パッションフルーツは、甘酸っぱい果汁がたっぷりの南国のくだものです。常にどんなスーパーでも売られている、というほど一般的な果物ではありませんので、あまり馴染みがない方もいるかもしれません。興味本位で買ってみたけれど、食べ方がわからない…となることもある、ちょっと不思議な果肉をしています。そこで、今回は、パッションフルーツのおいしい食べ方、育て方、栄養などをご紹介します。南国の雰囲気を味わえる、おしゃれなフルーツを味わってみてはいかがでしょうか。■パッションフルーツってどんな果物?パッションフルーツは蔓性の常緑多年草の果物で、ブラジルなど南米の国々や、主に熱帯や亜熱帯で育てられています。日本語では、その花が時計に似ていることから、果物時計草(クダモノトケイソウ)とよばれています。「パッション」は情熱という意味のパッションではなく、パッションフラワー(トケイソウ科・トケイソウ属)の果物なので、パッションフラワーのフルーツ、パッションフルーツと呼ばれるようになりました。元々は、この「パッション」はキリストの受難という意味があります。16世紀に南米を訪れた宣教師が、花の造形がキリストの受難を象徴するかたちだと言ったのが始まりだとされています。果実は紫のものと黄色のものがあります。丸いかたちを多く見かけますが、楕円形のものもあります。果実を割ってみると、鮮やかな黄色いゼリー状のものに包まれた楕円形の種がたくさん入っていますよね。また、パッションフルーツを使ったバター、ハワイの名産品の「リリコイバター」は日本でも静かなブームになりつつありますよ。・爽やかな酸味が特徴パッションフルーツは、さらりとした酸味と、ほどよい甘みが特徴です。その風味は、まさに南国を味わえるでしょう。・旬の時期はいつ?パッションフルーツは、気温の高い地域が原産なので、暖かくなる春の終わりから夏にかけて多く収穫されます。6月から8月が収穫のピークとなり、沖縄など暖かい地域では5月ごろから早く収穫されている地域もあります。・種も一緒に食べてOK!パッションフルーツをカットすると、中に黄色いゼリー状のものに包まれた黒い種がたくさん入っていますよね。味がついているのは、この黄色いゼリー状のものですが、種ごと食べても大丈夫。スプーンで種ごとすくってポリポリと食べましょう。■おいしいパッションフルーツの選び方 ・大きな割れ目や傷は避ける パッションフルーツはつるりとした皮をしているので、輸送時などに傷がつきやすい果物です。細かい傷があるからといって、中の可食部分が悪くなっているとは限りませんが、できるだけ傷のないものを選びましょう。特に深い傷や大きな割れ目の入っているものは避けましょう。・ムラのない色づき熟していないパッションフルーツは薄い色をしています。なので、色むらがあるパッションフルーツはまだ熟していない可能性があります。追熟させるとだんだん濃い色になり、全体的に同じ色になっていくので、全体の色が均一で、色むらのないものを選びましょう。・表面の適度なツヤ熟してくると、パッションフルーツから水分が抜けてシワシワになっていきます。このころのパッションフルーツは甘みが増しており、食べごろなのですが、日持ちがしません。パッションフルーツは痛むと中身にカビが生え、外から見ただけではわからないことが多いです。痛んだものを避けるためにも、ツヤのあるパッションフルーツを購入しましょう。・パッションフルーツの保存方法は?パッションフルーツは常温で保存できます。常温で保存することでだんだん熟していき、水分が抜けて甘みが増します。直射日光が当たらない場所で保管しましょう。皮がシワシワになったら完熟です。この状態になったら痛みやすくなるので、冷蔵庫で保管し、なるべく早めに食べましょう。■パッションフルーツのおいしい食べ方とは?パッションフルーツは、そのまま食べたり、ジュースに入れたりしてももちろんおいしいですが、乳製品との相性もばつぐんです。アイスクリームやヨーグルトにかけると、乳製品のまろやかさとパッションフルーツの酸味が合わさり、さらにおいしく食べることができます。チーズケーキやカスタードタルトのなどのスイーツ作りにも使われていますよ。香りが飛ばないように、焼いたあとに上にソースとしてかける使い方が多いですね。パッションフルーツを入れることで、南国感たっぷりのさっぱりとした味になります。・食べ頃の見分け方パッションフルーツの食べごろは何を見て判断すればいいのでしょうか。それは「シワ」です。パッションフルーツの食べ頃は、大きく分けて3段階あります。一段階めは、シワがなくツルツルの状態。このときは甘みよりも酸味が強く感じられます。酸っぱいものが好きな人や、さっぱりとしたジュース、酸味を生かした料理を作りたいときにはこの状態がおすすめ。二段階めは、少しシワが出てきた状態です。