子育てにおける過干渉、多くの親御さんが気になることですよね。「良かれと思って」自分がしていることが実は過干渉だった、なんてこともあるかもしれません。手出し口出し以外にも、子どもの行動をすべて把握していたり、子どもと一緒に悩みこんだりすることも、過干渉です。子どもにどう接しているかを振り返って、自分の過干渉のタイプを知ることで、対応方法も変わってきます。公認心理師・心理カウンセラーのあさくらゆかりさんに過干渉のタイプと対処法を教えていただきました。(取材・文:前田陽子)<<前回の記事:子どもの合宿の荷造り、現地で困らないように親が支度をすると安心?日数分持たせたのに「着替えがない」という理由とは■子どもがすね当てを忘れていったら届けるのが親の役目?朝から自分で支度をして試合に出かけて行った息子。部屋を片付けようと入ると、すね当てが残っていた。というような経験をした親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。すね当てでなくても着替えの○○を忘れた、など同じような体験を持つ方はいるのでは?そんな時やりがちなのが、「今日は大事な試合だから、すね当てがなかったら困るはず!」と急いで届けて、そっと子どもに渡すこと。親としては、わが子が無事に試合に出られてよかった。普段からコーチには「忘れ物をしても届けないで」と言われていたけど、試合に出られないとかわいそうだし、コーチにもバレていないようだからいいよね?と内心思っていますよね。「忘れ物で試合に出られないのはかわいそう、届けるのは親の役目でしょ」と考える方もいますが、このような「良かれと思って」の行動も子どもの自立を妨げることになるのです。■コーチが「忘れ物を届けないで」というワケ忘れ物をしたときに、自分で何とかする力をつけるために、親御さんに手出しをしないようにお願いをしている、というチームもたくさんあります。試合に出られないとかわいそうという心情はわかりますが、そのために準備を怠らないこと、万が一忘れてしまったときにチームメイトに「貸してほしい」と言えることは、不測の事態で応用力が身についたり、コミュニケーション能力をつけるためにも経験をしておいたほうがいいからです。「どうしてもこの大会に出たくて頑張ってきた」など、子どもにとってターニングポイントになるような重要な試合もあるでしょう。そんな時に忘れ物を発見したら、親としては届けてしまうのも場合によっては悪くないのでは、とあさくらさんは理解を示します。ただし、そうしてしまったら「こういうことは二度としないよ」と子どもにくぎを刺すことも忘れずに、とも提言します。あくまで、自分が好きでやっているサッカーなので自分で支度ができるようになることが原則だからです。万が一お子さんが「お母さんが入れてくれなかったから」と忘れ物を人のせいにするようなら、次から届けることはやめましょう。■自立できる子にするには、親の役割が重要「子どものころに自分で何ひとつ決めていない、決めさせてもらえなかった。となってしまうと、責任が取れない子になりかねません。忘れ物を貸してとお友達に言えないことも気の毒に感じます」とあさくらさん。親は子どもに自分で考えて動ける子になってほしい、人とコミュニケーションをとれる子になってほしいという思いがあります。だからこそ、手出し口出しはしない方が良いのです。少し困ったことがあって、それを助けてもらったり助けたりという経験が大人になる上で役に立ちます。失敗しても大丈夫、という経験の積み重ねがチャレンジできる子を育てます。過干渉はそのチャンスを摘み取ってしまうもの。子どもがまだできないことは手伝って、もうできることは手を放す。年齢や子どもの発達状況に応じて見極めて、子どもの成長を促していきましょう。子どもを見守れるようになると、親にも心の余裕が生まれてきます。ここからは、あさくらさんに監修いただいた「過干渉チェック項目」と「過干渉タイプ別アドバイス」をご紹介します。結果を仲のいい親同士やチーム内でシェアしてみてくださいね。あなたの過干渉はどのタイプ?□わが子は年齢の割に幼い方だから、私の助けが必要にチェックした人□友達関係や休みの過ごし方を親が決めているにチェックした人□子どもの考えや行動はすべて把握しているにチェックした人□子どもが悩んでいると子ども以上に悩んで落ち込むにチェックした人□「あなたのため」と言うことがあるにチェックした人あなたの過干渉タイプは?□わが子は年齢の割に幼い方だから、私の助けが必要にチェックした人→ガミガミ、ひと言多い、代わりにやってしまうあれこれ手出し口出し型【対処方法】物理的距離、精神的距離を置いて、言わない、やらないを徹底。そのために子どもの様子を見ないで別のことを見たり、自分のことをする。いつも3つ言っているなら、2つに減らしてみることからスタートしましょう。□友達関係や休みの過ごし方を親が決めているにチェックした人→友達も寝る時間も休日の過ごし方などの決定権をはく奪するなんでも決めちゃう型【対処方法】メリットデメリットを出して、一緒に話し合って考える。個人的意見や親としての思い、社会的な見方などは子どもに伝えて、最終決定は子どもに任せましょう。□【子どもの考えや行動はすべて把握している】にチェックした人→一から十まで子どものことは知っていないと気が済まない監視的見張っている型【対処方法】見たい、知りたい、コントロールしたいは親の欲求だと自覚すること。このままでは子どもに「あなたを信じていませんよ」というメッセージが伝わってしまい、親子関係がねじれる原因になります。□子どもが悩んでいると子ども以上に悩んで落ち込むにチェックした人→境界があいまいになっているアナタは私一心同体型【対処方法】私は私、子どもは子どもを自覚する。ペットを飼うなどして子どもへのアンテナの感度を下げる、趣味などをして自分の時間を持つ。親の不安の解消のために過干渉になっている場合が多いので「それは誰の問題?」と自問してみましょう。□「あなたのため」と言うことがあるにチェックした人→本当は自分のため。「良かれと思って」ひと言多い型【対処方法】自分がしたくてもできなかったこと、理想の子ども像を押し付けていないか、自己満足になっていないかを確認。共依存=あなたのために頑張る自分が好きにならないように、客観視することです。いかがでしたでしょうか。お子さんのためを思っての行動が過干渉になっていることもある、という気づきを得ていただければ幸いです。あさくらゆかり公認心理師・心理カウンセラー一般社団法人日本ライトカウンセリング協会代表理事、株式会社kikiwell所属カウンセラー・統括責任者幼稚園教諭・保育士・公立小学校学級支援員を経て心理カウンセラーに。2007年1月より(株)kikiwellが運営するキキウェルメンタルヘルスサービス(旧:聞き上手倶楽部)に所属。ライトカウンセラーとして活動開始。「聞ける人ほどうまくいく」をスローガンに、カウンセラー養成講座の講師を務めている。また「聞かせて下さい、あなたのお話」、このひとことを熱く胸に抱え(株)kikiwellで電話カウンセラーとしても活動している。【カウンセリング実績】電話カウンセリング11,400件、メールカウンセリング4,000件、対面カウンセリング100件。連続最長電話カウンセリング記録11時間。クライエントのリピート率は85%
2021年11月08日