コミックエッセイ 夫婦・子育ていまむかし
16人産んだって…凄すぎない? 出産育児しながら国を守ったマリア・テレジア【夫婦・子育ていまむかし Vol.32】
女性3人で 手を組む作戦!
さらに、この時代の女性3人が国家間の関係において重要な役割を果たしたとされるのが、プロイセン包囲網を組んだ通称『3枚のペチコート作戦』です。
マリアは敵対していたフランスとの交渉にあたり、その中で当時ルイ15世の寵愛を受けていたポンパドゥール夫人の立場と心情を鋭く察知し、優れた政治手腕を持つ官僚カウニッツを通じて彼女を味方につけたのです!
ルイ15世の愛人として、フランス宮廷内で強い影響力を持っていたポンパドゥール夫人。宮廷での地位維持にこだわりがあり、自分を守りたいーそんなポンパドゥール夫人の事情を見抜いて自国の政治戦略にうまく利用したマリア・テレジアの才覚には脱帽です。
さらにマリアはロシアの女帝エリザヴェータとも外交的な信頼関係を結びます。
「3枚のペチコート(女性の下着)作戦」というのは、マリア・テレジア、ポンパドゥール夫人、エリザヴェータという3人の女性が、外交的に関係を築き戦争の終結に向けて重要な役割を果たしたことの象徴です。血を流さず成功したこの手法、まさに協調性をいかしたリーダーシップですよね!
え…毒親な一面も?
そんな気配りと鋭い観察眼で難しい国政を非常にうまく治めたマリア・テレジアですが、子だくさんなこともあって子ども好きで良き母だったのかな〜なんてイメージを持ちますよね。
いやいや それが
まぁまぁな毒親というか…厳格&支配的だったようなのです…。
さらには、愛情差別もあったようで溺愛した四女のマリア・クリスティーナにだけは自分と同じ恋愛結婚を許していますが、障害を持っていた娘と自分に反抗的な娘は冷遇していたとも言われてます。国家の利益を優先しなければいけないという立場ゆえ仕方ないとも…思いますが。
ちなみにマリー・アントワネットは2番目にお気に入りの娘でしたが、彼女も他の娘たちと同じく結婚を通じて政治利用されています。自分は恋愛結婚させてもらった幸せを実感しているだろうに、そこは関係なく娘を駒として使った…?と思うような行動はちょっと衝撃でした。
夫とラブラブで いい夫婦だったのは間違いない!
あくまで夫フランツが政治に関心が薄く、マリア・テレジアをサポートするのに抵抗のない性格だったからこそ、彼女は全力で政治という仕事に取り組めたのでしょう。彼女は彼を心から信頼&愛していたようで、フランツに先立たれると非常に落ち込み、その後亡くなるまで喪服で過ごすほどでした。
そして晩年は、長男ヨーゼフ2世を後継者として立てつつも自身の崩御までは共同統治。近代化を進めたいヨーゼフ2世と、しばしば意見が合わず対立し官僚たちを困らせて政府内での決定が遅れることもあったようです。改革に対する慎重な姿勢は「老害」と言えなくもないですが、ここは難しいところですね…。
どんな完璧に見える人にも欠点はあるし、国の統治者という背負うものが大きな立場につくと、身内には配慮が欠けるように見えるというのも歴史あるあるですよね。マリア・テレジアは「国の母」として、また有能な政治家として大きな成功を収め国民に敬愛された実質的な女帝でしたが、子どもたちから見るとどんな母に見えていたのでしょうか? 尊敬と同時に、彼女の強い教育方針や政治的期待は負担に感じていたことも多かったのでしょう…。
そこで夫が家庭的だったというのも、最高の相性だったのでしょう。自分にぴったりなパートナーを6歳でみそめたのも凄い…! 偉大なる女帝の意外な生活の一部から、夫婦そして家族の在り方を考えさせられた回でした。