助産師・国際ラクテーションコンサルタントの榎本さんが、うつ伏せ寝や指しゃぶりなど赤ちゃんの気になる行動と対処法について教えてくれました。どんな対応が正解なの……!? 毎日一緒にいるママは、赤ちゃんの行動ひとつひとつが気になってしまうかと思います。今回は、育児中のママからよく相談される気になる2つの行動についてお話ししていきます。 寝返りができた!寝ているときのうつ伏せ寝は?寝返りをしたばかりのころ、日中は口元が塞がれていないかなど注意することができますが、夜間となると気付けないことも多いかと思います。夜中ママが目を覚ましたら、赤ちゃんがうつ伏せ寝をしていてヒヤヒヤすることもあるようです。なかには、心配で眠れずにずっと見守っているというママもいて、ママの体調を崩してしまわないか心配になるケースもあります。 厚労省でも「1歳になるまでは仰向けで寝かせましょう」としています。しかし、寝返りを完全には予防するのは難しいこともあります。壁と添い寝をする人で赤ちゃんを挟むように眠って寝返りできないようにガードする、寝返り防止枕やバンドなどを使用するなどの対策をとっても、寝返りをしてうつ伏せ眠になることがあります。夜間は、うつ伏せで寝ていたら戻すのが基本ですが、万が一ママが寝ていて気がつけなかったときのことを考え、以下の安全策を取りましょう。 夜間眠るときの安全対策①タオル類やぬいぐるみなどの窒息の原因につながるようなものを枕元におかない。 ②夜間は首元にタオルをはさんだり、スタイをしない。(吐き戻したときのためにしている人を見かけます。) ③硬めのマットにする。(添い寝する場合は、大人のマットの上に赤ちゃん用の硬いマットをひくようにします。) ④布団は軽いもので、添い寝するときも大人用の布団をかけない。(重すぎる掛け布団は避け、スリーパーを検討するのが良いでしょう。)また、大人とは布団を別に用意する。(一緒に寝ていて、ママが動いた際に布団が赤ちゃんの顔にかかってしまうことがあります。) ⑤呼吸センサー等を検討する。 ⑥ベビーベットの場合、柵に足や腕が挟まらないようにカバーする。 ⑦温め過ぎたり、厚着をさせて動きづらくならないようにする。 起こしてしまうかもしれませんが、夜中に目が覚めて赤ちゃんがうつ伏せ寝をしていたら、仰向けに戻すようにしましょう。また、同居する家族は赤ちゃんのそばでの喫煙をしないか禁煙をするなど基本的なSIDS予防策をしましょう。また、母乳で育てている赤ちゃんは、眠りが浅いためにSIDSのリスクが低いとされています。 指を気がつくといつも吸ってる!やめさせるべき?赤ちゃんによっては、頻繁に指しゃぶりをする場合があり、幼児になってもクセになってしまわないか、歯並びを悪くするのではないかと心配されるママがいます。生後2〜4カ月ごろの赤ちゃんは、口腔内の感覚が敏感な時期なので指しゃぶりをすることで色々な感覚をつかんでいきます。精神的な安心感を得ることもでき、成長の中では大切な行動のひとつです。1歳ごろになり、遊びや身体を動かすことなど外の世界に興味が出てくると徐々に指しゃぶりは減っていくといわれています。 小児歯科では、指しゃぶりが続くと歯並びが悪くなることがあるといわれています。しかし、2~3歳で指しゃぶりをやめると、それよりも前に指しゃぶりをやめていた子どもの歯並びと比較しても、その後あまり変わらないというデータがあります。この結果から、3歳ごろまでの指しゃぶりは見守っていて問題ないといえます。 まとめ色々な情報が溢れていて、どこまでOKなのか悩むママは多いかと思います。最低限の安全性を確保しながら見守ることで、ママの負担も減らせると良いですね。 【引用参考文献】アメリカ小児科学会資料アメリカ小児学会医療専門家のための幼児の就寝姿勢とSIDSに関する質問と回答 児科と小児歯科の保健検討委員会資料「指しゃぶりについての考え方」 監修者・著者:助産師 国際ラクテーションコンサルタント・おむつなし育児アドバイザー 榎本美紀2001年に助産師免許取得後、杏林大学医学部付属病院・さいたま市立病院・順天堂大学練馬病院の勤務を経て、2013年に埼玉県さいたま市に訪問型の助産院「みき母乳相談室」を開業。病院勤務での経験を元に、母乳育児支援の国際ライセンスである国際ラクテーションコンサルタントとして、地域の母乳育児を支援。訪問時の相談は多岐にわたり、おむつなし育児アドバイザーとしてトイレトレーニングなどの相談も。一児の母。
