吉野家(上)と麻生太郎(左)、森喜朗「田舎から出てきた右も左もわからない若い女の子を無垢、生娘のうちに牛丼中毒にする」「男に高い飯をおごってもらえるようになれば、絶対に(牛丼を)食べない」牛丼チェーン「吉野家」の常務取締役企画本部長(当時)の伊東正明氏が、早稲田大学の社会人向け講座で「生娘をシャブ漬け戦略」と称し語ったこの発言は、SNSを中心に大きな批判を浴びた。発言の2日後、吉野家ホールディングスは「人権・ジェンダー問題の視点からも到底許容できない」と、伊東氏を取締役から解任している。政治家や企業で責任ある立場の人間が女性蔑視や差別発言を公の場で行う例は、これまでにも数多くあった。近年では、社会的地位を失うなどの厳しい処分を受けるケースも多くなってきたとはいえ、同じような「炎上」が繰り返されているのが現実だ。原因はどこにあるのか。『これからの男の子たちへ』(大月書店)などの著書がある弁護士・太田啓子さんに話を聞いた。「伊東氏の発言は、本人は軽いウケ狙いのつもりだったのでしょう。こうした“冗談”で笑いがとれると思ったのでしょうが、その場に女性もいる意識はあったのだろうか。“冗談”含め女性を貶めるようなやり方で、男同士の連帯を強める。そのあり方を『ホモソーシャル』というのですが、これは本当に厄介です」(太田さん、以下同)“男同士の付き合い”が差別を助長男性同士で身近な女性の品評をしたり、性的な冗談を言い合ったり。飲んだあとに2次会と称して仲間で風俗に行ったり。こうした「女にはわからない男同士の付き合い」は、差別が生成される温床になるだけでなく、それを望まない男性にとってはハラスメントや暴力にもなりうる。「男の子のスカートめくりも、スカートの中身を見たいというより“そういうことをやるのが男の子なんだ”と、男同士で盛り上がるようなところがありますよね。この社会では男性であるというだけで、本人が望む望まないにかかわらず、ホモソーシャル的なものに巻き込まれてしまう。差別を助長するだけでなく、自覚しにくくさせている大きな原因だと思います」女性蔑視と聞いて、真っ先に政治家の問題発言をイメージする人もいることだろう。「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」「女性というには、あまりにもお年だ」などと発言した森喜朗元首相をはじめ、枚挙に暇がない。日本では国会議員に占める女性の割合は14・3%。女性が少数派な政治の世界で、普段から「女性を貶めるような“冗談”で笑い合える」男性たちに囲まれているからこそ、差別発言は量産され続けてきた。「男性同士のかばい合いもありますよね。“女癖は悪くても有能なやつだから”と、セクハラを問題にするどころか“あいつはモテるんだ”と肯定的に語ったり、“あんな有能な人がセクハラごときで”と被害を矮小化したり。批判の声が上がっても結局、そういう“空気”にかき消され無効化されてしまうのでしょう」女性議員による女性蔑視発言も残念ながら、女性蔑視や差別発言をする政治家は男性ばかりではない。「男女平等は絶対に実現しえない反道徳の妄想」と国会答弁で述べた杉田水脈衆院議員は、雑誌でLGBTを「生産性がない」とも発言。性暴力被害者支援の議論の中で「女性はいくらでもウソをつける」と発言するなど「ついうっかり」ではない、確信犯的な差別発言を繰り返している。「杉田議員の差別発言は理解できないですし擁護する気も一切ありません。けれども、圧倒的な男社会の中で少数派の女性が認められるために、男性たちの本音をなぞるかのような振る舞いを極端に強調することで、生き残ろうとする女性たちもいるのでしょうね。男たちに向けて“私はちゃんとわかっている女です。わきまえない女性たちとは違いますよ”とアピールせざるをえないのでしょう。少数派が陥ってしまう、罠のひとつだと思います」政治家による女性差別発言を見ると、「子どもを産まない女性」に対する偏見が目立つ。杉田議員の「生産性」発言をはじめ、森元首相は子どもをつくらない女性について「年とって、税金で面倒みなさいちゅうのは本当はおかしい」と発言。麻生太郎自民党副総裁も少子高齢化について「(年を)とったやつが悪いのではなく子どもを産まなかったほうが問題なんだ」と話し、批判を集めた。「子どもを産まない女性に税金を使うのはおかしいとか、本当にひどい発言ですよね。“産めよ増やせよ”と女性に強いた戦前の価値観を今も引きずっているとしか思えない。女性を独立した対等な人格として見ていないんですね。過度に胸を強調した類いの“萌え絵”もそう。女性が、性的対象かお母さんしかいないかのように扱われるのは本当におかしなことです」偏見や固定観念に基づくイメージは、広告にも蔓延している。企業などに画像素材を提供する『ゲッティ・イメージズ』の調査では、「子育て」に分類された写真のうち、女性が写った写真は男性が写った写真よりも1・36倍多く選ばれていた。日本だけに限ると、男女の差は2倍に広がったという。“女性はこうあるべき”という思い込みの表現が女性たちにプレッシャーを与え、差別にもつながっていることを自覚しない限り、今後も右の表に挙げたような「炎上」は繰り返されるだろう。自分が差別したことを認めない炎上しても、批判を浴びても、社会的地位を失っても……それでも繰り返される女性蔑視や差別発言。なぜ変わることができないのだろうか。「表層だけ見て、その裏にある問題、自分の中にある差別意識ときちんと向き合おうとしていないからだと思います。批判されたので謝っておこう、と一過性の対処をするだけ。この言葉はOKだけどこれはNGとか、単純な線引きですませて、なぜそれが問題なのかを考えないから、同じことを繰り返すんですね」「傷つけてしまったのならば謝罪する」。女性蔑視を指摘され、このような物言いをする男性は多い。だが、「傷つけてしまったのならば」と仮定するのは、自分が差別したことを認められないからだ。社会に歴然とある差別に気づかず、それに自分が加担していることにも無自覚でいられる。これは、社会の中で多数派ならではの「特権」だと太田さんは言う。「例えば、就職や昇進でも男性は女性よりも明らかに有利だけれど、それを当たり前とする価値観の中で生きていると、その特権にはなかなか気づきにくい。気づきにくいから、特権や差別意識を指摘されると動揺してごまかしたり、ときには逆ギレしたりしてしまうんでしょうね。多数派の特権を自覚することは、その特権が持つ加害性を自覚するということ。これはジェンダー問題だけではなく、すべての差別の問題に通じる重要なカギだと思います」自分ではなかなか気づきにくい「多数派の特権」に気づかされるのは、誰かを傷つけ、それを指摘されたとき。認めるのは苦しくても、そこからでなければ始まらない。政治家や社会的責任がある立場の人間ならば、なおさらだ。「政治家の差別発言を許さない。きちんと批判し、選挙で落選させなければ。ホモソーシャルな政治を変えるためにも、女性議員をもっと増やさなくてはいけないですね」政治家による問題発言の一例・森喜朗元首相「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」※2021年2月3日、日本オリンピック委員会の臨時評議員会で。「女性というには、あまりにもお年だ」※2021年3月26日、河村建夫元官房長官のパーティーで、河村氏のベテラン女性秘書に対する発言。「子どもを一人もつくらない女性が自由を謳歌して楽しんで、年とって、税金で面倒みなさいちゅうのは本当はおかしい」※2003年6月26日、全国私立幼稚園連合会九州地区の討論会で。・杉田水脈衆院議員「女性はいくらでもウソをつける」※2020年9月25日、自民党の会議で性暴力被害者支援をめぐっての発言。「男女平等は絶対に実現しえない反道徳の妄想です」※2014年10月31日、国会答弁で。・麻生太郎自民党副総裁「(少子高齢化について、年を)とったやつが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるが、間違っている。子どもを産まなかったほうが問題」※2019年2月3日、福岡県で行われた国政報告会で。・松井一郎大阪市長「(買い物に)女の人が行くと時間がかかる」※2020年4月23日の記者会見で。・山東昭子元参院副議長「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」※2017年11月21日の自由民主党の党役員連絡会で。女性差別と批判を集めた企業による広告や発言【吉野家】2022年4月16日に行われた早稲田大学の社会人向け講義で、講師として招かれた常務(当時)が「生娘をシャブ漬け戦略」の持論を展開、「若い女の子が、男に食事をおごってもらい、高級な味を覚える前に牛丼漬けにする」との趣旨の発言をして炎上。【講談社・日本経済新聞】2022年4月4日、日本経済新聞は講談社の漫画『月曜日のたわわ』の全面広告を朝刊に掲載。性的に強調された女子高生のイラストが批判を集め、国連女性機関も抗議に乗り出した。【IKEA】2021年12月に放送されたテレビCMが炎上。床に散乱した飲み物などが描かれたあと、男性や子どもがソファに座っている中、母親と思われる女性がポップコーンなどを運ぶという内容。「女性は召使いじゃない」として、とりわけ女性からの非難が目立った。【サンリオ】2021年12月、女性向け雑貨店「ITS’DEMO」の公式ツイッターアカウントが、サンリオの人気キャラクター「マイメロディ」とコラボしたグッズを販売すると告知。その中に「女の敵は、いつだって女なのよ」「男って、プライドを傷つけられるのが一番こたえるのよ」などのセリフがあり問題に。グッズの一部は発売中止となった。取材・文/岩崎眞美子フリーランスライター。1966年生まれ。音楽雑誌の編集を経て現職。医療、教育、女性問題などを中心に雑誌や書籍の編集に携わる
2022年05月11日原発事故後、福島県いわき市から東京へ避難した鴨下全生さん。11年たち、現在は大学生に撮影/齋藤周造東日本大震災と福島第一原発事故の発生から間もなく11年がたつ。当たり前だった光景や生活は一変し、いまだ日常を取り戻せない住民も少なくない。とりわけ原発事故に翻弄され続けてきた子どもたちは、この11年、何を思い、どう生き延びてきたのか。未曽有の事故は何をもたらしたのか―。大人になった3人の体験や言葉を通して、今、考える。9歳の願いは「天国に行きたい」「よかった、(取材時に息子は)これからの話なんてしたんですね。数年前のあの子は、そんなことは考えることもできなかったから」前を歩く鴨下全生(まつき)さん(19)を見ながら、母・美和さんはそう言った。原発事故後、都内に避難をした全生さんは、避難先でいじめに遭い、過酷な少年時代を過ごしていた。空き地のツクシを佃煮にして食べたり、かるがもの子どもの迷子を助けたりするような自然豊かな暮らしが一変したのは、2011年3月11日。東京電力・福島第一原子力発電所の事故が打ち砕いた。当時、福島県いわき市に住んでいた全生さんは8歳。母と習い事に出かけようとしていたところで地震が発生した。家の前で、母に抱きかかえられたまま、長い揺れがおさまるのを待った。母とすぐに保育園にいた弟を迎えに行き、いわき駅に出かけた祖父を探しに出た。駅前は地震で混乱していると見込んだ母は、全生さんと弟の2人に「必ず帰るから、絶対に車から出てはダメだからね」と少し離れた駐車場に残し、駅へと走っていった。しかし、いつまで待っても母は戻らない。余震は続いていた。そのうち弟が「トイレに行きたい」と言い出し、全生さんは母との約束を破って、弟を近くのガソリンスタンドのトイレに連れていった。1時間半ほどで、母が戻ったとき、全生さんと弟はわんわん泣いていた。「弟は心細かったから泣いていたかもしれないけれど、僕は約束を破っちゃったという気持ちで泣いていた」と、全生さん。当時8歳の自分には、地震や津波で人が亡くなるということも「ピンときていなかった」と言う。翌朝5時ごろ、「避難をするよ」と両親に言われ「おもちゃを3つ選んでいいよ」と言われた。弟が4つ持っていきたいと言うので、全生さんは1つ分の権利を弟にあげて車に乗り込んだ。移動中は、いつ寝て起きたのか覚えていないが、母が原発から放射性ヨウ素が放出されるのを懸念し、大量の海苔を食べさせられたことは覚えている。甲状腺の被ばくを避けるためだ。政府からの避難指示はなく、いわゆる「自主避難」だった。このころ、次々と爆発する原発の状況に不安を感じた福島県の多くの人が、県外へ避難をしていた。19時間半かけてたどり着いた横浜の親戚の家で、全生さんは驚いた。外は暗いのに時計が1時を指していた。「1時は明るい時間のはず!」しかし、夜なのが不気味だった。親戚の家には長居はできず、数日で別の親戚のところに身を寄せた。避難先を転々とする中で、全生さんの学校生活も始まった。そこで、いじめられるようになった。全生さんは言う。「本当は、思い出さなくていいなら、思い出したくない」私物に落書きをされたり、一方的に暴力をふるわれたり、“菌扱い”をされたりすることも当然つらかったが、いちばんつらかったのは人間扱いされないことだった。「いじめられているうちに、“自分が悪いんだ”と思い込まされてしまったんです」と、全生さんは当時を振り返る。9歳の願い事は「天国に行きたい」だ。そのいじめの構造について、こんなふうに話してくれた。「最初のころは、いじめはなかった。僕が“避難しているかわいそうな子”だったからです。でも、だんだんほかの子たちと同じように過ごすようになると─、例えば、支援物資をもらっていた僕が、同じような生活ができるようになると“社会的地位が下だったはずなのに”という感情が起きるんじゃないでしょうか」当時はひたすらつらさに耐えていたが、次第に、「なぜ差別やいじめが起きるのか」と考えるようになったという。激しいいじめから逃れるために中学受験をした。中学生になってからの全生さんは、避難者であることを隠して生活した。それ以降は友達も増えて、楽しい生活だった。だからこそ、隠すことはつらかった。全生さんが言う。「ポスターなどでも“思いやり・仲よく”といった言葉でいじめをなくそう、と謳っています。でも、そうじゃない。どんな理由があろうといじめはダメ、だけでいい。どんな人間も、たとえ最低なヤツでも、守られるんだという考え方が必要だと思う。だから、人権の問題だと思います」ローマ教皇への手紙原発事故から時間がたつにつれ、「自主避難者」への風当たりも強くなっていった。2017年には、福島県は避難住宅の提供を打ち切った。被害が残っているにもかかわらず国も福島県も「風評被害対策」には力を入れ、原発事故は終わったかのように振る舞うことで、被害を受けた人々の口をふさいだ。そんな中、全生さんに転機が訪れる。2018年の秋。自分の苦しみを手紙に書き、ローマ教皇に送ったのだ。「ローマ教皇には、世界中から手紙が届くんです。だから、読んでくれたらラッキーだね、という感じでした」美和さんも全生さんも、それほど期待はしていなかった。その手紙が奇跡的にローマ教皇に届いた。実はこのとき、心に決めていたことがある。「もしもローマ教皇から返事が来たら、僕は顔も名前も出して自分の思いを社会に訴えよう」と。そして、全生さんの覚悟が決まった。2019年3月20日、バチカンで全生さんはローマ教皇に会い、思いを伝えた。その8か月後には、カトリック中央協議会主催の「東日本大震災被災者との集い」でも再会した。そのとき、全生さんは参加者の前でスピーチした。原発事故、避難、いじめの経験、避難住宅の提供打ち切り、原発が国策であったことや国によってつくられた分断。そして、放射能汚染と被ばくの問題、さらに世界から被ばくの脅威がなくなるようともに祈ってほしいと─。その集いが終わると、1人の青年が全生さんにくってかかった。「“避難ができた僕らは、まだ幸せだった”とは、どういう意味だ!私は今も福島に住んでいる!」全生さんは相手が納得するような返事ができなかった。その日、帰宅すると急性胃炎になり、39度の熱が出た。「その人もつらい気持ちがあったのだと思う。その痛みに耳を傾けるべきだったと今でも後悔している」と、全生さんは言う。市井の人の分断を生んだのは国の施策だ。福島県に住み続けていても、ふとしたときに原発事故の被害を実感し、今なお回復していないと思う人もたくさんいる。「庭の山菜はあきらめたよ」「汚染水放出したら海釣りできないな」など、何げない会話に原発事故が潜む。あるいは、はなから救済されないとあきらめ、放射能汚染を忘れようと努めた人もいる。本来は、国が汚染を矮小化せず、被害に対して十分に賠償すれば、分断もなかったはずだ。その後も、全生さんは顔も名前も出して発信をし続けた。母・美和さんは「何度も止めていた」と話す。美和さん自身もつらい思いをし続けていた。嫌がらせなのか、車のタイヤに傷を付けられ、バーストしたことも何度かある。「あなたまでつらい思いはしないで、と思っていました」だが、全生さんは、話すことで世論を変え、原発事故が終わっていないことを伝えられると信じていた。「自分と同じくらいの世代で、原発事故について発信をしている人が、当時は少なかったからやるしかないな、って」最近は同年代の発信する仲間が増えてきたことがうれしい。だけど、「安心して話して」とは誘えないと言う。「公の場で話してくれる人が増えたことはうれしいけれど、積極的にはすすめられない。うまく伝わらないストレスも、誹謗中傷もあるから……」今でも胃薬を飲みながら講演をすることがある。それでもなお、全生さんは発信し続けている。この11年を生き抜いて、原発事故について思うことを聞くと、「復興したかのような風潮に違和感があります。国がやらなくてはならないことがたくさんある中で、報道が少なくなると、解決したことのようになってしまう。だから、言い続けないといけないと思っています」理知的な目で真っすぐにそう語る。そんな全生さんに、これからのことを聞いてみた。「本当は、僕が話さなくていいなら、話すのが得意な人にまかせたいけど、やらないと日本が壊れてしまいそうで。原発事故のこととは別に、音楽を作ったり、3Dモデルとか、イラストを作ったり、創作系のことをやってみたい」一方、ロシアによるウクライナ侵攻のことも全生さんは気にしていた。チェルノブイリ原発の周辺で戦闘があり、原発内部もロシア軍に占拠された。軍事行動で原発が攻撃対象となるリスクもあらためて明らかになっている。「国の安全保障を語るとき、原発どうするの?と思います。近隣国の脅威は強調するのに原発について触れないのは、理屈が通っていない。僕は日本が好きだから、この健全ではない状態を変えなきゃ……と思っています」被害を訴えると「加害者」に2022年1月27日、甲状腺がんに罹患した当時6歳から16歳の子どもたちが原告となり、甲状腺がんは原発事故の影響だとして、因果関係を明らかにするよう東京電力を提訴した。事故後11年を経て初めて、放射線被ばくの影響について東京電力を訴える集団訴訟だ。原告全員が甲状腺の摘出手術をし、6人のうち4人は再発、2度以上の手術を受けている。また、全摘した4人はホルモン剤を一生飲み続けなくてはならず、肺への遠隔転移を指摘されている子どももいる。この11年、「誰にも言えずに苦しんできた」理由のひとつは「風評加害者」と言われてしまうからだ。「風評加害者」とは、原発事故の「風評被害」を撒き散らす人のことらしい。環境省が開催した『対話フォーラム』(2021年5月)では、環境大臣(当時)の小泉進次郎氏や学者も「風評加害者」について強調していた。