愛媛県生まれ。慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年活動後、セミナー講師、生命保険会社を経て、2009年にファイナンシャルプランナーとして独立。オフィスベネフィット代表。得意分野は保険と資産運用。金融商品を販売しない独立系FPとして中立公正な情報発信を心がけている。2児の母。著書に『結局、いくら貯めればいいの?』(同文舘出版)、『保険リテラシーが身につく本』(税務経理協会)、『30年後も安心に暮らせる!お金の鉄則』(マガジンハウス)。
独立系ファイナンシャルプランナー Office Benefit
「『投資』は、普通の人にこそ必要」と言う、ファイナンシャルプランナーの岩城みずほさん。お金が十分にある人は、むしろお金を増やす必要なんてありません。「投資」は、普通の人にこそ必要なのです。毎月少しずつコツコツと、普通のママでも1年間かけて投資ができるようになるためのコラムです。
2015年7月からスタートした「普通のママでもできる投資」もいよいよ最終回となりました。その間、マーケットは乱高下し、「マイナス金利政策導入」という初めての体験もありましたね。 日銀のマイナス金利導入決定で、預貯金の金利は低下。長期金利もマイナスになった影響で、住宅ローン金利が下がったり、「一時払い終身」など一部の貯蓄型の生命保険が販売停止になったり、保険料が上がったりしました。 そんな中、老後資金など長い時間をかけてゆっくりお金を増やすためには、株式や投資信託など「リスク資産」への投資をするべきだという記事がよく目につくようになりました。 ■「貯蓄から投資へ」のスローガンは正しかったのか 「サラリーマン1万人アンケート」など、退職・投資教育に関する研究やレポートで情報発信し、投資啓蒙活動を行っているフィデリティ退職・投資教育研究所の所長 野尻哲史さんが行った調査結果が非常に興味深いものでしたのでご紹介したいと思います。 ・ フィデリティ リタイアメント情報サイト 「貯蓄から投資へ」の動きを加速すべきとの議論は90年代から進められた。しかし、日本の個人金融資産構成比は全く変わってはいない。 預貯金の構成比は、米国14.7%に対して、日本51.9%。 株式と投資信託を合わせた比率は、日本が16.1%に対し、米国は31.4%。 さらに、日本の個人金融資産はほとんど増えていない。米英が過去27年間に5~6倍になっているのに対し、日本はわずか2倍。株式・投信の資産残高は、1.26倍にとどまる。ちなみに米国は11.5倍、英国は4.5倍の伸び 出典:『日米英の個人金融資産の動きとその背景〜弱みをチャンスに DCとNISAの拡大が鍵』 フィデリティ退職・投資教育研究所の所長 野尻哲史氏より つまり、日本は、ここ20年ほど、貯蓄も投資もほとんど増えていないという結果でした。 野尻さんは、「『貯蓄から投資へ』というのは、貯蓄を取り崩して投資へ回すと理解されて、『貯蓄をリスクにさらす』という印象が強かったのでは。しかし、本来はそうではなく、貯蓄もしながら投資もする。両方を増やしていくべき。老後難民にならないため、今の収入の一部を将来のための投資に振り向けることが大切なのです」とおっしゃっていました。 「『貯蓄から投資へ』というのは手段であり、目的は、個人資産を殖やすこと。 そのためには、DC(確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)を利用する」ということです。 今後、両制度の一層の拡充を期待したいものです。 高齢化の進展で老後資金の重要性はますます大きくなります。老後資産をふやすために、超低金利の預貯金ばかりでは難しいでしょう。 ぜひ、みなさんも、「普通のママでもできる投資」を参考に、株式や投資信託などのリスク資産をDCやNISA口座を活用して、個人資産を殖やしていきましょう。 ■無リスク資産はどうすればいい? 超低金利下でも、一定の利益を確保することができるのは、「個人向け国債」でしょう。 Vol.10 で、個人が買える国債をご紹介しましたが、現在、「新窓販国債」はマイナス金利で販売を停止しています。「個人向け国債」は買うことができます。 固定3年、固定5年、変動10年がありますが、おすすめは「個人向け国債10年変動金利型」です。最低金利が0.05%(税引後0.0398425%)まで低下しましたが、銀行預金の定期金利の0.01%と比べると高く、また変動金利なので、今後、国債の利回りが上がれば、連動して金利も上がります。金利は半年ごとに見直されます。 購入後1年経過すれば、2回分の利子相当額を支払えば解約できますが、今後、金利が高くなるようなら、ペナルティの2回分の金利も大きくなります。途中換金しなくてよいように、10年間使う予定のないお金で買いましょう。 逆に言えば、当面使う予定のないお金は、銀行預金にしておかないで、国債で運用したほうがよいということです。 ■普通のママでもできる投資まとめ 当面必要なお金(半年〜1年間の生活費)や4、5年以内に必要な教育費などは預貯金で持っておく どんな資産にいくら配分するかアセットアロケーションを決める 具体的に運用する商品を選ぶ DC、NISAを優先し、どこで運用するかを決める 詳しくは、Vol.15の「 資産運用をスタートするプロセスのおさらい 」をご覧ください。 運用をスタートしたら、年に1~2度、資産の状況を確認してください。自分の決めたポートフォリオから、配分が大きく変化しているようなら、「リバランス」を行います。積立金額を調整するなどして、調整していきましょう。配分比率を維持することが大切です。 皆さんが、このコラムをきっかけに、自分の未来のお金について考え、「なんとかなる」ではなく、「なんとかしよう」と一歩を踏み出してくださることを願っています。1年間、おつき合いくださり、本当にありがとございました。
2016年06月20日この連載で、「 投資初心者におすすめの金融商品 」として紹介してきた少額投資費課税制度(NISA)は、毎年元本120万円まで、株や投資信託に投資をして得た売却益や配当に税金がかからない=非課税の制度です。 では、非課税期間が終わった後は、どうすればよいのでしょう。 ■NISAの非課税期間終了した後にとる3つの方法 120万円をNISAで投資して、5年後140万円になった場合を見てみましょう。このときにとる方法は3つあります。 (1)140万円を換金する 20万円の利益に対して税金はかかりません。 (2)140万円のうち、120万円を新たな非課税投資枠に移管(ロールオーバー)し、残りは課税口座に移すか、換金する 非課税期間は5年間ですが、5年を過ぎて、また新たな非課税投資枠に移管すれば、そのまま投資が続けられます。 たとえば、2016年の非課税投資枠は、2020年に非課税期間が終了します。しかし、翌2021年に設けられる非課税投資枠に120万円まで移管することが可能です。 (3)140万円を課税口座へ移管する 非課税期間終了後、課税口座(特定・一般)へ移管することができます。 その時点での分配金や譲渡益等は非課税ですが、移管後は移管時の時価を基に税額が計算され、課税対象となります。 なお、移管後の損益は、課税口座(特定・一般)内での損益通算が可能になります。 たとえば、保有するAの一般口座で100万円の利益が出ていて、Bの一般口座で80万円の損が出ている場合、損益通算した利益20万円が課税対象です。 逆に損益通算後に損が出ている場合は、翌年以降3年間にわたって損を繰り越すこともできます。いずれも確定申告が必要です。 ■ジュニアNISAの場合は? 非課税期間終了後は、NISAと同じで3つの選択肢がありますが、2つ目に紹介した方法「120万円を新たな非課税投資枠に移管(ロールオーバー)し、残りは課税口座に移すか、換金する」については注意が必要です。 ジュニアNISA口座の開設者(=子ども)が、 20 歳になる年の1月1日を迎えた時点で、そのジュニアNISA口座を開設している証券会社に、 当人の成人NISA口座が自動的に開設されます。そして、ジュニアNISAで保有している上場株式や投資信託は、成人NISA口座に移管(ロールオーバー)されることになります(ただし、手続きが必要)。 また、ジュニアNISA口座の開設者が20 歳に達した後は、原則として本人が運用指図を行うというルールがあることもお忘れなく。 さて、2015年7月から連載を続けてきました「普通のママでもできる投資」ですが、次回で最終回になります。 次回は、マイナス金利導入下での運用をどう考えればよいのかについてお話しします。
2016年05月31日第20回 で、「積立投資」というものをご紹介しました。積立投資とは、 毎月、決まった日に、決まった金額が引き落とされて、決まった投資信託を買い付けていく投資スタイル です。 最初に「しくみ」さえつくっておけば、自動的に投資が続けられますので、大きなお金を用意しなくてもすぐに始められます。なかなか一歩を踏み出せないあなたも、スモールスタートであればできそうですね。 ■「積立投資」のメリットとは これまで何度か、「投資は分散が基本」ということをお話ししてきました。 「 卵は1つのカゴに盛るな 」ということわざを覚えていますか? 投資対象は分散しなさいということですね。 投資対象の分散には、投資先のほかに、投資する時期、つまり「時間」の分散もあります。一度に買わないで、毎月、一定額ずつ「積立投資」をしていくのです。これを長く続けることによって「複利の効果」が得られます。(参考: 第16回「営業マン任せはNG! 儲かる投資信託を選ぶためのポイント」 ) 複利と単利の差は、下記のように一目瞭然です。 たとえば、100万円を年利10%で運用すると、単利だと毎年10万円ずつ増える計算になりますが、複利だと… ご覧のように、複利は時間の経過とともに効果が大きくなるのです。 たとえば、月に3万円ずつ(年間36万円)を3%で20年間積立投資していくと、いくらになると思いますか? 計算上は、967万3,200円になります。もちろん、現実には3%ずつ確実に上がり続ける投資信託などなく、基準価額は上がったり下がったりしながら資産残高を増やしていきます。このような投資の方法を「ドルコスト平均法」と言います。 ●ドルコスト平均法 基準価額の変動に関係なく、一定の金額を定期的に積立投資していく手法です。「ドル」という名前がついていますが、外貨投資だけに当てはまるものではありません。 一定額を積み立てていくこの方法だと、価格が安いときには多めに買えて、価格が高いときには、買える数が少なくなります。これを長く続けることで、結果的に平均の購入コストを安くできるのです。 「安いときに買って、高く売る」というのが投資のセオリーですから、安い時期を当てられれば儲かります。しかし、私たちが安値を当てるのは無理ですよね。振り返って高値づかみだったということも少なくないでしょう。 そういう意味で、時間を分散するということは、リスクを減らせるということです。株価が乱高下しながら長期で上向いていく場合、積立投資は効果が得られやすいと言われます。 そして、ネット証券などの販売会社で運用する場合、「積立投資」という投資スタイルを選択しておけば、毎月自動で買付をしてくれるので、手間がかかりません。 まさにこのスタイルで運用するのが、前回お話しした「確定拠出年金制度(DC)」です。 DCは、原則60歳までお金を引き出せませんが、それは逆に言えば、老後のための資金としてゆっくり運用していくことができるということです。一方、NISAは、いつでも引き出すことができます。住宅ローンの頭金や子どもの大学の入学金など、必要な時期が決まっているお金を増やしていくとよいでしょう。 なお、DCとNISAの運用は、自分の資産全体の中で考えることが大切です。 DC口座の中で、NISA口座の中でそれぞれ分散する必要はありません。 ■NISAとDCを上手に運用するには、株や債券など分散して長期投資を DCやNISAでは、株や投資信託などのリスク資産を運用するとよいでしょう。 世界の株価は、長期では経済拡大に連動して上昇してきました。資本主義が続く限り、人間の経済活動が続く限り、これからも経済は拡大していくでしょう。ですから、目先の株価の上下を気にすることなく、ゆっくり資産を殖やしていきましょう。 毎月数万円を運用する場合、まず、 DCに加入できる人は、その枠をいっぱい使って外国株式のインデックスファンドを買う 残りをNISAで日本株式のインデックスファンドを買う というようにします。まだ余裕がある場合は、通常の課税口座で運用しましょう。これが、DCとNISAの上手な運用方法と言えます。 次回は、NISAの非課税期間が終ったらどうするかについてお話します。
