綾野剛・主演の『シャニダールの花』が7月20日(土)に公開を迎え、綾野さんを始め、刈谷友衣子、山下リオ、古舘寛治、伊藤歩、石井岳龍監督が都内劇場で行われた舞台挨拶に登壇した。石井監督が長年、温めてきた企画を実現させたオリジナル脚本による意欲作。一部の限られた女性の胸にだけ花が咲くという不思議な世界を舞台に、この花を美しく咲かせる使命を負った研究員と女性たちの心のケアを担当する女性の愛を描き出す。ついに公開を迎え、綾野さんは「感慨深いです。感謝の極みです」としみじみと語り、満員の客席に深々と頭を下げる。石井監督は常々、今回、本作のために集結した俳優陣を「理想のキャスト」と語っていたが、「(物語は)大ウソの話ですが、俳優の感情表現、存在感がこの世界をリアルで豊かにしてくれる。そのための“案内人”であり、重要でしたが、主演5人に恵まれて嬉しかったです」と改めて感謝の思いを口にした。公開前の試写会でひと足早く映画を鑑賞した観客からは、女性の胸の花に触れ、診療する綾野さんの並々ならぬ“色気”を指摘する声が多数あったという。綾野さんは「いやらしい見方を…(笑)、そうですか?」と照れ笑いを浮かべ、「監督がそう撮ってくださっただけですよ。丁寧に大切に扱う、優しく触れるようにしました」とふり返る。では、実際に綾野さんの診察を受けた女優陣の感想は…?伊藤さんは「至近距離の診察で、近かったよね(笑)?普通の内科とは違い、(胸の花に)生命があって、大切にしないと枯れてしまう。心がのぞかれているような気持ちで、(花に)触られるときも『そこは自分しか触ってないんだけど…』という気持ちでした」となんともエロティックな感想を漏らす。刈谷さんも「近かったです!体から生えているものだから…じっくり見られると照れました」と恥ずかしそうに述懐。山下さんも「一番、見られたくなかったです。(演じたミクは)コンプレックスを抱えているので、撮影中も『見ないで』という気持ちでした」と明かす。綾野さんはこれを、医者と患者というよりも「男女の距離だった」とふり返るが、研究所の上司を演じた古舘さんは「僕にはそんな距離には来てくれなかった!僕もいろいろ見てほしかったです」と不満を漏らし、客席は笑いに包まれていた。『シャニダールの花』はテアトル新宿ほか全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:シャニダールの花 2013年7月20日よりテアトル新宿ほか全国にて公開(C) 2012「シャニダールの花」製作委員会
2013年07月21日「医療モノということで、“カッコよく”見えてしまうイメージを抱いていたんですが、ここで描かれているのは、ひとりひとりが背負っている人生なんです」――。吉沢悠は、出演作『孤高のメス』をこう表現する。この言葉にこの映画の魅力、そして演技者としての彼の揺るぎないスタンスが表われている。ベストセラー医療小説を実写化した本作。吉沢さんは「自らの素の感情を役柄に重ね合わせながら演じた」と言葉に力を込めた。この“人間ドラマ”に彼はどのような思いで向き合ったのか――?映画の公開を前に話を聞いた。物語の始まりは1989年、とある地方の市民病院に当麻鉄彦(堤真一)という名の外科医が赴任するところから始まる。大学病院に依存し、満足な手術ひとつ行えない腐敗した環境を当麻はその腕で、変えていく。当麻が変えたのは何より、そこで働く人々の意識。吉沢さん演じる青木はまさに、彼との出会いによって自らの生き方を省み、そして変わっていく若き医師である。「大学病院の古い体質があって、その下で働く青木はいろんな思いを抱えつつ、“権威”という壁にぶつかる。当麻との出会いで大きく変わっていくこの人物をしっかりと演じ切れないことにはこの作品のテイストが観る人に伝わらない。そのプレッシャーはありました。と、同時に青木が感じる葛藤は、ひとりの俳優として僕にとっては感じたことのある思いでした。それを生かして演じ切ることができれば楽しいだろうな、という相反する複雑な気持ちでした」。90年代末から2000年代の前半に掛けて、次々と話題のドラマ、映画に出演し、主演も数多くこなしてきた吉沢さんが芸能活動を休止したのは2005年。奇しくも本作で演じた青木と同様にアメリカに渡り、帰国後、俳優としての活動を再開した。役柄に自らを重ねた、という部分についてさらに深く尋ねた。「自分なりの信念を持って俳優という仕事をやっていましたが、やればやるほどに『いまのままでいいのか?』というクエスチョンがついて回るようになった。それはまさに、約束された道を見失った青木そのもの。前半部分の彼に、その当時、自分が抱いていた感情を乗せました。それからアメリカに渡って何より感じたのは、俳優として現場に立てるということは、決して当たり前のことではないのだということ。そう感じたときに無性に俳優をやりたい、演じたいって思えてきたんです。帰国して初めての仕事が映画だったんですが、あのときは本当に嬉しかった。それはまさに、青木が当麻先生を手伝いたくて帰国するときと同じ気持ちでした」。復帰後、彼が出演した映画は『夕凪の街 桜の国』、『逃亡くそたわけ−21才の夏』、『てぃだかんかん〜海とサンゴと小さな奇跡〜』に本作と物語性と共に、社会への強いメッセージを感じさせるところがあるが…。「決して、それを意識して作品を選んでいるわけではないです。ただ、例えばニューヨークにいる頃、『自分は日本のことを何も知らない』と強く感じて、帰ったら広島に行きたいと思うようになった。そうしたら(広島を舞台に被爆を扱った)映画『夕凪の街 桜の国』のお話をいただいた。不思議なめぐり合わせは感じますね(笑)。常に、観る人に何か良い影響を少しでも与えられたら、という思いはあります。そうした思いがこういう良い循環を生んでいるのかも」。そうした流れに身を投じる中で、映画というメディアへの熱い思いが自身の内側からも沸々とわいて来ていると明かす。「映画人の熱…独特の温度の高さへの憧れは以前以上に強く感じます。周りが見えなくなるような強い思いで、わが子を育てるようにみんなが映画に夢中になっているあの環境は、本当に気持ち良いんです。30歳を過ぎて、ここにいられることが幸せだな、と感じるようになりましたね」。最後に「今後演じてみたい役は?」という質問に「もちろん、当麻先生のような役もやってみたいですね」と語り、「それから…」と、生瀬勝久が演じた、自らの保身しか考えない大学病院の医師・野本の名を挙げ、少し興奮気味にこう続ける。「生瀬さんが仰ってたんです。『俺は、野本という役を“悪”として演じたわけじゃない。一人の人間として演じた結果がこうだったんだ』って。それを聞いて、ああいう役をいつか演じられるようになりたいな、と思いました。僕自身今回、野本という存在に生かしてもらってるんです。そんな深みを演じられるようになりたいです」。(photo:Ryusuke Suzuki)■関連作品:孤高のメス 2010年6月5日より全国にて公開© 2010「孤高のメス」製作委員会■関連記事:堤真一天才外科医役に都はるみのこぶしを聴いて特訓目の前の命を救うため、禁断のオペに挑む『孤高のメス』試写会に15組30名様をご招待小栗旬初監督作引っさげ北海道に!ゆうばり国際映画祭ラインナップに注目来年の東映は『ゼブラーマン2』セクシー衣裳から『桜田門外ノ変』まで注目作ズラリ!堤真一、大組織の悪しき体制と闘う熱血医師に「ヒーローではない、医師を演じたい」
2010年06月23日