「比較病」の心理構造と克服ポイント|なぜ、わが子とほかの子を比べてしまうのか?

つい、わが子をほかの子と比べていませんか?そうすることの裏には、「できる子になってほしい」という親として当然の願いがありますが、そんな「比較病」により子どもには大きな悪影響が及びます。比較病を招く心理構造とはどのようなものであり、どうすれば克服できるのでしょうか。欧米で学んだ心理学をベースに母親たちをサポートしている公認心理師の佐藤めぐみさんに聞きました。
構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)
比較病により、子どもの可能性を狭めてしまう
親であれば誰しもが、子どもに対して「いい子に育ってほしい」「いろいろなことができる子になってほしい」と願っています。それは親として当然で正常な心理であると言えるでしょう。しかし、その思いの強さゆえにわが子とほかの子を比べてしまい、「私は駄目な親かもしれない……」と思い悩む親御さんは多いのです。
でも、そこでネガティブな心理状況になるのもまた当然かもしれません。わが子とほかの子を比べることは、子どもに対して好ましくない影響を与えるからです。
ほかの子と比べることで「〇〇ちゃんはできるのに」といった言動がつい出てしまうと、子ども自身も「自分は駄目だ」と自己否定をするようになっていきます。
その結果、子どもは「どうせ自分にはできない」と、自分の能力を本来のレベルよりも低く見積もるようになっていくのです。つまり、「いい子に育ってほしい」「いろいろなことができる子になってほしい」と願っていながら、逆に子どもの可能性を狭めてしまうことに。
特にいまは注意が必要な時代――「比較病」が出やすい状況です。参観日や運動会、あるいは親同士の会話のなかで「〇〇君はもうそんなことをしているの?」というように、わが子とほかの子を比べやすい状況は以前から変わらず存在します。
しかし、現在はそれに加えてインターネットの影響があるのです。子育てに関する情報源は、昔であれば、親をはじめとした直接的な知人や、書籍など限られたメディアだけでした。ところがいまは、インターネット上にある情報とわが子を比較し放題の状況。
「1歳頃から歩きはじめる」など、年齢別の発達の目安といった情報はその典型ではないでしょうか。でも、人間には個人差があり、それはただの目安に過ぎないのです。
文化的側面からも、日本の親は比較病に陥りやすい
また、文化的側面からも、日本の親御さんたちは比較病に陥りやすいといえます。