心配して干渉することで道を誤らないよう管理する子育て観が多数でした。けれど「私は違う子育てをするぞ!」と考えましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年03月29日サッカーをする子を持つ保護者の皆さんが「こんな記事があったらいいのに」と思っているのはどんなことでしょうか。今回は、関東で活動するとあるチームにお伺いして、保護者の皆さんと屋外企画会議ならぬ「サカイクにあったらいいなと思う記事」について親目線のリアルなアイデアをいただく機会を設けました。後編では、主に高学年になると出てくる悩みに関するご意見をいただきました。みなさんも「わかる」と共感いただける内容になっているかと思いますので、ご覧ください。<<前編:サッカーをする子の保護者たちに聞いた「親向けのこんな記事が欲しい」その内容は?サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■その1.ほかのスポーツとの両立、どうする?サッカーと水泳、サッカーと野球、など複数のスポーツをしているお子さんも多いですよね。学年が上がると練習日が増えたり、公式戦が始まったります。そうすると、日程が重なる日が出てきて、どちらかを欠席しなければならなくなります。今回お話を聞いた保護者の中には、お子さんが野球とサッカーをしている方がおり、試合の日程が重なったときは、本人がどちらに行くか決めているとのことでしたが、「フォーメーション変更が発生したり、チームに負担をかけて心苦しい」と明かしてくれました。子どももどちらのスポーツも好きだし、親としても色々なスポーツを経験させたい。だけど、高学年になるとどうしても何か一つに絞らなければならない状況になるので、上手く両立している子がどんなふうにやっているか知りたい、との声をいただきました。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは■その2.中学以降の進路部活にするか、クラブチームにするかお子さんが高学年になると、中学以降の進路を意識しだす家庭も多いのでは。サッカーを続けるのなら中学校の部活動か、学校外のクラブチームに所属するか、クラブチームに行くならセレクションはいつ頃開催されるのか、セレクション情報はどこで得るのか、などいろんなことが気になりだす時期ですよね。お子さんが中学以降もサッカーをするかどうか、というのもありますが、サッカーを続ける場合にどの進路が本人にとって良いのか、選択肢を示してあげるために知っておきたいと考える保護者も多いかと思います。そういった事情から、他のご家庭はいつぐらいから考え出すのか知りたい、大体のスケジュールやすでに経験した保護者の体験談があると助かる、という保護者視点のリアルな提案でした。■その3.写真、動画の撮り方高学年になると、卒団アルバムづくりを意識する時期でもあるので、写真や動画の撮り方を教えてくれると助かる、という声もありました。プロのクラブと違って少年サッカーで専属のカメラマンがいることは無いので、親御さんたちが試合ごとに写真や動画を撮りためて、卒団アルバムやDVDを製作するチームは多いですよね。写真や動画撮影が上手でいつも率先して引き受けてくれる方がいればいいですが、そんな状況は中々ありません。最近はスマートフォンのカメラの性能も高くなっているので、保護者がスマートフォンで撮影しているチームも多いと思いますが、日常生活を写すのと違ってサッカーをしている子どもたちの躍動感や表情を上手く撮るのは難しいものです。なので、素人でも上手に撮影できる方法を伝授してくれるコンテンツがあると保護者としてありがたい、という声をいただきました。いかがでしたでしょうか。後半では主に高学年になると意識する悩みに即したアイデアをいただきました。いただいたアイデアをもとに、保護者の皆さんのためのコンテンツを作成していきますのでお楽しみに。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2023年03月27日チームの人数はそこそこいるけど、GKをやりたい子がいない。試合では仕方なく2,3人に順番でGKをしてもらっているが、どうしたらいい?褒め続けて固定のGKを作るべきか、今のように順番で回すべきか......。と悩むコーチからのご相談をいただきました。同じような悩みを抱えるチームもあるのでは?今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ご自身が現在指導している現場の例や、元日本代表監督オシムさんのエピソードを交えてアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<技術や熱量の差で3学年ミックスの縦割りグループ分け、学年ミックスで気を付けないといけないことは?<お父さんコーチからの質問>こんにちは。ほとんど少年団のような街クラブで3年生を教えています。隣の市と隣接するエリアなので、市をまたいで入団してくる子も多く、人数はそこそこいるのですがキーパーをやりたい子が同学年にいないため、試合では仕方なく、2、3人を順番にキーパーとして出場させています。うまく褒め続けて固定キーパーを作るべきか、今までのように順番にやっていくべきか、良いキーパーを育成するためにはどちらが良いのでしょうか?<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。例えばドイツには、全員がゴールキーパーを経験できるシュートゲームにした練習があります。攻撃をしていてボールを取られると、その子がキーパーをします。シュートを止められても同じ。そうするとみんなにチャンスが出てきます。楽しくやれるシュートゲームなので、キーパーは嫌だという空気感がなくなってくる設定です。このように、私は育て方ひとつで変えられると考えます。■全員に全部のポジションを経験させる大人がGKを押し付けないこと私は小中学生のチームを持っていますが、ポジションを固定せずに毎回替えていきます。フィールドのポジションもみんなが毎試合替わります。そうすると、子どもたちから「僕はキーパーはやりたくない」といった苦情が出ません。みんなが全部のポジションを経験するのが当たり前の世界になっているからです。しかも、そのようにしていると、今度は反対に「もう一度キーパーをやりたい」という子どもが出てきます。そこで私が「この子、もう1回やりたいって言ってるけど、みんなどうかな?」と尋ねます。それでみんながいいよと言えば、じゃあ2回目やってみようかとなります。ただし、2回目まで。そのままひとりが続けることはありません。このように、本当に自分からキーパーをやりたいという意欲を見つけてあげたほうがよいでしょう。くじ引きで外れた子がキーパーをやるとか、大人が「悪いけどキーパーやってくれないか」などと誰かに押し付けたりしないほうがいいのです。キーパー問題だけが理由ではありませんが、子どものポジションを固定しないことが重要です。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■芝のグラウンドで試合するときがチャンス!土では転ぶと痛いことを大人が考慮しよう加えて、子どもたちがサッカーをする環境にも影響されます。近頃はどの都道府県も人工芝のグランドが増えています。人工芝で試合をするときがひとつのチャンスです。セービングして転んでも痛くないし、服も汚れない。そういう機会にウォーミングアップで全員ゴールキーパーの練習をすると良いでしょう。日本はほとんどが土のグラウンドで練習するので、子どもたちは珍しくて喜んでやると思います。ジェフ時代は、天然芝のトップチームの練習場で小学生の大会をたくさんやっていました。オシムさんが全く問題ないとOKしてくださるので開催できました。そのときはゴールキーパーはいつでも交代してOKにしていました。キーパーをする子はとても楽しそうでした。そんな姿を見ていると、海外はまさしく芝生が日常なので、優秀なキーパーが育つのかなと感じました。大人は、子どもたちが転ぶと痛い土の上でキーパーをしなくてはいけないことをもう少し考慮して欲しいと思います。以前、ある場所で行われたサッカークリニックに子どもたちを連れて行ったときのことです。暑い日なので子どもたちは半袖でした。グランドも土です。でも、クリニックをやる人はそこでセービングの練習をさせました。ケガだらけになることを予測できないのです。■GKにも足元の技術がなくてはいけない日本はGK指導そのものが遅れているゴールキーパーの育成を考えるとき、日本の指導者はどうもキャッチングのことばかりに気をとられている気がします。ボールをキャッチしたら、次はどこに投げたほうがいいとか、どう処理するか。攻撃するときはどこに渡したらいいのか。もしくは、状況によって自分はどこにポジションをとればいいのか。そのようなことに目を向けてほしいのです。以前から、日本はキーパーの育成が他国より遅れていると指摘されています。その要因のひとつが指導そのものが遅れていると言えます。また、キーパー練習と言ってキーパーとフィールドの選手の練習を分けるチームがありますが、小学生のうちは一緒の練習をしてもらいましょう。現代サッカーは、みなさんW杯を観てお気づきかと思いますが、キーパーにも足元の技術がなくてはいけません。相手がいくらプレッシャーをかけてきても、フィールドの選手たちはそういう中で正確なパスが出せる。精度の高いキックができることが重要です。であれば、キーパーにその能力があれば、実はビルドアップするときに非常に有利だということです。■オシムさんが変えた「GKの理想像」(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)私がジェフで育成に携わっていたころ、オシムさんが監督に就任されました。当時からオシムさんは、キーパーもフィールドプレーヤーのような足元の技術とサッカーの認知が必要だと説いていました。当時のゴールキーパーやコーチたちは、キーパーの理想像みたいなものを一変させられたそうです。オシムさんが来てから、キーパーたちのウォーミングアップが変化しました。それまでキャッチングからスタートしていたのに、キックから始めるようになったのです。それをJリーグのいくつかのチームも真似をし始めました。ドイツ代表のノイヤーが誕生していない20年前のことです。小学生は全員がさまざまなポジションを経験する。足元のスキルを磨く。そのようなことを考慮して指導をしてください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2023年03月25日チームのエースと言われていたのに、最近練習に身が入らずもう一人のエースと差がついた感じがあって焦っている、というお父さん。今度サッカースクールに入れて、チーム移籍も考えている。本人はそこまでサッカーが好きでないのかとも思うが、本心は分からない。気楽な様子の息子を見ていると腹立たしいが、どうすればいい?というお悩みをいただきました。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、子どものサッカーに関わる保護者としてどうあればいいか、これまでの知見をもとにしたアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<仲間に意見する息子が悪者に。子ども同士のいさかいを何とかしたい問題<サッカーパパからのご相談>はじめまして。小学校三年生の息子が小学校のチームでサッカーをしています。一応、今のチームではエースと言われていたのですが、最近練習に全然身が入らずゲームばかりしているせいか、もう一人のエースのお子さんと差がついた感があって焦っています。