決して明るく、笑いに満ちた作品ではない。だが、松田翔太はこの『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』に惚れ込んだ。高良健吾もまた、強く共鳴し「(脚本を)読んですぐ、絶対にやりたいと思った」という。孤児院で育ち、どうにも抜け出せない過酷な環境、自らの周りに張り巡らされた壁を“ぶち壊す”ためにハンマーを振り下ろし、足を一歩前に進めた若者たち。旅路の果てに彼らの魂はどこに向かうのか?同世代の俳優陣の中でも群を抜く活躍を見せ、確固たる地位を築いている2人がなぜ、この作品にここまで惹かれたのか?「脚本を読んで、懐かしい香りがした」と言うのは松田さん。「環境は違えど、彼らが考えていることと僕自身が思っていることは同じ部分が多かった。自分の中の思い出とシンクロする部分があって。その“懐かしさ”が何なのかは判らないけれど、その感覚的な部分を信じて演じようって思いましたね。余計な情報を入れるのではなく、深呼吸して、リラックスして臨めばいい、と。実際、演じているときは無意識で、それは例えるなら25メートルのプールをクロールで泳いでいるときのようであり、サッカーの試合の途中のようで、車を運転しているのと同じような感覚。意図的にどうしようってのはなかったので、よく覚えてすらいないんです」。高良さんも松田さんの言葉に頷き「役柄に入るオンとオフの“スイッチ”のようなものがあるわけではなくて…」と前置きした上で、現場の空気をこう説明する。「今回に関して言うと、家に帰らずにずっとみんなで一緒にいたというのは大きかった。僕は、いつも、ジュンがケンタに付いていくように翔太くんの後ろを付いていって…でもそれは役作りのためとかそういうものではなく、ただ付いていってたんです。現場には、ケンタくんがいて、カヨちゃん(安藤サクラ)がいて、僕がいた…。ただそれだけでした」。自然体の演技と語る一方で、シーンごとのケンタ、ジュンの心情に話がおよぶと、2人の言葉に熱がこもる。“脱け出した”ケンタとジュンは北へ――。刑務所に収監されているケンタの兄の元を目指すのだが…。旅路と兄との再会について、松田さんはこう語る。「ふと、自分にも家族(兄)がいることが頭をよぎった瞬間に、そこに何かを求めてしまうんですね。何を求めているのか彼にもきっと分かってなくて。兄が(犯罪を経て)“自由”を手に入れたんじゃないかって想像して、自分も自由を手に入れて、その感覚を共有しに行ったんだと思います。だから、何がほしかったわけでもなくて、『来たんだ?元気?』みたいな反応を求めていたんじゃないかな」。だが、面会室で防護ガラスを挟んでの兄(宮崎将)との対面で、ケンタは思いもよらない“現実”を突きつけられる。「いや、でもそれは決して、考えていたものと真逆の反応なのではなく、もしかしたら心の奥底で思っていたことなのかもしれない。『やっぱりそうなのか…』という絶望感。正直、このシーンも考えてではなく、そのままの気持ちでやりました。将くんとも事前に何も話さず。気軽に『自由だよね?』って聞いたら、本当に想像すらしていなかったテンションの返事を向けられて、そのままのリアクションを返すしかなかった。(セリフの)間も含めて本当に全て、僕のそのままの気持ちで、一切カットもなしでした」。高良さんは「演じている僕らですら理解できない感覚、純粋にケンタとジュンの2人の間でしか分からない部分もあると思う」と語り、大森立嗣監督の演出について、こう明かしてくれた。「とにかく、(監督の)言うことが飛んでるんです。それは時に、僕自身、理解も共感もできないし、きっと観ている人にも伝わらない。けれど、(監督が考える)ケンタとジュンだけが分かってて、それでいいんだ、と。だから、監督を信じて演じて、そこでOK出されるっていうのはすごく役者として幸せを感じました。あるシーンで、テストで何度も『違う』って言われ続けて、監督から言われたのは『ケンタを乗り越えろ』ということ。いまだに、僕の中でもなぜああいう言い方をしたのか?と違和感があるんですが、でも、涙が止まらなくて…。それこそが、ケンタとジュンの2人にしか分からないことなんです」。では、松田さんと高良さん、これまでにケンタやジュンのように閉塞感を感じ、壁をぶち壊したり、乗り越えた経験は?松田さんはそれを「意識の転換」と説明する。「イギリスに留学したとき、俺は一生英語を話せるようにはなれないって思ってたんです。アイディア、きっかけも何もつかめなかったんですが、あるとき自分の考え方を変えただけで、その瞬間に脱け出せたんです。それは友人関係でも何でも同じで、自分の意識を変えるだけで世界が変わるんです。それまで、“物理的に”何かを壊すことで開放されるんじゃないかって思ってたところがあった。でも、映画に出てくる『壊しても、壊しても変わらない』っていうのは本当にそのとおりで、そうじゃなくて意識を変えるだけで道は明るくなるんだというのは感じました」。では、映画の中の2人は、そこまで至らなかったということなのだろうか?「いや、きっと辿りついてるんだよね、最後に。何が幸せか分からないまま飛び出して、北に向かっても、兄ちゃんに会っても自由じゃないし、愛情もない。何度もジュンに『お前、俺と来たいの?』って聞くけどそれが答えでもない。それは周りのものに対して自由を求めているから。でもある瞬間にジュンがドンと体当たりしてきて、このとき、きっと痛みと嬉しさを感じてる。