一段階めよりも酸味がやわらいで感じられますが、酸味の方が甘みよりも強く感じられます。三段階めは、シワシワになった状態。パッションフルーツの完熟の状態です。あまりにシワシワだと、食べても大丈夫か不安になるかもしれませんが、水分が抜けて甘みが一番強く感じられる状態です。使用用途や好みに合わせて食べる時期を調節することで、いろいろなパッションフルーツを楽しむことができますよ。・生でそのまま食べる一番簡単で、一番人気な食べ方は、半分に切ってそのまま食べる方法です。パッションフルーツを切って、中にある黄色いゼリー状のものを種ごとスプーンですくって食べます。皮が固い上、ツルツルしていてすべりやすいので、手を切らないように注意しましょう。先に包丁の先や角で小さな穴を空け、そこから包丁を入れると切りやすくなります。・ジュースやピューレにほかのフルーツといっしょにミキサーに入れジュースにします。特にパイナップルやマンゴーなど、南国が原産のフルーツと合います。パッションフルーツのみの場合はミキサーにかけなくても、水と混ぜるだけでおいしいパッションフルーツウォーターになります。ミキサーに入れると種は小さくなりますが、固い粒々感が残るので、気になる方はザルで種を濾してからミキサーに入れましょう。特に種を避ける理由がない方は、ぜひ種ごと食べることをおススメします。なぜなら、後述する「ピセアタンノール」という栄養素は種子に多く含まれているからです。また、ピューレにするときはパッションフルーツ1つに対し水をカレースプーン1杯入れよく混ぜるといいですよ。このときも、お好みにより、種をザルで濾しましょう。甘みが欲しい場合は、砂糖を入れて加熱すると濃厚になります。このとき、沸騰させてしまうと香りが飛ぶので注意しましょう。加熱時間は3〜4分ほどが目安です。・冷凍するパッションフルーツは冷凍してもおいしく食べることができます。切らずに丸ごと冷凍しても大丈夫ですが、中身だけ取り出して冷凍しておくとかさばりません。冷凍したあと半解凍させるとシャーベットのように食べることもできます。おいしく保存できる期間は約3ヶ月です。また中身を取り出し製氷皿に入れておくと、使いたいときに使いたいだけ使えるので便利です。・スイーツ作りにスイーツ作りにパッションフルーツを使う場合、最も多く使われているのは、スイーツの上にソースのようにトッピングする方法です。特にチーズケーキ、カスタードタルト、パンナコッタなどが人気で、パッションフルーツをかけるだけでひと味ちがった贅沢な一品になります。ピューレにしたものを使ったムースもありますよ。また、パウンドケーキなどの上にパッションフルーツを使ったアイシングを乗せると、見た目も豪華になり、さっぱりとしたパッションフルーツケーキになります。パッションフルーツアイシングの基本的なレシピは、アイシングシュガー(粉糖)375ml、バター20g、パッションフルーツ2〜3個(大きさにより調整)です。常温に戻してやわらかくしたバターとアイシングシュガー(粉糖)、パッションフルーツを電動泡だて器などでよく混ぜ、冷めたケーキなどに乗せたあと、冷蔵庫でよく冷やして完成です。ケーキが暖かいとアイシングが溶けてしまうので、しっかりと冷めたあとに乗せましょう。■パッションフルーツの育て方・植え付け南国が原産の植物なので、寒さには強くありません。暖かくなり、霜の心配がなくなる4月から6月ごろが植え付けには最適です。植木鉢で育てる場合は根詰まりを起こさないよう、1~2年に1回は植え替えを行うようにします。できるだけ日当たりがよく水はけのいい、風が強く当たらない場所を選びましょう。もし風が当たる場所で育てる場合は、強い風にさらられると発育が悪くなったり折れたりするので、支柱で支えてやりましょう。・肥料と水やりパッションフルーツは水切れに非常に弱い植物です。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るくらい、たっぷりと水をあげましょう。生育期には1日に2回、水をやる必要があります。せっかく育ったパッションフルーツが収穫期になって枯れてしまって悲しいので、真夏の時期は特に水切れには注意しましょう。春から秋の成長期に、チッ素、リン酸、カリの三要素がバランスよく含まれている肥料か、リン酸が多めの肥料を与えましょう。ある程度株が育ち、花が咲く時期にはチッ素系肥料は控えめにし、リン酸肥料を中心に与えてください。・摘心と剪定 不要な部分を切り落とし剪定することで、ほかのつるに栄養が行き収穫量が増えます。パッションフルーツは果実を収穫した後に剪定します。伸びすぎてしまったつるや、枝同士が密集している部分を剪定しましょう。切り取った枝は挿し木にも使えます。・挿し木パッションフルーツは挿し木でも増やすことができます。