そうした安易にレッテルを貼る言葉が、ひそかに苦しむ人の口を塞いでしまっている。原告弁護団団長の井戸謙一氏が会見で「原告は重い決断をした。つらい場面も出てくるだろうけれど、攻撃する人がいても、何十倍の人が支援していると実感すれば頑張れる」と語ったように、残念ながら、実際に被害者に心ない言葉を投げかける人もいる。だからこそ、そんな中での提訴には勇気が必要だった。原告のひとり、森山詩穂さん(仮名=25)は、福島県中通りで被災した。彼女が仮名でなければならないことも、この国の生きづらさを象徴している。3月11日は、15歳だった詩穂さんの卒業式だった。卒業式が終わり、家族と自宅に戻ったところで被災。「大きな揺れで、長くて、怖かった」という。揺れがおさまり外に出ると、晴れていたはずの空が重い雲に覆われ、吹雪いていた。その異様な雰囲気を詩穂さんは鮮明に覚えている。翌日は朝から、地震で全壊してしまった親戚の家の片づけを手伝った。庭に家具を運び出す作業をしていると、家の前の道路が、渋滞を起こしていた。「普段は車が多くない道なので不思議でした。あとから考えたら、原発に近い浜通りから避難していた車だった」当時は、何が起きているのかわからなかった。12日の早朝には、原発から10km圏内に避難指示が出され、その後20km圏内にも拡大した。10万人近い浜通りの人々が散り散りに避難していた時間と重なる。被害を免れた離れの部屋でテレビを見ていた祖母が「原発が爆発したみたいだよ」と教えてくれた。雨も降り始め、両親は「詩穂はもういいから、おばあちゃんと家の中にいて」と言った。その後、両親はチェルノブイリ原発事故の話をした。放射性物質が飛んできたら、健康被害があるかもしれない。食べ物にも気をつけたほうがいいと聞かされた。3月16日は、県立高校の合格発表だった。すでに、福島原発の1号機と3号機が爆発し、2号機や4号機も危ない状態だった。母は「行かないほうがいい」と言ったが、合格者に出される課題を取りに行かなくてはならず、自転車で出かけた。それからは、ほとんど外に出ない生活だった。スーパーで「1人1個」という制限があるものを買うときだけ、母の買い物に付き合った。近所の人たちも「井戸水はやめよう」と話し合い、日常的だった自家栽培の野菜の交換もやめた。母は詩穂さんの身体を気遣い、ミネラルウォーターを買い、牛乳は産地を選んだ。4月になり、高校が始まった。詩穂さんは運動神経がよく、スポーツが好きだった。入りたい部活は屋外競技。しかし、母からも「絶対に屋外の運動部はやめて」と心配されていたのであきらめた。「でも、今思えば、やりたかったなーと思うんです」入学当初は、みんながマスクをしていたが、ある日、「マスクしなくてもよくない?」という誰かのひと言がきっかけで、マスクを取り始めた。詩穂さんは最後までマスクをしていたが、夏にははずした。校庭には、近隣の小学校を除染した土が入ったフレコンバッグが1年ほど置かれていた。側溝やベランダ、自転車置き場など、放射線量が局所的に高いホットスポットの周りは三角コーンで注意を促していたが、そこを通らないといけないこともあり、気にしないようにしていた。1年目はマラソン大会が中止だったが、2年生からはほとんど通常どおりだった。ある日、先生が校庭で放射線量を測っているところに詩穂さんは通りかかった。「あ、超えてる。まぁいっか」そんな言葉を聞いてしまった。当時、校庭の利用は、毎時3・8マイクロシーベルト(事故前の100倍)以下と決められていたが、それを超えていたようだった。「当時、体育の先生はずっと授業の遅れを気にしていたんです。授業をしなくちゃ、とあせっていたのかも」自宅では、祖父が放射線量計を購入して測ってみると、部屋の中でも、毎時1〜2マイクロシーベルトあり、ベランダや花壇はさらに毎時3〜4マイクロシーベルトもあった。市の除染は放射線量の高い地区から順番に行われていたが、待っていられず、祖父は高圧洗浄機で除染した。甲状腺がんを打ち明けなかった理由運動部に入らなかった詩穂さんは、「都内の大学に行く」と目標を定め、高校生活は勉強に打ち込んだ。そして、晴れて希望の大学に合格。憧れの都内で、入学を機にひとり暮らしを始めた。遊ぶところやおいしい食べ物屋もたくさんあり、バイトも始め、楽しい東京での生活がスタートした。しかし、少しずつ身体に異変が起きていた。1か月で10kg太り、身体がむくんだ。生理不順や肌あれも悪化した。最初は、自己管理できていないからかな、若い女性によくあることなのかな、と思ってやり過ごした。しかし、今度は水や唾を飲み込むと、のどに違和感が出始める。気になって母に話すと、「甲状腺系の病状だと思うから、早めに検査を受けよう」と言った。詩穂さんは、福島県立医大が行っている甲状腺エコー検査の2回目を、忙しくて受けないままだった。大学が休みの日に、大きな会場で行われた甲状腺エコー検査を受けるために詩穂さんは都内から福島県内に戻って、受検した。並んでいる人たちはみな1分ほどで終わるのに、詩穂さんのときだけ、その流れが止まった。医者がしきりに首を傾げている。「ほかの人と違う。何かあったのかな」と感じた。再検査の通知は母が受け取り、県立医大からは急かす電話もかかった。学校を欠席して再検査を受けるころには、「自分は甲状腺がんかもしれない」と思い始めていた。2015年の秋、19歳の詩穂さんは甲状腺がんだと医師に診断された。「そのとき、原発事故との因果関係はない、とその場で言われてしまったんです。なぜわかるの?と思いました」何とも言えない気持ちと、母の涙は忘れられない。大学のテストの最終日、その足で病院に入院して手術を受けた。目覚めたとき、首から下の感覚がなかった。手術の影響で免疫力が下がり、2か月ほどは体調が回復しなかった。少しずつ回復してからは、大学生らしい生活も過ごせたが、立ち仕事のアルバイトは辞めざるをえなかった。詩穂さんは「差別」を気にしていた。自分が甲状腺がんになったことを知れば「被ばくした人」と思われる。避難先で差別された話や、婚約を破棄された話も聞いていた。親しい数人には甲状腺がんの話をしたが、みな、やさしい言葉をかけてくれた。「思ったほど差別されない」と詩穂さんは感じた。一方、悪気なく「甲状腺がんは予後がいいんでしょう」と言う人もいた。以前と同じ暮らしではない詩穂さんには残酷な言葉だった。就職活動では、がんに罹患したことを言わずに通した。しかし、嘘をついているような罪悪感も付きまとった。2019年に就職したが激務で甲状腺の数値が悪化、体調を崩したため、退職した。「本当は、やりたい仕事があったけれど、今は事務の仕事をしています」母は、ある日、誰に言うのでもなく「あのとき、ああしておけばよかった」とつぶやいた。両親は詩穂さんの身体を心配している。「いま、福島県立医大の甲状腺エコー検査は、縮小しようとしています。そして(手術しなくていいがんを手術した)過剰診断だと言って、原発事故との因果関係はないと言います。なんでそうなるの、という憤りがあります」自分だけではなく、声をあげられない年下の子どもたちのことが気がかりだ。「これから検査を継続して、予後が本当にいいのかも調査してほしい。私たちが声をあげることで、ほかの人も声をあげられる状況になってほしいと思います」11年、周囲に言えずに生きてきた詩穂さんの実感のこもる言葉だ。また、裁判を通して知り合った同じ境遇の仲間の姿に、詩穂さんは胸を痛めている。「私もいろいろなことをあきらめたけれど、がんに罹患した年齢が低いほどあきらめるものが多い。身体と心に負担を抱え、恋愛も結婚もしない、1人で生きていく、と」大学進学も就職もあきらめ、生命保険にも入れないと話す原告の仲間。せめて相談し合えること、共感し合えることの意義は大きいと詩穂さんは改めて感じている。「裁判を通して(事故とがんの)因果関係を明らかにしてほしいし、乏しい医療支援も改善してほしい」そして、同じように苦しんでいる、福島県の300人近い甲状腺がんの子どもたちを勇気づけたい─、そう願っている。詩穂さんは、何度も「私より若い人」「私より病状が悪い人」「まだ1人で苦しんでいる人」を慮っていた。県外避難で生じた罪悪感画面越しに、わかなさん(26)は静かに呼びかけた。「つらくても、生きていてください」2021年12月、ある大学で開かれた、震災を経験した人から学ぶオンライン授業での最後の言葉だ。コロナ禍で学生たちは生きづらさを感じているかもしれない、とわかなさんは心配したのだろう。モニターの向こうにいる180人の学生に向けて、その言葉が発せられるまで、わかなさんの11年の道のりは苦しみの連続だった。絞り出された言葉には、重みとやさしさがあった。福島県伊達市で被災したわかなさんは、当時15歳。卒業式の日だった。震度6弱の揺れに、「この世の終わりだ」と思った。空が真っ暗になって雪が降り、雷まで鳴ってカラスが飛び回る。天変地異のようだったとわかなさんは思い返している。ラジオで原発が爆発したことを聞いたとき、ピンとこなかった。母が「このままだとチェルノブイリみたいになる」「逃げなきゃ」と言い、一方で父は「国が大丈夫だと言っているんだから大丈夫だろう」と言っていた。しかし、父が折れ、3月15日には母の実家がある山形県に避難をした。3月16日の高校の合格発表に、山形県に避難をしていたわかなさんは行けなかった。この日の福島市の記録を見ると、一時は毎時20マイクロシーベルト(事故前の666倍)。わかなさんは、のちに避難したことに負い目を感じるようになる。友人たちは高い放射線量の中、知らずに被ばくしてしまった。「私だけ逃げた」という思いにとらわれてしまう。父は仕事のために福島に残り、母と弟の3人で、山形県に1か月ほど避難していた。わかなさんの高校入学と、弟の学校が始まる4月に伊達市に戻ったが、それからも家族会議は続いた。両親が喧嘩になることもあり「どっちについていくの」と母に言われた。最後の話し合いの日の、母の言葉が忘れられない。「あなたはどうしたいの」「私はせっかく今の高校に合格したし、行きたいよ。でも……高校3年間と私のこれからの人生を天秤にかけたら、どちらが大切か明白でしょ」わかなさんはそう答えた。このころ、さまざまな場面で「大人もただの人間なんだ。何が正しいか大人も判断できない」と気づき、愕然としていた。合格した高校の入学式の日には、家族会議で山形県への避難が決まっていた。「家族で自主避難をすることになったので、編入手続きをしてください」と先生に伝えると「これを読め。安全安心と書いてある」と原発安全神話の本を差し出された。また別の先生には「おまえが行く(避難する)と風評被害が広まる」と言われてしまう。わかなさんは唖然とした。これまで筆者は、母子避難の母親を取材する中で「歩く風評被害と言われた」「気にしすぎなんだよと笑われた」「避難するなら離婚だと言われた」など、つらい経験をたくさん聞いた。しかしまさか子どもに向かってそんな言葉を投げかけた教師がいたとは、驚く。一方、別の先生は、教壇で泣きだし「3月16日の合格発表で、みんなを被ばくさせてごめんなさい」と話したという。わかなさんは、約10年間のそういった経験を克明に綴った『わかな十五歳中学生の瞳に映った3・11』(ミツイパブリッシング)という本を出している。「多感な時期の子どもたちは、自分たちの意見も感情も、誰にも話すことさえできず、ただ沈黙させられるという状況でした。私たちが怖いとか、嫌だとか言えば周りの大人を困らせてしまうだろうと“忖度”して、感情を押し込めて生活していました。そして、いつしか感情を閉ざすことに慣れていき、感覚が麻痺していくようでした」そうした内面が率直に綴られている。たくさんの大人に読んでほしい1冊だ。当時、そんなふうに過ごしていた子どもたちに対して、誰もケアに回ることができなかった。死ねないのなら、生きる方法を探そう「私だけ逃げた」という思いを抱えて、山形県で高校生活をスタートしたわかなさん。山形県の生徒や先生にとって、原発事故が他人事であることを突きつける言葉に傷つき、心を閉ざしていく。入学から2か月がたったころには、授業中に自然に涙が出てくることも増えた。3・11から泣いたり怒ったりすることを、まともにしていなかった。その後5年間、体調不良が続き、精神状態も悪化した。朝は起きられず、夜は眠れない。気力がなく、その日を生きるだけで精いっぱい。高校2年のころに心療内科に通うようになり、PTSDとパニック障害ではないかと言われた。「命を守れない社会にしたのは誰なのか」と、わかなさんは高校時代に考え続けていた。家族ともうまくいかず、誰もわかってくれないという思いも募った。その負の感情は、自分に向き、自傷行為がひどくなった。とうとう高2の冬、雪の降る日に、死に場所を探して屋外をさまよった。しかし、死ねなかった。「私はものすごく死にたいって思っていたけど、ほんとはものすごく生きたいんじゃないかなって、そのとき思ったんです。死ねないのなら、生きる方法を探そうと思った」そのころ始めたSNSで、自分の避難の経験や体調について語ると、温かいメッセージが届くようになった。なぜか北海道在住の人が多く、いつしか「北海道なら生きていく場所があるかもしれない」と思うようになった。高校3年生になり、少しずつ「生きたい」と思うようになった。わかなさんは本の中で《真っ黒な高校3年間》と表現しているが、「生きる覚悟」を決めるために必要な時間だった、とも書いている。そしてわかなさんは6年前から北海道で暮らしている。2018年から原発事故後の経験について講演をするようになった。始めた当初、「子どもがそんなふうに感じていたなんて知らなかった」と支援者からも、避難していた大人からも言われ、ショックを受けた。「私が話すことの必要性はある」と思うものの、「当時を思い出すのはしんどいと思うことが増えた」とわかなさんは言う。だからこそ、本に書き切って少し楽になった。すべてを語れなくても、「この本を読んでください」と言える。「伝えることはやめないと思うけれど、この子(本)に頼りながら、この子と一緒に歩んでいきたい」そう話し、笑顔で本を抱きしめる、わかなさんの思いが詰まっている。原発事故から11年の間に、国は避難区域を縮小し、「復興」と銘打った五輪も強行。避難住宅を打ち切り、除染で出た汚染土は再利用を目論む。原発事故が終わったかのような風潮に、「被害を受けた人、土地、傷を負った人に失礼だし、責任放棄だと思う」とわかなさんは言う。為政者が語る「絆」や「寄り添う」という言葉も「パフォーマンスでしかない」と事故当時から見抜いていた。その一方で、こんなことも話してくれた。「未来はもう少しよくしていけるんじゃないか、とも思います。原発事故でもそうでしたが、コロナ禍でひとりひとりが考えないと生きられない世界になってしまった。気候変動などにしても、考えて動かなきゃ状況を変えられない。“どうせ社会なんて、私なんて、こんなもん”とあきらめないで生きていけたらいいなと思います」インタビューのあと、わかなさんがメールをくれた。そこには、こう書かれていた。《つらかった当時の15歳の私を助ける(助けるというか、抱きしめる?)ために、いろんな人に経験を伝えているんだとも思います。“わかってくれる人もたくさんいるから大丈夫だよ” “生きててくれてありがとう” “生きててよかったよ”と自分自身に伝えたいのかもしれないです》森山詩穂さんが原告となっている「311子ども甲状腺がん裁判」では、裁判費用をまかなうための寄付をネット上で募っている。「311子ども甲状腺がん裁判」を支援してください!〈取材・文/吉田千亜〉よしだ・ちあ ●フリーライター。1977年生まれ。福島第一原発事故で引き起こされたさまざまな問題や、その被害者を精力的に取材している。『孤塁双葉郡消防士たちの3・11』(岩波書店)で講談社ノンフィクション賞を受賞
2022年03月11日「CYCLOPSathletegaming(CAG)」に所属するAyagator氏プロeスポーツチーム『CYCLOPS athlete gaming(CAG)』に所属していた女性プロゲーマー・たぬかなが、「身長170cm以下の男性には人権ない」などと差別発言したことで大炎上。同チームから2月17日付けで契約解除になった問題が一向に鎮火しない。炎上し続けるプロゲーマー界同じチームに所属する別のゲーマー兼マネージャーKbaton(コバトン)についても、2016~17年にTwitter上で障がい者や同性愛者への差別的な暴言を連発していたことがネット上で拡散され、チームを運営する『ブロードメディアeスポーツ』は同選手についても2月18日付けで契約解除したとチームの公式サイトで発表した。たぬかなが炎上したときも、「俺の所属チームで草」「こんな大事になるとは思わんかったわw」と他人事のようにツイートしていたが、自身の暴言が次々と告発されると17日までにアカウントごと削除していた。さらにネット上では、同じチーム所属のAyagator(アヤゲーター)の過去の暴言ツイートが問題視され、非難の的になっている。同選手もKbaton同様、2018年に障がい者や同性愛者などへの差別的な暴言を多数ツイート。また彼から見て理解度が低いと感じられたTwitterユーザーに対しては、「お前TL流れてくんの目障りだわゴキブリかよ害虫潰すぞ」「クソ雑魚日本語覚えてからツイッター始めろや」などとも投稿していた。ネット上では、Kbaton以上に激しい差別的暴言を発していたAyagatorに、「たぬかな、コバトンが契約解除ならアヤゲーターも同じ処分じゃないとおかしい」との声があがっている。『ブロードメディアeスポーツ』はたぬかなを契約解除する際、《当社は、いかなる差別的・侮辱的な行為や言動・SNS等での発言も許されるものではないと認識しており、すべての人にとっての多様性を大切にしております》と公式サイトで発表している。所属先がAyagatorについて出した回答ではAyagatorについてはどのような処分を考えているのか。同社に問い合わせると、窓口担当者から以下のような回答があった。――過去にあった過激なTwitterでの発言について何らかの処分をする予定はあるのか。「ご覧になられている発言に関しましては、チームに所属する前の発言になっておりますので、現状、本人に対しては厳重注意を行っているところであります」――厳重注意ということは契約解除することはない?「私が聞いている範囲では、厳重注意するということまでとなっております」――選手にはどのような形でお話しをされたのでしょうか。「監督から選手個人個人に直接連絡いたしました」現時点では厳重注意に留めるとのことだが、ネット上での炎上は収まりそうにない。同選手はネット上で過去の暴言ツイートのスクリーンショットが拡散されはじめた頃から、急いで該当するツイートを削除しているが、後の祭り状態だ。プロゲーマーによる差別的発言が次々と明るみになった背景にはこんな理由があるとゲーム誌ライターは言う。「もともとプロゲーマー達の間では、未熟なプレイヤーを障がい者や同性愛者に例え揶揄するスラングが横行してきました。最初に炎上したたぬかなさんが使った“人権”も、必須レベルの強いキャラクター・武器などを意味するものです。それを持っていないと“お前、人権ないな”と普通に使ってしまう。こうしたゲーマー間でのスラングがそもそも問題だということをより認識するべきだったのではないでしょうか」今後の進退に注目集まるAyagatorは過去のインタビューで「プロゲーマーとして努力していることってありますか?」という問いに対しこんなことを語っている。《プロゲーマーって、ゲームが上手いだけでは周囲から信用されないと思うんですよ。だから、人間性の面でも信用される人間でありたいです》今では子どもが憧れる職業となったeスポーツのプロゲーマー。そんな子どもたちの模範となる姿を見せられるよう、ゲームの腕を磨く前に、学ばなければいけないことがあるのではないだろうか。ゲームのように簡単にリセットとはいかないのだから。