なぜかって言うと、そこで初めて意思の疎通ができたって感じることができて、それを理解した瞬間にきっと幸せを感じてるんです」。高良さんも、自身が熊本から上京してきたときの気持ちを例に、同じく意識の転換について語る。「上京してずっと閉塞した空気を感じていて。自分で(熊本を)出てきたのに、なぜか『閉じ込められてる』って気持ちで、全てを東京のせいにしてたんです。でも、それはやっぱり自分の意識の問題。悪いのは東京ではなく、自分なんだと気づけたからこそそこから脱け出せた。それでも、仕事でも生活でも、“壁”を感じることはいまでもあります。それをぶち破りたくて、きっとこの仕事をしてるんだと思う」。現場に絶対的な安心感を抱きつつ、撮影のさなかに「ケンタだからこその“寂しさ”に僕自身も襲われて、ひとりでレンタカーを借りて、青森の海岸まで行ったこともあった」と明かしてくれた松田さん。そしてしみじみとこうつぶやいた。「人間として、俳優として本当に良い経験ができたと思います」――。この旅路が松田翔太と高良健吾にもたらしたものは?きっと答えは2人がこれから歩む道の先にある。(photo:Yoshio Kumagai)■関連作品:ケンタとジュンとカヨちゃんの国 2010年6月12日より新宿ピカデリー、ユーロスペースほか全国にて公開© 2009「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」製作委員会■関連記事:きっかけは学生からの1通の手紙…松田翔太と高良健吾が学生による試写会に登場高良健吾の凡ミスに松田翔太苦笑い「健吾が忘れちゃった」“ここだけ”の松田翔太が満載!主演映画フォトブック発売19歳の約束とは?松田翔太×高良健吾『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』試写会に10組20名様ご招待あのシーンも原作の種田そのまま!『ソラニン』高良健吾の落書き顔公開
2010年06月11日松田翔太主演の青春映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』のオリジナルフォトストーリーブック「『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』VISUAL BOOK featuring松田翔太」が発売された。映画は、孤児院で兄弟のように育ち、人生を選べずに生きてきたケンタとジュンの青年2人の旅の物語。現代社会を生きる若者の不安や苛立ち、そして希望を鮮烈に描き出す。今回発売されたフォトブックでは、松田さんが「この映画だからこそ」と語り尽くした、本作のプロデューサー・孫家邦によるスペシャルインタビューに撮り下ろし写真、映画からの全61カット&未公開シーン、メガホンを握った大森立嗣監督から松田さんに宛てた手紙など盛りだくさん。ここでしか知ることのできない、役者・松田翔太の魅力がつまった一冊になっている。松田さんと孫プロデューサーとの間には、5年前、松田さんが19歳のときに交わしたある約束が。兄の松田龍平が出演した『青い春』(’02)の打ち上げの席で2人は出会い、その後、役者になると決めた松田さんは「遠回りになるかもしれないけど、TVできちんと頑張ります。人気者になることを目指し、帰ってきて、自分がいることで映画が盛り上がるような俳優になります」と孫プロデューサーに誓った。その言葉通り、5年の時を経て完成したのがこの『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』なのである。松田さんは言う。「(自身が演じた)ケンタは愛情が足りなくて心がスカスカしているんだけど、細かいところから幸せを見つけて生きていて、自分の世界がある男」。“現場に身を任せる”ことでケンタになりきったそうで「ケンタについて、監督と言葉で確認し合ってはないですね。映画が完成したときも、握手しただけ。言葉で埋めなくても、達成感があったんです」と自信のほどをうかがわせる。映画を観る前に松田さんの熱い思いをこちらのフォトブックで感じてみては?『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』は6月12日(土)より新宿ピカデリー、ユーロスペースほか全国にて公開。『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』VISUAL BOOK featuring松田翔太発売元:角川書店定価:1,890円(税込)発売中■関連作品:ケンタとジュンとカヨちゃんの国 2010年6月12日より新宿ピカデリー、ユーロスペースほか全国にて公開© 2009「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」製作委員会■関連記事:松田翔太×高良健吾『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』試写会に10組20名様ご招待あのシーンも原作の種田そのまま!『ソラニン』高良健吾の落書き顔公開阿部芙蓉美がフォークの神様を歌う!『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』主題歌決定松田翔太、黒のスーツで颯爽とベルリンデビュー!亡き父・優作への思いも吐露若手実力派女優、安藤サクラがアジアのアカデミー賞に助演女優賞にノミネート!
