出版社勤務を経て、現在フリーの編集・ライター。好きなことはちょこっと体を動かすことと、ひとりでカフェでお茶すること。昭和な雰囲気が残る喫茶店系、たまりません。なまいき男女の母。
ママにもさまざまなおつき合いがあります。年齢や過ごしてきた環境がさまざまな人の中で、できるだけ気持ちよくおつき合いをするヒントは、ちょっとした会話や言葉づかいにあります。『ひと言で「人間関係」はガラッと変わる! 大人の伝え方ノート』の著者であり、長崎大学準教授の矢野香さんに、ママのおつき合いをスムーズにする「話し方」のコツをうかがいます!
どんなに小さくても、子どもは親同士の会話をいちばんよく聞いています。そして、いちばん影響を受けます。子どもの心の成長にも大きく影響を与える夫婦の会話について、『賢い子を育てる 夫婦の会話』の著者であり、「NPO法人親子コミュニケーションラボ」で、親子のコミュニケーション力をのばす活動を行う天野ひかりさんにお話をうかがいました。
ママ友や学校関係、習い事…日常、連絡事項でメールを使うことも多いはず。ママ同士のメールのやり取りも難しいものです。空気を読まずに絵文字を送ってしまって、相手に嫌な思いをさせていることも…。 自分にはそのつもりがなくても、対面でのやりとりとは異なるメールは、まずは送信前にひと呼吸置いて、確認することを心がけましょう。 『ひと言で「人間関係」はガラッと変わる! 大人の伝え方ノート』 (SBクリエイティブ)の著者であり、長崎大学准教授の矢野香さんに、スマートなメールやSNSづかいのコツを教えていただきました。 お話をうかがったのは… 矢野香(やの・かおり)さん 元NHKキャスター、現在は国立大学法人長崎大学准教授、スピーチコンサルタント。専門は、心理学、スピーチ・コミュニケーション論。著書に『その話し方では軽すぎます!-エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)『【NHK式+心理学】一分で一生の信頼を勝ち取る方法-NHK式7つのルール-』(ダイヤモンド社)など、ベストセラー多数。 ■メールが地雷に! 言い回しやノリではどうする? ――仲のよい友だちとのやりとりならいいのですが、顔が見えないぶん、子ども関係のママ友たちとのメールは、どんなテンションで臨めばいいのか悩むことが多いです。 矢野香さん(以下、矢野さん):メールやSNSのやり取りで、「この人にはどんなノリで送ればいいのか」と迷うことは多いですよね。 はじめにつまづきやすいのが、この「ノリ」なんです。最初でつまづくと、あとで挽回するのは難しいものです。 こちらはそこまで親しくないつもりでいたのに、いきなり「ヤッホー」なんてこられて、ちょっと引いた…なんて経験はありませんか? どこまでフランクにしたらいいか、それとも敬語で貫くか。言い回しやコミュニケーションに悩む人は多いものです。とくに、途中で参加したグループのラインなどは、空気感がつかみにくいものですよね。 そこで、まず「言葉づかい」はまわりに合わせてみましょう。心理学では「ペーシング」というのですが、相手と息を合わせることです。対面なら、同じ速さで話したり、声の大きさやトーンを同じにそろえることですね。 同じノリの「言葉づかい」でやり取りをすることで、相手に安心感を与え、仲間であることを暗示できる効果があります。 たとえば、先方が短い一文のメールを送ってくるタイプなら、自分も短く、簡潔な文章で返すといいですね。これも相手に合わせるペーシングです。また、同じ種類のスタンプを使うのも、相手に無意識で親近感を感じさせます。 ――グループラインでは、ほかの人につける「敬称」にも悩みます。友だち同士ならいつもと同じでいいのですが、そこまで親しくない場合はまわりの人と同じにしていいのか…。「なに、図々しい」と思われないかな、なんて…。 矢野さん:ほかの人がAさんのことを「Aちゃん」と呼んでいて、自分もそう呼ぼうかどうしようか…なんて迷いますよね。 そんなときは、「私もAちゃんと呼んでもいいですか?」と聞きましょう。勝手に、いきなり「Aちゃん」と呼ぶと、相手はどんな印象を抱くかわかりません。こう聞かれて「嫌だよ」と答える人はいないと思いますが(笑)、一度聞いてクッションをはさむことで、相手にはその人のていねいさや誠実な印象が残ります。 メールで迷ったら「確認」すること。対面なら相手の表情や空気感から察知することができますが、顔が見えないメールでは、見切り発車は地雷を踏んでしまう危険性が高いものです。 「まあ、いいか」と、日常では当たり前のことも当たり前にしないことが、SNSのコミュニケーションではとても大切。しかも、メールはあとまで残ります。より一層の注意を心がけたいですね。 ■「できるママ」を演出する、読点+改行でメール美人に ――メールで相手に好印象を残すコツはありますか? 矢野さん:メールは、目で読むものです。そこで、視覚の効果を利用することで、送信者の株も大きく上げることができるんです。たとえば、次の2件のメールを見て見ましょう。どちらも同じ内容です。 「明日の委員会は18時からPTA会議室で行います。秋の運動会のPTA競技と各係を決めます。事前に配布した資料を持参してください。