2022年02月18日東ヨーロッパのバルカン半島に位置する、北マケドニア共和国。同国のステボ・ペンダロフスキー大統領が、いじめを受ける少女のためにとった行動に、称賛の声が上がりました。北マケドニア共和国大統領「共感は私たちの道徳的義務」大統領政治教育センターの発表によると、ペンダロフスキー大統領は、ダウン症の少女であるエンブラ・アデミさんと彼女の家族が日常的に直面している課題について話しあったといいます。学校で、差別を受けているというエンブラさんのため、ペンダロフスキー大統領は、自ら彼女の手を取り、学校を訪問。「子供たちの権利を危険にさらすような人々の行動は、容認できない」とコメントし、エンブラさんと彼女の家族を支援する姿勢を見せました。また、ペンダロフスキー大統領が、エンブラさんとともに学校を訪れた背景には、「多様な人々がお互いの個性を認めあうことが基本原則である」と示すためだったとも、語っています。Stevo Pendarovskiさんの投稿 2022年2月7日月曜日Stevo Pendarovskiさんの投稿 2022年2月7日月曜日Stevo Pendarovskiさんの投稿 2022年2月7日月曜日Stevo Pendarovskiさんの投稿 2022年2月7日月曜日SNSを介して、「共感は私たちの道徳的義務」とも呼びかけたペンダロフスキー大統領。大統領自ら差別問題に向き合う姿勢はネット上で反響を呼び、日本でも「素晴らしい」とペンダロフスキー大統領を称賛する声が寄せられました。・少女を、1人の人間として、差別問題に向き合う姿が素晴らしい。・大統領としての信念を感じます。・「差別はダメ」「いじめはダメ」と語るだけではなく、実際に行動に移すところがかっこいい。エンブラさんや彼女の家族が直面している状況は、残念なことに決して珍しいことではありません。周囲から差別的な態度を取られ、悩んでいる人は世界中にいます。顔も知らない誰かの悩みではなく、自分のこととして問題に向き合う姿勢が、世の中を変える第一歩なのではないでしょうか。ペンダロフスキー大統領自らが起こしたアクションは、世界中の人々に大切なことを気付かせてくれたはずです。[文・構成/grape編集部]
2022年02月12日「Black Lives Matter」運動で可視化された人種差別は、私たちにも深く関わる問題。生まれた場所や肌の色、宗教や民族、セクシュアリティなどによる不平等を知ろう。『みんなのアメリカ~私たちが社会をつくる~』WE THE PEOPLE Episode 107 “Immigration” of WE THE PEOPLE. Directed by Jorge Gutierrez. Song title: “American Citizen” performed by Bebe Rexha. Cr. COURTESY OF NETFLIX © 2021『隔たる世界の2人』『マイケル・チェの要チェック』Michael Che Comedy Special1.『みんなのアメリカ~私たちが社会をつくる~』アメリカと日本という違いはあれど、政治や人権について学ぶきっかけに。そして、曲がどれも素晴らしい!ジャネール・モネイやH.E.R.、アダム・ランバートなど人気アーティストによる歌で、市民権や政権、移民、税金……などについてわかりやすく解説するアニメーション。バイデン大統領の就任式で話題を呼んだ詩人のアマンダ・ゴーマンも出演。Netflixシリーズ『みんなのアメリカ ~私たちが社会をつくる~』独占配信中2.『隔たる世界の2人』思わず目を背けたくなるほどの苦しいシーンもあるけれど、これがアメリカの人種差別のリアル。タイムループに閉じ込められてしまった黒人男性が、愛犬の待つ自宅に帰る途中で白人警官に殺される恐怖を何度も繰り返す。主人公・カーターの戦いを通して人種差別問題を真正面から映し出した、アカデミー賞最優秀短編実写映画賞受賞作。Netflix映画『隔たる世界の2人』独占配信中3.『マイケル・チェの要チェック』NY出身者だからこそ語れる真実を人気コメディアンが笑いに昇華。日本に暮らす私たちが共感できる点も。アメリカの大人気バラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』に出演するマイケル・チェのスタンドアップコメディを収録。人種差別や同性愛嫌悪、白人女性によって高級化される街……などの深刻な社会問題について、ユーモアを交えながら暴く。Netflix作品『マイケル・チェの要チェック』独占配信中『ヘアスプレー』HAIRSPRAY (2007) - MICHELLE PFEIFFER - JAMES MARSDEN. Credit: GABRIEL SIMON PRODUCTION SERVICES/STORYLINE ENTERTAINMENT/ / JAMES, DAVID / Album『ブラインドスポッティング』4.『ヘアスプレー』トレーシーの前向きな姿勢と「昨日は過去」と歌う姿に励まされつつ今なお変わらない現実を思う。人種差別が残る1960年代のボルチモアを舞台に、ボディポジティブな女子高生・トレーシーはずっと夢だったテレビショーへのレギュラー出演を目指して奮闘。彼女のパワフルなダンスが、肌の色や体型への差別と偏見を吹き飛ばしていく。5.『ブラインドスポッティング』異なるバックグラウンドを持つ両者の立場からそれぞれの苦悩を知る。最後のラップシーンが忘れられない。アメリカ・オークランドを舞台に、保護観察下にある黒人男性・コリンと彼の親友である白人男性・マイルズの真の友情が試される。2人のアイデンティティを揺るがす事件が起こることで、彼らの間にあった見えない壁が浮き彫りになっていき……。© 2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED(Hanako1202号掲載/text : Momoka Oba edit : Kahoko Nishimura)
2021年12月23日メンタリストDaiGo(’18年3月)「みなさん、お待たせいたしました」10月5日、メンタリストのDaiGo(34)が約2か月ぶりにYouTubeへ動画を投稿した。■DaiGoの復帰動画に違和感「8月7日にYouTube配信した動画で“僕は生活保護の人たちにお金を払うために税金を納めてるんじゃないからね。生活保護の人たちに食わせるくらいなら、猫を救ってほしいと僕は思うんで”“自分にとって必要がない命は僕にとっては軽いので。ホームレスの命はどうでもいい”などと発言して、生活保護受給者やホームレスへの差別であると批判され炎上しました。その後、謝罪動画を配信した際に当面YouTubeを休止すると報告しました。でも休止期間中、DaiGo個人の有料動画配信サービス『Dラボ』は継続し、瞑想や猫や、富裕層の習慣について配信し続けていました」(スポーツ紙記者)再開する前日の10月4日には「そろそろYouTubeチャンネル再開しましょうか?」とYouTubeチャンネルのコミュニティ上でアンケートを取るなどしていた。では今回配信した、休止明け一発目となった動画はどのようなものだったのか。「まず、これまでの動画はDaiGo自身が映し出され“DaiGoです”などの通常あいさつから始まるものがほとんどでしたが、今回は愛猫の“みこ”から始まります。今までの声のトーンよりやや優しい口調のようにも感じました。その後、高級ワインをたしなみながら“断食”についての解説をするという内容でした」(同上)これまでのDaiGoの動画は大学の研究結果などをもとに、日常の悩みを解消する方法や自己啓発のしかたなどを解説するものが多い。あくまで自身を「文献を読むのが好きな、ただの理系」とし、独自の考察で事実を確定するものではないと説明している。久しぶりの動画には「待ってました!」「おかえりなさい」などファンの歓喜のコメントが並ぶも、なかには「ろくでもないホームレスや生活保護受給者に気なんて使わなくていいと思う!」というコメントも見られた。動画のコメント欄は、DaiGoサイドが書き込みされたコメントを精査できる承認制を選択しているようで、“アンチコメント”は見当たらない。7日以降、『【嫁vs旦那】夫婦が上手くいくのはどっち問題』『人生が180度変わる【目標達成の5つの極意】』など5本の動画を公開しているが、コメント欄はDaiGo本人以外はなかった。さらに、今回の動画で「気になったことがある」と話すのはあるフリーライター。「今回再開した動画では、これまで配信していた動画と違う箇所がいくつかあります。まず、テロップの編集がされていたり、高評価・低評価の数値が表示されなくなっています。また、謝罪に追い込まれて配信を休止した人は、再開するにあたり、休止期間に何をしていたのか、どんなことを考えていたのかなどを説明する人が多いのですが、DaiGoは、まったくそういったことがありませんでした。差別発言が炎上のきっかけだっただけに、しれっと再開したことが疑問です」DaiGoはYouTubeの動画配信を休止中に、友人である脳科学者の茂木健一郎の紹介で、ホームレスや生活困窮者への支援を行うNPO法人『抱樸』へ「学びの機会」を与えられ、代表の奥田和志氏を紹介されたという。「茂木氏が『抱樸』の奥田理事長に“DaiGoが(炎上して)大変なことになっているから、連絡を取ってやってくれないか”と、相談したようです。その後、DaiGoは奥田氏と2人でやりとりをし、茂木氏を含め“約束ごと”をしたようです」(フリーライター)NPO法人『抱撲』のホームページを見ると、DaiGoは奥田氏と以下のような約束を交わしている。■NPO法人『抱撲』とDaiGoの約束(1)今回の抱樸での学びに関しては途中経過を含めてすべて配信等はしない。これを配信のネタにすることはしない。DaiGo氏は、配信を仕事としておられるが、これは配信やビジネスのための学びではない。学びが足らない状態で安易に配信し、目的がズレてしまうと抱樸は関わる事はできない。(2)抱樸の宣伝や応援、寄付は一切行わない。抱樸としても寄付等は受け取らない。何よりも大切なのは、DaiGo氏がこのことを経て学び変わることである。誤った情報ではなく、人の命に資する知識をDaiGo氏が有することである。抱樸は自分たちのためではなくDaiGo氏が学ぶ必要があると考えている。抱樸としては学びたいと欲している人に応えたいと考えている。DaiGoがYouTubeを再開した際に、休止中の活動について語らなかったのは、このような約束があったからということだ。NPO法人『抱撲』にDaiGoの“学び”について問い合わせると、「DaiGoさんの件について、学び以外の理由でお互いを利用しない、経過を発信をしないとお約束させてもらっています。また、学びたいと言われているため、DaiGoさんとのやり取りは外部に漏らさない、守るべき対象です」とし、DaiGoの今後について「学びの機会」を与えている姿勢を見せた。『抱撲』のホームページには「コロナの状況があるため、抱樸への訪問は当面できませんし、当事者の方々がいる場所への訪問には最大限注意を払い、準備と同意が必要であることは言うまでもありません」とあるため、DaiGoが実際に困窮者やホームレス支援の現場に出たかは不明だ。休止期間中、彼はホームレスや生活保護受給者について、どのような「学び」をしたのか。YouTubeの再開にあたり、気持ちの変化を担当者に問い合わせたが、期日までに返事はなかった。学びを経てDaiGoの心境に、どのような変化があったのだろうか。「ろくでもないホームレスや生活保護受給者に気なんて使わなくていいと思う!」というコメントを“承認”していることに違和感が残るが……。
2021年10月20日子育て中の悩みとして耳にすることがある「孫差別」問題。大人だけでなく、子どもにもストレスを与えてしまう問題だけに、対応に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。投稿者さんも、義母による孫差別に悩まされているひとり。自分の子どもが義妹の子どもと比べられて嫌な気分だったのですが…。■義妹とグルになって「孫差別」をする義母義妹やその子どもたちと一緒に買い物に行くと、あからさまに意地悪をされてしまい…。義妹からも嫌味を言われる始末。それだけならまだしも…。■理不尽な理由で孫を叱る義母義妹の子どもばかりを可愛がる余り、遼を悪者にし、辛く当たるのです…!理不尽の極み。悔しすぎる「孫差別」問題に、読者から共感や衝撃な実体験のコメントが多数届きました!■「孫差別」をする義両親に読者の不満が爆発!孫に順位をつける義両親に、苛立ちを隠せない読者から、共感や実体験のコメントが殺到しました。・私の義母も、娘の子を“うちの子”と言っていました。 このパターンと全く同じです。 上の子はもう八歳ですが、生まれてから今まで、1度もかわいいと言われた事がありません。下の子も同様です。・我が家も義妹の子どもがイチバンです。 うちの子たちは正月生まれということもあり、お年玉のみで誕生日プレゼントはありません。義妹の子どもには、両方プレゼントしているのに…と差別を感じています。 ・うちには男の子がひとりいます。 義実家ラインがあり、「最近産まれた義妹の娘の写真を送るから嫁ちゃんも見てね〜!」と言われ、時々チェックしていたところ…義母が「やっぱり、孫は女の子が1番可愛いー!」と書いていました。その言葉が忘れられません。・義母は夫の兄の息子を溺愛しています。私に息子が生まれたとき、同じように可愛いがってくれるだろうと思い込んでいたので、それは思い違いだったと気づいたときには少なからずショックを受けました。私の息子へは興味も愛情も希薄でした。・義母は、自分が男の子を3人産んだからなのか、男の子の方が可愛いと言います。うちの子は女の子。「おばあちゃんと一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たりしたい」と言っても「疲れるから」と断られます。でも甥っ子には「男の子は手がかかって可愛い」と言うのです。 一昨年の年末も、「やっぱり男の子の方が可愛い」と娘の前で言われてしまい、悲しくなりました。・うちの義母も、孫に順位をつけています。今もですが、実娘の産んだ初孫の男の子が1番可愛いらしく、次は実娘が産んだ次男。3番目にやっと我が家の長男です。さらに、嫁に対する「義母の“嫌味”問題」への声も…!■「いい加減にして!」義母の“嫌味”問題にもコメントが殺到・私が長女を出産したとき、義母が「男の子じゃないのね」と一言。お祝いもなく、長女には何ひとつプレゼントやお年玉もない。そして「次こそは男の子ね」と、プレッシャーをかけてくる。・義母と夫の親族は、どうしても私が「楽な人」と決めつけたいみたいで、双子を出産すると「育児もいっぺんに済んで楽」と言われ、その後に3人目を出産した際にも「もう3人目で慣れてるから楽」と言われ続けたのに…。義妹がひとり目を出産したときは「ひとり目で慣れてないから大変ね」とねぎらっていて、ものすごく手伝ったり援助したりしていて悲しかったです。・母乳の出が悪く 仕方がなくミルクを息子に飲ませていたら、義母に「この子は母乳じゃなくミルクを飲まされて可哀想」と言われて、ショックでした。母乳で育てたくても、出なかったのに…。理不尽すぎる「孫差別」問題に悩まされる恵ファミリーは、義妹の離婚問題まで加わり、さらにややこしい事態に発展してしまい…!? 気になる連載はウーマンエキサイトに掲載されています!▼義父母がシンドイんです!/孫差別する義母
2021年09月19日メンタリストのDaiGoが自身のYouTubeチャンネルで、生活保護を利用する人やホームレスの人たちを侮辱し、排除する発言をした。その後、二度の謝罪をするも騒動は収まらず、社会問題として発展。DaiGoの発言を受け、緊急声明を発表した、生活困窮者の支援活動を行う『つくろい東京ファンド』の小林美穂子氏による寄稿。DaiGo250万人のフォロワーを持つメンタリスト・DaiGo氏がYouTubeに投稿した動画を知ったのが8月12日。その日からずっと心を削られ続けている。「社会的無責任論者」と自己紹介に書いている250万人のインフルエンサー、その彼が動画配信サイトで流した差別的な発言は、明らかに度を超えていた。DaiGo氏の投稿が炎上してから、私たちのもとには生活保護利用者たちからの悲痛な声が届いている。コロナ禍で仕事を失い、所持金も100円から数十円になって、慣れない路上生活も経験したのちに支援につながった若者たちだ。彼らのほとんどがテレビは見ず、テレビを必要とも思っておらず、もっぱらスマホでYouTubeやインスタを楽しんでいると知ったのも、若い世代と関わるようになった最近のこと。DaiGo氏に「どうでもいい命」と切り捨てられた元路上生活者や、生活保護利用で命や生活をつなぎとめた若者たちは、どんな思いでDaiGo氏の発言を聞いただろう。「あれはいくらなんでもあんまりですよね」「誰だかわからない人に、私の命の線引きをされたんですよね」「ナチスと同じじゃないですか。学校で習わなかったんですかね」LINEやメールで届いた彼らの言葉に心が痛む。そして腹が立ち、たまらなく悲しくなる。■インフルエンサーの“辛口”トーク、その罪とは考えて欲しいのだ。好きで生活困窮する人がいるだろうか?ーー頑張りたいけど思うように頑張れない、頑張ってきたけどうまくいかない。それは、彼らのせいではない。そうでなくても生活保護バッシングや路上生活者への襲撃や殺人が後を絶たないこの国で、後ろめたい気持ちを抱えながら生きる人たちに対し、DaiGo氏の吐いた言葉の罪は非常に重い。彼の言動は、ホームレス状態の人たちの命や安全を脅かすだけでなく、これから制度を使うべき困窮者の生きる道をも閉ざしてしまう。やっとのことで生きている人の力を奪い、自死に向かわせるリスクをはらみ、また優生思想に共感してしまう人たちをヘイトクライムに向かわせるに十分な影響力を持っているのがインフルエンサーの罪であり、その罪深さの前に「社会的無責任論者」だなんて言いわけは通用しない。2012年に芸能人の親の生活保護利用について一部の政治家(片山さつき議員ら)が生活保護利用者のバッシングをし、メディアがこぞって追随し、バッシングの嵐が日本中に吹き荒れた。そのころ、私が在籍していた困窮者支援団体には、泣きながら電話をしてくる方、家から外に出られなくなった方、ほかに生きる術はないのに「生活保護を切ろうと思います」と取り乱す方からの電話が相次いだ。バッシングはもともと精神的に疲弊しながらも、それでもなんとか生きようとしていた人々の心を折った。■あの厚労省が動いた社会は優生思想を絶対に許してはいけない。それはなぜか。優生思想は我々が暮らす社会の基盤を崩すからだ。「あいつは生きていていいが、こいつはダメだ」という身勝手な線引きは、この社会で暮らすすべての人の安心を奪う。ある日突然、誰かが自分の好き嫌いだけを理由に「おまえは生きなくてヨシ!」と指を指されることを想像してほしい。