2022年01月30日赤ちゃんにうつ伏せをさせることは、筋肉の発達を助ける働きがあり、「練習させると良い」とも言われています。しかし、うつ伏せさせる時は、赤ちゃんの様子を見ながら注意して行う必要があります。時々ニュースでも流れる、赤ちゃんがうつぶせのまま寝てしまうことで発生率が高まる「SIDS(乳幼児突然死症候群)」にも気をつける必要があります。やり方によっては危険なことでもありますので、ぜひこの記事を最後までお読みいただき、うつ伏せの練習をさせる時のポイントや注意点知ったうえで、取り組むようにしてください。赤ちゃんにうつ伏せの練習をさせるメリット欧米では、うつ伏せ・腹ばいの姿勢の練習の時間をタミータイムと(Tummy Time)と呼ばれ、推奨されているようです。うつ伏せの練習をさせるメリットについて、いくつか解説します。とはいえ、赤ちゃんは自然に必要な筋力がついていくため、やらなければならないことではありません。やらなければならないと身構えるよりも、「赤ちゃんとの遊びの中に取り入れても良い」くらいに意識すると良いでしょう。●首がすわりやすくなる赤ちゃんがうつ伏せをすると、赤ちゃんは頭を持ち上げようとします。首がすわる前の赤ちゃんでも、頭を持ち上げたり、横に向けたりしようとします。この運動は首から背中にかけて、肩甲骨周辺の筋肉を発達させます。筋力が発達することにより、首がすわりやすくなるメリットがあります。●げっぷが出やすくなる母乳やミルクを飲んだ後に、げっぷが出にくい赤ちゃんもいます。背中をさすってもなかなかげっぷが出ない子は、うつ伏せにしてあげると空気が外に出やすくなります。また、母乳やミルクを飲んだ時、吐き戻しが多い赤ちゃんにもおすすめです。うつ伏せにしてあげると、空気だけが上手く出て行くようにお腹に圧がかかるため、吐き戻しが少なくなる子もいます。ただし、母乳やミルクを飲んですぐにうつ伏せにさせると吐いてしまうため、飲んでしばらくしてからうつ伏せにしてあげると良いでしょう。●楽に呼吸ができるうつ伏せの体勢は、背中側からの臓器の圧迫が少なく、肺が広がりやすい体勢です。肺の機能を鍛え、赤ちゃんの呼吸を深くすることができると言われています。うつ伏せの姿勢に慣れてくると、口を閉じて鼻呼吸を行いやすくなります。鼻呼吸ができるようになると、感染症にかかりにくくなるメリットもあります。●運動機能の発達のきっかけになるうつ伏せの体勢にすると、視界が広がります。このとき、お気に入りのおもちゃを少し離れた場所に置いてあげると、赤ちゃんは動いて近くに行きたいという気持ちが生まれることがあります。赤ちゃんはなんとかしておもちゃの近くに行こうと、試行錯誤しながら身体を動かします。その中で、寝返りやはいはい、体幹の発達など、全体的な運動機能の発達を助けることもあるでしょう。運動するきっかけを作るのに、うつ伏せ遊びが良い効果をもたらす可能性もあるので、試してみてください。うつ伏せはどのように練習させる?赤ちゃんは生まれてからしばらくの間、ほとんどの時間を仰向けの体勢で過ごします。うつ伏せを練習してもらうには、お母さんやお父さんがうつ伏せの体勢にしてあげる必要があります。その方法について、解説します。●赤ちゃんのうつ伏せ練習はいつからOK?赤ちゃんの機嫌と体調が良ければ、生後間もなくからうつ伏せにしても良いと言われています。一方で、生まれて間もない赤ちゃんは環境に慣れようとしている時期でもあります。赤ちゃんによっては、うつ伏せになるのを嫌がるかもしれません。また、お母さんやお父さんがお世話をしながらうつ伏せの姿勢にさせ、赤ちゃんの様子に注意を払うのも大変なことです。うつ伏せの練習をさせてあげたい場合、生後1-2ヶ月くらいになって落ち着いてきたころから始めると良いでしょう。●うつ伏せの練習方法首の据わっていない赤ちゃんをうつ伏せにさせるときは、抱っこしたまま、親が仰向けに寝転んでみるやり方がおすすめです。身体がくっついていて安心感を与えながらうつ伏せの練習ができるため、赤ちゃんにもストレスがかかりにくいです。この時、赤ちゃんの顔がお母さん・お父さんの身体に埋もれて呼吸ができなくなっていないことを確認しながら行なってください。また、表情を見て、苦しくなっていないかどうかも確認してあげてください。最初は5-10秒程度で十分です。慣れてきたら、少しずつ時間を延ばしていって大丈夫です。お腹の上でのうつ伏せの姿勢に慣れてきたら、床の上で練習しましょう。後述しますが、柔らかい布団の上は窒息の危険があるので、固めのベビー布団かマットレス、畳の上などで行うと良いでしょう。床の上でうつ伏せの姿勢にするには、片手で首と背中を支え、もう片方の手でお腹から股関節あたりを支えながら、ゆっくりうつ伏せにしてあげてください。また、首の向きがまだ自分で変えられない段階の赤ちゃんもいるので、顔が下を向いてしまっていたら、横向きにそっと動かしてあげてください。