今度スクールに入れる予定ですが、今のチームのコーチとも合わないようでよく怒られていますので隣の小学校のチームへ移籍を考えております。本人は隣の小学校のチームに行きたがっている様子ですが、妻は反対している状況です。私が焦っても仕方のないことだと思いますし、本人もそこまでサッカーが好きではないのかなと思っているのですが、息子の気楽な様子を見ていると腹立たしいです。このままスクールに入れてもよいものなのでしょうか?また、隣の小学校のチームに変わる必要があるのでしょうか?ちなみにそのチームは市内で二位と強いチームです。息子の本心も分かりません。つたない文で申し訳ございませんがご教示の程よろしくお願い致します。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。お父さんの心情が、さまざま綴られていますね。そのなかで私への質問は、スクールに入れることとチームを替わるという二つのことの是非が問われています。しかしながらお父さんにとって最も大きなこころの揺らぎは何でしょうか。「エースと言われている息子に期待をしているのに、もうひとりのエースの子と差がつき始めた」という事実。こちらではないでしょうか。以下、私のほうから三つアドバイスをさせてください。■「差がついて焦っている」のは、親のエゴによる感情秀でてない息子は愛せないのかまずひとつめ。お父さんは、エースの子とわが子を自分の中で比べる親としての自分を、どうお考えでしょうか?例えば、パートナー(妻)から、他の男性と年収や学歴、家事の時間やその能力、もしくは容姿などを比べられたらどう感じられますか?私は数々の親子を取材してきましたが、能力や成果を他の子どもと比べる親御さんで子育てがうまくいっている方はほぼいらっしゃいません。他の子どもと比べれば、そのことをたとえ口に出さなくても、子どもには伝わります。多くの人は「負けてるぞ。もっと頑張れ」と奮起させる材料になるとおっしゃいますが、それは間違っています。他の子どもと「差がついて焦っています」とありますが、そこには誰よりも秀でている子どもでいてほしいというエゴが見えます。エゴが強い親御さんは、子どもに任せられないので、子どもの気持ちを聴いたり、寄り添うことがあまり上手ではありません。そういったことをしない代わりに、評価ばかりしてしまいます。お父さんも「本人もそこまでサッカーが好きではない」「息子の気楽な様子を見ていると腹立たしい」と評価が目立ちます。そのエゴが強く出て、それを子どもが感じ取ってしまうと「サッカーが上手い自分しか愛してくれない」という結論になります。そうなると、親に愛してもらうためにサッカーを頑張ることになります。しかし、そのモチベーションでサッカーに取り組むのは限界があります。そして、年齢やレベルが上がってゆくにつれ壁を越えられなくなると、そういう子どもたちは「もう、サッカーはいいや」となります。親の理想でない自分に耐えられなくなる。苦しいのでサッカーをやめることしか道がなくなります。秀でていないありのままの息子を愛せないのではないか?苦しめているのではないか?そんなことを一度自問自答してみてください。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■すべて親がリードしてしまうとろくなことはないふたつめ。スクールに入れることも、チームを替わることも、その是非を尋ねられても私は答えられません。なぜスクールに入れたいのか?そもそも、息子さんはどんな理由でそのスクールに入りたいのか、もしくはそういった意志を確認していないのかも書かれていません。隣の小学校に移ることも同じです。息子さんが移りたい理由、お母さんが反対している理由もわからないので、申し訳ないのですが何とも言えなせん。ひとつ言えるのは、すべて親がリードしてしまうとろくなことはないということです。上述した「能力や成果を他の子どもと比べる親御さん」は、子どもへの過干渉が目立ちました。多くのことを「〇〇させたい」「〇〇をやらせたい」と、すべて親の決定なのです。子どもが成長するために、私たち親は子どもと一緒に良い環境を選びともに努力します。子どもが主語で「成長する」は自動詞ですね。ところが、「お父さんが子どもを移籍させる」「お父さんが子どもスクールに行かせる」というものになると、主語はお父さんで他動詞になります。■親が子どものサッカーに関わりすぎ本人の好きにさせてあげればいい(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)三つめ。子どもの意思を尊重してほしいと思います。隣の小学校が強くても、息子さんはそこに行きたがっている。しかも、コーチと合わずいつも怒られているとあります。なのに、なぜ移籍させてあげないのでしょうか。少年サッカーで子どもを怒ってばかりの指導者など、この時代はあり得ないと考えてください。隣の小学校のチームが良い指導であれば、子どもの好きなようにさせてあげればいいと思います。お母さんも移籍を反対しているとのことなので、両親ともに息子さんのサッカーに強くかかわり過ぎるようです。二人とも、もっと肩の力を抜いて「この子はどんな大人になるのかな?」と眺める気分で子育てをしましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年03月22日サッカーキャンプに行かせてみたいけど、うちの子でも大丈夫かな......、など、参加を迷っているご家庭や、勇気が出ないというお子さんのために、サカイクキャンプ参加者のエピソードを大公開。今回お話してくれたのは、すでに3回参加しているリョウヘイくん(小4)とお母さんです。リピートの理由や、繰り返しの参加で感じられたリョウヘイくんの変化をご紹介します。(取材・文:小林博子)サカイクキャンプでトレーニングに励むリョウヘイくん<<臆せずチャレンジできる雰囲気の中で自己効力感が大幅アップ!たった3日でサッカーの自信がついた理由■「楽しい」から参加したい/させてあげたい と親子で即答!小学4年生にして、すでに3回キャンプに参加しているリョウヘイくん。何度も参加する理由を聞くと「楽しかったから!」と即答でした。楽しかった理由は、友達ができたこと、サッカーの上達が自分でもよくわかったこと、普段の練習だけでは出会わなかったであろう他府県のサッカーが上手な子と一緒にサッカーができたこと、など、いくつでも挙げられる様子。たくさんの良い思い出が3回のキャンプに溢れているようです。とはいえ、楽しいだけでそう何度も参加させるのは躊躇してしまうという親御さんは多いはずです。そこで、実際のところはどうなのかをリョウヘイくんのお母さんに伺ってみたところ......「確かに楽しいようなので、まずは本人がまた行きたいと言うのであればできる限り行かせてあげたいと思っています。最終日に迎えに行ったときのいきいきとした表情を見ると、参加させてあげてよかったと毎回思います。今しかできない経験は貴重です。『楽しい』が最大の理由であることに、私たち親も賛成しています」と、目を細めて話してくれました。■親はついコスパを求めがちだが、大事なのは子どもの「楽しい」という心親としては、学びがなければ、上達がなければ......、など、ついコストパフォーマンス的なことをついつい考えてしまいがちですが、子ども時代の思い出という観点では「楽しかった」が大切であることに気付かされたお答えでした。コロナ禍で制限が多かったここ数年間の子どもの生活を考えても、「楽しい」を最優先に子どもの希望を叶えてあげたいと思う親心には共感できますよね。サカイクキャンプは、サッカーや日常生活のスキルが上がるキャンプです。そしてその土台は子どもたちが楽しくサッカーをし、寝食を共にしながら非日常体験ができるという、とにかく楽しい3日間であることは確かです。「楽しそう」「楽しかったからまた行きたい」それだけが参加理由でも、もちろんOKです。むしろそれが最も大切なことかもしれません。■リピーターだからこその経験や成長もキャンプの間、リョウヘイくんを見守ってきた柏瀬コーチによると、回を追うごとに周りの子どもたちへの接し方に変化が出ていたと言います。小3の冬だった初回の参加時、リョウヘイくんは不安そうな表情を浮かべるシーンも。それが、2回目には頼もしい顔で初参加の子たちに声をかけて場を和ませたり、3回目では練習時にチームをひっぱる声がけができるようになったそう。二人組になって行う練習や話し合いがあるときも、自分から「僕とやろう」と話しかけるなど、初回の不安そうな表情や態度からは想像できないほど頼もしくなりました。キャンプでは前向きな気持ちで過ごし、「プラスの声がけ(=ポジティブな声がけ)」の大切さについても子どもたちにしっかり伝えています。「5つのライフスキル」について座学で学ぶ時間のほか、サカイクサッカーノートへの記入や、練習時のコーチとの会話など、何度もそれについて考え、実践します。1回目の参加時に、リョウヘイくんがわからなかったことや不安だった経験があるからこそ、2回目以降に同じ立場になった参加者の気持ちがよくわかるのでしょう。繰り返し参加することで、身につけたコミュニケーションやリーダーシップのスキル、相手を思いやる心を発揮するシーンが増えていきました。そしてそれを見守り評価してくれるコーチたちがいることで、より自信につながるはずです。自分で考えて行動する力がつくサカイクサッカーキャンプとは>>■参加するごとに我が子が凛々しくなるのを感じるサカイクキャンプでトレーニングに励むリョウヘイくんその変化はお母さんも感じていて、「どんどん凛々しくなる様子が顕著です」と話します。それはサッカーでも家庭でも発揮している変化で、「自分のことは自分でやる」「言葉にして思いを伝える」といったキャンプで学んだことを意識して過ごせている様子なのだとか。「前向きな気持ちを大切にして、それを表現するスキルを身につけたリピーターの子どもがいると、チームの雰囲気に良い影響があり、周りの子どもたちも前向きになるという、プラスのリレーが生じます。サカイクキャンプでそういう子どもが増えることはとても嬉しいし、サッカーだけでなく子どもたちの将来にも役に立ててもらえると思えることにやりがいを感じます」と柏瀬コーチ。リョウヘイ君が3回のキャンプで身につけたそんなスキルは、サッカーや日常生活に、そしてこれから大人になって社会に出ても、きっと強みになるはずです。■「考えるサッカー」 に共感。少しずつそのフレーズを体現できるようにリョウヘイくんが最初にサカイクキャンプに参加するきっかけを与えてくれたのはお父さんでした。お母さんもサカイクが提唱する「考えるサッカー」に共感し、体験してほしいとの思いからだったそうです。キャンプでは、サカイクサッカーノートを使って、サッカーをはじめさまざまなことについて考える時間が設けられています。コーチたちは、子どもが思っていたことや感じていたことを自分の言葉にするためのサポートを行い、子どもたちはそれを自分で書くことで思いや考えを言語化するという体験をし、思いや気持ちを認識していきます。家庭でお母さんが「凛々しくなった」と思えるのは、発する言葉や意識の面から、その「言語化」ができている様子が垣間見られるからだそう。思考が深くなり、より考えることができるようになっているのでは、と成長を感じています。ご両親が共感してくれている「考えるサッカー」に必要なノウハウも、キャンプで無理なく楽しく身につけていることに「参加させた意味がある」と話してくれました。最後にリョウヘイ君は「次も参加したい」とにっこり。彼にとって、よほど楽しいキャンプなのでしょう。「参加させてあげたいけれどうちの子は大丈夫かしら」と心配な親御さんもいらっしゃると思いますが、不安を感じている初回参加者をあたたかく迎え入れてくれるリョウヘイ君のようなリピーターキッズもたくさんいるので安心してお子さんを預けてみてはいかがでしょうか。3日間を過ごして帰ってくる頃には、とびっきりの笑顔を見せてくれるはずです。自分で考えて行動する力がつくサカイクサッカーキャンプとは>>
