各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。毎週土曜日は、洋書を専門に扱う原宿・外苑前のブックショップ「シェルフ(Shelf)」(東京都渋谷区神宮前3-7-4)が選ぶ書籍をご紹介。■『Howling Winds』Vasantha Yogananthanマグナムが主催する「30 UNDER 30」(30歳以下の写真家30選)に選ばれたフランス人フォトグラファーであり、フランスのインディペンデント出版社「CHOSE COMMUNE」の共同設立者でもある、ヴァサンタ・ヨガナンタンの作品集。9月3日から29日までは、銀座のシャネル・ネクサス・ホールにて日本初の個展「A Myth of Two Souls (二つの魂の神話)」が開催されている。本書は、紀元前300年頃にサンスクリットの詩人ヴァールミーキによって記録された全7章からなるヒンドゥー教の聖典であり古代インドの大長編叙事詩「ラーマヤナ」を現代的に再話、各章ごとに1冊ずつ写真集化する長期プロジェクト「A Myth of Two Souls」の第5章として制作された。作者は、2013年よりインドを北から南へと旅をしながら「ラーマヤナ」の道筋を辿り、現地の人々と生活を共にする中で見られる「ラーマヤナ」の影響をインスピレーションに撮影を敢行。鮮やかな色に仕上げた写真だけでなく、イラストレーションなどの表現、土地固有のイメージを織り交ぜそれぞれ点在させることで、時代を超えたこのストーリーの層を成す一冊を巧みに編み込む。このような演出により敢えてフィクションと現実との境界線を曖昧にした作品に仕上げている。第4章にあたる前作『DANDAKA』のエンディングでは、魔王ラーヴァナがラーマ王子の妃であるシータを連れ去ったところで終わっている。ラーマ王子が酷く悲嘆に暮れていると、シータを探し出すべく何十万もの動物が世界中から集まって来た。動物たちは、はるか遠くに光り輝くランカー島があり、そこにラーヴァナがいることを知っていた。インド東部のタミル・ナードゥ州とスリランカの海岸線沿いで撮影された本作『HOWLING WINDS』は、カラー写真と手描きのアクリルペインティングを組み合わせ、『ラーマヤナ』が綴る魔法の世界を表現している。『ラーマヤナ』は長い時を経て何度も書き換えられ再解釈され続けており、この作品集自体もインド人作家 Arshia Sattar により新たに書き直されたものである。本プロジェクト「A Myth of Two Souls」は2016年から制作され、最終的に7冊が刊行予定。【書籍情報】『Howling Winds』写真:Vasantha Yogananthan出版社:CHOSE COMMUNE言語:英語ソフトカバー/76ページ/300×250mm発刊:2019年価格:7,800円■Shelfオフィシャルサイトで『Howling Winds』を購入する
2019年09月28日シャネル・ネクサス・ホール(CHANEL NEXUS HALL)にて、ヴァサンタ ヨガナンタンによる写真展「A Myth of Two Souls(二つの魂の神話)」が開催される。会期は、9月3日から29日まで。Longing For Love, Danushkodi, India, 2018 ©Vasantha Yogananthanヴァサンタ ヨガナンタンは、2015年にマグナムフォトアワードを受賞し、2017年にはその年の期待される新進写真家としてICP(国際写真センター)インフィニティアワードに輝いた注目のフランス人フォトグラファー。彼は、作品を通してドキュメンタリーとフィクションの間にある世界を探求している。なお、日本での展覧会の開催は今回が初めて。Luva And Kusha Munger, India, 2014 ©Vasantha Yogananthan本展の作品群「A Myth of Two Souls」は、紀元前300年頃に詩人ヴァールミーキが編集した『ラーマーヤナ』に着想を得て制作。『ラーマーヤナ』は、ヒンドゥー教の聖典の一つであり、『マハーバーラタ』と並ぶインド二大叙事詩。何世紀にも渡って幾度となく書き換えられ、再解釈され、現在もインド、東南アジアで書物だけでなく舞台、コミック、TVドラマなど、さまざまなメディアを通して広く親しまれている。ヨガナンタンは、2013年からインドを北から南へ『ラーマーヤナ』の物語の道筋を辿り、現地の人々と生活を共にし、『ラーマーヤナ』からインスピレーションを受けて撮影を進行。彼の一連の作品は、時空の旅という概念を核として、この古典作品を現代的に読み直すことを提案している。Magic Jungle, Jog Falls, India, 2016 ©Vasantha YogananthanRama Combing His Hair Ayodhya, India, 2015 ©Vasantha Yogananthan個展「A Myth of Two Souls」の作品が打ち出すストーリーは、『ラーマーヤナ』の中で描写される現代インド人にとっては伝説的な風景写真と、現地の人々が『ラーマーヤナ』の登場人物として出演し、一場面を演じる姿を納めた写真で展開される。Secret Door Avani, India, 2016 ©Vasantha Yogananthan写真作品は、4x5インチ大判カメラを用いてモノクロ撮影され、伝統的な手彩色を学んだインド人画家が着色を施している。現実とフィクションの境界線が曖昧になった、叙事詩的な旅へと見る者を誘う。The Crossing, Madhubani, India, 2014 ©Vasantha Yogananthanまた、このプロジェクトは現在も進行中で、2016年から2020年にかけて、『ラーマーヤナ』の全7巻に対応する7冊のフォトブックとして出版される。ぜひ、本展と合わせてチェックしたい。【展覧会情報】ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展「A Myth of Two Souls(二つの魂の神話)」会期:9月3日〜9月29日会場:シャネル・ネクサス・ホール住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F時間:12:00~19:30(初日9月3日は17:00まで)URL:入場無料、会期中無休
2019年06月04日