遅刻の場合は、事前に○○までご連絡ください」 「明日の委員会は、18時からPTA会議室で行います。 秋の運動会のPTA競技と各係を決めます。 事前に配布した資料を持参してください。 遅刻の場合は、事前に○○までご連絡ください」 読点を一カ所入れただけですが、どちらが読みやすいかは一目瞭然ですね。さらに後者は、改行することでいちばん大切な時間と場所、目的が強調されています。 基本的に、連絡事項などのメールはシンプルに、端的にまとめることを心がけましょう。文字によるコミュニケーションは、視覚に訴えることも必要です。うまく活用すると、自分が伝えたいことを間違いなく、しかも、しっかりと伝えることができるのです。 これなら、相手に大事なポイントを読み飛ばされることも防げるし、「○○さんのメールはわかりやすい」と好印象を与えることもできるでしょう。 よく、おしゃべりをそのまま文章にしたような、だらだらとやたら長いメールを送ってくる人がいます。 読んだあと、「結局なにが言いたいんだろう…」とこちらが疲れてしまうケースです。これでは、その人からメールが届いたら「ああ、またあの人からのメールだ」とうんざりしますよね。 メールはとくに「わかりやすさ」が肝心です。「今、自分はどんなことを伝えたいのか」を明確にしたうえで書きましょう。自分が好印象を抱いている人のメールを参考にするのもいいですね! たかがメール、されどメール。何度も読み返すことができて、しかもあとまで残ることを考えると、おろそかにはできません。さっそく、自分のメールを見直してみませんか? 参考図書: 『ひと言で「人間関係」はガラッと変わる! 大人の伝え方ノート』 (SBクリエイティブ) 元NHKのキャスターであり、スピーチコンサルタント、コミュニケーションに関わる心理学の研究者として活躍中の著者が、「人に好かれる」伝え方のコツを伝授。ビジネスはもちろん、ママ社会にも役立つ目からうろこのテクニックが満載の一冊。
2019年06月26日PTAやママ友、地域のつながりや子どもの習い事、さらには夫の仕事関係まで……。ママを取り巻くさまざまなコミュニティで、摩擦を少なく、自分も心地よくおつき合いをするのはなかなか大変なこと。 『ひと言で「人間関係」はガラッと変わる! 大人の伝え方ノート』 (SBクリエイティブ)の著者であり、長崎大学准教授の矢野香さんに、ママのおつき合いをもっとらくにする「伝え方」のコツを教えていただきます! お話をうかがったのは… 矢野香(やの・かおり)さん 元NHKキャスター、現在は国立大学法人長崎大学准教授、スピーチコンサルタント。専門は、心理学、スピーチ・コミュニケーション論。著書に『その話し方では軽すぎます!-エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)『【NHK式+心理学】一分で一生の信頼を勝ち取る方法-NHK式7つのルール-』(ダイヤモンド社)など、ベストセラー多数。 ■「そんなつもりじゃなかったのに…」誤解の理由は「役割のはき違い」 ――そんなつもりではなかったのに、相手に誤解を招いてしまう…ママ友とのやりとりでそんな悩みをよく耳にしますが、これを打開するにはどうしたらいいのでしょう? 矢野香さん(以下、矢野さん):人と話す場面では、「この場で今、自分はどんな役割で話をするのか」をまず意識してみましょう。 たとえば、学校の保護者会で、委員として連絡事項をほかの保護者に伝えるケース、ママ友とのランチでのおしゃべり、夫の仕事関係の人と挨拶を交わす場面…。 自分がなにかを伝えなくてはならないシチュエーションによって、さまざまな異なる立場に立つわけですよね。 クラスの委員としての立場だったら、その場が自分に求めているのは「委員からの話」ですよね。ですから、その役割に徹すればいいのです。その場を和ませようと、よけいな話を盛りこむと「その話はいいから、肝心の要件を早く話して」と思う人もいるかもしれません。 また、ママ友同士のランチなら、今は「聞き役」なのか「話し手」なのか。「自分は今、どういう役割で話をするべきか」を考え、さまざまな立場で話すことを意識してみてください。 空気を感じとり、自分が今求められている役割を察知するカを磨きましょう。そのためには、まわりをよく観察することも大切です。 自分の役割をはっきりさせると、伝えるべきこともきちんと見えてきます。「あの人の話は、明確でわかりやすい」「あの人は話しやすい」という印象を与えることができるんですね。 ■覚えてもらえる「自己紹介」、チェックしたい「話し方」 ――子どもの学校関係など、ママのおつき合いでは意外と「はじめまして」の場面が多いものです。自己紹介で好印象を与えるコツはありますか? 矢野さん:自己紹介をしても、名前をなかなか覚えてもらえない…。そんなお悩みもよく耳にします。 そこで、名前に加えて、自分が大事にしていることを「セット」にして伝えてみましょう。好きな言葉でもかまいません。さらに、その内容が相手にとってメリットを与えることであれば、バッチリです! たとえば、「山田瑛子です」と「山田瑛子です。スイーツが大好きです。駅前界隈のスイーツにはくわしいです」という自己紹介。一文加えるだけで、「私と一緒!」と思った人がより親近感を抱いてくれるでしょう。