2023年03月16日「自分で考えるサッカーを子どもたちに」をテーマに、子どもたちの自立をサポートする保護者のための情報を発信する「サカイク」が、保護者セミナーを開催。サッカーをする子どもを伸ばしたい、今の時代の子育てに情報をアップデートしたい保護者の皆さんが参加しました。質疑応答では多くの保護者の方から、子どものために家庭でできることは何?過干渉・過保護にならないようにサポート方法を知りたいという声をお寄せいただきました。その様子の一部をお伝えします。(構成・文:前田陽子)サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■親は子どもが選択、決断できる環境作りを今回講師を務めたのは、サカイクキャプのヘッドコーチを務める菊地健太コーチ。シンキングサッカースクールのコーチとして、週に300人を超える子どもたちにサッカーを教えています。また自身も4児の父でもあり、親として心がけていることも教えてくださいました。申し込みの際にいただいていた質問で多かったのが、「主体性と放置の境目がわからない」というもの。自分でできるようになってほしいと思う反面、何もしないことは放置になってしまわないかというお悩みです。それに対して菊地コーチからのアドバイスは、「子どもを伸ばすために親ができることは、子どもが選択、決断できる環境を作ることが大切」というもの。5年生だからここまでやれるはず、できなければならないというハードルを設けず、子ども一人ひとりの成長に合わせて選択の種類や決断の種類を親が見極めること。そして、日頃の生活の中で、親が一方的に決めて子どもにやらせるのではなく、小さなことから対話をして子ども自身が決めていくことが大事だそう。小さなことでも少しずつ自分で決めることで、自分で決断ができるようになり主体性が育まれてくるとコーチは言います。例えば「明日の試合は8時集合」ということだけを子どもに伝えます。そして「何時に家を出たらいいかな」とか、「送って行く?」「朝ごはんは何時に食べる?」など、子どもに問いかけをして決めさせるのです。もちろん、子どもなので寝坊をしたり、時間を守れなかったりという失敗はあります。失敗から学ぶことは多いので、そこは気にせずまずは、選択する環境作りを意識することが大事だと語ります。■子どもが決めたことを否定すると、思考停止してしまうそして、子どもが決めたことは尊重してあげることが大切なポイントだそうです。サッカー中でも生活面でもそうですが、子どもたちは意図をもって行動しています。それを否定してしまうと、考えることをやめてしまったり、「別に」「ふつう」という言葉だけしか返って来ないようになったりしてしまうのだそう。子どもの考えたことを「すばらしいね」「やってみよう」と尊重することで、約束を守ろうとするようになるそうです。日常生活でも、親がやった方がスムーズな場面はたくさんあります。けれど、それをしてしまうと指示を待つ人になってしまう可能性も。そんな時こそ「手を出さずに目をかけるのです」とコーチは言います。親は困っていること自体を解決するのではなく、困っていることを理解した上で遠くから目をかけるのが大事なのだそう。見守るということは、決して放置や放任ではありません。子どもは悩んでいる時間の中で考える力が付いてきて、悩みを解決できるようになり、より前向きに取り組めるようになるのです。■子どもがサッカーを楽しむことを最優先に考えよう親が子どものためにできることとして、菊地コーチから「サカイク10か条」の解説がありました。第1条の「子どもがサッカーを楽しむことを最優先に考えること」は菊地コーチもご自身のお子さんと接する際に一番気を付けているそう。子どもの試合を見に行くとつい過剰な応援やアドバイスというより押し付けるような指示出しをしたくなりますが、それは絶対にNGです。子どもが発言したらイヤだなと感じることは、口にしないこと、と断言します。サッカーをしている子どもの考えやチャレンジを尊重して見守ることが何よりも大切だからです。子どもの力を信じることは、時に親にとってガマンが必要になります。子どもの忘れ物に「親は何をしているんだ」と言われることもあるかもしれません。ですが、失敗から学ぶことはたくさんあります。菊地コーチのお宅でも「準備はできているの?」「できているよ」と試合に行った息子さんが、試合用とは別のソックスを持って行って、試合に出られないという状況になったことがあったそうです。この経験が元になり、息子さんは忘れ物をしなくなったと同時に、いろいろなことを自分で解決できるようになってきたとのこと。親が先回りすることで、子どもの"失敗"という貴重な体験を奪ってしまう場面は多々あります。親が手を出さないことは放置ではないので、失敗という経験をさせていきましょうと、コーチの経験からの話もありました。■子どもとの時間は思いの外短い。親子の楽しい時間を大切に質疑応答では次のようなやりとりがありました。一部を紹介いたします。<忘れ物をしても堪えない、それでも見守る?>質問:小3の子どもが、忘れ物などをしても本人は全く堪えていません。それでも見守るべきでしょうか回答:忘れ物をしても、誰かに貸してもらえたりして、失敗を痛感していないんだと思います。例えば、寝坊をしていても起こさない。ユニフォームなどを忘れても「貸さないでください」とコーチや周囲の人に事前にお願いをしておいて、試合に出られない、チームのみんなに迷惑をかけてしまうという経験をさせるのがいいかもしれません。チームの方に迷惑をかけることにもなるので、事前にお話しをしておいてでも、そういう苦い経験を早いうちにできると、この先大きなトラブルにならないと思います。周囲に協力いただいて大きな失敗を経験させてみてください。<応援が過剰な熱い保護者、どうすればいい?>質問:試合中に過剰な応援をする親がいるのですが、放っておいた方が良いですか回答:プレイをしている子どもに影響があるなら、改善が必要です。応援が心地よくて子どもたちがパフォーマンスを発揮できればいいですが、試合中にピッチサイドの親御さんにチラチラと顔が行く、声掛けに萎縮して子どもの考えているプレイができないようであれば、チームで応援の仕方について、話し合っていただきたいですね。<自ら率先して動かない>質問:小3の子が、自分から率先して行動ができません。どうしたらいいでしょうか回答:サカイクキャンプでは「リーダーシップ」というアプローチをしています。自分が前に立って積極的にチャレンジできる子は、たくさんの経験をしているように感じます。経験値を元に自信が付き、トライできるようになります。まずはいろいろな経験をすることが必要。またお皿を運んでくれたというような些細なことでも見逃さず「こういうことも気がついてできるんだね」と伝えてあげると、自分の行動に自信が持てて、さまざまなことを率先して行動ができるようになっていきます。菊地コーチからは「子どもと一緒の時間はあっという間。思ったより短く感じます。だから子どものことを第一に考えて、親御さん自身もサッカーにかかわるのを楽しみながら、悔いのない時間を過ごしてほしいなと思います」と皆さんへのアドバイスもありました。子どもがサッカーを楽しく取り組めるように、親としての関わり方もアップデートして有意義な日々を過ごしていきましょう。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2023年03月15日文武両道を目指して「スポーツを頑張る子どもたちのために」という想いを胸に、中高生の「自学力」を身につけるための学習サポートを行う「明誠塾アカトレ」。サッカーを始め、スポーツを頑張る子どもたちの「学習サポート」をするために「アカトレ(アカデミックトレーニング)」を立ち上げたのが、現役阪大生の丹羽楓樹さんと植松耀平さんです。記事後編では、アカトレが大事にしている3つのことを通して、「意味のある勉強の仕方」を紹介します。(取材・文鈴木智之) アカトレを運営する塾長の丹羽さん、代表の植松さんは高校時代まで陸上、野球と多くの時間をスポーツに注いできました。そんな中で植松さんは現役で、丹羽さんは1浪して大阪大学に進学したのは、前回の記事で紹介したとおりです。アカトレを運営しながら、大阪大学で勉強を続ける二人が大切にしていること。それが「勉強は時間ではなく回数」「何のためにこの勉強をするのかを考える」「目標から逆算する力」の3つです。これはスポーツにも通じるところがあり、サッカーをする子どもたちにも、受け入れやすい考え方なのではないでしょうか。■1つ目の「勉強は時間ではなく回数」丹羽さんは次のように説明します。「アカトレでは『1日25分学習』を推奨しています。時間ではなく回数。これが代表の植松が作った考え方です。なので、週に1回4時間勉強をしても、僕たちは良しとしません。それよりも1日25分の勉強を毎日する。サッカーの練習が忙しくても、1日に25分なら時間は取れると思います」アカトレはオンライン形式なので、場所にとらわれずに勉強することができます。「練習前後の車や電車の中でもいいですし、寝る前にベッドに寝転びながら、僕たちが作った『A-TUBE』の動画を見てモチベーションを高めたり、単語帳を見るのも勉強です。何でもいいので、とにかく毎日25分やってみようというところからスタートしています」■2つ目の「何のために、この勉強をするのかを考えること」いわゆる目的意識です。勉強もスポーツも、ただ漠然と与えられたことをこなしていても力はつきません。「アカトレは高校入試や大学受験を目的とするのではなく、自ら学ぶ力(自学力)を育んでほしいと思っています。たとえばサッカーの強豪校に進学したとして、毎日2時間の勉強時間を作るのは難しいでしょう。サッカーも同じで、自主練をする時間は限られます。その中で、いかにして効率よく学習し、上達するかを考えることが大切だと思っています」目的意識を持つことで、いますべきことに意識が向き、それに対するフィードバックが生まれます。それを繰り返すことで、成長へとつながっていきます。■3つ目のポイントは「目標からの逆算」丹羽さんは「スポーツをしている子たちは、目標を立てることが日常になっているので、理解しやすいのではないでしょうか」と言います。 「全国大会に出たい、レギュラーになりたいなど、スポーツをしている人は、何かしらの目標を立てると思います。目標を立てて終わりではなく、目標から現在地を逆算して、『達成するために、1ヶ月後にはどうなっていればいいだろう』といった視点を持つことが大切だと教えています」アカトレでは目標設定の授業もあるそうで、「全国大会に出場するために、中間目標を立てたり、レギュラーになるために、レギュラーの選手と自分との違いを考えて、どうすればいいかを考えるといったアドバイスをしています」と話します。アカトレで教えているのは「スポーツも勉強も頭を使ってやろう」ということ。それが文武両道につながっていきます。頭を使って取り組むこと、目標を立てて、達成するためのプロセスを考えることなどは、社会に出てからも大いに役立つ能力です。■勉強が好きになるきっかけづくり丹羽さんたちがアカトレを立ち上げた背景には、「学校の成績が低いと、スポーツ目的で行きたい高校があったとしても、行けない可能性がある」という現実があります。いくらサッカーが上手くても、学校の成績が低い子は入学できないといったケースはたくさんあります。「僕もそうでしたが、スポーツしかして来なかった子は、勉強で苦労します。