2016年05月23日■公的年金を補完する制度=確定拠出年金制度 皆さんは、国の年金制度に加入されていますよね? 現在の日本の公的年金制度は、自営業者は国民年金、会社員は厚生年金、公務員は共済年金です。 現在の年金制度の概要については、 厚生労働省のWebサイト に詳しい説明がありますので、そちらをご覧ください。 そうした公的年金制度を補完する制度が、今回のテーマである「確定拠出年金制度(DC)」です。れっきとした国の制度で、個人型と企業型があります。 掛金を預貯金や投資信託などで運用し、運用次第で老後の年金額が変わってきます。 DCに加入すれば、厚生年金(2階建て)の会社員は3階建てとなり、国民年金(1階建て)の自営業者は2階建ての年金制度を持つことができます。 企業型DCは、企業が掛け金を拠出し、個人型DCは、加入者自らが掛け金を出します。 以前は加入対象が、国民年金に入っている自営業者と、厚生年金に加入する会社員のうち、勤め先に企業年金などがない人でしたが、先頃の衆議院本会議で改正確定拠出年金法の一部を改定する法案が成立しました。これにより2016年1月から、個人型DCの対象が公務員や主婦にも広がったほか、すでに企業年金に入っている会社員も併用して使えるようになりました。ほぼすべての国民が対象となっています。(※1) ・(参考) 確定拠出年金法等の一部を改正する法律案|厚生労働省(PDF) (※1)2016年5月24日の衆議院本会議決議を受け、記事の一部を訂正いたしました。(2016年5月25日11時37分) ■DC制度もNISAと同じく、運用利益が非課税でお得 DC制度も、これまで解説してきた NISA 同様、積立投資をするのに向いています。なぜなら、NISAもDC制度も運用益(配当や値上がり益)が非課税だからです。 通常、投資の運用益には、20%(復興特別所得税を加えると20.315%)の税金がかかります( 第17回 の冒頭でお話ししました)。 しかし、NISAもDC制度も、運用益は非課税で、運用期間中、課税されません。つまり、その分、お得なのです。 さらに、DC制度には、税制面でも大きなメリットがあります。 掛け金は全額、所得控除されるのです。さらに住民税の負担減にもなります。このメリットはNISAにはありません。DCのほうが、より税制が優遇されている制度なのです。 ■DC制度でどれくらいの節税になるのか? 現在、個人型DCは、自営業者など第1号被保険者は、月6万8,000円まで、会社員で個人型DCに加入する場合は、月2万3,000円まで拠出することができます。 ・自営業の場合 たとえば、社長のAさんが、毎月6万8,000円(年間81万6,000円)を30年間拠出した場合を見てみましょう。 自営業者のAさんは所得税率40%ですので、住民税10%と会わせると、30年間で1,224万円もの節税になります。 816,000円 × 50%(※1)= 408,000円(1年間の節税額) 408,000円 × 30年 = 12,240,000円の節税 (※1)所得税率40%と住民税率10%を加えた率 ・会社員の場合 次に、会社に企業年金制度のない会社員のBさんが、毎月2万3,000円(年間27万6,000円)を拠出した場合を見てみましょう。 会社員のBさんの所得税率は20%ですので、住民税10%と会わせると、30年間で248万4,000円もの節税になります。 276,000円 × 30% = 82,800円(1年間の節税額) 82,800円 × 30年 = 2,484,000円の節税 大きな節税効果がありますね。 また、DCには受け取り時も、公的年金等控除や退職所得控除の優遇があります。 税制優遇を受けられる口座を活用することで、お金の増え方が違ってきますので、ぜひ、NISAやDCを最優先して使いましょう。 また、今後、これまで口座をもてなかった主婦(第3号被保険者)や公務員なども平成29年1月1日より加入できるようになります。 DCは、原則60歳までお金を引き出せません。引き出せないからこそ、現役世代が資産形成をするためにぜひ利用したい制度なのです。 いつでも引き出しのできる NISAと上手に使い分けをするといいですね。 次回は、これら非課税口座の上手な使い方についてお話しします。
2016年05月02日第18回 、 19回 とNISA制度についてお話ししました。 では、この制度をどのように活用していけばよいのでしょう。 ■NISA 口座を開設する まず、NISA専用口座を開設しなければなりません。 金融機関によって扱う商品が違うので、「どこの金融機関で口座を開くか」が重要です。 銀行では上場株式や上場投資信託(ETF)は買えませんので、証券会社がおすすめです。 SBI証券、楽天証券、マネックス証券などのネット証券なら、手数料が安く、ラインアップが豊富です。 開設するには、 ・基準日(平成25年1月1日)時点の住所、氏名および生年月日の記載のある住民票等 ・マイナンバーがわかる書類(本人確認書が必要な場合もある) が必要です。NISAは、1人1口座と決まっているので住民票が必要なのですが、住民票の取得代行をしてくれる金融機関もあります。 開設を希望する金融機関のWebサイトから申込書類の請求ができます。 ■いよいよ運用をスタート! ここで一旦、 第15回 の「運用をスタートするおさらい」を読んでください。 証券会社が決まったら、いよいよ何を選ぶかという4番目の段階です。 皆さんにおすすめしたいのは、以前ご紹介したインデックスファンドや、より手数料の安い上場型投資信託(ETF)です。 さて、運用する場所(NISA口座)も、運用する商品も決まりました。いつから始めますか? もう少し勉強してからと思う人も多いのですが、まずはスタートしてみるのがおすすめです。とにかく1万円でも買ってみるとよいでしょう。実際にスタートしてみると、「なんだ、そういうことか!」と、わかることがたくさんあります。 たとえば、毎月1万円ずつ、世界の株式に分散投資をするインデックスファンドを買うことにしましょうか。あるいは、日本の上場株式に分散投資をするインデックスファンドでもよいでしょう。 少しずつ買い増していく中で、ゆっくり自分のポートフォリオ(編集部注:分散投資の際の、資産の組み合わせのこと)を整えていけばよいのです。 まとまったお金がある人は、自分の決めたアセットアロケーション(資産配分)にしたがって、投資信託などのリスク商品と個人向けの変動国債などに分散して一度に投資するのも、もちろん結構です。 ■毎月「積立投資」をする 皆さんは、これまでに、お給料から毎月決まった金額を自動的に定期預金で積み立てたり、財形貯蓄をしたりしたことがありますか? こうした自動積立型の貯蓄は、はじめに手続きさえしておけば、あとは、自動的に口座から引き去れてお金が貯まっていきますよね。 「積立投資」も同じです。毎月、決まった日に、決まった金額が引き落とされて、決まった投資信託を買い付けてくれるのです。 最初に「しくみ」さえつくっておけば、自動的に投資が続けられます。これなら、大きなお金を用意しなくてもすぐに始められますね。なかなか一歩を踏み出せない人にとって、スタートのハードルを下げる方法だと思います。 この「積立投資」には、いくつかメリットがあります。積立投資の詳しい話をする前に、もうひとつ、「積立投資」をするのによい場所がありますので、先にこちらのお話をしましょう。 ■とってもお得な個人型確定年金制度 「個人型確定年金制度」という言葉を聞いたことがありますか? 実は大変、税制優遇された制度なのです。NISAは、日本に住んでいる人ならだれでも使える制度ですが、「個人型確定拠出年金制度」は、今のところ、使える人と使えない人がいます。しかし、今後、使える人が増えることが見込まれていますので、ぜひとも知っておいてほしい制度です。 次回は、この「個人型確定拠出年金制度」についてお話しします。
2016年04月18日前回 のNISAに引き続き、今回はジュニアNISAについてお話しします。 ジュニアNISAは、子どもの教育費など将来に向けた資産運用のための制度です。投資可能期間は、2016年4月から2023年12月末までです。 ■NISAとジュニアNISAの違いは? NISAの非課税枠は毎年120万円が上限でしたが、ジュニアNISAは、子ども1人につき毎年80万円です。5年間の非課税というのは同じです。累計で最大400万円までの非課税投資をすることができます。大学進学のための学費準備として利用するとよいでしょう。 また、NISAはいつでも解約、払い出しをすることができますが、ジュニアNISAでは注意が必要です。 ジュニアNISAは、売却はいつでも可能なのですが、お金は、子どもが3月31日時点で18歳となる年の前年末までは引き出すことはできません。 5年間の非課税期間の後は、払い出しをすることも、また、継続して非課税対象として、80万円分を上限に翌年の非課税枠へ繰り越すことができます。 ■ジュニアNISAの4つのポイント ・その1:0歳〜19歳が対象 ジュニアNISAの対象は、 ●日本に住んでいること ●ジュニアNISA口座を開設する年の1月1日時点で19歳以下であること 上記2つの条件を満たす子どもです。 ジュニアNISAは、口座の名義は子どもで、親が運用・管理をします。 1人1口座で、途中での金融機関の変更はできません。 ・その2:非課税投資枠の上限は年間80万円まで ジュニアNISAで株式投資信託や上場株式を購入できる限度額は年間80万円です。分配金や配当金、値上がり益が非課税になります。 ・その3:非課税期間は5年間 ジュニアNISAの非課税期間は、最長5年間。非課税期間が終了した後、20歳までは非課税のまま、年間80万円までは継続保有することができます。 売却はいつでも可能です(お金の引き出しは期限までできません)。売却した場合、非課税枠の再利用はできません。未利用の非課税枠を翌年以降へ繰り越すこともできません。これは、 前回のNISAの場合のポイント 「その2」「その3」と同じです。 ジュニアNISA口座で発生した損失は、ほかの口座と損益通算したり、繰り越し控除することはできません。これも前回の「その4」と同じです。 ・その4 :18歳まで原則出金不可 原則として、18歳までは払い出し(出金)ができません。払い出したときは、過去の利益分に対しても課税されます。 ジュニアNISAは、子どもの将来に向けた資産運用のための制度なので、原則、子どもが、3月31日において18歳である年の前年の12月末までは、災害等のやむを得ない場合を除いて出金することはできません。 もし、期間中に出金するということになると、過去のすべての利益に課税されますし、ジュニアNISA口座を廃止して全額を出金することになります。 次回は、どのように利用をしていけばいいかについてお話します。