「今度、あの人を誘ってケーキを食べに行ってみようかな」なんて、思い出してもらいやすいですよね。 では、こちらはどうでしょうか。「山田瑛子です。マラソンをやっていたので体力には自信があります」。これなら、秋の運動会の保護者の競技に誘いやすいかもしれません。 ――ほんのひと言を加えるのですね。 矢野さん:そうです。短めに、でも印象に残るように。自己紹介がやたら長い人は、聞き手もうんざりしますよね(笑)。話の長い人という印象が残ってしまうのは避けたいですね。 名前とセットにする内容は突飛なものは避けて、シンプルなことにするのがコツ。そのほうが大勢の人に受け入れられやすいし、覚えてもらいやすいからです。得意なことや好きなこと、座右の銘などでもいいでしょう。 ちなみに、心理学の用語で『初頭効果』というものがあります。これは、先に提示される情報のほうが、人の印象に大きな影響を及ぼすという理論です。 自己紹介として最初に提示された情報は、その後のあなたの印象を左右することを覚えておいてくださいね。 ――でも…自分の話し方って、ほかの人からどんなふうに思われているかわかりづらいものです。 矢野さん:そんなときは、一度自分が話している姿を、録画してみてください。これはアナウンサーも行っているトレーニング法の一部です。 これをあとから見ると、「私って、語尾をのばすクセがあるな」「言葉の合間にすぐ『えー』をはさんでいる…」など、自覚がなかった面がたくさん発見できると思います。改善点がすぐに発見できる、おすすめの方法ですよ! もうひとつ、手っ取り早く自分の話し方を知りたいのなら、信頼できるママ友の力を借りましょう。もし、正直になんでも話し合えるママ友がいるのなら、自分のふだんの話し方について感想を聞いてみるのです。客観的な意見は、とても参考になります。 自分が思っていることを、スムーズに相手に伝えたい。そんな思いを抱えているなら、今すぐ試してみましょう! 次回は、地雷を踏みがちなメールでのやりとりについて、心がけたいことを教えていただきます。 参考図書: 『ひと言で「人間関係」はガラッと変わる! 大人の伝え方ノート』 (SBクリエイティブ) 元NHKのキャスターであり、スピーチコンサルタント、コミュニケーションに関わる心理学の研究者として活躍中の著者が、「人に好かれる」伝え方のコツを伝授。ビジネスはもちろん、ママ社会にも役立つ目からうろこのテクニックが満載の一冊。
2019年06月25日子どもは、親の言うことはもちろんですが、「夫婦」の会話もよく聞いています。 パパとママがけんかをしていたら、誰よりも悲しい気持ちになるし、楽しそうに会話をしていたら、それだけで安心するもの。 子どもの心の成長にも大きく影響を与える夫婦の会話。ちょっとした「言い換え」のテクニックで、もっと成長させてみませんか? 『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)著者の天野ひかりさんに、夫婦の会話を成長させるテクニックをうかがいました。 お話をうかがったのは… 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表 天野ひかり(あまの・ひかり)さん NHK「すくすく子育て」元キャスター、現在はフリーアナウンサーとして活躍中。自身の結婚、出産、育児と仕事の両立を経験したことで子育ての重要性を認識。 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」 を立ち上げ、子どもの自己肯定感を育むための、親子のコミュニケーションを力をのばす講座や講演を全国で行う。ベストセラー『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)著者。 天野ひかり公式サイト ■「夫や子どもは今日一日どう過ごしてた?」想像力が家族を育てる ――前回までで、日常の夫婦の会話が子どもにも影響を与えるということがよくわかりました。 天野ひかりさん(以下、天野さん):夫婦の会話は、家族をプロデュースします。この会話がいい方向に向かうには、なにより「お互いを認める」ことが大切ですよね。それがないと、口論や堂々巡りにおちいってしまいがちです。 ――とはいえ、相手を認めるということは、とくに夫婦だとなかなか難しいのが現状ですよね。 天野さん:わかります(笑)。でも、これは「そうではなくて、私の言うとおりにしなさい」「お前の意見は聞いていない」…こんなことを言われ、親や先生や上司の言うことを素直に聞いて育ってきた背景があるのです。これが、今の子どもの親世代なんですよね。 でも、これからは、自分で考えて行動できる子に育てることが求められる時代。誰かを認めることに慣れていない私たち親世代も、協力し合って、認めて、子どもを育むことが大切になるでしょう。そこで、家庭での夫婦の会話が、大きなポイントになるんですね。 ――うう、なんだかハードルが高そうです。 天野さん:大丈夫ですよ! まずは、「相手の立場に立って物事を見る」ことを意識してみましょう。これは、もうトレーニングと思いましょう。 