そんなことが許されていいはずがない。だから、社会がこの危険な発言には大きなNOを突きつけなくてはいけないのだ。ヘイトクライムや差別に敏感な国であれば、影響力のある有名人のヘイト扇動発言に対しては、首相や大統領レベルが自ら発言をし、差別を許さないという姿勢を見せ、国民にも強い牽制をするだろう。しかし、残念ながらこの国では差別に関しての認識と意識は何周も遅れを取っているため、まず期待はできない。と、思っていたら今回は国が動き、正直、驚いた。DaiGo氏の投稿が炎上した翌日の13日、厚生労働省がツイートを更新した。「生活保護の申請は国民の権利です」ホームページのコピペという省エネ投稿ながら、絶妙なタイミングが国民への強いメッセージとなり、DaiGo氏への牽制の役割も担って、2.9万 リツイート、4万いいねという低燃費ながらすこぶる大きな反響を残した。■生活困窮者支援団体による緊急声明厚労省に一日遅れの14日、生活困窮者支援に取り組む4団体が共同で緊急声明文を出した(メンタリストDaiGo氏のYouTubeにおけるヘイト発言を受けた緊急声明)。声明文の内容要約(4団体の声明文を要約すると以下のとおり)1形だけの反省・謝罪にとどまらず、自分の発言内容の重大さをきわめて危険な反社会的行為であることを認識し、真摯に自己と向き合い、反省した上で撤回、謝罪すること。2菅首相からも、DaiGo氏の発言が許されないものであることを明言したうえで、生活保護の申請が国民の権利であることを率先して市民に呼び掛けること。3厚生労働省も、公式サイトで生活保護制度の案内を大きく取り上げる等、制度利用を促す発信に力を入れること。福祉事務所が追い返しなどしないように、周知徹底をはかること。4マスメディアは、DaiGo氏の起用を差し控え、その発言の問題点を報道し、このような発言を許さない姿勢を明確にすること。5私たち市民は、今回のDaiGo氏の発言を含め、今後ともこのような発言は許されないことを共に確認し、これを許さない姿勢を示し続けること。これを前後して、DaiGo氏を広告に起用していた会社のひとつが彼を降ろした。日ごろからホームレス支援活動を応援している会社だったので当たり前すぎる対応である。メンタリストがこの展開を読めなかったのは残念だ。DaiGo氏は13日に謝罪動画をYouTube投稿し、14日には「昨日の謝罪コメントを撤回します」という釣りタイトルのような動画を相次いでアップしたが、そこで分かったのは、「この人、なんにもわかってない」ということだった。■私刑、集団リンチという意見今回の一件で、乙武洋匡氏は自身のツイッターで以下のようにつぶやいている。《件の“人権軽視”発言を擁護するつもりは毛頭ありませんが、だからと言って集団リンチによる“私刑”が、他者に社会的な死をもたらす社会が健全だとは思えません。失敗から学び、再出発できるチャンスを奪うことは、それこそが人を死に追いやりかねない構造をつくり出してしまうのではないでしょうか。》乙武氏はその後、『DaiGoさんの炎上発言に思うこと』という記事をnoteにまとめているが、これがまた有料なので残念ながら読んでいない。「集団リンチ」とか「私刑」の言葉の強さに思わず息をのむ。ネットの世界では、言葉がどんどん過激性を帯びていくという傾向を知っていてもなお。そして、和や秩序を大事にし、対立を好まない国民性によるのか、次第にDaiGo氏擁護派がチラホラと出てくる今、私は考え込んでいる。今から27年前、私がマレーシアで働いていたころ、職場でストーキングされたことがある。会話を交わしたこともないその職員は、目が合うと柱の陰などから避妊具をちらつかせた。上司の一人にそのことを話すと翌日から姿を見せなくなった。聞くと、「安心して。昨日でクビ」と言われ、私は慌ててしまった。「そこまでしなくてもよかったのに。つきまといさえやめてくれればよかったのに」と言うと、「アンタ、なにいってんの?」という顔をされた。国際的に見れば、ハラスメントもヘイトスピーチも一発アウトな国は多い。それらが一発アウトの解雇理由となり得ることは、過去ニュースを検索してもわかる。しかし、残念ながら、日本では明らかな暴力があっても、被害者がバッシングを受け、企業や社会が加害者に配慮するケースが未だにあとを絶たない。「ダメなものはダメ」という毅然とした態度が取れない中で、差別やハランスメントは助長されていく。「ダメなものはダメ」という姿勢は、スポンサーや企業など社会全体が取る必要があり、それによって世の中の人々にも浸透していくものなのだと思う。それは、「失敗から学び、再出発できるチャンスを奪うこと」とはイコールではない。彼が学んだあとに再出発はできるはずだし、そんな社会を作らなくてはいけない。■困窮者支援団体で学ぶことを手引きする是非DaiGo氏の投稿動画が炎上し、DaiGo氏側に心を痛めた人がいる。茂木健一郎氏だ。「友人のDaiGoという人が問題になっている。話をしてあげられないか」と北九州市で長きにわたりホームレス支援の活動をして来られたNPO法人『抱樸』理事長の奥田知志氏に打診したそうである。謝罪動画の中でDaiGo氏が「抱樸に行く」と言ったとき、誰が手引きしたのだろう?と思った。そして、ザラッとしたものが心に残った。自分が「ホームレス=犯罪者」のように言い、そして社会から抹殺してもいいとすら匂わせた対象を支援するNPOを石鹸代わりに使って、自分の不始末を洗い流すつもりなのかと驚いた。それは不謹慎だと思ったし、どれだけ無神経なのかとも思った。たとえば性暴力加害者の友達が「友達が問題になっている。そちらで学ばせてやってほしい」と性暴力被害者たちが保護されている女性支援団体に連絡してきたらとどうだろう。彼の言動は、それとどこが違うのだろうか。とはいえ、『抱樸』理事長の奥田氏も心得ていて、守るべき人たちの安全を万全にした上で、学びたいのなら教えるという寛大な姿勢を取っており、また、「反省」という行為についても過不足のない見解を述べておられる。さすがである。私たちの気持ちも総括してくださった。DaiGo氏の差別発言に関する見解と経緯、そして対応について■「反省する」とはどういうことか緊急声明の厳しさを批判する声やバッシングなど、多くの反響がある中でずっと考えていた。反省というものは一朝一夕にできるものではなく、自分のこれまでの人生を振り返り、向き合い、その価値観を否定し、ひっくり返すような作業を伴うもので、それは身を切る痛い作業の積み重ねだ。困窮者支援の活動を始めて12年になる私にも、消えては浮かぶ差別意識がある。今でも向き合う内省作業はずっと続いているし、きっと一生続くものと思っている。これまでの自分が長い時間をかけて培い、積み上げてきた価値観を否定していくという作業は、誰にでもできることではない。とても身近な高齢者で、DaiGo氏と似た発言をする人がいる。その人と議論を続けて10年以上になるが、あるとき、悲しそうな顔をしてその高齢者は言った。「自分はこれまでこんな自分が正しいと思って生きてきた。どうかこのままでいかせてくれ」それは、価値観を変えるということはそれほどまでに難しいことなのだと知った瞬間であった。■守るべきもの、守るべき対象を見誤るなDaiGo氏が全否定したホームレスや生活保護利用者に、その人らしく生きる権利が保障されているのと同様、DaiGo氏にも反省したり、学ぶ権利がもちろんある。やり直す権利も当然ある。それが社会であり、人権というものだ。だが、いま、私たち社会が守るべきは、今回DaiGo氏に差別され、否定され、不安と恐怖にさらされている人たちではないだろうか。DaiGo氏の権利を守ろうとする人々には部分的には共感する。しかし、日本の人権教育が一向に進まない最大の理由は、守るべき根幹の部分が常にブレてしまう点にあるようにも思えた。思いやりは大切だ。しかし、バランスを大事にするあまり、被害者が見えなくなってしまう。そんな中で、被害者たちは更に傷つき、孤立し、不安と恐怖に苛まれながら日々を過ごす。今回、私は「いなくていい」とされた人たちと共にあり、その恐怖を自分のこととして体感した。今でも怖い。だけど、その恐怖に負けて黙ってはいけないのだ。これまで想像を絶するバッシングにさらされてきたフェミの女性発信者、命の脅迫を受けながらヘイトスピーチに抗ってきた在日コリアンの方たち、障害者運動の方たちの顔が浮かぶ。どれだけの恐怖と闘いながら立ち続けてきたのかと。心からの敬意を表し、私もしっかりと立ち続けたい。そして、DaiGo氏の動画に傷ついた人たちと共にあるということを、声を大にして叫びたい。要らない人なんて誰もいない。みんなで一緒に生きられる社会にしていきましょう。そこにはDaiGoさん、あなたもいるのです。小林美穂子(こばやしみほこ)1968年生まれ、『一般社団法人つくろい東京ファンド』のボランティア・スタッフ。路上での生活から支援を受けてアパート暮らしになった人たちの居場所兼就労の場として設立された「カフェ潮の路」のコーディネイター(女将)。幼少期をアフリカ、インドネシアで過ごし、長じてニュージーランド、マレーシアで働き、通訳職、上海での学生生活を経てから生活困窮者支援の活動を始めた。『コロナ禍の東京を駆ける』(岩波書店/共著)を出版。
2021年08月18日生活保護利用者に対し、差別発言をしたメンタリストのDaiGoメンタリストのDaiGoさんが、自身のYouTubeチャンネルで8月7日、生活保護を利用する人やホームレスの人たちを侮辱し、排除する発言をして問題となっている。■一度ネット上に出た言葉は、自分にずっと付いてまわる発言をした動画はすでに非公開になっているが、「生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら、猫を救ってほしいと僕は思うんで」「自分にとって必要ない命は軽いんで。ホームレスの命はどうでもいい」「いない方がよくない?正直、邪魔だしさ。プラスになんないしさ。臭いしさ。治安悪くなるしさ。いない方がいいじゃん」と、生活保護利用者やホームレスの人の命を軽んじて、いなくていいと言いきって排除するもの。とうてい許されるものではない。保護猫を飼い、猫の保護活動に寄付をするなどの活動を熱心にしているDaiGoさんだが、猫の命を大事に思うなら、人の命をどうして大事に思えないのだろうか。さらにDaiGoさんは、「もともと人間はね、自分たちの群れにそぐわない、社会にそぐわない、群れ全体の利益にそぐなわい人間を処刑して生きてきてるんですよ。犯罪者を殺すのと同じですよ。犯罪者が社会の中にいると問題だし、みんなに害があるでしょ?だから殺すんですよ。同じですよ」と、「殺す」といった殺害を示唆するような言葉まで使っていたのには驚く。たとえばネットで誰かへ殺害予告をすると威力業務妨害罪などが適用されるが、不特定の誰かだとしても、そういう重い言葉だと果たしてどこまで自覚していたのだろうか。また元の動画は非公開になったものの、YouTube上には問題の発言だけを切り取って投稿されていたりもする。発言はいまも彼の口から発せられる言葉としてネット上にあり、たまたま見た生活保護を利用する誰かを傷つけることもありえるし、インフルエンサーが発したこれらの言葉に同調する人が出てくることもある。これまでユーチューバーとして活躍してきた彼なら、そうしたことだって想像し得るであろう。一度ネット上に出た言葉は自分にずっと付いてまわり、その責任を問われ続けることになる。当然ながらこれら発言には数多くの批判が集まったが、すぐには謝罪には結びつかず、その後も自身のYouTubeチャンネルで、「自分の税金が生活保護の人たちにまわるぐらいだったら、猫にまわしたいと思うんですよ」などとも言っていた。野良猫を保護することにもちろん意義はあるが、それと生活保護を同列で語るのは違う。生活保護は憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を権利として具体化したもので、国は生活に困窮する市民に対してその程度に応じて必要な保護を行う。そして批判の声がさらに高まった13日夜、DaiGoさんは「間違ったことを言ったので謝罪します」とした動画を配信(15日深夜に非公開に)。そこで長年ホームレス支援活動をしているNPO法人「抱樸(ほうぼく)」の奥田知志氏と連絡をとって、近々、奥田氏が活動をする福岡・北九州市へと赴くことを話した。奥田氏のことをDaiGoさんは、「2020年には赤坂御所に招かれて天皇皇后両陛下に生活困窮者支援について、なんかこう説明とかしてるみたいなんですけど、その方にさっそく連絡をとって行かせてほしいと話しました」と言うが、なぜわざわざ北九州まで、このコロナ禍に?都内にも困窮者支援団体はいくらでもあるだろう?と不思議に思わざるを得ない。■命に優劣をつける権利が自分にあるという考えは危険そうした謝罪そのものも生活保護やホームレスの人たちへの理解に欠け、差別的なものだと指摘するのが、生活困窮者支援を長年続けている、一般社団法人「つくろい東京ファンド」代表の稲葉剛さんだ。「13日夜の謝罪では生活保護利用者全般や、ホームレスの人たち全般に対する差別を取り下げたわけですが、そこで使われているロジックが『頑張っている』という表現なんですね。抱樸へ行って奥田さんと話をするというのも、抱樸が支援したホームレスの人の『半分以上、57%ぐらいの人が復帰する。そのおかげで僕らが払ってる税金が無駄にならないで済むわけじゃないですか』と話していて、ホームレスの人たちの中でも頑張っている人は生きる権利を認めてあげていいよという話です。それは、生産性とか、自分の好みとか、頑張ってないと自分が思う一部の人たちを社会から抹殺しても構わないという根本的なところが変わっておらず、線引きを変えただけです」そもそもDaiGoさんの一連の発言について稲葉さんは、「(7日の動画の)発言のすべて、あまりに問題が多すぎてどこが問題かひとつに絞れないほどですね。根本的には死刑制度の例を出して、処刑してもいい、殺すといった言葉を使い、優生思想があります。命に優劣をつける権利が自分にあるという考えが、いちばん危険だと思います。他者の生きる権利を決定できると思っていて、その矛先がホームレスの人たちと生活保護の利用者に向かっている」と言う。そのことでホームレスの人たちや生活保護利用者が傷つくことも心配されるが、それと同時に稲葉さんは「生活保護の利用が妨げられること」を懸念している。「ただでさえ生活保護の利用をためらう方がたくさんいらっしゃるのに、制度から困窮者を遠ざけてしまい、間接的に人を殺してしまいます。またホームレスの人たちについてかなりひどい言葉で差別して、『いないほうがいいじゃん』とまで言っている。昨年も岐阜と渋谷区で路上生活の人が襲撃によって殺されていますし、90年代半ばから全国で襲撃によって命を奪われた方は20数人います。ほとんどが若者による襲撃ですが、元々そういうヘイトクライムが日本各地で起こっている状況で、さらにヘイトクライムを誘発しかねない発言をYouTubeでチャンネル登録者数が250万人にも及ぶインフルエンサーとされる人がするのは、偏見をさらに助長する危険なものです」命を選別し、命を危険にさらす恐れのあるDaiGoさんの発言はとてもこのまま沈静化すれば終わり、というのではすまない。つくろい東京ファンドはじめ都内で生活困窮者支援を行う4つの団体は14日に『メンタリストDaiGo氏のYouTubeにおけるヘイト発言を受けた緊急声明』を発表した。■それでも生活保護を後回しにする厚労省そこではDaiGoさんに反省や謝罪にとどまらず「動画がヘイトスピーチに該当する内容であることについて真の理解に至ったうえで、改めて発言を真摯に反省・撤回し、生活保護利用者、ホームレス状態にある人々に謝罪すること」を求めている。さらに「『処刑』や『殺す』という言葉を用い、特定の人たちを社会から排除・抹殺することを正当化することは、ヘイトクライムやジェノサイドを誘発しかねない反社会的行為であることを認識し、この点についても明確に発言を撤回し、謝罪すること」を求めた。この提案が報道されると15日、DaiGoさんはスーツ姿で「昨日の謝罪を撤回いたします」という動画を再度、配信した。しかし稲葉さんが指摘していた「頑張っている」というロジックは変わらず。「何かから抜け出そうと努力している人は評価されるべき」「(生活保護利用者の中に)努力している人がいっぱいいます」「自分はこんなに頑張れない。ひたすら後悔の念」と、頑張っていることを基準としており、その基準によって他人が生きることの権利を阻害していることに考えが至っていないままだった。世の中にはさまざまな理由で頑張りたくても頑張れない人はおおぜいいる。そもそも、頑張るという、その基準は誰が決めて、誰が判断するのか?そんな抽象的な概念で、人が生きることを邪魔することは決してあってはならないだろう。DaiGoさんの「頑張る」というその基準は自分の価値観であり、それを他者に押しつけることは間違っていることに気がついてほしい。コロナ禍に於いて、生活に困窮する人は増えている。しかし、生活保護を利用する人は実は増えていない。稲葉さんによると、「厚生労働省が13日に生活保護の申請は国民の権利ですとした呼びかけをツイートしたことはよかったんですが、ホームページでは、生活を支援するためのメニューを紹介するページを、広告費をかけてまで宣伝しているのに、そこには最初のページに生活保護が出てきません。貸し付けの話がいちばん最初で、生活保護はページの最後にPDFのリンク先があって、そこに飛ぶと、18ページ目にやっと出てきます。生活保護の担当課はがんばっていても、厚労省全体として生活保護を後回しにしようとしているのかもしれません」と、国の対応にも疑問を呈している。生活保護を利用することは憲法で定められた権利だ。臆することなく、申請をしてほしい。なお、8月31日まで『あしがらさん』()というホームレスの男性を追ったドキュメンタリー映画がYouTube上にて、無料で公開されている。これはDaiGoさんの発言に対しての、監督の飯田基晴さんの反論だという。ホームレスの人たちのこと、生活保護について考えるきっかけになってくれるはずだ。和田靜香(わだ・しずか)◎音楽/スー女コラムニスト。作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生などに関するエッセイも多い。主な著書に『ワガママな病人vsつかえない医者』(文春文庫)、『おでんの汁にウツを沈めて〜44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)、『東京ロック・バー物語』『スー女のみかた』(シンコーミュージック・エンタテインメント)がある。ちなみに四股名は「和田翔龍(わだしょうりゅう)」。尊敬する“相撲の親方”である、元関脇・若翔洋さんから一文字もらった。