スポーツ推薦で進学するにしても、最低これぐらいの成績は必要というラインがあり、とくにサッカー推薦は、ある程度の成績が必要な傾向にあります」サッカーの力はあるのに、学力が足りずに志望校に行けないとなると、悔やんでも悔みきれません。丹羽さんたちは「本気でスポーツをしている子に対して、勉強で進む選択肢も作ってあげたい」という想いから、アカトレをいわゆる学習塾ではなく「学習サポート」という位置づけにしています。カリキュラムは充実しており、現役阪大生が講師となって、各教科の内容を教える動画を制作。選手と講師の間で目標設定を共有するとともに、講師に自由に質問ができる自習室を設けるなど、自らが、短時間の効率的な勉強で大阪大学に入学したノウハウを伝えています。「アカトレは『アカデミックトレーニング』の略です。勉強もスポーツと同じように、トレーニング感覚でやってほしいという意味を込めています。サッカーなら何時間でも練習しますが、勉強になるとゼロになってしまう子も多いです。サッカーのドリブルを練習するように、数学のトレーニングもしてもらえたらと思っています」丹羽さんは「僕らがしているのは、勉強が好きになるきっかけづくりです」と、笑顔で言います。「アカトレを受けている子たちの中には『勉強って意外と面白いんですね』『思ったよりつまらなくない』と言ってくれる子も多いです。それが僕はきっかけ作りだと思っていて、そうするうちに好きな科目が出てくるので、『数学ができれば英語もできるようになるよ。やり方は同じだから』とアドバイスをして、できることを広げていきます」アカトレの講師はスーツを着ない、授業で堅い話はしないなど、子どもたちが勉強を身近に感じるような工夫をしています。丹羽さんも講師として授業をしていますが、テンションが高くて親しみやすいYouTuberのような語り口です。「講師の先生には、とにかく勉強を嫌いにさせないでください。苦手意識を与えないでくださいという話をしています」という丹羽さん。現代の文化とニーズにマッチしたアカトレは、中学のクラブチームや高校の部活単位で導入を進めており、文武両道に向けて、広がりが見られています。「昨年度の高校サッカー選手権に出場した福岡の飯塚高校を始め、とくにサッカー指導者の方は、勉強の大切さを痛感しておられるので、アカトレの話をすると共感してくれる方が多いです」中高生を対象に活動するアカトレ。スポーツと勉強を頑張るためのきっかけ作りとして、子どもたちのサポートに力を入れていくとのことで、今後の活動に注目です!<PR>「1日体験授業」も受付中
2023年03月14日サカイクが提唱している、子どものサッカーに関わる保護者のみなさんに大切にしてほしい"親の心得"をまとめた「サカイク10か条」。「実践している」「周りにも紹介している」という声をいただくこともありますが、まだその存在を知らない保護者の皆様にもぜひ知っていただきたいと思い、卒団式後の保護者会などで「サカイク10か条」を知っていただく機会を設けました。今回は、三重県亀山市で活動する野登SC、東京都町田市で活動する町田相原FCにご協力いただき、保護者会にてサカイク10か条を紹介しました。オンラインを使ってサカイク10か条の紹介を行いました(写真は町田相原FCのみなさん)子どものサッカーに関わる保護者に大切にしてほしい"親の心得"【印刷してチームに配布できます】■指導者が上手く説明できていなかったことを理解してもらえたどちらのチームも、サカイクキャンプのヘッドコーチでもありシンキングサッカースクールのコーチも務める菊池健太コーチが、サカイク10か条が大事な理由などをお話すると、集まった保護者の皆さんは真剣なまなざしでモニターを見つめ、その内容に耳を傾けていました。野登SCのスタッフ堀口さんによると、以前から指導者たちの中ではサカイクに共感していただいていた方が多く、情報を共有しあっていたそうです。保護者の皆さんにも知ってほしいとチームの情報を共有しているツールにアップしたりしていたそうですが、あらためてサッカー少年少女をサポートする親の心得として「サカイク10か条」というものがある、と伝えたかったのだと教えてくれました。普段から櫻木監督やコーチたちがサカイク的な指導に共感いただいて実践しているため、保護者の皆さんも納得して見守ってくださっているとのことですが、試合などで指導者の対応に疑問を抱いて質問された際に、指導者側が伝えたいことがきちんと言葉にできなくて、コミュニケーションのズレが生じることもあったそう。そんな悩みもあり、この度卒団式の後に保護者の皆さんに集まっていただき、サカイクのスタッフからオンラインを使ってサカイク10か条を紹介する時間を設けてくださいました。保護者会終了後には、親御さん同士で「こんな時は○○すると良いんだね」など話しあっていたそうです。チームスタッフの堀口さんは、「これをきっかけに、子どもたちがのびのびサッカーを楽しめる環境を保護者も理解して一緒にやっていけたらいいと思っています」とチームにとっていい機会になったと教えてくれました。■子どもより自分が焦っていたことに気づいた保護者も東京都町田市で活動する町田相原FCは、昨年7月に出張サカイクキャンプを体験していただいたチームで、以前より代表の宮崎さんをはじめ、指導者の方々もサカイクに賛同くださっていましたが、保護者の皆さんにもこの機会に知ってほしいということで、オンラインでご紹介いただく機会を設けました。コーチの話が終わった後は保護者の方からの質問タイムを設け、「やる気が見えない時の声かけ」「自主練をしないが見守るしかないのか」「ケガからの復帰が不安そうな時どうすればいいか」など、親御さんのお悩みに回答。「そういう悩みがあるときは、いつでもコーチに相談してください。一緒に取り組んでいきましょう」と代表の宮崎さんが保護者に語りかけるなど、今回の10か条紹介をきっかけに、保護者とのコミュニケーションを深める機会にもなったようでした。参加した保護者の方からは、「子どもより親の自分が焦っていたと気づいた。これからは見守るようにしたい」などの感想をいただきました。今回のことが、チームと保護者が子どもたちのためにより良い環境を作るにはどうすればいいか、共通認識を持って関わっていけるきっかけになれば幸いです。最近では、チームに入団する際にサカイク10か条を保護者の方にお渡ししているという嬉しいご報告をいただくこともあります。子どもがサッカーを楽しむためには、技術の習得も大事ですが、何よりサッカーが好きで楽しめることが大事です。「サカイク10か条」はページのURLを共有するだけでなく、印刷して配布することもできますので、ぜひみなさんのチームでもご活用ください。「サカイク10か条」をダウンロード>>
2023年03月13日読者のみなさんと編集部で、サカイクでやってほしい企画、読んでみたい記事のアイデアを出し合うオンラインミーティング「読者編集会議」を開催します。その参加者を募集いたします。参加者の皆さんからいただいた提案を採用して、後日記事を配信します。サッカー少年少女の保護者が、本当に読みたい記事はどんなものか、あなたのアイデアをお聞かせください。開催日時:3月20日(月)19:30~20:15(45分)人数:数名形式:オンライン(Zoom)以下よりアンケートにお答えいただき、ご応募ください。応募はこちら>>応募締め切り:3月15日・この会議は、みなさんの意見を聞きながら、読者が本当に読みたい企画案を生み出すことを目的とします。会議の場で企画の優劣や採用・不採用を決めることはしません。・参加をお願いする方には、編集部よりご連絡させて頂きます。
2023年03月13日文武両道を目指して「スポーツを頑張る子どもたちのために」という想いを胸に、中高生の「自学力」を身につけるための学習サポートを行っている団体があります。それが「明誠塾アカトレ」です。サッカーを始め、スポーツを頑張る子どもたちの「学習サポート」をするために「アカトレ(アカデミックトレーニング)」を立ち上げた、現役阪大生の丹羽楓樹さんに、自分で学ぶ力、すなわち「自学力」を身につけるために、大切なことを聞きました。(取材・文鈴木智之)「明誠塾アカトレ」を立ち上げた塾長の丹羽楓樹さんは、大阪大学の学生です。幼少期から高校生まで陸上競技の中長距離の選手として活躍し、近畿大会に出場するほどでした。丹羽さんには「箱根駅伝に出たい」という夢があり、関東の強豪大学へ推薦での進学が決まっていました。しかし高校3年生の12月にひざの靭帯を断裂。ケガによって推薦が取り消され、将来設計が大きく崩れてしまいます。「関東の大学に行って箱根駅伝に出て、卒業後は実業団に入り、いつかは陸上部の監督になって、母校に戻ってきたいと考えていました」人生を賭けて陸上に打ち込んできた丹羽さんでしたが、ケガにより、描いていた未来が閉ざされてしまいます。「陸上のない人生を考えたのは、そのときが初めてでした。陸上がなくなって思ったのが、もっと勉強しておけばよかったということ。陸上を失った僕には、何も残っていないことに気がついたんです」幼少期から陸上にのめり込んでいた丹羽さんは、高校生までの自分を振り返り、「勉強なんてどうでもいいと思っていました」と照れくさそうに語ります。高校卒業後は帰国子女の経験を活かし、塾で英語を教えるアルバイトはしていましたが、進むべき道を模索する時間が続きました。フリーターのような形で塾講師をしていた頃、ひとりの人物と出会います。それがアカトレを一緒に立ち上げることになる、植松耀平さんです。植松さんは千葉県の成田高校から、現役で大阪大学に進学。野球部の強豪で寮生活をしながら、現役で国立大学に進むという、文武両道を体現していました。「植松とは食事の場で会ったのですが、彼は野球の強豪校で、部活に励みながらも現役で国立大学に合格。正直、劣等感を覚えました。そのとき彼に『いま何をしてるの?』と聞かれて『とくに何もしていないんだ』と話をしたら『じゃあ、勉強すればいいやん』と言われたんです」それまで勉強に励んでこなかった丹羽さんは「そんな選択肢もあるんだ」と思うと同時に「陸上中心の生活をしてきた自分に、勉強なんてできるのだろうか」と、不安が頭をよぎったそうです。「そうしたら植松が『じゃあ、勉強の仕方だけ教えたるわ』と言ってくれたんです」そこから植松さんの家に通い、「勉強の仕方」を教わる日々が続きます。「5日間ほど通っていたと思うのですが、彼が高校時代に使っていた参考書を見せてくれて、勉強の仕方を教えてくれました。そのときに『賢い人って、こうやって勉強するんや』と衝撃を受けまして」植松さんは高校時代、強豪校の野球部に所属し、寮生活をしていました。丹羽さんによると「高校時代、限られた勉強時間で成果を出すために、どうすればいいのかを考え続けてきた」そうです。植松さんに勉強の仕方を教わり、受験勉強に取り組むことにした丹羽さんでしたが、その時点で、高校を卒業してから半年が過ぎていました。「勉強の仕方を教わったのが9月の頭だったので、センター試験までには5ヶ月ほどしかありませんでした。残された時間は少なかったですが、何をどうやって勉強すればいいかを教えてくれたので、それならできるかもしれないと、勉強をする気になれたんです」目指したのは大阪大学。植松さんと同じ大学です。「推薦で大学に行けず、親に迷惑をかけたのもありましたし、学費のことを考えて」の決断でした。丹羽さんはそこから、植松さんに教わった「入試の日から逆算して記憶する方法」や「問題演習のやり方」「問題集の意味と目的」など、勉強をする上で必要なことをベースに猛勉強。模試の偏差値41からスタートし、5ヶ月間の勉強の末に、合格を勝ち取りました。「そこで気がついたことがあります。それは『いかに意味のある勉強をするか』です。たとえば漢字を10回書きなさい、これには意味があるのかな。何のためにやってるのかを、いま勉強していることに対して言えますか? スポーツをしている子は、いま練習していることに対して、どんな意味があって、どんな目的があるかを言えますか? 