6月と7月に東京・新橋演舞場の『六月大歌舞伎』と『七月大歌舞伎』で四代目市川猿之助を襲名する市川亀治郎と、九代目市川中車(ちゅうしゃ)を襲名する俳優の香川照之らが、5月11日、東京・浅草寺で襲名披露興行の成功を祈願してお練りを行った。平日にもかかわらず、浅草寺には大勢のファンが詰めかけ、雷門前に亀治郎、香川と五代目市川團子(だんこ)を襲名する香川の息子政明君、二代目猿翁を襲名する当代市川猿之助が登場すると「おもだか屋!」と猿之助の屋号がそこかしこからかかり、大きな拍手と声援が飛んだ。亀治郎は襲名の実感はまだないそうだが、「わたくしはこの浅草で育てられたと思っております。10年間、浅草公会堂で大役をやらせていただきました。猿之助になっても一門全員でここでお芝居をやらせていただきたい」と浅草の地でのお練りに感慨もひとしおの様子。集まったファンや観光客には「今日写真を撮った方は新橋演舞場に来ていただきたい。twitterでも呟いてください。ぜひ『ヤマトタケル』を観に来てください」とまだチケットが買える6月の夜の部をアピールしていた。歌舞伎の舞台は初めてとなる香川は緊張した様子で、「まさかここでこのようなお練りをさせていただくとは夢にも思いませんでした。感謝しております。少しでも精進し、ご迷惑をおかけしませんように、この大名跡を継がしていただく責任を果たしていきたい」と決意を表していた。政明君は「市川團子を襲名しますけど、どうか宜しくお願いします」と挨拶した。襲名披露興行は6月5日(火)から29日(金)までの『六月大歌舞伎』と7月4日(水)から29日(日)までの『七月大歌舞伎』の2か月、新橋演舞場にて上演される。チケットは6月興行は発売中、7月興行は6月12日(火)より一般発売開始。
2012年05月11日『かもめ食堂』、『めがね』、『プール』──特別な事件が起きるわけでもなく、そこにいる人たちの間にゆったりと流れる時間をただ切り取ったような…けれど、観終わったあとに新たな一歩を踏み出せる映画。そんな一見、“ゆる系”だけれど“芯”のある作品を作り続けてきたプロジェクト・チームが新たに送り出すのが『マザーウォーター』だ。『めがね』に続いての出演となる女優・市川実日子もその作品群と同様に、どこかゆるりとした空気感をまとった人のように感じるが、本人は「私はこのプロジェクトが作ってきた4作が、癒しの映画だとは思っていないんですよね」と意思表示する。そこで、自然体な人と場所を舞台にしてきたこのプロジェクトの芯なる部分を語ってもらうことにした。「『めがね』のときも、海がきれい、ご飯が美味しそう、ゆったりとした時間が流れていそうとか、癒される映画だねって言われることが多かったんです。けれど、私自身は決してそれだけではない映画だと思っていて。というのは、『めがね』という作品に出会ったことで、自分の中で問題提起を与えてもらって、疑問に思ったことを自分自身で行動に移すことができたんです。だから『マザーウォーター』で、あのメンバーともう一度仕事ができることは嬉しくもあり、同時に身が引き締まる思いでもあって」と、言葉を選びながらゆっくりと自分の辿ってきた道のりをふり返る。そんな彼女が『マザーウォーター』で演じるのは、京都の街で豆腐屋を営む女性・ハツミ。「マザーウォーター(=ウィスキーの仕込みに使われる水のこと)」というタイトルからも伝わってくるように、今回は“水”がキーワードのひとつでもある。豆腐作りにももちろん水が大切、水に触れることが役作りに繋がったと語る。「ちゃんとお豆腐屋さんに見えているのかなという不安もあったけれど、あの白い服を着て、お水に手を入れて、白いお豆腐を触っていると、なぜか気持ちがシャンとしたんですよね。事前の役作りですか?撮影に入る前の本読みのときに、監督からハツミの人物像を綴ったメモ書きをもらったんです。そこに書いてあったのは具体的なことではなくて“豆腐のような人である”と(笑)。実際に撮影に入っても監督からは特別な指示はなく、自分で想像することが必要でした」。「豆腐のような人」という表現は、演じる者にとって曖昧な表現かもしれないが、スクリーンに刻まれているハツミから感じるのは、確かに豆腐のような人。