鬼才ハロルド・ピンターの傑作『管理人』を小川絵梨子が演出。宿無しの老人デーヴィスのため、アストンは自分の部屋に彼を招き入れる。だがそこにアストンの弟ミックが現れて…という不条理劇だ。そこで出演者のイッセー尾形、木村達成、入野自由の3人に話を訊いた。イッセー演じるデーヴィスは、なかなかの厄介者。しかしさらに一筋縄ではいかない兄弟との関係について、「デーヴィスは力関係で見ていると思います。要は自分がここをねぐらにしていくには、どちらにすり寄ればいいのか。彼は人に対して、ずっといい顔をして生きてきたんでしょうから。それがこの兄弟にはのれんに腕押し(笑)。それによりどんどん思惑からずれていってしまうんですよね」とイッセーは分析する。演じるアストンについて入野は、「どういう人物なのかかなり不明瞭で、一貫してわかりそうでわからない。それはこの兄弟の関係性にしても、不確かな部分が非常に多いと思います。ただその掴みどころのなさが、面白さでもあるんですよね」と読み解く。弟のミックを演じる木村も、「わからないことに誇りを持って、堂々と演じていきたいって気持ちもあります。完全にハロルド・ピンターの術中にはまっていますが(笑)、人間の解釈が追いつかない人って絶対にいますから。でも出来るだけそこに近づきたいとも思うんです」と、意欲を見せる。演出の小川とイッセーは、2年前の『ART』以来の顔合わせ。彼女への強い信頼を、「ただただ小川さんの喜ぶ顔が見たくて、今回のお話をお受けしました(笑)」との言葉に込めたイッセーは、「『ART』の演出方法が非常に明確だったので、今回も僕たち3人に明確に課題を出してくると思います。それをクリアした先になにかがあると信じて、日々の稽古に臨みたいと思います」と続ける。入野と木村は、小川演出を受けるのは今回が初。入野は「小川さんの演出を受けたことがある方の話を聞くと、役者としての発見がたくさんある現場だと。今回はそれにプラスアルファ、『管理人』というこの戯曲を小川さんがどう読み解いていくのか。とても楽しみです」と期待を寄せる。また木村は、「初めましてなので未知数ではありますが、人って出会いによっていろんな変わり方をしていくもの。今回小川さんの演出を受けることで自分がどう変わるのか。すごく楽しみですし、しかもこの作品で挑めるというのが、非常に素敵なことだと思います」と目を輝かせた。取材・文:野上瑠美子
2022年09月20日