ともに仕事が忙しく、都心で駅近という条件が必須だったという千葉さん夫妻。夫妻揃って持ち物が少なく、40平米未満の家に妹と暮らしていた妻の経験から、立地を重視して38平米、築18年のマンションを購入。コンパクトなワンルームをうまく生かしてくれそうなクラシフォンにリノベーションを依頼し、工事費300万円(税込み、設計料別)で狭さを感じさせない住まいを実現させました。■ 狭さはアイデアで克服! 工夫あふれるLDK人を招くのが好きな千葉さんはキッチン中心の家をオーダー。プランニングはまずキッチンの配置から始めました。「できるだけデッドスペースをつくらず、視線を対角線上に通して広く見せる。空間を最大限活用するため、ミリ単位の調整を重ねました。」と話すのは、設計を手掛けたクラシフォンの瀧内未来さん。キッチンの主役は、変幻自在な造作テーブル。キッチンの側面に取り付けた折り畳み式の天板を起こせば、最大8人まで着席できるそう。また、ダイニングテーブルの足には、高さを変えられるガス圧昇降式を採用。ペダルを踏むだけでバーテーブルにも早変わりします。ダイニングテーブルの下には、キッチンの側面に取り付けた延長用の天板も。タテの空間を有効活用することで、LDKは狭さや窮屈さとは無縁。また、ちょっとしたスキマにも収納棚をつくるなどして、空間を余すところなく活用しています。シンク裏のデッドスペースにも棚を設けて収納にしました。「この棚のおかげで、テーブルの上が片付きます」と千葉さん。ダイニングの照明は「後藤照明」で見つけたものです。キッチンと玄関の間の壁はタイルで仕上げています。玄関からリビングに視線が抜けるよう、壁の量にも工夫を凝らしました。キッチンは作業効率を考え、テーブル、シンク、コンロを一列に並べました。動かせない排水管があったため、ミリ単位での配置がなされ、一番端の冷蔵庫は壁を削って収めたそうです。■ 寝室まわりはスペースを有効活用寝室はベッドに合わせて幅を決め、夫の身長から床の高さを割り出しました。開口部には、夫が壁と同じ色で塗装したアンティークの扉を設置。床のクッションフロアはシャビ―なテイストのものに。そしてそのベッド裏には、将来の書斎スペースも!今は来客時に物をしまったり、着替えをしたりと、多目的に使っています。当初は寝室を北側に寄せ、ソファスペースを広く取る予定でしたが、このように変更して正解だったと夫妻は言います。そして寝室の床下には、二方向からアクセス可能な収納を確保。キッチン側には棚を設け、食器棚として使っています。撤去した下駄箱の扉を再利用することで、自然な一体感を演出。また、寝室の壁にはニッチをつくり、ブックスタンドに。床面積がコンパクトで家具が置きにくい空間では、わずかな収納スペースが重宝します。寝室前には謎の白いボックス!こちらは寝室に上がるための階段です。テーブルやベンチにもなるという3WAYで、最上段のボックスを移動すれば、テーブルに早変わり。そこにストライプ柄のカバーをかけ、半円パラソルを開けば、あっという間に非日常の空間に。家にいながらリゾート気分を味わえます。■ 既存の設備や建具を上手に活用もともとキッチンがあった場所にはシューズクロゼットを新設。ガラスの扉は既存のもので、あえて中を見せることでショップのようなディスプレイ効果が得られました。シューズクロゼット右手の目隠し壁には小窓を設置しています。サニタリーは大理石の床や壁で豪華な印象。すでにリノベ済の物件だったため、便器とシャワーヘッド以外は、既存の設備をほぼそのまま利用しています。3面に窓がある物件なので、浴室も十分な明るさを確保できています。こちらは浴室方向からみたリビング。壁や建具は白やガラス、床は明るい色を選ぶことで広く見せています。ソファは1シーターと2シーターを組み合わせ、背を両脇に向けてアーム代わりにしているそう。週末にはパラソルの花が咲き、テーブルはバーカウンターに変身し、ゲストの笑い声が響く。狭さをネックととらえずポジティブな発想で住まいを楽しむ極意を、この家は教えてくれました。このリノベーションをもっと詳しく見たい方は、ぜひ「リライフプラスvol.19」も参考にしてみてくださいね。※物件価格、工事費、ご家族の年齢等は取材時のものです。設計・施工kurachiffon(クラシフォン)撮影/山田耕司