2016年04月04日2014年から導入された個人向けの少額投資非課税制度、通称:NISA(ニーサ)をご存じでしょうか。テレビコマーシャルなども盛んに行われていたので、名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか? NISA最大の特徴は、120万円までの利益が非課税なこと NISAは、今年(2016年)から年120万円を上限に(2015年までは年100万円でしたが、上限額が拡大されました)、累計600万円まで、上場株式や株式投資信託などの配当金や分配金、譲渡益が、最長5年間、非課税になるという制度です。 現在のところ、この制度は平成35年まで10年間存続することになっています。 NISAは、20歳以上で、日本に住んでいる人ならだれでも利用することができます。 今年からは、0歳~19歳までが利用できるジュニアNISA制度もスタートしました。ジュニアNISAについては次回お話しします。 前回 お話ししましたが、通常、金融商品の運用益には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で運用すれば非課税になります。ただし、NISA口座で新たに購入した運用商品が対象です。既に持っている運用商品は、対象にはなりません。 NISA口座は、銀行や証券会社で開設することができますが、金融機関によって投資できる商品が異なります。 NISA専用口座を開いて、ラインアップの中から自分で投資商品を選択するのですが、銀行には、上場株式やETF(※)という上場型投資信託がありませんので、開設するなら証券会社の方がおススメです。 (※)上場投資信託。「Exchange Traded Funds」の頭文字をとり、ETFと呼ばれている。東証第1部の全銘柄の動きを反映した株価指数=TOPIXに値動きが連動しているため、ETFを保有することで、TOPIX全体に投資を行っているのとほぼ同じ効果が得られる金融商品。 NISAで覚えておきたい4つの注意点 注意点は、4つあります。 ・その1:1人1口座 開設できるのは1人につき1口座で、一度開設すると、その年度は金融機関を変えることはできません。1年ごとに金融機関を変えることができます。 ・その2:非課税枠の未使用分を翌年に繰り越すことはできない 非課税枠の120万円の未使用分を翌年に繰り越すことはできません。たとえば、120万円のうち、今年100万円しか使わなかったとしても、残りの20万円を来年に繰り越して、来年の非課税枠を140万円にすることはできません。 ・その3:売却した分の非課税枠は再利用できない たとえば、NISA口座で60万円分の株式投資信託を運用していたとします。年の途中で、30万円分を売却したとしても、その後に利用できるのは、残りの60万円です。売却分の30万円の枠は再利用することはできません。 ・その4:損が出ても損益通算できない 通常、損が出ると、利益の出ているほかの口座と損益通算や損失の繰越控除ができますが、NISA口座ではできません。 政府広報オンラインにもNISAのことが詳しく説明されています。 ・ 新しい投資優遇制度「NISA(ニーサ)」がスタート!将来に向けた資産形成を考えるきっかけに:政府広報オンライン 次回は、ジュニアNISAについてお話しします。
2016年03月21日前回 、「分配金」についてお話ししました。 「分配金」には、「普通分配金」と「元本払戻金」(かつては「特別分配金」と言われていました)の2種類がありましたね。 「普通分配金」は、運用収益から分配されますが、「元本払戻金」は、自分が投資した元本の一部が払い戻されたものです。 ですから、「普通分配金」には、運用益の20.315%が源泉徴収されますが、「元本払戻金」は、もうけではないので、課税されません。 分配金の受け取り方は2タイプ、どちらがお得? 投資信託を購入した場合、「分配金」の受け取り方には一般的に、 ・そのまま現金で受け取る(分配コース) ・支払われた分配金で同じ投資信託を追加して買い付けて行く(再投資コース) という2つの方法があって、選択することができます。 税金は、どちらの方法でも同じようにかかります(ただし、「NISA口座」は、一定額までは非課税です。NISA口座についてはまた改めてお話しますね)。 では、どちらの方法がより、お金を増やすのに向いているのでしょうか。 皆さんは、「複利」という言葉を聞いたことがありますか? 複利は、よく「雪玉」にたとえられます。小さい雪玉は、ひと転がししてもあまり雪はつきません。でも、雪球が大きくなると、ひと転がししたとき、たくさんの雪がつきます。転がしていくにつれ、雪玉はますます大きくなっていきますね? 複利は、利息がつくと、その利息も含めた元利合計(元本と利息を合わせたもの)を新たな元本として利息がつくのです。利息が利息を生むというわけです。 たとえば、毎月、3万円ずつ(年間36万円)、年利3%(!)の利子のつく定期預金というものがもしあると仮定して、それに20年間預け入れたらどうなると思いますか? 複利で増えて、なんと967万3,200円になります!(ただし、計算方法によって多少違いがでてきます) 複利は、時間の経過とともに効果が大きくなるのです。 ちなみに、「借金が雪だるま式にふくらむ」という言い方をするのも、複利でどんどん利息が増えてしまうということです。 お金を増やしたいなら、分配金は「再投資コース」を選択するのが正解 さて、冒頭で紹介した2タイプの分配金の受け取り方のうち、「分配金再投資コース」にした場合を考えてみましょう。 仮に分配金が100円だとすれば、ここからまず税金20円が差し引かれて、残りの80円で同じファンドを買い付けていくことになります。 たとえば、100万円を期待リターン4%で10年間運用した場合、再投資をして複利で運用すれば、148万244円になります。 しかし、分配金を受け取ると(分配コース)、単利で運用することになりますので、増えるのは、元本100万円に対し、4%×10年間=40万円です。10年後は140万円です。8万244円の差がつくのです! 運用する期間が長くなれば、複利効果で、差はさらに大きく拡がります。 つまり、お金を増やすには、増えた分を分配金で受け取らず、再投資すること、すなわち、複利で長く運用することが大切なのです。 このコラムを読んでくださっている読者のみなさんには、まだまだ長い時間があります。ぜひ、「毎月分配型」ではなく、「年1回決算型」など決算回数の少ないファンドを選び、ゆっくりお金を育てていきましょう。 (岩城みずほ)
2016年03月07日運用を始めようとする人から、よく受ける質問があります。それは、「今、人気があるのはどういう商品ですか?」というものです。 この質問を言い換えると、「みんなが買っているものを私も買いたい」ということになるでしょうか。「今、みんなが買っている人気のある商品」や、「今、値上がりしている(成績のよい)商品」を、選べばきっと安心だ、と考えているようです。 しかし、残念ながら、そういう人気の商品は、すでに過熱状態で、基準価額(投資信託の値段)が、さらに上がる余地がないことも多いのです。 営業マン任せはいけません 「売れていますよ」「人気がありますよ」というのは、セールス側から言えば、とても都合のいいものです。 買い手側も、「それならば私も」という気持ちになりやすいものですが、ここで買ってはいけません。あなたが買うのは、自分の運用目的に合った商品であるべきです。 前回の記事 でお伝えしたように、購入までのステップを踏んで商品選びをしましょう。 勧められたものを買うのではなく、あくまで自分で選択することが大切です。 儲かる投資信託を買いたい? もう1つ、ご相談の中で多いのは、「分配金」についてです。 投資信託を買うと、期待できる収益は、「キャピタルゲイン」と「分配金」があります。 「キャピタルゲイン」とは、基準価額が値上がりすることによって得られる利益です。詳しくは、 こちら でおさらいしてください。 「分配金」というのは、株式で言うところの配当金に相当するものです。 分配金が支払われる頻度は、商品によっていろいろです。年に1~2回のものもあれば、毎月支払われるものもあります。毎月支払われるものを、「毎月分配型ファンド」といいます。 ご質問で多いのは、「分配金が毎月もらえる毎月分配型の投資信託のほうが得ですよね?」というものです。 たしかに、毎月、支払われるもののほうがお得に思えるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか。まずは、分配金のしくみについて知りましょう。 分配金のしくみ たとえば、毎年12月1日が決算日(分配金が支払われる日)のファンドを、基準価額1万円で購入したとしましょう。 基準価額は、その後、上がったり下がったりしながら、11月1日時点で、1万2,000円になりました。もし、ここで解約したら、 1万2,000円−1万円=2,000円 2,000円のキャピタルゲインが得られます。 あなたは、解約しないで持ち続け、12月1日の決算日を迎えました。基準価額はさらに上がって、1万2,500円になっていました。このとき、投資信託会社が、「2,000円の分配金を出しましょう」ということになると、2,000円の分配金がもらえることになります。 収益分配を行ったこの投資信託の基準価額は、 1万2,500円−2,000円=1万500円 となります。(1のケース) では逆に、12月1日の決算日の基準価額が下がって、1万500円になっていたとしましょう。2,000円の収益分配を行えば、この投資信託の基準価額は、 1万500円−2,000円=9,500円 となります。(2のケース) このように、分配金は、運用によって得られた収益(組み入れられた株式や債権などの値上がり益や配当金など)の一部が、支払われるものなのです。 1のケースの場合、2,500円の運用益の中から、その一部の2,000円が支払われました。これを「普通分配金」といいます。 一方、2のケースの場合は、運用益は500円なのに、それ以上の2,000円を支払いました。1,500円は自分が投資した元本の一部から支払われたのですね。これは、「元本払戻金」といいます。かつては「特別分配金」と言われていましたが、いかにもお得なイメージがあるので(実際にはただの元本の払い戻しですね)、改められました。 しかし、このしくみを知らない人が多く、毎月分配金型の投資信託は非常に人気があります。 「毎月、分配金が入るからお得ですよ」などと勧められて購入し、うきうきしながら毎月、分配金を受け取っていたのですが、解約するとき、元金がやせ細っていることに初めて気づくというわけです。 老後資金を作っていくなど、長期的な運用の結果に大きな影響のある「分配金」について、次回、さらに学んでいきましょう。 (岩城みずほ)