まず脇枝が出ていない枝を20〜30cmほどの長さで切り取ります。上の葉を2枚だけ残し、ほかの葉やつるはすべて取り除きます。残した葉は1/3ほどの大きさに切ります。こうすることで水分が保たれやすくなるので、枯れにくくなります。約1時間、枝を水の入ったコップなどに挿し吸水させます。あらかじめよく湿らせておいた挿し木用の土に、倒れないようしっかりと植えます。明るい日陰に置き、土が乾かないように注意します。うまくいけば約1週間ほどで発根します。・病害虫枝が込み合っていたり、風通しが悪く過湿状態になると病気にかかりやすくなります。特にかかりやすいのは「円斑病」と呼ばれる、分生子果不完全菌類に属す菌が原因の病気です。果実、枝、葉全てに感染する可能性があります。葉に発生した場合は、葉の表面にうす黄色の淡褐色の斑点ができ、だんだんと広がっていき、やがて落葉します。薄黄色になってしまった部分をよく見て、小さな黒い点々があるようならこの病気の可能性が高いです。果実に感染した場合は、黄色っぽい斑点が発生し、だんだんと大きくなり果実全体に広がっていきます。また、枝が感染した場合、枝の中心が褐色になってしまいます。円斑病が発生してしまったら、感染した部分を取り除き、殺菌剤を使用しましょう。薬害が出ないよう、使用する際は使用方法を守ってくださいね。また、過湿状態になると、アブラムシやアザミウマなどの害虫も発生しやすくなりますので、雨が多く降ったあとは特に気をつけましょう。■日常にパッションフルーツを!爽やかな酸味の南国のくだものパッションフルーツ。含まれる栄養素、特に強力なアンチエイジングやさまざまな病気の予防が期待できるピセアタンノールの効果は、ほかの果物と比べても類をみないすばらしいものです。ふさふさと茂るつるを利用して、夏の暑さ対策としてグリーンカーテン作りにも使えます。日常にパッションフルーツをぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。《参考》・ 大塚製薬「ビタミンA / βカロテン」 ・ 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「カリウムの働きと1日の摂取量」 ・ 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「ビタミンCの働きと1日の摂取量」 ・ 森永製菓 研究開発「パセノール」 ・ 森永製菓「健康の天使」
2021年06月13日パンに入れたり、焼き菓子などによく使われるシナモン。同じような香りの和菓子に八つ橋がありますよね。2つはとてもよく似た香りですが、八つ橋にはニッキというものが使われているのを知っていますか?香りはよく似ているけど違いはよくわからない、ということがほとんどではないでしょうか。今回は、シナモンとニッキの違いを徹底的に解説いたします。■シナモンとニッキの違いこの2つは、どちらも似たような香りがしますが、それは同じ「クスノキ」科の肉桂(ニッケイ)という樹木から取っているものを使っているからです。しかし、それぞれにははっきりとした違いがあり、味も異なります。ここでは、それぞれの特徴と違いを説明していきます。・シナモンの原料 シナモンはスリランカ産のセイロンニッケイの樹皮を乾わかしたものです。樹皮とはいっても表皮ではなく、内側の柔らかいコルクのような皮を使います。この部分は乾かすと丸まるので、その状態がシナモンスティックとして売られています。歴史は古く、紀元前4000年ほどには古代エジプトでミイラの防腐剤として使われていたことがわかっています。濃厚な香りのためかはわかりませんが、神聖な儀式にも使われていたとみられ、厳粛で正式な場面には欠かせないものだったようです。・ニッキの原料ニッキは日本産のニッケイの根から取った、皮から作られたものです。シナモンのよう甘い香りはしますが、爽やかで強い辛みがあります。日本産のニッケイは生産量が少なく、希少のためシナモンより高価です。ニッキを使ったお菓子の代表的なものとして、八つ橋が挙げられます。日本にニッケイが伝わったのは奈良時代くらいのことです。樹木が育てられ始めたのは江戸時代で、それ以降盛んに生育されました。東南アジアが原産といわれていますが、沖縄などでは日本の固有種も発見されています。・シナモンとニッキの違いシナモンとニッキの違いは、「樹皮か根か」「産地の差」「甘い香りが強いか」「辛みの強さ」の差によるものです。それぞれの差によってお菓子に入れたり、スパイスにするなど使い分けをします。■シナモンの特徴とはお菓子やスパイスに多く使われる、シナモンの具体的な特徴はどのようなものでしょうか。詳しく説明していきましょう。