2021年08月16日DaiGoホームレスに対するあからさまな差別発言に対し、世間から猛批判をを浴びたメンタリストのDaiGo。当初は強気の姿勢だったが、謝罪で鎮火に走った。謝罪動画で「自分のしてしまったことは無意味であり差別的でありヘイトスピーチであり」と全面的に非を認めているが、あれほどインテリジェンスのある人が腹の中にないことを発信するとは考えにくい。確信犯的な差別主義者のにおい、プンプンだ。■論点をズラしたズル賢い謝罪DaiGoはYouTubeライブで、「自分にとって必要がない命はボクにとっては軽いんで」「ホームレスの命はどうでもいい」「どちらかと言うといないほうがよくない?邪魔だしさ、プラスにならないしさ、臭いしさ、治安悪くなるしさ」と、信じられない差別感、人権意識を丸出しにした。DaiGo本人の発言も身の毛がよだつが、それ以上に恐ろしかったのは、DaiGo発言に賛同するコメントの多さ。比率で言えば、否定的コメントの方が多数だったが、なかには、「みんなの思いを代弁しているだけ。これを叩いているのはきれいごと言ってる人たちと考えてます」「俺からしたら正論にしか聞こえない」「だいごに賛成」「本音とたてまえ皆んな思ってるけど言わないだけ」「完全同意なんだけど、言っちゃダメ!」「みんな思っているけどダメ!」と、DaiGoと同じ考えのいる人が一定程度いることを、DaiGo発言が露呈させた。当初、世間の反応に強気だったDaiGoも、問題の拡大を受け平身低頭。「その謝り方がまたDaiGo流のごまかし。ダークスーツに黒ネクタイというスタイルで出てきて、謝罪したのはいいのですが、母親のことを持ち出して、『うちの母が生きていたら、いまボクがこういう状況になっていることをどう思うかと考えると……』と涙したんです。本当に論点のずらし方が巧み、ズル賢い人です」と、この問題を取材したスポーツ紙記者も苦笑いだ。さらにこう続ける。「もともと確信犯ですよ、彼は。過去にも自身のYouTubeで『生活保護のお金をもらってパチンコ行くんでしょう。死んでしまえと思いますよ』と生活保護受給者に牙をむいていましたし、『ホームレスと猫を同列並べるのは猫に失礼なんで』『野良猫が増えるより生活保護を受けている頭の悪い人が増えるのが困る』ということを堂々と言っていたんです。無茶苦茶でしょ?今回の差別発言は、さらに踏み込んだために炎上したのであって、もともとDaiGoはそういう体質の持ち主だということですよ」インテリジェンスがあり、見かけもかっこよく、おしゃれな生活スタイルを確立し、弁も立つ。だが、実際は差別主義者だったという内面。メンタリストの本当のメンタルが知りたいところだ。〈取材・文/薮入うらら〉
2021年08月16日義父母との関係構築に悩むママやパパもいることでしょう。その中には、兄弟姉妹の子どもと自分の子どもとの間で、「孫差別」をされた経験がある人もいるようです。今回は、ウーマンエキサイトアンケートに寄せられたエピソードの中から「孫差別する義父母」に関するうっぷんをご紹介します。■孫差別とは?孫差別とは、祖父母が子どもの孫同士を比べて、えこひいきすることを言います。例えば、娘の子どもだけかわいがって、息子の孫はかわいがらない、差をつけるなどの孫差別に悩む人は一定数いるようです。「夫には妹がいて、結婚して3人姉妹がいます。私たち夫婦の第一子は女の子。義母から『最初は女の子でもいいけど、男の子を生まないと嫁じゃない』と言われ、次に男の子が生まれたのに、『おめでとう』の一言もなかった。義母は三姉妹ばかりかわいがっている」「義母は、夫の兄の息子を溺愛しています。私に息子が生まれた時は、同じようにかわいがってくれるだろうと思い込んでいたので、それは思い違いだったことを知った時には、少なからずショックを受けました。私の息子へは、興味も愛情も希薄でした」「元主人の母の話です。自覚はないようでしたが、元主人の姉が産んだ娘が、うちの下の娘より4歳下の長子で一人っ子で、その子と孫差別されていました。たまに帰省する私たちに話すのはその孫の自慢話ばかり。洋服やおもちゃも買い与えているようでした。うちの姉妹には、たまたま帰省が正月ならお年玉がありましたが、『顔を見せない孫にあげるお年玉はない』とはっきり言われました」「私は長男の嫁で、2人の息子がいます。義両親は、『娘の産んだ子どもがすごい』と言ってくる。でも実際は、私の子どもたちの方が優れていても、褒めてくれません。娘の産んだ孫が内孫で家族だと言います。盆、正月も、『娘家族が来るから』と言われるようになったので行かなくなりました」自分の子どもに産まれた孫同士を差別するなんて、にわかに信じがたい話ではありますが、実際に孫差別に悩んでいる人のつらい心情がうかがえます。同じ孫でも、住む場所の実際の遠さや、心の距離が反映されて、それが孫差別という形に現れてしまうのかもしれませんね。■内孫外孫?性別による差別?また、寄せられたコメントを見ていると、「内孫」と「外孫」というキーワードが出てきました。「義母は『内孫』とか『外孫』とかにこだわる。自分が男の子しか産めなかったからってそんなの知るか!」「内孫」とは、自分たちの跡取りとなる夫婦から産まれた子のことをさし、「外孫」とは、他の家に嫁いだ娘が産んだ子どものことを指します。ただ、時代とともに「嫁ぐ」という考え方が薄れてきている中、いまだにこだわる人がいることに驚きも感じます。さらに、孫の性別によって差別されたというエピソードもあるようです。「『次男だから女の子を産め』と言われ、男の子を2人出産。長男のところは女の子1人。もちろん、私も子どもたちもいじめられました。「長男のところは女の子だからかわいがってもらってよかったね!」と思っていましたが、本当は男の子がよかったらしいです」「義母は、自分が男の子を3人産んだからか『男の子の方がかわいい』と言います。うちの子は女の子。『おばあちゃんと一緒にお風呂に入りたい』とか『一緒に寝たい』と言っても、『疲れるから』と断られます。でもおいっ子には、『男の子は手がかかってかわいい』と言います。娘の前で言われた時は悲しくなりました」「妊娠してつわりが落ち着いてから、『性別が男の子』と義実家で報告したら、義母に『でもまだそうと決まってないしね!』と言われてモヤっとしました。 性別が分かる前から『女の子の気がする』とずっと言っていました。義母はすでに孫が男の子2人いて、女の子も見たいという気持ちがあったんだと思います」「うちは男の子が一人います。 最近、義理の妹に女の子が産まれました。義実家ラインがあり、私は参加していないのですが、『産まれた赤ちゃんの写真を送るから嫁ちゃんも見てね〜!』と言われていたので、時々チェックしていました。その場で、義母が『やっぱり、孫は女の子が一番かわいいー!』と書いていました。 その言葉が忘れられません!」自らが産んだ子どもの性別や、すでに産まれた孫の性別も影響してか、産まれてくる孫の性別にこだわりを持つ義父母も少なくないようです。しかし、生まれてくる子どもの性別は選べるものではありませんから、「女の子を産め」とか「男の子の方がかわいい」などと言われても、困ってしまいますよね。■孫差別の乗り越えかたそれでは、こんな困った孫差別を乗り越えるためには、どのようにすればいいのでしょうか。「強烈な個性の義母を変えるのは困難だし、関わりたくないので、できるだけ接触を避けました。『嫌な相手には何も期待しない』と割り切りました。悪口を言えば、自分の品位が下がるので、子どもたちにも悪口は言わないように伝えました」「幸い夫の実家は遠いので、徐々に会わなくなっていきました。息子をかわいがってくれない義母なんかに、なにも期待する必要はない。『息子のおばあちゃん』とは思わず、『他人』と思うことで、何も寂しさは感じなくなりました」「親にしてみれば娘の産んだ子どもは、嫁が産んだ子よりかわいいらしいです。 幸いなことに、私は一人娘で近くに住むうちの両親は、それは大切に孫たちに接してくれたので、娘たちも愛情を感じて感謝しており、たまにしか会わない義両親からの言動も、大きな心の傷にはならずに済みました「ちょうどコロナで1年間会わなくてすんだので、ほっとしています。コロナが落ち着いたらまた帰省しなきゃいけないんだろうけど」「いい嫁キャンペーンをやめて、しばらく音信不通にした。 今は孫も部活で、ばあばどころじゃない」「実家の母は、どちらの肩を持つ事もなく、『嫌な思いをしたね』と話を聞いてくれました。『お義母さんは思ったことをすぐに口に出してしまうところがあるのね。でも、大変な時にはいつも助けてくれて助かるでしょ。波風立てない方が楽だから、何かあったら、お母さんに話してね』と。その言葉で、怒りに震えていた私は冷静さを取り戻しました。義母さんには確かに子どもたちを見てもらっていて、助けてもらってます。そのありがたさを考えたら、ぐっと我慢できました」コメントのひとつひとつを読んでみると、孫差別の乗り越え方は人それぞれなのだと考えさせられます。孫差別は、確かにとてもつらいことで、理不尽な行為に対して、落ち込んでしまったり、怒りを抱えたりと、ママやパパたちも悩むことと思います。特に、義父母との関係がそもそもうまくいっていない場合も多く、解決の糸口が見つけられず、そのまま疎遠になったという声も、コメントでは多く見られました。ただ、一番注意する必要があるのは、差別された孫、つまり子どもたちのメンタルケアです。正当な理由もなく、本来無条件で愛情をかけてくれるはずの祖父母から差別されたと感じたら、きっと深く傷ついてしまうことでしょう。子どもの様子を注意深くみてあげて、もし傷ついた様子が見られたら、親からはたっぷりと愛情をかけてあげたいところです。また、本当に子どもがつらい思いをするのであれば、義父母と距離をとった方がいいかもしれません。
2021年07月29日“ひろゆき”こと西村博之氏(2011年)、フローラン・ダバディ氏(2003年)「醜いツラだ」「この醜いツラは、ゲームをプレーするためにいる。恥ずかしくないのだろうか」「お前らは(技術が)進んでいるんじゃないのか?」「ひでえ言葉だ」嘲笑されながらこのような言葉を投げかけられたら、人はどう思うか……。世界的にも有名なサッカー選手2人による“人種差別”的行動が波紋を呼んでいる。■滞在ホテルの日本人スタッフを揶揄「今回、問題となっているのはウスマン・デンベレ選手とアントワーヌ・グリーズマン選手の2人。ともにフランス代表で、現在開催されているヨーロッパナンバーワンを決める大会『EURO』(ユーロ)にも出場しています。また2人の所属クラブは、メッシも所属するスペインのFCバルセロナです」(サッカーライター)“事件”は、バルセロナでの活動中に起こった。「バルセロナは’19年7月にチームで日本ツアーを行いました。日本で2試合戦ったのですが、その宿泊先のホテルで過ごしているところを撮影した動画が今回、流出したのです。デンベレ選手は日本のサッカーゲーム『ウイニングイレブン』が好きすぎて、チームの練習に遅刻するほど。来日時もホテルのスタッフに頼んで部屋でプレイできるように設定してもらっていたそうで、今回流出したのもその場面の動画でした」(同・サッカーライター)動画の中に収められていたのが、デンベレによる冒頭のセリフだ。部屋でゲームの設定を試みているホテルの日本人スタッフに対し、わざわざ顔をズームにするなどしながら「醜い」と言い放ち、設定に時間がかかっていることを揶揄。さらに、顔だけでなく日本語についても笑いながら悪態をついた。フランス代表の“先輩とも言えるグリーズマンも、この若者の差別発言を諌めることはなく、笑いながらそれを眺めていた。「動画が流出して以降、日本だけでなく、母国であるフランスメディアや所属クラブのあるスペインメディアもこの件を批判的に報じました。サッカーの国際連盟であるFIFAやバルセロナが処分を検討していると報じられています」(同・サッカーライター)この差別的発言に異を唱える者もいる。フランス人やスペイン人……かと思いきや、日本人だ。「作家の辻仁成さんと、『2ちゃんねる』創設者であり実業家の“ひろゆき”こと西村博之さんは、彼らを“擁護”しています。2人に共通するのは、共にフランス在住であること。辻さんは動画を検証し、“醜い(顔)”という表現はいわゆるスラングで、醜いやひどいという意味ではあるが、フランス人はよく使うものと説明しました。 “擁護は出来ないけど”としながらも実質的に擁護しています。ひろゆきさんの論調も、基本的に辻さんと同様のものですね」(ウェブライター)■ダバディ氏は「恥ずかしい」と憤り…このような“日本人”によるフォローもあったが、日本人としてフランス語を学んだ辻やひろゆきより、はるかにフランス語そしてフランス文化に詳しい“ネイティブ”からの意見もあった。’02年の日韓ワールドカップでトルシエ監督の通訳を務め、その後も日本での活動が目立つフランス人ジャーナリストのフローラン・ダバディ氏だ。彼はツイッターにて次のように答えている。《私も子供の時にずっとデンベレ選手出身のパリ郊外でサッカーをしてきた。貧しい階級の子供たち(フランス系であろうが、アフリカ系であろうが)はありえない用語でお互いを差別し、それが面白いと信じています。情けないのは親の教育です》(原文ママ、以下同)《多民族国家の問題でもありますが、同じ町、同じマンションで共存生活を送っているだけに、もう人種差別はないと暗黙に彼らが考えます。とはいえ、彼らのスラング用語の中で人種に言及した言葉が多いのです。いずれも、恥ずかしいです》フランス人が「親の教育が情けない」「恥ずかしい」と憤り、日本人が「普通に使われる言葉」「そこまでひどい意味じゃない」と肩を持つ……。当の2選手は共にSNSで、謝罪(?)を行っている。《最近、インターネットで2019年のプライベートな映像が出回っている。このシーンはたまたま日本での出来事だった。地球上のどこで行なわれていてもおかしくないし、僕は同じ表現を使っただろう。これはどこかのコミュニティをターゲットにしたわけではなく、このような表現は、プライベートでも友人の間では、その出身地にかかわらず使うことがある。ただ、このビデオは公開されており、この映像に映っている人々を不快にさせる可能性がある。だから、彼らに心からの謝罪を捧げる》(デンベレのインスラグラムのストーリーズより)《僕はあらゆる形の差別に反対する立場を約束してきた。ここ数日間で、その意思を無視し、僕をそうではない男としようとする人たちがいる。僕に対する非難に対しては断固として反論するとともに、日本人の友人たちを傷つけてしまったのなら謝罪したい》(グリーズマンのツイッターより)2人の謝罪についても、ダバディ氏はツイッターでこのようにコメント。《お二人は「人種差別じゃない、私たちは普段から使ってるスラングだよ。どの人種に対してもさ」と言い訳をするのですが、アメリカだったらこれは全く通じないのです。彼らは間違っている。しっかりと謝って欲しかったです》■スポンサー『楽天』は「許されるものではない」’19年にバルセロナが日本ツアーを開催したのは、日本企業である『楽天』がバルセロナのスポンサーになったためだ。現在、楽天は、バルセロナのユニフォームの胸スポンサーを務めている。’17-’18年シーズンからの4年間の契約で、総額にして約284億円の大型契約と報じられている。それほどの大金を払いながら、所属選手が差別発言などたまったものではない。楽天グループ代表の三木谷浩史氏はツイッターでコメントを発表した。《FCBの選手が差別的発言をした事について、クラブのスポンサーまたツアーの主催者としてとても残念に思います。楽天はバルサの哲学に賛同し当クラブのスポンサーをしてきただけにこのような発言は、どのような環境下でも許されるものではなく、クラブに対して正式に抗議すると共に見解を求めていきます》デンベレとグリーズマンの2人を含め、バルセロナが来日時に宿泊したのは都内のヒルトンホテルだという。ヒルトンに今回の差別的発言について見解を求めると、以下の回答があった。「私どもではお客様のいかなる情報も公開はいたしておりませんため、コメントが出来かねます。ご理解のほどお願い申し上げます」(ヒルトン東京担当者)デンベレはブラック・ライブズ・マター(アフリカ系アメリカ人に対する警察の残虐行為をきっかけに、アメリカで始まった人種差別抗議運動)に賛同している。しかし、今回の件により、彼のインスタグラムには《差別主義者の定義を知っているか?》などと批判が集まっている。グリーズマンも6月に就任した『遊☆戯☆王トレーディングカードゲーム』のアンバサダー契約が解除されることが、販売元の株式会社コナミデジタルエンタテインメントより発表された。世界中で行われているサッカーは、さまざまな人種の人たちがプレーする。国際大会などでは、試合開始前に両チームのキャプテンによる人種差別撤廃を目指す宣誓が行われることも少なくない。けっして差別があってはならないのだ。
2021年07月09日誇り高く、差別にけっして屈しないオモニ(朝鮮語で母の意)。でも、差別の矛先が僕に向いたとき、オモニは初めて弱気を見せた。そんなオモニを守るため、僕は立ち上がったーー。「今日の判決で正しく差別が罰せられたことは、差別をなくし社会をよくする希望になると僕は思っています。僕自身も、この判決で家族と一緒に回復していきたい」5月12日、東京・霞が関の司法記者クラブで行われた記者会見で、そう力強く語ったのは、在日コリアンを母に持つ中根寧生さん(18)だ。そんな息子の姿を誇らしく見守るのは、母の崔江以子さん(47)。長く苦しい母子の二人三脚の闘いに一区切りがついた瞬間だった。■新聞報道で始まったネット上でのヘイト《悪性外来寄生生物種》《人もどき》《見た目も中身ももろ醜いチョーセン人》……。寧生さんに向けられたあまりにも差別的な言葉の刃たち。きっかけは2018年、寧生さんが参加した、地元・神奈川県川崎市の平和イベントの様子が地元の新聞で紹介されたことだった。当時・中学校3年生の寧生さんは、共生の思いを披露。この模様が報道された直後から、ネット上の掲示板、ツイッターなどに大量の差別的な書き込みがなされた。そのうち最もひどい前出の投稿が「写楽」と名乗る匿名ブログによるものだった。「新聞に載ったのをうれしいなと思ったら、突然、差別的な書き込みが……。ショックもありましたが、怒りがこみ上げてきました」■生活圏に突如やってきたヘイトデモもともと差別とは無縁に生きてきたという寧生さん。「小さいころからオモニや家族に“2つのルーツがあるというのはとても素晴らしいことだよ”と教えられて育ってきました。友達や周囲の人から差別されたこともなかったんです」江以子さんはこう教えてくれた。「私たちが住む川崎市の桜本地域は、昔から地域の人たちと多文化共生の街づくりをしてきたという歴史があります。私も、差別をなくしともに生きる社会づくりを目指す『ふれあい館』の職員として、そうした環境づくりのために努力してきました」自分の育った素晴らしい環境が、母を含む周囲の人たちの力によって維持されてきたものだったことに寧生さんが気づいたのは2015年。桜本にヘイトスピーチデモがやってきたときだった。寧生さんは自ら希望して、江以子さんとともに抗議のために街頭に立った。「ずっと桜本に住んでいたので、世の中の人はみんな桜本にいる人たちみたいだと思っていたんです。『僕たちはともに暮らしている仲間です』と、話せばわかってくれると……」だが、まだ中学生に上がったばかりの寧生さんに浴びせられたのは衝撃的な言葉だった。〈朝鮮人を殺せ〉〈朝鮮人は死ね、国に帰れ〉「今まで言われたことがないような罵声を浴びて、『え!』と思った。今まで生きてきた中でいちばん嫌な時間でした」(寧生さん)■「お前を見ているぞ」ネット上での脅迫が始まった一方的に“自分たちを殺す”と言ってくる者に話は通じなかった。桜本のヘイトデモをきっかけに、江以子さんはヘイトスピーチを止めるための法律や条例の制定に向けて動き出す。「ふれあい館では『ちがいは豊かさだ』と子どもたちに伝えてきました。在日コリアンの子には、自分の名前、本名で生きること、ちがいを隠さないで生きることを、後押ししてきたのです。でも、あんなヘイトスピーチや差別があったら、そんなふうに生きられないですよね。だから、自分がしてきたことの延長として、子どもたちのためにヘイトと闘うしかなかった」江以子さんはメディアで訴え、参考人として国会にも立った。すると、誹謗中傷や脅迫が始まった。「毎週末、『おまえを見ているぞ』と、監視しているかのようなことをツイッターに書き込む人物も。警察に相談したら、家の表札を外す、電話の電源を抜く、インターフォンが鳴っても出ない、子どもと一緒に外を歩くことも控えるようにとアドバイスを受けました」寧生さんも振り返る。「弟はまだ幼かったので、なんとか守らないとって。お祭りのときもオモニと離れて歩いたり、映画は父と一緒でオモニだけは留守番だったり。ヘイトは、家族の大切な時間まで奪ってしまうんです」それでも江以子さんは弱音を吐かず、差別解消のために矢面に立ち続けた。■最後まで法廷から逃げた68歳の差別ブログの主しかし、息子がヘイトスピーチの対象になったとき、初めて母は弱気を見せた。「写楽」の書き込みを侮辱罪で告訴するため、警察で調書を作成した。投稿によってもたらされた不安や絶望を、肩をふるわせて泣きながら話した寧生さん。その様子を見た江以子さんは、帰り道、思わずこう漏らした。「私が朝鮮人だからこんな思いをさせてしまってごめんね」寧生さんはこう振り返る。「すごくショックで何もいえませんでした。今まで『異なるルーツを持つことは豊かなことだ』と教えてくれていましたから……」“オモニにもうこんな言葉を言わせたくない”。寧生さんは、改めて裁判の場で訴える覚悟を決めた。ブログの主は大分市の68歳男性だった。男性は一度も裁判に出席せず、横浜地方裁判所川崎支部は男性に91万円の支払いを命じる判決を下した。だが、あえて寧生さんは控訴した。「すべて弁護士に任せて、裁判に出てこないのは、まったく反省がないのだと思ったからです」今年2月、裁判の場に立った寧生さんは、涙ながらにこう訴えた。「僕は悪性外来寄生生物種ではなく、人もどきではなく、中身ももろ醜いチョーセン人ではなく、家族に愛されて、家族を大切に思い生きる人間です」結局、ブログの主は裁判に現れることはなかったが、5月12日に東京高裁が下した判決で賠償金は130万円に増額された。この種の裁判では異例の賠償額だ。人種差別は人格権侵害で、それ自体が独立して違法なものと判断できる画期的な判決だった。判決が下ったとき、寧生さんは大学1年生になっていた。