つい、自分のことだけに目がいってしまいがちですが、今日一日、相手はなにをしていたか、どんな時間を過ごしていたかなど、相手の「見えない部分」に思いをはせるのです。 たとえば、仕事や子どもの学校のことなど、外でものすごく忙しい一日を送って家に帰り、「やっとソファに座れる~!」とほっと一息ついたときに、帰宅した夫が「ごはんは?」なんて言ってきたらムッとしますよね。 夫や子どもも、同じことなのです。顔を見るなり「また手伝ってくれない」とか「宿題はやったの?」と言う前に、ちょっとひと呼吸置いて、相手の見えない部分を思いやってみましょう。 夫は外で一日忙しい思いをして働き、子どもは学校で勉強を頑張ってきたのですよね。こうしてみると、相手の悪いところばかり目についていたのが、いい面や大変だった面もきちんと見えてきます。ここが見えると、相手のすべてを含めて認められるようになってくるのです。 ■イラッとくる物言いから脱却! スムーズな言い足し術・言い換え術 ――相手を認める、相手の立場に立って物事を考えてみるということは、なんとなく自分を抑えるようで「損してる?」と思ってしまうのですが……。 天野さん:とんでもない。相手を認められる力がつくと、夫や子どもにいい影響を与えるだけでなく、自分のコミュニケーション力を格段に上げることができるんです。自分にもいい効果があるんですよ! まずは、修行と思って、日々「相手の立場に立つ」ことを意識してみましょう。すると、今までの夫に対する言葉かけも自然と変わってくるでしょう。たとえば… 夫「買い物してきたよ」 妻「ああ、そこに置いておいて」→ 「重かったでしょ、ありがとうね」 妻「脱いだら洗濯機にいれておいてよ」→ 「脱いだものを洗濯機に入れておいてくれたら、明日着ていくのに間に合うよ!」 夫「ああ、疲れた」 妻「私だって今日一日、会議続きでへとへとだよ!」→ 「今日は一日、蒸し暑かったしね。私も会議続きで疲れちゃったの。ご飯はデリバリーにしてもいい?」 夫「ああ、大変だったね。そうしよう」 上記のように自然と変わってくるわけです。 ――ほんのひと言、相手のことを考えた言葉を加えるだけで、グンとやわらかくなりますね。いつもなら「その言い方はなんだよ!」「だって…!」と堂々巡りになっていたかもしれません。 天野さん:そうなんです。私がこの本でお伝えしたかったことに「夫婦の会話の大切さ」ともうひとつ、「お互いを認めること」があるのです。すべてを含めて相手を認めることができれば、会話は必ず変わってくるんです。 「早く起きてよ!」といった指示や「いい加減ゲームやめて!」という禁止のことばも、「昨夜は遅かったから眠いよね。でも、もう起きる時間だよ」「明日は早いんでしょ? もうゲームはやめたら?」と、一方通行からコミュニケーションに変わります。 子どもは、パパとママの会話を聞くことで、コミュニケーションの方法を知らない間に学んでいきます。「こういう言い方をするとけんかにならないんだな」「この言い方は相手を不機嫌にさせるんだな」と、ことばの選択や会話の流れを考えられるようになるんですね。 ――夫婦が互いを認めて、話し合ったりゆずり合う会話は、学びが大きいのですね。 天野さん:また、これからの時代は、多様性が求められます。日常、何気ない話題から、環境問題やLGBTといった議論をするようなことまで、夫婦の間でも価値観に違いを感じることはあるものです。 でも、この会話が子どもに影響を与えていくんですね。さまざまな考え方があって、それを尊重して受け止めることができることは、これからの時代にとても大切な力となるでしょう。 子ども自身の価値基準を広げ「こんな意見もあれば、こういうこともある」と、多様なものの見方ができるようになりますよ。 夫婦の会話は、子どもをどんどん育てます! 参考図書: 『賢い子を育てる 夫婦の会話』 (あさ出版) 天野ひかり 著/汐見稔幸 監修 夫婦の会話は、子どもの成長に大きく影響を受けている! 「夫婦の会話」で磨かれる子どもの「5つの力」と「夫婦の会話」の心得とコツについて、わかりやすく解説した一冊。
2019年06月24日PTAやママ友、子どもの習い事や地域のおつき合い…。ママにもさまざまなおつき合いがあります。 学生時代の友だちとは異なり、年齢や過ごしてきた環境もさまざまな人の中で、できるだけ気持ちよくおつき合いをするヒントは、ちょっとした会話や言葉づかいにあるのです。 『ひと言で「人間関係」はガラッと変わる! 大人の伝え方ノート』 (SBクリエイティブ)の著者であり、長崎大学准教授の矢野香さんに、ママのおつき合いをスムーズにする「話し方」のコツをうかがいます! お話をうかがったのは… 矢野香(やの・かおり)さん 元NHKキャスター、現在は国立大学法人長崎大学准教授、スピーチコンサルタント。専門は、心理学、スピーチ・コミュニケーション論。著書に『その話し方では軽すぎます!-エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)『【NHK式+心理学】一分で一生の信頼を勝ち取る方法-NHK式7つのルール-』(ダイヤモンド社)など、ベストセラー多数。 ■ひらがな1文字で分かれる、「残念な人」と「友だちになりたい人」 ――ママのコミュニケーションで、知らずにやってしまいがちな「あるある」失敗とはどんなものでしょう? 