そして、市川さんがキモに据えたのは「きっとハツミはこういう人なのかなって心に留めていたのは、誰が相手でも同じように接する人。人によって態度を変えない人。そういう人であることに気を付けて演じました」。毎日変わらず同じ豆腐を作り続ける──その変わらない作業、変わらない姿勢が、もしかしたらハツミという女性を形容するために必要だったのかもしれない。「自分の生き方に責任を持っている女性たちをステキだなと思った」また、このプロジェクトに欠かせないのがフードスタイリスト・飯島奈美さんが作り出す美味しい料理の数々。「奈美さんの料理ってほんとに美味しそうで、目にした途端『食べたい!』って思うんですよね」と、とびきりの笑顔を見せ、話は豆腐から料理の話へ。「現場では奈美さんが作ったご飯を実際にいただきました。今回はグラタン、サンドウィッチ…ほんとに美味しくて。現場では食べるのが専門でしたけど(笑)、家では奈美さんの料理の本を見て作ったりします。たとえば豚の生姜焼きで、一回油を取ると美味しく出来上がるとか、ちょっとしたコツが奈美さんのレシピには詰まっているんですよね」。市川さんを笑顔にさせる飯島さんのご飯が、本当に美味しいものだからこそ美味しく映るように、舞台となる京都という街も、本当に心地いい場所だからこそ心地よく映っているのだと、街が持つ心地よさも代弁する。「京都の街の空気は肌触りがいいというか、なんだろう…空気が丸くて気持ちがいいんです。だから、この映画にも言葉ではない肌で感じる気持ちよさがあって、それをすごく大切にしていると思う。あと今回の京都の撮影で久々にコーヒーの美味しさを実感しました。昔はよく飲んでいたんですけど、最近はあまり飲まなくなっていて。京都ならではのコーヒーの歴史もあるし、京都の空気にはなんだかコーヒーがよく似合うなって感じました」。ただゆっくりとコーヒーを味わう何気ない時間を、至福のひとときであると感じさせてくれる。そういう心地よさの“気づき”が『マザーウォーター』の魅力なのだ。豆腐を丁寧に作るハツミ、ウィスキーを丁寧に作るセツコ(小林聡美)、コーヒーを丁寧に淹れるタカコ(小泉今日子)──ゆったりとした時間の中で丁寧に愛情を込める彼女たちの姿がとても美しく映し出され、市川さんも「自分の生き方に責任を持っている女性たちばかり。ステキだなと思いました」と、キャラクターを通じて女性の“芯”なる部分を感じたという。その中でも一番影響を受けたのは、やはり自身の演じたハツミ。そしてお豆腐。「もともとお豆腐は好きで、普段の料理でもお豆腐の出番は多いけれど、この映画を機に街のお豆腐屋さんが気になって。最近はお豆腐屋さんに行くようになりましたね。お豆腐屋さんに行けないときはスーパーで色々な銘柄を試したり。私のおすすめの食べ方は、蒸したお豆腐を塩とわさびとオリーブオイルで食べる。ほんとに美味しいんです」。(photo:Utamaru/text:Rie Shintani)CS日本映画専門チャンネルにて、旅先での出会いをきっかけに、人生の大きな転機を迎えたり、自分の新たな一面を発見したヒロインたちを描いた映画特集「TRUNK. 映画で旅する彼女たち」を10月〜11月の毎週金曜23:00〜放送中。10月30日(土)公開の『マザーウォーター』に出演する市川実日子が紹介番組のナビゲーターとして登場、出演映画『めがね』も放送。公式サイト:■関連作品:めがね 2007年9月22日よりテアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマほか全国にて公開© めがね商会マザーウォーター 2010年10月30日よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2010パセリ商会■関連記事:人気フードスタイリスト飯島奈美が『マザーウォーター』クッキーを初プロデュース!『かもめ食堂』チームに小泉今日子、永山絢斗が参戦今度の舞台は“京都”『かもめ食堂』荻上直子最新作『トイレット』特報が到着“ばーちゃん”って何者?やっぱり猫が好き?超人気ブログ「くるねこ」アニメ化で小林聡美が一人全役に挑戦夏の星空の下、ロマンチックに屋外映画鑑賞!「スターライトシネマ PLUS」開催
2010年10月19日