・甘くて濃厚な香りとマイルドな風味シナモンは甘く濃い香りがしますが、味に甘味はありません。風味が穏やかなので、トーストにはちみつと一緒にかけて直接食べても嫌味がありません。風味が抜けてしまったコーヒーなどと一緒に飲んでも、おいしくいただけますよ。・オイゲノールという成分が含まれているセイロンニッケイには「オイゲノール」という成分が含まれています。オイゲノールとは、シナモン特有の香りを出す成分で、殺菌作用や鎮痛効果などが望めます。歯医者の麻酔にも用いられることから、鎮痛効果の高さがうかがえますね。オイゲノールを含んだスパイスにはクローブやバジルなどがあり、虫が嫌う香りのため防虫効果があるといわれています。抗菌や消毒作用もあり、カビを抑えるはたらきもあります。・お菓子作りに使われるシナモンはその甘い香りの特徴からも、シナモンロールやパンといったお菓子に入れることが多いです。リンゴとの相性もいいため、アップルパイに入れるとおいしくなりますよ。また、スパイスとして用いられることもあるため、香辛料としてカレーに入れることも多いです。・飲み物や肉料理にも使われるお菓子に使われる印象があるシナモンですが、肉料理やカレーなどの料理にも使用されます。仕上げにパラっとパウダーを振りかけるだけで、ふんわりと甘い香りが漂って食欲も沸きますよ。紅茶やコーヒー、ワインにもサッと入れるだけで、いつもとは違った飲み物を楽しむことができますのでおすすめです。■ニッキの特徴とはシナモンと違って根の場所を使うニッキは、同じ樹木でも成分や香りに差があります。ここではニッキの特徴を説明していきます。・すっきりとした刺激ニッキも甘い香りはしますが、シナモンほど強くありません。ミントのような香りと、ツンと鼻をつくような爽やかな強い辛みが特徴の香辛料です。・飴や八つ橋に使われる辛みが特徴のニッキ飴はニッキを使ったお菓子の代表的なものですが、子どものときに甘い飴だと思って食べたら、何とも言えない辛みが強くてびっくりした人もいるのではないでしょうか。八つ橋に使われるのもニッキです。あの風味が苦手で食べられないという人もいるようですが、八橋の場合は生地や中身に甘味が使われているので、辛味はだいぶ軽減されていますよね。ニッキを味わったことがない人は、生八橋を食べてみるとわかりやすいのではないでしょうか。・作るのに手間がかかるシナモンは樹木の幹部分の皮を使いますが、ニッキは根の皮を使います。幹の樹皮は2年ほどで取れますが、根の部分は15年ほどかけて育つことから取れるまでの時間がかかります。また、根を手作業で掘り返すことから、生産には手間も必要となります。もともとは沖縄で自生していましたが、現在は和歌山県や鹿児島県といった温かい地域で育てられています。■シナモンとニッキの使い分け香りは似ているけど、辛みの差から使われるものにも違いが出てきます。ここではそれぞれの代表的な食べ物を紹介していきます。・シナモンを使った代表的な食べ物シナモンを使った代表的なものといえば、シナモンロールなどのお菓子。また、カレーなどスパイスを効かせたものがあります。ほかにも、アップルパイ、シナモンを使ったお茶のチャイ、などが有名です。トーストにバナナをのせてシナモンを振ったり、フレンチトーストに使ってもおいしいです。甘い香りを活かしたものに多く使われる傾向がありますね。シナモンは香りが強いですが味はあまりないので、バターのような濃厚な風味を持つ食べ物と合わせると相性がいいです。ケーキやクッキーといった焼き洋菓子にピッタリですね。・ニッキを使った代表的な食べ物ニッキを使った食べ物といえば、八つ橋とニッキ飴です。現在では固い八つ橋より生八つ橋がのほうが人気が高いですが、昔からあるのは半円上のせんべいのような固い八つ橋です。この八つ橋にはニッキを粉状にしたものが入っているため、茶色をしています。そして、ニッキ飴は飴といいながらも、甘味より辛みが強い飴です。ニッキに砂糖と水を加えて作る飴は、昔懐かしい味がしますよ。ほかにも、関西ではニッキ餅やニッキ水といったニッキを使った食べ物が多く存在します。清涼感のある辛みが、暑い時期には合いますよね。もともと京の都に近かった大阪は、葛湯のようなほのかな甘さを好む傾向があり、甘いだけの飲み物だけではなく辛みのある飲み物もよく飲まれていました。昭和の駄菓子ブームのときが一番飲まれていたようですが、現在でも夏になると関西ではよく見られる飲み物の一つでもあります。■シナモンとニッキの健康と美容効果シナモンは古代エジプトで使われていたということもあり、世界一古いスパイスと呼ばれています。もともとはミイラの防腐剤として使われていましたが、漢方といった薬としての用途もあります。食べると健康にどのような作用があるのか見ていきましょう。・血行促進血行を促進して発汗を促す作用が見込めます。