2015年2月11日 10:00|ウーマンエキサイト

頭の中ではじけた声【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第13話】

慎吾が近所の公園でボールを足首に乗せる練習をしている時だった。後ろから声がした。

人間不信と純真無垢【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第12話】

(c) makieni - Fotolia.com


「おい、慎吾? 慎吾じゃないか」

昔のサッカー仲間だった。慎吾はドキっとした。あの事故以来、慎吾は引きこもりになったと噂を流した連中だ。表面では頑張れ、立ち直れと言っていたが、影で「もうあいつはおしまいだ」と言っているのを耳にした。それから慎吾は人を信じなくなっていたのだ。

「なんだ、サッカー復活したのかよ。
すげえなあ。エースストライカーだったもんな。怪我、治ったんだ」

「おい、今、どっかの会社に所属してるのか?」

「てか、自宅療養してるって聞いてるけどな」

興味本位の質問が矢継ぎ早に飛んでくる。慎吾の心の窓が、またバタンと閉じようとしている。ボールを脇に抱えて、下を向いた。

「何か言えよ。どうしたんだよ」

体育会系のいかつい奴が声を荒げる。こんな奴らと一緒にサッカーをしていた自分が馬鹿みたいに思える。
こぶしを握ると、桃香の艶やかな声が頭の中ではじけた。

"慎ちゃん、強くなんなよ。負けてない?"


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