コミックエッセイ たんこんちは ボロボロゆかい
楽しみにしていたのに怖くて入れない…! 母と息子「映画館」での長い戦いの結果、ついに!?【たんこんちは ボロボロゆかい Vol.44】
■通路で動けない息子
「何が怖い?」
息子に聞くと…。
「わかんない…」
その一点張り。
確かに、確かに気持ちはわかる…!
この独特の雰囲気、分厚いドアの先はどうなっているかわからない。
たまに怖い映画のポスターも貼ってあるし…!!
私は楽しげにシアターに向かうお客さんや笑顔の子どもたちを息子に見せながら、
「見て! みんな楽しそうだよ! そうまも大丈夫だよ!」
と息子に声をかけるも、
「………」
息子はフリーズしています。
どうしよう…。
そんなこんなしているうちに、上映時間になってしまった。
このまま見られないとなると、娘もかわいそうだし…。
「みーちゃん、ひとりで席行ける…?」
「行ける!!」
すでに映画鑑賞のプロとなった娘は、一人でも見られると息巻いています。
ちょっと不安だけど、娘は見たがっている。
説得したら後を追うから!と約束し、私は娘を見送りました。
この時、娘は小学三年生。頼もしくなったものだ…。
映画館デビューは娘もビビっていたけど…。
こうして息子と一対一になった私は、引き続き息子の説得に当たります。
説得と言うか、もうこうなったら、何を言ってもどうしようもありません。
息子が自分の気持ちを整理して踏ん切りがつくまで待つ、という表現が正しいのかもしれません。
私は、鳴くまで待とうホトトギスの精神で、息子が動くのを待つことにしました。
映画のチケットはそれなりに高いけれど
これで無理をさせて映画が嫌な思い出になってしまったら一番悲しい。
私は息子と手をつなぎながら、ボソボソとしゃべりながら、行き交う人々と流れる時間を見つめていました。
しかし、息子は動きません。
というか、やっぱり娘が心配になってきた…。
なんでこんな時に夫は一人、気楽に好きな映画を見てやがるんだ…。
という怒りを覚えつつも、映画鑑賞中は連絡するわけにもいきませんでした。