血行を促して発汗させること作用があることから、風邪の症状を緩和させる漢方薬に含まれていることが多いです。風邪症状の緩和以外の、冷えや肩こりといったものも血流が悪いことから引き起こされるので、これらの症状の緩和も期待できそうですね。・中性脂肪・コレステロールを抑える動物実験の結果ではありますが、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減らす作用が見込まれるとの期待もあります。・血圧・血糖値の低下ニッケイにはプロアントシアニジンと呼ばれるポリフェノールの一種が含まれています。この成分はインスリンの分泌を促す作用があることから、血糖値を安定させることが期待されています。・抜け毛・白髪予防血行を促す作用が見込めることから、頭皮の血流もよくなることが期待されます。頭皮の血流がよくなることで栄養がいきわたりやすくなり、抜け毛や白髪といった髪の毛のトラブルも緩和されることが期待できます。・胃腸を丈夫にする独特の甘い香りによって食欲を増進させ、消化酵素の分泌を促すことから胃腸を丈夫にする作用も見込めます。漢方の健胃薬には「桂皮」という名で入っていることがありますので、見てみてくださいね。この特徴的な香りは「桂皮アルデヒド」と呼ばれるもので、ガムやアイスクリームなどの添加物にも使われます。・食べ過ぎには注意!血糖値を下げる効果が見込めることから、サプリメントとして販売されていますが、健康によさそうだからといって食べ過ぎはよくありません。シナモンやニッキには「クマリン」という成分が含まれており、大量摂取すると肝障害を起こしてしまうおそれがあります。クマリンが含まれているニッケイは原産国によってかなり異なりますが、大人であれば1日5mgを超えない範囲で食べる分には問題ないといえます。妊娠中の摂取も心配ですが、香りづけ程度の量であれば問題ないといえるでしょう。それよりも心配なのは、シナモンと一緒に食べるシナモンロールやシナモンティーといったものに砂糖がたくさん使われていること。妊娠中は特に、糖分の摂取にも気をつけましょう。■シナモンとニッキには明確な違いがあった!シナモンとニッキの差はおわかりいただけたでしょうか。同じ樹木でも使う部分が違うこと、香りの成分が違うことなどがわかりましたね。ニッキは辛みが強いことから、甘味のある食材と合わせることでベストマッチするのですね!健康にもよさそうな成分が入っていますが、くれぐれも食べ過ぎには気をつけて、上手に取り入れるようにしましょう!現代では、製菓材料だけでなく、スパイスの小瓶でも「シナモン」や「シナモンシュガー」が売っています。自宅でつくる料理に加えやすいので、ぜひ挑戦してみてくださいね。《参考》・ 山下 陽子、 芦田 均著「プロシアニジンの新たな生体機能調節 プロシアニジンの肥満・高血糖予防効果」 ・ 中谷延二著「香辛料の機能性成分」 ・ Farideh Shishehbor著「Cinnamon Consumption Improves Clinical Symptoms and Inflammatory Markers in Women With Rheumatoid Arthritis(シナモン摂取による関節リウマチの臨床症状と炎症マーカーの改善)」 ・ Sung Hee Kim著「Anti-diabetic effect of cinnamon extract on blood glucose in db/db mice(db / dbマウスの血糖値に対するシナモン抽出物の抗糖尿病効果)」 ・ タケダ健康サイト「桂皮」
2021年03月10日ビルだらけの都会で育った方々にはあまり馴染みがないようですが、山がある地方で育った人々は「あけび」を採取したり、食べたことがある方もいるはずです。とろりとした白い甘いゼリーの味は、優しい自然の甘さです。子供のころに食べた経験はあっても、大人になるとあまり食べる機会もないようです。今回は、あけびの味やおいしい時期や食べ方を紹介しますので、食べる機会があるときはご参考にしてください。身近であけびを採集できる方も必見です。■あけびとはみなさんは、大きな木に巻き付いた蔓に実をつけた「あけび」を見た経験がありますでしょうか。身近に里山があったのなら、秋になって実ったあけびを見つけて食べたことがある人も多いはずです。「あけび」は東アジアが原産のアケビ科アケビ属の植物です。北海道を除く日本全国の山間部には「ミツバアケビ」「アケビ」「ゴヨウアケビ」の3種類が自生していて秋になると実を結びます。アケビの実は10cmほどの大きさで、少し大きい卵のような楕円形の形になります。・あけびってどんな果物?あけびの実が熟すと皮は紫色になります。実の中には筋子のような形をした白い果肉が実っています。