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子どもの暮らしを彩るモノ・コトづくりに愛をもって携わる達人に、その舞台裏を余すところなく語っていただく本連載。8回目は、子どもたちが楽しく職業体験できる街、キッザニア東京におじゃましました。キッザニアを飛び出し、現地でよりリアルなお仕事体験をする「Out of KidZania」の取り組みについてもお聞きました。<お話をうかがった達人さん>杉原 和馬さんキッザニア事業本部 アクティビティ部開発グループ マネジャー。主に施設内にあるパビリオンの企画開発を担当。高根沢 景さん企画管理本部新規事業開発部マネジャー。「Out of KidZania」をはじめ、主に施設外の取り組みについて企画開発を担当。<キッザニアってどんなところ?>子どもが楽しみながら社会体験することをコンセプトにした、メキシコ発祥のエデュテイメント(エデュケーション+エンターテインメントの造語)タウン。日本国内では「東京」「甲子園」の2カ所を展開し、リアルな職業・社会体験を通して子どもの「生きる力」を育むことにも注力している。キッザニアの詳細は こちら から。■子ども達だけでお仕事に挑戦! キッザニアのおもしろさまずは、キッザニアのパビリオンを企画開発している杉原さんにお聞きしました。 キッザニアの街の中にある店舗型ブースをパビリオンと呼び、そこで、子ども達はお仕事体験します。仕事をすると「キッゾ」と呼ばれる専用通貨(給料)がもらえ、自分が稼いだキッゾで、何かを買ったり、体験したり…銀行に預けて、貯めておくこともできます。こんなふうに、キッザニアでは社会のシステムをロールプレイング形式で提供しています。キッザニアの入場口は空港になっていて、そこから国が変わるというイメージです。子どもらしいドリーミーな雰囲気ではなく、少し背伸びをしたリアル感が出るように、内装も“かわいい”より“綺麗・クール”といったデザインにしています。パビリオンの中には、保護者は入ることができません。ガラスやモニター越しに様子が見えるようにしていますが、基本的には客観的な立場にいてもらいます。保護者と子どもの関わり方の違いというのは、他の施設との大きな違いだと思いますね。体験内容を親子で話すことでコミュニケーションに繋がるということもありますし、家では甘えん坊でも、外では意外とお兄ちゃんだったんだ…とか、親の立場での発見もあるんです。子どもと親で“異なる体験”が同時に起こるというのが、キッザニアのおもしろいところです。■その場で楽しむだけでなく、次に繋がる体験を私たちが一番大切にしたいのは、子どもが自ら「体験しよう!」と思えるメンタリティを作っていくこと。そして一つの成功体験をきっかけに、キッザニア以外でももっとディープなことを自分で探したり、社会に対してポジティブな気持ちが芽生えたりしてくれたら嬉しいですね。実際、来場前・後のアンケートで「気持ちが落ち込んでやる気が出なくても、やるべきことはきちんとやろうとする」「問題が起きた時にどうすればいいのかを自分で考える」といった設問について、プラス回答の数値が伸びたという調査結果も出ました。その場で完結するのではなく、そこから繋がっていく…キッザニアの体験効果として、このようなことが言えるのではないかと思っています。体験できるのは3歳~15歳。プログラムを進行するために中学生が幼稚園児をフォローしてくれるなど、我々がプログラミングした枠外の関係性がゲスト間でも起きています。子どもの「自発性」や隠れていた部分が発露する瞬間はたくさんありますね。■お金をもらって嬉しいという感覚から、ビジネスへの理解深化までパビリオンごとに対象年齢は様々で 証券会社のように、大人でも何をするんだろうと考えてしまうようなところも、一定年齢層以上になるとビジネスに対する理解度が進んでくる。一方、小さなお子さんは「食べ物を作ってお給料が貰える」ことに純粋に感動してくれるんです。アクティビティによって「派手さ」「地味さ」みたいなものはありますが、それぞれの仕事が街に貢献しており、多様性がある街としても重要なこと。体験できる仕事のバリエーションを広げることで、来ていただいたゲストに飽きずに楽しんでもらえていると思います。恥ずかしがり屋の子について心配される保護者もいますが、スーパーバイザーがフォローしたり、チームの組み方も可能な範囲の中での調整は行っているので「意外と平気だった」というケースの方が多い気がします。それでも体調が悪かったり、「上手にパフォーマンスできなかった」と泣いてしまう子もいますが、「もう一回やってみよう」というチャレンジ精神が生まれ、結果として再び来場してくださる方もたくさんいるんですよ。