2021年06月04日ファミリーマート「お母さん食堂」のキャラクター・慎吾ママ、妻で小雪のことを「嫁」と表現した松山ケンイチ、「はだいろ」はベージュやペールオレンジに変更大手コンビニチェーンの「ファミリーマート」から「はだいろ」の下着が回収され、大手化粧品メーカーの花王からは「美白」表現が禁止。東京ディズニーのアナウンスは男女関係なく「ハローエブリワン」に変更。反応が過敏すぎる気がするけれど──。そこで週刊女性は最近問題視された表現規制について男女1000人に意見を聞きました!■「言葉狩り」とは?「お母さん食堂に文句をつけている人はどうしたいんでしょうか。性別をなくすのが目的ですか?」(20代・会社員・女性)昨今の表現規制についてのアンケートで「問題なし」と答えた女性の回答だ。表現の過剰規制が浮き彫りになっている。約70年の歴史があるおもちゃ「ミスター・ポテトヘッド」から「ミスター」をはずすと発売元が発表。ファミリーマートは女性用下着から「はだいろ」表記を排除。俳優の松山ケンイチは妻で女優の小雪のことを「嫁」と呼び炎上。これらはすべて今年の3月に起きた出来事である。そこで週刊女性は16歳から80歳までの男女1000人を対象に、表現規制についてアンケートを行い、実際に問題になった表現について話を聞いた。■Q1.配偶者の呼び方、理想は?→→→「夫・妻」が圧倒的1位俳優の松山ケンイチが『火曜サプライズ』(日本テレビ系)に出演した際に「髪が伸びたときには自分で切ったり、嫁に切ってもらっている」と発言したところ、批判の声が寄せられたことがニュースになった。では一体どう呼ぶのが理想なの?1位だったのは、「夫」、「妻」呼び。「普通に夫、妻でよくないですか?奥さんっていうのは引っ込んでいる感じがするし、旦那っていうのも下品な感じで」(50代・主婦)、「自分は妻と呼びます。嫁というのは関西芸人のイメージが強いので使いたくない」(30代・会社員男性)「嫁」呼びは関西芸人の文化という意見が多く、嫌悪の声が寄せられた。一方で松山ケンイチに関しては擁護の声が多く、「自分は嫁呼びしませんけど、よその家庭に口を出す気はない。松山さんの嫁呼びを非難できるのは小雪さんだけ。お2人が幸せならいいじゃないですか」(30代・男性会社員)、「松ケンに嫁呼びされても何も思わない。松山さんの嫁呼びからは小雪さんを下に見ている感じもしないし」(30代・主婦)どう呼ぼうが、発言者と呼ばれた本人が差別と思わなければ他人がどうこう言うことではない、との意見が圧倒的だった。とりあえず夫、妻と呼ぶのが無難かも。1000人に聞きました配偶者の呼び方、理想は?〜男性への呼び方〜1位 夫 479人2位 旦那 211人3位 主人 184人4位 その他 126人〜女性への呼び方〜1位 妻 384人2位 奥さん 292人3位 その他 182人4位 嫁 142人■Q2.「はだいろ」は差別?→→→「差別」回答が多数!大手コンビニチェーンの『ファミリーマート』が3月から全国で販売を始めたプライベートブランドの女性用下着で、色の表記に不適切な表現があったとして、自主回収した。不適切な表現とは「はだいろ」のこと。人種や個人などで肌の色が異なるのに、特定の色を「はだいろ」とすることは不適切という声が寄せられたことからだった。結局「ベージュ」に変更したという。このニュースを1000人はどう見た? 差別だと思うと答えた人は548人。「10年以上前からクレヨンなどのはだいろは《ペールオレンジ》に変わっています。なんで今更ぶり返すのか。私は純日本人ですが褐色肌で小さいころにからかわれていたので」(50代・主婦)、「今の子どもたちにはだいろが浸透していないのに、なぜまたはだいろを復活させるんですか?」(30代・主婦)と、「子どもに多角的な目線でものを見てほしい」との理由からはだいろ排除の声が多かった。一方で差別ではないという人たちの意見は、「はだいろの何が悪いんですか?日本人の黄色人種という肌の色を誇りに思ってほしい」(50代・会社員男性)、「はだいろで覚えているし、普通に言ってしまう。ペールオレンジなんて面倒な言い方を定着させるのはエゴ」(60代・無職男性)肌の色は十人十色。それによって差別が起きることは言語道断。■Q3.「美白」はダメ?→→→「ダメじゃない」が過半数大手化粧品メーカーの花王は、米国で起こった黒人差別への抗議運動を受け、外資メーカーが肌の色による優劣を連想させる「ホワイトニング」などの表記を取りやめた。これに対して美白は差別じゃないと考える人が多く、「美白目指して頑張っているのに今更取り上げる?」(20代・会社員女性)、「さんざん美白をあおっておいて今更。そもそも中間色の日本人だからこそできる表現では?」(40代・主婦)一方で差別を感じる人の意見は、「美の基準は自分で決めたい。美白といわれても」(30代・主婦)、「自分は茶色っぽい肌の女性が好みなので美白推しは嫌でした」(40代・会社員男性)みなそれぞれの好みがあるから一方的な押しつけはNGということ?■Q4.「お母さん食堂」問題アリ?→→→圧倒的に「問題なし!」兵庫、京都、岡山の女子高校生が、ファミリーマートの『お母さん食堂』というブランド名に疑問を抱き、オンライン署名を呼びかけた。「お母さん食堂という名前は、誰もが料理をするのはお母さんという印象を与え、女性=家事・育児という固定観念を払拭する妨げになる。男女双方にとって生きやすい社会にならない」と主張。お母さん食堂のイメージキャラクターは男性の香取慎吾さん。大人気キャラクターだった慎吾ママも批判の対象なのだろうか。「あのー、これ香取慎吾さんがお母さんやっているんですけど。男性芸能人がお母さんの役割を演じている、十分すぎる配慮がされています」(40代・会社員女性)「これを批判する人は慎吾ママも批判したんですか?慎吾ちゃんが演じているんだから男でも女でもお母さん、ってことをファミマさんは言ってることがわからないのですか?」(30代・主婦)「このCMで不快になる人が信じられません。慎吾ママが年月を経てお母さんになって、って歴史を感じる素晴らしい演出でした。抗議をした女子高生たちはお父さん食堂なら満足したんですか?差別を訴える人が差別をしている構図に気づいていない」(50代・主婦)お母さん食堂は香取慎吾さんのキャラクターもあって、ジェンダーを超えた評価を得ていた。少数派の問題ありと答えた人の意見を聞くと、「お母さんがいない人だっているのに、お母さんを温かい象徴としてあがめるのはどうかと思います」(20代・パート男性)「慎吾ママとは違って、お母さんにプラスされて食堂がついているのがいかがなものかと」(10代・女子学生)過剰な気がするけれど──。ほかにもあった! 行きすぎ? 表現規制CASE(1)「レディース エンド ジェントルメン」排除(東京ディズニーランド・シー)オリエンタルランドは3月、園内アナウンスを改めた。それまでの「レディース・エンド・ジェントルメン、ボーイズ・エンド・ガールズ」から「ハロー・エブリワン」と性別を特定しないようにした(日本航空は’20年10月から機内や空港で同様に呼びかけている)。CASE(2)「主人」、「旦那」排除(育児雑誌『たまごクラブ』『ひよこクラブ』(ベネッセコーポレーション)(育児雑誌『たまごクラブ』『ひよこクラブ』(ベネッセコーポレーション)’16年ごろから「主人」「旦那」は親の上下関係を想起させるため、原則として使わないという方針を定めた。また、子連れの再婚家族や同性カップルなど、家族の多様性を反映し、「配偶者」や「パートナー」と表記しているという。■「表現規制」の背景性差別の問題に詳しい作家の伏見憲明さんは、過剰な表現規制の背景を解説する。「フェミニストやポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)の声が大きくなった背景には、日本が経済的な繁栄を失いつつある状況が影響していると思います。パイの実が小さくなれば、平等な分け前を求める政治が前景化してきます。ジェンダーギャップ指数(世界男女格差指数)において日本は120位と低い位置にあって、当然、改善すべき点は多いわけです。ただ、これまで女性の社会進出が進まなかった理由は、因循な男社会の問題だけでなく、女性たちも必ずしもそれを望まなかったことにもあると思う。つまり女性たちの選択もそこに反映しているといえなくもない」行きすぎた言葉狩りについて伏見さんは「お母さん食堂」の例を挙げる。「女性に母親の役割だけを求めるのは問題かもしれませんが、別に家事労働や育児が劣った役割だということはありません。本当に差別のない社会を実現するには、女性がお母さんの役割を担うこと自体を否定するのではなく、それ以外のありようを応援し、多様な生き方を肯定的に表現していくことしかありません。じゃないと、例えば、映画で専業主婦を描くことも、母として一生をまっとうした女性を小説の主人公にすることも、差別だー! と禁じなければならなくなってしまう。それに『お母さん食堂』は男性の香取慎吾さんをお母さん役にして、母親っていうのは男が担ってもいい『役割』なんだ、というメッセージまで込めているんだから、まったくもって素晴らしいじゃないですか」と、伏見さんは「お母さん食堂」を擁護する。「男女差別がなくなったら女性は社会進出するはずだ、というのも疑わしいところがあってね、企業で活躍したり、政治の世界で力をもったりすることを好まない人だって少なくないんじゃないですか。女性だけでなく、男性だって。ぼくなんてね、お金があったら、そもそも働きたくないし、家事とかはお手伝いさんを雇ってお願いしたいもの。もし金持ちの家のお嬢様に生まれていれば、子育てだって、昔みたいに乳母にお願いしてしまうかもしれない(笑)。みんなが社会で働きたいはずだという考えは、エリート男性や勉強が得意な女性たちの感受性が反映された『思想』かもしれないよね」差別をなくすために差別が生まれることがあってはならない。
2021年04月25日東京・六本木にあるテレビ朝日社屋テレビ局のプロデューサーは、どうしてこうも劣化してしまっているのか。日本テレビ系情報番組『スッキリ!』のアイヌ民族侮辱のケース、テレビ朝日系『報道ステーション』ウェブCMの女性蔑視ケースが相次いだ。両方とも防げる案件だった。そう指摘するのは、スポーツ紙放送担当記者だ。「日テレは、プロデューサーがネタを見て、これは考査に確認しようと周囲に漏らしていたそうです。考査というのは、放送に適しているかどうか、放送前・放送後に判断する部署です。確認の必要性を感じていながら、それをしなかった。プロデューサーの失態は大きいですよ。すでにもう、番組から外されていますけどね」あまりにもお粗末なプロデューサー……。一方、テレビ朝日ケースについても、こう伝える。「CMですから、絵コンテのコピーチェックは、幾重にも確認できる機会はあり、それらをすべてプロデューサーは目を通していたそうです。もちろん完成品も。にもかかわらず流れたということは、表現の中に潜んでいた女性蔑視の視点、ジェンダー問題への観点がまったくなかったということです」■局員>系列制作会社>非系列制作会社テレビ番組のプロデューサーという存在について、「番組によっては100人単位のスタッフを動かし、1日に数千万円単位の予算を使う権限があるため、中小企業の社長ぐらいえらいと思い込んでいる人が大勢いますよ」そう指摘するのは民放報道局の常駐スタッフだ。「番組の全体反省会には局員も制作会社の派遣スタッフもみんな出ているのに、平気で『幹部のみなさんはよろしくお願いします』と言って、局員を幹部扱いします。制作会社の人間はみんな嫌そうな顔をしていますけどね。世間ではコロナ禍の失業者問題が騒がれていますが、テレビ局内では、改変期になると多くのスタッフがクビになっているんです。いわゆる“解雇”ですよ。人の生活を簡単に奪うことも、プロデューサーは平気でする。自分には権限があると思い込んでいる。現場スタッフがいないと成り立たない、と口では言っていながら、現場スタッフに対するリスペクトを感じたことはありませんね。そんな感覚のプロデューサーが、世間の空気を理解したり寄り添うことができると思いますか?」もちろん優秀なプロデューサーもいて、スタッフや番組のことを第一に考え仕事に励んでいる人もいる。しかし、今回の問題に関しては「日テレに関してもテレビ朝日に関しても起こるべくして起きたことだと思いますよ」と、前出の民放報道局の常駐スタッフは鼻息を荒げる。テレビ番組の制作には、局員、系列制作会社、非系列制作会社のスタッフなどが複雑に関わり、同一労働でありながらギャラはまるで違うという大きな格差を作り出している。「えらそうなことを報道しているテレビ局が内部に作り出しているのが、格差構造なのです。そのことに疑問を持つことがない局員プロデューサーはますます図に乗り、立場の弱いスタッフたちが取り囲む。物申してクビになるかもしれないと考えれば、意見するより沈黙を選びますよ」(前出・民放報道局常駐スタッフ)高学歴で高年収で社会的地位も高いという高スペックの局員プロデューサーは、自分はできる、自分はエリートだと考える。自分の能力を疑わず、ほかの人の視点を持たない番組幹部が作るテレビ番組や自社CMは、社会通念とズレたテレビ局の体質を映し続ける。〈取材・文/薮入うらら〉
2021年03月26日差別発言を謝罪した日本テレビ日本テレビの情報番組『スッキリ!』が無知をさらけ出した、アイヌ民族を侮辱したなぞかけ問題。「政府から正式に局に抗議が入ったことで、問題のフェーズが変わったという感じです」と日本テレビ関係者が耳打ちしてくる。「実は、担当プロデューサーのO氏が飛ばされましたよ。事実上の“更迭”です」■“忘れていた”Oプロデューサーアイヌ民族を侮辱する発言がオンエアされたのが今月12日。週明け15日の放送で、自身の吉本興業とのエージェント契約解除問題の火消しに追われていた、司会の『極楽とんぼ』加藤浩次(51)も謝罪することになった。「僕自身もですね、北海道出身という立場にありながら、オンエアがあったときに即座に対応できなかったことをお詫びしたいと思います」放送されたコーナーは、事前収録されたもので、生放送の失態ではない。番組の責任者が目を通す時間は十分にあった。ところが目を通していなかったことは、“更迭”された担当プロデューサーが、社内調査に打ち明けているという。前出・関係者の話。「実はそのプロデューサーは、当然ですがオンエアに立ち会っていたのです。その際、これは問題になるかもしれない、と考えたそうです。ということは、事前に見ていなかったということです」さらに担当プロデューサーは、最悪の一手を打ってしまったという。関係者が続ける。「テレビ局には、オンエア前にオンエアをしていいかどうか、オンエア後に問題があるかどうか判断するチェック機能として考査部があります。そのプロデューサーも、オンエア後に『これは考査に確認してみよう』と周囲に漏らしていたのです。放送直後にそれをしていたら、日テレも対策が取れた。ところが局側が問題を把握したのは、SNSなどで問題視されてから。一般人と同じ時間帯で知ったのです。なぜならそのプロデューサーが、考査に確認することを忘れていたからなんです」普段から現場のスタッフに報告を口うるさく指示しているプロデューサーが、なんともお粗末すぎる失態……。局としてもこれでふたをしたことにはならない。さらなる検証が求められる。〈取材・文/薮入うらら〉
2021年03月18日東京五輪・パラリンピックの開閉会式でクリエイティブディレクターを務める佐々木宏氏が、式典に出演予定だった、お笑いタレントの渡辺直美さんを「ブタに例える演出を関係者に提案した」とニュースサイト『文春オンライン』が報じ、大きな問題になっています。サンケイスポーツによると、佐々木氏は2020年3月、五輪開閉会式の演出メンバーにLINEで、渡辺さんにブタの仮装をさせ『オリンピッグ』として出演させるアイデアを送信。これに対しメンバーの女性が「容姿のことを例えるのは気分がよくない」などと返信し、批判が相次いだため、撤回をしたといいます。この問題で、大会組織委員会の橋本聖子会長は国際オリンピック委員会(IOC)の幹部と対応を協議。佐々木氏は辞任の意向を示しています。田村淳「第三者目線で見て、嫌」2021年3月18日に放送の情報番組『グッとラック!』(TBS系)では、騒動について取り上げ、コメンテーターの意見に反響が寄せられました。渡辺さんと同じ事務所に所属するお笑いコンビ『ロンドンブーツ1号2号』の田村淳さんは、「内部のLINEが流出してしまうところにも、運営側がひとつになっていない感じがある」と発言。また、渡辺さんが事態をどのように受け取とめているのかは「本人に直接聞いていないので気持ちは分からない」としつつも、次のように語りました。第三者目線で見て、「そんなことをいわれたら嫌だろうな」と思いますよ。直美の明るい性格だと、インタビューとかで笑って答えてくれるかもしれないけど、それは本当に彼女の中の気持ちではないと思うから。グッとラック!ーより引用ヴァイオリニストの木嶋真優さんは、報道について「女性蔑視といわれているけれど、これは容姿に対しての蔑視で性別は関係ない」と指摘。さらに起業家でタレントの伊沢拓司さんは、オリンピックという国際的なイベントの演出に、差別表現があったことに対し、苦言を呈していました。人をブタ扱いするというのは、人間の差別の歴史の中で非常によく行われていて、世界的に侮蔑の象徴にあったような表現になりますから、そのあたりの文化的な背景ですら把握できていないというのは悲しいかなというところはありますけどね。受け手のことを考えられていないエンターテイメントになっているのが問題です。グッとラック!ーより引用ネット上では、視聴者からさまざまな声が寄せられています。・「女性蔑視でなく容姿蔑視」って意見に賛成。どちらも最悪だけど。・冗談だから、渡辺さんが芸人だからOKとか、そんな話ではないと思います。国際的なイベントなので。・体型を気にする人たちを励ましてきた渡辺さんは、こんな形で話題になるのは嫌だと思います。容姿をいじることをユーモアとする風潮は、本来許されるものではなく、時代遅れとなりつつあるのかもしれません。世界中の人が集まり、人々の多様性と調和の重要性を呼びかける、オリンピックという場。「誰かが傷付くような演出はしてほしくない」と多くの人が願っていることでしょう。[文・構成/grape編集部]