乳白色のゼリー状の実の中に、小さな黒い種がたくさん入っています。種は食べられません。見慣れない方の中には白い果肉と黒い種の形状が少し気持ち悪いと感じる方もいるようです。・あけびの味熟したアケビの果肉はねっとり感がある透明がかった白いゼリー状で、優しい自然な甘みです。秋の味覚である、熟れた柿に似た味で、酸味は感じられません。素朴なおいしさが味わえる果実です。あけびは皮も食べることができます。そのままでは食べられませんが、調理して加熱すると食べられます。少し苦みが感じられますが、それもあけびのうま味です。・あけびの旬はいつ?自然な甘さが楽しめるあけびの旬の時期は秋です。あけびは、5月ごろに花が咲いて、実が大きくなり熟すのが9月〜10月ごろです。・あけびの産地あけびは日本各地の山間部で自生していますが、一部の地域ではあけびを栽培しています。特に、東北の山形県ではあけび栽培が盛んです。山形県のあけびの生産量は2015年に約54t。国内シェアの約90%のあけびが山形県で栽培されています。四国の愛媛県でもあけびが栽培されていますが、生産量は3.3t、シェアは5.5%ですので、山形県が生産王国と言えますね。・あけびの栽培方法あけびは家庭で栽培することもできます。庭植えで育てる場合でも、日当たりや水はけなど制約された環境条件はありません。ただ、あけびを収穫するためには多少の栽培条件があります。あけびは1本の木に雌花と雄花が咲きますが、自前の花粉では受粉が困難なために、ほかの品種を植える必要があります。2種類のあけびを植えると収穫が期待できます。あけびは、12月~3月の期間であればいつでも植え付けできます。深さ、直径ともに50cmほどの穴を掘って、堆肥などの養分を入れ、あけびの根を広げて植えます。水は豊富にあげ、切らさないようにしましょう。アケビはつる性の植物ですから、仕立てができます。庭の一画にあけびのアーチも完成できますので、ガーデニングを楽しむことができますね。ただ、あけびを上手に収穫するには、剪定や摘蕾(てきらい)と摘果など、細かい手入れが必要になります。数年かけて楽しみながら収穫しましょう。・漢字でどう書くの?あけびを漢字で書く場合は、「木通」と書きます。「木通」は、つるに空洞があって空気が通ることから、そのように表記されたといわれています。そのほかにも、通草・丁翁・山女も使われています。そもそも「あけび」名前の由来ですが、実ると実が裂けることで「開け実」になり、それがなまって「あけび」になったという説があります。また、「赤い実」が訛りあけびになった、など諸説あります。・あけびに似た『ムベ』との違いムベは、アケビ科に属する常緑性の植物です。熟してもあけびのように割れませんが、実は食用にもなり、10月~11月が収穫期です。関東以西の地域に自生していますが、近年は比較的栽培が容易なこともあって、観賞用の植物として栽培されることが増えています。■あけびの種類みなさんはあけびに種類があることをご存じでしょうか?あけびについて種類まで知っている方は、植物学に見識が深い方か、あけびマニアの方かもしれませんね。あけびは5種類あり、4種の原種と一つの雑種があります。東アジアが原産地であり、日本には原種2種と雑種の1種類が自生しています。また、ムベはあけびと同じアケビ科の植物ですが、ムベ属に分類されています。日本にはあけび・ミツバアケビの原種と、雑種のゴヨウアケビが自生しています。3種類の見分け方は葉の形です。・三つ葉あけび「三つ葉あけび」の特徴は、名前の通り少しギザギザした丸い葉が3枚ついています。濃い紫色の花つけます。実は熟すと真っ二つに裂けて白い果肉が出てきます。熟したあけびの実は甘味が強く、あけびの実は若干ずんぐりした形でサイズも大きくなります。・五葉あけび「五葉あけび」は、「あけび」と「三つ葉あけび」の交雑種といわれています。特徴は、こちらも名前の通り、小葉が5枚ついています。三つ葉あけびと比べると、全体的に小さなサイズになっています。実は三つ葉あけびよりも細長い形になります。五葉あけびと紛らわしいのが「あけび」です。「あけび」も葉が5枚です。「あけび」は日本のあけびの原種の一種です。・白あけび「白あけび」はバナナアケビとも呼ばれます。あけびの実は淡黄色の皮で、1房に5個くらいあけびの実が実ることもあります。あけびの実は熟すと皮が割れて、中の白い実は、ほかのあけびと同じように食べることができます。新芽や果皮も油炒めめや茹でて食べることができます。■あけびの食べ方多くの人々が、あけびは果実だけが食べられると思っているようですが、あけびはほかにも食べるところがたくさんあります。秋に実る果実だけでなく、果実を包む皮も料理すれば食べられます。また、春先に芽を吹く新芽も料理して食べられます。