矢野香さん(以下、矢野さん):本人はきちんと話しているつもりなのでしょうが、聞いているこちらが「ん?」と思ってしまうような…そんな話し方ってありますよね。 たとえば、そこまで親しくないママ友たちと、みんなでお茶を飲みにお店に入ったとしましょう。メニューを決めるときに「私はコーヒー『が』いいです」と「私はコーヒー『で』いいです」と言う人。どちらが良い印象ですか? ――うーん、「コーヒーがいいです」のほうが、なんとなく素直に聞こえます。 矢野さん:そうですよね。「コーヒー『で』いいです」では、なんだか「なんでもいいけど、とりあえずそれでいいかな」といった、おざなりな印象があります。 対して「コーヒー『が』いいです」はきちんと自分で考えて決めたという意志や積極性が感じられますよね。 たった1文字のちがいなのですが、意外と相手に与える印象は大きく、相手も知らないうちに「この人は、こういう人なんだな」と思っていくものなのです。 ――「まずい、言っていたかも…」とドキッとした人は多いかもしれません。 矢野さん:何気なく発しているひと言は、本人は全然気にしていないかもしれませんが、聞いている側の印象には残りますよね。 その場ではお互い気にせず聞き流したとしても、相手の心には知らないうちにインプットされているかも…そう考えると、大きな1文字です。 また、どこかにみんなで集まることになった時。「行『け』ますか?」という聞き方と、「行『き』ますか?」とでは、どちらが良いでしょう? おすすめは「行『け』ますか?」です。 「行『け』ますか?」は、行けるか行けないかの“可能性”を確認していますよね。相手の都合を思いやった聞き方です。 でも、「行『き』ますか?」では、行くのか行かないのかの“意志”を暗に確認しているんです。ですから、ちょっと強制されているような、威圧感が感じられるんですね。 「行きますか?」と聞かれたら「行けません」と断りづらいもの。しかし、「行けますか?」なら「今回は行けないんです。すみません」と断りやすいですよね。 こんなふうに、たった1文字で相手に与える“気遣い”の印象が変わってきます。そこから「この人、なんだか感じがいい人だな」と思ってもらうことができる。おつき合いのすべてに使える、ちょっとしたコツですよ! ■人間関係に角が立つ! 語尾の「余計な1文字」 ――わかりやすい! ちょっと意識するだけで、相手への印象が変わりますね。 矢野さん:そうなんです。相手に自分をよく見せようとするのではなく、日ごろから「こう言ったら相手はどう思うか」を意識すれば、自然と言葉の選び方がブラッシュアップされてくるんですね。 もうひとつ、残念な話し方をご紹介しましょう。これも、ついやってしまいがちな例です。 会話で相手の印象に残りやすいのは、「語尾」なんです。余韻として残るんですね。 たとえば「はい、そうで『す』というべきところを、「はい、そうです『が』…」と、語尾に1文字プラスしてしまう言い方。これを“言いさし”と呼びます。 ――いるいる! そういう話し方をする人は多く見かけますよね。 矢野さん:もし心当たりがあるなら、今すぐやめることをおすすめします。 最後まで言い切らない表現は、相手に「なにか不満でも?」と思われる危険性が高いのです。言いさしは使わず、語尾や文末を明確に伝えれば、相手が余計なモヤモヤを抱くこともありません。 基本は、短い文で結論を伝えることを意識しましょう。たとえば、子どもの学校関係で、なにか委員を決めるとき。「じゃあ、私がやってもいいです『が』…」ではなく「じゃあ、私がやってもいいで『す』」で、スッキリ。これなら、聞いている側も気持ちよく「ありがとう!」と言えますよね。 ただ、言いさしも使い方次第では良い効果もあります。ときには、言い切らないことで控えめな態度を表す効果もあるのです。 たとえば、どこかに遅れそうなときを想像してみてください。「少々遅れます」と「少々遅れそうでして…」とでは、後者の方が謙虚さが感じられますよね。 相手に迷惑をかけそうなのに「少々遅れます」と言い切ってしまうと、「なに開き直ってるの?」という印象を相手に与えかねません。でも「少々遅れそうでして…」と語尾をあえて濁すことで「申し訳ありませんが…」という気持ちを醸し出すことができます。 これは上級テクニック。言いづらいことを言わなくてはならないときに、相手に与える印象をコントロールすることができます。 日常、何気なく話している言葉ですが、相手の心に与える影響は想像以上。とくに、「友達未満」の関係には気を遣いたいものです。 ほんの1、2文字ですが、ここに気を配れる人は、きっとママ友関係もスムーズにこなせるでしょう。 自分も相手ももっと心地よくなれるなら、ふだんの言葉づかいをちょっと振り返ってみませんか? 次回は、ママの「伝え方」についてお話をうかがいます! 参考図書: 『ひと言で「人間関係」はガラッと変わる! 大人の伝え方ノート』 (SBクリエイティブ) 元NHKのキャスターであり、スピーチコンサルタント、コミュニケーションに関わる心理学の研究者として活躍中の著者が、「人に好かれる」伝え方のコツを伝授。ビジネスはもちろん、ママ社会にも役立つ目からうろこのテクニックが満載の一冊。