2016年02月22日前回 、「長期で保有し、老後資金などのためにゆっくりお金を増やしていきたい場合は、やはりコストの安いインデックスファンドを選ぶのがいいでしょう」とお伝えしました。コストについては、 第13回 でお話ししています。 信託報酬の安いものを選ぶ 投資信託を選ぶ際は、同じような種類の投資信託のコストを比較することが大切です。会社によって信託報酬はさまざまなのです。 今、インデックスファンドの低コスト化が進んでいます。 たとえば、日経平均株価をベンチマークとするインデックスファンドで安いものは、以下のようになります。 ・ニッセイ・アセットマネジメント/ニッセイ日経225インデックスファンド 信託報酬=年率0.25%(税抜) ・三井住友トラスト・アセットマネジメント/日経225 インデックスe 信託報酬=年率0.19%(税抜) ・DIAMアセットマネジメント/たわらノーロード日経225 信託報酬=年率0.195%(税抜) (いずれも2016年1月現在) ここには、信託報酬の安いものを挙げましたが、これらと同じタイプのものでも、商品によって信託報酬は違います。「少々は気にしない!」と思うかもしれませんが、長期ではこれが大きな差になってくるのです。 ちなみに、アクティブファンドの平均信託報酬は年率1.5%くらいのものがたくさんあります。 販売手数料がかからないものを また、ファンドを購入するときは、購入時に一度だけかかる販売手数料は、同じ商品でも販売窓口によって金額が異なります。販売手数料がかからない(ノー・ロードになる)ネット証券などで買うことも大切です。 資産運用をスタートするプロセスのおさらい ではここで、これまでのおさらいをしておきます。 <資産運用をスタートするプロセス> 1.自分の資産の状況を確認、把握し、投資の目標を明確化する 住宅ローンなどの借入金がいくらあるか。預貯金はどのくらいあるかを確認し、毎月、いくら運用に回せるか考えます。子どもの教育費を貯めていく、老後の資金を作っていくなど、投資目標を明確にしましょう。投資環境を把握することも大切です。記事はこちらをご参考にしてください。 ・ 支出にはくせがある? 自分の支出のくせを知ろう(普通のママでもできる投資 Vol.4) ・ 貯まる家計にするための3つのステップ(普通のママでもできる投資 Vol.5) 2.アセットアロケーションを考える 投資は、分散が基本です。「卵は一つのカゴに盛るな」という格言を思い出していただけましたか? 何を買うかの前に、安定資産である債券とリスク性資産である株式などをどのように組み合わせればよいのか、配分比率を考えましょう。 ・ 安定した資産運用のための重要ポイント=「資産配分」(普通のママでもできる投資 Vol.11) 3.どこで運用するか考える 長期で運用するほど、コストの差は大きく影響してきます。より安い商品をネット証券で買うのがおススメです。使いやすい会社を探してみましょう。 コストについてのおさらいはこちら。 ・ 投資信託のしくみを知ろう(普通のママでもできる投資 Vol.13) 4.投資対象を選択する 具体的に商品を選択する段階です。今日の記事やこちらをご参考にしてみてください。 ・ 購入の前に知っておきたい、投資信託のインデックスファンドとアクティブファンドとは(普通のママでもできる投資 Vol.14) そして、その後は、 5.買付方法を決める 6.モニタリングとリバランス というステップになります。 こちらについては順次お話ししていきますので、楽しみにしていてくださいね。 次回は、どんなファンドを選べばいいのか、もう少し考えてみましょう。 (岩城みずほ)
2016年02月08日日本で購入できる投資信託は約5,800本(2015年10月末時点)もあるそうです。莫大な数のファンドの中から、どうやって選べばいいのか、困ってしまいますね。でも大丈夫。選ぶ際のポイントをお話ししましょう。 運用手法で分けると2つに分類できる ファンドマネジャーという投資信託の運用担当者がどのように運用しているのか、その運用スタイルから眺めると、この莫大な数のファンドも大きく2つに分類することができます。 (もちろん、ファンドをどのように運用していくのか、その運用方針を決めるのは、ファンドマネジャーだけの権限ではなく、経済環境の分析や企業のリサーチなどで情報を得て、運用会議を経て決められます。) 投資信託の運用スタイルは、 アクティブ運用とインデックス運用 (パッシブ運用ともいいます)に分けることができます。 アクティブ運用とは ざっくり言うと、アクティブ運用というのは、市場よりも高いリスクをとって、市場以上のリターンをあげることを目的にするものです。 投資信託の運用には、指標(ベンチマーク)が設けられます。たとえば、日本株式を組み入れたファンドなら、「日経平均株価」や「TOPIX(東証株価指数)」などの指標(インデックス)がベンチマークとなります。アクティブファンドというのは、一般的にはこのベンチマークを上回るリターンを目指して運用するものです。ベンチマークを平均点と考えるなら、平均点以上の成績を目指すものなのですね。そういう意味では、運用者の手腕に託されているというわけです。 インデックス運用とは 一方、インデックス運用というのは、市場の動きと同じような動きでよいと考える運用です。市場が良い時は同じように上昇し、悪ければベンチマークと同じくらいのリターンで良いとするものです。インデックス運用は、市場並みのリスクをとって市場並みのリターンをなるべく安いコストで実現しようという考え方です。 インデックスかアクティブか インデックスがよいか、アクティブがよいのかについては、よく議論されるポイントです。それぞれの運用スタイルを知って、市場平均を上回る運用を目指すアクティブファンドのほうがいい!と思った人も多いかもしれません。 しかし、ちゃんと目標を上回った実績を出せているかと言うと、なかなかそううまくはいかないようです。過去の実績を見ると、アクティブファンドの平均パフォーマンスは、インデックスファンドのそれを下回っているという現実もなるのです。なぜでしょう。 それは、アクティブファンドには大きなコストがかかるためです。コスト以上の運用成績を上げればいいじゃないと思うかもしれませんが、毎年毎年長く勝ち続けるのは至難の業なのでしょう。 中には、よい成績を上げているアクティブファンドもありますので、結果的に、お金を十分増やせたということももちろんあります。 また、インデックスファンドの中にもベンチマークと乖離(かいり)してしまうものもありますので、どちらが良い、悪いということではないのです。 大切なのは、 それぞれの特性を知り、きちんと使い分けること です。 長期で保有し、老後資金などのためにゆっくりお金を増やしていきたい場合は、やはり、コストの安いインデックスファンドを選ぶのがいいでしょう。その上で、余裕があれば、運用方針やコストなど、自分で納得した上で、アクティブファンドを買ってみるとよいでしょう。 次回は、どんなインデックスファンドを選べばいいのかをお話します。 (岩城みずほ)
2016年01月25日投資に回せるお金が少額の場合、投資信託を利用するのがいいでしょう。投資信託とは、簡単に言うと、たくさんの個人投資家(受益者)から集めたお金をまとまった資金にして、ファンドマネジャーと言う専門の人が運用するものです。今回は投資信託のしくみを、もう少し詳しく解説していきましょう。 前回 、「投資信託というのは、大きな袋の中に、たくさんの会社の株式が入っているイメージです」とお話ししました。ファンドマネジャーは、たくさんの銘柄に分散投資をして、利益が出たら、リターンを皆で分けます。 投資信託のメリット 専門家が運用してくれるので、「今、株価がどうなっているか」とか、「どこの会社が儲かりそうか」などを調べたりする必要がありません。少額から投資ができることも大きなメリットでしょう。 個別銘柄に投資をする場合、数十万円の資金が必要ですし、相当大きなお金がないと買えない銘柄もたくさんあります。でも、投資信託なら、1万円でさまざまな銘柄に分散投資をすることができるのです。そう、投資信託なら、分散投資が簡単にできるのですね。 ネット証券なら、500円から積立投資ができます。積立投資というのは、給料から毎月決まった日に決まった金額で、決まった投資信託をコツコツ買い増していくことです。積立預金(貯金)や財形などをしたことがある人も多いと思いますが、同じようなイメージです。 資金の安全性も確保されている もう1つ、投資信託には、個人投資家の資産が守られるという安全性が確保されているという特徴があります。 投資信託は、 ・証券会社や銀行など投資信託を販売する金融機関 ・ファンドを運用する投資信託会社(委託者) ・資金を保管、管理する信託銀行(受託者) に分かれています(中には、投資信託会社自身が販売する「直販」と呼ばれる会社もあります)。 役割が3つに分かれているので(分別管理といいます)、万一、銀行や証券会社が倒産したとしても、個人投資家の資産は安全に守られるのです。 投資信託の値段と手数料 投資信託の価格は、「基準価額(きじゅんかがく)」といいます。運用の状況は公開されていますし、今、いくらになっているのかもわかります。非上場の投資信託の場合、ファンドに組み入れられている株式などの時価総額を受益権口数で割って、一口当たりの価格=「基準価額」が算出されます。 購入、解約(換金)はいつでもできますが、当然ながら、元本や利回りは保証されていませんし、保有には手数料がかかります。手数料は、商品によって違うので、注意が必要です。 手数料は、販売手数料、信託報酬、信託報酬留保額の3つがあります。 販売手数料というのは、スポーツクラブの入会金のように、購入時に一度だけかかります。販売会社に支払うものです。商品や販売会社によって違っていて、とても高いものもあれば、無料(販売手数料のかからないもの。ノー・ロードといいます)のものもあります。 たとえば、3%の販売手数料のかかる投資信託を、購入手数料込みで100万円分の買った場合、販売手数料が差し引かれ、97万円からの運用スタートとなるわけですから、販売手数料のかからない、ノー・ロードの商品を選ぶほうがよいわけです。 信託報酬(運用管理費用)というのは、スポーツクラブの毎月の会費のようなもので、投資信託を保有している間、ずっとかかる手数料です。毎日、ファンドの信託財産から差し引かれます。たとえば、信託報酬が年1%だとすると、その365分の1ずつ差し引かれていきます。こちらも商品よって高いもの安いものまで、さまざまです。 ファンドによってかかる「信託財産留保額」は(かからないものもあります)、解約する人が支払うコストです。解約金を受け取るためには、ファンドに組み入れている株式などを一部売却しなければなりません。そのとき発生する手数料が、ファンドにとどまる人の負担にならないように支払うものです。 コストを下げることは最終的なリターンをあげる上で大切です。たとえば、3%のリターンを上げても、手数料が2%もかかっていたら、実質リターンは1%にしかなりません。 コストは小さいほうがいいのです。手数料の安い商品を選ぶことがリターンを上げるコツなのです。 次回は、コストに大きな差を生む、投資信託の運用方法についてお話しします。 (岩城みずほ)
