牡牛座生まれのあなたへ贈る詩「埋めるべき空白のために」【文月悠光 12星座の恋愛詩】vol.9
18歳という若さで中原中也賞を受賞した詩人の文月悠光さん。詩のみならず、今の世を生きる女性として、誰もが感じる“生きづらさ”や“孤独”を綴ったエッセイ集も話題です。
このたび、そんな文月さんによる、12星座別「恋愛詩」の連載がスタート。毎月、月ごとの星座を主人公とした一篇を執筆していただきます。さらに、その詩をモチーフとしたコイズミリカさんの美しいイラストもお届け!
切なくて愛おしくて胸がキュンとする…詩とイラストのコラボレーションをお楽しみください。
■牡牛座生まれのあなたへ
埋めるべき空白のために
きみの隣で眠れたら
恋だと思う。
二人で眠ると、あたたかいこと。
手を握ると、溶け合えること。
朝食にリンゴを剥いて食べるとき、
爽やかな甘い果実は
二人の子どもみたいであること。
教えてあげたい。
「彼女っぽく」とか
「恋人らしく」とか
わたしに求めるのは違うこと、
とうに気づいてるでしょう?
見つめ合えば、
二人のあいだにある空白を
否応なく意識する。
口火を切って。
埋めるべき空白のために、
愛の言葉は存在するのだと。
おいで、教えてあげる。
きみの隣で目覚めたら
わたし、きみの爪や
きみの心臓を盗むと思う。