2019年06月24日夫婦の会話は、子どもの成長に大きく影響を与えるもの。さらには、家庭そのものを左右するもの。 でも、夫か妻のどちらか一方だけが「今日から変わるぞ!」とひとりで意気込んでも空回りしがちです。どうしたらいいのでしょう? 『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)著者の天野ひかりさんに、夫婦のコミュニケーションをもっとらくにするヒントを教えていただきました。 お話をうかがったのは… 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表 天野ひかり(あまの・ひかり)さん NHK「すくすく子育て」元キャスター、現在はフリーアナウンサーとして活躍中。自身の結婚、出産、育児と仕事の両立を経験したことで子育ての重要性を認識。 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」 を立ち上げ、子どもの自己肯定感を育むための、親子のコミュニケーションを力をのばす講座や講演を全国で行う。ベストセラー『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)著者。 天野ひかり公式サイト ■「夫婦の会話がない」という悩み、実は思い込み? ――忙しい夫が夜遅く帰ってきて、せいぜい言葉を交わすのは5分程度…。そんなふうに感じている人は多い様子です。 天野ひかりさん(以下、天野さん):「夫婦の会話がない」と悩んでいる方は確かに多いですね。でも、本当にそうでしょうか? よくうかがってみると、なぜか子どもに関することは“夫婦の会話”ではない、と思い込んでいる方も多いのです。 たとえば、「夫婦で話すことといえば、子どものことくらいです」という方がかなりいらっしゃいますが、いえいえ、子どもの話題も立派に夫婦の会話なんですよ。 「今日、こんなことが学校であったんだって」「へえ、頑張ってるね」…これも立派に夫婦の会話。恋人時代のような甘い内容だけが夫婦の会話とは限りません。夫婦になって子どもができたら、会話が変わるのは当然なのです。 ――なるほど…。子どものことなら、けっこう話しているかもしれません。 天野さん:「夫婦で共通の話題がない」「夫婦の会話が盛り上がらない」といった言葉もよく耳にしますが、なにもきちんとした“お題”がなくてもいいのです。 日本人は律儀なところがあるので、会話には「目的」や「お題」があってしかるべき、と思いがちです。 でも、「今日は蒸し暑かったね~」「明日はちょっと涼しくなるみたいだよ」…こんな、何気ない言葉のやりとりも会話。なにか話さなくては、話題を提供しなくてはと意気込む必要はないのです。 ――意気込まずに、夫婦の会話を変えるヒントって、あるのでしょうか。 天野さん:まず、あらためて「家族になっていこう」という意識を再確認しましょう。「こうしてほしい」という要求や不満ばかりを相手に押しつけるのではなく、「もっと家族になりたい」という気持ちを相手に対してもてれば、会話が弾もうが盛り下がろうが、どちらでもいいかなと私は思っているくらいです。 たとえば、2人でなにかを食べながら「このアイス、すごくおいしいね」といった「共有」もすてきですよね。肩に力をいれず、自然に会話を楽しめばいいのです。お互いの根底に「家族」という意識があれば、さり気ない会話でも気持ちに深みが増すものなのです。 ■口を開けばけんかばかり…夫婦で楽しく話す3つのヒント ――でも、会話のつもりがいつのまにか口論に…。そんなつもりはないのに、なぜかいつもけんかになってしまう。こんなケースも多々あります。 天野さん:お母さん向けの講座でお話をうかがうと、「夫は私の話を聞いてくれない」「夫は文句しか言わないから、話すのがイヤなんです」「何度言っても手伝ってくれないから、あきらめました」といった声が本当にたくさんあがるんです。 対して、お父さん向けの講座では「家に帰ると、妻は文句ばかりで、ついこちらも頭にきてしまう」「手伝うとダメ出しされるからやる気が出ない」という意見が多数あります。 でも、よーく双方の話を聞いてみると、この不満の底には、夫婦お互いの「もっと自分のことをかまってほしい、もっと頼ってほしい」という気持ちが隠れているんですね。この点をうまく出せると、夫婦の会話のとげとげしさもグンと減るのです。 つい「相手はわかっていて当然」という前提で話を切り出しがちですが、まず、この常識を自分の中から捨てることから始めましょう。これをふまえて、次の3つのヒントを実践してみましょう。夫婦の会話が少しずつ、変わってきますよ! ヒント1:主語を「YOU」から「I」に変換する 天野さん:会話を増やすことより、自分の理想とする家族像を思い出してみましょう。あなたは、どんな家庭が理想でしょうか。平日はお互いに助け合って家事をこなし、休日はのんびり、二人で散歩…? もしそうなら、これを言葉にして話してみましょう。 かんたんに話せるコツは、主語を「I」にしてみることです。「あなたは、ゴロゴロ寝てばっかりだよね!」ではなく、「私は、いっしょに散歩に行きたいんだけどな」という具合です。 ついけんかになってしまうのは、ひと言めが、つい“相手への要望”で始まってしまうから。