2016年01月11日前回 、「長期的なパフォーマンスは、株式と債券にどのくらいずつ投資をするかによって決まるので、資産配分(アセットアロケーション)がとても重要です」とお話ししました。 投資において大切なのは資産配分と聞くと、「え? 何を買うかのほうが大切ではないの?」と思われるかもしれません。 でも、実はそうなんです。つまり、銀行や証券会社で、「この商品がおススメですよ」と言われても、即座に買ってはいけないということです。 もしかしたら、あなたの対応をしてくれた人は、あなたにとってよい商品を勧めてくれたかもしれませんが、おそらくは、その人(銀行や証券会社)がもっとも売りたいものを勧めていると考えるのが妥当ではないでしょうか? 商品を選ぶ前に、まず、株式にどのくらい、債券にどのくらい投資をするか決めます。商品を選ぶのはそれからです。 「トータルで上がればOK」と考えるのが投資の鉄則 さて、リスクとリターンについてもう少し考えてみましょう。 株式の比率が高いとリターンも高くなりますが、リスクも高くなります。損失を被った時のことを想定しておくことが大切なのです。 少し難しくなりますが、投資ではリスク、つまりリターンの変動幅を「標準偏差(ひょうじゅんへんさ)」というもので表します。 標準偏差というのは、「平均値から上下にどのくらいバラつきがあるか」を示すものです。 リターン5%の商品は、毎年必ずリターン5%が得られるわけではなく、−15%まで下がるかもしれないし、+25%くらい上がるかもしれないということです。上がったり下がったりしながら、平均で5%のリターンになるということです。 単に銘柄をバラして買うだけでは、真の分散投資にならない 投資初心者の皆さんは、株式市場や債券市場に近い動きをする金融商品を選ぶのがよいでしょう。株式や債券は市場価格に応じて上がったり下がったりします。それはつまり、すでに十分にリスクが分散されているものだということです。分散投資には、リターンを高めてリスクを下げる効果があります。 そして、分散投資において大切なのは「値動きの違うものを組み合わせて持つこと」です。これによりリスクを軽減できるというお話も 前回 しました。 では今回は「値動きの違う組み合わせ」について、株式を例にして具体的に考えてみましょう。 たとえば、平成27年4月から「 子ども・子育て支援新制度 」がスタートしました。これは、「量」と「質」の両面から子育てを社会全体で支えるというものです。 それならば、民間の保育やベビー・子ども用品など、いわゆる子育てに関連する会社が儲かりそう…と、あなたは思うかもしれません。こども服を作る会社、幼児教育の会社、民間保育の会社など、子どもに関係する会社の株をいくつか買いました。そう、あなたは「分散」して株式を買ったわけです。 さて、でもこれって、本当に「分散」になっているのでしょうか? 結論から言うと、これは十分に分散しているとは言えません。 よく分散の好例としてたとえられるのは、「傘を作る会社とサングラスを作る会社」の関係です。晴れの多い年はサングラスがよく売れ、雨の多い日は傘がよく売れます。このように、一方がプラスに動く時、もう一方がマイナスになるというように、値動きが反対の物を選ぶとよい、というわけです。つまり、特定の分野に偏らず、関連性の低い業種や銘柄を選ぶ。これが正しい「分散」であり、運用の基本なのです。 少額からでも効率よく分散投資ができる投資信託 でも、そんなにきれいに値動きが反対になるものってあるでしょうか? 見つけるのは、なかなか難しいですよね。じゃあ、いろんな会社の株をたくさんもてばいいじゃない!と、思いますが、現実問題、多くの株式を持つのも大変です。 そこで、おススメしたいのは、少額からでも効率よく分散投資ができる「投資信託」です。「ファンド」とも言います。 投資信託というのは、大きな袋の中にたくさんの会社の株式が入っているイメージです。もちろん、中身に何が入っているのかはわかります。そして、中身の種類もさまざまです。たとえば、世界中の株式に投資をするもの、日本の上場企業すべてに投資するもの、世界のさまざまな国の債券が入っているもの、あるいは、株式と債券の両方が入っているものなど、たくさんあります。 今、日本で購入できる投資信託は5,000本以上(2015年5月末時点)あるそうです。え? そんなにたくさんの中から、投資信託をどう選べばいいの? またもや難問ですね。でもご安心ください。このコラムを読んでいただければ、選び方もご理解いただけると思います。 次回は、投資信託のしくみについてお話します。 (岩城みずほ)
2015年12月22日Vol.9 、 vol.10 と債券についてお話ししました。 株式などに比べると、債券の収益性は高くないので、お金を増やしていくためには、債券だけ持っていたのでは、十分な成果があげられないかもしれません。 資産を増やしていくためには、株式など収益性の高い資産に投資をすることが必要です。でも、株式だけに投資をすると値動きが大きくなってしまうので、安定した資産運用をするのは難しくなります。なるべく安定した資産運用していくためには、株式や債券に「分散投資」をする必要があります。 卵は1つのカゴに盛るな 基本的に、株式と債券の値動きはこのようになります。 投資には、「卵は1つのカゴに盛るな(※)」という有名なことわざがありますが、値動きが反対のものを組み合わせると、リスク(振れ幅)を小さくすることができるのです。 (※)卵を1つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした時、全部の卵が割れてしまうかもしれないが、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、そのリスクが防げるということから転じて、投資の際も複数の商品に投資を行い、リスクを分散させたほうがよいということ。 分散投資先にはどんなものがある? 分散して投資をする先の資産クラスは、伝統的に、 (1)国内株式 (2)外国株式 (3)国内債券 (4)外国債券 に分けられます。 各資産クラスのリスクとリターンの関係は、次のようなイメージになります。 債券のブレ幅(リスク) < 株式のブレ幅(リスク) 国内資産のブレ幅(リスク) < 海外資産のブレ幅(リスク) 資産クラスの組み合わせは? では、安定資産である債券とリスク性資産である株式などをどのように組み合わせればよいのでしょうか。 たとえば、20~30代の若い人は、もし、リーマンショックのような損失が生じることがあったとしても、その損失をリカバリーできる時間がこの先、まだ十分あります。ですから、リスク性資産の比率をより高くして運用してもよいと考えられます。もちろん、年齢だけではなく、家族構成、働き方、ほかの資産をどのくらい持っているか、また、自分がどのくらいの損失にたえられるかなど、合わせて考える必要がありますが。 そして、一般的には、年齢が上がるにつれ、安定資産の比率を高めていくべきと考えます。運用できる時間が限られているためです。 さて、資産運用をしようと思った時、まずは銀行や証券会社に相談に行こうと思う人がいます。でも、それは正しい行動ではありません。商品を選ぶよりも先に、資産配分を決めることです。 国内の株式、外国の株式、国内外の債券など、資産ごとにどう資金を配分するか、何をどのくらいずつ保有するかを決めます。これをアセット・アロケーションといいます。これまでの研究結果では、この配分こそが長期的にはパフォーマンスにもっとも影響するといわれています。 自分は、株式をどのくらい、債券をどのくらいもつか、その比率を決めることが大切なのです。次回は、分散についてさらにお話しします。 (岩城みずほ)
2015年12月07日皆さん、一度は「個人向け国債」という名前を耳にしたことがあるのではないでしょうか。国債とは、国が発行する債券のこと。今回は、その国債についてのお話です。債券について詳しくは、 前回のコラム をご覧ください。 国債の種類 国債には、「個人向け国債」と、個人でも法人でも買える「新型窓口販売方式国債(新窓販国債)」があります。 「個人向け国債」は、「変動10」「固定5」「固定3」の3種類。「新窓販国債」は、「10年固定」「5年固定」「2年固定」の3種類です。 個人向け国債の特徴 「個人向け国債」の特徴は次のようになります。 (参考) 個人向け国債トップページ : 財務省 新窓販国債の特徴 「新窓販国債」の特徴は次のようになります。 (参考) 個人向け国債トップページ : 財務省 発行月は、いずれも毎月、年12回です。証券会社、銀行等の金融機関や郵便局で購入することができます。 「変動10年」以外のものは、購入時の金利が、満期時まで変わりません。 「変動10」は、満期までの10年の間、金利は、半年ごとに見直されます。金利決定日の10年物国債の利回りの66%が、その後半年間の金利になります。 どのタイプの国債を選べば得をするの? さて今後、世の中の金利が上昇するとしたら、あなたなら、どのタイプの国債を持っていると得だと思いますか? たとえば、あなたは今、1%の金利がつく「固定5」の個人向け国債を持っています。翌年、長期金利(10年物国債の金利)が上昇し、世の中のほかの金融商品の金利が上がったとします。仮に、定期預金の年利が2%になったとしましょう。 「固定5」は5年で満期になりますから、満期までは残り4年。その間、1%の金利を受け取ると、1%×4年間=4%です。 定期預金だと、2%×5年間=10%になりますね。 この場合、あなたは10%−4%=6%、差し引き6%の金利を得るチャンスを失ってしまうことになります。 では、あなたが「変動10」を持っていたらどうでしょう。半年ごとに見直される金利は、長期金利の66%なので(基準金利×0.66)、仮に、長期金利を2%とすれば、2%×0.66=1.32%です。3%になれば、3%×0.66=1.98%…という風に見直されます。 金利がこれから上昇していくという時期は、「変動10」のほうがよさそう ですね。 しかし、現在、金利は非常に低い状況です。 「個人向けの国債」の金利も、以下のように低くなっています。 募集期間は平成27年11月9日~30日/発行日:平成27年12月15日 (参考) 個人向け国債トップページ : 財務省(H27.11.6時点) 途中で換金するとなると、ペナリティとして、直前2回分の(各税引前利子相当額×0.79685)が差し引かれます。 もしも、インフレで高金利となったら、「変動10」の場合だと、2回分の金利も大きくなります。 国債を買う時は、途中換金しないで、期間中持つ ことを前提に買うほうがいいかもしれません。 しかし、逆に、 今後金利が下がるという局面であれば、金利の固定されている商品は得 だと言えます。 ちなみに、借金の場合は、これが逆になります。今、非常に金利の低い状況で、今後金利が上がるという時期に、固定金利でローンを組むと得ですよね。 これから、金利はゆるやかに上昇するだろうと見られています。今、変動金利タイプで住宅ローンを組んでいる人は、早めに固定金利に変えておいたほうがよいでしょう。 さて、株式と債券について理解していただけましたか? これから、資産運用をしていく時、株式や債券のなどの資産(アセット)に資金をどう配分していくかを決めなければなりません。資産ごとの配分を決めることを「アセット・アロケーション」といいます。 次回は、アセットクラスの配分をどう考えるかについて、お話しします。 (岩城みずほ)