2021年03月18日大失態を起こした日本テレビ日本テレビの情報番組『スッキリ!』が、まったく言い訳のできない、言い逃れのできない差別発言を放送した。「放送直後の局への抗議の声は少しずつでしたが、“差別発言ではないか”という指摘がネットで広まるにつれ、抗議電話、抗議メールが増えました。何か問題があると1日当たり数百件単位にはなるのですが、12日は1日で1000件を超え、局内も慌てふためき、夕方のニュースで謝罪し火消しに走ったというわけです」と、青ざめた表情で明かすのは同局番組スタッフだ。差別発言が飛び出したのは、動画配信サービス「Hulu」で配信されるアイヌ女性のドキュメンタリー『Future is MINE - アイヌ、私の声 -』をVTRで紹介する際のことだった。お笑い芸人の脳みそ夫(41)が、なぞかけで「この作品とかけまして動物を見つけたときと解く。その心は「あ、犬」と、そう言い放ったのだ。■虚偽報道事件で社長が引責辞任問題をいくつかに分けて考えてみる。発言者の芸人のなぞかけは、日本の歴史、アイヌの歴史をまったく知らないばかげたもので、無知をさらけ出したものである。日テレがメディアに回答した答えにも問題が横たわり、「あれは逃げ口上です」と、全国紙放送担当記者が指摘する。日テレは各メディアに対するコメントとして「当該コーナーの担当者」という表現を使い、差別認識がなかったと言い訳をした。さらに放送前の確認も不十分でした、と問題の矮小化を図っている。前出・全国紙放送担当記者が解説を加える。「日テレが言うところの『担当者』が、一体どのレベルか分からない。チーフディレクターなのか、デスクなのか、プロデューサーなのか。さらにひどいことは、放送前に確認していなかったことを明かしたことです。日テレは約10年前に、報道番組の『真相報道バンキシャ』で“裏金虚偽証言”報道事件があり、社長が引責辞任をしました。その際、現場に厳命されたのは、事前チェックを必ず徹底すること、でした。『バンキシャ』のスタッフルームには新たなブースを設け、プロデューサーら数人で必ずオンエア前のチェックをしています。それを『スッキリ!』はしていなかったことを明かしてしまった。これは大問題ですよ。プロデューサーの責任はもちろんですが、経営陣の引責も考えなければならない。避けられないでしょうね」■岸部シローさんを知らなかったしばらく前まで日本テレビの番組スタッフだったという男性は、「番組作りの体制を見ると、こういうことが起こりうる事態だと思いますよ」とあきれつつ、こう続ける。「『スッキリ!』の制作ルームは日テレの6階にありますが、そこに入ると一目瞭然で、スタッフは20代、30代がほとんどです。彼らを統括するプロデューサー、部長が40代。昨年の夏、タレントの岸部シローさんが亡くなったときも、若い人は岸部さんのことを誰も知りませんでしたからね。その程度の知識のスタッフがV(動画)をつないで公共の電波にのせるわけですが、そりゃ怖いですよね」さらに声を強める。「若い人だけで番組は作れる、という驕りがテレビ局にはあるんです。新聞や雑誌などでは、ベテランの記者もいて、若手もいて、とバランスが保たれている。テレビ局は若い人を使ったほうが人件費が安く済むと考える。報道より先にそろばん勘定。要するに“コスパジャーナリズム”なんですよ。ベテランのスタッフがいて、事前にチェックできれば、今回のアイヌの人に関する差別発言、差別ネタは防げたと思いますよ」お笑い芸人の発言に端を発したとはいえ、日テレは「担当者の無知」「事前チェックの手落ち」を言い訳にした。制作体制の構造的問題として今回の差別発言をとらえ、老若男女のスタッフによる取材体制&チェック体制を取らない限り、いつまた、同じ差別発言をしてしまっても不思議ではない。〈取材・文/薮入うらら〉
2021年03月13日僧侶の近藤丸(@rinri_y)さんは『同調圧力』をテーマに漫画を描き、Twitterに投稿しました。職場や学校などの集団内で、少数意見を持つ人に対し、多数意見に合わせるよう暗黙のうちにプレッシャーをかけ、強制することを『同調圧力』といいます。アメリカで行われたという心理学の実験の話を聞いた近藤さん。その内容を聞き、学生時代の自分の失敗を思い出したといいます。『同調圧力』つづき(3/3) pic.twitter.com/Kn2ZVZcLDE — 近藤丸 / Yoshiyuki Kondo (@rinri_y) February 10, 2021 「錯視の実験をする」といわれて集められた10人の学生が、長さの違う2本の鉛筆のどちらが長いと思うかを答える心理実験。長いのは明らかにAであるのに、9人の学生がBと答えると、最後の1人もBと答えてしまうという結果でした。近藤さんはこの話を聞いて、学生時代に起こった状況と同じだと感じたそうです。アルバイトをしていたバーで、外国人に対し、1人の客が明らかな差別発言をしましたが、近藤さんはその客を追い出すことができませんでした。その結果、外国人の客が店から出ていくしかない形になってしまったといいます。「僕がすべきだったのは、あの場でもっとも弱い立場に立たされた外国から来た人を守ることだった」と近藤さんは後悔の想いをつづっていました。作品を読んだ人たちからは、さまざまなコメントが寄せられています。・同調圧力があると、物事をよい方向に変えられない。心ある人が、安心して物をいえる環境は大事だと思います。・すごく考えさせられます。私たちに必要なのは主体性なのかも知れない。・同調圧力って怖い。逆のことをいうってすごく負荷がかかります。それでも声を上げられる人は英雄です。声が大きいほうの意見に押されて、自分の意見がいえなくなるというのは、日常のあらゆる場面で起こることかもしれません。しかし、差別行為や理不尽な状況に遭遇した時に黙ったままだと、こうした状況を許してしまっているのと同じになってしまいます。簡単ではないですが、声を上げられる勇気を持ちたいものですね。[文・構成/grape編集部]
2021年02月16日2021年2月7日現在、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長を務める森喜朗氏の発言に対し、批判の声が上がっています。森会長は同月3日に出席した、日本オリンピック委員会の臨時評議員会で「女性の多い会議は長引く」といった発言をしました。同月4日には発言内容を撤回する釈明会見を行いましたが、その後も批判の声はやんでいません。森喜朗氏の『差別発言』に各国大使館が…?「ありがとう!」「かっこよすぎる」鈴木紗理奈「森さんのような人はどこにでもいる」同月7日放送の、情報番組『サンデー・ジャポン』(TBS系)では、森会長の発言について特集。コメンテーターとして出演していたタレントの鈴木紗理奈さんは、「お世話になっているから指摘ができないという状況は誰にでもある」と語りました。私のいる世界(芸能界)にも、どの世界にも、森さんのような人がいらっしゃるんですよ。どこにもこういう価値観はあって。たぶん、女性だったらそれぞれが生きている世界でそれを感じているけど。実際にそういう方たちが力を持っていて、そういう方たちが積み上げてきたものの中で活躍させてもらっているからモノがいえない。サンデー・ジャポンーより引用鈴木さんは「多くの人が、差別を指摘できない立場にいる」と持論を展開。自身もそういった状況にあるものの、「勇気を持って声を上げたい」と主張しました。井上貴博アナの『疑問』に共感の声もコメンテーターとして出演していたモデルの長谷川ミラさんは、「差別的発言を受けた時には『今の発言、古いんじゃないですか?』『もう、今は令和ですよ!』みたいに、フランクに指摘したい」と意思を表示。長谷川さんのコメントを受け、MCとして出演していた井上貴博アナウンサーは、「失言をした人に対して、気を使わなければいけない状況がある」と、現状に疑問を呈しました。つまり、いわれたほうが気を使っているってことですよね。フランクに返さなきゃいけないような空気があるっていう。結局、女性側が気を使っているじゃないかと。サンデー・ジャポンーより引用その後も同番組ではさまざまな意見が交わされ、「差別をなくしていくためには、男女や立場などに関わらず、周囲が勇気を出して批判の声を上げていくことが大事」という結論に至っています。同番組内の一連の議論に対し、視聴者からはさまざまな意見が上がりました。・鈴木さんのいう通り、森会長のような発言をする人はどの業界にもいる!私の働く業界にも。そういう権力のある人に対して、間違いを指摘するのは難しいよね。・長谷川さんの意見、本当にそうだと思う。いいにくい相手だとしても容認していてはだめですね。フランクにでも、指摘していかなければいけないと思いました。・井上アナのひと言にハッとしました。なぜ、差別発言を受けた側が気を使わなければいけないのかと腹が立ちます。でも、結局は地道に指摘していくしかないんですよね。・僕も、自分の発言で周りに気を使わせているのではないかとドキッとしました。気を付けたいです。自身の中に根付いた価値観を変えることは、難しいこともあるでしょう。しかし、世間の価値観や常識は、時代とともに変わっていくものです。年齢を重ね、地位や権力を手にしたとしても、周囲の言葉に耳を傾け、注意や指摘を受けた時には、素直に考えを改められる人になりたいものですね。[文・構成/grape編集部]
2021年02月07日東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長を務める、森喜朗氏の発言が議論を呼んでいます。2021年2月3日に行われた日本オリンピック委員会の臨時評議員会に出席した際、女性理事を増やす方針について、森会長はこのように意見を述べました。「『女性理事を4割』と文科省はうるさくいうが、女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「女性は競争意識が強く、誰か1人が手を挙げると『自分もいわなきゃいけない』と思うんでしょうね」「この組織委員会にも女性は7人ほどおられますが、みんな、わきまえておられます」『女性』という性別でひと括りにし、「女性の多い会議は長引く」といった発言をした森会長。翌4日には世間の抗議を受け、釈明会見を行いました。森会長の発言に対し、同月6日現在も多くの人から「女性蔑視もはなはだしい」「時代錯誤である」といった批判の声が続出しています。森喜朗会長の『差別発言』に各国大使館が抗議の投稿世界規模の『スポーツの祭典』であるオリンピック。今回の件を問題視しているのは、日本国内だけではありません。海外でも森会長の発言はメディアで取り上げられ、差別発言として非難する声が上がっています。森会長が「話の長くない周囲の女性はわきまえている」といったことから、Twitterでは『#わきまえない女』や『#DontBeSilent(黙らないで)』というハッシュタグが話題に。5日には世界各国の大使館が『#DontBeSilent』『#男女平等』などのハッシュタグをつけ、差別に対抗する声を上げています。 #DontBeSilent #GenderEquality #男女平等 pic.twitter.com/wEvAW3DLTP — 駐日欧州連合代表部 (@EUinJapan) February 5, 2021 アイルランド大使館は、駐日欧州連合代表部およびEU加盟各国の駐日大使館とともに、 #DontBeSilent イニシアティブに賛同します #GenderEquality #男女平等 — アイルランド大使館 Ireland in Japan (@IrishEmbJapan) February 5, 2021 #dontbesilent #genderequality #男女平等 pic.twitter.com/S6jBtk4o8Z — スウェーデン大使館 (@EmbSweTokyo) February 5, 2021 #dontbesilent #genderequality #男女平等 pic.twitter.com/sVhC59XQAi — ドイツ大使館 (@GermanyinJapan) February 5, 2021 #dontbesilent #男女平等 #genderequality pic.twitter.com/Bc18RIhNzp — 駐日フィンランド大使館 (@FinEmbTokyo) February 5, 2021 ポルトガル大使館は、駐日欧州連合代表部およびEU加盟各国の駐日大使館とともに、 #DontBeSilent イニシアティブに賛同します。 #GenderEquality #男女平等 — ポルトガル大使館 (@PortugalinJapan) February 5, 2021 また、国際オリンピック委員会委員のヘイリー・ウィッケンハイザー氏は、森会長に対し「絶対に朝食のビュッフェで追及します。東京で会おう!」とコメントしています。Definitely going to corner this guy at the breakfast buffet ♀️. See ya in Tokyo!! #oldboysclub — Hayley Wickenheiser (@wick_22) February 4, 2021 海外からの抗議やエールに対し、ネットからは「声を上げてくれてありがとう!」「こんなことが話題になるなんて恥ずかしい」といった声が上がりました。一方で、「あなたの国はそんなことをいえる立場なのか」「ただのパフォーマンスにすぎない」など、批判する声も。釈明会見で森会長は「発言を撤回する」と述べましたが、その言葉を多くの人が知った以上、一度口にしてしまった発言を取り消すことはできないでしょう。『男性は仕事、女性は家庭』という風潮が変わり、女性の社会進出が求められるようになった現代社会。過渡期だからこそ、今回の発言が問題視されるようになったのではないでしょうか。また、性別は男性と女性の2つだけではなく、すべての人間を2つに分けられるわけでもありません。「男性はこういうもの」「女性はこういうもの」と雑に括ってしまうのも、おかしな話です。すべての人が1人の人間として尊重される社会に、少しずつ変化していくことを望みます。[文・構成/grape編集部]
2021年02月06日コンビニエンスストア『ファミリーマート』のオリジナルブランドである、『お母さん食堂』。和洋中の弁当や惣菜、食材がラインナップされており、手ごろな価格で食事を楽しむことができます。2020年12月、ネットで『お母さん食堂』という名称が議論を呼びました。ファミリーマート『お母さん食堂』の名称が議論に発端は、「『お母さん食堂』の名称を変えたい」というネットの署名活動。発案者の高校生らは、署名のウェブサイトで「『母親=料理をする人』という固定観念や偏見を増長させてしまう」と危険性を訴えました。確かにひと昔前までは「夫が仕事、妻は家庭」という風潮であり、共働き家庭が増えた2021年現在もそのイメージは残っています。そんな中、『お母さん食堂』という名称がさらに『母親=料理をする人』というイメージを定着させ、母親の負担が増えてしまわないように、発案者たちは今回の署名活動を立ち上げたのです。※写真はイメージネットで賛否の声署名活動はネットで拡散され、主張に対する肯定的な意見や批判的な意見が多数上がりました。【肯定的な意見】・確かに、ジェンダーバイアス(性別による偏見)かも。『おふくろの味』って意味なのは分かるけど…。・自分もこの名称はずっと気になっていました。我が家は父親が料理を作っていたし、女性=料理は古い。・これは昭和の価値観。少しずつ小さな部分を変えていくことで、世間の偏見も変わっていくと思う。【否定的な意見】・この名称は『忙しくて食事を用意できない母親のための食堂』という意味合いもあるのでは?・昔から『おふくろの味』って言葉があるし、別に問題ないと思う。言葉狩りだよ。・温かくて親しみやすい名称だと思うけど…。母親の料理の味って、ずっと記憶に残るからね。人の考えは千差万別であるため、これらの意見に正解といえるものはないでしょう。ちなみに、『お母さん食堂』のCMにはタレントの香取慎吾さんが割烹着で出演しています。ファミリーマートの考える『お母さん』の定義は、性別を問わないのかもしれません。[文・構成/grape編集部]
2021年01月01日2020年12月10日、日本看護管理学会はウェブサイトに声明文を発表しました。新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)のまん延によって、ひっ迫される病床。医療従事者たちは、未知とのウイルスと最前線で闘っています。日本看護管理学会は『ナースはコロナウイルス感染患者の最後の砦です』と題し、このように国民に呼びかけました。国民の皆さま、ナースが危機を迎えています。コロナウイルスに感染した患者さんの最も近くにいるのはナースです。この長期戦の中、ナースは身も心も疲弊してきています。コロナウイルス感染患者が増加すると、看護管理者は、一般の病棟を一旦閉じてコロナ対応病床にナースを移動させるしかありません。ナースたちは、今まで自分が看護してきた患者を同僚に預け、コロナ病棟に向かいます。ナースは 防護服を着ているとはいえ、患者の頬に付くくらいに顔を寄せ患者の声を聞き、孤独に苦しむ患者の手を握り、時には尊厳ある死を迎えられるように寄り添います。ナースは、家族も面会できない患者の一番身近くで、患者の生命と生活を守るのです。日本看護管理学会ーより引用2020年の2月頃から、日本でもコロナウイルスの感染者が次第に増えてきました。約1年となる長期戦に、医療従事者は身体も心も疲弊しているといいます。自分自身への感染の危険性があるにも関わらず仕事をまっとうし、コロナウイルス患者の生命と生活を守ってきました。しかし、そんな医療従事者に対し差別や偏見が起きているのです。私たちは自分の仕事を全うするだけですので、感謝の言葉は要りません。ただ看護に専念させて欲しいのです。差別や偏見はナースに対してフェアな態度でしょうか?なぜナースたちは、看護していることを社会の中で隠し、テレビに出るときにはモザイクをかけなければならないのでしょう。これでは、潜在しているナースも復帰をためらいます。日本看護管理学会ーより引用日本看護管理学会は、「感謝の言葉はいらない。看護に専念させてほしい」と強く主張。通常なら、看護師以外の人が担う仕事も、コロナウイルス患者の病室に入る仕事の多くは看護師が対応しているといいます。医療を構成する多くの職種の人たちとの協働体制を、取り戻す必要があると訴えました。また、最後に「コロナウイルス患者とともに歩き続けられるように助けてほしい」と国民へ3つのお願いを呼びかけています。・皆さまには、ご自分の健康と医療現場を守るため、なお一層の慎重な活動をしていただきたい。・医療専門職として、感染予防には留意しております。私たちを偏見の目で見ることはやめていただきたい。・また、もしも一旦仕事から離れている私たちの仲間が、看護の仕事に戻ってこようと思うときには、周囲の方にはぜひご理解いただき、この窮状を救う意志のあるナースを温かく送り出していただきたい。日本看護管理学会ーより引用声明文を読んだ人たちからは「涙が出てしまった」「申し訳ない気持ちになる」「国民全員に読んでほしい」などの声が上がっていました。一人ひとりが感染予防対策をしっかりと行い、これ以上医療従事者を圧迫させないようにしたいですね。[文・構成/grape編集部]