これは、裏を返すと相手への非難につながりますよね。 YOU(あなた)を主語にして話し始めると、相手を責めたり、勝手に相手を「○○な人」と決めつけてしまいがち。当然、相手もいい気持ちがしないので、要望も伝わりにくくなるのです。 日常から主語を「I」にするよう意識していれば、子どもも「自分の気持ちを素直に人に伝えられる」ようになります。 ヒント2:大変なときは頼る 天野さん:忙しいときは、ひとりで抱え込まずに「手伝ってほしい」と素直に頼るのが正解。我慢したり、あきらめていては、自分の不満も募る一方です。 ただし、気をつけたいのは「私だって忙しいんだから、お皿くらい洗ってよ」という主張や要求だけの一方通行になってしまうこと。これではなんの進展も見られません。 そこで「今日は早く出なくてはいけないから、これをひとりで全部こなすのは、つらい。手伝ってほしい」と自分の大変さを話して「頼る」ことができるといいですね。相手に「いっしょに協力して乗り越えよう」と思えるようにすることです。 こんな夫婦の会話を見ていれば、子どもも「困ったときは人を頼っていい、人に話していいんだ」と実感することができますよ。 ヒント3:相手が「言われたい言葉」を会話に盛り込む 天野さん:私が5万人を超える親子と接して、たくさんの夫婦から聞いた「うれしかった言葉」「言われたい言葉」。中でも、夫が妻から言われてうれしい言葉をピックアップしました。これを会話に取り入れてみましょう。 ●「今日もお疲れさま」 なんと、夫が妻に言われたい言葉のナンバーワンです。しかし、これは妻だって同じですよね。夫も大変だったけれど、私だって大変だった。 でも、自分が言えてないのに、相手にだけ求めていませんか? こちらから声をかければ、相手も同様に返しやすいものです。夫婦はお互い様。「自分の要求は相手の要求と同じ」だということを思い出してみましょう。 ●「毎日ありがとう」 「私は言われないのに、自分だけ言うのはしゃくにさわる!」という妻の意見もあります。でも、妻のこのひと言で、夫の仕事のパフォーマンスが格段に上がるという研究結果も出ているんですよ! ●「やっぱり頼りになるね」 妻にこそ、いちばん認めてほしいと夫は思っているのではないでしょうか。「後片づけありがとう。やっぱり頼りになるね」など、“あなただから”いう特別感を日ごろから伝えてみましょう。これはうれしいし、頑張りがいもあるものです。 そして、このような言葉を普通に交わしている家庭で育つ子どもは、きっと誰に対しても「素直に感謝を伝えられる」ようになるでしょう。 ほんのひと言を変えるだけで、夫婦の会話がステップアップ。それが夫婦だけではなく、そばで聞いている子どもにもいい効果を与えます。 最終回は、夫婦の会話で陥りがちな「堂々巡り」から脱出するテクニックをうかがいます! 参考図書: 『賢い子を育てる 夫婦の会話』 (あさ出版) 天野ひかり 著/汐見稔幸 監修 夫婦の会話は、子どもの成長に大きく影響を受けている! 「夫婦の会話」で磨かれる子どもの「5つの力」と「夫婦の会話」の心得とコツについて、わかりやすく解説した一冊。
2019年06月23日どんなに小さくても、子どもは親同士の会話をいちばんよく聞いています。そして、いちばん影響を受けます。 これをパパとママが自覚すると、「夫婦の会話」は自然といい方向に変わってくるのでは? そして、子どもの成長にもいい効果が表れるのでは…? 『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)の著者であり、「NPO法人親子コミュニケーションラボ」を立ち上げ、親子のコミュニケーション力をのばす講座や講演を全国で開く天野ひかりさんにお話をうかがいました。 お話をうかがったのは… 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表 天野ひかり(あまの・ひかり)さん NHK「すくすく子育て」元キャスター、現在はフリーアナウンサーとして活躍中。自身の結婚、出産、育児と仕事の両立を経験したことで子育ての重要性を認識。 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」 を立ち上げ、子どもの自己肯定感を育むための、親子のコミュニケーションを力をのばす講座や講演を全国で行う。ベストセラー『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)著者。 天野ひかり公式サイト ■手のかかる子ども、夫婦の会話が原因だった? ――世の中には、「親が子どもにかける言葉」による、子どもへの影響について書かれた本はたくさんあります。では、日常の「夫婦の会話」は、どんなふうに子どもを変えるのでしょう? 天野ひかりさん(以下、天野さん):私は、講座などを通してこれまでに5万人を超える親子と接してきました。 印象的なエピソードは数えきれないほどあるのですが、まずこんなお話をしましょう。以前、私の教室に通ってくださっていたあるママのお話です。 そこのお宅のお子さんは、大人の言うことをちっとも聞かないだだっ子で、ママは日々手を焼いていました。