2015年11月16日前回 のコラムでは、資産クラス(資産の種類や分類のこと)のうち、定期預金と株式についてお話ししてくれた、ファイナンシャルプランナーの岩城みずほさん。今回は、「債券」について説明してくれます。 突然ですが、あなたは、ベビー服を作る会社を創業することになりました。事業を営むのには、いろいろと必要なものがあります。設備、デザイナーや営業などの人的資産、原材料の仕入れなどなど。それらを準備するには資金が必要ですね。あなたは、そのお金をどうしますか? 資金を調達するための方法は3つあります。(1)銀行から借りる(2)債券を発行する(3)株式を買ってもらう です。 今回はこの中の「債券」についてお話しします。 債券ってなに? 債券というのは、借用証書のようなものです。あなたの会社の債券を買ってもいいと思う投資家が、社債を購入してくれます。あなたの会社は、投資家にお金を借りることになるわけです。 お金を借りているのですから、あなたは、借りている期間中、あらかじめ決められた金利を支払わなければなりません。そして、約束の期日(満期日とか返還日といいます)がきたら、借りたお金を返済します。 たとえば、投資家が10万円を貸して、毎年1%の金利を10年間受け取り、10年目に、元本の10万円を返してもらうというのは、こういうイメージになります。 債券の特徴は、もらえる額が決まっているところ 債券を発行するのは、企業だけではありません。国や地方公共団体も資金の調達を行うために発行しています。 どこが発行した債券でも、投資家は保有している期間中、決まった時期に利金の支払い受けることができます。 満期まで持てば額面金額(発行価格)は戻ってきますが、満期前でも、他の投資家に、市場で転売して現金化することができます。私たちが購入できる身近な債券は国が発行している「個人向け国債」です。 債券で気をつけるべきは、金利の変動 債券にも、株式と同じように価格の変動するリスクや、信用リスクがありますが、もうひとつ、債券価格は世の中の金利の動きに最も影響をうけるというリスクもあります。 たとえば、あなたが1%の金利のつく債券を持っているとしましょう。世の中の金利が上がり、2%の金利のつく債券が売り出されたらどうでしょう? あなたの持っている債券は魅力がなくなってしまうので、市場で売ろうと思っても、値段を下げなければ買ってくれません。逆に、世の中の金利が1%よりも下がると、あなたの持っている債券は魅力的に見えます。欲しい人が増えるので、価格は上がります。 満期前に売却する場合、世の中の金利が上がれば、債券の価格は下がり、金利が下がれば、価格は上がります。金利と価格はシーソーのような関係なのです。償還までの期間が長いほど、金利が変動する可能性が高いので、債券の値動きも大きくなります。 株式と債券の関係は? さて、数年後、あなたの会社は、ベビー服がよく売れて、昨年よりも大きな収益を上げました。売上から、従業員の給料などの事業にかかるコスト、約束した金利や税金を支払っても十分なもうけがでました。利益の中から株主に、去年よりも配当金を支払い、株主の方にとても喜んでもらえました。 しかし、もし仮に、強力なライバル会社の出現で、今年の売上が大幅に落ちてしまったとしたら? それでも、あなたは、銀行や社債を買ってくれた投資家に決まった金利を支払わなければなりません。株主の方には、「ごめんなさい、今年は配当を出せません」と、お詫びします。 投資家からすれば債券は、会社が儲かろうが赤字になろうが、定められた金利を受け取り、デフォルトしない限り、満期日が来れば、元金は返済されます。 一方、株式は、会社の業績によって、配当金がたくさんもらえたりもらえなかったり、株価が上がったり下がったりと、リターンの変動が大きいのです。 債券のリスク < 株式のリスク ということです。 株式と債券の値動きの関係は次のようになります。 次回は、個人向け国債についてお話しします。 (岩城みずほ)
2015年11月02日前回 に引き続き、リスクとリターンのお話です。 リスクというのは、私たちが日常の中でイメージする危険という意味ではなく、投資の世界では「結果が不確実であること」を意味します。 また、投資で得た収益をリターンといいます。リターンには、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があります。 福山ショックで説明する2つの収益 インカムゲイン(income gain)というのは、安定的・継続的に受け取ることのできる現金収入のことをいいます。定期預金の利子や株の配当金などがこれにあたります。家賃収入もインカムゲインです。 キャピタルゲイン(capital gain)は、保有する株式などの価格が値上がりした時の収益のことです。 先日、芸能界最後の大物独身男性と言われた福山雅治さんが結婚を発表しました。多くの女性ファンがショックを受けましたが、株式市場でも、「福山ショックが株式市場を襲った!」と話題になりました。 2015年9月29日の東京市場は、8ヵ月ぶりに、終値で1万7,000円台を割り込む全面安だったというものの、結婚による影響は少なからずあったのではとみられています。 福山さんが所属する芸能事務所アミューズの株は、2015年9月29日、前日比200円安の5,110円で取引が始まりましたが、売りが殺到して一時500円安の4,810円まで急落しました。 翌日の株価は、前日の終値4,870円より310円高の5,180円に値上がりしました。 もし、あなたが、4,810円で株を買い(実際には100株単位の売買になります)、5,180円で売ることができたとしたら、一株当たり370円のキャピタルゲインを得たことになります。安く購入して、高くなった時に売却して得られる値上がり益がキャピタルゲインです。 また、売らないで、アミューズ株を保有し続けた場合、株主のあなたは、アミューズ主催のコンサートやイベント、舞台・映画・試写会などへの招待、オリジナルグッズなどが贈られる株主優待を受けられます。そして、1株あたりいくらという配当金が支払われます。これはインカムゲインですね。 このように、株を保有すると、インカムゲインとキャピタルゲインを得ることができるわけです。もちろん株価が下がれば、キャピタルゲインはマイナスになることもあります。 この2種類のリターン(収益)を合わせたものを「トータルリターン」といいます。株式は、会社の収益によってインカムゲインもキャピタルゲインも変動します。 定期預金と比べると? 定期預金の金利はインカムゲインです。定期預金は市場で売買したりはしませんので、キャピタルゲインはありません。定期預金の金利は、あらかじめ決まっているので、トータルのリターンもそれと同じで決まっていると言えます。 このように、株式は、トータルリターンもリスクも高く、定期預金は低いことがわかります。 この関係が、よく言われる「ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターン」の原則です。 資産クラスには、このほかに「債券」というものがあります。固定金利型の債券などは、ミドルリターン・ミドルリスクに該当します。債券については、次回お話しします。 (岩城みずほ)
2015年10月19日「 どうして資産運用が必要なの? 」の続きです。「投資にはリスクがある」とよく耳にしますよね。その「リスク」という言葉に、あなたはどんな印象を持ちますか? 先日、イギリス人の友人と話をした時のことです。彼は、投資を「リスク」「ギャンブル」という言葉で説明しました。インベスト=リスク=ギャンブルと理解しているのですね。 昨年、日本でもスタートしたNISA(少額投資非課税制度)のお手本にしたのは英国のISA(Individual Savings Account 個人貯蓄口座)です。ISAの保有率は、国民の4割にのぼり、認知度はかなり高いと聞いていたので、イギリス人の彼でもそうなんだ、と私は少し驚きました。 以前のコラム でも書きましたが、「投資は怖い」というイメージを持っている人は、リスク=危険と思っているからなのですね。 リスクは「危険」ではない たしかに、日常生活の中で「リスク」という言葉は「危険」と同意語で使われます。たとえば、よく使われる例ですが、「100回乗って100回事故を起こすタクシーと、100回乗ったら1回だけ事故を起こすタクシーなら、どちらのほうが、リスクが高いと思いますか?」という質問。さて、皆さんはどちらだと思いますか? 恐らく、多くの人は、「100回乗って100回事故を起こすタクシーのほうがリスクが高い」と考えるでしょう。 しかし、投資の世界で言う「リスク」は、「結果が不確実であること」を意味します。 ですから、100回乗って100回事故を起こすタクシーは、100%確実に事故を起こすので、リスクはゼロ。100回乗ったら1回だけ事故を起こすタクシーは、いつその1回にあうかわからないので、不確実性が大きい、つまりリスクが高いということなのです。 リスクとは振れ幅の大きさのこと、具体的には、投資の結果、得られる収益(リターン)のばらつきを指します。 皆さんもニュースで、「今日の日経株価は、前日より145円12銭高い、1万8,171円60銭でした」というのを聞いたことがあるでしょう。株の値段は取り引き時間中、常に動いているんですね。上がったり下がったりしています。 投資をすれば、期待以上に収益(リターン)を得ることもあれば、予想に反して損をする可能性もあります。明日の株価がどうなるのかは誰にもわかりません。 リスクゼロの商品とリスクのある商品 金融商品には、定期預金のように、「約束した期間保有すれば、利息のつくもの」があります。これらを「元本確保型の商品」といいます。リスクゼロの商品です。 たとえば、商品Aが1年間で5%の利子のつく定期預金だとすると、100万円の元本は、1年後には105万円になります。リターンは5%です。 一方、Bという商品は、元本の100万円が、1年後に125万円になるかもしれないし、85万円になるかもしれません。元本を割る可能性があるというわけですね。この時、125万と85万円の平均は105万円と考えて、リターンは、Aと同じ5%になります。 どちらもリターンは同じなのですが、Bの方は、リスクのある、つまり元本確保型ではない商品です。 同じリターンなら、もちろんAのほうがいいですよね。しかし、残念ながら、今の定期預金の金利は、5%もありません。高いものでも0.1%くらいです。大変金利が低いので、100万円を200万円にするのに、約720年かかります。 お金を増やすスピードを速くするためには、ある程度リスクをとる必要があります。一般的に、リターンが大きい商品は、大きなリスクがあります。お金を2倍近く増やすこともできるかもしれないけれど、半額になることもあるということです。 リスクのある商品には、株式などがあります。株式は、長い期間持っていると、株式市場の平均的なリターンを結果的に得る確率は高まります。しかし、10年後に資産が2倍になっても、その翌年に半分になることもあります。もちろん、さらに上がる可能性もあります。将来どうなるかはわからないのです。 ですから、資産運用をスタートするには、まず、自分がどのくらいリスクをとれるのかを考えなければなりません。 リスクとリターンの話は、次回に続きます。 (岩城みずほ)