■子どもの“初体験”のために――新たな挑戦とアクティビティ開発秘話東京の「地下鉄」、甲子園の「ファーマーズセンター」、そして両施設の飛行機内にはシミュレーターを設置しています。ゲーム的な要素を詰め込むのではなく、実際の操縦体験にこだわったシミュレーターは世の中になく、ゼロから作っていきました。ほかに、東京の「動物病院」では犬のお尻から体温を計ったり、甲子園の「ホースパーク」では馬の飼育をしたりと、それぞれ動物のロボットを通じた体験を組み込んでいます。この動物ロボットは、毛並みや筋肉の堅さなどを追求し、触り心地も本物に近いことにこだわりました。完成の際には製作関係者にもすごく反響がありましたし、実際、見たり触ったりした人は結構びっくりするかもしれませんね。開発に時間はかかりますが、私たちのチャレンジによって子どもの初体験がひとつ増えるというのは、非常に意味があると思っています。最新アクティビティの「ビバレッジサービスセンター」では、本物の自動販売機を触ることができます。実は、自販機はドリンクを販売するだけでなく、売上情報、売れ行きの傾向などが記録されています。子ども達には、商品を補充はもちろん、売る場所や時期によって商品やポスターを変えるなど、自販機に関わるすべてのことを体験してもらいたいと考え、危なくないように加工はしますが、やっぱり本物の自販機を使うことを選びました。■機械化が進む未来的な職業に、アナログ的な体験を見出したい現在は小学校中学年ぐらいまでがメインターゲットになっていますが、今後は中学生に重きを置いたアクティビティの開発や、保護者と積極的にコミュニケーションが取れる仕掛けを作るところまで踏み込んでいけたらおもしろいと思っています。そして未来的な職業に対して、どのようにアプローチしていくかが課題のひとつです。オープン当初はアナログ的な仕事が多かったし、仕事の原点はそこにあると思います。それらが機械化されてしまった時に、パソコンで打ち込む事務作業がお仕事体験かと言われると、それはちょっと違うのかなと。アナログ的、フィジカルな体験を、そのような職業にどう落とし込むかを考えなくてはいけません。 日本の教育は、「教えて習う」インプットがメインで、社会人になった時に突然プレゼンテーションしなきゃいけないという場面が結構あるんですよね。キッザニアの中では、アウトプットの機会を子ども達に与えていくべきだと思っていますし、それを念頭においてプログラムを開発しています。子ども達は臆せず飛び込んでみてほしい。そして保護者の方々には、子どものチャレンジを暖かく見守っていただきたいですね。 ■実際の現場でもっとリアルな世界を体験!「アウトオブキッザニア」!!ここからは、キッザニアの街を飛び出して、よりリアルな“体験”をするOut of KidZaniaについてお話を聞きました!Out of KidZaniaは、キッザニア東京のオープン翌年(2007年)、子ども達に「もっとリアルな世界」を体験してもらいたいという想いから生まれたプログラムです。夏休みなどを利用し、20~30人程度の子どもたちをキッザニアのスタッフたちが連れて行くキャンプ形式で、普段は見られない会社の様子を知ったり、実際に働いている人の話を聞いたりすることで、仕事や社会について幅広く学んでいきます。日帰りもありますが、基本的には1泊2日~2泊3日の宿泊プログラム。タイの工場に行くという海外プログラムも実施したことがありますが、その時はもう少し長期のプログラムになりました。■キッザニアではできない第一次産業を体験できる場にキッザニアで体験できる仕事は都会の仕事に限られていて、第一次産業(農業・林業・漁業など)の仕事ができないのです。「キッザニアの中ではできない仕事を子ども達に体験してもらいたい」と思って、第一次産業の体験ができるプログラムもたくさん実施してきました。今まさに、キッザニア甲子園のオフィシャルスポンサーである株式会社神明の協力のもと、米作り のプログラムを実施中なのですが、このプログラムは、田植えから稲刈りまでの米作りをしたあと、自分達で作った米を工場で精米し、お客様に安心して食べてもらうための品質検査、そして、自分達のデザインしたパッケージのパック詰めまでをします。ただ米作りをするのではなく、商品に仕上げるところまでやるのがキッザニアならではですよね。■妥協せず、提案を重ねてより良い体験プログラムを実現!Out of KidZaniaのプログラム作りは、「子ども達にこんな体験を提供したい」とキッザニアスポンサーに企画を持ち込むところから始まります。たとえばキッザニアには「ソーセージ工房」を出展いただいている、日本ハム株式会社に、最初に提案したのは「子ども達が生命をいただくことを実感できる畜産体験」でした。