2019年01月14日以前は都心にある55平米のマンションに住んでいたYさん夫妻。住み替えは積極的に考えていなかったそうですが、妻の実家近くで売りに出たヴィンテージマンションの一住戸の広さや管理体制に惚れ込み、一番乗りで申し込み、購入。「古きよきものは残そう」という姿勢でリノベに取り組むオフィス・エコーの江本響さんに依頼し、工事費1,420万円(税・設計料込、施主支給分は別途)で解放感のある空間にリノベーションしました。■ LDK横に寝室を配置し、視線の抜ける約30畳の空間にチークの木目の濃淡が美しい既存の壁面収納がしっくりなじむLDK。間仕切り壁の多い3LDKを贅沢に2LDKにつくり替え、フレンチヘンリボーンの床や海外の大きな家具が映える大空間に生まれ変わりました。そのすぐ横には、ガラスに囲まれた明るい寝室を配置。LDKからの視線の抜けのよさと、寝室としての機能のバランスを考えて、ガラス面の高さを決めています。外部に面した窓と屋内窓との相乗効果で、ひろびろ感がさらにアップ。「LDKと寝室を足すと約30畳で、かなりゆったり。すごく快適です」と夫妻。独立型キッチンをオープンスタイルに変えて、リビングダイニングと一体感をもたせたキッチン。天板はステンレスのオリジナルで、キャビネットはイケアのものを採用しました。オープン棚に並ぶ調理器具はシックな色調で統一し、既存部分を残したLDKにうまく馴染んでいます。リビングダイニングの一角につくられたコンパクトな書斎は、家で仕事をすることも多い夫のためのスペース。「子どもはこの段差が好きみたいで、友達が来るとここに集まって座っています」とのこと。窓際に視線を向けると、そこには陽がたっぷり差し込むサンルームが。リビングの風通しをよくし、寝室と外部との緩衝地帯にもなっています。マンションの管理規約で、洗濯物の乾燥は地下の乾燥室でしていますが、小さなものはここに干しています。今後は観葉植物を増やす予定だそう。■ 子ども室につながる便利な回遊土間長男が赤ちゃんだったときの等身大ポートレートがお出迎えしてくれる玄関。正面の壁はリブ材張りで、塗り壁主体の壁面のアクセントになっています。もともと個室と納屋があったスペースを縮小して、贅沢な広さを確保。そこに将来子ども室にする予定の個室をつくり、ぐるりと囲むようにL字型の土間を設けました。外から帰ってきてベビーカーやアウトドア用品などをそのまま置ける便利なこの土間。玄関土間から個室へ、個室から玄関ホールへと、ぐるりと回れる回遊動線になっています。土間の突き当りにあるこちらが、将来子ども室にする予定の個室です。■ ゆったりとした広さを確保したサニタリーサニタリーは配置を調整して広がりを確保しました。浴室をやや拡張し、洗濯機置き場を兼ねていたスペースを洗面室に一新。新しい浴室の壁面と既存壁との間の隙間を、洗面室側から使えるタオル収納に利用しています。以前洗面台があった場所は洗濯機置き場に変更(写真左)。玄関とサニタリーを仕切る建具は、前のキッチンで使われていたものを再利用しています。設備機器の調達には、夫が奮闘。ハーフユニットバスも温水洗浄便座もネットで購入して施主支給することで、コストダウンになりました。リノベが完成してしばらくたった頃、友人たちを招き、寿司職人に出張してもらって食事会を開いたそう。エクステンションのダイニングテーブルを広げ、キッチンで握ったばかりの寿司を味わい、大人6人と子ども2人で大いに盛り上がったとか。「すごく好評で、職人さんは、過去最高にやりやすかった、と言ってくれました」。Yさん一家は、広い空間ならではの生活を楽しんでいるようです。このリノベーションをもっと詳しく見たい方は、ぜひ「リライフプラスvol.19」も参考にしてみてくださいね。※物件価格、工事費、ご家族の年齢等は取材時のものです。設計オフィス・エコー撮影遠藤 宏
2018年11月12日