2015年10月05日「1年かけて資産運用ができるようになろう」という目的で始まったこのコラム、いよいよ資産運用のノウハウに突入します…が、今回は、その前に知っておくべき大切なことを解説します。 今回からはいよいよ資産運用のABCをお話ししていきます。 以前のコラム でお話しした「生活防衛資金」が半年~1年分貯まったら、あるいは、月々の余裕資金で、運用をスタートしましょう。 その前にまずは、「なぜ資産運用が必要なのか」についてお話しします。 資産運用が必要なのはどんな人? 皆さんの中には、「資産運用や投資は、お金持ちの人がするもの」と思っている人もいるかもしれません。でも、実はお金持ちの人には、資産運用や投資は必要ないのです。本当に必要なのは、私たち普通の生活者です。なぜでしょう? アベノミクスで、日銀が年率2%のインフレを目指しているのは、皆さんもご存じだと思います。 これまでは長くデフレーション(デフレ)が続いていました。デフレとは、モノの値段が下がっていくことです。インフレはその反対で、モノの値段が上がること。モノやサービスの全体的な価格が継続的に上昇することをインフレーションといいます。 たとえば、今まで2,000円で買えていた5kgのお米の値段が、1,800円になるのがデフレで、2,300円になるのがインフレです。インフレの時は、モノの値段が上がるのです。 今まで2,000円で買えていたお米は、インフレになると、これまでよりも余分にお金を支払わなければ買うことができなくなります。同じお金で買えるモノの量が少なくなる、つまり、インフレでは「お金の価値が下がる」ということです。 お金持ちの人にとっては、多少モノの値段が上がっても、十分なお金があるので、さほど困りません。けれど、私たち生活者にとっては、モノの値段が上がれば、生活は苦しくなります。 今の100万円が、将来も同じだけの価値があるとは限りません。だからこそ、そうなった時に備えて資産を運用し、お金を増やしておく必要があるのです。 お金にお金を稼いでもらい、購買力を維持する=資産運用 モノやサービスを買うことができる財力のこと「購買力」といいます。インフレの時は物価が上がるので、何もしなければお金の「購買力」は減ってしまいます。 自分のお金をゆっくり長い時間をかけて増やしていくこと=資産運用の目的は、購買力を維持することなのです。モノの値段が上がっても、その分、お金を増やすことができていればよいのです。 ちなみに、インフレリスクを心配しすぎて、極端な運用をする必要はありません。政府が年2%くらいの物価上昇を目指して経済政策をしていることを考えると、少なくともこれに負けないくらいの資産運用をしていれば、購買力は維持できそうです。 しかし、預貯金の金利がとても低い今、銀行の口座に入れておくだけでは、購買力を維持するのは難しそうです。 お金には、皆さんが働いて収入を得るのと同じように、「新たなお金を稼ぐことができる」という性質があります。 シンプルな運用方法で、お金にも働いてもらい、購買力が維持できるように資産運用をしましょう。 次回は、「運用の基本、金融商品のリスクとリターン」についてお話しします。
2015年09月21日皆さんは、 前回 から2週間、3つの仕分けと毎日のミニ決算の記録を続けられましたか? あともう半月、ぜひ頑張ってくださいね。 さて今回は、1ヵ月間続けたこの支出の記録を家計にどう生かしていくかをお話しします。 <ステップ1>1ヵ月間の3つの支出を点検 まず、1ヵ月間の「生活費の支出」「自己投資(家族の投資)の支出」「心を豊かにする支出」をそれぞれ合計してみてください。いかがでしょう? 「思ったよりも支出が多くてびっくり!」「心を豊かにする支出が多すぎ!」という人もいるかもしれませんね。私の講座では、「コンビニでの買い物が相当多くてがくぜんとした!」という人もいましたよ。あなたはどうでしょう? この1ヵ月、お金を使うたびに3つの仕分けを意識することで、自分の消費のくせがわかったと思います。その経験をこれから有効に活かしていきますが、その前に、大切なことがあります。 それは「クレジットで支払った金額は、必ず銀行口座に戻す。あるいは、次のお給料が入っても、その金額分は引き出さない」というルールを守ること。それだけは必ず守ってください。 クレジット決算は、未来のお金を使うこと。このルールさえ守れば、クレジットカードを使うのはOKです。ただし、利息のつく分割払いやリボ払いはやめましょう。 3つの支出の、収入に対する最適な割合というのは、人それぞれ。自由に決めていただいて結構です。 しかし、大切なのは「いかにして貯まる家計にするか」です。貯まる家計にするためには、3つの支出を小さくしなければという人も多いでしょう。自分にとって最適な支出額を見つけるための方法をお話ししますね。 <ステップ2>支出の予算立てをする 「先取り貯金」という言葉を聞いたことがありますか? 運良く余ったら貯金しようというのではなく、先に預貯金をして、残ったお金で生活をするという方法です。 先取り貯金の具体的な方法は、 (1)まず、1年で貯めたい金額(年間の目標預貯金額)を決めます。 (2)続いて、1年間の臨時支出の予算を立てます。 1年間の臨時支出というのは、帰省代、まとめて支払っている保険料、車検代の1年分などです。冠婚葬祭費や、洋服代、化粧品代も予算立てしておくとよいです。 とにかく、毎月は必要ないけれど、大きなお金が必要なものを、あらかじめ予算として差し引いて考えます。 すると、毎月自由に使えるお金は、 年間の手取り収入 − (年間貯蓄額 + 年間臨時支出の予算)÷ 12=毎月自由に使えるお金 となります。 <ステップ3>3つの支出の予算を立てる 毎月自由に使えるお金が決まったら、「生活費の支出」「自己投資(家族の投資)の支出」「心を豊かにする支出」をそれぞれいくらにするかを考えます。 それはつまり、毎月自由に使えるお金を3分割するわけですが、この時、前回チェックした、この1ヵ月の自分の消費行動を振り返り、シェイプできる分はしてしまいしょう。そして必ず、貯蓄の口座と生活費の口座は別にしてください。 あとは、予算内で生活をするくせをつけていけば、自然にお金は貯まっていきます。 買い物の前には、心の中で「3つの支出のどれに当てはまるか」を考えてくださいね。どれにも当てはまらないものは、ムダな支出です。ムダな支出を失くすことが、予算内で支出を抑えるコツです。 そして、 前回のコラム でお話した「生活防衛資金」が半年~1年分貯まったら、あるいは、月々の余裕資金で、運用を始めていきます。 次回からはいよいよ資産運用のABCをお話していきます。次回は、「なぜ資産運用が必要なのか」についてです。 (岩城みずほ)
2015年09月07日「わが家は月々いくら投資に回すことができるのか?」と 前回 のコラムで教えてくれた、ファイナンシャルプランナーの岩城みずほさん。今回は、お金が貯まらない…と嘆く人におすすめの「支出のくせを知る方法」についてお話ししてくれます。 あなたはあなたの使ったお金でできている あなたは、家計の毎月の支出がすぐ言えますか? 食費は? 光熱費は? 交際費は? 大体の金額が答えられ、毎月、決まった貯蓄ができている人はすばらしいですね。 でも、「今月もお給料を何となく使ってしまって、また貯金ができなかった」という人は、まず、自分の支出の体質を知りましょう。 食べ物が自分の体を作るように、お金をどう使うかで、あなたの人生は大きく変わってきます。まさに、「あなたはあなたのお金でできている」のです。 一生懸命働いて得た大切なお金を、家族のため、自分のために有効に生かして、豊かな人生にしていきましょう。今の自分の支出の状況を把握し、なるべくたくさん余裕資金を生み出すことが大切です。 支出の体質改善に1ヵ月間トライ! お金をうまく貯められないという人は、支出を上手に管理することが必要です。では、支出はどう意識していけばよいのでしょう? とても簡単な方法をお話します。それは、「買い物の前に3つの支出に仕分けする」のです。 3つの支出とは、 生活費の支出 自己投資(家族の投資)の支出 心を豊かにする支出 です。 あなたは、コンビニにお弁当を買いに行きました。ふと、雑誌の見出しが目に留まります。「この1枚で夏のおしゃれ大逆転!」惹かれますね。雑誌を買い物かごへ。すると、あら。マンゴーがたっぷりのったアイスクリーム! おいしそう! こちらもかごへポン。 こんなシーン、あなたもご経験はありませんか? そんないつもの購買行動、カゴに入れる前に、3つの仕分けを考えてほしいのです。 お弁当は、「生活費としての支出」ですね。では、雑誌は? 人によっては、いつも素敵な私でいるための「自己投資の支出」かもしれませんし、息抜きタイムの「心を豊かにする支出」かもしれません。しかし、どこにも仕分けができないという人は、「ムダな支出」になります。 スイーツも、これを食べたら午後からまた頑張れるという「自己投資の支出」かもしれませんし、頑張った自分へのごほうびで「心を豊かにする支出」かも。スイーツは必需品、「生活費としての支出」なのかもしれません。 つまり、3つの仕分けの内容は、人それぞれ。自分で決めて構わないのです。大切なのは、3つに当てはまらない支出をなくすことです。 そして、買い物をしたら必ずレシートをもらいましょう。その都度、おこづかい帳アプリなどに入力しても構いません。 毎日寝る前、5分間のミニ決算を習慣に そして、寝る前に5分間、1日の決算の時間をとってください。3つの仕分けをノートに書き込むのです。家計簿のように、食費にいくら、保健衛生費にいくらなどと分ける必要はありません。 3つにわけて、それぞれの合計額を記入すればよいだけです。 その時、現金で支払ったのか、クレジットカードを使ったのかは分けて記入してください。 参考までに、私が使っているものをご紹介します。 覚え書きとして、たとえば、「こどものカット」やお盆で帰省したので「交通費」という風にメモをするのもおススメです。 とにかくこれを1ヵ月間続けてみてください。そうすることで、自分の支出のくせがわかります。 次回は、この結果をふまえて、お金を貯められるようにするにはどうするかをお話しします。 (ライター:岩城みずほ)