僕らが運営しているアカトレでは、そこに対する考え方や目標設定を重視しています」無駄なことを長時間するのではなく、意味のあることに集中して取り組み、パフォーマンスを高める。これはサッカーの練習にも通じるところです。「アカトレのテーマは『自学力』なのですが、自分で学び取る力に関わってくるのが『目的意識』です。常に、『何のためにこれをしているのかを考えよう』というのが、一つの方針です」いましている勉強は、テストで80点を取るために必要なことかな?サッカーでレギュラーになるために、この自主練でいいのかな?など、「自分が達成したい目標に対して、この行動は適切なものか」を考えること。それがアカトレで大切にしていることだと言います。「アカトレはサッカーの練習が終わったあと、夜の9時過ぎからオンラインで行います。その中で、まずテスト勉強ですることを書き出してもらい、その中からいますべき、必要なことを選んでもらいます。それに対して、僕を始めとする講師が必要なものとそうではないもののアドバイスをします」講師は現役の阪大生が担当し、動画を使った親しみやすい授業を展開しており「勉強へのハードルを下げることを大事にしている」そうです。サッカーに熱中していたとしても、勉強を避けて通ることはできません。進路選びだけでなく「テストの点数が低いと、サッカー活動に参加できない」といったルールを設ける部活やクラブもあります。アカトレはスポーツをする中高生を対象に、クラブ単位で導入するシステムを採用しています。サッカーを中心に広がりを見せており、2022年度の全国高校サッカー選手権に出場した飯塚高校(福岡県)など、高校の部活で導入しているところもあります。飯塚高校では、高校部門のモデル校として昨年からプレ導入、そして今年第1校目として本格的に導入を進めています。次回の記事では、アカトレが大事にしている3つのことを通して、「意味のある勉強の仕方」に迫っていきます。<PR>「1日体験授業」も受付中
2023年03月09日サカイクではオリジナルの「サッカーノート」を制作・販売しています。質問に答える形で書き進めていくことができ、目標設定や振り返りが可能なノートです。今回はシンキングサッカースクールに通う、小学5年生のアツシくんとお母さん、そしてスクールの菊池健太コーチに「サカイクサッカーノートの活用」について話をうかがいました。「サッカーノートに何を書けばいいのかがわからない」「書くことでどんなメリットがあるの?」などの疑問点がある方や、サッカーノートに興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。(取材・文:鈴木智之)サッカーノートを書きはじめて自分が変わってきたと実感していると教えてくれたアツシくん<<堂安律を輩出した西宮サッカースクールが導入!サッカーの理解度が上がり、書かない子と成長に雲泥の差が出るサッカーノートサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■サッカーノートは高学年になってから始めた小学5年生のアツシくんは、スクールの特別クラスに入った約1年前から「サカイクサッカーノート」を書き始めました。市のトレセンに選ばれ、将来は「リバプールに入りたい」と話すアツシくん。夢を実現するために、ノートを通じて様々なことを考えながら練習に励んでいるそうです。シンキングサッカースクールの菊池健太コーチは「アツシくんは、自分の考えを持っていて、それを相手に伝えることができる子です。ノートを書くという行為を通じて、いろんなことを考えているのだと思います」と成長に目を細めます。■得意なプレーはサイド突破、あこがれは南野拓実アツシくんの得意なプレーは、サイドを突破してチャンスメイクすること。なかでも小学生になったときから、両足で蹴る練習をしてきたそうで、「どちらの足でも、クロスを入れることができます」と自信を持って話します。「(逆足は)最初はうまく蹴ることができなかったけど、周りに両足で蹴ることができる人がいなかったので、自分はできるようになりたいと思って練習しました」練習の甲斐があり、いまでは両足のキックが得意になったアツシくん。好きな選手は、リバプールに所属していた南野拓実選手(現ASモナコ)で「反転の速さやボールキープが上手なところが好き」なのだそうです。サッカーが上手くなる仕掛けがあるサッカーノートの秘密とは■サッカーノートをかくようになってから、周りを助けられるようになった「将来はリバプールに入りたい」と目を輝かせ、夢を話してくれたアツシくんですが、小学5年生のときからサカイクサッカーノートを書くようになったそうで、「最初はめんどくさかったけど、書き始めて自分が変わってきたのがわかった」と感想を教えてくれました。「僕は試合中、焦ってボールを蹴ってしまうことがあったのですが、サッカーノートを書くようになってから、少しずつキープすることをやり始めて、チームのみんなを助けられるようになりました」ほかにも「ノートを書いて、プレーについて考えることで、ボールが集まってくるようになり、点が取れるようになった」と笑顔を見せます。サカイクサッカーノートには、練習前に書く欄と練習後に書く欄があり、練習前に家でノートを書いて、グラウンドに向かうそうです。「ノートに練習の目標を書くところがあるのですが、『シュートを10本以上打って、8本以上を枠内に入れて、3点以上取る』と書いています。そう書くことで、シュートを意識するようになりました」「ドリブルで3人以上抜く」と書くこともあり、「僕はドリブルがあまり得意ではないのですが、3人抜く気持ちでやれば1人ぐらいは抜けるかなと思って」と、自分なりに工夫している様子。ノートを書くことで、考えてプレーすること、落ち着いてプレーすることなど、心理面に良い影響があるようです。「ノートを書くときに『もうちょっと落ち着いてシュートを打てば良かった』と反省し、次の試合で点を決めたこともありました。ノートを書くようになって、自分のプレーを振り返るようになったし、考えてプレーするようになりました」練習前に左のページに目標を書き、練習後に右ページで振り返りを行います■指導者にとっては選手の考えを知る手がかりの一つ菊池コーチも「点を取ろうとする意欲が強くなった」と成長を実感しています。「僕たちコーチは、彼らがどんなことを考えてプレーしていたのかを、ノートを読むことで確認できますし、彼らの目標は何なのかを、練習中、常に探っています。練習後にノートを読むと、答え合わせになるんですよね」アツシくんはサカイクサッカーノートについて「最初は書くのに時間がかかっていたけど、いまは慣れてきたので、5分ぐらいで書けるようになった」と胸を張ります。菊池コーチは「ノートは強制ではないので、書けるところだけ書けばいいと思います。年齢とともに言葉のレパートリーも増えてくるので、それに伴って書けるようになるんです」と話し、こう続けます。「コーチや保護者に見せるためではなく、自分の成長のために書いてほしいです。自分と向き合う時間にしてくれたらと思っています」■書くことで自分の「苦手」が分かるようになり、練習への取り組みが変わったアツシくんはサカイクサッカーノートを書き始め、3冊目になります。保護者にもたまに見せることがあるそうで「成長したねと言われて、うれしかった」と言います。アツシくんのお母さんも「書いている内容は、段々成長していると思います」と優しい顔で語ります。「(ノートを書くことで)苦手な部分が、自分でわかるようになったのだと思います。練習の様子を見ていても、それを踏まえてやっているのかなと感じることがあります」アツシくんは将来に向けて、「まずはトレセンでスタメンに入ること。中学に上がったら、他の地域の人と戦うこともあるので、負けないようにしたい」と、目標を話してくれました。夢を叶えるためのツールとして、ノートを使って頑張るアツシくん。今後の成長が楽しみです。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2023年03月08日サッカーをする子を持つ保護者の皆さんが「こんな記事があったらいいのに」と思っているのはどんなことでしょうか。今回は、関東で活動するとあるチームにお伺いして、保護者の皆さんと屋外企画会議ならぬ「サカイクにあったらいいなと思う記事」について親目線のリアルなアイデアをいただく機会を設けました。前編でご紹介するのは、最近よく聞くようになった「主体性」の育て方についてなど、多く聞かれたことについて。みなさんも「わかる」と共感いただける内容になっているかと思います。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■その1.子どもたちに必要な「主体性」ってどんなこと?最近、学校やその他の場所でもよく目や耳にする「主体性を育てる」ということ。これからの時代を生きていくために主体性が大事と言われているし、いろんな場所で「主体性」と聞くけど、具体的にどういう事か、少しあいまいで分かりにくい。社会が求める主体性はつまりどんなことを指すのか、どんなことが必要なのかを改めて定義したコンテンツがあると助かる、という保護者の声がありました。みなさんも、近年よく聞く言葉ですよね。小学生だけでなく、あらゆる年代で主体的に考えて動くことを求められていますが、親の皆さんの世代はそこまで自主性・主体性を声高に叫ばれていた時代でもないため、どうやって主体性を育てるのかを発信してもらうと参考になる、ということでした。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは■その2.見守りと放置の境目は?自立を促すために見守っているのに「放置」とみられないか気になる子どもの自立を促すために、自分でやってみて失敗して考えてほしいから見守っているつもりだけど、「放置している」と見なされるのではないかと心配。という保護者の方からは「見守りと放置の境界ってどこ?と悩む。具体例を挙げて紹介してほしい」という提案をいただきました。子どもへのかかわり方について、そのさじ加減に悩む保護者は多いですよね。最近は過干渉気味でなんでも親がしてあげる子も多いので、あえて自分で考えて失敗も見守る姿勢を「放置している」と指摘されたりすることもあるそう。たとえ相手が言わなくても「放置だ」とみなされそうで不安だという心の内を明かしてくださった保護者も。ほかにも、主体性を大事にし自分たちで考えて動くクラブの理念に共感し、納得して見守っているはずなのに、試合会場で応援席からあれこれ細かく指示を送っている熱量の高い保護者を見ると「自分たちももっと手をかけたほうがいいのかと気持ちが揺らぐことがある」と心情を吐露してくださった方もいました。自立を促すサポートと、干渉のさじ加減について子どもへの接し方や声掛けの例があると助かるのではという、現実に即した提案でした。■その3.いつまで経ってもイマイチ理解できないサッカーのルールNo1「オフサイド」子どもがスポーツを始めると、親御さんもそのスポーツのルールを少しずつ知っていくと思います。サッカーでもそれは同様です。今回お話を伺った保護者の皆さんが言っていたのは、「サッカーのルール解説が欲しい」ということ。子どものサッカーを応援する親として、ルールがわかっている方がサッカーの理解も深まって楽しめると思うけど、サッカー未経験だとルールがよく分からなくて、試合に集中できない気がするという声がありました。とくに「オフサイドが未だによくわからない。解説記事があると嬉しい」というもの。「オフサイド」はプロ選手でもたくさん引っかかるもので、サッカーをよく知らないうちは、何に対してレフェリーが笛を吹いたのかわかりづらいですよね。子どもの試合を見ていてレフェリーが笛を吹いた時、「今の笛は何のファウル?」