そんなわけで、仕事から帰ってきた夫に、毎日のように「今日はこんな悪いことをした、言うことを聞かなかった」ととうとうと話していたのだそうです。 それは、パパに話すことで、子どもに自分が悪い子であることを自覚してほしいという気持ち、パパには自分がいかに大変かをわかってほしいという気持ちもあったそうです。 でも、子どもの態度は一向に改善しませんでした。そこで、このママはある日一大決心をしたのです。「子どものいい面を見よう」と。 ――それまで「この子ったら、超だだっ子!」と思っていたものを、「よし、この子のいい面を見つけよう」と切り替えるのは、なかなか至難の技ですよね。 天野さん:そうですよね。つい「言うことをきかない」ことばかりに目がいってしまいますが、ちょっと視点を変えてみると、できていることや成長していることも必ずあるものです。そのママは、そこに気がついたんですね。「私が変わってみよう」と。 その夜から、夫婦の会話が変わりました。毎日、夫には「今日は片づけを自分からできたのよ」という具合に、子どものいい面を伝えるようにしたのです。 すると、夫も子どもに対して「おっ、がんばったね」「えらいなあ」とうれしい声がけができるようになりますよね。 パパからしてみれば、毎日、妻から子どもの悪い面ばかり聞かされていたら、正直うんざりすることもあるはず。でも、自分の子どものいい面やできたことを聞けば、子どもへの気持ちはもちろん、頑張っている妻への感謝が自然と口に出始めたそうです。「ありがとう」と。 そこからです。あんなに言うことをきかなかった子どもが、どんどん変わって、いろいろなことを自分からやるようになったそうです。 「それまで、子どもは“叱られる人”になっていたんですね。でも、今はのびのびとして、その様子が愛おしく感じられるんです」とママはうれしそうに話してくれました。 ■夫婦けんかは見せてもいい? 仲直りで「議論」を学ぶ ――自分のことについて話している夫婦の会話を、子どもが聞いていたのですね。 天野さん:直接言われるよりも、誰かが自分に関することを話している言葉のほうが、ずっと心に残りますよね。子どもだって同じなのです。 まして、いちばん大切なパパとママが自分のいいところを話し合ってくれていたら…。それは子どもにとって、大きな励みに、支えになるのです。 このご家庭には、さらなるうれしい変化があったといいます。子どものことはもちろん、日常のささいなことでも、夫婦の会話がグンと増え盛り上がるようになったと…。 ――たしかに、夫婦の会話が弾んでいると、そばで聞いている子どもも安心するのでしょうね。 天野さん:子どもが出合う最初の“社会”が家庭です。夫婦の会話を育み、大切にすることで、子どもはもちろん、家庭そのものも成長するんですね。こんなふうに夫婦のやりとりを聞いて、子どもは自己肯定感を育むことができるんです。 ――では、子どもの前で夫婦げんかなんて、もってのほかですね。 天野さん:いえいえ、子どもの前での夫婦の口論もときにはあっていいと思います。ただしきちんと「仲直り」するところまで見せてあげましょう。 子どもは、そこから「議論」を学ぶことができるからです。勃発した口論に「どう決着をつけるか」を見せることで、「ああ、こんなふうに仲直りすればいいのか」と、子どもは解決の方法を知るのです。 でも、子どもが寝たあとに夫婦だけで仲直りをして、翌朝はケロッとしていると、子どもは「あんなに言い争っていたのに、いつ、どうやって仲直りしたんだろう?」とモヤモヤしてしまいますね。すると、自分にはわからない世界に対して不信感を抱いてしまいます。 ですから、夫婦げんかをしたら、ちゃんと話し合って解決に導き、仲直りをする決着まで見せてあげましょう。「言葉のやりとり」を聞かせることも大切なのです。子どもは、「聞いて」学びます。夫婦のような対等な立場同士の議論を見て、結論を出す過程を聞かせてあげましょう。 こうすることで、いつか子どもが議論をしなくてはいけない場面がきたときに、暴力ではなく、言葉できちんと解決する術やコミュニケーションの術を学ぶことができるでしょう。 ――毎日、なにげなく交わしている夫婦の会話ですが、実はそれが子どもに与える影響がどんなに大きいかを実感するお話ですね。 天野さん:今は、共働きの家庭も増えて、パパもママも日々をこなすだけでいっぱいいっぱい、というケースも多いでしょう。自分のこと、子どものことだけで精いっぱいで、夫婦はお互いへの不満も募りがちです。 でも、それぞれによくお話を聞くと、夫婦として「なんとかしたい」「助け合いたい」という思いは皆さんもっているんですよね。この思いをもっと出すことができれば、夫婦のコミュニケーションももっとラクになり、子どもを伸ばすことにもつながるのです。 もっと、夫婦の会話を増やして充実させたい。そう思っているパパやママは多いはず。まして、子どもの成長につながるのならなおのことです。 第2回では、夫婦の会話が変わる、3つの心得をうかがいます! 参考図書: 『賢い子を育てる 夫婦の会話』 (あさ出版) 天野ひかり 著/汐見稔幸 監修 夫婦の会話は、子どもの成長に大きく影響を受けている! 「夫婦の会話」で磨かれる子どもの「5つの力」と「夫婦の会話」の心得とコツについて、わかりやすく解説した一冊。
2019年06月22日