2015年08月17日「『投資』は、普通の人にこそ必要」と 前回のコラム で教えてくれた、ファイナンシャルプランナーの岩城みずほさん。今回は、投資を始める前に知っておきたい「わが家は月々いくら投資に回すことができるのか?」についてお話ししてくれます。 貯蓄を「生活防衛資金」と「余裕資金」に分ける 「投資」は、余裕資金でするというのが鉄則です。「余裕資金」とはなんでしょう? 明確な定義はないのですが、「当面使う予定のないお金」と考えていいと思います。銀行の口座に長く貯めたままになっているお金です。 そのうち、以下のように、一部を生活防衛資金とします。予期せぬケガや病気で働けなくなった時など、もしもの時のために準備しておくお金です。 会社員の家計では、月の生活費×6ヵ月分=生活防衛資金 自営業者の家計では、月の生活費×1年分=生活防衛資金 となります。 なぜ、両者に差があるかというと、会社員は「傷病手当金」を受けられるからです。 病気やけがが保障される会社員と、されない自営業者 傷病手当金というのは、業務外の病気やけがで会社を休んだ場合、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。 会社を休んだ日が連続して3日間あった上で、4日目以降、休んだ日に対して、1日につき、支給開始日(一番最初に給付が支給された日)以前の継続した12ヵ月間の隔月の標準報酬月額を平均した額(※)の3分の2に相当する額が、最長1年6ヵ月日間支給されます。 しかし、自営業者は傷病手当金が受けられないので、仕事を休めば無給状態になってしまいます。より多くの生活防衛資金が必要です。 たとえば、生活費が30万円で、当面使い道の決まっていない預貯金が250万円ある会社員世帯の場合、 生活防衛資金:30万円×6ヵ月=180万円 余裕資金:250万円×180万円=70万円 と考えます。 月々で考えることもできます。 可処分所得(税金や社会保険料を払ったあとの自由に使えるお金)が、月36万円の世帯の場合、生活費30万円を差し引いた6万円のうち、教育資金への貯蓄を5万円とした場合、残りの1万円が余裕資金となります。(生活防衛資金は貯蓄済みと仮定) 「余裕資金」の使い方が未来の安心を生む さて、みなさんは、余裕資金を何に使いますか? 前から欲しかった洋服やバッグを買いたい。旅行に行きたいなどなど、使い道はいろいろですね。でも、この余裕資金は、資産形成のために投資に回せるお金でもあるのです。 今、働いて毎月入ってくるお金は、現在の生活費であり、これからかかる子どもの教育費のために貯蓄しておくお金であり、そして、老後のために貯めて行くお金でもあるのです。 今、欲望を少し我慢することで、将来の安心と豊かさをつくることができます。 まずは、自分の支出の状況を把握し、なるべくたくさん余裕資金を生み出すことが大切です。 次回は、支出をどう意識していけば、家計を合理的にできるのか、とても簡単な方法をお話しします。 (※)平成28年(2016年)4月1日より、傷病手当金の支給額の計算方法が変わったため、修正しました。(2016年4月12日) これまでは、病気やケガで仕事を休んだ直近の月の標準報酬日額をもとに計算されていましたが、支給開始日(一番最初に給付が支給された日)以前の継続した12ヵ月間の隔月の標準報酬月額を平均した額で支給されます。 1日あたりの金額=支給開始日(一番最初に給付が支給された日)以前の継続した12ヵ月間の隔月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3 支給開始日以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、以下の2つのうち、少ないほうの額で計算されます。 ・支給開始日の月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額 ・28万円(当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額)
2015年08月03日みなさんは、「投資」にどんなイメージを持っていますか? 「怖い」「難しそう」 「投資ってギャンブルよね」 「誰かが得をすれば誰かが損をするゼロサムゲーム」 「まともな人のすることではない」 「投資はお金持ちがするもの」などなど。 中には、「祖父の代からの家訓で、投資には絶対に手を出すなといわれています」という人もいましたよ。投資ってブラックなイメージがあるようですね。 でも、そんな時、私はこう答えます。「あなたが思っているのは、投資ではありません。投機です」と。 投機とは、つまり、ギャンブルです。ギャンブルは、勝つか負けるかわからない。結果に法則性がありません。運です。結果をコントロールすることは誰にもできないのです。パチンコ、競馬、競輪そして宝くじなど、「今度こそ!」と夢見て、お金を投じますよね。 投資の結果はある程度コントロールできる 「投資」はギャンブルではありません。偶然性に賭ける「投機」と違って、「投資」の結果には、ある程度の法則性があり、結果をコントロールすることができます。 第1回のコラム でお伝えしたように、「会社にお金を使わせてあげる」というのは、「将来有望な会社の株式を持つ」ということです。株主になることですね。言い換えれば、モノやサービスを作り出す会社のオーナーになることです。 価値を生み出す会社の株を長期保有することで、その会社が成長し、あなたのお金も増やすことができるのです。これを「長期投資」といいます。 一方、「短期投資」というのもあります。これは、株を売ったり買ったりして、株の値動きにかけて儲けようとするものです。デイトレードと言って、一日中株価をウォッチして、タイミングをみて売買するので、子育てやお仕事に忙しいママには難しい取引ですね。 また、FX(外国為替証拠金取引)も、女性に人気があるようですが、これは、外国為替を使って短期の取引をし、円と交換する時の値段の変動と、金利で儲けようとするものです。為替自体が付加価値を生み出しているわけではないので、こちらも投機の対象だと思います。 「投資」は、普通の人にこそ必要 みなさんに今後ぜひして欲しいのは、月々の収入から少しずつ、長い期間をかけてコツコツ積立投資をすることです。できるだけ安定的にお金が増えていくように運用していきます。そのためには、何にどう投資していくのかが重要になります。 どういう金融商品を持てばお金を安定的に増やしていけるかはこのコラムでお話していきますが、「資産運用をしていこう!」と決めたからと言って、勧められるままにファンドや個人年金保険などを買わないでくださいね。 どういうしくみなのか、なぜお金が増えるか(儲かるのか)を理解できない商品や、「あなただけ特別に」などと、耳元でささやかれた時には手を出してはいけません。自分で理解できて、必要だと思う商品を持つことが大切です。 そして、「投資ってお金持ちがするものでしょう?」と思っているあなた。お金が十分にある人は、むしろお金を増やす必要なんてありませんよね。「投資」は、普通の人にこそ必要なのです。少しずつコツコツと買っていく「積立投資」で、会社の成長を買って、のんびり資産形成をしていきましょう。 次回は、「投資」をスタートするその前に、あなたの家計と支出について考えてみましょう。
2015年07月20日「これから子どもにもたくさんお金がかかるのに、どうやってお金を貯めていけばいいの? そもそも、貯金でお金は増えるの?」 「女性って長生きでしょう? 年金だけで足りるのかな」「インフレになるとお金の価値は下がるのよね? 預貯金だけじゃダメってこと?」 そうなのです。私たちは、漠然とした不安に少しおびえています。あなたはいかがですか? でも、それはある意味、仕方ないのです。だって、これまで私たちは「お金」について、学校でも社会に出てからも学ぶ機会がなかったのですから。わからないから、なんとなく不安なんですね。医療や年金の制度について知らないばかりに、余計な保険に入りすぎていたり、勧められるままに金融商品を買って失敗したりという人もいるかもしれません。 ゆるやかにインフレが進んでいる今、「お金についてもっと勉強したい」「なるべくリスクを抑えてお金を増やしていきたい」という女性が増えています。 このコラムでは、普通のママが毎日の生活の中で、無理なくお金を「増やして」いけるようになるための方法を、1年間かけて学んでいきます。「お金」について、まったくダメ、自信がありません、という方も大丈夫。少しずつ学んで、お金を増やしていきましょう。そう、お金を「貯める」ではなく、「増やす」のです。 これからの時代、お金は貯めるのではなく「増やす」べき 「貯める」というのは、貯金箱や銀行の預貯金口座にお金をいれていくことです。貯金箱に入れた1万円は、いつまでも1万円のままですね。銀行に入れれば、ほんの少しは増えるかもしれませんが、今、それは本当に微々たるものです。 お金を「増やす」というのは、1万円が1万500円になって、1万1,000円になって、1万2,000円になって…というように、少しずつ増えていくことです。昔は、銀行で定期預金すれば、お金はどんどん増えていました。定期預金金利が7%なんていう時代では、100万円を倍の200万円に増やすのに、10年間預けていればよかったのです。でも今は? 1年間で0.025%の金利がつく銀行だと、100万円を倍の200万円に増やすのに、約2,880年もかかってしまいます。じゃあ、お金を増やすのにはどうすればいいの? そのためには、お金にも働いてもらう必要があります。私たちが、社会の中で働くように、お金に働いてもらうのです。自分がすぐに必要でないお金を、お金を必要としている会社に使わせてあげます。会社はそのお金を活用して、世の中に役立つビジネスをします。 世の中に役立つビジネスを投資で応援すればお金も増える! たとえば、赤ちゃん用の体温計。うちの子どもたちが赤ちゃんの時は、熱を測るのに、体温計を口の中に入れて40秒くらいかかりました。でも今は、おでこにあてて1秒で検温できる体温計があるんですってね。なんて便利なのでしょう! この体温計を開発した会社は、資金を投入し、子育て中のママたちに喜ばれるもの、より便利なものを作り出したわけです。きっとたくさん売れて、会社は利益を上げ、より成長していくでしょう。 会社は、お金を使わせてくれてありがとうと、収益の一部を皆さんに、「リターン」として戻してくれます。お金を使わせてくれたお礼というわけですね。このようにしてお金を増やしていくことを「投資」といいます。こうしてあなたのお金は増えていくのです。 次回は、「投資」ってなんだか怖いって思っている、あなたのその勘違いについてのお話です。
2015年07月06日