“母は助けてくれてあたり前”と信じてた『さよならわたしのおかあさん』(前編)
子育てする中で実の母親というのは、お手本ともなり、頼れる存在ともなりえます。そんな母親がもし死を迎えることになったら、娘である自分たちはどうすればいいのでしょうか。
漫画家の吉川景都(よしかわ けいと)さんは、昨年肝臓がんを患い母親との別れをつづったコミックエッセイ
『さよならわたしのおかあさん』を出版されました。
いつも笑顔で冗談を言い続けたおかあさんとの日々や、3年間の闘病、そして亡くなった後の生活について描かれた作品は、連載中からSNSでも話題を集め、出版後も多くの反響を呼んでいます。
母親と過ごした日々や、別れの乗り越え方などについて、吉川景都さんに話を伺いました。
吉川景都(よしかわ けいと)さん
神奈川県出身。漫画家。2003年少女誌「LaLa」でデビュー。『24時間サンシャイン!』で初の単行本を上梓。多岐に渡る作風が特徴的で、テンポのいい会話でみせるストーリー、エッセイコミックなどで人気を博す。著書に『片桐くん家に猫がいる』『子育てビフォーアフター』(新潮社)、『モズ』シリーズ(集英社クリエイティブ)、『鬼を飼う』(少年画報社)などがある。
Twitterアカウント:@keitoyo
■一番の相談相手のおかあさんが病気になったとき
――吉川さんとおかあさんはどんな関係性だったのですか?
私は3姉妹の真ん中なのですが、将来やりたいことを見つけるまでにも時間がかかったので、姉妹の中でも一番心配をかけたんじゃないかと思います。
でも、どんなときもおかあさんは
「しょうがないよ、まあ、やってみたら?」と言って受けとめて、伴走してくれました。
私にとっても、
一番の相談相手はおかあさんでしたね。
――ガンだとわかったとき、おかあさんはどんな様子でしたか。
『さよならわたしのおかあさん』より
おかあさんはC型肝炎からガンに進行したのですが、それがわかったときに送られてきたメールは、いつもどおりの絵文字が盛りだくさんの、おもしろいメールでした。
私は驚いて、すぐに電話でわーって泣きながら、
「どうするの、ガンなんて!?」と、言ってしまって。
おかあさんは「いまは治る病気だし、大丈夫」と言ってくれた。ただ、母が亡くなったあとで、父から「病気がわかったときは、おかあさんは泣いて『どうしよう』と言っていたんだ」と聞きました。
――あくまでも母親として心配をかけまいとしたんですね。
私は、おかあさんの不安を聞いてあげようって気持ちよりも先に、自分がおかあさんを失う不安を取り除きたい気持ちが来てしまいました。
「おかあさんはまあ治るだろう」と、現実感がなくて。同時に私は不妊治療をしていたので、「急がなきゃ!」という焦る気持ちが急に湧きあがってきました。
『さよならわたしのおかあさん』より