と最初に戸惑ったのがオフサイトだという親御さんたちによる、「子どものサッカーを応援する親に向けたルール解説」というリアルなアイデアでした。 いかがでしたでしょうか。保護者の皆さんの悩みに即した提案や、親としても子どものサッカーをもっと楽しむための視点からのアイデアをいただきました。いただいたアイデアをもとに、保護者の皆さんのためのコンテンツを作成していきますのでお楽しみに。後編でも引き続き、サッカーの現場で聞いた保護者が本当に求めている記事についてご紹介します。サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2023年03月07日冬晴れの2月上旬、神奈川県の横浜スタジアムで、6歳以下の未就学児を対象としたイベント「JFAユニクロサッカーキッズ in 神奈川」が行われました。たくさんの子どもたちが詰めかけ、楽しそうにボールを蹴る姿が印象的なイベントの様子をレポートします。(取材・文:鈴木智之)JFAユニクロサッカーキッズ in 神奈川でサッカーを楽しむ子どもたち(C)JFA■エースバーンが描かれたリュックとボールがもらえる「めざせクラッキ!」「JFAユニクロサッカーキッズ in 神奈川」の会場となったのは横浜スタジアム。少年サッカーが盛んな神奈川県だけあって、たくさんの子どもたちが集まり、その様子を保護者の方々が客席から見守っていました。JFAユニクロサッカーキッズ in 神奈川にてクラッキダンスで準備運動をする子どもたち(C)JFA県内の幼稚園に通うヒロヤくんのお母さんは「このような会場でサッカーができる機会は、なかなかないのでうれしいです」と笑顔を見せます。隣で観戦していたお父さんも「いい経験になると思う。これをきっかけに、もっとサッカーが好きになって欲しい」と話してくれました。ヒロヤくんは「めざせクラッキ!」にも取り組んでいます。これはJFAが作ったプログラム「JFAチャレンジゲーム」の初級版で、動画あるいはハンドブックを参考にボールコントロールやステップができるようになったらステージが上がり、未就学児だとリュックサックとボールなどがセットになった「スターターキット」がもらえるというもの。「めざせクラッキ!」の6ステージに加えて、イベント参加もクリアの条件になっていて、ヒロヤくんのお母さんは「幼稚園の大会でイベントに参加できたので、後は2つのステージにクリアできれば合格です」と、弾んだ声で言います。家族で協力しながら「めざせクラッキ!」にチャレンジしているそうで、「楽しみながらやれています」と、一致団結して取り組んでいるようです。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■動画でフェイントを学んだり、子どもも興味を持ちやすい「JFAユニクロサッカーキッズ in 神奈川」には、「めざせクラッキ!」に取り組んでいる子も多く参加していました。宮の台幼稚園(横浜市泉区)の子どもたちは「(クラッキは)楽しかった!リフティングができるようになった」「もうリュックとボールもらったよ!」「ボールは毎日使ってる!」など、アピールしてくれました。「今日のイベントにリュック持ってきた!」と話してくれたのが、幼稚園年長のテルマサくん。「将来はサッカー選手になりたい」という彼は、年末に開催されたワールドカップも「朝早く起きて見た」と、日本代表を熱心に応援していた様子。全ステージクリアしてもらったスターターキットのリュックを見せてくれたテルマサくんクラッキには「お兄ちゃんと一緒に、動画を見ながら公園でチャレンジした」そうで、お母さんによると「動画がわかりやすくて、フェイントなどを学べました。ポケモンも好きなので、すぐに興味を持ちました」とのこと。課題をクリアするともらえる「スターターキット」について、お母さんは「公園でサッカーをするときに、リュックにボールを入れて持っていっています」と話し、テルマサくんも「物がいっぱい入って使いやすい!」と使い心地に満足しているようでした。■ポケモングッズが欲しいから頑張るのもモチベーションの一つ「吉田麻也選手が好き」という6歳のジョウくんは、「JFAユニクロサッカーキッズ in 神奈川」を満喫したようで「みんなでサッカーの試合ができて楽しかった。5点ぐらい取った!」と、はにかみながら話してくれました。JFAユニクロサッカーキッズin神奈川で話を聞かせてくれたジョウくんジョウくんは、クラッキのステージ5までクリアしたそうで、「足でボールを転がすやつと、的当てキックが楽しかった。少しはうまくなったような気がする」と感想を教えてくれました。ジョウくんは幼稚園に行く前に「クラッキの練習をする」と言って、朝早く起きて、家の前で練習をしているそうです。幼稚園に行く前に「めざせクラッキ!」の練習をしていたそうお父さんは言います。「そういう姿を見ていると、良い試みだなと思います。サッカーに興味がない子の中には、エースバーンをきっかけに、サッカーが好きになる子もいるかもしれません。ポケモンのグッズをもらいたいから、頑張るのもモチベーションのひとつ。クラッキのような題材があることで、頑張るきっかけになりますよね」「めざせクラッキ!」は8歳(小学校2年生)以下を目安に、体を動かしたり、手や足でボールを扱うという、運動の基礎にアプローチしていくものです。多様な運動経験が必要な幼少期に、楽しみながらチャレンジできる題材があることについては「この年代で体を動かす経験をすることで、将来にもつながっていくと思います。サッカーに限らず、どんなスポーツをするにしても大切なことですし、体を動かすきっかけになるのが、今回のようなイベント(JFAユニクロサッカーキッズ in 神奈川)や、めざせクラッキ!だと思います」と話してくれました。■今後も子どもたちがサッカーを楽しむ場所として全国で開催予定参加者のみなさんから、たくさんの笑顔が見られた「JFAユニクロサッカーキッズ in 神奈川」。「めざせクラッキ!」とともに、今後も子どもたちがサッカーを楽しみ、上手くなるための場所として、全国で開催される予定です。お近くで開催される際には、足を運ぶとともに、オンラインでも参加できる「めざせクラッキ!」にも、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。「めざせクラッキ!」8歳(小学2年生)までを対象にした、様々な動きやテクニックをどんどん身に付けられるゲーム。全ステージクリアしたらエースバーンが描かれたスターターキットがもらえます。内田篤人さんのチャレンジや、音楽に合わせて楽しく体を動かせるEXILETETSUYAさん監修のダンス動画も!エースバーンが描かれたリュックとボールがもらえるJFAチャレンジゲーム「めざせクラッキ!」の詳細はこちら>>めざせクラッキ!全ステージクリアしたら次は中~上級者向け「めざせファンタジスタ!」に挑戦してみよう>>サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!
2023年03月03日近年、海外の指導者が来日し、日本の子どもを指導する場が増えてきました。そのときに、海外の指導者が口をそろえて言うのが「日本の子どもたちは、コーチの言うことをよく聞く」という言葉です。その反面「日本の子はシャイで、自分を表現しようとしない」という言葉も聞かれます。自己表現が苦手なのは子どもだけに限らず、大人にも通じることで、日本人の特性なのかもしれません。日本の中だけで生活するのであれば、とくに不自由はしませんが、ことサッカーというグローバルなスポーツにおいて、「自己表現が苦手」というのは、マイナスに働くこともあります。そこで今回は日本の育成年代で長く指導し、サッカー王国ブラジルの名門育成クラブ「クルゼイロ」のジャパンスクールで指導をする小林弘典コーチに、「子どもたちの感情を解き放つためにしている、ブラジル人コーチの仕掛け」について話を聞きました。ブラジル人コーチは「自ら考えて動く」「自己主張する」といった部分に、どのようなアプローチをしているのでしょうか?(取材・文鈴木智之)写真提供:クルゼイロキャンプ■日本の子どもは失敗するとベンチを見る"クルゼイロジャポン"は東京のスクールの他に、今春三重に開校予定。春休みや夏休み等に、ブラジルからコーチを呼び、短期キャンプを実施しています。小林コーチは、ブラジルから来たアドリアーノコーチに「日本の子どもたちの話を聞く姿勢は素晴らしい」と感心されたそうです。「日本の子たちは、なんて良い教育を受けているんだ! と驚いていました。ですが、いざサッカーの練習が始まると、ミスを恐れ、失敗するとベンチやコーチを見る子がたくさんいました。極めつけは、ゴールを決めたのに誰も喜ばないこと。これにはびっくりしていました」■集団の一員として振舞えるが、個になると弱い日本の子どもアドリアーノコーチは、「日本の子は点を取っても嬉しくないの? あの子たちはサッカーを本当に好きでやってるの?」と質問をしてきたそうです。そこで小林コーチが「彼らは、枠からはみ出すことがあまり得意ではないのではないか」と答えると「子どもはもっと自由でいいし、何よりサッカーというスポーツは自分の感情を出さなければ絶対に勝てないし、上達もできない」と言われました。両者は「子どもたちに感情を発露させることに対して、私達はもっと取り組まなければいけない」という結論に至ったそうです。また、日本の子どもたちは、集団の一員として振る舞うことはできますが、選手個々に目を向けたときに「きみは何ができるの?」「何がしたいの?」という状態になっていたのだと言います。■もじもじしていた子たちが積極的に!「楽しい」環境を作ることが大事そんな日本の子どもたちを見たアドリアーノコーチは、驚きの行動に出ます。トレーニング中、サッカーボールやテニスボールなど、ありったけのボールをコートに投げ入れたのです。「たぶん、50球ぐらいあったと思います(笑)。それを次々にコートに入れて、どんどんシュートを打っていいよ、ドリブルで仕掛けようと言いました」子どもたちはコーチの言葉通り、たくさんあるボールを手当たり次第、ゴールに向かって蹴っていきます。「そうしたら、もじもじしていた子たちが、シュートが打てる、うれしい! と積極的にプレーし始めたんです。ドリブルやパスが成功したときの喜びもあるかもしれませんが、何よりも、ゴールを決めることが最高に楽しいわけです。その環境を作ってあげることが大事なのだと、改めて学びました」ブラジル名門育成クラブの指導を体験できる「クルゼイロキャンプ」参加者募集中>>■「こんなに楽しそうにサッカーをする姿は久しぶり」と保護者も感激当時のクルゼイロキャンプでは、子どもたちが感情を表すための仕掛けとして「得点を決めた後に、ゴールパフォーマンスをしないとゴールは認められない」などのルールを設けていったそうです。「そうすると飛行機ポーズだったり、クリスティアーノ・ロナウドの真似だったり、いろいろやり始めるんですよね。そのルールがなくなって、普通に試合をした後にもやったりと、感情を表に出して、積極的にプレーし始めるようになりました」小林コーチは「子どもたちに口で言ってもすぐにはできないので、こちらが仕掛けをして、気持ちをくすぐってあげる。ブラジル人のコーチはそういうところが上手だと思います」と話します。その様子を見た保護者も「いつもは苦しそうにサッカーをしているけど、ここに来るとすごく楽しそうにプレーしている」「こんなに楽しそうにサッカーする姿は久しぶりに見た」と感激するそうです。「ただ、日本の子たちはそれを引きずってしまうというか、真剣にプレーする場面でも、雰囲気に流されて、遊び気分になってしまうことがあります。そこはコーチが気にかけながら、やるときはやるというオンとオフをはっきりするようにしています」■サッカーする上で感情を出すのが必要な理由でも日本の子たちはミスを怖がる傾向にあるので、ミドルサードでもアタッキングサードでもプレーが変わらないんです」さらに、こう続けます。「せっかくフェイントやドリブルのトレーニングをしているのに、試合になると出てこない。それもミスを恐れているからです。だから我々コーチは『サッカーにミスはつきものだ』『失敗を恐れずにチャレンジしよう』ということを、繰り返し、伝えています」「ミス=失敗、怒られる」という考えから「上手くなるためにはチャレンジが必要で、チャレンジにミスはつきもの」という考えにチェンジしていくことで、子どもたちは積極的に挑戦するマインドになります。その状況に導くためにも、トレーニングの設定やルールなどで、よりチャレンジしやすい環境を作ることが大切なのだと教えてくれました。「ブラジル人コーチは、練習のルールやメニューを工夫することで、子どもたちが積極的にチャレンジする環境を作るのが上手」と話す小林コーチ。ブラジルからはネイマールやヴィニシウス、リシャルリソンなど、あっと驚くプレーをする選手が次々に育ってきますが、その背景には彼らの思想や文化、それに基づいたトレーニングがあることは間違いないでしょう。サッカーは国民性を映すスポーツと言われますが、日本が外国から学ぶことは、まだまだたくさんありそうです。ブラジル名門育成クラブの指導を体験できる「クルゼイロキャンプ2023春」は、現在参加者募集中です。詳細はこちら>>「個の力」にフォーカス!試合で活躍するヒントを一人一人に伝えるクルゼイロサッカーキャンプ>>