さらに、ツタの一部も食べることができますので、あけびの食べ方を詳しくご紹介しますね。・種は食べないあけびの種は食用ではありません。白いゼリー状の果肉には種がたっぷりと詰めこまれていますので、種と果肉を分けるのはかなり困難です。スイカを食べるときと同じように、あけびも果肉と種を一緒に食べて種だけを後で出すのが楽なようです。くれぐれもあけびの種は食べないようにしましょう。食べると便秘の原因になることがあるそうです。・果肉の食べ方一般的にあけびの果肉は生のまま食べます。ザックリ割れた口から果肉を手ですくって食べたり、スプーンですくって食べます。先述いたしましたが、種は食べてはいけません。どうしても果肉だけを取り出したい場合は、目の細かい裏ごし器で裏ごししてから食べることができます。また、裏ごしして取り出したゼリー状の果肉をシャーベットにしてもおいしくいただけますよ。・皮の食べ方あけびの栽培が盛んな東北では、以前からあけびの皮を調理して食べています。皮は生のままだと苦みと渋みがあって食べられないようです。下ごしらえをして調理の手を加えるとおいしくいただけるようです。あけびの皮は苦みが強く、そのアク抜きのために水に数時間浸けることをおすすめします。あく抜きしたあけびの皮は、炒めたり、油で揚げたりすることで旨味が増します。天ぷら料理や炒めものやきんぴらでおいしくいただけます。・あけびは新芽もおいしいあけびはほかの山菜のように新芽が食べられます。あけびの新芽は「木の芽」と呼ばれていて、新潟県ではあけびの新芽を昔からお浸しや炒め物として食べていました。ただ、新芽が食べられる種類は「三つ葉あけび」だけです。新芽の苦みが弱い三つ葉あけびは、日本海側に多く自生し、雪国では4月から6月にかけて人気の山菜の一つになっているそうです。■あけびの栄養と効能栄養価が高いあけびは果物として人気ですが、薬用効果があることをご存じでしょうか?日本の大自然の中で悠然と成長するあけびは、たくさんの日光を浴び、栄養豊富な山間地の土壌からたっぷりと栄養分を引き出します。大自然の恵みをたくさん享受して実を付けるあけび。そんなあけびにはたくさんの栄養素が入っています。まずあけびの栄養と、あけびが持つ栄養素の効能について紹介します。・あけびの栄養「文部科学省の食品データベース」に、あけびの栄養素の説明があります。あけびのカロリーは果肉の可食部分100gあたりで82kcal、あけびの皮100gには34kcalとなっています。脂質は果肉部分は0.1g、皮には0.3gが含まれています。炭水化物は果肉分に22g、皮には8.6gほど含まれています。たんぱく質は果肉部分は0.5g、皮は0.3g。あけびの果肉には多くのビタミンCも含まれています。その量は可食部100gの中にビタミンC が65mgあります。カリウムも多く、可食部100g中に95mgもありますよ。・あけびはカロリー控えめあけびのカロリーは可食部分100gあたりで82kcalです。ほかの果物100gあたりのカロリーと比較してみましょう。いちごは100gで33.9 kcalになりますが、8個くらい食べると300gですので、101.7kcalになります。秋の味覚・柿は60kcalですが、1個200gほどですから120gになります。りんごは54 kcalですが、1個が255gあり、138kcalほどになります。バナナは88.7 kcalです。あけびは100gあたりのカロリーは低くありませんが、食べられる量が多くなく、ほかの果物に比べてもカロリーはさほど高くならいようです。・あけびの効能あけびの効能といえば「美肌効果」です。あけびの果肉にはビタミンCが多く含まれています。ビタミンCはシミなどが発生するメラニン発症の原因となるチロシナーゼのはたらきを阻害します。また、ビタミンCはお肌の張りを保つコラーゲンの合成を助け、肌のしわを防ぐ効能も期待できます。また、あけびの果皮には高血圧を予防するカリウムが多く含まれています。高血圧を引き起こす原因となる塩分の摂り過ぎに対し、カリウムを摂取することで、体内の過剰になったナトリウムの排出が促進され、高血圧になるリスクを軽減する効果があります。加えて、あけびには腸内環境を整える効果もありますよ。あけびは食物繊維が豊富ですので、腸内に溜まった老廃物を体外へ排出するはたらきがあります。また、腸内の善玉菌を増やすはたらきもします。あけびには、便秘解消の効果があるようですね。■あけびは生薬になる!?みなさんは生薬を知っていますか? テレビコマーシャルなどで「生薬」という言葉は聞いたことがあるはずです。生薬(しょうやく)は自然由来の動物や植物や鉱物から作る薬です。古くからあけびは生薬として利用されていました。その生薬を複数種類調合して、体の不調を整えていくために服用するのが「漢方薬」です。