魚座生まれのあなたへ贈る詩「溺れる青」【文月悠光 12星座の恋愛詩】vol.7
18歳という若さで中原中也賞を受賞した詩人の文月悠光さん。詩のみならず、今の世を生きる女性として、誰もが感じる“生きづらさ”や“孤独”を綴ったエッセイ集も話題です。
このたび、そんな文月さんによる、12星座別「恋愛詩」の連載がスタート。毎月、月ごとの星座を主人公とした一篇を執筆していただきます。さらに、その詩をモチーフとしたコイズミリカさんの美しいイラストもお届け!
切なくて愛おしくて胸がキュンとする…詩とイラストのコラボレーションをお楽しみください。
■魚座生まれのあなたへ
溺れる青
さみしいとき、
海は一体何に溺れるのだろう。
たったひとり、こんなに波を奏でて。
海は二つの「青」を差しだす。
すべてを包み、守り抜く青と
荒れ狂い、天を殴るような青。
二つの青が争いながら
鎖のように結びつき、
濡れた静けさを鳴らしている。
あなたをわたしの海へ
突き落とす。
呼吸できないほど深く、
水底まで引き込んで
肺の空気を捧げ合うのだ。
溺れてごらん。
あなたの鼓動も、瞳の色も
わたしの片割れとなり果てるまで。
まだ眠っている頬を
夜明けの光でやさしく拭う。
いつも、ぎりぎりのところで
あなたを生かしてしまう。