蓬莱竜太作、栗山民也演出の『母と惑星について、および自転する女たちの記録』が7月に上演される。再開発計画によって一時閉館することが決まったパルコ劇場における、最後の新作舞台だ。描かれるのは、3姉妹と母の愛憎物語。三女を演じる志田未来と母に扮する斉藤由貴が、意気込みを語った。【チケット情報はこちら】今回の顔合わせは、昨年の『オレアナ』で初舞台を踏んだばかりの志田にとって、とても心強いものだったようだ。「斉藤さんはとても尊敬する女優さんです。斉藤さんが現場に入られると現場にいい空気が流れるんです。舞台はまだまだわからないことだらけなので、いろいろ学んでいけたらと思っています」(志田)。斉藤も、「間違いなく、稀有な演劇体験ができると思います」と期待する。テレビドラマ『小公女セイラ』と『信長のシェフ』での共演経験から、志田の女優としての才能を嗅ぎとっていたからだ。「役の感情をきちんと自分の感情とリンクさせて、ひと言ひと言に魂を込められる。そんな女優の種を持っている人だなと感じていたので、今回もきっと、演技の光合成みたいなことが起きるんじゃないかと楽しみなんです」(斉藤)。そんな実力派のふたりが演じるのは、確執のある娘と母だ。しかも、物語は母親が亡くなったところから始まる。「今回の役は好きだなと思った要素がふたつあるんです。最初から死んでいること。そして、娘たちに最低な母親だと思われていること。どんな人物で何があったのか、ワクワクしますよね(笑)」(斉藤)。娘のほうも、3姉妹それぞれに事情を抱えている。「まだ完成台本がないのでわからないんですけど、母に対しても3人それぞれ違う思いがあったりするようなんです。脚本の蓬莱さんは、母という存在から“命”を考える作品にしたいとおっしゃっていました。そして、そのなかに笑いもあるコメディにしたいと。稽古でいろいろ探っていけたらなと思います」(志田)。斉藤が付け加える。「きっと、私は娘たちにひどい振る舞いをするのだと思います。娘にもさまざまな問題や悩みがあるのでしょう。でも、最終的にはろ過してろ過して、ものすごく純粋な愛情のひと雫が現れる気がします。それをお客さまに持って帰ってもらえたら」(斉藤)。ふたりの言葉からは、作品に役に、丁寧に向きあおうとする真摯な思いがのぞく。次女の鈴木杏、長女の田畑智子が加わって、女優たちはどんな母娘を見せるのか。現パルコ劇場の締めくくりにふさわしい、愛おしい作品になりそうだ。舞台『母と惑星について、および自転する女たちの記録』は7月7日(木) から31日(日)まで、東京・PARCO劇場で上演。その後、宮城、広島、福岡、大阪を周る。東京公演のチケット一般発売は5月14日(土)午前10時より。取材・文:大内弓子
2016年05月13日日本を代表するSF作家・小松左京氏の「夜が明けたら」では、突然の地震と停電から異変を感じ、のちに地球の自転が止まったことに気づく人々の様子が描かれていた。もしも自転が止まったら、このような穏やかな状態ではいられない。巨大な慣性力による津波や暴風、温度差、宇宙からの高濃度放射線で、地球は完全に崩壊することになるだろう。■-47Gの破壊力地球は北極上空から見て反時計回りに自転している。1日をちょうど24時間、赤道1周を40,000kmとすると、赤道上に立った人間は、宇宙から見れば時速1,667kmで移動していることになる。1秒間に463m。とんでもない速さだが、大気を含め周囲の物体も同じ速さで移動しているので、その人は速度を感じない。走っている電車のなかと同じで、飛び上がっても後ろに着地することはない。地球の自転が止まればこの人も止まるのは自明の理だが、減速時に強い慣性力が生じるので、止まり方が問題だ。満員電車で急ブレーキがかかると、乗客はなだれのように進行方向に流されるのと同様に、短時間で減速するほどに強い慣性力が生じるのだ。この慣性力はGであらわされ、1Gは自分の重さを意味する。体重60kgの人は、2Gなら120kg分の力が加わることになる。赤道上の人は秒速463mで等速直線運動していると考え、自転が完全に停止するまでの時間(秒)から慣性力(G)を計算すると、・1秒…47.2G・10秒…4.72G・60秒…0.79Gとなる。1秒では自重の47倍の慣性力が生じる。減速よりも衝突と呼ぶのがふさわしい状況だ。慣性力は建物や山を崩壊し、津波を発生させる。万が一にでも地面から離れてしまうと、猛スピードで地表を転げまわることになるので注意しよう。もっとも、地面もいっしょに吹き飛ばされているだろうから、しがみついても役に立たないだろうが。4.72GはF1、0.79Gなら乗用車のフルブレーキ相当なので、これならなんとかなりそうだ。そう信じて何かにしがみつき、完全に停止するまで必至で耐えぬこう。ただし大気にも慣性が働きすぐには止まらない。地表が静止すると速度差で突風が生じ、物体を巻き込んで土石流の体を成す。努力むなしく押し流され、風と共に去りぬ。もしも自転の停止が予測できたら、北極か南極に避難しよう。その場で回転しているだけの地軸上なら、強烈な慣性力を受けずに済むからだ。■地磁気の減少で放射線にさらされる?自転が止まった地球は、昼夜2つの半球に分かれる。地軸のように、太陽とは無関係に一定方向を向いたままなら1年に1回自転するのと同じになるが、これでも半年ずつの灼熱(しゃくねつ)と極寒を繰り返すにすぎない。気候はもちろん陸地や海洋も、現在とはかけ離れた過酷な星へと生まれ変わる。太陽風の存在も忘れてはいけない。放たれるプラズマが人体に有害なことは過去にご説明したとおりで、現在は地磁気に守られているものの、自転が止まれば地磁気もなくなる可能性が高いからだ。地磁気の発生はまだ完全に解明されていないものの、もっとも有力なのは地球ダイナモ理論だ。この説では地球の核(コア)の回転によって電気が生じ、磁力を発生させているという。鉄を主成分とする高温で流体のコアは半径約3,500km、そこに流れる電流は30億A(アンペア)に及ぶと考えられている。この説は地球を発電機に見立てた理論だから、コアを回転させるエネルギーが必須となる。それは地球の自転とコアの対流によると考えられているので、自転が止まれば発電量の減少はまぬがれず、最悪ゼロになる。地磁気の消失は太陽風の進入を許し、地表が電磁波やプラズマにさらされることを意味する。オーロラが各地で見られるようになったら終焉の始まりだ。同時に、地球をドーナツ状に取り巻くバン・アレン帯も消失する。バン・アレン帯は地磁気にとらえられた陽子/電子などの高エネルギー粒子に満たされ、地表の自然放射線の1億倍以上強いことから放射線帯とも呼ばれている。地球を放射線から守るためのバリアーといえよう。もし地磁気がなくなりこのバリアーも消失すると、高濃度の放射線は容赦なく地表に降り注ぐ。電磁波/プラズマに放射線が加われば、地球は無敵の殺人マシンと化す。放射線は太陽からとは限らないから、夜半球に逃げても効果はない。さよなら人類。■まとめ地球の自転は0.000015秒/年とわずかながら減速し続けている。1日が25時間になるのが1億8千万年後なので気の遠くなる話だが、このまま続けば「夜が明けない」日が来るのは時間の問題だ。ゆっくり減速すれば強烈な慣性力を受けずに済むので、それだけで感謝すべきかもしれない。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年09月23日