あけびから生成される生薬はさまざまな漢方薬に使われています。・あけびの生薬としての効能あけびは主にツルの部分が生薬として利用されており、「木通(もくつう)」と呼ばれ乾燥させて使われています。消炎、利尿やのぼせ、ほてり、イライラを抑える清熱効果や、女性の通経作用などがあります。あけびの実や根も漢方薬などに利用されていますが、木通が一番有名ではないでしょうか。・調製方法あけびや三つ葉あけびの茎を乾燥させて利用する、漢方の木通(もくつう)という生薬は、あけびをどのように処理して調整するのでしょうか。あけびが実り葉が落ちた11月頃に、直径が1cm~2cmの大きさになったツタを採集して、2mm~3mmの厚さに輪切りにし、天日で乾燥させて調製されてつくられます。家庭でやるよりは、漢方薬を買ってしまった方が良いでしょう。・あけびの生薬と似ているもの説明した通り、日本で木通と呼ばれる生薬は、あけびや三つ葉あけびの茎を乾燥させたものをそのように呼びます。漢方薬として使われる場合は、膀胱炎やむくみ解消、湿疹、月経不順などの症状に用いられます。生薬の中には木通のほかに「〇〇通」と呼ばれるものがあります。大部分が、蔓状の植物の茎を原料として生成されています。ただし、使用される植物も効能も木通とは異なり、中には日本での使用が控えられているものもあります。漢方薬は複雑でデリケートな薬ですので、服用したいときは有資格の薬剤師の方に相談しましょう。■あけびの選び方街中ではなかなか目にすることがないあけびだけに、おいしいあけびの選び方が気になりませんか?最近はたまにスーパーに並んでいることもあります。スーパーに並ぶあけびは山形県で栽培されたものが多いようですよ。あけびについて選び方を知っておくと、おいしいあけびが手に入ります。おすすめのあけびの選び方を紹介しますね。・鮮やかな色とハリのある皮あけびの実は、熟すときれいな淡紫か紫色の皮に変化し、ハリのある楕円形の実に成長します。新鮮なあけびの皮はハリがあり、ぱっくり割れているものはよく熟している証なのです。まさにその時期こそが食べごろになります。完熟したあけびの皮は鮮やかな美しい紫色になります。あけびを選ぶ際には綺麗な紫色のものを選びましょう。傷があったり変色しているものは避けた方が良いようです。・ふっくらとした見た目あけびの実がふっくらとしているものがおすすめです。しぼんでいたり、萎びた印象を受けるあけびは避けましょう。さらに、手に持った時にずっしりした感じがするあけびは、実がぎっしりと詰まっていてよく実っています。ふっくら、ずっしりがおすすめです。・割れているものが完熟あけびを食べる時期の問題もありますが、あけびの皮が少し割れたものは完熟しています。あけびの実が割れていない場合は、冷蔵庫で保管して1日~2日経過して皮が割れたら食べごろになります。完熟していないあけびは甘さが足りません。せっかくいただくのですからもっともおいしい時期に食べましょう。・白あけびの場合白あけびは、実が熟れてもあけびのように紫色に変色しませんが、実が割れるという特徴は共通です。実が割れて食べ頃になったら、中にある粘り気があるゼリー状の果肉を食べます。果肉にはたくさんの黒い種があります。種は食べられませんのでゼリー状の果肉と一緒に食べて、後で種だけを口から出します。■あけびの保存方法一度で食べられないほどたくさんのあけびを収穫したり、たくさんのあけびをもらったときは、どう保管したらよいか悩むでしょう。あけびには最適の保存方法があります。生鮮食料品のあけびは、熟す前と熟してからの状態で保存方法が異なってきます。その保存方法を紹介します。・完熟したあけびは日持ちしない実が二つに大きく口をあけたあけびは熟していて食べごろになっています。この状態のあけびは日持ちしません。おいしくいただくにはできるだけ早く食べるのがおすすめです。どうしてもその日に食べられない場合でも、3日以内には食べましょう。完熟したあけびはできるだけ早く食べたほうがおいしいですよ。・乾燥を防ぎ冷蔵庫へ完熟前であけびの実が割れていないものは、あけびの乾燥を防ぎ、みずみずしさを保つためにラップでくるんだり、ポリ袋に入れて冷蔵庫で保存することをおすすめします。冷蔵庫で保管したあけびも少しずつ成熟が進行しますので、実が割れた3日~5日後に食べるとおいしあけびがいただけます。■自然の恵み優しい甘さのあけびを食べよう!日本人は古くからあけびを身近な果物として親しんできました。秋になると日本の山間地であけびが実っています。最近は、自然のあけびだけでなく、栽培されたあけびもあります。あけびは日本の自然が作り出した優雅な優しい甘さが特徴です。あけびは果実だけでなく果肉も食べられます。健康にも良い効果が期待できる「あけび」を食べましょう。
2020年08月09日