柿ピーは人生そのものだった【新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記 第5話】
もう散々議論し尽くされているテーマだと思うけれども、柿ピーの柿とピーについて、私の認識で言えば、「ピー」、すなわちピーナッツは、柿の種の美味しさをより色濃く印象付けるための、あえての我慢アイテムという認識だった。
”人生楽ありゃ苦もあるさ”の楽を知らしめるためにどうしても必要なスパイスとしての苦。あるいは、世の中の光を際立たせるためのあえての影、それがピーである、と。
苦労を避けて通ってはいけない、努力なしでは成功は得られない。義務教育でそんな風に教わってきたから、柿ピーを前にしてもやっぱり、柿とピーのバランスを考え、柿、柿、柿、ピー、柿、柿、柿、ピー、くらいのペース配分を戒めのように自分に課してきた。それが正しい大人としての自分の務めであると言わんばかりに。
けれども34年間生きてみて、いろいろなことがあった。福岡の片田舎から東京に出てきて、さまざまな人たちと触れ合ううちに、あれ、思ってたのと違うかも、ということに気づき始めた。
私のように、子どものころの先生の教えを律儀に守って、目の前の苦を享受している人間は、ともすればふとしたとき、生きることに疲れたりする。疲れ切って動けなくなったり、逆に感覚を麻痺させて死んだ目で動き回ることもある。一方で、感じることを止めない人達というのは、できる限り無駄な苦を回避するし、そのために考えながら生きているのだ。そういう人達は、考えているわりにあまり疲れているようには見えない。
目の前に差し出された苦をありがたがって受け取るだけが賢い大人のやることではないのかもしれない。あの山のてっぺんまで登るようにと言われて、最短距離だからとただ闇雲にまっすぐ進む。目の前に立ちはだかる巨木や岩を馬鹿正直によじ登って突き進むのは思考停止だ。本当は、それらを器用に避けながら、無理のないルートを切り開くことこそ賢さにほかならない。
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