2010年05月26日松田翔太主演の映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』のオリジナルフォトストーリーブックが25日(土)に発売され、その中で松田が俳優になる前に交わした“ある約束”について語っている。その他の写真『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』は、施設で育ったケンタ(松田)とジュン(高良健吾)、そしてジュンがナンパしたカヨちゃん(安藤サクラ)の3 人が、ケンタの兄が収監されている北海道・網走に向けて旅する姿を描いた作品。本作のプロデューサー、孫家邦氏が松田と出会ったのは、2002年に兄・龍平が出演していた映画の打ち上げの席だという。その後、19歳の松田は俳優になることを決心し、孫氏と「テレビできちんと頑張ります。人気者になることを目指し、帰ってきて、自分がいることで映画が盛り上がるような俳優になります」との約束を交わした。それから5年後、松田は約束を守り、映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』に主演。本作にかける意気込みは多大なもので、本作がベルリン映画祭に出品された際には自ら渡独するなど、「この映画だからこそ」との想いが強いという。これまで、『花より男子』の茶道の家元の跡取り息子・総二郎役や『ライアーゲーム』の天才詐欺師役・秋山役など、クールなイメージの役柄が続いた松田だが、本作では息苦しい日常にイラ立ち、すべてを捨てて旅に出る男ケンタを熱演。松田は自身の役を「愛情が足りなくて心がスカスカしているんだけど、細かいところから幸せを見つけて生きていて、自分の世界がある男」と分析している。『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』6月12日(土) 新宿ピカデリー、渋谷ユーロスペース、池袋テアトルダイヤ他全国ロードショー
2010年05月26日戸田恵梨香、松田翔太らが3月6日(土)、TOHOシネマズ日劇3で『ライアーゲームザ・ファイナルステージ』の初日舞台挨拶を行い、観客502人が参加した“生エデンの園ゲーム”を見守った。同作は、フジテレビ系で放送された人気TVシリーズの続編で、バカ正直な女子大生・神崎直(戸田さん)と元天才詐欺師・秋山深一(松田さん)が、相手を騙して金を奪い合う通称“ライアーゲーム”の最終決戦に挑む姿を描く物語。劇中に登場するエデンの園ゲームに、初日を祝って観客が挑戦。赤、金、銀のリンゴのボード3枚セットから1枚を選んで掲げるゲームで、ルールは全員が赤リンゴを選べばキャスト陣と一緒に撮った記念撮影写真をポストカードにしたものが全員にプレゼントされ、赤以外を選んだ人が1人だけなら旅行券10万円を獲得、と信じ合う心を試すもの。キャスト陣はそれぞれ劇中で演じた人物になりきり応援。戸田さんは「赤を上げましょう」と呼びかけると、松田さんは「断言する!このゲーム、何度やっても赤が揃うことはない」。ライアーゲーム事務局員役の吉瀬美智子も「いまだかつて赤いリンゴが揃ったことはありません」とニヤリ。結果、502人中3人が金と銀のリンゴを選択。戸田さんは「一瞬、赤がそろった!と思ったら…人って恐ろしい」と目をパチクリさせたが、松田さんは「だから言ったろ」と大ウケしながら「これはライアーゲーム、嘘をついて何が悪い」と秋山になりきり、全員プレゼントを逃して残念がる観客を沸かせた。ゲーム前の挨拶で、戸田さんは司会の同局笠井信輔アナウンサーから、役柄上バカバカと言われ続けた心境を聞かれ、「『バカで〜す』って、しっくりくる。(言われることが)普通になっちゃったんですよね。言われなくなると?寂しいです」と直役に愛着タップリ。松田さんは「秋山をずっと演じているとしみこんじゃって、私生活でも友達に『お前さ〜』って言っちゃう。マズイなと…」と苦笑いで、観客の笑いを誘っていた。『ライアーゲームザ・ファイナルステージ』はTOHOシネマズ日劇3ほか全国にて公開中。(photo/text:Yoko Saito)■関連作品:ライアーゲームザ・ファイナルステージ 2010年3月6日よりTOHOシネマズ日劇3ほか全国にて公開© 2010フジテレビジョン/集英社/東宝/FNS27社■関連記事:戸田恵梨香&松田翔太登壇の『ライアーゲーム』初日舞台挨拶をTVとネットで生中継!松田翔太、不安払拭?関めぐみに「無視されたのかと…」 『ライアーゲーム』完成披露松田翔太は実戦でも詐欺テクを発揮?「ライアーゲーム」一大プロジェクト本格始動
2010年03月06日