2023年03月02日サッカーのキャンプに行かせてみたいけど、迷う。参加した子たちにはどんな影響があったか聞いてみたい、と参加を迷っている親御さんは少なくないのでは。サカイクの冬キャンプ参加者のユイキくん(小6)とお母さんが感想やエピソードを話してくれました。1回の参加でも「変わった」と本人も周りも実感でき、次回のキャンプもすでに申込済みだそう。ユイキくんに起こった変化とは。(取材・文:小林博子)サカイクキャンプでトレーニングに励むユイキくん<<キャンプ後、別人のように成長した息子を見て親主導の自主練をやめた。子どもの変化を見て親の関わり方が変わったケース■コロナ禍で思う存分できなかった「合宿」を経験させたい小学6年生のユイキくんは、お母さんからの提案でサカイクキャンプを知り、参加を即決したそうです。理由はいつものメンバー以外の人たちとサッカーをしてみたかったこと、最高学年なので気後れせず参加できそう、楽しそうなどいくつかあったようです。お母さんがキャンプ参加を勧めた理由は、所属チームでの合宿がコロナ禍で1度しかなかったこと。まもなく卒団するユイキくんに、小学生としてできる「今だけの経験」を1つでも多く味わってほしいという気持ちだったと話してくれました。■参加後、最初の練習で目に見える変化がユイキくんに現れた変化の中でも、特に大きいのが「自信がついた」ということ。本人もはっきりとそう言っていますし、日々の態度やプレー中の姿勢からコーチやお母さんも強く実感するほどの変化です。「帰ってきて最初の練習で今までと違う様子にすぐに気づきました」とお母さん。積極的に声を出して、いきいきとした表情で練習する姿が印象的だったそうです。ユイキくんのポジションはゴールキーパーなのですが、キャンプはGKに特化したものではないので、フィールドプレイヤーとして練習に参加。その3日間を経て「中学ではフィールドもやってみたい」と思うようになったとも話します。身につけた「できる」という気持ちがそんなポジティブな変化をもたらしてくれました。キャンプ中の座学で「5つのライフスキル」を学んだことで、気持ちの変化も顕著でした。特にユイキくんが変わったと実感するのは、リーダーシップの部分。「相手の立場になって、プラスの言葉(=ポジティブな表現)で声を出せるようになったら、今までより雰囲気や試合運びが良くなったと思う」と本人もその変化を感じているようです。■「失敗も正解」という雰囲気の中で、臆せずチャレンジすることが自信を押し上げるインタビューでは、大人からの質問にも自分の言葉でしっかり答えられる聡明さが印象的なユイキくんでしたが、実は「自信」はもともとはあまりなく、そんな様子が今でも謙虚な言葉選びに現れているようにも感じました。自信のなさは特にサッカーに関しては顕著かもしれません。始めたのが小学3年生とチームの中で遅めだったこと、チームやスクールのレベルが高く、周りに上手な子がたくさんいることなどから、どうしても自信がつきにくい環境だったことも理由のひとつではあるようです。そんな自信のなさから、チームやスクールの試合では「いつも緊張していて、コーチの言う言葉の意味が理解できないままやっていたことも多かった」そう。ところが、サカイクサッカーキャンプの最終日に行った試合はその真逆で「緊張せずに挑めたからか、試合中のすべての動きを今でも鮮明に覚えていて、1つ1つのプレーで"あの場面ではああするべきだった"と改善点もちゃんと把握できています。だから次の試合で同じシチュエーションになったらもっとうまくやれるはず」と力強く語ってくれました。ユイキくんがここまで変われたのは、キャンプの合言葉である「チャレンジ」を素直に胸に抱いて3日間を過ごしたから。サカイクサッカーキャンプで提唱する「チャレンジ」には「ミスを恐れずに」という枕詞がついています。「ミスしてもOK。挑戦したことが正解」「チャレンジがうまくいかなかったことも今後のためになる」そうコーチから言われ、子どもたちはミスを恐れずにチャレンジする」ことが当然という雰囲気の中で、のびのびとチャレンジできる環境が整えられているのです。チームではGKというポジションであることもあり、これまでミスを恐れてかなり緊張して試合に出ることも多かったようです。キャンプ中のこの合言葉は気持ちを大幅に和らげてくれたようでした。そんな成功体験が、彼の自信をぐっと押し上げてくれたに違いありません。自分で考えて行動する力がつくサカイクサッカーキャンプとは>>■親子の会話がスムーズに。進路に迷う時期には本当に助けられたサカイクキャンプでトレーニングに励むユイキくん帰宅後、お母さんが日常生活で感じたのは、今までより素直に会話をしてくれるようになったことだそう。思春期にさしかかりだんだんコミュニケーションが難しくなってくる小学校高学年の男の子だからこそ、「とても助かる変化だった」と言います。こちらもライフスキルの中で、「感謝の心」「コミュニケーション」などについて、考えて自分の気持ちを言語化したことが大きかったのかもしれません。本人も「言葉にしたらよくわかるようになった」と語っています。キャンプの前後にはセレクションもあり、進路について親子で話し合わなくてはならない時期でした。そのタイミングでユイキくんが素直に思っていることを言葉にしてくれるようになったことが、今後を決める大切な時期に与えた影響は大きかったとお母さんは思っているそうです。ちなみに、お母さんは前述した普段の試合での緊張や自信のなさは、キャンプ後にそのことについて本人から聞いて初めて知ることができたことだったそう。「子どもながらに背負っているものがたくさんあったことを知ることができたのも大きいです」と。我が子のことをより知るきっかけにもなりました。■学校やチーム以外で「認めてくれる大人」との出会いも期待以上「さまざまな変化は、キャンプでユイキのことを認めてくれるコーチに出会えたことが大きいと思います。サカイクサッカーキャンプはそういう場であると思ったので、それも期待して本人に参加を進めてみましたが、期待以上でした」そんなお母さんの言葉に、キャンプでユイキくんと過ごした柏瀬コーチはこう話します。「キャンプで伝えていることをどう受け取るかは1人1人違います。ユイキくんは"変わった"と3日目に比較的はっきりわかった選手でしたが、初日から相手のことを考えられる性格が、パスの仕方にも現れているほどでした。だから、変化というよりはもともと持っていた力を引き出すきっかけを与えられただけと言うほうが正しいかもしれません」「できる」という自己効力感や自信、物事を深く考えて言葉にして伝える力。柏瀬コーチの言葉の通り、ユイキくんにはもともとあった力だったのでしょう。このキャンプをきっかけに、それが良い形で発揮できるようになったとしたら、とても素敵な変化です。そんなユイキくんは春のキャンプへのリピート参加もすでに申し込み済みです。さらなる良い経験を経て、中学という次のステージで大好きなサッカーを頑張りたいそう。自信をつけて進む中学では、ますますの成長を見せてくれることでしょう。自分で考えて行動する力がつくサカイクサッカーキャンプとは>>
2023年02月28日同僚コーチの提案で、1~3年生の学年ミックスチームに分けることになった。技術や熱量でグループ分けをしたが、学年ミックスの練習をする際に気を付けることは?とのご相談をいただきました。上の学年の子も下の学年の子も成長するというメリットは知られていますが、チームの底上げをするためには、どんな点に気を配ればいいのでしょうか。今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ご自身が現在指導している現場の例を踏まえてアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<「そうじゃない」「○○へ出せ」指示命令ばかりのベテラン指導者のやりかたを改善する方法はある?<お父さんコーチからの質問>地元サッカーチームでU-8コーチを指導しています。U-10コーチの提案により、1~3年生の中でグループ分け(A~C)を行い、各カテゴリーでそれぞれに見合った練習を行うという試みを実施しようとしています。技術力やサッカーへの熱量でグループを分けましたが、実際のところ私自身はグループ分けに納得がいっておりません。理由は様々ありますが、私自身1年生の子に対し良い環境になるのではと踏み切った以上、取り組んでいこうと思っています。そこで、学年ミックスの練習で注意すべき点などがございましたら、ご教示お願い致します。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。学校などでも横割りで活動することが多い子どもたちを縦割りでグループ分けすることは、基本的に悪いことではないと私は思います。■学年ミックスの課題、指導者が気を付けないといけないところただし、技術の優劣でレベル分けしてしまうと、技術が伸びるのがゆっくりな子どもたちが良いプレーをみる機会が減ってしまいます。そこをどう考えるのかは、ひとつの課題でしょう。もうひとつの課題は、指導の対象が1年生から3年生という最も難しい年代ということ。私自身いろいろ経験してきましたが、この三つの学年は一番扱いにくいと感じています。縦割りの場合、上のほうの学年に下の学年の子をお世話してもらう流れをつくるとうまくいくのですが、3年生に1年生の面倒をみましょうと言っても無理です。私が運営しているスクールで縦割りのゲームをやろうとすると、1年生は「1年生だけでやりたい」と言ってきます。なぜならば、上の学年である3年生が下級生にパスしないからです。したがって1年生だけで試合をやると、パスできます。それぞれの性格や成長の進み具合などをみて正確にグループ分けしたとしても、非常に難しいようです。要するに、3年生にはそういった特徴があるのです。サッカーを始めてそれなりの年月が経って、できることが増えてきた。ゴールする面白さがわかってきた。そうすると、指導者の練習のやり方次第で変わってはくるものの、日本の場合は多くの3年生がボールを持つと自分でドリブルで行きたがります。レベル別に分けるのは悪くないのですが、子どもたちの状況で違ってくることは予想できます。