赤ちゃんの表情を見ながら、無理のないタイミングで仰向けに戻してあげてください。うつ伏せの練習が終わったら、赤ちゃんをいっぱい褒めてあげてくださいね。うつ伏せの練習時の注意点うつ伏せの練習をする際には、いくつか注意点があります。赤ちゃんの安全のため、以下のことを必ず守ってください。●必ず親が見ている環境で行う一番大事なことですが、常に親が見ていられる環境で行なってください。ちょっと目を離した隙に顔が下向きになり、呼吸ができない状態になってしまうと危険です。うつ伏せに慣れていない赤ちゃんは不安になることもあります。そんな時にお母さんやお父さんが近くで見ていてあげることは、赤ちゃんの安心にもつながります。●無理にうつ伏せにしようとしない赤ちゃんによっては、うつ伏せの体勢を嫌がる子もいます。ストレスにならないように、無理のない範囲で行なってください。うつ伏せしている間に苦しそうな表情になったり、泣いてしまったらすぐにやめましょう。●柔らかい毛布やクッションの上で行わない柔らかい毛布やクッションの上で赤ちゃんをうつ伏せにすると、下を向いた時はもちろん、横を向いている時でも顔が埋もれてしまい、窒息の危険があります。床の上でうつ伏せにすると痛いかもしれないと思い、つい柔らかい場所で赤ちゃんをうつ伏せにさせたくなるかもしれませんが、危険なので固めの場所で行なってください。また、毛足の長いカーペットも注意が必要です。赤ちゃんの鼻や口が毛で塞がれない場所で行うようにしましょう。●うつ伏せのまま寝させない赤ちゃんによっては、うつ伏せのまま眠くなってしまうこともあるかもしれません。しかし、赤ちゃんがうつ伏せのまま寝ると、窒息の危険が伴います。赤ちゃんがうつ伏せに慣れてきたり、ある程度大きくなってくれば、寝ながらでも自分で呼吸ができるように頭を動かすようになります。しかし、頭を動かし慣れていない赤ちゃんは、自分で呼吸ができるように調整できないことが多いです。うつ伏せの姿勢のまま寝てしまったら、必ず仰向けに戻してあげてください。また、うつ伏せのまま寝てしまうと、月齢によってはSIDSの危険が伴います。次項で詳しく説明します。SIDS(乳幼児突然死症候群)とうつ伏せ寝との関係は?乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、赤ちゃんが眠っている間に突然死亡してしまう症状です。生後2-6ヶ月に多い症状で、寒い時期に発症しやすいとされています。●SIDSの原因と対策は?はっきりとした原因は解明されていませんが、近年の研究では睡眠や呼吸機能との関係があると言われています。また、仰向けに寝かせると発症率が低くなるという統計結果があります。赤ちゃんがうつ伏せのまま寝てしまわないように、気をつけてあげましょう。●うつ伏せに慣れてきて、寝返りを打てるようになったらうつ伏せの練習が進んでくると、自らうつ伏せになったり、寝返りを打てるようになってきます。うつ伏せの姿勢のほうが安心する赤ちゃんもいます。うつ伏せになっている間は、すぐ様子を見られるようにしてあげてください。また、転がった時に危険なものに当たらないよう、部屋を片付けてあげると良いでしょう。寝返りを打つようになったら、寝ている赤ちゃんがうつ伏せにならないよう、対策が必要です。まず、ふかふかの布団ではなく、固めのベビー布団かベビーベットで寝かせるようにしてください。さらに、大きいペットボトルに水を入れ、バスタオルを巻いたものや硬いクッションを寝ている赤ちゃんの脇に挟み、寝返りを打てないようにしてあげる必要があります。心配であれば、お昼寝のときに確認してあげると良いでしょう。個人差はありますが、赤ちゃんが1歳手前になるとうつ伏せになっていても自分で頭を動かし、自ら呼吸しやすく姿勢を変えられるようになってきます。●うつ伏せとうつぶせ寝は違うSIDSという症状を聞いて、「赤ちゃんをうつ伏せにさせるのが怖い」と思った方もいるかもしれません。しかし、SIDSの可能性が高まるのはうつ伏せのまま寝てしまった時であり、起きている間にうつ伏せになってもらう分には特に問題はありません。赤ちゃんが起きていることが確認できていれば大丈夫なので、安心してうつ伏せの練習を行なってくださいね。まとめうつ伏せの練習は、赤ちゃんの成長に絶対に必要なことではありません。一方で、うつ伏せの練習をすることにより、筋肉の発達を助けるという一面もあります。また、窒息やうつ伏せのまま寝てしまわないことに注意する必要があります。起きている間に、うつ伏せの練習をするようにしましょう。うつ伏せの練習は赤ちゃんとの遊びとして、楽しくコミュニケーションしながら行なってくださいね。●ライター/パピマミ編集部
2019年08月01日