冷たい風【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第21話】
翌日、会社の帰りに鮎子に揺れる気持ちを打ち明けることにした。
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日が暮れるのが早くなり真っ黒な夜がそこまで来ている。街路樹は寒そうに北風に揺れている。ふたりはコートの襟を立てながら駅に続く道を足早で歩いた。桃香は今の気持ちを鮎子に話した。
鮎子はいつもとちがってしょんぼりしているようだ。桃香はひと息ついて話しかけた。
「慎ちゃん、私のこと好きなのかな? 私は好きだけど、恋っていうのかどうかわかんないんだ。
怪我で殻に綴じ込もてったから引っ張りだしてあげたかった。お世話してあげたいっていう感じ。でも冬馬はグイグイ引っ張ってくれる感じで、こんな人の奥さんになると何かあっても安心なのかなあって思うの」
鮎子は前を見て歩きながら桃香の迷いを黙って聞いていたが、だんだん顔つきがこわばり、歩くのをやめて立ち止まった。