2020年12月11日2020年11月29日放送の、情報番組『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ系)に、タレントの山口もえさんが出演しました。山口さんは、同年8月に新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)に感染。山口さんの感染発覚後、夫である、お笑いコンビ『爆笑問題』の田中裕二さんの感染も判明したため、子供たちとともに一家で入院していました。その後、家族全員無事に回復し、退院したものの、山口さんはコロナウイルスに感染したことが原因で精神的にダウンしてしまったのだそうです。8月の終わりに(コロナウイルスを)発症しまして、熱が出ました。熱は37度8分くらい。それで入院しました。でも私は、(コロナウイルスに)かかってしまったことに精神的にダウンしてしまって。「なんでかかってしまったんだろう」「夫の仕事にも穴を空けてしまった」「子供が学校で、もしいじめにあったらどうしよう」とか…。そういう精神的なもののダメージが大きくて。ご飯も食べられず、飲めず、眠れず…。心理カウンセリングを受けていました。お医者さんがおっしゃっていましたけど、今回かかった方には、精神的につらくなる方が多くて。(身体は)元気になったけれども、仕事に復帰できなかったりだとか、その地域に住み続けられなかったりだとか。そういうことが問題だっておっしゃっていました。そこまで言って委員会NPーより引用コロナウイルスの症状自体は重いものではなかったものの、かかってしまったこと自体を気に病んでしまったという、山口さん。山口さんの経験談を受け、同番組の司会を務める、ニュースキャスターの辛坊治郎さんは「コロナウイルスに関しては、異常なことが起きている」とし、また「患者や医療従事者などへの差別や偏見は、マスコミの問題が非常に大きい」とコメントしています。山口さんのエピソードに、視聴者からはさまざまな声が上がりました。・山口さん、無事に回復したというニュースを聞いてほっとしていましたが、精神的にダウンしていたことは知りませんでした。・確かに、コロナウイルスにかかることも怖いけど、その後の周りの目も怖い。・感染対策を徹底していた人ほど、当事者になってしまった時に自分のことを責めてしまいそう。対策を怠った人だけがかかる病気ではないことを、改めて意識して差別をなくしたい。コロナウイルス感染者には、感染経路がはっきりしていない患者もいます。中には、山口さんのように徹底的に気を付けていたにも関わらず、感染してしまったという人もいるかもしれません。誰もが感染する可能性があるからこそ、感染してしまった人のことを差別することのないよう、改めて気を付けたいものですね。[文・構成/grape編集部]
2020年11月29日フィンランドの首相、サンナ・マリン氏の服装を巡り、ネット上では大きな議論が巻き起こっています。サンナ・マリン氏は2019年12月10日に、世界最年少の34歳の女性首相として就任し話題となっていました。「女性を服装で判断するべきではない!」擁護の声高まることの発端は、サンナ・マリン首相が、同国の女性誌『トレンディ』にて、谷間が大きく開いたスーツ姿で撮影したことでした。その姿が、こちらです。 View this post on Instagram A post shared by Trendi & Lily (@trendimag) on Oct 8, 2020 at 2:00am PDT素肌の上にスーツを着用したことで、胸元があらわに。この写真に対し、批判の声が集まったのです。・首相としての信頼が落ちますよ。女性なんだから、下品な格好をしないで。・恥ずかしい。こういう服装はやめて。・首相なのに、こんな撮影をしている暇があるのか。時間の無駄では?アメリカのニュースメディア『CNN』によると、同誌にこのような非難の声が寄せられたのは初めてとのこと。同責任者によれば、同社の女性ファッション誌ではこれまで長年、知名度の高い女性がシャツなしでブレザーを着た写真を掲載してきたが、このような反響があったことはなかったという。CNNーより引用批判に対し「女性を服装で判断すべきではない!」の声サンナ・マリン首相の服装への非難が話題となった後、今度は逆に擁護する声が多く上がりました。・TPOをわきまえていればどんな服装をしたっていいはず。ファッション誌への掲載なんだから問題ないでしょう。・似合っているし、何が問題なの?わざわざ非難することでもない。・見た目で能力とか判断される社会じゃなくなるといいなぁ。・「女性だから」「首相だから」というのは、服装を制限する理由にはならないよ。さらに、SNSでは『#imwithsanna』つまり『#サンナとともに』というハッシュタグが誕生。男女関係なく、素肌の上にスーツを着用した写真を投稿し、批難の声に抗議する人が続出しています。結果的に、サンナ・マリン首相の姿は『立場ある女性の服装』について大きな議論を巻き起こしました。TPOを守ることは大切ですが、性別や立場によって服装の自由を奪われることのない社会となってほしいものですね。[文・構成/grape編集部]
2020年10月22日2020年9月25日に行われた区議会本会議での、東京都足立区の白石正輝区議によるセクシュアルマイノリティ(通称:LGBTs)に関する発言が話題となっています。発言があったのは、白石氏が教育の場で性の多様性をどう取り上げるかを質問した9月25日の区議会。「L(レズビアン)やG(ゲイ)が足立区に完全に広がったら子どもは1人も生まれない」などとして「普通の結婚をして普通に子どもを産んで育てることがいかに人間にとって大切か、子どもに教えないといけない」と述べた。サンケイスポーツーより引用その後、サンケイスポーツの取材に対し、白石議員は「仮定の話で、差別する意図はなかった」と説明。「全員がLGBTになれば子供が生まれなくなり、困るのは事実だ」と繰り返し、発言を撤回することはないとしました。これらの白石議員発言は多くのメディアで取り上げられ、ネットからは賛否の声が上がっています。日本を滅ぼすものがあるとしたら…?イラストレーターの、よねはらうさこ(@yoneharausako)さんは、白石議員の発言内容を聞き、思ったことを漫画にしました。その漫画には、3万件を超える『いいね』が寄せられています。日本を滅ぼすものがあるとしたらそれは決してLGBTではないと思った話 pic.twitter.com/P0vwjmkemx — よねはらうさこ (@yoneharausako) October 9, 2020 よねはらさんは、白石議員の話を聞いて「人間なら産んで育てろ」といっているように感じたといいます。LGBTsに限らず「産まない人は法律で守れない」という主張は、あまりにも冷たい考え方であり、そのような考えの世に子供を残したいと思う人は少ないのではないかと持論を展開しました。また、互いに思いやる心のない考えが広まれば、人々は子供を産む余裕がなくなってしまい、逆に少子化が進むのではないかとも推測しています。読者からはさまざまな声が寄せられました。・「女性に生まれたからには子を産み育てるのが義務でしょう?」といわれているようで苦しかった。女性は産む機械じゃないし、誰を愛すかは個人の自由。・白石議員の発言にもやもやしていたけど、この漫画を読んでスッキリした。本当にその通りだと思う。・いい歳して結婚してないと「何か欠陥があるのでは」と噂される。みんな白石議員の発言を責めるけど、独身に対する冷たい目線も、マインドは一緒なんじゃないかな。あえて子供を産まない選択をする人もいれば、事情があって産めない人もいるでしょう。個人が自由に生きることを、互いに温かく認め合える社会を目指していきたいものですね。[文・構成/grape編集部]
2020年10月11日東京都足立区の自民党・白石正輝区議が、少子化問題とセクシャルマイノリティ『LGBTQ』を結びつける差別発言をしたとネット上で批判が上がっています。白石区議は、2020年9月に行われた区議会の一般質問で同区の少子化の対応について質問をした際に「L(レズビアン)とG(ゲイ)についてだけは、もしこれが足立区に広まってしまったら足立区民がいなくなってしまう」と発言。また、LGBTQに関する学校教育について「性の多様性や尊重は分かるけども、普通に結婚をして普通に子供を産んで、普通に子供を育てることがいかに人間にとって大切なことであるか、そのことを教育の場でしっかり教えるべき」などと語っていました。近藤春菜「普通って何なの?」朝の情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)ではこの問題について報道。発言について白石区議に取材を行いました。白石区議は取材に対し「LGBTについて差別や蔑視するような考えはない」と釈明。少子化とLGBTQの問題を結びつけるような発言については、あくまで「仮である」としつつも訂正する気はないとのことです。同番組でコメンテーターを務める近藤春菜さんは、区議の発言について、次のように苦言を呈しました。LGBTQに対する間違った認識からこういう発言が出てくるんだなと思いますし、白石議員の発言の中に『普通』という言葉をよくいわれていましたけど、じゃあ『普通』って何なのというところと、普通っていわれることによって「じゃあ自分は普通じゃないんだ」って感じてしまって心が傷付いてしまう方もたくさんいらっしゃると思うんです。差別だと感じる方がいて、世の中に自分のことをいいづらくなったりとか生きづらいと感じる方が出てきてしまうんですよね。そこがやはり差別を生んでしまうと思いますし。人と人とが一緒に生きていくのに必要なのって『愛』であって、そこには性別とか関係なく互いに愛が持てるかどうかだと思うんですよね。LGBTQの方で、子供を愛を持って育てているカップルの方もいらっしゃいますし、子供が生まれる状況や環境もさまざまな中でこの世に生まれてきた命をどう愛を持って育てていくかということを、考えるべきだと思います。スッキリーより引用LGBTQに関する誤った認識から差別が生まれることや、『普通』という言葉によって傷付く人たちがたくさんいることを近藤さんは指摘。また少子化の問題については「生まれる状況よりも、生まれた子供たちを、どうやって愛を持って育てていくかが大事」と語りました。ネット上では、近藤さんの意見に賛同するコメントが相次いでいます。・本当に春菜さんのいう通り。結婚して子供を産むのが普通だと思ってほしくない。・春菜さんは発言の中でずっとLGBT『Q』といっていた。ささいなことだけど、大事だと思う。・LGBTQだって子供を生むし育てられます。ストレートで子供はいないけど幸せに暮らしてる人もいます。偏った『普通』を押し付けないでほしい。この社会には、LGBTQの人もいれば未婚の人も、既婚でも子供を持たない人もいます。白石区議のいう『普通』に該当する人は、現代の日本ではもはやマイノリティになりつつあるかもしれません。人々の多様性を理解し、さまざまな生き方を認めた上で、必要なサポートを考えることが、政治に求められているのではないでしょうか。[文・構成/grape編集部]
2020年10月06日2020年春から流行した新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)。マスクや消毒液などの深刻な品不足を引き起こしたほか、感染を恐れた一部の人々が患者だけでなく医療従事者も差別し、社会問題となりました。看護師のぱれちに(paretiny)さんは、フォロワーから寄せられた『コロナウイルス差別の現実』を漫画に描き、Instagramに投稿。「医療従事者同士でも、悲しい差別が起こっている」といいます。人々のために、コロナウイルス患者の治療にあたっている看護師たち。ワクチンがない中で働くことに、恐怖を感じている人も少なくないでしょう。そんな看護師たちに対し、同僚たちは冷たい目を向けていました。コロナウイルスに対するどうしようもない恐怖や、やり場のない憤りなどを、仲間にぶつけてしまっていたのです。また、コロナウイルス患者を受け入れた医療機関に勤めている、医療従事者やスタッフには慰労金が支給されましたが、仕事内容の差から「不平等だ」という意見が出ていました。【ネットの声】・病院全スタッフに、コロナウイルスの適切な知識を持ってもらいたい。・今まさにコロナウイルスの患者さんがいる病棟で、やりきれない想いで働いています。・患者さんと接した後、PCR検査を受けました。本当に周りからの目が冷たく、最悪でした。・「人は追いつめられると本性が出る」というやつですかね…。コロナウイルスの感染は広まり、もはや「誰かのせい」とはいえない状況になっています。仲間意識を取り戻す人が増え、心身どちらの面からもしっかりと支え合えるといいですね。[文・構成/grape編集部]
2020年10月05日つるの剛士(45)が9月12日、「自分は生きていて差別という概念はないし、意識をすることもない」「今後も差別をすることはない」といった趣旨のツイートをした。ネットでは、その内容を疑問視する声が相次いでいる。3日、農林水産省の公式Twitterアカウントが「農作物の盗難被害が発生している」と投稿した。それを引用したつるのは、《うちの畑も最近パクチーやられました(現行犯でしたが※「日本語わからない」の一点張り)ので気をつけてください》と投稿。さらに、コメントに返信する形で《一応目星がついていますので。畑近くの工場で働いてる外国人。もちろん次見つけたら通報します》とつづった。するとTwitterでは《犯罪行為をする人は、その行為をする個人が問題なのであって、その個人が属する人種や国籍などといった属性とは、基本的に無関係》《じゃあパクチー取ったのが日本人だったらつるの剛士は「日本語わかる人にパクチー取られた」って言うんか?》との声が。「外国人である」という属性を伝えたつるのに、「なぜ?」と疑問が投げかけられていた。「そもそも農林水産省の投稿には『外国人による犯罪』とは書かれていません。在日外国人は差別を受けやすく、偏見の目を向けられることも多い。そのため今回の投稿によって差別感情が助長されるのではという懸念が。実際、《やっぱり外国人犯罪》《やはり外国人か》といったコメントも散見されます。つるのさんに差別の意図がなく“事実を述べただけ”でも、SNSでの言葉選びに慎重さは必要といえるでしょう」(全国紙記者)「差別を扇動している」との声も上がるなか、つるのは12日にTwitterを更新。そして、こうツイートした。《僕は生きていて、そもそも差別という概念はないですし、意識をすることもない》《僕は今後も差別なんてしませんので、どんな人であろうと悪いことには悪いとハッキリと言います。差別を助長しているのは紛れもなく犯人本人であり、被害者が泣き寝入りしてしまう世の中こそ差別だと思うからです》しかし、ネットでは彼の差別に対する認識を疑問視する声が上がっている。《「自分は差別していない」という思い込みが一番危険なんだよつるのさん。私も他の方に指摘されて自分の差別心に気付いたことはままある》《「自分の中に差別という概念はなく意識をすることもない」と素朴に思っている人は多いだろう。そういう人に「意識しないでいるのは既にある差別を黙認しているから」と言っても通じないだろう》《差別のない誰もが生きやすい社会、ここに向かうには、私たち一人一人が自分は関係ないと思わず、最大限の想像力を持って差別と向きあう、そんな社会への視野を持たなければいけません》《無意識の差別が蔓延してるから、自分の言動の起源やそれが与える影響についてもっと意識していくことが大事》
2020年09月15日2020年8月31日(日本時間9月1日)から開催されている全米オープンテニスで、大坂なおみ選手が優勝。祝福の声が上がる中、試合後のインタビューでの発言に注目が集まっています。大坂なおみが着けた7枚のマスク全7試合に臨む際、大坂選手は警察の暴力などで死亡した黒人犠牲者の名前入りマスクで登場。被害者遺族たちから感謝の声が上がる一方で、「スポーツに黒人差別の話題を持ち込むな」という批判の声も上がっていました。大坂なおみ選手に、遺族が感謝のメッセージ「見返して、たくさん泣きました」ラストの7試合目に、大坂選手は『Tamir Rice』の文字が入ったマスクを着用。おもちゃのエアガンで遊んでいたところを警官に撃たれた、12歳の少年の存在をアピールしました。 pic.twitter.com/zxtS7qSa9F — NaomiOsaka大坂なおみ (@naomiosaka) September 13, 2020 試合後のインタビューで、『7枚のマスクを通して伝えたかったメッセージ』について、改めて尋ねられた大坂選手。その時の返答を、全米オープンテニスのTwitterアカウントが投稿しています。. @naomiosaka made her voice heard on her way to her second #USOpen title ✊ pic.twitter.com/68KGRr4UVS — US Open Tennis (@usopen) September 12, 2020 あなたはどのようなメッセージを受け取りましたか?@usopenーより引用(和訳)インタビュアーの質問にあえて質問で返した、大坂選手。「黒人差別についてみんなが考え、語り合うきかっけになるように」という姿勢を貫き通した大坂選手のコメントに、多くの人が感銘を受けています。・最高の返し!・7枚のマスクで全世界に問題提起した大坂選手、かっこいいです!・私はマスクの意味をしっかりと受け止めました。・各々が感じ、考えることが大切ですよね。大坂選手は、自分にできる方法でメッセージを発信し続けました。彼女の勇気ある行動によって、多くの人が他人事でなしに黒人差別について考えたことでしょう。悲劇を繰り返さないために、今後も議論が深まっていくことが望まれています。[文・構成/grape編集部]
2020年09月13日