提案してから、「子ども達に畜産をどこまで見せるか」など課題がどんどん出てきて…。「豚舎で餌やりや掃除など生き物を育てる仕事体験ができないか」と簡単に考えていましたが、豚はすごくデリケートなので、外部の人は入れないそうなんです。それでも動物に触れる仕事体験をと、日本ハムの担当者の方と何度も打合せをさせていただき、酪農体験プログラムを実現することができました。■キッズ社員としてOut of KidZaniaに参加する子ども達は、キッズ社員として、体験する仕事のことを学びます。1人1人キッズ社員の名刺を持ち、「〇〇社Out of KidZaniaのキッズ社員△△です!」とあいさつをして、そこで働くおとな達と名刺交換をします。そこでビジネスマナーを学び、主体的にプログラムに取り組む意識を高めることができるのです。そして、必ずアウトプットの時間を設けています。自分で取材をしたり、発見したことを、新聞としてまとめたり、グループで話し合ったことをプレゼンテーションしたりもしています。子ども達のアウトプットを見聞きすると、キッズ社員としてプログラムに参加することで、子ども達が「仕事」やそこで「働く人」について、たくさんの「気づき」を得ていることを実感します。■子ども達をサポートするスーパーバイザーOut of KidZaniaには、ふだんキッザニアで働いているスーパーバイザー達が、子ども達のサポートとしてプログラムに同行します。彼らは、子ども達の気づきを引き出すサポートをしています。子ども達の気持ちに寄り添い、一緒に楽しみ、感動することで、彼ら自身も多くの「気づき」を得ています。子ども達にとっても、関わるおとな達にとっても学び多いOut of KidZaniaを今後もどんどん実施していきたいです!■エデュテインメントタウンを全国に!キッザニアは子ども達が楽しみながら、働くことや社会のしくみを学ぶ「エデュテインメントタウン」です。このキッザニアのコンセプトを広め、子ども達にキッザニアの職業体験プログラムをたくさん体験してもらいたいと思い、全国各地の職業体験プログラムの監修も行っています。このプログラムの運営主体は地域の自治体や地元企業や事業者の方々です。私たちは地域の方々と一緒にプログラムのガイドラインやシナリオを作り、運営研修などをして地域版職業体験イベントのお手伝いしています。地元の企業が参加してくれたり、その地域ならではの伝統文化や特産物の要素を取り入れることで、地域オリジナル企画ができあがり、イベントを通して、子どももおとなも地域への理解を深め、地元への愛着を持つキッカケになっていると感じます。都内では「墨田区」「江東区」のキッザニア監修しごと体験プログラムが通年販売されており、申込みをすれば実際にお店に行って体験することができます。その他にも、三重県や佐賀県、新潟県の三条市でキッザニア監修の職業体験を実施しています。■単なる作業体験ではなく、事業者の想いも子どもに伝えてほしいキッザニア監修プログラムでは、子ども達にただ体験させるのではなくて、そこで働く人がどんな気持ちで仕事をしているのか、どういう気持ちで取り組んでほしいかをしっかり伝えてほしいとお願いしています。イベントの主役は子ども達と事業者の方々です。私たちは裏方として、事業者のみなさんとの繋がりを大切にして、キッザニアが考える子ども達への思いを伝え続ける事で、子ども達のためのエデュテインメントタウンが全国に広がっていってほしいなと思います。【Out of KidZania最新情報】「JRA競走馬を支える仕事体験 in 栗東トレーニング・センター」(2017年7月25日~26日開催)一流のサラブレッドを育成する「栗東トレーニング・センター」で馬に関わるお仕事を体験するプログラム。調教師、騎手、獣医師、装蹄師などの仕事について学んだり、乗馬にもチャレンジできる!<募集期間は終了しています> ニッポンハムグループ「食とスポーツ」で元気を応援する仕事体験 in 関東」(2017年8月1日~3日開催)鎌倉にある工場で食品の製造について学び、ソーセージ作りを体験。野球場の仕事体験に加え、スポーツ選手を支える管理栄養士と共に「食」の面からサポートするお仕事も!<募集期間は終了しています> ニッポンハムグループ「食べる喜び」を届ける仕事体験 in 北海道」(2017年8月1日、3日~5日、10日開催)函館のソーセージ工場でソーセージの歴史や製造過程を学び、工場でお仕事体験!札幌の飼育施設で酪農体験や、札幌ドームでのお仕事も体験できる。<募集期間は終了しています> 文/nakamura omame
2017年08月08日