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■縦割りのメリット、チームの底上げにつながるために大事なポイント縦割りにするのであれば、まずはコーチたちがそのメリットを理解しなくてはいけません。下の学年の子は上手なお兄さんとサッカーをするのはプラスです。これに対し、上の子も下の子に丁寧なパスを出してあげるなど、彼らを使うことを覚えればプラスになります。そのあたりを深めずに、上手い子は上手い子だけ、技術がまだついていかない子はそこに固めるという発想ではチームの底上げにならないかもしれません。私の練習では、選手同士でコミュニケーションを図るよう伝えます。例えば「先に名前を言ってからパスしよう」と呼びかけます。そのほうが自分にパスが来ることを予想できてわかりやすいはずです。ほかにも「外に開いて」とか「裏に走って」といったコーチングをするよう指導します。そうすると実際にうまくいくので、子どもたちはみんな納得してくれます。とはいえ、すぐにできるわけではありません。6年生の子どもがパスミスをした際に「約束おぼえてる?名前、呼んだ?」と尋ねると「呼んでいない」と言います。「〇〇君、いくよ」って言ってパス出せば?と話しても、そこを覚えておいてプレーできません。ずっと考え続けられないようです。であっても、時間をかければ、名前を呼んで相手に合わせたパスが出せるようになります。上級生にとっても、異年齢でやる意味は大きいのです。■時には上の学年に挑戦させたり、学年対抗戦などの調整をしようとはいえ、前述したように3学年でサッカーをするのは難しいものです。3年生が勝手にやってしまう、ということはきっと起こるでしょう。その場合、3年生を6年生と一緒にやる時間も設けてください。3年生が6年生からパスをもらってゴールするといった体験をしてもらうのです。例えば、3~6年生の縦割りでゲームをする際「3年生がゴールしたら3点ね」といった工夫をすると、子どもたちは勝ちたくて3年生にボールを集めるようになります。加えて、私は「君たち3年生は、1年生にどうしてあげたらいいかな?」と子どもたちに問いかけます。そのように働きかけたとしても、子どもは毎日気持ちが変わります。3年生がうまくできない日もあります。そんなときは3年対1年、3年対2年というような学年対抗戦を行ったりします。そうすると、1年生は懸命に守ろうとしますが、体格差やスピード、技術の差はあるので1年生は歯が立ちません。点差がついてきたら、「じゃあコーチが1年生のほうに入ろうかな」と私が入ったりして調整します。■その人数でないと獲得できない技術、成長がある(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)最後に二つほど付け加えさせてください。日本は低学年でも8人制で試合をさせる地域があります。ですが、3対3のフニーニョや、4対4のクワトロなど、もっと少ない人数で試合をさせましょう。その人数でないと獲得できない技術や成長があります。もうひとつ。グループ分けの基準にする要素は、ドリブルが上手いとかいった足が速い、体が大きいといったものになりがちです。そこに長けた子たちをピックアップしてしまうと、そういった要素でしか勝負できなくなります。それを踏まえて、練習は見て考え判断するトレーニングを軸にしていただければと思います。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2023年02月26日最初は下手で仲間にも雑魚と言われていたのに、それをばねに努力して成長。1番上手だった子とも今や立場が逆転。チームメイトに意見できるようになり、1番上手かった子にも指摘したら泣いてしまい、その子の親がうちの息子が悪いように言う。チームのためになることを子ども同士で話すのってダメなの?とのご相談です。子ども同士のいさかい、悩んでいる保護者も多いのでは?スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに5つのアドバイスを授けます。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<強豪クラブに移籍してすぐにケガ。ひと月離脱の息子の力になりたい問題<サッカーママからのご相談>9歳の息子は地域の少年団のチームで1年生からサッカーをしています。最初は夫の希望で半ば無理矢理始めたサッカーですが本人もとてものめり込み、チーム外のスクールにもいくつか通い本人も自主練をこつこつと頑張りここ1年で目に見えて技術面が成長しました。最初はチームの戦力外で、元々上手な子にプレーのことで散々下手くそだの雑魚だの言われても、何も言い返せず悔しい思いを沢山してきました。それをバネに努力した息子を大変たのもしく誇らしく思っています。技術面や知識面が成長したことでチーム内に気になることも増えてきたようで、チームメイトのプレーに対してあれはこういう風にした方がよかった、と意見することも増えました。息子はとても真面目で気になることを流せないタイプなので時に言い方が強くなることもあります。入部直後1番上手で息子にあれこれと強く言ってきていたチームメイトは逆の立場となり、今は息子に何が言われると泣いてしまうようになりました。泣いた後すぐに親御さんは彼のそばに寄り彼の言い分だけを聞いています。彼の親御さんは「またそんなこと言われたの?ほんとに腹が立つね、言い返しなさい」と言ってまるで息子が間違っているような口ぶりで彼をフォローしていました。息子に話を聞いてみると あの時ああやったほうがチームのためになると思ったから言った。あいつが下手くそとか悪いとか言ってるんじゃないのに何で泣くのか分からない。 とのことでした。私はひとまず、言い方やタイミングを考えなさいとは伝えたものの、また同じようなことがあったときに息子だけが悪者にされる気がしてなりません。何も言うなと言うのは違う気もします。チームのためになると思うことを子ども同士で話すことは、ダメなことなのでしょうか。よく分からなくなってしまいました。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。9歳ということは、3年生か4年生ですね。この年代になると、急に親や教師、コーチの言うことを聞かなくなります。児童心理学でいうところの「ギャングエイジ」です。自我が芽生えてきて、自己主張や衝動性が強く出るなどして、対応する大人からすれば大変ではありますが、子どもの成長発達の観点からみれば非常に重要な時期でもあります。■子ども同士のぶつかり合いは、こころの成長に必要なこと「いい子」でいさせようと押さえつけてはいけませんが、小学1~2年生の低学年時代では難しかった自制心や他者を思いやる気持ちを少しずつ育む必要があります。そのためには、時に仲間と言い合いをしたり、けんかすることも必要なことです。それなのに昨今は、大人たちが子ども同士がぶつかることを良しとしません。すぐに大人が仲介に入り、予定調和的に仲直りさせることが多いようです。子どものこころの成長に不可欠な「いさかい」を前もって大人が止めます。理由は「いじめに発展したら困る」とか「何かトラブルになったら困る」と一見すると子どものためのように映りますが、単に大人が子どもの成長を待てないだけ。結果的に、子どもが成長する機会を大人が奪っているのです。そこで、お母さんにアドバイスを五つ送らせてください。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■親が解決する問題ではないと認識することひとつめ。まずは「これは親である私が解決する問題ではない」と認識しなくてはいけません。いさかいはサッカーコートの中で起きているのだから、これはコーチと子どもたちの問題です。「息子だけが悪者にされるのでは?」と心配したり、「チームのためになると思うことを子ども同士で話しちゃだめなの?」とお母さんがいきり立つ必要はありません。コーチと子どもたちが解決する問題なのですから、放っておけばいいのです。息子さんに意見され泣いた子どものそばに寄って行って「腹が立つね、言い返しなさい」と煽る親に対して、お母さんは不快に感じたはずです。子どものケンカに口を出しても、良いことは何一つありません。そこを理解できるのならば、万が一泣いた子の親に何か言われたとしても「子ども同士のことですし、サッカーの時間はコーチと子どものものなので私は口をはさむのは遠慮します」と言えばいいことです。とにかく泰然自若としていれば良いのです。何度も起きるようならコーチも手当するはずです。それをしないのなら、しない理由があるかもしれません。とにかく任せることです。■この問題に関与するのをやめること二つめ。息子さんにこのことを根掘り葉掘り聞くなどして、この問題に関与するのはやめましょう。ご相談文から、お母さんのほうからやや積極的にかかわっているように見受けられます。冒頭にある「最初は夫の希望で半ば無理矢理始めたサッカーだが、チーム外のスクールにも通い本人も自主練をこつこつと頑張りここ1年で目に見えて技術面が成長」と非常に熱っぽく書かれているのがとても気になります。まだ9歳です。子どものサッカーに入れ込み過ぎてはいませんか?まだ9歳ですから、仲間に誤解を与えたりやいさかいを招くこともあるでしょう。しかしながら、そこから得る学びや成長は大きいはずです。言い方とかタイミングなど細かいコミュニケーションスキルはこれから磨かれます。なにしろシュートを打たなければゴールが生まれないように、コミュニケート(意思を伝達)しなければスキルは向上しません。ただ、上述したように接近しすぎるきらいがあります。彼を伸ばしたいなら、両親ともにもう少し距離を置きましょう。■我が子の話に耳を傾けよう三つめ。親御さんがやったほうがいいことは、彼が仲間とのコミュニケーションで悩んで何か言ってきたら話を聴いてあげることです。ただただ、傾聴する。決して「ああすればいい」「こうすればいい」と指示命令しないほうがいい。お母さんに話すことで、問題が整理されたり、客観的に考えられたりすることもあります。その際、例えば「何で泣くのか分からない」と言った主旨のことを再び言ったり、その話が出てきたら、「分からない、で終わらずに、もう一度考えたらどうかな?」と問いかけましょう。そこで、「その子は自分が責められたような気がしたんじゃないかなあ?君はどう思う?」などとお母さんの意見を言ってもよいでしょう。ここで息子さんが学ぶべきは「他者の気持ちを汲む力」です。それを汲めたとしたら、「じゃあ、次は『君を責めているんじゃない。ミスは誰でもあるから』とか前置きしてから言ってみるね」などと解決策に気づくかもしれません。■子どもが成長するために自分はどうすればいいか、という思考にするこのように、起きたことすべてに対し「息子が成長するには、私はどうすればよいか?」というマインドセットにしておくこと。これが四つめです。子どものピンチは成長のチャンスであることが少なくありません。そのように考えると、息子さんを落ち着いて観察できるかと思います。■こころが乱れているときは動かないこと(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)最後の五つめは、焦って動かないこと。相談文の最後に「よく分からなくなってしまいました」と書かれているように、お母さんは現在大変不安になり、なおかつ混乱しているようです。こころが乱れているとき、要するに感情的になっているときは、絶対に動いてはいけません。まずは様子を見ること。私も、長男も、長女も、いろんなことがありました。しかし、「ま、ちょっと様子を見るか」と眺めていると、ほとんどの場合いつの間にか解決しました。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年02月22日